2022年 HOKKAIDO LOVE!旅行記 道東編2

 ◆ 釧路 14:16 → 川湯温泉 15:48【4730D】

13時50分、帯広行き普通列車の改札が始まると何人かが中に入って行った。
網走行き方はまだ改札中のランプが消えているが、もう身の置き場所もないのでホームで待つことにする。

2番ホームは数人の人が先に列車を待っていた。
4番ホームは帯広行きキハ40の1両、あちらはがら空きだった。

1両の網走行きが入ってきたのは13時56分。
花咲線仕様の転換クロスシート車だった。

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 釧路駅に入線する網走行き普通列車。

このキハ54形は1986年11月に登場した国鉄型最後の車両。
ステンレス車のため外見はさほど古さを感じないが、車内に入って座ると化粧板がめくれあがったり錆が浮いていたりとやはり年季を感じる。

旧型客車サイズの二重窓にロールスクリーン、JNRマーク入りの扇風機、壁の帽子掛け、扇風機のスイッチと座席以外は昭和時代の香りも漂っていそうな車内だ。
いや、その座席にしてもモケットは新しくなっているが、元々は新幹線の0系車両で使われていたもの。
外見は近代的でも、車内は昭和時代そのままなのだった。

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 花咲線仕様の転換クロスシート車。

車内は余裕があったが、発車時刻が近づくと次々と乗ってきた。
デッキにに立つ人も出てきた。
地元の人と、旅行客が半々くらい。
中にはスーツケースに飛行機のタグを付けた人もいたり。

コロナなのか最近の風潮なのか知らないが、相席を嫌って車端のロングシートへ、そこも空いていなければデッキに立つ人ばかり。だから全員着席できるくらいの乗車率ではある。

次の東釧路では高校生が数人乗ってきて、乗り具合だけ見てれば都市近郊の列車らしくなった。

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 釧網本線の0キロポストがある東釧路駅。

釧路湿原駅では2組の客が降りて行った。
この駅は冬でも営業はしているが、停車する列車は上り2本下り1本のみ。

ここで降りてしまうと今日は釧路へ戻ることができないし、次の上り列車は1時間50分後。
少し歩けばビジターセンターもあるのでそこで過ごすのだろうか。
ここから乗ってくる人もいたのには驚いた。

釧網線は地図で見る限りでは釧路湿原沿いを走っているが、実際は線路際はハンノキが茂っていて眺望は良くない。
車窓のオススメは細岡〜塘路〜茅沼の区間だ。

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 釧路湿原を流れる釧路川。さすがにカヌーはいなかった。

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 湿原ノロッコ号は終点になる塘路駅。

釧路湿原を車内から見たければ特に注視したいのが塘路〜茅沼間。
ここは進行の左右どちらからも釧路湿原を眺めることができ、夏ならば緑一色の草原、冬は一面の枯草と真っ白になったシラルトロ沼を眺めることができる。

夏に運行される湿原ノロッコ号は、川湯温泉延長運転時を除いてこの区間を通ることがないのが残念。

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 釧路湿原と真っ白になった沼。タンチョウが2羽写っていた。

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 茅沼駅のタンチョウは今日は2羽だけだった。

標茶でたくさん下車するのを期待したが、降りたのは地元客と東釧路からの高校生など10人ほどだった。
乗ってくる人もいて、車内はだいぶすっきりしたけどデッキに立つ人がいるまま標茶を発車する。

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 磯分内駅。小さな駅も1人2人下車客がある。

摩周駅は私などつい弟子屈と言ってしまうが、駅名の通り摩周湖の最寄り駅。
ここでも10人ほど降りて車内はだいぶ余裕が出てきた。
もう車内に残っているのは旅行客の方が多い。

摩周を発車する頃には陽がだいぶ傾いてきてだんだん薄暗くなってきた。

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 もうすぐ山影に夕日が沈む。

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 貨車駅の美留和駅。

釧路は雲1つ無い快晴だったのに、だんだん雲が増え始めて美留和を発車したころには雪がちらつくようになった。
同じ釧路管内でも、川湯まで来ると釧路から90km近くも離れているから、この辺りはオホーツク海側の天気なのだろう。

前から眺めると線路はうっすらと雪に覆われている。
天気予報では曇りマークになっているが、山の天気なのでどうなるかわからない。

昨日は川湯〜網走間が始発から15時まで運休となっていたし、明日は予定通り列車に乗れるんだろうか。

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 川湯温泉駅が近づくころには雪になった。

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 ポイント部分以外は雪に埋もれた川湯温泉駅構内。

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 新雪が積もる川湯温泉駅に到着。

川湯温泉で降りたのは私含めて8人ほど。地元の人は釧路から乗っていた老夫婦だけのようだ。
私たち旅行客を降ろして空席が目立つようになった列車は、真っ白になった線路上を峠に向かって発車して行った。

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 付着した雪煙で白くなった後部。

川湯温泉駅は丸太を組んだ山小屋風の駅舎が今も残っている。
この駅に来たことがあるのは2013年だから9年前。あのときは車で来た。
かなりリニューアルされて窓や壁が新しくなっているが、新しくなった感じがするだけで原形は変わっていないので安心した。

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 温泉地らしい趣のある川湯温泉駅ホーム。

元集札口から外に出ると温泉街らしく宿の送迎らしい車が何台か停まっている。
今夜の宿の名前を表示した車もあった。
駅の正面にあるバス乗り場には温泉街へ行く阿寒バスも発車を待っている。


 ◆ 川湯温泉駅 15:55 → 川湯温泉街 16:05【阿寒バス】

送迎の予約はしていなく、予定ではバスに乗ることにしていた。
天気が良ければ歩いて40分くらいだが、雪がちらつく今日はさすがにやめておく。

宿の送迎車に頼めば乗せてくれるのかも知れないが、こういう所の路線バスに乗ってみるのも面白いし、今日はバスの客となった。
車内はさっきの列車に釧路から乗ってきた老夫婦のみ。
あとの人は送迎車でそれぞれの宿に向かうのだろう。

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 川湯温泉駅は1936年建築の山小屋風駅舎。

バスの運転手に今日の宿の最寄り停留所を聞くと、
「郵便局前になります」
だけど、宿の前でバスを停めてくれるという。
料金は290円均一。

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 川湯温泉駅と温泉街を結ぶ路線バス。

地元老夫婦は途中で降りて、車内は自分1人だけになった。
バスは宿の正面に停まって、運転手に礼を言って降りる。
エントランスは宿の法被を着たスタッフが迎えてくれた。


 ◆ お宿 欣喜湯

入ると名前を聞かれて、
「順番にご案内しますのであちらでお待ちください」と言われる。
チェックインに1組1組丁寧に応対してるようだ。

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 お宿 欣喜湯の1Fフロント。

宿の名は『お宿 欣喜湯』。
9年前に車での道東旅行で泊ったことがある。
今回は『どうみん割』使用で、本来は14,800円のところ5,000円引きで1泊2食付き9,800円となる。

今回ここにしたのは、宿のHPにどうみん割プランがあってそこから予約できたから。
もう1つ検討したところもあったが、どうみん割は電話でお問い合わせくださいとあったのでパス。
面倒くさいのは嫌い。

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 マスクをした湯上り熊さん。

10分くらい待たされてようやく自分の番になった。
フロントでどうみん割の条件である住所を確認できる身分証明書〜私の場合運転免許証とコロナワクチンの接種証明を提示する。
接種証明はコピーしたのを持ってきた。

「今日は空きがあるので10畳の部屋をご用意しておきました」
やった、前回は狭い部屋だった記憶があるので嬉しい。

部屋のキーと夕食券、それに額面\500円のほっかいどう応援クーポン4枚を渡される。
次が別のスタッフによる温泉の説明。
温泉はリニューアルして露天風呂もできたとか、目に入ると染みるという説明だった。
そんなもの入ってみればわかるし、私は基本的におもてなしよりも放っておかれたほうがいい人間なので少々煩わしいがハイハイと聞いておく。

皮膚病に効くという話になると、
「前回来たときは水虫が治りましてねえ、はっはっは・・・」
なんて言ってみる。


さて10畳の部屋は・・・。

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 少し古びているが、なかなか立派な部屋。

畳が8畳、窓際に椅子とテーブルが置かれた広縁。いかにも和風旅館。
洒落たシティーホテルの部屋よりも、やっぱりこっちの方が落ち着くな。

極めつけはコレ

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 懐かしいダイヤル式の黒電話が健在。

いや〜懐かしいですねえ。
こんなものがまだ現役で使われているとは。
うちの実家も私が高校1年の時までこの電話機だったよ。

この画像を見たら、泊まっている間にどこかへ電話してみればよかったなと思った。
コロコロコロ・・・ジ〜、コロコロコロ・・・ジ〜、携帯の090を回すだけでも大変だね (^^♪

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 ほっかいどう応援クーポン2千円分。どうみん割の特典。

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 部屋の窓からの眺め。

夕食は18時からの回を予約した。
まずは風呂へ入る。

時間が早いのか客自体が少ないのかはわからないが、風呂はガラガラだった。
おかげでゆっくりとできる。

お湯は硫黄の匂いがする強酸性。
さっきも書いたけど、前回来たときは水虫持ちで、お湯に浸かると指の間にキーンと染みたのを思い出す。
だけどここに1泊して3回ほど温泉に浸かって札幌に帰ったら本当に水虫がきれいに治ったんだよね。

今回は水虫もタムシも持っていないのでお湯に入っても染みる所は無い。

久しぶりに長湯して風呂から上がったら汗がドバドバと噴き出した。
脱衣所にあった冷水器の水が旨い。
本当は風呂上がりのビールといきたかったが、今日は夕食があるので水で我慢した。

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 エレベーター内にあった浴槽情報。

さて6時になったので2階の夕食会場へ。
テーブルには既に料理が並べられていた。
ミニコンロ付きの鍋ものと焼き物がメインらしい。意外と渋いメニューだね。

ドリンクは別料金。
テーブルにメニューが立ててあり、それから選ぶ。
生ビールもあるけど、この献立だと日本酒だね。

・・・あまりいい酒は置いてないな。まあ値段も分相応だけど。
まあいいや、釧路の地酒『福司』にした。
「お燗しますか?」と聞かれ、燗酒もいいけど風呂上がりだから汗だくになりそうなので冷やにした。

瓶入りかグラスで出てくるのかと思ったら、お銚子にお猪口で出てきた。
しかも口まで並々に注いである。
いいねえ、こういうの好き。

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 本日の夕食。お銚子も1本つけた。

真ん中の妙な空間はこれから焼き物でも出てくるのかと思ったら、出てきたのは天ぷらだった。
私は酒飲みなので、あまりどっさり出されてお腹いっぱいになってしまうよりは、色んなものを少しずつ食べたい。
これは酒飲みとか年寄りの客好みの献立だなあ。若い人やお酒を飲まない人には物足りないかも。

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 左上:コタン鍋特製豆乳白味噌仕立て、右上:本鮪・鯛・あしらい一式
 左下:雲丹豆腐、右下:欣喜冬の茶碗蒸し

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 左上:牛ロース道産子陶板焼き、右上:海老と野菜の天ぷら
 左下:日の丸摩周うどん、右下:摩周ルビー車厘(ゼリー)

そういえば、9年前に泊った時は年寄りの客ばかりだったなあ。
あれから起こったインバウンドバブルは、この温泉街には無縁だったようだ。

レストランを見渡すと、カップルや家族連ればかり。
新型コロナ禍があって思わぬところで客層が若返ったことは結構なことだが、懐石風の年寄り向けメニューでは物足りないだろうな。

お酒を1本空けたのでもう1本追加した。今度は根室の『北の勝』にした。
料理をつまみながらお酒を飲んでいたらあっという間に1時間が経っていた。
気づくと6時から組の人たちはいなくなっていた。

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 夕食会場の2Fレストラン。

夕食会場から部屋に戻ると布団が敷いてあった。
そうだったな、旅館は布団を敷いてくれるんだよ。

最近は温泉旅館でも布団は最初から敷いている所が多くなったので、すっかり忘れていた。

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 布団が敷かれた部屋。

食事だって昔は部屋まで運んできてくれたんだよね。
料理は足の付いたお膳に載せて、ご飯はお櫃に入れてね。
そして食事の後に風呂へ行って戻ってきたら、お膳が片づけられて布団が敷いてあったけなあ。

昔の旅館を知らない人は色々戸惑うことがあるかもしれないね。
昭和や平成ひと桁の温泉旅館の文化を味わいたければここに泊れば良い。
何となく、昔ながらのこの宿が愛おしく思えてきた。


posted by pupupukaya at 22/01/22 | Comment(0) | 道東の旅行記

2022年 HOKKAIDO LOVE!旅行記 道東編1

新型コロナウイルスの緊急事態宣言も2021年の10月からひとまず解除となりました。
その後も、新型コロナの陽性者数も日本国内では減少傾向が続いたこともあり、自治体レベルでの旅行や宿泊補助のキャンペーンを再開するようになりました。

その1つが『HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パス』というきっぷ。

・12,000円、連続する6日間有効。
・JR北海道の在来線全線の特急・普通・快速列車自由席及びジェイ・アール北海道バスが乗降自由。
・SLを除く普通車指定席を4回まで利用可。

6日間12,000円は道内での連続日使用を前提とすれば、青春18きっぷ(12,050円)よりもお得ということになりますね。

ただし、本来は24,000円のところ北海道の補助で50%引きにしているため、補助金の上限に達した場合は発売期間中でも発売を終了となるようです。
また、『新型コロナウイルス感染症の拡大により発売を一時休止することがあります』との断り書きもありました。

新型コロナウイルスは世界中で再び大流行しているようですが、日本国内はいたって平穏そのもの(2021年12月現在)。
これもいつ飛び火してくるかもわからず、行けるときに行っておいた方がいいと思ったわけです。
正月中はちょっと無理なので、年明けの連休に休暇を付けて、久々に特急列車で道内旅行をすることにしました。

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 12,000円でJR北海道内乗り放題、HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パス。

今回の旅行は2回に分けて、前半は1泊2日で道東へ行き一旦札幌に戻ります。
翌日後半の1泊2日は道南へ行きます。これで4日分使用。
5日目は日帰りでどこかへ行くことにします。
6日目は出勤日になるので掛け捨てということになりますが、5日間も特急に乗っていればとっくにモトが取れているので、これで十分です。

この旅行記はその前半の道東編。以下の行程を組んでみました。

道東編 行程
駅名列車名時刻
札 幌特おおぞら3号8:51発
釧 路13:20着
釧網線普通14:16発
川湯温泉15:48着
川湯温泉泊
川湯温泉快しれとこ摩周号 10:28発
網 走11:53着
特大雪4号12:35発
旭 川16:19着
特ライラック34号16:30発
札 幌17:55着

緑太字の列車名は指定券を発行した列車です。
旭川駅で接続する大雪4号ライラック34号の指定券は2枚になりますが、旭川駅での乗継ぎに限り、ライラック⇔大雪ライラック⇔サロベツは1回のカウントとなります。

後半の道南の行程はまた道南編で改めて。

川湯温泉のホテルはどうみん割プランを予約しました。
こちらは1泊2食付で9,800円。
いつもは安宿ばかり選んで泊まっていますが、たまにはいいんじゃないでしょうかね。

それでは行ってまいります。


 ◆ 札幌 8:51 → 釧路 13:23【おおぞら3号】

今日は木曜日。
まだ正月休みという人も多そうだが、札幌駅はちょうど朝のラッシュ時間帯で、西改札口からは通勤客が次から次へと出てくる。
そんな人の流れを横目で見ながら、自動改札機に6日間周遊パスを通して入場。
ホームに上がる前に駅弁とビールを買っておいた。

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 人魚姫が眺めるラッシュの西改札口。

おおぞら3号は8時40分入線。
札幌始発なのに、車内にはすでに乗客の姿がある。これは手稲〜札幌間ノンストップの『ホームライナー』の客。
料金は100円で特急列車の座席に座って通勤できるというもの。
ほかにはライラック3号、北斗6号がホームライナーとして入線する。

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 手稲発の『ホームライナー』として入線する261系『おおぞら3号』。

前の日にえきねっとで座席表を見たら、席が結構埋まっていた。
12月中に指定券券売機で予約した際は空席だらけだったし、去年の1月にSL湿原号に乗りに『おおぞら』で釧路まで行ったときはガラガラだったので今回もそんなものかと思っていたが、鉄道の利用者も戻ってきているようだ。

帰省Uターンラッシュは過ぎたとはいえ、時期をずらした帰省や正月と成人の日連休を合わせての旅行など、例年ならばまだ混雑しているころだ。

えきねっと座席表では指定席のほぼ全部の列が埋まっているはずだが、札幌始発時では空いている席も多かった。
きっと新札幌や南千歳で乗ってくるのだろう。

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 札幌乗車時は空席が多かった。

席に座って発車を待つ。えきねっとで確認する限り隣席に客が来ることはなさそうだ。

窓は水垢がたくさんこびりついて汚い。
折り返しならばともかく、今朝車両基地から出てきたばかりの車両だし、ちょっとひどいのではないか。
車内販売のワゴンサービスはとっくに無くなったし、高速バスでも標準装備になったフリーWi-Fiどころか座席にコンセントすらも無いのだから、せめて窓くらいは綺麗にしてくれよ。
ね、JR北海道さん

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 水垢がたくさん付いた残念な窓。

発車時刻になったが、発車する気配がない。
「ただいまこの列車に接続の列車が遅れております」
「接続を待っての発車となりますのでもう少々お待ちください」
とアナウンス。

周りに人がいないうちに駅弁を食べてしまおう。
今回は『石狩鮭めし』。大正12年発売開始のロングセラー駅弁。

音がしないようにビールの栓を開けてこっそり乾杯。
この車内で朝からの1杯がまた格別なのだ。

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 鉄道旅行の楽しみは駅弁と酒。今日は石狩鮭めしとサッポロクラシック。

石狩鮭めしは、茶飯の上に鮭フレークと錦糸卵を敷きつめイクラの醤油漬けを散らしているシンプルなもの。
副菜は鮭の昆布巻きと蕗の炒め煮、鮭蒲鉾。
日本酒の金滴カップのほうが合いそうだが、平日の朝なのでビールだけにしておいた。

札幌駅の駅弁は特に有名駅弁もなく地味な存在だが、たまに買って食べると老舗らしい真面目な駅弁屋というのを感じる。
いかにも観光受けを狙ったような食材に飽きた人には、札幌駅の駅弁をオススメします。

そうこうしているうちに発車。8時59分、8分遅れでの発車となる。
先行列車がつかえているのか、なかなかスピードは上がらずさらに遅れを増す。

予想していた通り新札幌でたくさん乗ってきた。
空いていた前後の席も全部ふさがった。

客層は意外と若く、子供連れの家族も目立つ。
インバウンドがいないのは当然だが、年寄りもあまりいないようだ。
年明けから道内は低温と荒天が続いており、車はやめて鉄道にしたのだろうか。
乗客の顔ぶれだけ見ていれば、まだ冬休みだなと思う車内だ。

次の南千歳でまた乗ってきて、空いている列は無くなったようだ。
今日のおおぞら3号は2両増結の7両編成。うち指定席は4両。
乗車率はざっと見で7割といったところだから、最盛期とまではいかないが都市間特急らしい姿となった。

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 南千歳を出ると全部の列が埋まるほどの乗車率になった。

南千歳でしばらく停車して9時40分発車。この時点で14分遅れ。
別に先を急ぐわけではないので、少しくらい遅れてもいいから安全第一でやってもらいたいが、この先単線区間なので遅れ回復は難しいだろう。

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 石勝線に入ると着雪して真っ白な森が続く。

追分を発車すると川端で運転停車。上りおおぞら2号と交換待ちだ。遅れているのでしばらく待つのかと思ったら、すぐに隣の線路に列車が入ってきて停車した。隣が発車するとこちらもすぐに発車する。

東オサワ信号場でも運転停車。これもこちらが停車するとすぐに入ってきた。
今度ははまなす編成のとかち4号。
お互い待つことがないようにうまい具合に信号場ですれ違うものだ。
石勝線は3〜5kmごとに信号場が設けられていて平時は過剰設備のようにも思えるが、短い間隔の信号場はダイヤが乱れたときに本領を発揮する。

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 東オサワ信号場で『とかち4号』はまなす編成とすれ違う。

現在位置は占冠村。スマホの天気アプリで占冠村の現在気温を見ると−13℃。
占冠に停車したときにドアから顔を出してみたが、さほどの寒気ではなかった。
札幌もここのところ最低気温−10℃という寒気が続いていて慣れてしまったかも。

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 現在零下13度の占冠駅。

今度はトマムの1つ手前にあるホロカ信号場で運転停車。今度は少し待たされた。
10時51分、283系のおおぞら4号が通過して行った。
遅れてなければ本来はトマムで交換していた列車だ。

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 ホロカ信号場で283系『おおぞら4号』とすれ違う。

「まもなくトマムです」
の放送があると、車内がちょっと慌ただしくなる。

ここは星野リゾート・トマムの最寄り駅。1980年代から90年代は全国からスキーヤーが集まってきたところだ。
冬になるとスキーリゾートエクスプレスが運転されたものだし、新宿から直通する臨時寝台特急の『北斗星トマムサホロ』なんてのもあったっけ。

そんなリゾート列車も2013年頃を最後になくなってしまったと記憶している。
またその頃から客も日本人のスキー客よりも、インバウンドが主流になっていったようだった。

トマムに到着すると多くの人が席を立った。
ホームの出口は下車客がしばしごった返すほど。

出口の階段を下りた所には2台のトマムリゾート行きのバスと1台の荷物用のトラックが待ち受けていた。
何だか、スキーリゾートの最盛期を思わせるような光景でもある。
1つだけ違うのが、スキー板を担いでいる人が皆無だということ。スノボを見かけるくらい。
レンタルスキーがあるにせよ、ここまでスキー人口も減ってしまったのかと思う光景だった。

それにしても、今日はトマムで何かあるんだろうかと思うほどの大盛況だった。

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星野リゾートトマムへの客で賑わうトマム駅のホーム。

トマムで半分近くほどの人が下車したようで、車内は空席が目立つようになった。私の前後の席も再び空席になった。
家族連れの多くもいなくなったので、車内はだいぶ落ち着いた感がある。

次の新得駅では80年代にタイムスリップしたと思いかけるような懐かしい光景が・・・
国鉄色に塗装されたキハ40が2両停車していた。従来の白地に黄緑の帯の車両に混じって妙に存在感がある。

今年3月のダイヤ改正では、キハ40形気動車も道東からは撤退となり、H100形新型電気式気動車に置き換わることになっている。
少し前まで、全道どこでも見られた国鉄型車両。
青色のボックスシートに旧型客車のような二重窓。
ボックスシートを2列+1列に改造したり、オールロングシートになった車両もあるが、基本的には原形のままの車両が多い。
つい汽車と呼んでしまうこの車両も、もうすぐ道東では見ることができなくなる。

ダイヤ改正後はこれらの車両はどこへ行くんだろう。
この先もH100形の増備は続くだろうし、想像するに最終的には道南地方に集約ということになるのではなかろうか。
キハ22形気動車が最後まで残ったのも道南だった。

まさかとは思うが、2030年度の北海道新幹線札幌開業時まで函館周辺で使われたりして。
う〜ん、いまのJR北海道ならやりかねんな・・・

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 国鉄カラーのキハ40が集う新得駅。

新得からは十勝地方になる。
それまでの雪景色から一転、雪がない風景となった。
雲1つ無い快晴。地元では十勝晴れと呼ぶそうだ。

しかし、空の青さと枯草の茶色のコントラストは、雪景色よりも寒々として見える。

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 雪がない晴れた十勝平野を快走する。

帯広着は11時50分。12分遅れは固定化したようだった。
十勝地方の中心都市、帯広で降りる人は多い。
トマムで半分近くになった車内は帯広でさらに半分になってしまった。

帯広は釧路に次ぐ道東第二の都市・・・と言いたいところだが、一昨年末に帯広と釧路の人口がついに逆転したそうだ。
これからは帯広が道東第一の都市ということになるのか。
まあ帯広の方が栄えてる感じはするね。

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 帯広駅ホーム。降車客はすぐにいなくなった。

帯広もすぐには発車しなくて、発車は11時53分となった。14分遅れ。
この辺りまで来ると乗務員たちは遅れを増やしたくないと、やきもきしてくる頃だろう。

釧路で花咲線根室行きに6分間で接続するというのもあるが、それ以上の理由は定刻では釧路で22分間の停車で『おおぞら8号』として折り返すことになっていること。
この列車が大幅に遅れると、札幌行おおぞら8号も釧路発が遅れることになるからだ。

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 帯広からは空席が目立つようになった。

帯広からは7両編成を持て余すかのような乗車率になった。
この3号車に残っているのも7〜8人。

乗り物は基本的に空(す)いている方が好ましい。
道内ならば基本は車で移動する私が、あえて鉄道を使っているのはコロナの乗客減で列車が空いているから。
しかし、さっきまで盛況だった車内が、帯広からガラガラとなってしまうと急に寂しくなってしまう。

かつてスーパーおおぞら時代は札幌〜釧路間の所要時間は最速3時間30分台だった。
道東自動車道がまだ一部しか開通してなくて、車だと6時間以上かかっていた頃。
車だと片道だけで1日がかりだったのが、JRだと日帰りできたのである。
まさしく『おおぞら』は道内特急のエースだった。

あの頃は全列車ワゴンサービスがあったし、常に増結して8〜9両編成で運行していた。
ついこの間までそうだったような気がするが、急速に過去の話になりつつある。
今からすると夢のような話だ。

池田からは線形も悪くなりスピードも落ちるようになる。
一向に上がらないスピードとガラガラの車内はまるでローカル特急だ。

厚内からは太平洋の寂しい海岸沿いを行く。
十勝管内は人里の感じはあったが、この辺りまで来ると果てまで来たと思うようになる。
人家も少なく、この先にあった直別駅、尺別駅は、旅客は廃止されて今は信号場になってしまった。

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 厚内からは人里離れた太平洋岸を走る。

白糠発13時15分、14分遅れ。
ここからは再び直線区間が多くなる。終点釧路に向けて120km/hのラストスパートだ。

その甲斐があったのか、終点釧路到着は1分回復した13分遅れ、13時33分だった。

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 釧路駅に到着。

到着したおおぞら3号は今度はおおぞら8号として札幌に戻る。
折り返しの時間はわずか9分。
全員下車すると今度は車内整備員が乗り込んだ。

ホームの乗車口には、おおぞら8号の乗客の行列ができている。
荷物や恰好から、多くが帰省のUターンのようだ。時期をずらして帰省した人や、長めの故郷を過ごした人たちだろう。
ホームは入場券を買ってホームまで見送りに来た人たちもいて賑やか。

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 ホームは折り返しになる『おおぞら8号』の乗客がたくさん並んでいた。

改札口前はここも見送りに来た人が立って発車を待っている。
見送り人を見ていると、何だか往年の駅頭の光景を見ているようだ。

一向に収束しないコロナ渦で、今度は肉親がいつ帰省して来られるかわからないということもあるのだろう。
あと釧路の人たちにとっては、札幌はやはり遠い所という感覚があるのかもしれない。

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 改札口前は見送りの人だかり。

なんとか定時発車となったおおぞら8号を見送ったら次の列車までまだ30分ある。
駅の外に出たら気持ちよいほどの快晴。
こちらはずっと晴れの日が続いているようだった。

しかし駅前の歩道は凍ってスケートリンクのようにコチコチのツルツル。
とても歩けたもんじゃない。駅舎の撮影だけして引き返した。

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 青空に赤い『釧路駅』の表示が映える。

正月から日本海側やオホーツク海側は荒天が続いていて、JRの特急が運休になったりしていた。
昨日も釧網線の網走〜川湯間は始発から運休、15時から運転再開となっていたのでどうなるかと心配していたが、今日は平常通り運行しているようで一安心だ。

それでも明日はどうなるか保証はないが。


posted by pupupukaya at 22/01/16 | Comment(0) | 道東の旅行記

2021年 北東パスで道東旅行3

おはようございます。
7月21日水曜日。

今日も無駄に早起き・・・と言いたくなるようなガス(霧)の根室。

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 ガス(海霧)がかかる午前5時の根室の朝。

昨日と同じように散歩に出てみる。

北海道の太平洋岸はガスに包まれることが多い。
湿っぽい冷たい空気。

なんとなく根室本線終点の看板の前に来たら、ガスに霞んだ列車が見えた。
5時31分発釧路行き。
昨日釧路から着いた最終列車が夜を明かして一番列車として折り返す。

ここから望遠で撮影するとインスタ映えしそうな画像が撮れた。

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 ガスに霞む根室駅。


◆ 根室 8:24 → 釧路 10:53【5626D】

8時、ガスは晴れたが曇り空。
ホテルをチェックアウトして根室駅へ。

このあとバスで納沙布岬へ行こうとも思ったが、8時24分発釧路行に乗ることにした。
この天気では岬へ行っても何も見えまい。

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 さいはて感漂う根室駅。

根室駅ってどこかJR北海道から独立したような印象を受ける。
例えば改札口上に掲出してある時刻表は根室駅オリジナルのものだ。

発車時刻だけでなく、釧路到着時刻と接続する特急の時刻まで書いてある。
今はどこの駅でも統一したデザインのものばかりになったが、ここのは頑として根室駅オリジナルのものとなっている。

そういえば、かつては市販の時刻表に無い通学列車というのもあった。


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 根室駅の改札口と時刻表。

あと珍しいのは花咲線の装飾がされた食品自販機。
売っているのはお菓子や菓子パンだが、待合室のキヨスクがなくなって、近くにコンビニもない根室駅ではとても良いサービスだ。

これは根室駅のものではないようで、自販機には地元のパン屋の名前が表示してあったので、そこの持ち物らしい。

いつの間にか待合室の入口横に駅弁の箱を置いた立売りの人がいたので箱を覗いてみる。
置いているのは鉄道グッズや珍味。駅弁はなかった。

売り子の兄さんは鉄道グッズをあれこれ勧めてくる。
う〜ん、そういうの集める趣味は無いしな・・・。

だけど何も買わないのも悪い気がして、さんま魚醤仕上げという珍味を1品買う。

「600円だけど、500円でいいですよ」
と売り子の兄さんは言った。

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 立売りがある根室駅待合室。

朝5時過ぎに根室駅に行ったときは、改札口に10人以上も並んでいて、朝早くからずいぶん乗る人がいるんだなと思ったが、今度は10人もいない。

8時10分過ぎに改札が始まって車内へ。
乗客の多くは荷物も少なく、地元の人ばかりのようだ。

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 根室発車時はガラガラだった。

発車前に運転士がアナウンス。
「眺めの良い区間では速度を落として運転します」
「花咲線からの眺めをゆっくりご堪能ください」

この列車が時刻表には3/13から6/30まで時刻変更の表示がある列車で、通常運転に比べて釧路着が8分繰り下がっている。
なぜこの列車が選ばれたのだろうか。

まさか一番利用客が少ないからと言いたくなるほどガラガラのまま根室駅を発車する。

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 駅員に見送られて根室を発車。

1つ目の徐行区間は落石〜別当賀間
太平洋を望む高台を通る、花咲線一番の絶景の場所。

また後ろの展望窓から眺める。
速度は30km/h。

昨日は80km/h近くで駆け抜けた区間を、海と緑の丘陵を眺めながらゆっくり進む。

丘の上には撮り鉄さんが1人小さく見えた。

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 落石〜別当賀間の絶景区間。

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 海と反対側の風景も捨てがたい。

内陸に戻ると列車は速度を上げて、別当賀へと急ぐ。

根室から50分、距離にして44.9km走って厚床着。
ここで地元の客が2人降りて行った。

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 使われなくなったホームが草に埋もれる厚床駅。

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 停車駅ごとに1人2人と乗り降りがある。姉別駅。

2つ目の徐行区間は糸魚沢〜厚岸間
ここの見どころは別寒辺牛湿原と厚岸湖。

別寒辺牛川の鉄橋を渡ったあたりから湿原の中を走る。

この辺りの景色を見ていたら、5年前に旅行した白夜の北欧の風景と重なる。

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 茶色く濁った別寒辺牛川を渡る。

湿原はだんだん干潟になって厚岸湖のほとりに出る。

釧網本線を走るノロッコ号なんて目じゃないよ。
こっちの方が3倍くらい素晴らしい。

一度でいいから花咲線を走るノロッコ号に乗ってみたい。

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 別寒辺牛(べかんべうし)湿原もゆっくり堪能できた。

ところで昨日釧網本線で釧路湿原を通った時から気になっていた花があった。

線路脇にピンク色の穂のような花がいくつもいくつも咲いている。
花咲線の線路脇でもたくさん見かけた。

どの列車もすっ飛ぶような高速で走るので、線路脇に咲いた花を写すことができなかったが、こうしてゆっくり走ってくれるおかげで撮影することができた。

ネットで調べたら、その花の名は『ホザキシモツケ』ということだ。

涼しい気候の湿地帯を好む植物らしい。
一時は絶滅危惧種に指定されたこともあるようだが、それにしては昨日からたくさん見かける。

線路脇を好んで育つ植物なんだろうか。

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 線路脇はどこもホザキシモツケのピンク色の花が満開だった。

湿原と湖の風景に堪能して厚岸に着く。
ここで乗客は何人か入れ替わる。途中から乗ってきた人は釧路まで行くのかと思っていたが、意外とそうでもないようだった。

厚岸は駅舎側のホームに発着する。
昔は跨線橋を渡った島式ホームから上下列車が発着していた。
それでは不便だからと新たに作られたホーム。

今から思えば、厚岸駅もずいぶん思い切った工事をしたものだ。

厚岸からは釧路の通勤通学圏。
乗客も少し都会っぽくなる。

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 厚岸駅に到着。

3つ目の徐行区間は厚岸〜門静間

ここの見せ場は昆布干しというわけか。
線路脇の石浜で、せっせと昆布を干している。

線路脇で昆布干しをしている所といえば、ここと今はなくなっちゃったけど日高本線の東町〜日高幌別間くらいだろうか。
働いている人からすれば、こんなもん見世物にするなよと言われそうだ。

空けた窓からは磯の香りが入って来る。

海から離れると昆布干しが見られるのも終わりと思っていたら、門静駅の裏側は広大な昆布干し場になっていた。

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 浜での昆布干し。厚岸〜門静間。

根室を出たときは雲が覆っていた空は、厚岸まで来たら青空になって日が照るようになった。
また暑い世界に戻ってきたようだ。

ここからは暗い森ばかりが続くようになって退屈になる。

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 ちょこんと置かれたような尾幌駅の貨車駅。

武佐、東釧路と都会の客を乗せて終点釧路着。

昨日の釧網本線と違って観光客が少ないせいか、花咲線の車内は何となく垢抜けない気がした。
それがローカル線ぽくて良いところでもあるのだが、経営的には厳しいところ。

釧路湿原、摩周湖、知床、流氷と名前だけでお客が呼べる釧網本線に対し、花咲線は何もないからねえ。
観光路線として存続の目がある釧網本線に対して、花咲線の将来は厳しい

個人的には釧路から先の線のどちらか選べと言われたら、
釧網本線より花咲線の方を選ぶ

知る人ぞ知る穴場的な絶景路線としておススメしたい花咲線だ。

何とか花咲線の起死回生策はないものか。

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 終点釧路に到着。

で、釧路着。
ここからどうするのかというと、特急で札幌に帰ります。

実は6月中にえきねっとで、おおぞら8号の『トクだ値50』を予約していた。
釧路〜札幌間が片道4990円。

安くなったものだ。
札幌と道東を結ぶ交通機関がJRの独断場だったのは昔の話。

道東自動車道は釧路の1つ手前の阿寒まで来たし、釧路空港は羽田や関西からLCCが就航するようになって、車と飛行機とJRのつばぜり合い状態。

そこへ高速バスや夜行バスも加わるのだから、JRも大変だというのがこの値段からわかる。

でも利用者からすれば安いことはありがたいことで、私もこの値段を見つけて車を置いてJRにしようと決めたものだ。

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 釧路〜札幌間がトクだ値50で4990円。

1番ホームには11時24分発のおおぞら6号が入線。
この列車で帰りたいが、トクだ値は列車の変更ができないので次の8号まで待つしかない。

どこか見物でもしてこようと駅を出て歩く。

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 釧路駅は4階建ての立派な駅舎に道東の中心都市を思わせる。

日差しの下を歩いていると暑い。
駅前から幣舞橋に向かって歩いてみたが何もない。誰も歩いていない。

中心部から商業施設が撤退し、新しいチェーンホテルばかりが目立つのはどの地方都市も一緒のようだ。

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 人のいない釧路市中心部。

幣舞橋まで来てみたけれど、何もなし。

橋の向こうの花時計の上に展望台らしきものが見えたけど、あそこまで歩く元気もなく、また駅へ引き返す。
丸井の跡はどうなったのか回り道してみたが、相変わらずの廃墟だった。

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 誰もいない幣舞橋。


 ◆ 釧路 13:42 → 札幌 18:03【おおぞら8号】

北東パスの使用はここで終わり。
ここからは星雲間を跨ぐような壮大なワープとなる。

帰りは駅弁を食べながら酒を飲む、飲み鉄で行こうと思っていた。
前回冬に釧路に来たときは駅弁は完売となっていたが、今日は豊富に置いてあった。

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 四季彩館で売っている釧路駅の駅弁。

幣舞橋まで往復してきただけで、あとは時間を持て余してしまった。
四季彩館で駅弁と酒を仕入れ、あとは待合室で過ごす。

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 改札口前の吹き抜けコンコース。

13時過ぎ、ルパン三世のラッピングトレインが入ってきた。
時刻表を見ると13時26分発根室行とある。

待合室にいるのも飽きたし、ホームで列車を眺めていることにした。

13時16分には帯広からの普通列車が到着。

キハ40形2両編成。
車両の所属表記を見たら、なんと札トマ(苫小牧運転所)。

どうやってここまで遠征してきたんだろう。

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 根室行きのルパン三世ラッピングトレイン。

13時20分、おおぞら8号入線。
入線というか、札幌発のおおぞら3号の折り返しになるのだが。

車内清掃のために乗車はしばらく待たされる。

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 261系のおおぞら8号。

新型コロナによる乗客減で特急の減車が続いていた。
今年3月のダイヤ改正から、おおぞら号も正式に減車となり5両編成となっている。

かつては常に増結してどの列車も8〜9両編成で走っていたし、最大で11両というのもあった。
もうそんな長編成が見られることもないんだろうな。

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 どこか地平時代の札幌駅1番ホームを思い出す釧路駅1番ホーム。

しかしたった5両で指定席は2両だけとあっては、時間帯によっては混雑すことになる。
このおおぞら8号もえきねっとで予約状況を調べたら結構混んでいた。

しかも帯広で隣人が現れることになっている。
カップ酒2本飲んで、その頃には眠っていよう。

指定された席に座る。

汚ったねえ窓だな(#^ω^)

小さいシミが一様にこびりついている。

JR北海道の車両のいちばん残念なのが窓の汚さ。
ぼろ車両でガラス自体が変色してしまったようなのは仕方がないが、特急でしかも新しめの車両でこれではがっかりだ。

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 汚れた窓。

この窓を見ただけで、即飲みたくなってきた。

釧路駅の駅弁はかに飯
函館行き以来カニばかり食べている気がする。

お酒は福司のカップを仕入れてきた。
これは釧路の地酒。

長万部、網走と続いてカニ系の弁当は3つ目。
ここ釧路のかに飯が一番味が濃かった。

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 釧祥館のかに飯と福司のカップ。

ゴミ捨てとトイレに席を立つと、ほとんどの列がふさがっているくらい混んでいる。
帯広からまた乗ってきたら満席ちかくになるんじゃないか。

ソーシャルディスタンスの観点からすれば減車しないで、程よく間隔をあけた席になるように運行した方がいいんだろうけど、他の列車の乗車率を見れば仕方ないのかも。

反対に自由席は2両もいらないほど空いていた。

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 5両編成とあって、乗車率だけは結構なものだった。

さて、帯広到着。
指定席の1、3号車の乗車口は長蛇の列ができていた。
ビジネス風の人が多い。
そういえば今日は平日だったのを思い出した。

果たせるかな、帯広で隣人が現れた。出張帰りみたいな感じ。

彼は腰を下ろすと、しばらくしてスーツケースを持ってどこかへ行ってしまった。
どうやら空いている自由席に移動したようだ。

おお隣人よ、それは賢明な判断。

そこからはずっと眠っていて、気づいたら追分だった。

南千歳駅手前に見えるレンタカー村は、広い敷地に車が所狭しと並んでいるのが見えた。
本来ならば貸し出して道内各地を走っていたはずのレンタカーだ。

GoToトラベルキャンペーン再開はGWの頃は夏休みに期待しましょうなんて言っていたけど、どうやら夏休みもダメっぽい。
秋に・・・といいたいところだけど、それも期待薄な状況になりつつある。

北海道は緊急事態が解除されて旅行客が多くなってきているけど、レンタカー村を埋め尽くす車を見ると現状を思い知らされる。

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 夕方ラッシュの札幌駅に到着。

新札幌駅のホームはちょうど帰宅ラッシュの時間帯。
休みをいただいて、道東を普通列車で1周して戻ってきたら、場違いな場所に来てしまったような感覚だ。

あと9分で終点札幌。
着いたらラッシュの地下鉄で帰ることになる。

明日からは移動した海の日とスポーツの日の4連休。
世間様は休みになるけど、もうどこへも行きません。

夏休みにお盆休み。
こんな時期に旅行などするものでなない。

私の旅行は秋までお休みとさせていただきます。

〜北東パスで道東旅行 おわり

posted by pupupukaya at 21/08/11 | Comment(0) | 道東の旅行記

2021年 北東パスで道東旅行2

おはようございます。
7月20日火曜日。

今日も雲一つない快晴。
暑くなるのはいやだけど、旅行中は天気が良いに越したことはない。

今日は10時24分発の釧網本線普通列車で出発して根室まで行く予定。

昨日が朝早かったから、2日目はゆっくり寝ていられるなと思っていたが、5時前には目が覚めてしまった。
しょうがないので網走川沿いに散歩に出た。

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 鏡面のような網走川。

ホテルに戻って、もう一度寝たり朝湯に入ったりして過ごす。
せっかくの旅行なのに時間の無駄遣いだと思うが、暑い中歩くのも面倒だし、観光だったら今度車で来た時にすればいいという思いの方が先に来る。


 ◆ 網走 9:24 → 東釧路 10:24【しれとこ摩周】

部屋でぼ〜っと過ごして、9時半にチェックアウト。
中心部に近いホテルから網走駅へは歩いて7〜8分。

網走駅ってのは昔から街からそっぽを向かれたような場所にある。
駅前は全国チェーンのビジネスホテルとこれまた全国チェーンの飲食店ばかりが進出している。

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 網走駅は石北本線の終点、釧網本線の起点。

せっかく網走駅から列車に乗るのだから、ぜひ調達しておきたい駅弁があった。
それは、かにめし。
道内の駅弁にかにめしは多くあるけれど、私はこの網走駅のかにめしを1番に推したい

まだ10時前だし、特急は12時までない。
やってるかなと思っていたけれど、ちゃんと店は開いていた。

出張販売に特化して駅売りを忘れた駅弁屋が多い中で、ここのモリヤ商店だけは頑固に駅売りを守っている。

誰もいないので、
「すいませ〜ん」と声をかけると奥から
「ちょっとまってね〜今行くから」

相変わらずの頑固そうな親父(おやじ)が出てきた。
「かにめしください」と言うと「990円」
あ、あとお茶も貰おうと隣の冷蔵ケースを開けようとしたが開かない。

「お茶?あ〜カギ空けてあげる」
「え〜とお茶とで1150円」

財布を見ると千円札は1枚、小銭は150円分も無かった。
仕方なく万券を出す。

親父の目つきが曇って、
「ちょっとまって」と言って奥に行ってしまった。
しばらくして戻ってきてお釣りの千円札を1枚ずつ数えだした。

いいね、駅弁屋の頑固親父 (^^)/

何だか昭和時代から時が止まったような親父だった。

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 網走駅で頑張るモリヤ商店の売店。

3番ホームに見えた釧路行快速『しれとこ摩周』号は1両だけ。
待合室やコンコースにいる人たちは旅行者風の人ばかり。

きっとしれとこ摩周号の客だなと改札口の前で並んでいたが、10時過ぎに遠軽行きと同時に改札が始まると、意外や意外乗客はほぼ二手にわかれた。

改札が始まった時点でのこちらの乗車率は2人掛けシートが半分ほど埋まったくらいだった。
すいているのはありがたいが、観光路線ということを考えればちょっと寂しい。

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 1両の快速しれとこ摩周号。

そのあとに地元客が何人か乗ってきたが、まだまだ余裕の車内だった。

発車まであと2〜3分となったところで、小学校低学年くらいの団体さんが改札口から跨線橋へ駆けて行く姿が見えた。
付き添いの大人も含め、その数ざっと20人。
当然ながらその全員が乗ってくる。

相席にこそならなかったが、車内はそこそこの乗車率となった。

やれやれ、車内も騒がしくなった。
まだこの先乗って来るかもわからないので、昼食にはだいぶ早いがさっき買ったかにめしを食べてしまおう。

さっき網走駅のかにめしが1番と書いたけど、このかにめしが一番カニの味がすると思う。
カニの煮汁と醤油で炊いたご飯と薄味だけどカニの風味が生きているカニフレーク。

モリヤ商店のHPを見たら、網走駅のかにめしは昭和14年から発売とある。

かにめしの代名詞と言えるほど有名な長万部のかにめしは昭和25年から発売とあったから、かにめしに関しては長万部よりも老舗(しにせ)ということになる。

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 モリヤ商店のかにめし。

この列車は快速列車を名乗るが、1つ1つ各駅に停車する。

通過する駅は細岡の1駅だけという、

どこが快速やねん (# ゚Д゚)
とツッコミたくなる列車。

1つだけ快速らしいところは、網走〜釧路間の所要時間が3時間12分と下り列車の中では最速というところ。

まあこれも、普通列車の削減で時間帯の近い各駅停車と統合されたことや、通過駅だったいくつかの駅が廃止されてしまったという経緯があってのこと。

各駅に停車するが乗り降りは無し。
ようやく原生花園駅のホームに何人かの姿が見えた。
また増えるのかと思ったが、到着すると子供の団体さんが一斉に席を立った。

ホームにいた人たちのほとんどはこの列車の乗客ではなかった。
写真を撮ってたりするので、車できた人たちだ。

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 原生花園駅で子供の団体さんは下車して行った。

団体さんがいなくなると、また余裕の車内となった。
だんだん気温も上がってきて、天井の扇風機がブンブンと回る。

特急のお下がりのリクライニングシートと『JNR』マークが付いた扇風機の対照が際立つ。

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 リクライニングシートが集団見合い型で並ぶ車内。

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 天井でブンブン回る扇風機。

ごみ箱に弁当がらを捨てにデッキへ行くと、車両後部は貫通路部分まで立ち入れるようになっていた。

昔はロープなど張られておらず、自由に立入りし放題・・・ていうかデッキの一部分となっていた場所だが、今はうるさくなって、ロープを張って立入禁止としていることが多い。

貫通路の窓はちょっとした展望窓だ。
これはいいと、景色の良い所に差し掛かったら、ここの展望窓に来て景色を眺めることにした。

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 車両後部の貫通ドアからの展望が素晴らしい。

止別〜斜里間はオホーツク海が続く区間。
2月か3月で運が良ければここから真っ白い流氷が見ることができる区間。

今時期は・・・ただの海岸だな。
曇っていて知床連山も見えないし。

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 オホーツク海を望む止別〜斜里間。

知床斜里で3分停車。地元客らしい人が何人か入れ替わった。

上りしれとこ摩周号と交換待ち。
窓からカメラを構えていると、しばらくして入ってきた。

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 知床斜里駅で上りしれとこ摩周号と交換。

知床斜里から札弦までは斜里平野の畑作地帯が車窓。
時おり果てしなく続くジャガイモの花の広がりが現れる。

停まる駅ごとに地元客が降りて、だいぶ空席が目立つようになった。

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 じゃがいもの花が満開。中斜里〜清里町間。

緑〜川湯温泉間の14.5kmは峠越えとなる。
所要時間は18分。
並行する道路もなく、ひたすら深い森ばかり続く区間。

自席から景色を眺めても面白い区間ではないので、後ろの展望窓からずっと峠越えを見ていた。
25パーミルの上り勾配では50km/hで走行する。

強力型のキハ54らしくない走り。
昔ここを通った時は70km/hで登っていた記憶があるから、ずいぶんスピードダウンしたものだ。

釧北トンネルを抜けると今度は下り坂をブレーキをかけて駆け降りる。

時どき、ピーピーピーと汽笛が鳴ってブレーキがかかる。
シカかと前を覗くが、それらしき姿は見えない。

運転士にとってはこの辺りは野生動物には神経を尖らすことだろう。
撥ねたとて過失に問われるものではないにしろ、撥ねたら後処理もしなければならないし、ダイヤも乱れる。

幸い何事もなく川湯温泉駅に着いた。

ここからは温泉帰りらしい人が何人か増えた。

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 山小屋ふうの川湯温泉駅(昭和11年建築)は一度降りてみたい。

峠越えのあたりは冷たい風が入ってきたが、山を下るごとに気温が上がってくるのがわかる。
オホーツク側では曇り空だったが、釧路側は青空の方が多くなってきた。

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 開けた窓から吹き込む風が涼しい。

摩周駅が近づくとホームに10人ほどの乗客の姿があった。
ここは摩周湖、屈斜路湖、阿寒湖といった道東の名だたる観光地の拠点となる所になる。

観光の拠点と言ってもそれは車の場合で、各観光地を行き来すると必ず弟子屈を通るからだ。

摩周湖にあやかって摩周駅と名乗るようになったが、どうも摩周駅と聞いてもピンとこない。
昔は弟子屈駅といった。町名は今でも弟子屈町だ。

JRとしては一大観光地のアクセスとしてPRしたいところだろうけど、列車を摩周で降りても各観光地へのアクセスは良くない。
定期観光バスも釧路発着だし、レンタカーだって釧路か網走で借りるだろうし。

それでも駅員配置駅で、鉄道としてはそれなりの拠点駅となっている模様。

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 摩周駅は観光の拠点駅。

摩周からは再び観光列車らしい車内となった。
と言っても1両だけなので、全部で20人程度でしかない。

標茶からは釧路湿原の風景を楽しみたい。
地図を見ると、標茶から東釧路までずっと釧路湿原に沿って走るように思えてしまうが、実際は湿原の平原を見られる区間は限られている。

釧路湿原を眺められる区間で1番おすすめなのが茅沼〜塘路間
ここが列車の左右両方に大平原を眺めることができる。

しかし定期列車の悲しさ、ここを列車は全速で駆け抜けてしまうのだった。

ノロッコ号ならばゆっくり走ってくれるんだろうけど、ノロッコ号は塘路で折り返してしまうので、ここを通らない。

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 緑一面の大平原、釧路湿原の中を行く。茅沼〜塘路間。

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 塘路川の鉄橋を渡る。左に見えるはエオルト沼。

2番目におすすめな区間は塘路〜細岡間
ノロッコ号でもいちばんの見どころとされている区間。

ここは茶色く濁って蛇行する釧路川が見どころ。
川に浮かぶカヌーに手を振ったりして。

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 釧路川とカヌーの人たち。塘路〜細岡間。

それ以外の区間はハンノキが茂って、林ばかりという風景となる。
このハンノキは湿原の乾燥を促進する、釧路湿原保全にとっては厄介な存在となっているらしい。

釧路湿原〜遠矢間も湿原が見えるが、釧路の市街地も近いせいか人工物も目に入るようになる。

遠矢からは釧路の市街地となる。
国道が並行し、車と並走する。網走から乗っていると久々の都会に来たという感じになる。

終点の釧路までは行かず、1つ手前の東釧路で降りる。

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 花咲線と合流して東釧路駅に近づく。

東釧路で降りたのは、ここから根室行に乗り換えるためで、今まで乗ってきたしれとこ摩周号と根室行普通列車がこの駅で交換するからだ。
東釧路で釧網本線と花咲線が合流するが、ここから釧路までの区間は単線となっている。

運転士に北東パスを見せてホームに出ると、しばらくしてから根室行きが入ってきた。


 ◆ 東釧路 11:16 → 根室 15:57【5631D】

入ってきた列車は同じキハ54形ながらホワイトとスカイブルーの見慣れない車両。

しれとこ摩周号からの乗り換え客3人ほどと共に車内へ入る。
予想に反して車内はすいていた。
総勢12〜3人といったところ。

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 東釧路駅で花咲線に乗り換え。

座ると、足元の壁面に流氷のイラストが描かれている。
これは『流氷物語』号の車両ではないか。

流氷シーズンになると、網走〜斜里間に流氷ノロッコ号が運転されていたが、機関車の老朽化のために2016年の運行を最後に取りやめになり、代わりにこの車両を使用して流氷物語号として運転されるようになったもの。

夏の間は出番がないので、こうして他の車両と区別されることなく運用されているのだった。

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 根室行5631Dは流氷物語号の車両だった。

花咲線では南側の方が景色が良い。根室行きならば進行右側となる。
ずっと無人の山の中を走ってきて、右手に厚岸湾と厚岸の町が見えてくる。

厚岸でけっこう降りるのかと思っていたが、そうでもなかった。
地元の人が何人か降りて、それと同じくらいの人がまた乗ってきた。

車内が観光客や鉄ちゃんばかりというのも嫌だけど、ほとんどがら空きというのも将来が暗くなる。
こうして地味ながら区間利用があるのは心強い。

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 厚岸駅を発車。

厚岸を発車してから、荷物を持って席を後部のロングシートに移した。
花咲線の絶景区間はここから始まる。

クロスシートから片側だけ眺めていたらつまらない。
窓を開けて左右両方、最後部の展望窓からの風景を楽しもうというわけだ。
ロングシート部分は誰もいないし。

厚岸を発車しての見どころは窓のすぐ下から広がる厚岸湖。
だんだん干潟が多くなって鉄橋を渡ると別寒辺牛(べかんべうし)湿原の中を通る。

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 厚岸湖のほとりを行く。(厚岸〜糸魚沢間)

別寒辺牛湿原はラムサール条約にも登録されている立派な湿原。

釧路湿原の雄大さには欠けるれど、眺めをさえぎるハンノキがなく、川がいく筋も入り込んだ独特の風景はどこかメルヘンチックでもある。

そんな風景が糸魚沢まで続く。

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 別寒辺牛(べかんべうし)湿原の中を行く。

次の茶内では
「上り列車待ち合わせのため4分停車します」のアナウンス。

花咲線も数年前に列車本数が削減されて、今は釧路〜根室間の全列車が茶内で交換するダイヤになっている。

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 茶内駅で釧路行5630Dと交換。

厚床はかつて標津線が分岐していた。
標津線があった頃は1番から3番ホームまであり、2番が標津線用ホームだった。
あの頃は木造駅舎で、待合室にキヨスクがあって駅弁も置いてあったのを思い出す。

それなりに主要な駅だったし、標津線廃止後も厚床始発の列車があったりしてそれなりの面目を保っていたが、これも列車削減のあおりで交換設備の使用が停止されて棒線駅となった。

またいつか復活することも見込んでいるのか、ポイントや線路はそのまま残っているし、信号機も点灯していた。

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 棒線駅になった厚床駅を発車。

厚床駅の前後は牧場があって開けているが、また森の中を走る。

別当賀を出てしばらくすると森が開けて草原に出る。
後方からの眺めをみていると、太平洋に面した海岸段丘の上の、馬の背のようなところを線路は通っているのがわかる。

進行右側に見えるはずの落石の町や落石岬は、この時期特有のガス(海霧)に煙っていた。

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 落石湾を見下ろす崖上を行く。別当賀〜落石間。

落石からも展望窓からずっと後面展望を眺めていると、落石の町を覆っていたガスがもうもうと湧いて、この列車を追いかけてくる。
後ろから眺めていると、まるで迫りくるガスから逃げるように走っているようだ。

貨車駅とホームを通過する。
これが花咲駅跡かと思ったが、これは西和田駅だった。
この列車は西和田駅だけ通過する。

廃止された花咲駅の跡は目を凝らして見ていたがわからなかった。

終点1つ手前の東根室は日本最東端の駅。

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 日本最東端の駅、東根室駅を発車。

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 終点根室駅に到着。

花咲線の旅は長い。
釧路から2時間31分(東釧路からは2時間26分)かかって終着の根室駅に到着。

根室駅が札幌から一番遠い終着駅だ。
札幌から483.9kmという距離もあるが、札幌から直通列車が無くて、必ず釧路で乗り換えなければ着くことができないのも距離以上に遠く感じる。

こう言っても過言ではない。

根室駅は日本一遠い終着駅!

根室駅のホーム端から130mほど線路は続いていて、その終端が花咲線・・・正式には根室本線の終点となる。

稚内駅の終端は日本最北端の線路を名乗るが、根室のここのは最東端の線路ですとはならない。

なぜなら、この線路の終端は西側を向いているから。

犬が西向きゃ尾は東。

わかったようだが何だかよくわからないのが根室本線の終点なのだった。

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 根室駅の線路終端にある『根室本線終点』の看板。

今日の宿は根室市内のホテルを予約してあった。

イースト・ハーバーホテル
値段だけ見ると根室市内でも1・2位というホテルのようだ。

根室はホテル代の高いところで、網走にあったようなチェーンホテルや廉価なビジネスホテルが無い。
あとは旅館か民宿ということになる。

1泊1万円以上出して2食付きにしてもいいかなとも考えたが、煩わしくないホテルがいいと、ここにしたわけだった。

1泊7810円

チェックインして渡されたキーの部屋は2階の一番奥。
端っこの部屋になるほど混んでるのかと思って部屋に入ると、机の上に灰皿が置いてあった。

そうだ、すっかり忘れてた。

予約したときに喫煙部屋しかなかったのでそれで予約していた。
仕方ないので、チェックインのときに禁煙室に変えてもらおうと思っていたのだ。

んもー!ヤニ臭い!

こんな部屋で1晩過ごすと思ったらうんざりしてきた。

もう部屋に入っちゃったから変えてはくれまい。
そもそも自分のミスなので仕方がない。

この世からタバコなんてなくなってしまえ!

心底からそう思った。

部屋に空気清浄機が置いてあったので、これを最大にしてつけてみる。
壁や床にしみ込んだ臭いが消えるわけではないが、気休めにはなる。

今夜の夕食は根室のスーパー、マルシェ・デ・キッチンで買ってきた。
花咲ガニから根室のお土産まで揃う便利な店。

花咲ガニのむき身があったので、海鮮ちらしと合わせて花咲ガニ海鮮ちらしにしてみた。
お酒は根室の地酒北の勝。

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 本日のディナー。北の勝と海鮮ちらしに花咲ガニ。

窓の下は駐車場になっていて、いつの間にか満車になっている。
結構道外ナンバーやレンタカーが目立つ。

緊急事態宣言が解かれてから道外から観光客が来るようになったんだね。
いいのか悪いのかはわからんけど。


posted by pupupukaya at 21/08/07 | Comment(0) | 道東の旅行記

2021年 北東パスで道東旅行1

7月16、17日の2日間は北東パス(北海道&東日本パス)を使用して函館へ行ってきましたが、この切符は7日間有効。
せっかく1週間まるまる休みになったことだし、今度は道東へ行くことにしました。

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 7日間有効の北海道&東日本パス。

数年前の普通列車削減で、普通列車同士の接続がものすごく悪くなっている。
札幌を朝一に出発しても、釧路も稚内も着くのは暗くなってからになる。

しかし石北本線だけは例外で、上川〜遠軽間の普通列車時刻が大幅に繰り下げられたおかげで、札幌朝6時発の普通列車で札幌を発つと、程よい乗り継ぎで網走には16時01分に着くことができるようになった。

そこからは釧網本線に乗り継ぎができるので川湯温泉あたりまでは行こうとも考えたが、あまり欲張らずに今日は網走に泊まることにした。
不測の事態ということも想定しなければならないし、余裕を持ったプランにするのも普通列車旅行のコツである。

2021/7/19 札幌→網走 乗継ぎ
列車名 923D4523D4623D4663D
札 幌6:00   
旭 川8:539:19  
上 川10:2711:10 
遠 軽 12:4113:00
網 走  16:01

というわけで、初日は以上の乗り継ぎプランを立ててみた。


 ◆ 札幌 6:00 → 旭川 8:53【923D】

函館行きと同じく朝6時発の列車に乗るべく、早起きして歩いて札幌駅へ。
5時50分過ぎに札幌駅8番ホームに行くと、旭川行普通列車はホームに入っていた。

苗穂運転所のキハ40形2両編成。
実は国鉄型の普通列車が札幌駅に発着するのは、この列車が唯一で、今となっては貴重な列車となってしまった。

車内は半分以上のボックスが埋まる程度の乗車率。
どこまで行くのか、私のような乗継ぎ旅行と思しき人もチラホラと。

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 2両編成の旭川行923D。

札幌駅を発車した923Dは函館行特急北斗2号と同時発車。
出足は特急の方が早かったが、構内はずれでこちらが特急を追い抜く。

勝負あったと思った苗穂駅の手前で、特急北斗は勢いよく抜き去って行った。
金曜はあっちから見た光景が今日も繰り返されるのだった。

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 札幌を発車すると特急北斗2号を追い抜く。

苗穂、白石と乗ってくる人が多い。ほとんどが通勤通学の人たち。
いつもの利用者からすると、なんで朝一のだけはボロい車両で来るんだろというところ。
朝早いからあまり影響はないだろうけど、唯一の非冷房車でもある。

岩見沢で7分停車の間に、札幌6時35分発の特急ライラック1号に抜かれる。
6時までに札幌駅に行けない人は、札幌〜岩見沢間1600円別払いでワープするのもアリだろう。

岩見沢で乗客がほぼ入れ替わって発車する。
奈井江と砂川で通学生が大勢乗ってきて、通路まで立ち客となる。

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 滝川が近づくと通学生がたくさん乗ってくる。

滝川でほとんど降りて、地味にまた通学生が乗って来る。
深川や納内までの通学生。

その深川や納内からも旭川へ行く地元の利用客があって、旭川まで地味に活気のある列車だった。


  ◆ 旭川 9:19 → 上川 10:27【4523D】

旭川駅の乗り換え時間は26分。
一旦改札を出て1階コンコースへ。駅弁を買いたかったからだ。

旭川を平日の9時台発ということと、青春18きっぷシーズンも夏休みもまだ先ということから、上川行普通列車はがら空きと読んでいた。

ところが駅弁屋はまだ開いていない。
仕方なく、改札口横のセブンイレブンでジュンドッグとビールを買う。

店員が「ジュンドッグあたためますか?」というので温めてもらったがこれが失敗だった。

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 高架になってからガランとした印象になった旭川駅。

9時05分過ぎに5番ホームへ行くと上川行が入っていた。
今度は1両だけ。しかも意外と混んでいる。

後ろの方は幼稚園児とその引率の団体さんで賑やかだ。
それでも空いているボックスがまだあったのでそこに陣取る。

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 『上川−旭川』のサボ。

発車までまだ10分以上。
まだ乗ってきそうな感じもするので、ジュンドッグを食べてしまおう。
ビールを飲める雰囲気ではなかったが、ぬるくなるし持ち歩くのも嫌なので栓を開けてしまった。

ジュンドッグとはチキンカツやエビフライをご飯でくるんだ棒状のおにぎりのようなもの。
これをさっきチンしてもらったのは失敗だった。

熱くて持てない・・・ (ToT)
アッチッチ・・ビールグビグビなんてやっていたら、特急で着いたらしい人たちがまた乗ってきた。

クールビズのビジネス客らしい人たちも混じっている。
ビールは隠すようにして一気に飲み干してしまった。

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 熱々のジュンドッグとサッポロクラシック。

1両の列車は幼稚園の団体、地元の利用者、特急からのビジネスマン、それに普通列車乗継旅行組を乗せて賑やかに行く。

朝からビールを飲んで火照った体に窓からの風が当たって気持ちが良い。
列車の窓を開けて風に当たるなんてことも、あと数年もすれば貴重な体験になってるかもしれないな。

宗谷本線旭川〜名寄間のほとんどの列車はエアコン完備のH100形に置き換わっている。

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 すっかり立派になった宗谷本線と分かれる。

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 東旭川駅で特急オホーツク2号と交換待ち。

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 賑やかな園児たちは当麻で降りて行った。

幼稚園の団体は当麻で全員下車。それ以外の地元客も停車駅ごとに降りて行く。
上川まで残ったのは10人ほどだった。
このほぼ全員が、上川から遠軽行きへの乗り継ぎ組だろう。


 ◆ 上川 11:10 → 遠軽 12:41【4623D】

上川駅到着後は乗客全員が一旦駅の待合室へ。

今乗ってきた列車が上川駅でそのまま遠軽行に変身するのかと思っていたが、そうではなかった。
10時42分に旭川行となって折り返して行った。

改札口に『遠軽行』の札が下がるが列車の姿はなく。

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 のりば3番に『遠軽行』の札が下がる上川駅の改札口。

どうなるのかと思っていたら、旭川方向から2両の列車が3番ホームに入ってきた。
上川駅10時58分着。時刻表にそんな列車は載っていないので、旭川運転所からの回送である。

さっき乗ってきた4523Dに併結すればいいんじゃないかと思うが、上川駅で切り離し作業が発生することを考えれば別々の方が手間が省けるということか。

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 上川発遠軽行4623Dは2両編成。

回送列車が到着すると改札が始まる。
旭川からの乗り継ぎ組10人ほどが今度の遠軽行の客となる。

2両ともキハ40形。
車両の所属は先頭のが旭川運転所(旭アサ)、後ろはなんと苫小牧運転所(札トマ)の車両だった。

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 サボ表示はなぜか『遠軽−旭川』となっていた。

私を含めた旭川からの乗り継ぎ組は2両の車内に分散して収まったので、車内はソーシャルディスタンスで過ごせるほどだ。

そのうちコアな鉄道ファンと見られるのは、一眼レフで撮影しまくっている兄さん、家族ぐるみで鉄道ファンらしい一家、それに私。

まあ呉越同舟、仲良く行きましょう。

発車時刻が近づくと1番ホームに旭川行特急大雪2号が入ってきた。
4両編成だがどの車両も片手で数えられるくらいしか乗客の姿が見えない。グリーン車に至っては無人という悲惨ともいえる乗車率。

その大雪2号が発車すると、こちらも遠軽へ向けて発車する。

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 青いボックスシートが並ぶ車内。

上川の隣駅は白滝になってしまったけど、かつては天幕、中越、奥白滝、上白滝と途中駅があり、この列車もそれらの駅に停車するただ1本だけの列車ということで希少価値があったものだ。

その途中駅も利用者がいないことから次々と廃止となってしまい、快速『きたみ』と停車駅は同じになってしまった。

並行する立派な道路は旭川紋別自動車道。
石北本線は谷間に寄り添うように北見峠へと向かうが、あっちは山も谷も構うことなく高架橋やトンネルで突き抜ける。

無料の高速道路で、私もオホーツク方面へ行くときはよく利用する道路だが、こうして鉄道の方から見ると何とも恨めしい。

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 石北本線と並行する旭川紋別自動車道の高架橋。

だんだん勾配も急になって、25パーミル区間に差し掛かると速度は20km/hまで落ちる。
これが非力な国鉄型キハ40形の限界。
上川〜白滝間は快速きたみが37分で走行しているが、この列車は50分もかかるのだった。

スノーシェルターをくぐって複線になったところが上越信号場。

特急ならば一瞬で通り過ぎてしまうが、遅い普通列車の窓からは駅舎に表示してある
『石狩北見国境標高六三四米上越駅』
の看板がはっきりと見えた。

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 木造駅舎が残る上越信号場。

石北トンネルを抜けると坂を駆け降りるようにして白滝駅へと突っ走る。
上白滝駅の跡を探したが、もうわからなくなってしまっていた。

白滝では乗降無しで発車する。
次は下白滝信号場に運転停車する。ここもかつては駅だったところで、ホームは撤去されたが木造駅舎はまだ残っていた。

3分停車で、1両の特別快速『きたみ』が走り去って行った。
特別快速と言っても、今じゃ上川〜北見間はほとんど各駅停車となってしまったが、登場したころは特急に劣らない俊足の快速列車だった。

のちに時間帯が近い普通列車と統合して停車駅が増えたことや、通過していた駅が廃止されたこともあって、普通列車とあまり変わらない存在になってしまったのは残念。

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 下白滝信号場で特別快速『きたみ』とすれ違い。

上川からはずっと高原の風だったが、山を下るにつれて気温が上がってきた。

スマホで遠軽町の気温を見ると29.3℃。
車内で窓から入る風に当たっていれば涼しいけど、外を歩いていたら暑そうだな。


 ◆ 遠軽 13:00 → 網走 16:01【4663D】

遠軽駅の1番ホームに到着。この列車はここが終点ということになっているが、乗り継ぐ次の列車は見当たらない。

改札口で、
「この列車が網走行きになるんですか?」と聞いてみたら、
「そうですが、車内整備をおこないますので・・・」

ということで一旦外に出される。

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 昔ながらの改札口。

時刻表では別々の列車として載っているが、実は同一の列車だったなんてのは別に珍しいことではない。
宗谷本線ではそんな列車はわかるように矢印で示してあったりする。

特急だと遠軽と言えばスイッチバックと悪名高き座席の回転。
あとは今は無くなった駅弁のかにめし。
車内で予約したのを受け取るシステムだったけど、ホームでも売っていた。

そうした印象はやたらあるけど、遠軽で乗り降りしたことはあまりなかった。
せっかくだから、木造駅舎の遠軽駅をあれこれ撮影して過ごす。

遠軽駅はなかなか立派な木造駅舎で、これだけの規模のが残っているのはあとは名寄駅くらいだろう。

しかし待合室にあったキヨスクが閉店してからずいぶん寂しい駅になってしまった。
横にあった駅そばの小屋はあったが、中を覗くともうやめたようだった。

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 木造駅舎の遠軽駅。

12時48分に網走行の改札が始まったので、上川から乗ってきた列車に再び乗ることになる。
車内は依然として旭川からの乗り継ぎ組の人たち。
クールビズのビジネス組の人たちはいなくなっていた。遠軽までの利用だったらしい。

ホームには電灯式のりば案内が下がっていて、律儀に『北見・網走方面』が点灯していた。

その下に『紋別・名寄方面』の文字も。

・・・・名寄本線じゃないか。

廃止になったのはもう32年前だよ。高校生だったよ。遠軽から乗ったよ。
あまりの懐かしさに号泣ものだった。

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 ホームの表示機は今でも紋別・名寄方面の表示が残る。

12時52分に2番ホームに入ってきたのは網走発遠軽行4658D。
あっちも遠軽で35分停車したのちに13時27分発旭川行4622Dとして発車するはずだ。

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 網走発遠軽行4658Dが到着。右は願望岩。

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 『網走−遠軽』に差し替えられたサボ。

遠軽からの各駅も乗る人も降りる人もいないまま進むと今度は常紋峠越え。
再び25パーミルの連続勾配で速度も20キロ台まで落ちる。

この2つの峠越えのために特急オホーツクはスピードアップもままならず、ふるさと銀河線を高速化して札幌〜北見・網走の時間短縮を図るなんて案もあったようだが実現することなくふるさと銀河線が廃止になってしまった。

留辺蘂では4660Dとの交換待ちで7分停車。
こうしたときに待ってましたとばかりに車外に出るのが一眼レフ氏、鉄道ファン一家、あと私の3組6人なのだった。

ここ留辺蘂駅も数年前に無人化されたが、特急は全列車停車だし、温根湯温泉の入口だし乗車券の販売くらいあるんじゃないかと駅舎に入ってみたが、無残にも窓口はふさがれていた。

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 ホームは立派だが無人駅の留辺蘂駅。

北見に到着。
網走までここからまだ1時間以上かかるが、北見の文字を見たらあと一息だという気持ちになる。
オホーツク総合振興局は網走にあるが、北見がオホーツク地方の実質中心ということもある。

ところがそうすんなりとは行かせてくれず、ここで29分もの長時間停車。
遠軽と違ってそのまま車内にいることができるが、やっぱり全員一旦外に出る。
車内にいたって暑いしねえ。

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 オホーツクの中心都市、北見に到着。

北見で降りるのは2006年に最後のふるさと銀河線に乗りに来て以来だったなあ。
あれから15年。そういやふるさと銀河線の跡地を探すのも難しくなっちゃったね。

ちょっと駅前を歩いて来ようと外にでるが暑いのですぐに引き返した。
北見の今の気温は31.3℃。

これでもまだ涼しい方なのかも知れないね。
札幌じゃさっき35℃までいったってさ。

待合室に売店の四季彩館があったので入る。
前に来た時にここでオニオンパウダーというのを買った。北見名産の玉ねぎを粉末にしたもの。
それを手に入れようと思ったのだが、今回は置いてなかった。
何も買わずに出るのもどうかと思ったので、代わりにオニオンスープを買った。

この駅も前に来たときは駅弁の売店があり、立ち食いそば屋があり、駅に来れば一通りそろっている感があったが、今はこの四季彩館が唯一になってしまった。

次に来たときは・・・

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 待合室の四季彩館。

北見発時刻は15時00分。
14時50分に改札が始まる。

北見からは地元の乗客が増えていた。
上川からここまでがずっと鉄道ファンや乗り継ぎ組ばかりだったので、ようやく普通の列車らしくなった。

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 北見駅のコンテナ基地。秋〜春運行のタマネギ列車はここから発着。

柏陽と愛し野は通学生のための駅。15時過ぎだし、帰宅の高校生がわんさか乗ってくるのかと構えていたが、どちらも乗ってこなかった。

北見市内の高校はJR沿線に散らばっていて、そのため朝夕はその通学生の利用が多い。朝は3両編成の列車も見られる。
ローカル線を守るには北見に学べ・・・と言いたくなるほど旺盛な通学需要がある。

停車駅ごとに地元の乗客が降りて、車内は寂しくなる。

そんな中の一つ西女満別駅に停車。
ここでなんと鉄道ファン一家が降りて行った。
どうすんの?こんな駅で降りて。

地図を見たら、ここから女満別空港が近いようだ。歩いても20分くらい。

旭川からずっと普通列車乗り継いで、女満別空港から飛行機に乗る?
それしか考えられない。
どういう経緯でそうなったかは知らないが、いやはや恐れ入りました。

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 呼人〜網走間は網走湖畔を行く。

西女満別で鉄道ファン一家が降りて、ちょっと寂しく思える車内。
まだまだ日は高いが、今日1日も終わりかなという気持ちになった。

呼人を発車すると見えてくるのが網走湖。
この湖を見ると網走が近い。

16時01分、今日のゴール網走駅に到着。
札幌を朝6時に出発してから10時間、ようやく無事着いたのだった。

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 網走駅に到着。

今日は網走に泊まる。
ホテルはドーミーインを予約していた。

1泊7190円のところ予約サイトのクーポンが2000円分あったので使ったので5190円。
ホテルへは駅から歩いて7〜8分。
駅からは少し離れているが、買い物や食事はこっちの方が便利。

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 網走川と本日の宿。

部屋に荷物を置いたら買い物へ。
橋を渡ってすぐのところにベーシックという網走のスーパーがある。以前何回かここで夕食を仕入れたことがある。

看板を見ると見慣れた文字が・・・
ベーシックもアークスグループになっちゃったんだね。

まあいいや。アークスのポイントが結構溜まっているし、ポイントはこういう時に使うのが良い。

ビールと惣菜を色々買って2043円。うち2000円分をポイント使用にしたので今日の夕食代は実質タダみたいなものだ。

部屋に戻ってビールを冷蔵庫に入れたら大浴場へGO。
風呂上がりのビールがうまいのだ。

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 本日のディナーはベーシックで買ってきたビールと惣菜。

ビールを喉に流し込んで買ってきた惣菜をつまんでいると、何しに網走へ来たんだろという思いに駆られるが、それは自分で打ち消すしかない。

青春18、北東パス、普通列車の旅なんてそういうものだ。

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 部屋の窓からの夜景。

明日は10時24分発の『しれとこ摩周』号で出発するので朝はゆっくりできる。
しかし、ビール4本飲んでベッドに横になったらそのまま眠ってしまった。


posted by pupupukaya at 21/08/01 | Comment(0) | 道東の旅行記

特急おおぞらとSL冬の湿原号乗車記3

 ◆【SL冬の湿原号】
   標茶 14:00 ⇒ 15:42 釧路 

改札口で切符を貰いたいと言うと、北海道の形と『乗車記念』『使用済み JR北海道』の文字が入ったスタンプを押して返してくれた。
改札口にスタンプも用意してあってすぐに対応してくれるので、切符を記念に持ち帰りたい人は改札口でお願いするといいでしょう。

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 三角屋根が印象的な標茶駅の駅舎。

戻りの列車の折り返し発車時刻は14時。
まだ50分以上時間がある。

駅前には『しべちゃうまいもん発見市場』が出店している。見るものと言えばそれくらい。
人が少なくて売れていないのは気の毒だが、さりとて買いたいものも特に無く・・・

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 しべちゃうまいもん発見市場は標茶駅前で特産品の販売を行う。

13時30分を過ぎると、14時発『SL冬の湿原号』の改札が始まる。
といってもまだ車内には入れず、SLの入れ替え作業を見たい人はどうぞということだった。

駅前にいてもすることはないし、またホームに戻る。

着回し線でカマの整備と給水を終えた機関車が、今度は客車の釧路方に連結するところだった。
『ノロッコ号』は客車の後端にも運転台があるので機関車を付け替えずに折り返すが、この列車は機関車を先頭となる方へ付け替える必要がある。

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 整備を終えた機関車は、機回し線から再び本線へ。

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 客車の釧路方に連結する。

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 ハッピーくろべえとミルクックさんがやってきた。

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 後ろ向きに客車に連結したC11 171号機を跨線橋の窓から。

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 うをっぷ! これはたまらん!

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 『SL冬の湿原号 2021』本物のサボ。括り付けてあるのは盗難対策?

13時45分、客車のドアが開いて乗車開始。
帰りの指定された車両は2号車。カフェカーの車両だ。

車号の『スハシ44 1』からすると食堂車かビュッフェとの合造車ということになるのだろうが、あるのは販売カウンターだけ。
それなのに食堂車の『シ』を名乗る。

昔はカウンター内で簡単な調理をしていたのかも知れないし、カウンター向かいの窓側は立食カウンターらしい造りになっているあたりは簡易食堂車と言えなくもない。

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 カフェと普通座席車の合造車、スハシ44 1の2号車車内。

座ってみると、イイ!

板張りの床、アーチ状の高い天井、白熱灯の照明。
だいぶ観光用に改造されているが、ここは旧型客車の世界。

ただデメリットもあって、14系からの改造車は同じボックス席でも座席間隔が広いが、こちらは旧型客車のそれなので間隔が狭く感じる。この席で見知らぬ同士4人相席となったらかなり窮屈そうだ。

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 旧型客車からの流用なのでクラシカルな造り。

指定された席番はA席。
えきねっとで窓側指定で取っていた席。今度は進行逆向きの席となる。

進行方向にこだわるならば、標茶行きはA席、釧路行きはD席を希望にした方が良いということが分かった。

発車前だが、販売カウンターはまた行列ができていた。
と言っても5〜6人ほど。
今度は行列に並んでみることにした。

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 2号車釧路寄りにある販売カウンター。

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 販売カウンターのメニュー。

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 『SL冬の湿原号』の販売グッズ展示。

カウンターで売っている商品は記念グッズのほかはドリンク類とデザートが中心。それに車内ストーブでや焼く用のスルメやシシャモの干物など。
お酒類はサッポロクラシックと福司ワンカップの2種類。

番が来たので福司ワンカップを頼む。冷やと燗が選べるのは気が利いている。
福司の燗酒を持って自席へ戻った。

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 福司ワンカップ(260円)の燗酒を買ってきた。

向かい進行方向の席は『大人の休日倶楽部パス』を持った人。彼は駅向かいのセブンで買ってきたらしい酎ハイやおつまみを並べていた。

隣はストーブ席。空いていたのでそっちに席を移してみる。
45km/hで走る旧型客車は、レールのジョイントをガタン・ゴトンと踏みしめる様にして走る。

牽引する機関車は『C11 171』でC11型機関車は簡易線規格で建設されたローカル線で主に活躍した機関車だ。
標茶町内の公園で静態保存される前は釧路機関区にいたということは、主に標津線で活躍していたのだろう。
実際に『C11 標津線』で画像検索すると、標津線で現役で活躍する171号機の画像を見ることができる。

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 ノスタルジックムードに浸りながら燗酒を口にする。

ゴミを捨てるついでに車内を歩いてみる。
空きボックスもいくつかあり、行きよりは幾分乗客が少ないようだ。

列車は茅沼に到着。
行きの列車からはたくさん見えたタンチョウは、今度は1羽もいなくなっていた。
その代わりに、広場の向こうに三脚を立てる人たちや並ぶ車が見えた。

いい画像は撮れましたかな?

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 茅沼駅停車中。

茅沼〜塘路間は釧路湿原の中でも最も景色の良い区間だ。
一面平らな雪原や真っ白になったシラルトロ湖を見ながらゆっくりと走る。

そんな景色をSLの煙越しに見ながら、お酒でほろ酔いなな気分で、もう昔話になってしまった釧網本線の混合列車などを思ってみた。

次の塘路では10分停車。
網走行4730Dと交換のため。

私は知っているので、5号車のデッキでドアが開くのを待っていたので、機関車の撮影は一番乗り。
塘路駅ではホームが短いので、4・5号車のドアだけが開く。

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 塘路では10分停車。ホームはしばし機関車の撮影タイム。

標茶発の列車の機関車は後ろ向きになっているのは、標茶駅に転車台(ターンテーブル)が無いので方向転換できないため。
C11型はタンク機関車と呼ばれ、機関車本体に石炭と水を積んで車長が短いため、こうしたバック運転ができる。

車内放送の10分間停車を聞いてか、ホームへ出る人に釣られてか、車内からぞろぞろと人が出てきた。

やがて構内踏切が鳴って1両のキハ54がやって来た。
釧路発網走行き普通列車。

これがなんとルパン三世ラッピングトレインだった。
花咲線専用車両だと思っていたが、釧網線にも進出するようになったんだね。

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 網走行4730Dはルパン三世列車のキハ54 522号だった。

ルパン三世号を見送って車内に入る。
2号車に戻ると、販売カウンターのカーテンが引かれ、もう閉店になっていた。

自席には戻らず、しばらくカウンター向かいの立食席らしいスペースから外を見ていた。
まだ1月、3時ともなるとだいぶ日が傾く。

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 釧路川の向こうに西日が傾く。

また自席に戻って、旧型客車の乗り心地を味わっていた。

私が知っている現役当時の旧型客車は、札幌13時40分発函館行き普通列車。中学生のころだ。
機関車に郵便車が1両、荷物車が1両、その後ろに2両の青い旧型客車が連結されていた。
デッキの乗降ドアは内開きの手動ドア。今では考えられないが、夏は開けっ放しで走っていた。

同じく夜行普通列車というのもあって、それに乗ってみたかったが、親の許しは得られないうちに、旧型客車ともども廃止されてしまった。

列車は釧路市内へ入り、再び釧路川を渡る。
行きほどではないが、ここはまた撮り鉄さんが大勢いた。
そっちからだと逆光じゃないかと思うけど、逆光のSLもまたいいのかもしれない。

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 再び釧路川橋梁。撮り鉄の皆さん、いい写真が撮れましたかな。

終点釧路に戻ってきた。
ホームのSL列車と『くしろ』と大きく書かれた昔からの駅名標はしっくりくる。
木材を組んだ堂々とした上屋もまた良い演出だ。

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 終点釧路到着。国鉄型駅名標が出迎える。

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 後ろ向きで牽引してきたC11 171号機。

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 煙突から勇ましく煙を吐く姿が逞しい。

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 無効印を押して貰ったSL冬の湿原号のきっぷと車内で配布の乗車証明書。

釧路を11時5分に発ってから4時間23分、『SL冬の湿原号』は思いのほか楽しかった。

例年ならば満席近い乗車率で、ご同業の方々や国外の団体様と一緒になって、1時間半以上も身を寄せ合って車内で過ごすことになっていたんだろう。
私は特にSLファンではないので、新型コロナでの乗客減でもなければ多分乗ることはなかったと思う。

このSL列車も今後はどうなるかわからない。
機関車の状態によっては運行取りやめ発表ということもありうるし、膨大な費用がかかる全般検査も数年後にまたやって来る。
乗りたいうちに乗っておいてよかったのだろう。

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 4階建ての堂々とした釧路駅舎と動輪の碑。


 ◆ 【おおぞら10号】
   釧路 16:12 ⇒ 20:28 札幌

これで終わりではなく、私は札幌の人なので札幌に戻らなくてはならない。
しかも明日は月曜日である。
もう1分1秒でも早く帰りたい。

帰りの列車でも呑み鉄で行こうと、駅弁を手に入れようとコンコースの売店へ。
以前来たときはホームに駅弁の売店があったのだが、もう売店はなくなっていた。
駅弁は四季彩館に置いているようだが、駅弁は売り切れの文字が・・・

福司と北の勝のワンカップが置いてあったのでそれを買う。

今朝の駅弁以来、酒以外口にしていないので、仕方ないセブンイレブンで弁当を買う。
なるべく酒の肴になりそうなものをということで、秋鮭焼きほぐし御飯にした。

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 キハ261系の『おおぞら10号』。

札幌までは4時間16分の乗車。
今度の車両は261系。稚内系統の特急『スーパー宗谷』でデビューした車両。
あれから21年経って、こちらが道内特急の顔となりつつある。

行きの『おおぞら1号』は悲惨なくらいにがら空きだったが、帰りの『おおぞら10号』はそこそこ乗っている。
ざっと見で半分くらいのボックスが埋まっているくらい。

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 セブンの『秋鮭焼きほぐし御飯』と福司と北の勝のカップ酒。

帰りもまた呑み鉄します。
四季彩館で買ったワンカップ2本とチーズのおつまみ、セブンイレブンの秋鮭焼きほぐし御飯。

この弁当のほぐし鮭が旨い。脂も程よく、味加減も日本酒向き。しかも税込み356円。
今朝1,300円以上も出して買った駅弁は何だったんだと思えた。

あと10年後もしたら、地方駅の駅弁なんて都会のデパートの催事場で買うものになっているのだろうか。

大楽毛を通過し、新釧路川の鉄橋に差し掛かると、真っ赤な夕日ときれいな夕焼け空が広がった。
呑みながら風景を見ていると、やっぱり車より鉄道の方がいいなと思った。

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 新釧路川の向こうに夕日が沈む。(大楽毛〜庶路間)

行きの振り子型283系とちがって、こちらは安定した走りっぷり。283系の最高速度が110km/hだったのに対しこちらは120km/hまで加速する(スマホアプリでの計測)が、騒音も揺れも比較にならないほど少ない。

こうして乗り比べてみると、283系が登場したあたりはとにかく高速化が目標だったのだろう。
2010年代になると、年々延伸する高速道路に対抗するためにさらなる高速化を目指すものの、この頃には事故や不祥事が頻発して高速化どころではなくなってしまった。

線路も車両も経営もガタガタになっていたのだった。
このころ、道内特急は次々とスピードダウンするようになる。

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 帯広から乗客が増えてビジネス特急らしくなった車内。

帯広で乗ってくる人が多く、窓側席はほぼ埋まった状態となった。
帯広発は17時48分は時間帯からして札幌へ戻るビジネス特急というところ。

あとは眠ったりスマホをいじったりしているうちに新札幌に着き、ここで1/3くらいの人が下車した。

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 札幌に戻ってきました。

20時28分、札幌着。
コロナ渦中ということと日曜の夜ということもあって、ホームの人はまばら。

今日の昼頃は釧路にいてSLに乗っていたのが信じられない気分だった。
旅の余韻がまだ抜けきらないが、明日はまた早いのでさっさと帰ります。

〜おわり

posted by pupupukaya at 21/02/07 | Comment(0) | 道東の旅行記

特急おおぞらとSL冬の湿原号乗車記2

 ◆【SL冬の湿原号】
   釧路 11:05 ⇒ 標茶 12:35   

釧路駅3番ホームはSL冬の湿原号が発車を待つ。
シューーーと音を立てて蒸気に包まれたSLを見たら、来てよかったと思った。

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 SL冬の湿原号を牽くC11 171号機。

機関車はC11 171号機。
釧路機関区で廃車になり、その後は標茶町内の公園で静態保存されていたものを、1998年から苗穂工場で動態復元工事が行われて1999年からまたSLとして復活したんだとか。

機関車の後ろに連ねる客車は5両。うち4両は14系客車となっている。
急行はまなすの運転終了で14系客車は全部なくなったと思っていたが、地味にこんな所でまだ活躍していたのだった。

車内は4人向かい合わせのボックスシートに改造され、各車両に1箇所石炭ストーブが置かれている。

各ボックスにはテーブルがあって、その上にアクリル板のパーテーションが設置してあるのは新型コロナ対策のため。


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 ボックス席に改造されダルマストーブが置かれた『オハ14 526』車内。

2号車のカフェカーには販売カウンターがあって発車前から営業しているが、こちらは隣の3号車まで伸びるほどの大行列ができていた。

SL冬の釧路湿原号の実物大レプリカのサボを下げて戻る人が多い。1枚3,500円なので手ごろな記念品といったところ。
え? あんたは買わないのかって?
そりゃ値段的には手ごろだけど、買っても部屋に飾るかなあ・・・

とにかく、指定された席について発車を待つ。
山側(進行右側)の進行方向窓側席。

この券もえきねっとで取ったものだが、冬の湿原号は座席マップでの指定ができないので、窓側か通路側、あるいはABCD席いずれかの指定になる。
わからないので窓側を指定して予約して、札幌駅で発券したら行きも帰りもA席だった。

ボックス席は相席だったが、隣席は空いていた。
ざっと見だが、全体の乗車率は6割といったところ。空きボックスはないけど、ボックスごとに1席か2席空席がある程度。

11時5分、汽笛が鳴って、ホームにいる大勢の見送り人に手を振られて発車する。
前後にドンという衝撃はいかにも客車。

沿線はあちこちに三脚を立てたカメラマンや見物人がたくさんいた。
やがて釧路川の鉄橋を渡る。川岸には大勢のカメラマンというか撮り鉄たちが並んでいた。

今朝は冷え込んだせいか、釧路川の水面に薄氷が張っている。
さぞかし良い写真が撮れたことだろう。

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 薄氷の張った釧路川を渡る。

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 川岸に並ぶ撮り鉄の皆さん。

撮り鉄や見物人は煙を吐いて走るSLの雄姿を堪能できるが、乗っていればSLもディーゼルも大して変わらないのは乗り鉄の宿命か。

しかし、私ら乗り鉄は金払って乗ってるわけですからね。

いく良い写真撮らせても運行側には1円にもならない彼らと違って、SL列車を本当に支援しているのは私ら乗り鉄なのでありまして・・・

それはともかく、東釧路でもホームにはたくさんの人がいた。乗ってきた人は少なかったので、ここも撮り鉄と見物人ばかりだった。

東釧路を発車してしばらくすると地元のネイチャーガイドの人がやってきて車内の中央に立ち釧路湿原のガイドが始まる。

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 地元のネイチャーガイドが釧路湿原のガイドをしてくれる。

ストーブの前の席が空いていたので座ってみる。

この列車の名物であるダルマストーブ。
14系客車は冷暖房完備なのでストーブなど不要だが、これは観光用に上でスルメなどをあぶるために置かれたもの。

この列車は全車指定席だが、このストーブの前にある4席はフリースペースということになっている。
ストーブに当たりたい人やスルメなどを焼きたい人がこの席を使うためでもあるが、このストーブの前に座っていると結構熱くなって長い間座っていられないということもある。


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 ダルマストーブと石炭。

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 上の網にスルメやシシャモの干物を乗せて焼けるようになっている。

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 たまに車掌さんが十能(じゅうのう)で石炭をくべる。

「釧路湿原駅で降りる方がいましたら車掌までお知らせください」といいながら車掌が回ってきた。
釧路湿原駅のホームが短いために1号車からしか乗り降りできないからだ。
真冬にこんなところで降りる人がいるのかと思ったが、ここで降りた人が何人かいた。

ここは坂を登ったところに駐車場があるので、車で来てここから往復したのかもしれない。

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 釧路湿原駅に停車。

ガイド
「釧路湿原駅を発車しますと1000分の15という勾配を登って行きます」
「はたして機関車はこの坂を無事登れるのでしょうか」

そういわれてみると、列車の走りっぷりも苦しそうだ。
何とか無事登り切ったようで、だんだんスピードが上がる。
この辺りから釧路川が車窓の友となる。

東釧路から塘路までは釧路湿原の眺めはあまり良くない。
細岡を過ぎてから釧路川のそばを走るくらいで、あとは冬枯れの林が続くばかり。

釧路湿原に生える木の多くはハンノキで、これが増えると湿原の乾燥化が進むとさっきガイドで聞いた。

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 細岡〜塘路間の見どころは釧路川。この区間が一番近くを通る。

もう1つの隠れた名物(?)が湿原の中に佇む1軒の廃屋。
通じる道も無い場所で、いったいどんな人が住んでたのだろうかと気になる物件だ。

その廃屋の前に差し掛かると、なんということ、倒壊していた。

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 名物(?)の廃屋は倒壊していた。

塘路では2分停車。ちょっと外に出てみる。
機関車からは発車に備えてか勢いよく煙と蒸気が噴き出していた。

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 塘路に停車中。

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 勢いよく煙と蒸気を吹き上げる。

車内に戻って自席に戻る途中カフェカーに寄ってみる。
カフェカーと言っても客車内の1/3ほどが販売カウンターとなっていて、あとは普通の指定席となっている。
他の客車と違い、この2号車だけは旧型客車からの改造なので、シートピッチはかなり狭い。

しかし、高い天井と板張りの床は、どこかノスタルジックなムードに浸ることができる。

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 2号車のカフェカー。

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 2号車のストーブ。板張りの床とよく似合う。

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 混合列車時代の釧網本線を彷彿させる。

2号車のストーブの前に座ると、昔釧網本線で走っていた混合列車はこんな感じだったのかとちょっと思った。

塘路と茅沼の間は一番釧路湿原らしい景色が眺められる区間だ。
真っ白になったシラルトロ湖や凍り付いた湿原の草原の中を列車は走る。

夏に運転される『釧路湿原ノロッコ号』は塘路で折り返してしまうためにこの区間を通ることは無いのは残念だが、標茶まで行くこの列車は冬の釧路湿原を堪能することができる。

湿原の中に20〜30頭はいるだろうか。エゾシカの群れがいた。
乗客はみんなそっちに釘付けになる。

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 遠くに見えたエゾシカの群れ。

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 28kmのキロポストと凍ったシラルトロ湖。

塔路の次の茅沼駅はタンチョウヅル(丹頂鶴)が来る駅として知られている。
有人駅だった時代にタンチョウへの餌付けが始まり、駅長が変わるときには事務の引継ぎ事項となっていたそうだ。
無人駅となってからは、地元住民に引き継がれているという。

さて今日はタンチョウはいるのでしょうか。

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 茅沼駅裏の雪原に集うタンチョウヅル。

お〜いたいた。8羽、9羽、いっぱいいる。
SLに警戒してこちらには近づいてこないようだ。

ガイド
「あっ、いまツルが頭を下げたから飛びますよ、ほら」

茅沼駅停車中に2羽のタンチョウが優雅に飛び立つ。

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 優雅に飛ぶ2羽のタンチョウ。

タンチョウの向こうには撮り鉄さんが何人も見える。きっとSLと一緒に収めた写真を撮ったんだな。いいな〜。
このタンチョウこそ日本で親しまれているツル(鶴)そのものだということは意外と知られていない。

優雅に飛ぶタンチョウを見ながら茅沼を発車すると、またハンノキ林となり、この辺りからは夏なら牧草地も見えてくるころ。
釧路湿原とはお別れになる。

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 ホームでは標茶町ご当地キャラクターの出迎え。

12時35分、終点標茶に到着。
標茶町ご当地キャラの『ハッピーくろべえ』と『ミルクックさん』の着ぐるみの出迎えもあってホームは大賑わいとなった。


 ◆ SLの入替作業を見る

標茶に着いたが、一般の方は改札口に向かうが、私どもはホームに残る。
これから機関車の入替作業があるので、それを見学しようというわけだ。

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 釧路から客車5両を牽いてきた機関車。

ホームから機関車の先頭を撮影したいところだが、機関車の先頭部分がホームの端ギリギリのところにあるためそれは叶わない。

動き出すのを待って機関車の前に立っているが、なかなか動き出さない。見物人も1人2人と離脱して少なくなる。 

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 機関士と車掌が入替え作業の打合わせをする。

「汽笛鳴らすから耳、注意してくださいね」

と機関士。まもなく動くようだ。
12時47分、耳をつんざくような汽笛を鳴らして、機関車と客車はバックで動き出した。

1番線に到着したSL冬の湿原号の編成を、2番線に据え付けるために一旦単線のところまで引上げるのだ。

それなら最初から2番線に入れればいいのでは?と思うが、2番線は12:41発の釧路行快速『しれとこ摩周号』が発着したので入れなかったのだ。

昔は3番線まであって、標津線の列車が使用していたのを思い出す。

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 1番ホームから推進運転で釧路方に引上げる。

後退する機関車の撮影をしたら跨線橋へ。
ちょっと電線が邪魔だが、ここからSLが走る姿を撮れるんじゃないかと思ったからだ。

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 釧路方に引上げたら今度は2番線に進入。ホームの跨線橋から撮影。

おお、いいアングル。
ただ、基本撮り鉄はやってないので、ちょっと斜めになってしまった。

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 2番線に進入するSL冬の湿原号。

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 2番線に停止したら機関車と客車を切り離す。

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 今度は機回しと機関車の整備。

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 機関車だけ網走方へ引上げる。

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 今度は右側の側線に入る。

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 しばらく停止して、灰落としや給水作業を行う。

引込み線に入ったら機関車の整備作業になる。
これでしばらく動きはなさそうだ。

一旦改札を出ることにする。
夢中で撮影などしていたら、着いてからもう30分も経っていた。


posted by pupupukaya at 21/01/31 | Comment(0) | 道東の旅行記

特急おおぞらとSL冬の湿原号乗車記1

JR北海道HPに掲載されたニュースリリース。

*2021.01.22

これを見たのが1月23日土曜日だった。

元々私は鉄道ファンながらSL列車というものにあまり興味はなく、わざわざ混んでる列車に乗りたいとも思ってはいなかった。
ところが、リリースの一文

“例年、指定席の発売と同時に満席になることが多く、国内外のお客様にご利用いただき乗車率が約 80%の人気観光列車ですが、今年度はお座席に余裕があります”
(同リリースより引用)

を見て、突然『SL冬の湿原号』に乗ってみたくなった。
元々人混みが嫌いなので、混んでいるのなら行く気はしないが、すいているのならば行ってみたい。

道内のSL列車も、冬に運転されるこの列車だけとなってしまった。この先続くのかもわからないし、こういうときがチャンスなのだろう。

最初は釧路まで車で行くつもりだったが、特急列車も新型コロナでがら空きだと思って、特急『おおぞら』で釧路まで往復することにした。

車ならば高速で釧路まで片道5時間だが、往復高速代とガソリン代を合わせると1万3千円以上はかかる。
下道ならガソリン代だけだが、片道7時間は見なければならないし、凍結の日勝峠越えも覚悟しなければならない。

というわけで、釧路までは往復特急『おおぞら』利用とした。

切符の購入は、初めて『えきねっと』を使ってみた。

行きは『おおぞら1号』、えきねっとトクだ値40で片道5,990円
帰りは『おおぞら10号』、えきねっとトクだ値15しかなかったが、片道8,480円
合計で14,470円。1人ならば往復JRでもそれほど割高感もない。

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 えきねっとの座席選択画面。

釧路から標茶まで『SL冬の湿原号』の往復もえきねっとで予約した。
こちらは往復で4,260円
日帰りながら結構いい金額になってしまった。

往復特急を利用すれば新型コロナで乗客減のJR北海道の支援にもなるだろう。
とは言っても微々たるものだろうけど。


 ◆ 釧路へ出発

翌日、1月24日日曜日。

えきねっとで予約しただけでは列車に乗れないので、みどりの窓口か指定席券売機でチケットを発券する必要がある。
そんなわけで早めに駅に着いておこうと、始発の地下鉄で札幌駅へ。

券売機画面の『予約の受取』ボタンを押して、登録してあるクレジットカードを入れると予約画面が出てきた。
往復のおおぞらとSL冬の湿原号の4件の予約があるのだが、これを1つ1つボタンを押して選択する。

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 札幌駅の指定席券売機。

下の方に何に使うのか知らないが、QRコードの読み取り装置もあるんだから、予約時にQRコードを発行して、それをかざすとピッと券が出るようにしてくれよ。

いやそれよりも、ネットで購入したらQRコードを発行して、改札機に直接かざすチケットレスにしてくれよ。

どうもJRさんはネット販売の意味を理解しておられないようだ。

ええ、いい機会だからここで言いたいだけ文句を言わせてもらいますよ。
何でかって?

自分の金出して『えきねっと』で買ったんだから、

私には文句を言う権利がある

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 『予約の受取』を押してクレジットカードを入れると予約一覧が表示される。

最後に支払い画面になり、クレジットカードの暗証番号を入力する。

あれ?
ネットで予約したときに支払いじゃなかったの?

飛行機のネット予約は、予約時に支払いが確認されてからEチケットなどがメールで来る。
海外の鉄道をネットで予約する際もそう。

普段、飛行機の予約の方が多い人にとっては意味不明なシステムだ。
後日、クレカの利用明細を見ると、発券日が利用日となっていた。

支払いと4枚発券でここまで約2分。
面倒臭いなあ。
発車ぎりぎりに駆け込んできた人など、どうするんだろ。

とにかく4枚のチケットを発券したので、改札機にチケットを通して中に入る。
いまだに磁気券ってのも前時代的ですね・・・
自動改札が広まった平成10年代から基本的には変わっていない。
令和も10年代になっても、同じことをやって列車に乗るのだろうか・・・

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 自動改札機が並ぶ札幌駅東改札口。

まずは駅弁と酒を調達する。
車内で朝酒。これのためにわざわざ不便な鉄道を選択したのだ。

ラッチ内コンコースにある弁菜亭の売店は、感心なことに朝5時45分から開いている。
しかし、行ってみるとまだ閉まっていた。
『営業時間短縮のお知らせ』の張り紙があって、新型コロナ感染症対策のため、当面は6:50〜21:00とのこと。

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 いつも6時前からやっている駅弁屋も短縮営業。

6:30になるとキヨスクが開店する。

しょうがない、つまみで酒を飲むしかないのかと思っていたら、弁当の棚には今朝入ったパック入りの弁当が所狭しと並んでいた。

どれも揚げ物中心のボリューミーな弁当か寿司ばかり。酒の肴にするには貧弱だ。
その下に悩ましい弁当箱が1つだけあった。

それは1つだけあった『北の駅弁屋さん』1,300円。
ラベルに『函館みかど』とあったので函館駅の駅弁だ。

本当はもう1つ900円台の別の弁当があったのだが、それは先に取られてしまった。
駅弁が欲しければこれしかないのだった。

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 キヨスクの弁当の棚。

結構いい値段だしどうしたものかなあと考えていると、後ろから変なオッサンが「このいなり旨いんだよ」と何度も1人でつぶやきながらやってきて、いなりのパックを2つ掴み取った。
手に抱えた、いなり2個入りパック。

「旨いんだよ旨いんだよ」と言いながら、そのままレジへもっていくのかと思ったら、「あ、先にオシッコしなきゃ」と言ってまた棚に戻したではないか。

買わないんなら手に取るんじゃねえよ汚ねえな (# ゚Д゚)

変なオッサンが消えたので、その1,300円の駅弁と金滴純米酒のカップを持ってレジへ。
こんな機会も今度いつあるかわからないし、たまには贅沢もいいか。


 ◆【おおぞら1号】
  札幌 6:48⇒ 釧路 10:58

ホームに上がったのが6時40分ころ。
まだおおぞら1号は入ってきていなかった。
ホームには各乗車口に2〜3人といったところ。自由席は7〜8人の列ができていた。

ホームで入線を待っていると、えらくしばれる。
今朝の気温はマイナス10度。3分と経たないうちに指先が痺れてきた。下げてきた弁当も凍ってしまうよ。

ホームの自販機で飲み物を買う人がどこかで見た人だなと思ったら、参議院議員の鈴木宗男氏ではないか。
ひと頃はいろんな意味で時の人だったが、また政界に戻られて活躍されているのは何より。
今日はおおぞら1号で地元に向かわれるのだろうか。

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 おおぞら1号が4番線に入線。

まだかまだかと震えながら待っていたら、6:44になってようやく入線してきた。
発車4分前とはずいぶんギリギリの入線だ。

車両はキハ283系6両編成。
それでも先頭車の撮影をして車内へ。

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 おおぞらのヘッドマーク2態。『スーパー』の文字が外された。

指定された車両は4号車。
予約時にえきねっとで座席表を見て自分で選んだので、指定したと言うべきか。
自分で座席表をみて席を選べるようになったのは便利になった。

車内は自分入れて3人だけ。予約時は7席埋まっていたはずなので途中から乗ってくるのかな。

指定席の座席は新しいものに交換されていて座り心地が良い。
私はJRの特急に乗るより飛行機に乗る機会の方が多い。
それから比べると鉄道車両のシートはとても前後左右が広くて快適だと思う。

しかし、基本は90年代の車両。コンセントなどあるはずもないし、車内のフリーWi-Fiも無し。

普段飛行機や高速バスに乗り慣れた人がJRの特急に乗ったら面食らうかも知れない。
2010年代後半からコンセントもWi-Fiも、バスや飛行機ならば、とっくに標準装備の時代になっている。
チケットの販売方法にしてもそうだけど、鉄道だけは時代から取り残された世界になってしまっている。

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 見事にがら空きの4号車指定席の車内。

6時48分、車内はがら空きのまま札幌駅を発車する。
自分の後ろは完全に無人状態。
日曜の早朝ということもあるのだろうが、気の毒に思えてくるほど乗客がいない。

去年からの新型コロナ発生以来、鉄道に限らず交通機関は乗客の減少が深刻だ。
かといって人の移動が活発で、どの列車も満員というのもあってはならないが、それにしても困ったことだ。

札幌を発車して苗穂を過ぎたあたりから加速を始める。
エンジンの音と振動は相変わらずだった。変速するときもドンと前後に振動が。

北斗系統の281系、おおぞら系統の283系、違いは私にはよくわからないが、エンジンの振動と走りっぷりはかつてのスーパー特急時代を思い出した。

かつて最高速度130km/h、札幌〜釧路間を最速列車で3時間35分で結んでいた283系。
それが諸事情から最高速度は110km/hに引き下げられ、283系での最速所要時間は4時間2分(おおぞら4号)となってしまった。

当時乗って思ったことは、速いは速いけど、車体をブルブル振るわせてエンジンの爆音を轟かせて、右へ左と車体を傾けて走行するスーパー特急よりも、少々時間がかかるけどスーパーの付かない183系車両の方が静かで良かった。

いまは110km/h止まりなので、少しは大人しくなったかも。

走行エンジンのほかに、ウィ〜〜ンとか、チュイ〜ンとか床下は賑やか。
エンジンファンには楽しいのかもしれないが、ヤカマシイことこの上ない。

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 朝焼けの札幌貨物ターミナル駅構内。

車掌が車内改札に回るが、基本は自由席のみ。指定席は、指定席の券を持っていれば車内改札なし。
どうやら車掌は発売済みの席の情報を得ているらしい。
そこまで出来ているんなら、なおさらチケットレスでもいいんじゃないかと思った。

新札幌で乗ってくる人もなく、ここから駅弁、呑み鉄タイムとさせていただく。
1,300円也の北の駅弁屋さんと金滴のカップ酒をテーブルに出す。

弁当は鮭、イクラ、カニ、ウニ、数の子といった北の幸が小分けになっている。
丼物に見立てたのか、どれもご飯の上に乗っている。

残念だったのは、すっかり冷めきって御飯がカチカチになっていたこと。
9マスのうち7マスは御飯が詰まっているので、酒の肴とするには御飯が多すぎた。

豪華な呑み鉄旅となるはずが、冷や飯と冷酒のわびしい食事となってしまった。
それでも良い米を使っているのか、冷めても御飯自体は良いものとわかる。

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 キヨスクで買った『北の駅弁屋さん』と金滴純米酒カップ。

駅弁を食べながらチビチビと飲っていると7時20分、南千歳に着いた。
まだ接続する飛行機が無いのでホームの人はまばら。

ここで4号車に1人乗ってきたが、がら空きには変わらない。
ここから石勝線へと入る。

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 前方の窓から朝日が差し込む。

石勝線に入ってからは景色が北海道らしくなる。
最後に石勝線の特急に乗ったのはいつだったか忘れたが、こうして久しぶりに乗ると景色が新鮮に見える。
もうずっと前から車から線路を見るだけだった。

札幌から1時間4分で新夕張へ。
夕張支線が廃止になったのは何年前だったかな。
去年の5月に仕事で夕張に行ったときは線路はまだ残っていた。

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 かつて夕張支線が分岐していた新夕張駅。

新夕張を発車すると雪をかぶった夕張支線の路盤が左側へ分かれて行く。
ここからは無人の山岳地帯を行く石勝線。長いトンネルばかりになって車窓はちょっと残念なことになる。
あとトンネル内は圏外になるので、電話したりどこかと通信中のときは注意。

ゴミを捨てるついでにトイレに寄る。
石勝線に入ってから揺れと振動がひどくなったと感じていたが、これでも110km/h運転。130km/hだったころはどんなものだったのか。

振り子式車両は揺れに規則性がないので、立って用足しをしてるとどこに振り回されるかわからないので大変だった。

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 極寒の占冠を通過。

ずっと長いトンネルばかり続き、ようやく明るいところに出たところが占冠。
占冠の市街地にある家々からは、煙突から煙がモウモウと上がっていて、今朝は冷え込んだことを思わせる。

スマホのアプリで占冠村の天気を見たら、今の気温はなんとマイナス25.5度。
最低は29度まで下がったらしい。

この1号はその占冠を通過する。

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 現在の占冠の気温。

占冠からはトンネルは少なくなり、手つかずの大自然の景色を堪能できると言いたいが、それは20年前の話。
今は道東自動車道が並行し、線路のはるか上を立派な高架橋で乗り越えたりする。

やがてリゾート駅のトマムに停車する。
あまりじっくりと見たことがない駅だったので、ドアが開いたらデッキからホームを覗いてみた。

出口の前には星野リゾートトマムと駅を結ぶバスが客を待っていた。
この列車から降りたのは親子連れ3人とスノーボードを背負った1人だけだった。

かつてはトマムへのスキーリゾート輸送は鉄道の独断場で各種リゾート列車も運転されていたが、道東自動車道が伸びてトマムにもICができたので鉄道にとっては苦しいところ。
ここ数年は某外国人の利用が目立っていたとか。

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 星野リゾートトマム行きのバスが待つトマム駅。

新狩勝トンネル内で、もう列車が走ることは多分ないだろう滝川からの根室本線と合流する。
日高本線の廃止日はもう決まっているが、その次はおそらくここだろう。

トンネルを抜けると気持ち良いくらいの十勝晴れ。ここからは十勝平野を見下ろしながら新得へ下る。
現在の新得町の気温はマイナス14度。しばれたねえ〜。

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 新狩勝トンネルを抜けると広い十勝平野が広がる。

新得からは白い雪原に一直線に並んだ防風林という十勝地方らしい風景が続く。

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 十勝平野らしい車窓風景。御影〜芽室間。

帯広着は9時19分。札幌からここまで2時間31分。
スーパーおおぞら時代は2時間16分だったので15分延びたことになる。

札幌〜帯広間は車なら高速経由で3時間、高速バスならば最速3時間25分。
道東自動車道が未開通の頃は、車でも4時間以上&日勝峠越えだったので、冬場は連日増結して9両編成でも高い乗車率だったのは既に昔の話。

JRも対抗して札幌〜帯広間の『お先にトクだ値』55%OFFで3,490円と格安販売しているのを見ると、この区間の競争の激しさがわかる。

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 帯広駅からは自由席に数人が乗車。

帯広で結構降りると思っていたが、ホームにそれほど人は出てこない。日曜日で朝早いせいかもしれない。
ホームにはグリーン車から下車した鈴木宗男氏の姿もあった。
この4号車は1人降りて、1人乗ってきた。



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 利別で札幌行おおぞら4号の待合わせ停車。

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 池田の手前では凍って真っ白になった利別川を渡る。

池田で1人下車。車内は3人だけになった。

ここからは列車のスピードがガクンと落ちる。
池田までは線形が良く、直線や緩い曲線が多かったので順調に走っていたが、この先は急曲線が多くなるため60〜70km/h台で走ることも多くなった。
それでも短い直線区間を見つけては110km/hまで加速する。

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 音別〜白糠間は太平洋沿いを走る。

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 凍った馬主来(パシクル)沼ではワカサギ釣りらしき人が。

音別からは釧路総合振興局になる。
太平洋岸の釧路地方は夏は濃霧が多いため農業もままならず、ただ荒涼とした浜や凍り付いた湿原が目に入る。
そんな景色を見ていると、1年前に行ったフィンランドの北部を思い出した。

10時58分、終点釧路に到着。
各車両から下車する人は片手で数えられるほどの人数で、着いた1番ホームはすぐに人がいなくなってしまった。

ホームは何やら異臭が漂っている。何だろう。

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 終点釧路に到着。『くしろ』の字体が懐かしい。

異臭の正体は3番ホームに停車中のSLの煙だった。
そうだ、そうだった、これに乗りに来たんだった。
今どき石炭なんて見なくなったので異臭だと思ってしまったのだった。

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 2・3番ホームにはSL冬の湿原号の見物人がたくさんいた。

特急の着いた1番ホームとは対照的に、隣のホームは人だかりがしている。
SL冬の湿原号は釧路11時05分発。おおぞら1号との接続時間は7分しかなく、あまりのんびりしている暇はない。
急いで3番ホームへ向かう。


posted by pupupukaya at 21/01/30 | Comment(0) | 道東の旅行記
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