2024年春、摩周旅行記4

摩周湖まで往復し、再び摩周駅へもどってきました。

次の釧路行まで30分ありますが、また雨が降り出しそうなので駅の中で過ごすしかありません。
私はさっき注文しておいた駅弁の、摩周の豚丼を案内所で受け取ります。
温かくせっかくの作りたてですが、釧路からの『おおぞら』車内で食べることにしてリュックに仕舞います。

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 摩周駅の改札案内。

摩周駅はというと、相変わらず今摩周湖から戻ってきた2人だけで閑散としています。

デマンド交通でもいいから周辺の観光地への交通機関があれば、昨日の知床斜里駅のようにインバウンドの姿もあったのかも知れません。

そんな摩周駅ですが、過去には阿寒、美幌、女満別空港へ、それに釧路へのバス路線があって、それなりに交通の拠点ではあったようです。
しかし利用客減少からバス路線は次々と廃止されてしまいました。

現在摩周駅発着のバス路線は、摩周湖への路線バスが1日1本。
あとは屈斜路湖の和琴半島までの路線が1日2本ありますが、こちらは全便土休日運休。通学路線なのでしょう。
川湯温泉へ行く3本は毎日運転ですが、温泉へ行く人は川湯温泉駅を利用するでしょうね。

例えば摩周湖に行きたい人が摩周駅で降りても、1日1本のバスに乗れなければタクシーを呼んでもらうしかありません。
摩周湖へ行く定期観光バスもありますが、こちらは釧路発着のため摩周駅からの利用はできません。

あとはレンタカーくらい。
一時は駅レンタカーがありましたが、こちらは早い時期に閉店しています。
本数も少なく不便な列車で摩周駅まで来てレンタカーを借りるのは現実的ではありませんね。
釧路駅や釧路空港で借りたほうがずっと便利ですから。

摩周駅という駅名は観光の拠点駅のように見えるけど、今となってはどこへ行くにも不便になってしまいました。
有名観光地に囲まれているけれど、鉄道駅だけが取り残されてしまったような、摩周駅はそんな印象を持ちました。



 ◆ 摩周 12:17 → 釧路 13:34【しれとこ摩周号】

12時09分、釧路行の改札が始まります。
今度はほかに誰もいないということはなく、12時近くになると列車の乗客が集まってきました。
私と東京のおじさんのほかは地元客のようでした。

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 釧路行の改札。

時刻表上では『しれとこ摩周号』と表示されている列車ですが、駅でそう案内しているわけもなく、列車にヘッドマークを掲げているわけでもありません。
線内唯一の快速だったころは意味があったのでしょうが、全列車普通列車となった今では影の薄い存在に。
もしかしたら、繁忙期にボックス席部分を指定席として販売することを想定しているのでしょうか。

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 摩周駅に到着する『しれとこ摩周号』。

見えてきた列車は、やはり1両。
ドア前に立つ人の影が見たのでこんなに混んているのかと思いましたが、これは摩周で降りる人たちでした。
摩周駅からの乗客は5人。到着した列車からは同じくらいの人が下車しました。

車内に入ると、座席に座るにはボックスシートに相席になるか、ロングシートで詰めてもらうしかありません。
摩周から乗った客の中には、立つ人も。

私は最後部のドアの前に立っていることにしました。
釧路まで1時間17分立ちっぱなしになりますが、最後部から後面展望で行けるほうが楽しい。

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 釧路行しれとこ摩周号の車内。

見回してみると、摩周発車時の車内の乗客数は20人に満たない程度です。
しかし、車椅子スペースや機器室などに場所を取られたH100形の座席定員はわずか36人しかありません。
少ないといえる乗客数の割には、乗車率が高くなります。

好んで立っているとはいえ、この狭い車内を占拠しているトイレがなんとも恨めしい存在。
トイレ室だけでボックス2つ、8人分の座席ができるほどです。

先代のキハ54転換クロス車両の座席数は58席だったので、H100形になってから座席数は4割近くも減ってしまいました。

最低限の座席だけ設置して、あとは立ち客を前提としたのでしょうか?
座席数を犠牲にしてまで、バリアフリー対応多目的トイレって必要なものなのでしょうか?

いろいろ文句をつけたくなりますが、日本ではバリアフリー法という法律があり、トイレを設置する以上はその法律を守らなければならないようです。

特急列車ならば1編成に1か所あればいいものですが、こんな1両編成の列車にも同じように設置しなければならないとすれば、あまりにも杓子定規すぎると思うのですが。

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 一直線に続く線路。磯分内〜標茶間。

それはそれとして、摩周から釧路までは後面展望は楽しいですね。
人家も見当たらず、森の中を一直線に続く線路を見ていると、北海道だなあと思います。

ボックスシートに座っていると、行けども行けども森ばかりの風景ですが、こうして列車の前後の窓から見るとダイナミックな風景を見ることができます。

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 黄金色の釧路湿原。茅沼〜塘路間。

釧網本線といえば釧路湿原。
その中で一番景色が良いのは茅沼と塘路の間でしょうか。
ここは湿原の中に線路が通っていて線路際に林がなく、広い釧路湿原を見ることができます。

その湿原はまだ冬から目覚めたばかりのようで、冬の枯草のままとなっています。
枯草ばかりの黄金色の草原。
その中に緑色が芽吹いた低木がちょぼちょぼと生えていて、なんとなくアフリカのサバンナを連想させます。
この時期ならではの、面白い風景ですね。

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 釧路湿原観光の拠点、塘路駅。

塘路駅のホームは、釧路湿原散策の戻りなのでしょうか、観光客の姿がたくさん見られました。
おそらく今日から毎週末運転が始まった『釧路湿原ノロッコ号』の折り返し乗客のでしょう。
『釧路湿原ノロッコ号』は、今日から毎週末運転が始まりました。
ノロッコ2号で塘路に着いて、1時間ほど散策してから戻るとすればこの列車となります。

ホームの乗客のうち何人かがこちらの後部ドアの前に群がってきました。
ドアが開かないことに不思議がっている人たちに、ガラス越しに指をさしてあっちという風にゼスチャーすると分かったようで、前のドアのほうに移動しました。
道内のワンマン列車は、無人駅では一番前のドアからしか乗降できないことになっています。

釧路湿原駅でもまた同じように後部ドアの前に乗客がやってきました。
私はまた指をさしてゼスチャー。
何だかセルフ車掌みたいになってしまいました。

だんだん観光客で車内も盛況、立ち客も増えてきました。
インバウンドらしき乗客も目立ちます。

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 東釧路で花咲線キハ54とすれ違う。

東釧路では花咲線の根室行と交換します。
あちらはキハ54形。
今でも走っているのは花咲線と宗谷本線の名寄以北それに留萌本線だけとなってしまいました。

新しそうに見えますが、こちらも国鉄型車両。
あと2年もすれば車齢40年を迎えます。
これも早晩H100形に置き換えとなるのでしょう。

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 釧路駅に到着。

終点の釧路に着くと、1両の列車から多くの乗客が下車します。
いつの間にか、乗客数は40〜50人程度にまで膨れ上がっていました。

釧路湿原観光客が多い塘路〜釧路間と、摩周あたりの閑散ぷり。
摩周湖観光の乗客も増えてほしいところですが、輸送力の低いH100形気動車では乗客増に対処できず、それはそれで問題となりそうですね。

頼みの綱は、乗車自体が目的にすることができる『くしろ湿原ノロッコ号』くらいでしょうか。
この列車とて国鉄型車両を改造した車両。
老朽化という問題も近い将来出てくるでしょう。

こうした問題は行政側も無関係ではないのですが、直近の廃止候補ではないからとローカル線問題を先送りにしている感もあります。
廃止予定は無くても突然の災害で不通になり、そのまま廃線にということもありうるわけで、先のことはわかりません。


 ◆ 釧路 13:49 → 札幌 18:03【おおぞら8号】

今度の列車は、今回旅行の最終ランナーとなりる『おおぞら8号』。
『おおぞら』も寂しくなったもので、いつの間にか基本編成が4両という姿になってしまいました。
でも実際は4両で走っている姿は見ないような気がします。

今日の編成も1両増結の5両編成でした。
『おおぞら8号』は1番ホームに停車中で、もう乗車できるようになっています。

いつ見ても思いますが、駅舎に直結した釧路駅の1番ホームは、幅広で堂々として立派の一言に尽きます。
これだけの堂々とした1番ホームは、全国でもここ釧路駅くらいしか残っていないのではないでしょうか。

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 堂々とした幅広の釧路駅1番ホーム。

この立派なホームに見とれたい気持ちもありますが、私は買い物があるので、一旦改札を出ます。
えきねっとの特典期間中で、今日有効のトクだ値を提示すると10%引きになるので。

駅コンコースにある四季彩館で、北の勝のカップ酒2本とお土産の行者にんにくの醤油漬けを買いました。
あまり迷っている時間はありません。
レジできっぷを見せて10%引きにしてもらいます。

店を出るときに気づきましたが、以前は入口にあった駅弁の陳列棚が、今回は見当たりません。
釧路駅の駅弁はやめちゃったのでしょうか。
あとで調べたら、釧路駅の駅弁は諸事情で現在販売休止中となっていました。
いずれ販売再開となるようですが、当面は釧路駅で釧祥館の駅弁を手に入れることはできないようです。

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 261系おおぞら。

幸いなことに私は摩周駅で駅弁を仕入れておきました。
帰りの車中はまた飲み鉄で行こうと思います。

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 ガラガラだった釧路発車時。

『おおぞら8号』はガラガラのまま釧路を発車しました。
1車両に10人くらいしか乗っていない格好です。
帯広からまた乗って来るのでしょうが、4両基本編成でも持て余すような乗車率です。

『くしろ湿原ノロッコ号』や『しれとこ摩周号』で釧路に着いた人たちはどこへ行ったのでしょう。
札幌や新千歳空港からJRの特急を利用してくれれば、釧網本線の存在意義も高まるのでしょうが。

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 摩周の豚丼と根室の地酒北の勝。

まあでも車内が空いていることだし、思う存分飲み鉄をさせてもらいます。
摩周駅で買ってきた『摩周の豚丼』。

炭火焼きの豚肉がこれでもかと言うほどたくさん乗っています。
タレが染み込んだご飯がまたおいしい。
ビールが欲しくなりますが、日本酒にももちろん合います。

受け取ったときは作り立てだったのに、ここまで持ってきてすっかり冷めてしまいました。
しかし味は落ちていません。

冷めても美味しくいただけるというのが駅弁の最低条件です。
そういう意味では、この摩周の豚丼も立派な駅弁と呼べるのではないでしょうか。

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 馬主来(パシクル)沼と湿原。

白糠を発車して短いトンネルを抜けると、馬主来(パシクル)沼とその湿原が広がります。
ここも釧路湿原同様、今の季節は黄金色の草原が広がっていました。

あまり名の知られた湿原ではありませんが、環境省による重要湿地の指定を受け、タンチョウやオジロワシの生息地にもなっている貴重な湿原です。
根室本線はこの湿原の中を通っており、特急『おおぞら』の車内からも雄大な眺めを楽しむことができます。

この馬主来沼ですが、西側の山林一帯にメガソーラー発電所建設計画があると最近知りました。
計画は330ヘクタールの敷地に12万枚の太陽光発電パネルを設置する、道内最大規模というものです。

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 馬主来沼西側のメガソーラー建設地。
 ※(仮称)HOKA7 太陽光発電事業_第2章 - ib vogtより抜粋引用

湿原に直接建設されるものではありませんが、後背地となる広大な山林は伐採されてメガソーラー発電所になってしまいます。
こんなことをすれば、後背地となる林を失った湿原は植生が大きく変わってしまう恐れがあります。
発電所管理のために除草剤が使用されるという話もあり、そうなると下流に当たる馬主来沼の生態系への影響も懸念されます。

当然地元の反発もあり、反対運動や署名運動が報道されていますが、肝心の行政には中止させる権限は無いらしく、何とも頼りない。
カーボンニュートラル推進は国が定めた政策でもありますから。

こうしたカーボンニュートラルの名を借りた乱開発と自然破壊は、誰か止めることはできないのでしょうか。

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 今回のお土産。

十勝地方の中心都市である帯広で、まとまった数の乗車客がありました。
これでようやく特急らしい姿となりました。

道東の中心都市といえば釧路市ということになるのでしょうが、現在は人口では帯広市のほうが上回っています。
札幌とは道東自動車道が繋がっていますが、峠越えがありしかも2車線の高速道路ですから、まだまだ特急『おおぞら』や『とかち』の実力は衰えずといったところでしょうか。

2車線の道東道ですが、現在占冠IC〜十勝清水IC間で4車線化工事が進められており、これが完成すれば強力なライバルがさらに強力になってしまいます。
そうなれば『とかち』の本数削減ということもあり得ますね。
まだ先のことにはなりそうですが、予断を許さない状況です。

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 十勝平野と日高山脈。

帯広を出て、新得が近づいてくると内陸らしい風景になってきます。

『おおぞら』の走る根室本線は、道東と一括りにしてしまいがちですが、特急『おおぞら』に乗ると釧路と十勝というのがこれほど対照的に違うことを感じます。

釧路地方の車窓風景といえば砂浜の海岸とか湿原、それに牧草地といった、ひと気の感じさせない冷たい風景ばかりですが、十勝地方になった途端に整然と手入れされた畑や防風林が多くなって、人里に戻ってきたような気持になってきます。
これと同じ気分になるのは、宗谷本線の稚内から乗って美深あたりまで来たときです。

ここから先は日本であるけど、日本とは別の世界だという見えない線引きがあるような気がします。
こんなことを感じるのも、列車に乗っていればこそですね。

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 逃げるエゾシカ。

新得を発車すれば、ここからは道東と道央を隔てる峠越えとなります。
峠に当たる新狩勝トンネルに向かう線路は、S字カーブを描いた思い切った線形。
新得の町を見下ろしながら列車は走ります。

突然先頭車両の方から警笛が鳴りブレーキがかかります。
ブレーキが効き始めるくらいの段階で、自動放送で「急ブレーキがかかります」と流れました。
このブレーキの原因はシカでしょう。
ちなみにこの自動放送は「急ブレーキがかかりました」バージョンもありました。
こんなのが2回続きます。

ここからは石勝線。山岳路線のためトンネルばかりとなります。
2本目のお酒を飲んでしまって眠くなったので、石勝線内は失礼して寝させてもらいます。

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 札幌貨物ターミナル駅。

南千歳からは札幌圏。
増発した『エアポート』の追い越しができずノロノロ運転となるところが情けないところですが、昨日札幌を出発して道東を一回りし、そのゴールと思えばふさわしい走りっぷりとも思えます。

特急に乗って札幌に戻ってきたら、やっぱり札幌は都会だなあと思うことがあって、それは札幌貨物ターミナル駅から始まる函館本線との複々線区間に入ったときでしょうか。

複々線区間自体は珍しいものではありませんが、特筆すべきは札幌のは方向別複々線と呼ばれるもの。
よく函館本線と千歳線の列車が隣り合って並走する光景を目にしますが、これはJRでは札幌以外では東京と関西だけでしか見られないものです。
私など自慢したくなりますが、あまり話題になることも少ないようなのは残念です。

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 札幌駅に到着。

途中シカによる急ブレーキや徐行がありましたが、列車は18時03分定刻に札幌に到着しました。
天気は今1つでしたが、旅行中にトラブルが発生しなかったのが何よりです。

昨日札幌を出発して、函館本線、石北本線、釧網本線、根室本線、石勝線と1周した距離は、892.1km
やっぱり北海道は広いですね。

宿泊予約サイトの期間限定ポイント付与と、JR北海道のトクだ値60%OFFを使用して思いがけぬ格安旅行となりました。
こんなことでもなければシーズンオフで、まだ冬の延長線上のような道東旅行に出かけることはなかったでしょう。
また、シーズンオフであるがゆえに、ローカル線問題について色々考えさせられることもありました。
『百聞は一見に如かず』とはこのことですね。

最後に今回の旅行の費用を記します。

2024年春、摩周旅行の費用
費目摘要金額
札幌→網走トクだ値60%OFF4,200円
網走→釧路乗車券4,070円
釧路→札幌トクだ値60%OFF3,980円
ホテル摩周4000ポイント使用4,800円
その他費用食費・バス・土産等6,850円
合 計23,900円

〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。


posted by pupupukaya at 24/06/06 | Comment(0) | 道東の旅行記

2024年春、摩周旅行記3

おはようございました。
北海道は弟子屈町の温泉ホテルからのご挨拶となります。

いやあ寒い寒い。
起きたら寒くて暖房のスイッチを入れました。
スマホで弟子屈町の気温を見たら3℃となっていました。
まるで冬に逆戻りですね。

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 青空も見えるようになった朝だが・・・

昨日からの雨は朝方まで降り続き、アスファルトも濡れたまま。
それでも天気は快方に向かっているようではあります。
ホテルの部屋の窓から見ていると、雲の間から青空も見え始め、昨日は見えなかった山の頂上も姿を現してきました。

今日の予定は摩周駅から、8時34分発か12時17分発の釧路行に乗ること。
8時台の列車じゃ早すぎるし、仮にそれで釧路に10時に着いても、釧路で4時間近く時間をつぶさなければなりません。
かといって12時台の列車じゃ、ここ弟子屈で時間をつぶさなければならない。

というわけで摩周湖に行ってみることにしました。
摩周駅から摩周湖第1展望台まで、1日1往復だけですが路線バスの運行があります。
そのバスの摩周駅発が10時30分となっていて、そのバスで往復してくれば12時17分発の釧路行に乗り継ぐことができます。

というわけで、今日の予定が決まりました。
しかしバスで展望台に行ったとて、摩周湖が見られるのかどうか。
ライブカメラで摩周湖の様子を見てみると、濃い霧しか映っていませんでした。

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 お弁当形式の朝食。

朝食は8時に頼んでおいたものです。
昨日の配膳係が現れて、幕の内弁当風のお盆を置いていきました。

エビフライや餃子といった、冷凍ものだろうなと思わせるおかず。
ですが、塩鮭の切り身は最近主流のサーモンと違って塩辛い本物の塩鮭でした。
う〜ん、ご飯が足りないな。
ですがバイキングなんかで、これでもかというほど詰め込んでしまったら、その日1日は食の楽しみがなくなってしまいます。
これはこれでいいのかも・・・


 ◆ 栄枯盛衰の弟子屈町摩周温泉

9時過ぎ、ホテルをチェックアウトします。
昨日のお酒代、瓶ビールと福司のワンカップで900円。
外で買って持ち込むより高いですが、チップ替わりだと思えば安いものです。

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 昔は温泉街として賑わったのだろう・・・

摩周湖をはじめ、屈斜路湖、川湯温泉、阿寒湖といった道東の有名観光地が近い弟子屈町です。
釧路や根室、網走、美幌、帯広と5方向への国道が交差する交通の拠点でもあります。
車で道東を旅行していると、何度もこの町を通ることもあるでしょう。

しかし、鉄道でやってくるとローカル線の途中駅という印象しかありません。
古くからの温泉町で、昔は道東の観光拠点だったこともあったのでしょうが、今ではすっかり寂れてしまった様子です。

そんな町中を抜けて、まずは道の駅摩周温泉へ行ってみることにします。

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 日の光が差し込んだ白樺並木の湯の島通り。

町から道の駅までの湯の島通りの歩道は、両側に白樺並木が続き、足元はピンク色の芝桜が咲くロマンチックな道でした。
歩いているうちに日の光も差してきました。

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 道の駅摩周温泉は旧欧羅巴(ヨーロッパ)民芸館の建物。

道の駅摩周温泉の建物は、弟子屈欧羅巴(ヨーロッパ)民芸館として使われていた建物を閉館後に弟子屈町が買い取って、道の駅としたものです。
今まで車で弟子屈に来たことは何度もありますが、ここの道の駅に来たのは初めてでした。
民芸館時代はヨーロッパのアンティーク家具を展示した施設だったようで、館内はそれに合わせた凝った造りになっています。

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 摩周観光交流館として使用。

館内は町民の作品を展示したギャラリーや観光インフォメーションになっていました。
併設の特産品販売所やテイクアウトコーナーもこの時間から営業しています。
観光シーズンは結構な賑わいになるのでしょう。

また白樺並木の道を通って町に戻ります。

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 廃墟の旧ホテルニュー子宝。

弟子屈の町中を歩いていてやたらと目につくのが温泉ホテルの廃墟。
川湯温泉や阿寒湖温泉のようにここも摩周温泉と呼ばれる温泉街で、賑やかだった頃は夜になると観光客が浴衣を着て散歩する姿も見られたといいます。

ここでまだ温泉ホテルが営業中だった、2004年発行の道内時刻表を引っ張り出してきて、巻末のホテルのご案内を見てみます。

【摩周温泉】
・ホテルニュー子宝
・摩周パークホテル
・ホテル摩周
・ホテル丸米

この当時は4軒のホテルがあったことがわかりますが、現在も営業しているのは今回宿泊したホテル摩周だけとなっています。
まだ記憶に新しい新型コロナの影響でというわけではなく、どのホテルも2000年代には閉業していたようです。

バブル崩壊から平成不況、さらにはそれまでの団体旅行からマイカーやレンタカーでの個人旅行への移行などのニーズの変化。
有名観光地に囲まれたが故の、マイナーな立地。
経営が成り立たなくなった理由はいくつも思いつきます。

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 弟子屈橋と廃墟ホテル。

中でも目立つのは、釧路川と弟子屈橋のほとりにそびえ立つ旧ホテル丸米の廃墟。
この風景どこかに似ています。
私が思ったのは、京都の四条大橋

え?似てませんかね。

その昔摩周温泉と呼ばれていた頃は、この橋を浴衣姿の観光客がそぞろ歩いていたのでしょうか。

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 ホテル丸米、新館と旧館の廃墟。

〇に米の屋号を塔屋に描いたこの廃墟ビルは、明治19年創業の丸米旅館に端を発するという老舗ホテルでした。
いろいろ調べたら、廃業ではなく2008年ごろから休業ということになっているようです。

新館ビルの隣に建つ木造3階建ての旧館も由緒ありそうな建物ですね。
リフォームして公開すればちょっとした観光施設にはなりそうな気もします。

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 旧摩周パークホテルの廃墟と神の湯堂。

隣は丸米旅館よりも古く創業は明治18年の本山旅館という旧摩周パークホテルの廃墟。
道を挟んだ隣は、旧弟子屈町商工会の廃墟。
こちらは張り紙があって、商工会は国道391号線沿いにある釧路圏摩周文化センター内に移転したようです。

旧商工会の前にある祠は神の湯堂。
これも由緒ありそうですが、商工会が移転してからは面倒を見る人がいなくなったのか、荒れるがままという感じでした。

昔は道東の観光拠点として、また温泉街として賑わったことを思わせる弟子屈の町です。
町中に残るホテルの廃墟と寂れた飲み屋街や商店街を見ていると、どこか旧炭鉱町と通じるものがあります。
私は別に廃墟マニアではありませんが、弟子屈の町中にあるこのホテルの廃墟は一見の価値があると思いました。
これも一種の産業遺産として。

摩周湖や屈斜路湖、川湯温泉など有名観光地に囲まれた中で摩周温泉だけが廃れてしまったのはなぜなんだろう。
機会があれば深く考察してみたいところではあります。


 ◆ バスで霧の摩周湖へ

道の駅から弟子屈の町中を歩いてきて摩周駅に着きます。
まだ10時前ですが、もう見るものも行くところもないので。
ていうか、町中を歩いていると一番目立つものがホテルの廃墟というのもどうかと思うんですが。

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 摩周駅全景。 

チェックアウトしたときは青空も見えて、歩いているうちに日の光も差すようになりましたが、駅に着いた頃にはまた一面の曇り空になってしまいました。

バスが来るまで駅の待合室で待たせてもらいます。
すでに観光案内所とその売店が開いていました。
売店といっても置いている商品はお菓子と旅行本くらいなものですが。

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 摩周駅に入居する観光案内所。

観光案内所はおばさんが1人詰めていますが、暇そう。
これもまた暇そうな駅員との会話が聞こえてきます。

「それが、神経が絡まっていて抜くのが難しいんだって」
「そりゃ大変だね」
「わたし無神経なのにこんなところには神経あるんだからねえ、アッハッハ」

・・・誰が上手いこと言えと(笑

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 駅弁は取次ぎ販売。

売店に駅弁『摩周の豚丼』が置いてあったので持ってみると空箱でした。
案内所で聞いてみると、ここで注文して店から持ってくるのでちょっと時間がかかるとのこと。

今から摩周湖に行って、12時17分の釧路行に乗ると伝えると、それまでに用意しておくと言われました。
駅弁代1,200円は前金となります。

しばらくして10時12分発網走行『しれとこ摩周号』の改札となりますが乗客は現れません。
駅の中にいるのは私と、東京から来たというおじさんが1人だけ。
おじさん曰く、今朝の列車で知床斜里から着いて、2時間待ってバスで摩周湖へ行くとのこと。

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 長閑な摩周駅。

ドン・ドン・ドンとどこからか打ち上げ花火の音。

「そういえば今日は運動会だね」
「あ〜そうだったね」
「ところであれ、〇〇〇だったっしょ・・・」

手持ち無沙汰な駅員と観光案内所のおばさんと、また暇そうな会話が始まる、のどかなローカル線の駅なのでした。

私はというと、列車の撮影をしようと駅横の跨線橋へ向かいます。

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 摩周駅に到着する4728D『しれとこ摩周号』。

到着した1両のH100形は花咲線ラッピング車両でした。
1日1本の『知床摩周号』。
しかしH100形であることには変わりなく・・・

摩周駅からの乗車はゼロ、下車客は旅行客らしい3人。
摩周湖に向かうのでしょうか。

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 1日1本の阿寒バス摩周線。

さっき列車で着いた人たちはどこかへ行ってしまい、摩周湖へ行くわけではなかったようです。
やがて駅前のバス停にバスが来ました。

バスは路線バスと同じノンステップバス。
乗り込んだのは駅にいた私と東京からのおじさんだけ。
乗客ゼロで走る日も多いんだろうなあと思わせます。

この路線は摩周湖へ行く唯一の路線バスとなっていますが、1日1往復だけの運行では観光に使いづらいところ。
釧路方面から来て摩周湖まで往復し、また釧路方面へ戻る分には接続が良いですが、斜里や網走方面へ向かうとなると摩周駅で3時間40分も待たなければならないことになります。

このバス路線も、摩周駅の面目を保つために残しているような感じもしました。
摩周湖へ行けない摩周駅では笑い話にもなりませんね。

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 ノンステップバス。

2人だけの客を乗せてバスは発車します。
バスは道の駅摩周温泉を経由して道道屈斜路摩周線へと入ります。

残念なことに、山が近づくにつれ天気は雨模様に。
窓ガラスに水滴が付き、道路も濡れた路面になってきました。
今朝ライブカメラで見た摩周湖は霧で真っ白でしたが、これじゃ状況は変わっていないでしょうね。

だからと言って摩周湖に行かなければ、弟子屈の町で行くところもすることもないわけで。
霧で湖が見られなかったら、「霧の摩周湖で何も見えませんでした」とでも話のタネにするしかないようです。

山道を進むうちに、道端が白くなっているのに気づきました。
なんと、うっすらと雪が積もっていたのでした。
あとで知りましたが、この日の朝は峠のほうでは雪道にもなっていたようです。

2人のおっさんを乗せたバスは摩周湖第1展望台に着きました。
駐車場が終点となり、折り返し発車までここで待機するようです。
ここまでのバス料金は570円。
ちょっと高い気もしますが、仕方がありません。

バスを降りると雨は上がっていましたが、寒いこと。
摩周湖が見えるかどうかは、展望台デッキへの階段を登ってみるまで分かりません。

階段を登って、いざ勝負!


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 雲の下に姿を現した摩周湖。

「摩周湖が見えますよ!」

思わず振り向いて東京のおじさんに叫びました。

おお〜、霧が消えて摩周湖の湖面が見えています。
なんと悪運の強いこと。

しかし風が強いせいか湖面はさざ波が立って、外輪の山々も上のほうは低く垂れこめた雲の中に隠れてしまっています。
カムイヌプリ(摩周岳)も雲の中。
でも、これはこれでアリなんじゃないでしょうか。

雲の下に現れた神秘の湖にも見えます。
いささか負け惜しみ気味ですが。

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 看板の前の記念撮影スポット。

第1展望台のレストハウスは改装されて、摩周湖カムイテラスという名がついていました。
この建物の湖側入り口にある摩周湖の看板は、記念撮影の人たちがひっきりなし。
屋上だとあけっぴろげ過ぎて、こっちのほうが見栄えするのかもしれませんね。

中に入るとあったか〜い。
しばらく売店のお土産なんかを眺めながら過ごしました。

こんな天気ですが、やはり観光客がたくさんいますね。
ほとんどは車で来た人たち。
あと観光バスで来た外国人観光客。

その中で摩周駅から路線バスで来たのはたったの2人だけ。
そういう意味では、私たちは貴重な訪問客といえそうですね。

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 展望台の地面は雪が積もる。

バスの発車時刻は11時25分。
摩周湖の滞在時間は30分ありますが、見栄えのしない眺めにこの寒さでは時間を持て余してしまいます。

駐車場の受付小屋に温度計があったので覗き込むと1℃を指していました。
さすがに路面に雪はありませんが、夏タイヤだと運転が怖いですね。

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 駐車場で帰りの乗客を待つ摩周線のバス。

う〜寒い寒い。
バスに戻るとドアが閉まっていましたが、運転手が私に気づくとドアを開けました。
東京のおじさんは、かなり前からバスに戻っていたようです。

戻りのバスはまた乗客2人だけ。
途中から乗ってくる人もなく、摩周駅には5分早く着きました。
また570円を降りるときに払います。
今度は小銭がなく、千円札を両替することになりました。

小銭が増えるのが煩わしい。
当然ICカード乗車券など使えるはずもなく。
せめて駅の観光案内所で、摩周湖までの往復乗車券を販売してくれたらありがたいんですけど。


posted by pupupukaya at 24/06/02 | Comment(0) | 道東の旅行記

2024年春、摩周旅行記2


 ◆ 網走 15:16 → 摩周 17:09【4727D】

雨の中歩いて網走駅に戻ってきました。2時少し前。
今回の旅行は珍しく雨に当たってしまいました。
これも考え方を変えて、雨の旅情と思えば悪くはないんじゃないでしょうか。

それはいいけど、風が冷たい、寒い。
スマホで網走の気温を見ると、5.3℃を表示していました。
5月の道東は、ときに冬に逆戻りすることもあります。

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 網走駅、雨の旅情。

次の釧網本線の列車までまだ1時間以上ありますが、駅の中で過ごしているしかありません。
待合室のベンチは、次の列車を待つ人たちがいて、この雨の中どこへも行きようがなく、ぐったりしている様子。

そんな待合室ですが、駅弁屋のモリヤ商店だけが華やかに店を開けています。
キヨスクは既に撤退し、駅前にあったコンビニも閉店した今、網走駅で唯一買い物できる場所となっています。
ここの駅弁、かにめし弁当は本当に美味しい。

1個買いたくなりますが、今夜の宿は夕食付きなので、残念ながらまた今度。
とは言え、今度列車で網走に来るのはいつだろうな、その頃はまだ営業しているのかなあとも頭をよぎります。

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 国鉄駅風の網走駅待合室。

今年3月のダイヤ改正から釧網本線の列車もH100形気動車に置き換えられ、網走駅に発着する普通列車はすべてH100形となっています。

ホームから外れた構内に、2両のH100形が停車しているのが見えました。
もしかしたら、あれが今度の釧網線釧路行になるのではと期待します。
2両編成ならば、かなりゆったりと車内で過ごせそうです。

やがて構内外れの2両編成が動き出し、願いもむなしく1番ホームに入線しました。
1番ホームは西留辺蘂行の乗り場。
続いて構内外れにはたった1両の車両が見えました。
あれが釧網線釧路行になるのでしょう。

1番ホームに停車中の列車は、14時56分発西留辺蘂行2両編成。
2両なのは北見からの学生帰宅ラッシュに備えてのことです。

釧路行が発車する3番ホームに入った列車は、やはりさっき見た1両でした。

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 国鉄駅風の網走駅待合室。

14時40分、西留辺蘂行と釧路行の改札が始まりました。
釧路行は15時16分発なので30分以上も前からの改札ですが、ホームに停車しているのだし、ほかに行くところもないので早く列車に乗れる分にはありがたいことです。

数人の客とともに跨線橋を渡って3番ホームへ向かいます。

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 デクモH100形の釧路行。

デクモ(DECMO)の愛称を持つH100形気動車は、2020年3月ダイヤ改正から運行を開始した車両です。
初登場は函館山線の長万部〜小樽間。
それまで大多数を占めていたキハ40形気動車の置き換えのために製造が開始されました。

その後はダイヤ改正ごとに増備が続いて、室蘭本線、根室本線、宗谷本線、石北本線など道内主要線区の気動車列車はH100形に統一されています。
冷房付き、大型の明るい窓が斬新な新車ですが、反面トイレがバリアフリー対応となった為に妙に広いスペースを取られたこと、機器室の出っ張りなど、客室以外のスペースに占拠される車内となってしまいました。

このH100形の座席定員はわずか36席。
キハ40形が66席でしたから、ほぼ半減という恰好になります。

様々なニーズを、たった1両に集約したらこうなりましたというような車両。
しかしこのトイレだけは・・・、ほんの一握りいるかいないかのマイノリティのために・・・

・・・おっと、今は健常マジョリティにこんな発言が許される時代ではなくなってしまいました。
こんなこと言う私は、古い昭和の人間ということになるのですかね。

でも乗降口はステップ付きで、車椅子は対応不可という中途半端な車両なのはどうしたことか。
建前と本音を地で行く車両でもあります。

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 デクモH100形の車内。

席取り競争に参加する気はないのでロングシートに座って行くつもりでいましたが、乗ってみるとボックスシートが空いていました。
4人掛けボックスシートを1人で占拠するのもどうかと思いましたが、空いているので座ってしまいます。
外を見る分にはロングシートよりも快適ですね。

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 網走→釧路の乗車券。

網走から釧路までの移動に使うきっぷは片道乗車券。
同区間の営業キロは169.1kmで4,070円はずいぶんと割高な気もします。
これは札幌からの行き帰りに使用したトクだ値60%OFFが、あまりに思い切った割引設定だったからでしょうか。

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 遠軽発の4663Dが到着。

席に座ってしばらくすると、向かいの2番ホームに2両編成の列車が到着しました。
北見発で網走14時45分着の普通列車。
降りた乗客は学生を中心に地元客ばかりのようでした。

この着いた列車は、乗客を降ろすと切り離し作業を始めました。
作業が終わると、先頭車両の表示器はそれまでの『網走』から『釧路』に。
どうやらこの1両は、次の16時20分発釧路行になるようです。

こちらの車内は時間の経過とともに乗客が増えてきました。
スーツケースを持った旅行客らしき人も目立ちますが、圧倒的に多いのは学生をはじめ地元客。
あとは私を含む乗り鉄らしきお兄さんがチラホラ。

網走発車時点での乗客数は30人といったところ。
このボックス席も4席埋まりました。
だいぶ窮屈になりましたが、立ち客もいるなかボックス席を1人で占領しているよりは気が楽です。

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 桂台から乗ってくる学生客。

見た目の乗車率だけは立派なものとなって網走を定刻に発車します。
ですが、そもそも座席定員が36席しかない車両なので、数字の上では路線バスで使用されるワンステップバス1台で収まってしまうくらいの乗客数なわけですが。

次の桂台では下校の高校生が数人乗ってきました。
車内は立つ人も出てきます。

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 暗いオホーツク海。

桂台を発車してすぐのトンネルを抜ければ、知床斜里までは左側にオホーツク海を見ながら走ります。
晴れていれば水平線に知床連山を望む風景も、雨の中では侘びしい砂浜が続くだけ。
この風景に最果てらしさを感じれば、それはそれで旅情といえます。

でもボックス席に見知らぬ4人が相席では、最果て感よりも窮屈感のほうが上回ります。
それでもH100形のボックスシートはシートピッチが拡がっていて、以前のように膝を突き合わせるほどではないのが救いです。

途中の北浜や浜小清水での下車客もありましたが、車内の動きはほとんど無し。
知床斜里で多くの乗客が席を立ちました。

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 下車客が多い知床斜里駅。

知床斜里駅の駅前からウトロや知床五湖へは斜里バスによる路線バスも運行し、知床方面への定期観光バスもここ斜里駅から発着しています。
網走方面への路線バスが無い状況なので、その名の通り世界自然遺産である知床への玄関口でしょう。

地元客のほとんどと、観光客らしい一部の客は知床斜里で下車しました。
その入れ替わりに乗ってきたのは中国系の観光客。
空いた席はまたふさがります。

知床を一周りしてきて、この列車に乗り継いだのでしょうか。
定期観光バスは、ちょうどこの列車に接続するダイヤとなっています。

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 ビートやジャガイモ畑が広がる斜里平野。

知床斜里からはオホーツク海と別れ、斜里平野に広がるビート畑やジャガイモ畑の中を進みます。
植え付けの終わったばかりの広い畑を見ていると、憎たらしい今日の雨も農家にとっては恵みの雨なんだろうなと思えてきました。

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 清里町で網走行4730Dと交換。

清里町に停車すると運転士が「ここで上り列車待ち合わせで4分停車します」との放送がありました。

ここは元は上斜里村といっていましたが、1955(昭和30)年の町制施行時に清里町と改めたので駅名も清里町としたものです。
清里の由来は北海道駅名の起源によると、小清水と斜里の一文字ずつ取ったものなのだとか。
あまり北海道らしくない駅名なのは人工的に付けられた地名だからでしょう。

ですが、斜里平野のイメージには合っています。
なお、先に山梨県の清里駅があったので、同名の駅にはさせてもらえなかった模様です。

最前部の窓から対向列車が来るのを待ち構えていると4分は案外長い。
16時20分、釧路発網走行の列車が現れました。
出発信号機が青になればこちらも発車です。

だんだん平野から谷間の風景となり、緑を発車すると峠越えとなります。
右も左も深い森で、並行する道路もない雨の峠道は夕暮れのような暗さ。
まばゆいばかりに明るい車内が妙に安心感があります。
これは鉄道ならではでしょう。

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 摩周駅直前の車内の様子。

知床斜里や清里町で地元客はいなくなり、車内の客は観光客、乗り鉄、中国系観光客といったところで、総勢10数人。
ロングシートの座席も余裕があり、これが普段の釧網本線の姿なのでしょう。
観光路線ですが、函館山線や富良野線ほどの勢いは見られないのはどうしたことでしょう。

川湯温泉で2人下車。
今日の宿は温泉ホテルなのでしょうか。
ここの駅から川湯温泉へは列車に合わせて路線バスが運行しているし、温泉宿の予約客ならば頼めば送迎してもらえます。

美留和の次は摩周。
私はここで途中下車して1泊することになります。

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 摩周駅に到着。

17時09分、定刻に摩周到着。
なぜか3番ホームに入ります。
あとで駅の時刻表を見たら、この釧路行4727Dだけが3番ホームに発着する唯一の列車。
理由はわかりません。
時刻表に載っていない臨時列車のスジでもあるのでしょうか。

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 ホームで釧路行列車を見送る。

摩周駅では5人の乗客が乗り込んで発車して行きました。
反対に下車したのは私1人だけ。
霧雨の舞うホームで1人釧路行の列車を見送ります。

摩周駅の営業時間は15時10分までなので、この時間はすでに無人駅になっています。
霧雨と薄暗いホーム、客は私1人だけ。
なんだか寂しい駅に着いてしまいましたね。
改札口のドアを開けると、待合室の観光案内所は明かりが点いていてまだ営業中でした。

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 弟子屈駅から摩周駅に改名された時に新築された駅舎。

今日の宿泊地である摩周に着いたわけですが、私などこの地は弟子屈(てしかが)と呼んでしまいます。
この駅は元は弟子屈駅だったのと、町名は弟子屈町なので。


 ◆ ホテル摩周

今日予約している宿はホテル摩周。
駅からの距離は1.1kmと、徒歩圏内にあるホテルです。
旅行出発前の宿泊予約時の話に戻りますが、摩周駅近くというか弟子屈町の市街地でホテルと呼べる宿泊施設は、今日泊まるホテル摩周1軒だけしかないと分かりました。

20年ほど昔の時刻表の巻末にあるホテル一覧を見ると、『摩周温泉』の括りで数件のホテルが掲載されていましたが、現在は1軒以外はすべて廃業した模様です。
その1軒が今日予約しているホテルです。

弟子屈・・というか、摩周駅界隈の見物は明日にすることにして、今日はまっすぐホテルへと向かうことにします。

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 この先にホテルはあるのか?

霧雨の中、傘を濡らすのも面倒なのでレインハットをかぶって歩きます。
釧路川の川沿いや、昔は温泉街だったんだろうなあと思わせる寂れた町中を歩いてホテルへと急ぎます。

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 ホテル摩周(翌日撮影)。

駅を出てから12〜13分でホテル摩周に着きました。
寒かったなあ。早く温泉に浸かりたい。

今回は朝夕2食付きです。
それも今時珍しくなった部屋食となっています。
フロントで夕食の時間を聞かれ、6時半と言うとその時間に集中するのか、
「う〜ん、6時40分くらいになりますが、いいですか?」

まあしょうがないね。その分ゆっくり温泉に入れるというものだ。
同時にビールとお酒を1本ずつ付けてもらうことにした。

外で買うより割高になってしまいますが、網走からここまで途中で買い物できるような店もなかったので。
何より、風呂上がりに冷たいビールを飲みたい。
生ビールはやってないのか聞いてみましたが、夏シーズンしかやっていないとのこと。

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 ホテル摩周の和室。

客室は2階で、部屋は和室に布団が敷いてありました。
最初から布団が敷いてあるというのも、人手不足の最近は標準となりつつあるようです。

滞在中に布団敷きの人がやって来るのも、客からすれば煩わしい思いというのも正直言ってあります。
温泉宿なので大浴場がありますが、部屋にもバス・トイレが付いているのでビジネス向きでもあります。

布団は、あとで夕食が来るので、畳んで脇に寄せておくことにしました。

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 浴場の入口。

すっかり冷えてしまったので、まずは大浴場へ。
大浴場と思っていましたが、浴場は思いのほか狭く、3つしかない洗い場には2人の先客がいました。
男3人じゃいささか窮屈です。
先客も、観光ではなくて工事かなんかで滞在している人のようでした。

そういえばさっき通った駐車場の車も、道内ナンバーばかりだったような気がします。
シーズンオフは観光客よりもビジネス客が主体なのでしょうか。

先客2人が上がると貸し切りに。
やっぱり源泉の温泉は違いますね。
お湯から上がると汗がドバドバ吹き出します。
これはビールが旨いぞう。

久しぶりに長湯をして部屋に戻れば夕食が待ち遠しい。
普段はめったに見ないテレビなどを眺めて過ごします。

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 ホテル摩周の夕食。

やがて夕食が運ばれてきました。
お膳に乗った料理、お櫃に入ったご飯。お椀の吸い物。
別注文のビールとお酒。

お膳に乗って料理が供されるというのも久しくなかった気がします。

「食べ終わりマシタラ、7番へ電話シテクダサイ」
配膳係は外国人なまり。
でも日本語は結構上手のようです。
こうしたことも、最近は珍しくなくなりました。

まずはビールだビール。

瓶ビールをグラスに注いでググ〜ッと・・・・
うめ〜〜〜!
生き返る!

さて、改めて料理を見回します。
メインはビーフステーキですね。
皿に乗りきらず、二段になっているのが微笑ましい。
柔らかくてうま〜い。
焼き加減はミディアムでした。

もう1つのメインは、魚介のフライ3種。
エビとタラとイカ。
それにタルタルソースがたっぷり。

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 ちょっと寂しい部屋での宴。

ボリュームはすごいな。
あまり年寄り向けではなく、食べ盛りの子供などは喜びそう。
今回はポイント使用の4,800円で泊まっていますが、定価の8,800円でも結構な掘り出し物ですよ。

ビールだけでは物足りなくなって、お櫃からご飯をよそっていると、
「お食事を下げにキマシタ〜」
とさっきの配膳係がやって来ました。

呼んでないよと言うと、
「キャーゴメンナサ〜イ!」と言って去って行きました。
よその部屋と間違えたのか。困ったものよ・・・

食堂だと酒飲みは長っ尻の客となってしまいますが、部屋食ならばこんなこと気にする必要もなく、ゆっくりやらせてもらいます。
だけど1人だけだと寂しいな。

食べ終わったのでフロントに電話して下げてもらいます。
さっきの配膳係が、
「さっきはスミマセンでした〜」
と言ってやって来ました。

今度は持ってきた焼酎をお湯割りにして、いつもの晩酌をして過ごしました。

3へ続く   

posted by pupupukaya at 24/06/01 | Comment(0) | 道東の旅行記

2024年春、摩周旅行記1

5月初め、出張なんかでよく使っている宿泊予約サイトに、期間限定ポイントが追加されていることに気づきました。
溜まっていたポイントと合わせると4000ポイント。
しかも期間限定ポイントは5月中が期限なので、今月中に使用しないと失効してしまいます。

そこで、どこか旅行でもしようかとホテルや旅館を物色してみたわけですが、どこも高いこと。
コロナ終了以降激増しているインバウンド需要で、ちょっとした観光地ならばどこも強気価格となっています。
クーポンで4000円引きになるとはいえ、1人旅で1泊1万円以上するホテルはさすがにもったいなく、敬遠します。

もう1つがどういう交通手段で行くか。
ちょうどJR北海道では『えきねっとでおトクにGOキャンペーン』というのをやっていて、えきねっとで21日前までの予約で、道内特急が片道60%引きになるというもの。

その名も『特急トクだ値スペシャル21』。

これを使わない手はない、と思ってえきねっとで各方面の特急を検索してみました。

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 えきねっとの予約画面。

私は勤め人なので週末を絡めての旅行となります。
で、週末の特急を検索してみますが、えきねっと上で『トクだ値60%OFF』と表示される商品は早くも売り切れなのか、全然表示されません。
根気よく各方面を検索していると、5月24日の下り『オホーツク1号』、翌日の上り『おおぞら8号』がようやくヒットしました。

この移動だと、網走から釧路までは普通乗車券を別途買うことになります。
こんなことでもないと釧網本線に乗ることもないだろうし、それに今春ダイヤ改正でH100形車両に置き換えられた釧網本線がどんなものか乗ってみたいと思い、このルートとすることに決めました。

このトクだ値60%OFFは、指定席の予約状況を見る限り、1列車当たり30席程度しか発売していなかったと見て取れました。
21日前を待たずして売り切れた列車が多かったようです。

次は予約サイトでホテルの検索です。
当初は斜里か川湯温泉で探しましたが、やはりどこも高い。
駅から離れると移動が面倒ですし、網走や釧路のビジネスホテルに泊まってもつまらないねえ。

これも根気よく宿泊サイトで探したら、摩周駅近くに手ごろなホテルを見つけました。
摩周駅から歩いて10分ほど。1泊2食付きで8,800円のところクーポン使用で4,800円に。

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 券売機で発券したきっぷ2枚。

この勢いで行き帰りの特急列車とホテルの予約をしてしまいました。

それでは以下旅行記どうぞ ↓ ↓


 ◆ 札幌 6:52 → 網走 12:42【オホーツク1号】

待ちに待った旅行日当日。
道内の1泊2日旅行ですが、旅立ちというのはワクワクするもので、目覚ましよりも早く起きて、朝6時半前に札幌駅にやってきました。

まずやらなくてはならないのが、えきねっとで予約していたきっぷの発券。
これは指定券券売機かみどりの窓口でしか行っていないので、設置していない駅からの乗車は、事前に別の駅で発券しておかない限り不可ということになります。

何よりも面倒くさい。
今日は朝早いので西コンコースの券売機は並ばずに利用できましたが、この場所は昼間など大行列しているのを目にします。

早くチケットレス化してほしいものです。
早くチケットレス化してほしいものです。
早くチケットレス化してほしいものです。

このブログではJRの特急列車を利用するたびに主張していることなので、3回言いました。

特急全車指定席化が何かと批判の的になっているようですが、これはチケットレス化を推進すれば解決する問題だと思っています。
駅に早めに行って席取りの行列に並ぶより、スマホやPCで好きな席を選べる方が便利なのは言うまでもありません。
チケットレス利用者限定の各種割引を充実させて、そちらへ誘導すれば良いだけのことなのです。

有人窓口でないと嫌だという保守的な人たちには、正規の運賃・料金で利用して貰えばいいだけの話。
昨今は銀行での振り込みだって、窓口利用だとATM利用の倍以上の手数料を取られる時代ですからね。

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 今は石北線系統専用車両となった283系車両。

石北本線系統の特急『オホーツク』『大雪』は2023年3月ダイヤ改正から283系車両による運転となっています。
特急『おおぞら』の全列車261系化に伴って転出してきたもの。
同時に普通車モノクラスとなり、3両編成となりました。
私はこの車両になってから、初めて乗ることになります。

ヘッドマークの、緑色の『オホーツク』文字の下に表示された流氷イメージはなぜか真っ赤。
これじゃ流氷というより溶岩のように見えます。
強いて言うならば、夕日に照らされた流氷?

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 オホーツクの乗車口。

指定された席は先頭車両の1号車。
5月後半の金曜日は閑散期なのか車内は空席が目立ちます。
札幌発車時点での乗車率は、40%といったところ。私の前後の座席は無人でした。

1両だけの自由席はさすがに乗車率が高いですが、それでも通路側席は空席が目立ちます。
客層はビジネス客が中心。
インバウンド客は・・・乗ってはいるのでしょうが、あのバカでかいスーツケースは見かけませんでした。
乗り物はすいている方が快適なのは言うまでもありませんが、ちょっと寂しいスタートです。

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 小雨模様の札幌を発車。

札幌は家を出た時から小雨模様。
天気予報では網走地方も釧路地方も雨。
午後からは曇り予報になっているので、せめて雨に当たらないことを期待したいところ。

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 幕の内弁当いしかりと純米酒金滴。

乗車前にコンコースのキヨスクで金滴のカップを2本とお茶を買っていました。
トクだ値スペシャル21期間中は特典もあって、対象店舗できっぷを掲示すれば乗車日当時に限り特典が受けられるというもの。
キヨスクや四季彩館では提示すると10%割引になります。
それで、お酒とお茶を10%割引で買ってきました。

駅弁の弁菜亭売店では色々迷った挙句、結局幕の内弁当いしかりに。
この弁当の中身は、もう20年間は変わっていないじゃないかな。
でも外れなし。安定の幕の内弁当。

旅の途中とはいえ、平日の朝からお酒というのもどうかと思えますが、車内はすいているから別にいいんじゃない?
え〜い、飲んじゃえ!

というわけで、朝から駅弁をつまみに一杯やらせてもらいます。

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 おおぞら時代から変わらない車内。

テーブルに駅弁とお酒を並べ、呑み鉄を楽しむことにします。

『おおぞら』時代は韋駄天というか、爆走という表現が似合う走りっぷりだった283系ですが、石北線特急専用となったことで、少しは大人しい走りっぷりとなったのではと思いこんでいました。

ところが走り出すと、これでもかというほど上下と前後の振動がすごいこと。
カップ酒のビンがテーブルから転げ落ちるんじゃないかと思うほどです。

けたたましく吹かすエンジン音に、時折り床下からウィーンと機械が動く音。
あとはシフトチェンジしたときにドーンと前後に激しい衝撃が走ります。
これはオートマチック車のはずなので、運転士の腕の問題ではないようですが。

ともかく、石北線特急用にスローダウンしても、283系は喧(やかま)しい車両には変わりなかったようです。

これだけ力強い走りっぷりを演出しているのですが、最高速度は110km/hに抑えられていることもあって、札幌〜旭川間の所要時間は183系時代とほとんど変わっていません。

遅い遅いと言われていた183系『オホーツク』からの車両置き換えでした。
しかし利用者目線で言わせて貰えれば、所要時間が変わらないのであれば、乗り心地が悪くなった分だけ損となった格好です。

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 田植えが終わった上川盆地。大雪山は雲の中。

札幌から1時間36分で北海道第2の都市、旭川に到着。

旭川で席を立つ人もいましたが、乗って来る方が多く、空いていた席もいくつか埋まります。
それでも乗車率にすると50%前後といったところ。
最近はインバウンド客で特急が混雑しているという話も聞きますが、この列車に関する限りは閑散期の普段の特急という感じでした。

新旭川からは石北本線へと入ります。
米どころ上川盆地は田植えも終わってひと段落といった風景が続きます。
小雨模様なのも相変わらず。
風向きによっては窓ガラスに細かい雨粒がパラリとやって来ます。

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 中越信号場を通過。

上川駅を発車すると3駅連続の各駅停車となります。
かつてはこの区間には駅がいくつもありましたが、利用者が極端に少ないことから特急停車駅だけ残して廃止されました。
廃止されたとはいえ、交換設備が残されて信号場として使用中のところもあります。

木造駅舎が残る中越信号場も、駅から信号場に格下げされた停車場のひとつ。
中越信号場から石北トンネルまでの約7kmの区間は25パーミルという急勾配が連続する石北本線最大の難所となっています。
183系時代の『オホーツク』はこの坂を50km/hで登っていましたが、283系車両はいったいどれだけの性能を見せてくれるのでしょうか。

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 旭川紋別自動車道、国道333号と並行して峠越え。

スマホのスピードメーターアプリをONにして、いざ測定。
見ていると60km/hまで加速したら55km/hへと減速、また60km/hまで加速するの繰り返しのようでした。
183系と比べたら10km/hほど向上していることになります。

この283系は、エンジン音を聞く限りではまだまだ余裕という感じがしました。
これは半径300mという急曲線による速度制限と、やはりエンジンの負荷運転を避けるために余裕を持った運用としたからでしょう。

石北トンネルを抜けると今度は25パーミルの下り勾配となりますが、こんどは曲線制限の75km/hが最高速度となりました。
これ以上の速度向上となると、振り子機能を作動させることになりますが、これをするには地上側の重軌条化工事も必要となるので、ちょっと無理っぽいですね。

それでも登り坂でのスピードアップの効果はあって、オホーツク1号の上川〜白滝間の所要時間を比べると、

 183系オホーツク:39分
 283系オホーツク:36分

と僅か3分ですが短縮しています。

峠を越えれば遠軽まではずっと下り勾配。
白滝からは線形も良くなり、90km/h以上で走る区間もありました。

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 丸瀬布で『大雪2号』と交換。

丸瀬布は時刻表では10時10分発となっていますが、10時06分の到着。
ここで4分停車で上り『大雪2号』の交換待ちとなります。

さっきの峠区間のスピードアップで、所要時間は183系時に比べ3分短縮しました。
ところが、丸瀬布の交換待ち停車で、せっかく稼いだ短縮時間を食い潰す格好となっています。
こちら札幌直通の定期列車を待たせる相手は、旭川止まりで季節運休もある列車。

これがなければ、札幌〜北見間の所要時間は4時間30分を切っていたんですけどね。
もうちょっと何とかならなかったものかと思います。

遠軽が近づくと、車内放送で進行方向が変わる旨の放送が流れます。
石北特急で昔から変わらないのが、遠軽でのスイッチバックと座席回転です。

「前後のお客様と相談の上・・・」
とは定番となった車内放送。

今日はすいているので簡単に終わりましたが、混んでいるときは一大イベントとなってしまいます。

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 スイッチバックのため3分間停車の遠軽駅。

あと前回乗った時は無かった案内がありました。
それは、3分間の停車時間があるので、ホームの自動販売機で買い物ができることを案内していたことです。
これは編成が短くなったことと、ドアが増えたからでしょうか。

せっかくの案内なので、私もちょっとホームへ降りてみます。

ホームに2台設置の自販機で買えるものは、ペットボトル飲料とチョコレート菓子くらいしかありませんが、ちょっとした気分転換ができるのはいいですね。
車内販売も車内の自販機も消えてしまった今、283系化のちょっとした恩恵とも言えそうです。

遠軽からは進行方向が変わり、生田原からは2回目になる25パーミルの峠越え。
こちらも最高速度は60km/h止まり、峠を越えて下り坂になると75km/hとなる同じような走りでした。

留辺蘂からは直線区間が多くなり、92〜3km/hで快調に走ります。

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 網走湖が見えてくれば終点網走は近い。

北見で車内の半分近くの人が下車して、すっかり寂しい車内となってしまいました。
暗い空とガラ空きの車内に、どこか最果て感も漂っています。

去年、フィンランドの北極圏を走る列車に乗りましたが、その列車の終点近くもこんな感じだったと思い出しました。
あの時も雨がショボショボ降って暗い空だったなあ・・・

呼人を通過して、国道を挟んで網走湖が見える区間は石北線の見どころの1つでしょう。
しかし今日は、湖面も空もどんよりと雨模様。

この後は、網走で3時間も時間を潰さなければならないわけで・・・
心なしか、暗い気分になりました。

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 終着網走駅に到着。

札幌から5時間20分かけて走ってきた『オホーツク1号』は1分の遅れもなく終着の網走に到着しました。
だけど今日ばかりは定時運転が恨めしく、1時間くらい遅れて欲しかったなというのが内心です。

次に乗り継ぐ釧網本線の列車は15時16分発の釧路行。
ここ網走で3時間04分の待ち時間となるわけです。しかもこの雨の中。

その次の釧路行はというと16時20分発ですが、この次の特急の到着時間が16時34分着の『大雪3号』なので、タッチの差で間に合わず。
網走駅での特急と釧網本線の接続の悪さは困ったもので、特急が『オホーツク』と『大雪』に分離されてからこうなってしまいました。

釧網本線は廃止候補に挙がっている線区ではありませんが、『鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区』という位置づけになっていることから、将来も安泰とは言えない線区の一つです。
そこで沿線自治体も利用促進に向けた協議会を立ち上げているわけですが、その中身をざっくりと言えば観光客の誘致というもの。

観光利用を増やして鉄道存続へとつなげるという考えは否定はしません。
しかしそれ以前に、利用したくても出来ない不便なダイヤなのでは、観光客誘致以前の問題だと思うのですが。

かといって本数が少ないうえに最近はさらに減らされた路線だし、車両や乗務員の数も限られています。
沿線高校の登校・下校時間も考慮する必要があり、さらに釧路側の接続も考慮しなければなない。
これが特急のダイヤが大きく変わっても釧網線のダイヤを変えることができない事情です。

かといって沿線人口が減る一方では、肝心の地元利用客も減る一方。
ニッチな観光需要を拾って細々とやって行くしかないのでしょうか。


 ◆ 網走市立郷土博物館

不便さを愚痴ってみても仕方がないし、せっかく網走まで来たのだから網走観光でもしてきましょう。
路面が乾き気味なので雨は上がったように見えましたが、表へ出ると霧雨が舞っていました。
傘を差すほどではなく、レインハットを被って出かけます。

そういえば2022年の知床旅行の最初に立ち寄った網走も雨が降っていたなあ。
どうも網走は雨に縁があるようです。

3時間と時間はたっぷりとあるけれど、今回は駅から歩いて行ける場所にしました。
向かうは網走市立郷土博物館。
駅から徒歩20分ほどなので、ちょうどいい時間つぶしにはなります。

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 旧網走刑務所正門として使われていた永専寺山門。

途中にある永専寺というお寺の山門は、かつて網走刑務所の正門として使われていた木造の門が残っています。
1924(大正13)年に現在のレンガ積み正門が完成した時に、山門として払い下げられたもの。
明治時代の和洋折衷建築を伝える貴重なものだそうです。

山門に続くレンガ塀もなかなか味わいがありますね。
と思って角を曲がると、
『地震の際、通行注意』
の張り紙が。
どうやら鉄筋が入っていないのか、地震で塀が倒れる恐れがあるようです。

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 昭和11年建築の網走市立郷土博物館。

踏切を渡って坂を登った先に、ドームがそびえる昭和のハイカラ風な建物が見えてきました。
この建物は1936(昭和11)年に北見郷土館として建築されたものです。
建築家の田上義也によって設計された建物で、遺作となる建築物は札幌の旧小熊邸など名建築として道内に数多く残っています。

駐車場らしき場所には車はなく、ここまで来て閉館だったらどうしようと思いましたが、入り口には『開館中』の札が掛かっていたので一安心です。

開館中にしては暗いエントランスのドアを開けると、すぐのところに受付がありました。
覗くと、奥で本を読んでいるおじさんが1人。

客が来たと気付くと出てきました。入館料の120円を払いパンフレットを受け取ります。

おじさんが先に中に入って行ったと思ったら、中の部屋の照明のスイッチを入れました。
もしかして、今日最初の客だったのか・・・

おじさん曰く、
「2階もあるから見てってくださいね」

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 いかにも昭和初期を思わせる造り。

1階はアザラシやヒグマの剥製や標本を陳列した網走の自然をテーマにした展示コーナー。
2階は網走開拓以来の歴史がテーマとなっています。

古びた展示室というか標本室みたいな雰囲気ですが、昔の手作りらしい良さと思えば悪くはありません。
建物が古いせいなのか、元からそういう風に作ったのかはわかりませんが、歩くと床がやたらとギシギシと音を立てるのが気になります。
階段など踏み抜くんじゃないかと思ったほどですが、88年も現役で使われている建物なので、そんなことはないわけで。

私は建築のことはよくわかりませんが、階段の手すりや天井などはいかにも昭和初期を思わせます。
階段の吹き抜けにあるステンドグラスがロマンチックな感じでいいですね。
展示物だけでなく、この建物自体を見学する価値はありそうです。

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 アイヌ文化のコーナー。

個人的には2階の歴史コーナーの方が面白かったかな。
1階の自然と違って、こちらは人間様の展示物。
アイヌから始まって、明治、大正、昭和時代の資料が展示されています。

明治大正や昭和戦前の資料が並ぶ奥に、ちょっと異色な場所がありました。
昭和時代の生活、キッチン周りを模したコーナーです。

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 ザ・昭和。

電気製品を見ると、1970年代の家庭の風景といったところでしょうか。
私など幼いころに実際にこんな家の中で暮らしていたので懐かしい。

反面、昭和時代というのが展示物になるほど時が流れたんだなあ、昭和も遠い時代になってしまったんだなあ、などと実感してしまいました。

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 ひええええ、ヒグマが現れたあ!!熊出没注意!

1階はトドやアザラシの剥製が所狭しと並べられていますが、さほど興味もなく。
30分くらいで見るものも無くなり、次へ向かうことにします。

いつの間にか他の客の姿があり、アメリカ人らしい夫婦。
何か思うところがあるのか、展示品の捕鯨砲を熱心に眺めていました。
網走は、過去には捕鯨の基地でもありました。

表へ出ると、雨が上がる期待もむなしく本降りに。
今度は傘を差して坂を下ります。

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 道の駅流氷街道網走。

次に向かったのが道の駅流氷街道網走。
冬の流氷シーズンならば砕氷観光船『おーろら』の発着場所となるのですが、夏場は主に特産品販売コーナーとレストランの施設となっています。
ちなみに観光船の『おーろら』は夏の間は知床で働いています。

ここへ来たのは、網走湖名産のしじみを加工したものが手に入らないかと期待したのですが、今回はそういった物は見つかりませんでした。
今日は特に買いたいものもなく。
レストランもありますが、今夜の宿が夕食付きなので腹を空かせておかなければ。

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 『北の桜守』撮影セットの展示。

雨が止む気配もなく、しばらく館内のベンチに腰掛けて休憩します。
ここの一角に『北の桜守』の映画で使われた撮影セットが展示されていました。

戦後、樺太から網走に引き揚げてきた母子の暮らしを再現した、吉永小百合主演の映画。
壁に展示してあったあらすじを読んでいたら、この映画を見たくなってきました。
札幌に戻ったら探してみることにしましょう。

また雨の中を傘を差して歩き、2時少し前に網走駅に戻ってきました。

  

posted by pupupukaya at 24/05/26 | Comment(0) | 道東の旅行記

2023年オホーツク海の流氷を見に行く

2月になるとオホーツク沿岸にやってくるのは流氷。
毎年この季節になると、流氷が見たくてうずうずしてくる私です。

前回流氷を見に行ったのは2018年2月でしたから、5年前。
流氷を見るのも随分とご無沙汰ということになります。
これは腰が重くなったこともあるし、新型コロナの行動制限が続いたこともありますが、やっぱり腰が重くなったからなんでしょうか。

コロナの行動制限も去年の春を最後に撤廃され、今年こそは流氷を見に行こうと思っていました。
だけど、流氷って行けば必ず見られるわけではなく、年々接岸する日も少なくなっているようで、流氷の状況をよく調べていかないと空振りに終わってしまいます。

そこは今はいい時代になったもので、流氷の状況や予測がネットで随時見ることができるようになりました。
接岸状況も、テレビ局のライブカメラで知ることができる。

そんなわけで、2月最後の週末。
流氷関係のサイトをチェックしていると、今回は見られるんじゃないかという気がしました。

石北線の特急『オホーツク』は今度のダイヤ改正で183系車両から283系車両に置き換わりグリーン車も無くなってしまいます。
せっかくだから網走まで特急『オホーツク』で行くのもいいかなと思い、えきねっとで検索すると札幌発の『オホーツク』は結構混んでいますね。
みんな考えることは同じか。

やっぱり車で行くしかないようでした。
車で行くとなると、網走まで5時間はかかるので普通に朝出発すると到着は午後になってしまいます。
夕方に向こうを出発すると、札幌に帰ってくるのは夜中。
やはり網走は遠い。
夜中に出発して夜通し運転して早朝に着くという方法もありますが、さすがにそれは大変だ。

網走で1泊すればいいのでしょうが、流氷観光シーズンで、しかも直前で宿を探せば普通のホテルでも1泊2万円以上もするところばかり。

夜行列車があった時代が懐かしいですね。
こんな金曜の夜は夜行『オホーツク』に飛び乗って、明朝網走に着けば流氷原のオホーツク海だったわけです。

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 B寝台車1両を組み込んで発車を待つ『オホーツク9号』(2006年3月筆者撮影)

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 夜行『オホーツク9号』のホーム風景(2006年2月筆者撮影)。

昔は良かった的な話をしても仕方がありません。
ここは2023年の現実世界。
やはり夜通し運転で行くか、向こうで車中泊するしかないのか。
気は進まないけれど、夜行バスはと調べてみたら、こちらはコロナの乗客減からか当面の間運休となっています。

ふと思いついて、北見市内のホテルを探すと前日でも安いホテルが見つかりました。
全国旅行支援の『HOKKAIDO LOVE!割』適用で1泊3520円。
北見から網走までは車で1時間ほどかかりますが、札幌から夜通し運転して行くよりははるかにマシです。

それに2月末まで有効の予約サイトクーポンが1000円分あったので2520円に。
さらに1000円分の『ほっかいどう応援クーポン』が発行されるので実質1520円ということになりました。
宿が確保できれば、夜通し走る必要はありません。
金曜の夜、予約サイトでポチって流氷旅行の準備は完了。

というわけで、2月最後の土曜日の朝、札幌を出発することにします。


 ◆ 2023年2月25日(土)

今日はホテルに着けば寝るだけなので、10時過ぎに出発すればいいわけで。
高速は使わずにずっと下道なので、北見までは5時間以上かかるでしょうが、今日はホテルに着けばいいだけなので気は楽ですね。
長距離運転のときは、これくらいの余裕が欲しいところでもあります。

国道275号線を北上。こちらへ来るのは去年の知床旅行以来かな。
旭川新道を抜けて、愛別ICから旭川紋別自動車道へ。
知床旅行の時は遠軽まで直行したけど、今回は上川ICで降ります。
ここからは国道39号、石北峠経由のルートでになります。

層雲峡で小休止してから、いよいよ石北峠越え。
かつては道央から北見・網走方面へのルートといえばこの国道39号石北峠ルートがメインでしたが、旭川紋別自動車道が年々延伸して遠軽まで開通した現在では国道39号は裏ルートのような印象となってしまいました。

しかし実際走っていると、結構トラックとすれ違います。
高速バスの『ドリーミントオホーツク号』もこちらを経由しています。
これは、道央〜北見市間で見ると、国道39号石北峠ルートの方が距離的には有利なためでしょう。

あと多いのが、JR貨物のコンテナを積んだコンテナトラック。
石北本線には『たまねぎ列車』と名付けられた貨物列車が1往復あるが、あれは北見産の玉ねぎを輸送するために毎年8月から4月まで運行している臨時列車で、通常は北旭川〜北見間は自動車代行ということになっています。

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 国道39号線ですれ違うコンテナトラック(ドラレコのキャプチャより)。

鉄道の『たまねぎ列車』は、かつては3往復あったのが今では1往復にまで減らされています。
この列車も不採算列車としてJR貨物は廃止したがっているようで、過去に廃止が取り沙汰されたこともありました。
地元農協や自治体が存続を求めているので、1往復だけは存続しているのでしょう。

今のところ廃止の話は再浮上していないようですが、JR貨物としても1往復だけ乗り入れでは採算度外視の運用でしょうし、今後も安泰とは言えませんね。

次々とすれ違うコンテナトラックは、時間からして北見駅を13:00に発った26便ということになります。
貨物が多い場合は続行便を仕立てているのでしょう。

どれも3個積み4個積みの大型トレーラー。
層雲峡から石北峠までの間で8台ものコンテナトラックとすれ違いました。
コンテナの数を数えていると30個にもなります。これは鉄道のコンテナ車ならば6両分。

1便当たり8台のトラックと8名の運転手。
これなら1列車に仕立ててもいいのではないかと私のような素人は思うのですが、民間会社のJR貨物としてはこれでもトラック代行輸送の方が採算が合うとのことなのでしょうね。

そんなことを考えながら運転しているが、前は工事用のクレーン車を先頭に3台目を40〜50km/hでトロトロと走る。
追い越し禁止の峠道なのでどうしようもない。
ま、私としては日のあるうちに北見に着けばいいので、別にいいんですけど。

だけど、後ろのトラックが相当イラついているのか時折車間を詰めてきたり・・・。
煽られたところで俺は一体どうすればいいんだ?

そうこうしているうちに長い武華トンネルへ入ります。
突然何を思ったか、後ろのトラックが右ウインカーを点けて4台ごぼう抜きで追い越していった。
コンテナを3個積んだ、間違いなくJR貨物の自動車代行便。

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 国道39号武華トンネル内で追い越すコンテナトラック。

トンネル内は追い越し禁止なのが常識だし、思いもしませんでした。
このトンネルが、入口と出口がカーブしている、見通しが良いとは言えないトンネル。
よくやるなあ。

個人的には後ろから煽るような真似されるよりも先に行ってくれた方がありがたいんですけどね。
運転手だって到着時間に遅れると罰金だろうし、やむを得ない判断で追い越して行ったんだろう。

とはいえ、

鉄道貨物を自動車代行便に置き換えた結果がこれじゃねえ・・

物流というものがドライバーの長時間労働と危険行為で成り立っているのだとしたら・・・
わたしたちの便利で快適な生活は、砂上の楼閣の上に存在することになります。

とは言え、すでに自動車代行に置き換わって久しい石北本線で、貨物列車に再びシフトと言っても難しい話ではあります。

今現在ある貨物列車の去就問題は、北海道新幹線札幌延伸開業後の本州〜北海道間の貨物列車に移っています。
新幹線開業後の並行在来線問題は、旅客列車しか運行していない長万部〜小樽間の廃止は決定しています。

残る新函館北斗〜長万部間の在来線も、旅客輸送は廃止という流れになっていて、フェーズは既に、この区間の鉄道貨物輸送をどうするかということに移っています。

もしこの区間の鉄道貨物を廃止にしたらどうなるのか、この石北峠越え国道39号線にその答えを見た思いがしました。

話を元に戻しますが、さっきのトラックは何であんなところで追い越して行ったんでしょうかね。
このトンネルを抜けて少し行ったところから登坂車線があって、前を走るクレーン車はそこで追い抜くことができました。
それを知らないほど未熟なプロドライバーが、無茶な追い越しをしたのでしょうか?

  ★  ★

石北峠を越えると下り坂と急カーブの連続、しかも圧雪路面。
峠道を下った頃には、ハンドルを握る手が汗でびっしょりになりました。

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 峠道を過ぎてようやく平地らしくなった。

16時30分、北見市内へ。
国道沿いはイトーヨーカドーを筆頭にロードサイド店がひしめいて看板だけは賑やかです。
北見駅前の寂れっぷりと反比例するように、こうした幹線道路沿いが発展するのはどこの町も同じ。

ホテルに行く前に、途中でスーパーに寄って夕食など買い物をしました。

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 旅先での1晩の安宿もまた楽しからずや。

一晩の宿はボロホテル・・・と言えば悪いけど、流氷を見るための投宿ですから。
1泊実質千五百円と思えば腹も立たん。

フロントのおかみさんが、人の好さそうだったのが救いでした。
しかし禁煙ではないこのホテル。
部屋に染み付いたヤニの臭いには参りましたね。

明日は早いので酒を飲んで早く寝ることにします。


 ◆ 2月26日(日)

おはようございます。
北見市内の安宿から。

天気は晴れ、気温マイナス16℃。
しばれたねえ。
北見の人に言わせりゃ、こんなのしばれたうちには入らないのかも知れませんが・・・。

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 北見の朝の気温。

今日は朝食も抜きで、6時半にはチェックアウトします。
さっさと網走に向かうべと駐車場へ行くと、車のガラスは霜で真っ白になっていました。

霜はがっちり固まっていて、ワイパーを動かしたくらいじゃ取れない。
霜が溶けるまで暖機運転。
しばらく足止めです。

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 氷点下16度、ドアガラスに付いた氷の結晶。

ようやく霜が解けた6時40分、北見を出発。
もう日が昇っていて春の日差しも感じますが、こちらではまだ1か月は冬だよ。

日曜の早朝とあって車は少ないが、やたらと赤信号に引っかかるのがもどかしい。
それでも北見市内を抜けて、国道39号から道道網走端野線へと入ります。
国道を直進すると美幌・女満別と迂回するので、網走へはこちらが近道。

しかし皆さん飛ばすねえ。
前の車に付いていくと、とてもここでは書けないほどのスピードに。
北見を出発して50分で網走の道の駅に着きました。

流氷はというと、網走には来ていないようですね。
道の駅から南東に車を走らせます。
国道391号から見えるオホーツク海は海面が見えている。
北浜まで行けば・・・と思っていたが、ここも駄目でした。

斜里まで行けばどうだろう・・・さらに南東へ向かう。

ところで、流氷を探すのに何で南へ向かうのとお思いの方がいらっしゃるかも知れません。
ここで流氷について少し。

流氷はオホーツク海の北から流れて来るものですが、北の方へ行けば見られるというものでもありません。
なぜなら、それは宗谷海峡の存在。
日本海側には温かい対馬海流が流れていて、稚内あたりまで北上してくるわけです。
その対馬海流が宗谷海峡を通ってオホーツク海に流れ込むので、北の方へはあまり流氷が接岸しないわけです。

一方で、樺太の北の方から流れて来る流氷は、オホーツク海を南下して網走や知床半島あたりに押し寄せるわけです。
下の図は第一管区海上保安本部の海氷情報センターが毎日発表している最新の海氷速報の画像に書き加えたものです。

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 最新の海氷速報 | 海氷情報センター(2023/2/25)より筆者作成。

南下する流氷が、知床半島や国後島が防波堤のようにブロックし、太平洋へ流れ出ることもほとんどありません。
だから流氷を見たければ紋別よりも網走、網走よりも斜里や知床の方が、流氷が見られる確率が高いということになります。

というわけで斜里まで来たのですが、橋の上から海を見てもやはりここも海面が見えています。
もう少し東へ向かうことにしました。


 ◆ 以久科原生花園からの流氷

着いたのは以久科(いくしな)原生花園。
ここは初夏になると色とりどりの花が咲く綺麗なところですが、今時期は白い砂丘が続くだけという寂しい場所。

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 北見から1時間半余り、以久科原生花園に到着。 

駐車場に車を止めて、長靴に履き替えます。
砂丘の踏み分け道を越えると、浜に出るはずです。

さあ、どうだ!

おおー、流氷が来ている。
所どころに海面が見えているが、浜にはびっしりと流氷が押し寄せていました。

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 以久科原生花園の流氷。

凍った波打ち際に学生らしきグループがいてはしゃいでいます。
ちょっとうるさいな。

長靴を履いてきたので、流氷の海岸沿いを歩くことにしました。
新雪が積もっているが、長靴ならば歩いて行けます。
300〜400mくらい歩いたでしょうか。だいぶ静かになりました。

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 青空に映える流氷。

青い空、氷で埋め尽くされた雪原となった海。
波音なくシーンと静まり返った浜。
流氷はこうでなくちゃ。

静寂の中、しばし立ち尽くして流氷の世界を堪能させてもらいます。

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 浜に打ち上げられた流氷。

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 流氷の向こうに連なる知床の山々。

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 流氷の海岸は静寂の世界。

さっきのグループは戻って行ったようですね。
やっと静寂の世界が戻ってきました。

ひとりじっと流氷原を見つめる。
すばらしき流氷の世界。
こんな景色見たら人生観も変わるって。

都会のせこせこした生活なんて、どこか異世界の出来事のよう。
ここにテントでも張って、流氷原を見ながら一杯やったら旨いだろうな。

撮影もいいが、風景が大きすぎてカメラには収まりが悪い。
この風景を心に刻んで持ち帰るしかないようです。

やっぱり流氷を見に来て良かった・・・。
と思っているところへ、「ブーーーーーーーーン」と人工的な音がまとわりつく。

何かと思っていたら、1台のドローン。
まったくどこの野郎だ、無粋なことをしやがって、プンプン!

現在の気温マイナス10℃。
だいぶ冷えてきたので、そろそろ戻ることにする。

駐車場に戻るところに地図にない川があって、水面から湯気が立って気嵐のようになっていました。
流氷もこの近くだけは溶けて海面が現れています。

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 水路の湯気と流氷。

コンクリートの箱から流れ出る水は、どこかカルキ臭い。
なんだろなと地図を見ると、近くに下水処理場があって、そこからの排水のようでした。

この以久科原生花園は流氷スポットとしては穴場のようで、1人、2人と旅人が現れるだけです。
ドローンの主は、何かの調査員とか書いたゼッケンをしていました。町の職員なのでしょうか。

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 流氷には一人旅が似合う。

静かな青空の下の流氷を見ることができて、本当に満足でした。
流氷は一人旅が似合うな。
団体で押しかけて見るもんじゃない。


 ◆ 峰浜の流氷

車に乗り込み、もう少し東の方へ行ってみることにしました。
東の方が氷が厚そうだったから。

どうせならウトロまで行きたいところですが、ここからだと30km以上も離れています。
ちょっと流氷が見えるところまで行き、引き返そうというわけです。

国道334号線の交差点の手前で、大型観光バスがこちらの道に入って来ました。
ええっ?
まさか、以久科原生花園に連れていくつもりじゃ・・・

斜里の町や駅に行くには近道になるけど、途中から道が狭くなるので真っすぐ国道を行った方がいいので、きっとそうなのでしょう。
もう少し遅ければ、あの団体さんと遭遇していたでしょうね。

穴場的なスポットとか知る人ぞ知るような景色とかありますが、最近はそんなところまで入り込む観光バスが増えたようです。
この近くにある『天に続く道』も観光バスの通り道になってしまいました。

だからといって、陸上から流氷を見物できる場所は少ないということもあるのでしょうね。
ひとつ思うことは、どこかに流氷博物館のような施設を作って、流氷を眺められる展望台も建てて、入場料を取ってもいいからちゃんとした展示物を置いて運営すればいいのにと思います。
入場無料だけど、どこも同じような作りで中途半端な施設が林立するより、そのほうが自然環境的にもいいと思うんですけど。

さて、国道334号を東に進み、以久科原生花園から約10km。
峰浜まで来ました。
ここは防波堤があって、浜へ下りていけないのが残念ですが、眼下には水平線の先まで厚く張った流氷原が広がっていました。

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 びっしりと流氷が押し寄せた峰浜の海岸。

隣に川が流れていて、その水の音が響くのは残念ですが、それは自然のものなので仕方がない。
見ていると、地元の漁でしょうか。
銛のようなものを持って流氷の上を歩く人がいます。

氷が割れて海に落ちたら99%死ぬので、観光客は絶対にやってはいけません。

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 流氷の上に新雪が積もった海は白い月面にも見える。

峰浜でびっしりと白く張った流氷を見て、一路網走に引き返すことにします。


 ◆ 北浜駅と『流氷物語号』

途中、北浜駅ではちょうど臨時列車の『流氷物語1号』が停車中でした。
ホームも展望台も人だかり。

この日は今シーズンの運転最終日なのだとか。
そのためか、ホームの展望台はカメラの三脚が林立し、停車中の列車の乗客や観光バスからの人も登るもんだから、展望台の上は人であふれかえっています。

この北浜駅も、すっかり流氷観光スポットとなったようで、2台目の観光バスがまたやってきました。

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 賑わう北浜駅は『流氷物語1号』が停車中。

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 後ろ側は『道北流氷の恵み号』を連結。

列車は人気のようですが、肝心の流氷はというと破片がいくつか浮いているだけ。
あとは水平線近くにうっすらと見えているだけという状態でした。

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 斜里へ向けて北浜駅を発車する『流氷物語2号』。

この列車は10時14分発。
発車時刻が近くなると乗客は車内に戻ってゆきます。
展望台もすいてきたので、上から『流氷物語号』を見送ることに。

2両の列車は「ピーーーーッ」甲高いホイッスルを鳴らして発車していきました。
残ったのは観光バスの客と鉄オタだけ。

反対側には三脚が林立し、さらに脚立を置いてカメラを構えています。
次に狙うは10:40発釧路行き快速『しれとこ摩周号』なのでしょう。

日が差していて光線具合は申し分ないんでしょうが、肝心の流氷がないのは寂しいね。

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 脚立と三脚に占領された北浜駅展望台。

しかしどうでもいいけど、この人たちは脚立が好きですな。
駅のホームではさすがに禁止のところが多くなったけど、ここでは遺憾なく発揮といったところ。

そろそろ降りようと階段に向かうと、また観光バスで着いた人たちが階段をぞろぞろ登ってきました。
やれやれ、忙しい駅ですね。
何度も道を譲って、狭い階段をようやく降りることができました。

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 撮り鉄さんと観光バスからの客で大盛況の北浜駅展望台。

車に戻ると、観光バスが通せんぼして出られない(涙
まあいいや、そのうち出発するだろうと、昨日朝食用に買ってあったパンとおにぎりを取り出して遅い朝食とします。

車の中から見ていると、鉄オタらしいおっさんがホームで警備員にずっと食ってかかっていました。
お前が写ったんだ、どうしてくれるんだみたいな話をしているのでしょうか。
どうもこうも警備員だって仕事ですからね。

通せんぼのバスがいなくなったので、この隙に北浜駅を出発ます。
いつまでも居たら、またここにバスを停められそうなので。


 ◆ 道の駅流氷街道網走

再び網走の道の駅に立ち寄りました。

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 道の駅流氷街道網走は流氷観光の拠点。

別に用はないのだけれど、ほっかいどう応援クーポン千円分を使ってしまいたかったから。
中に入ると、さすがに流氷観光シーズンだなあと、あらためて思うほどの混雑ぶりでした。

流氷観光船おーろら号の改札口も、土産屋のレジも長蛇の列。
だけど、中国語が飛び交っていたコロナ前と違って、いたって平和な(?)日本の光景。

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 大型車駐車場は観光バスで大盛況。

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 観光客を乗せて出航を待つ『おーろら』。

おーろら号が出航すると土産物屋の行列も短くなりました。
この隙に千円分のお土産を買いました。

当初は『流氷物語号』に乗ってみようか、観光船『おーろら』に乗ろうかとも思っていましたが、そこまでの余裕はできませんでした。
でも、浜に押し寄せた流氷を見ることができたし、運が良かったんじゃないかな。


 ◆ 網走から札幌まで

11時過ぎ、もう未練もないので道の駅を出発します。
帰りは端野から国道333号線経由で遠軽へ、そこから旭川紋別自動車道〜道央自動車道という網走から札幌への最短ルート。
愛別ICから札幌ICまで高速料金がかかりますが、ETC休日割引が復活しているので2,640円ならば安いものだ。
それに、明日から仕事なので少しでも早く帰りたい。

帰り道は遠軽までは順調でしたが、旭川紋別道に入ってから吹雪いてきました。
北見峠に向かうにつれて視界も悪くなって、ホワイトアウトに近い状態になってきます。

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 ホワイトアウト状態の旭川紋別自動車道。上川付近。

どうやら吹雪は旭川の方がひどいようで、道央道の旭川鷹栖IC〜深川IC間は通行止めになっていました。
この間は国道12号線を走ることになります。
渋滞しているかと思ったが、意外と流れは良かったのはヤレヤレ。

深川から再び高速へ。
このまま一気に札幌へ、と行きたいところですが、今度は岩見沢〜札幌間がまた通行止め。
岩見沢ICでまた降ろされます。

いつもの国道12号〜275号のルート。
こちらも意外と流れは良く、夕方とあってか札幌からの反対方向が渋滞気味でした。

札幌の自宅に着いたのは17時30分。
休憩込みで、網走からほぼ6時間半かかりました。
それでも無事帰ってこれたから良かった。

  ★   ★

これで2023年の流氷見物はおしまい。
北の見ものといえば流氷に白夜にオーロラ。
このうち白夜とオーロラは、北欧やアラスカの北極圏まで行かなければ見ることはできません。

だけど流氷だけはオホーツク海岸で見ることができる。
他所では北緯60度以北の北極圏でしか見ることができない流氷を、日本では北海道で見ることができる。

世界一低緯度で見ることができる流氷。
北海道の冬の見どころはといえばたくさんありますが、私としてはオホーツク海の流氷をお勧めします。

それも、流氷観光船から見るのではなく、浜に接岸した流氷。
波音が凍り付き、シーンとした白い浜辺に一人立っていると、人の世の悩みなんて小さなことだと思うようになりますから。

大層な結論となったところで、今回は終わりとさせていただきます。

〜最後までお読みいただき、ありがとうございました。  

posted by pupupukaya at 23/03/04 | Comment(0) | 道東の旅行記

2022年知床旅行記5

 ◆ 知床観光船おーろら

知床岬と国後島を見て船はUターンしウトロへと戻る航路となる。
今日観光船に乗った人たちは間違いなく大満足といえる航路だった。
やはり今日に変更して良かった。

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 国後島を望む知床岬沖で船はターンする。

知床岬と国後島を後に船はウトロへと向かう。
帰ってこい北方領土。
船尾ではためく日の丸と国後島を見ているとそんな気分になった。

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 知床岬と誇らしげにはためく日の丸国旗。

船室内に戻るとお弁当タイムだった。
ツアーの人たちは昼時は船内なのでお弁当を持って乗っていた。
私らのような個人客は各自で用意するしかない。

船室内は空いているので、船内探検でもしてこよう。

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 1階自由席客室。こちらは知床半島側。

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 不人気の海側自由席。

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 1階船首の自由席。

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 1階自由席船首の窓からの眺め。

2階船室には売店もあるが、食べ物は肉まんとスナック菓子くらい。
あとかき氷とあばしりサイダーに青い発泡酒の流氷ドラフト。

流氷ドラフトは手を出しかけたが、船を降りたら札幌まで運転するんだった・・・

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 2階にある売店。

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 売店のおーろらグッズなど。

船室内のシートで休んでからまた屋上展望デッキへ。
時どきクマがいますと放送が流れるがさっぱりわからない。

見つけた人が指差すも、その方角を目を皿にして探すが結局わからない。
とりあえず撮影して、あとで画像を拡大して探しても見つからなかった。

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 再び展望デッキ。

もしかして知床のクマは馬鹿者には見ることができないとか・・・?

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 このどこかにクマがいるらしいのだが・・・

真っ青な空にいつしかイワシ雲。
秋のような空にベタ凪の海。
こんな風景を眺めていたら、どこか異次元の世界に引き込まれたような感覚になる。

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 硫黄山とウロコ雲。

こんな不思議な世界があってもいいよなあ・・・
なんて思いつつ、ツアーの人たちの話声も聞こえてくる。
ウトロ港に戻ったら、その後は知床五湖へ行って、知床峠を通って屈斜路湖畔に泊まるんだって。
いや忙しいなあ・・・

かく言う私も船を降りたら7時間かけて札幌に戻るわけですが。
4千円近くかかっても高速にするかなあなどと考え始める。

そろそろ現実の世界に戻る時間も近い。

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 そそり立つクンネポールと呼ばれる岩と漁船。

秘境の大自然を船上から眺めてまたウトロ港へと戻ってきた。
無事生きて戻ってきましたと言うほどではないが、どこか離島に滞在して本土に戻ってきたような感覚だった。
それくらい船上から見る知床岬は素晴らしかった。

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 ウトロ港に無事戻ってきた。

港で待ち受ける人たちは観光バス3台の運転手とガイド、それに14時30分発のカムイワッカの滝航路に乗船する人たち。
「おかえりなさ〜い」
「ただいま〜」
そんな感じ。

う〜ん、やっぱり船はいいな。

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 ウトロ港で出迎える観光バスと人々。

船内ではそんなに人がいると感じなかったが、下船する人は多い。
バス3台分のツアーが乗っていたんだから、そりゃそれなりの人数ではある。
これでもいつもより大分少ないんだろうけど。

インバウンドだらけだった3年前だったらとてもこんな気分にはなれなかっただろうな。
やはり旅行は人が少ない時に限る。

こんな素晴らしい船旅をありがとう、知床観光船おーろら。

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 着岸、下船風景。

タラップを降りれば現実の世界。
下船客の多くは3台の観光バスに分かれて行く。

私も車に戻ってハンドルを握れば現実の世界。
車に戻ってエンジンをかけたら、早いバスはもう出発して行った。
まったくどこも忙しいなあ。

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 番屋をイメージした道の駅うとろ・シリエトク。

最後に道の駅に寄って長距離運転に備える。
土産物でも買おうかと思ったが特にほしい物もなく、飲み物だけ買って車に戻る。


 ◆ 帰路・札幌まで

ウトロを出発すると前をバイクの大集団が走っていた。
面倒な連中の後ろについてしまった。
オシンコシンの滝の駐車場からまた合流してさらに大集団に。

集会でもあるのかと思いつつ後ろを走る。
こいつらがまた飛ばすこと。
後を付いていくと、とてもここには書けないほどのスピード。

彼らは途中で天国へ続く道の方へ曲がって行った。
何だったんだろうな。
でもおかげで斜里までだいぶ時間稼ぎできたわけだが・・・

ちょっと遠回りになるが、また小清水原生花園に寄った。
初日に見たエゾキスゲはまだ満開だった。

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 黄色いエゾキスゲが満開の小清水原生花園。

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 知床の山影と黄色く彩った原生花園。

ここは線路と国道が並行して、花がたくさん咲いている。
列車が通ったらさぞや絵になる鉄道写真になるんだろうなと思う。

帰ってから調べたら、あとここで15分ほど待っていたら釧路行き普通列車が通過していた。
惜しいことをしたものだが、別に私は撮り鉄の趣味はないので悔やんではいない。

それに画像で見る限りは美しい風景だが、このあたりにいるとやたらと大きい蚊がまとわりつくので、もうかなわんと車に逃げ帰った。

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 濤沸湖側はオレンジ色のエゾスカシユリが満開。

再び出発。
網走へは寄らずに美幌に抜ける。
このあたりは丘陵地帯に畑が続いて、所どころに防風林といういかにも北海道らしい風景。
美瑛や十勝ともちょっと違うなあ。

美幌バイパスから333号線を通って遠軽から旭川紋別自動車道へ。
ここから先は札幌までずっと高速道路でつながっている。
特急オホーツクがエンジンをめい一杯吹かして40〜50km/hで走る区間を、道路は橋やトンネルで直線で突き抜ける。
これじゃあ鉄道は商売にならないね。

無料区間最後の比布ICで降りようかどうか迷ったが、結局このまま真っすぐ行くことにした。
高速料金4千円近く払って早くなるのは1時間だが、ここまで来たら1時間でも早く帰りたい。

比布ジャンクションから道央自動車道へ。
ここまでのワイルドな区間は終わり。この辺から心なしか都会っぽくなってくる。

途中で電光掲示板が、奈井江砂川IC〜美唄IC間通行止めの情報を伝える。
事故でもあったんかと思ったら熊出没だってさ。

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 奈井江砂川ICで熊出没のため降ろされる。

比布北ICから奈井江砂川ICまで2,270円。
ここからは下道で帰ることにする。
時間にして30分短縮。ま、特急料金ってとこか。

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 奈井江で夕日を見る。

札幌に着く頃には完全に暗くなっていた。
北1条から駅前通りを通って南9条に抜ける。
20時40分のすすきのは驚くほど人が多い。
この間までコロナで閑散としていたものだが、もうこんなに人が戻ってきたんだね。
そういえば今日は金曜日だったな。

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 賑わいが戻った夜のすすきの。 

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 道の駅流氷街道あばしりで買ったお土産。

これで秋まで旅行はお休み。
7月8月などどこへ行っても混んでるから。
海外客の受け入れも始まったようだしね。
だけど観光地はインバウンドばかりというのはもう勘弁願いたい。

何度も言うが、人が少ない知床は本当に素晴らしかった。
最終日だけですが好天にも恵まれたのは運が良かった。
海外旅行に行けるようになるのはまだまだ先になりそうだけど、今年はもう海外旅行に行ったくらい満足です。

最後に今回の旅行に使った金額です。

2022年知床旅行の費用
費目金額(円)備考
ホテル知床2泊16,700どうみん割使用
ガソリン代10,210給油3回、62.38L
観光船6,800おーろら
入場料1,350網走監獄
高速代2,270比布→奈井江砂川
駐車場代900知床五湖・ウトロ
食費(購入)6,095酒代込み
食費(外食)900監獄食堂
土産代1,520 
どうみん割クーポン-4,000 
合 計42,745 

1人旅で外食もほとんど無しですが、知床旅行にかかる費用の参考としていただければ幸いです。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

〜2022年知床旅行記 おわり   

タグ:北海道
posted by pupupukaya at 22/07/16 | Comment(0) | 道東の旅行記

2022年知床旅行記4

 ◆ 知床3日目で晴れ

7月1日金曜日。
窓の外が妙に赤いので目が覚めた。

おはようございます。
朝3時半、知床の朝は早い。

外を見ると、空は一面のいわし雲が朝焼けで赤く染まっていた。
美しいのか不気味なのか何とも言い難い。
幸運と見るか、不吉と見るか・・・

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 朝3時半、朝焼けのいわし雲。

朝食券を見ると今朝の朝食会場は6時30分からとなっていた。
6時半でも朝早いが、こちらは3時半から起きているので待ち遠しかった。

6時半に朝食会場に行くと、ツアーらしき人たちが集まって入口は行列ができている。
1組1組席に案内しているからだ。
それでも空きテーブルも目立ち、昨日より空いているようだった。

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 知床あっぺメシのコーナー。

朝食バイキングのメニューは昨日と代わり映えせず。
今日は『知床あっぺメシ』。
鮭と昆布の混ぜご飯に醤油漬けのサーモンをのっけたもの。薬味は山わさびの醤油漬けで。

本当は出汁をかけていただくようだが、かけなくても旨い。
混ぜご飯とサーモンで少々くどいが、そこは山わさびの醤油漬けがピリッと引き締める。

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 てんこ盛りにした知床アッペメシ。

は〜食った食った。
今朝も腹12分目になってしまった。

朝食前はガスってきたりしてやきもきする空模様だったが、朝食後に外に出てみると空はきれいな青空になっていた。
1階のロビーにはツアー名を記した立て札があって、各ツアーの集合場所になっている。
もう荷物をもって集まっている所も。
ツアーは朝早いなあ。

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 すっかり晴れて空気も澄んだウトロ。

8時、身支度も済んだのでこちらもホテルをチェックアウト。
早い出発のようだが、ツアーの皆さんに比べれば遅い方。
バスの駐車場は既に出払った後だった。


 ◆ 雲海の知床峠と知床ブルーのプユニ岬

まず向かうは知床観光船おーろらのきっぷ売場。
今回の知床旅行の最大の目的である、船上からの知床クルーズ。
昨日乗る予定にしていたが、昨日はガス(海霧)っていたため今日に変更していた。

観光船乗り場はトンネルを抜けた先にあるが、先に手前にあるきっぷ売場でチケットを買う必要がある。

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 しれとこ観光船おーろらのチケット売り場。

早めに着いたからか、そもそも乗船客が少ないのか、窓口では並ばないでチケットが買えた。
10:00発の秘境知床岬航路は6,800円。
私はどうみん割のほっかいどう応援クーポンを8枚4,000円分持っているので、それを使って2,800円の支払いとなった。

う〜ん、いろいろ恩恵を受けてるなあ。
コロナ様様なんて言うと不謹慎だろうか。
こんなことでもないと知床岬を見ることなんてなかっただろうしなあ。

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 しれとこ観光船おーろらのチケット。

チケットは手に入れたので、乗船時間の9時45分頃までどこかで時間をつぶすことになる。
時間にして1時間半ほど。

昨日行かなかった知床峠に行くことにした。
ウトロからは片道20分もかからない。乗船時間までの時間つぶしにはもってこいのドライブコースだ。

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 知床峠、斜里町のカントリーサインと羅臼岳。

知床横断道路を登って行くと標高1,661mの羅臼岳がくっきりと見えてきた。
今日は峠からの眺めも良さそうだ。

峠の駐車場に着いて展望台から景色を見るとびっくり。

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 知床峠から根室海峡の雲海を見下ろす。

なんと峠から見下ろす根室海峡は雲海に覆われていた。
その向こうには国後島の山々が頭をのぞかせているではないか。
何とも壮大なスケールの雲海。

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 根室海峡の雲海と国後島。

あの島はわしらのもんじゃああああ!
いくら叫んだって帰っては来ない。

過去にチャンスがなかったわけではないが、当時の政治家が無能だったのだからどうしようもない。
バブル崩壊に平和ボケに染まった無能政治家、一番割を食ったのが私らの世代・・・
・・・ま、それは言うまいて。

もう少し先の見返り峠まで行けば雲海に近づけそうだが、今日はこれから観光船に乗らなければならないので引き返す。
途中プユニ岬というウトロを見下ろすポイントがあり、そこから見た海の色は知床ブルーと呼びたくなるほど青い色が印象的だった。

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 プユニ岬の見晴橋から見た知床ブルーとウトロの町。

ウトロへ戻ってきて、道の駅でトイレを済ませてからトンネルをくぐって観光船乗り場へ向かう。


 ◆ 知床観光船おーろらに乗る

オロンコ岩のトンネルをくぐった先は有料駐車場となっており、駐車場入口に係員がいるので400円払うことになる。
こんなところで駐車料金を取るのも世知辛い話だが、チップだと思えば腹も立たん。
ちなみに駐車場にトイレはないので、来る前に済ませるか、乗船後に船内でということになる。

駐車場には観光バスが2台停まっていたが、いるのは運転手とバスガイドだけ。
乗客は8時15分発のカムイワッカの滝航路の乗船中なのだろう。
ほかには、駐車場に早く着いた人たちが所どころで所在無げに過ごしている。

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 ウトロ港の澄んだ海水。

磯から海面を覗くと海水は澄んでいる。
海面はベタ凪。
船が揺れる心配はなさそう。

9時半になってそろそろ乗船口に並ぶことにする。
船内の席は自由席なので、席は早い者勝ちということになる。
先客は5〜6人。
駐車場で過ごしていた人たちもやって来た。
それでも20人もいないくらい。

こんなものなのかと思っていたら、観光バスが次々と到着して後ろはあっという間に大行列となった。
とにかく短期決戦のごとくスケジュールを詰め込んだツアーが10時近くまでゆっくり過ごさせてくれるはずもなく、観光船乗船も前に知床五湖あたりをひと観光してきたらしい。

逆に言えば、ツアーと人たちが到着する9時半過ぎまでに並んでいれば好きな席を取ることができそうだ。

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 カムイワッカの滝航路から戻ったおーろら。

9時40分を過ぎた頃おーろらが入港。
8時15分発のカムイワッカの滝航路から戻ってきた船だ。

おーろら号は網走の流氷観光船と同じ船。
冬は網走で、夏は知床で働いているわけだ。

船が岸壁に着くと乗船客がぞろぞろと降りてくる。
その後ろを小型のクルーズ船が通り過ぎて行った。

4月に知床沖で起きた海難事故は記憶に新しく、未だに多くの行方不明者がいて捜索活動が続く状態で観光船を運航するとは不謹慎だという意見もありそうだ。
さりとて観光船業者もいつまでも休んでいるわけにはいかない事情もある。

食ってかなきゃならないのは誰でも同じ。

心ない業者による信用失墜行為で知床の観光船の評判が落ちてしまったが、いつかは営業を再開しなければならない。
それにあの事故は人間による人災であって、知床の大自然に罪があるわけではない。
だから我々観光客が再び知床観光を盛り立てていかなければならない。

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 一足先に出航するクルーズ船のDOLPHINV。

事故のあと、この『おーろら』も営業を自粛して遭難者の捜索活動に当たっていたが、5月20から安全管理を徹底した上で運行を再開している。
他の小型クルーズ船も6月から再開したが、そちらは知床岬まで行くコースは今シーズンは中止となっている。


 ◆ 秘境知床岬航路へ出航

全員が下船すると、こちらは入れ替わりに乗船となる。
席はなんといっても右側がおすすめ。
知床の断崖や知床連山を見るなら行きは右側、帰りは左側となる。

と思って右側席を確保したが、行列の全員が乗り終わっても船室内はガラガラだった。
ツアー客は2階の特別席に席を取っていたようだ。

荷物に席番をさせる必要もなさそうだ。
船室を出て一番上の展望デッキへ。
ここが一番人気で、多くの客で賑わっていた。

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 一番人気の展望デッキ。

空はいつの間にか快晴となっていた。
こんな澄んだ空を見るのは久しぶりだ。
昨日船に乗るのをやめて今日にして大正解だった。

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 青空に映えるオーロラ号のレーダー塔。

10時、出航。
展望デッキから離れて行くウトロ港を眺める。
たまには船もいいもんだね。
出航風景は何度見てもワクワクする。

カメラはここまでコンデジを使っていたが、ここからはCanonの一眼レフの出番となる。
かさばるので旅行にはあまり持っていかないが、この観光船のために持ってきたのだ。
果たしてヒグマを写すことができるのか。

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 ウトロ港を出航。

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 大賑わいの展望デッキ。

だけどこの展望デッキはちょっと人が多すぎるな。
そう思って1階のデッキに移動した。
高さは低いけれど、こちらは海面に一番近く、小型クルーズ船と同じような目線での眺めだ。

ここから見ても海面はベタ凪。
本当にいい日に当たったようだ。

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 ベタ凪の岩尾別の浜と羅臼岳。

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 ゾウの足のような象岩。

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 五湖の断崖と知床連山。

船内放送があり何かと思ったら「10倍の双眼鏡を売店で貸し出してます」とのこと。
1,500円でうち千円は預り金で双眼鏡の返却時に帰って来るもの。
私は7倍の双眼鏡を持参してきた。

時どき船内放送で「ただいまクマが見えます」と流れるが、私の眼では一向に見つけることができない。
見つけた人もいて「あっいたいた」なんて言っているが、さっぱり見つけられず。
とりあえず撮影して、あとで画像を拡大して探すもわからなかった。

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 カムイワッカの滝と硫黄山。

出航から45分でカムイワッカの滝が見えてきた。
昨日はこの上流まで車で来たわけだ。

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 カムイワッカの滝と硫黄で黄色く変色した石。

知床連山が遠ざかり、山並みが低くなったところがルシャ湾。
このあたりは知床半島の山が低くなっていて、根室海峡側からオホーツク海側に吹き抜ける風の通り道となる場所で、ここから吹き付ける強風をルシャおろしと呼ぶんだとか。
周辺が凪いでいても、ここだけは高波ということもある船の難所となっている。

だけど今日は本当に穏やかで、このルシャ湾もずっとベタ凪だった。

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 山並みが低いルシャ湾は船の難所。

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 タキノ川の滝下に建つ番屋。

滝や奇岩を眺めながら船は14ノット(約25km/h)でゆっくり進む。
ベタ凪なのと大型船なので揺れはほとんどなく、船酔いしている人もいないようだ。

反面、小型船と違って入江に入ることもなければ、クマを見つけても近寄ることもできないのが難点。
所どころに設置してある定置網も避けながらの運航なので、隔靴掻痒な感じがしないでもない。

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 足を踏ん張ったタコの形に見えるタコ岩。

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 カシュニの滝は高さ30mから直接海に流れ落ちる滝。

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 ぽっかりと穴が開いたメガネ岩。

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 知床岬が近づくと奇岩が続く。

11時50分、船は知床岬の沖合へ。
平らになった段丘と灯台が見えてくる。
その向こうには国後島の島影がはっきりと見えてきた。

ああ念願の知床岬。
これで思い残すことはない。

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 知床岬が見えてきた。

知床岬と国後島が見える頃がこのクルーズのクライマックス。
船内には加藤登紀子が唄う知床旅情が流れる。

私は観光地で無神経な音楽を流すことを良しとしない人だが、ここのはいい演出だと思った。
岬の向こうにはっきりと見えている国後島がまたいい。

 ♪ 遥か国後に白夜は明ける
  (森繁久彌作詞作曲 知床旅情より)

知床岬越しに見える島影は、船を漕いで行けばすぐに着きそうなほど近くに見える。
しかし遠い遠いかの国の支配となった島。
あれから70余年、かの国は遠い所でまた同じことを繰り返している。

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 知床岬と国後島。

岬の突端の磯には漁船の姿もあって定置網も見えた。
知床岬といえば、秘境知床の一番先で無人の断崖のようなイメージだが、実際はこんな突端にも人の営みがあるのだった。

船は岬の沖までは行かず、その手前でUターンする。


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posted by pupupukaya at 22/07/10 | Comment(0) | 道東の旅行記

2022年知床旅行記3

 ◆ 知床五湖へ

カムイワッカ湯の滝を見てまた車に戻る。
まだ相変わらずガスの中。
この辺りはずっと深い森の中。
ガスが晴れたとて、景色のいい場所でもなさそうだ。

わざわざダート道を11kmも走らせて来るまでもないんじゃないかと思う。
私みたいなダート道好きとかならば楽しいところだけど 。

来た道をまた戻る。
途中で20kmでノロノロ走る車に追いついた。東京のナンバー。
さすがに気づいたようで、先に行かせてくれた。
入って来ちゃったんだねえ。

こういう道の走り方は、以前に四国に行った時に覚えた。
カーブや待避所で対向車がいないことを確認して、直線区間ではスッと走る。
対向車が見えたら基本は譲る。

また舗装道路まで戻ってきた。カムイワッカからここまで20分くらい。
次は知床五湖に行きます。

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 1回500円の知床五湖駐車場。

日が差したり曇ったりガスの中だったり。
知床五湖もガスの中だった。

ここの駐車場は有料で1回500円
しょうがないね。むしろタダな方がおかしい。

大した予備知識もなく、知床五湖って言うくらいだから5つの湖が見れるんだと思っていたがそうではなかった。
遊歩道を歩いて5湖全部見てくると1周3時間。
しかも5月から7月まではヒグマの活動期とあってガイドツアー参加者以外の入場は禁止となっている。

せっかく来たんだし、ガイドツアーでもいいかなと値段を見たらゲッ!6,000円
一湖と二湖だけ見る1時間半コースでも3,000円
う〜んさすが世界遺産知床、恐れ入りました。

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 ガイドツアーの案内。

お金も時間もないよという人は、知床一湖近くの展望台まで木道があるのでそちらをどうぞということになる。

さすが有名観光地だけあって、観光バスが着いてそのたびにツアーご一行がぞろぞろと。
湖の方向もガスってるし、行く気が削がれるが、駐車料金も500円払っているわけだし、行くだけ行ってみる。

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 高架木道の入口。

進めば進むほどガスが濃くなってゆく。
どうでもいいところでは晴れて、肝心なところはガスに巻かれるといった感じ。
高架木道の両脇は、クマが登って来れないようにするためか電気柵が張りめぐらされているのが物々しい。

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 駐車場から800m続く高架木道。

この辺りは熊笹が広がっていて所どころにある立木がガスに霞んでいる高原らしい風景。
初めてきたので晴れていればどんな風景なのか知らないが、こうガスで霞んでいては面白いものではないな。

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 どことなく幻想的と思えば悪くはないが。

10分ほどで展望台へ。
ここから見える湖は知床一湖ということになる。
ツアーご一行の人たちも撮影だけして戻る人が多い。

今日はどこも駄目だねえ。
雨に当たらなかっただけ良しとすべきか。
入れ替わり立ち代替わりのツアーの人たちを見ながら、次はどこへ行こうかと考えていた。
まだ13時を過ぎたばかり。時間だけはたっぷりとある。

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 知床一湖を望む湖畔展望台。

そうしていると、見る見るうちにガスが晴れて湖がはっきりと見えるようになった。
日が差して青空も見えるようになった。
多くはすぐに引き返してしまったツアーの人たちのうち、最後まで残っていた人たちは奇跡のような晴れ間に当たったことになる。

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 奇跡的にガスが晴れた知床五湖。

ツアーのおばちゃんたちも大喜びで記念撮影していた。
添乗員さんも「いやーこれは奇跡ですよ」なんて言って。

しかしこういうツアーというか団体旅行って、総じておばちゃんが元気だね。
今も昔も変わらない、未来になっても変わらないんだろう。

おじちゃんはどこへ行ったんだろう。
おじちゃんは今頃バスの中でブーたれてるのかな。

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 バスツアーの人たちも大喜び。

日が差して青空が出たのも10分間くらいの出来事。
海の方からモウモウとガスが流れてきた。

また次のツアーご一行がやってきた。
そろそろ退散するとしよう。

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 また海の方からガスが流れてくる。

どうもこの晴れ間は私の上だけ付いてくるような気がする。
空気が冷たくて寒いくらいだから、ずっとウインドブレーカーを羽織っているが、日が差す中を歩くと暑いくらいだ。
また駐車場に戻ってきた。

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 左がパークサービスセンター、右がフィールドハウスの建物。

パークサービスセンターの中には土産物屋と軽食の売店があって、ツアーの人たちにはソフトクリームが人気だ。
私はというと、朝のバイキングを食べすぎてまだお腹いっぱい。



 ◆ 知床自然センターとフレぺの滝

次はどこへいくかというと、一番奥のカムイワッカから戻る格好となっているので、次は知床自然センターということになる。
ここからフレぺの滝まで遊歩道があって歩いていけるようだ。

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 知床自然センター。

ここの駐車場は無料だった。
そんなに観光スポットでもないのに駐車場がやたらと広いのは、8月のハイシーズンは知床五湖からカムイワッカまでのダート区間がマイカー規制になり、ここからシャトルバスに乗りかえるためのようだ。
今は車で直接カムイワッカまで行けるので駐車場はガラガラ。

案内所でフレぺの滝まで歩いていけるのか聞いてみる。
知床に行くというのに熊鈴をもって来なかったのだ。
歩いて行けるが、遊歩道の途中にクマが居ついてしまったので今はう回路になりますとのこと。

「クマは出ますか」と聞いたら、案内所のおねえさんはあっさりと「出ますよ」。
遊歩道の案内のチラシの裏に『ヒグマと出会ってしまったら』の説明書きがあるので読んでくださいねだって。
「それでは行ってらっしゃい」の言葉に送られて、歩いて行く羽目になってしまった。

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 フレぺの滝遊歩道は道道側からの迂回路となっている。

国道を少し下ったところにフレぺの滝入口があった。
脇にヒグマの目撃情報をカレンダーに記してあるのだが、それを見ると思いっきり昼間に出没している。

スマホでRadikoのラジオ放送でも鳴らして行こうとしたが、こんな音クマに聞こえるのかな。
と思って進んで行くと、1人、2人とすれ違う。
考えたらフレぺの滝は知床八景のひとつ。
クマに遭遇する心配はなさそうだった。

途中でバスツアーらしいご一行を追い越して展望台に到着。

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 切り立った入江の上の展望台から。

展望台に登ると入江と流れ落ちる滝が見える。
この滝には川がなく、地下水が断崖の割れ目から直接流れ落ちるといった変わった滝。
流れ落ちる様が涙に似ていることから別名『乙女の涙』とも呼ばれているとか。

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 フレぺの滝は地下水が直接流れ落ちる変わった滝。

さっき追い越したツアーご一行が追いついてきたので引き返す。
引き返すと言っても、遊歩道は一方通行でぐるっと一周する格好になる。

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 戻り道でシカを見つけた。

知床自然センターを出発してフレぺの滝まで往復して50分といったところ。
センター内の展示物をさらっと見て回って出る。

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 フレぺの滝遊歩道のジオラマ。

もうここまで来たらウトロの町が近い。
またウトロの道の駅に戻る。


 ◆ ウトロとゴジラ岩

道の駅に並んである建物は知床世界遺産センターとなっていて、ここも入ってみる。ここも入場は無料だった。
さっきの知床自然センターと被るような印象。

思ったのは、この手の施設がいくつもあって入場無料なのはいいけど、どこも中途半端な感じは否めない。
あちこちにやたらと箱物ばかりあってもしょうがない。
どこか1つに集約して、入場料も取ってちゃんとした博物館にした方がいいと思う。

最後はウトロの町なかをあれこれ見て回って、セイコーマートで買い物してからホテルに戻ることにする。

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 港への道にはクルーズ船の看板が並ぶ。

ゴジラの形をしたゴジラ岩のある通りは観光船やクルーズ船の事務所が並んでいる。
今日は大型船の知床観光船おーろらは運航したようだが、小型船で運航する他の3社は濃霧欠航となった模様。
やはり明日に変更して正解だったようだ。

その明日もどうなるかまだわからないが。

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 おおっ、ゴジラ出現!と思ったらゴジラ岩だった (^^;


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 現在立入禁止のオロンコ岩遊歩道。

オロンコ岩に登ればウトロの港と町を一望できるようだが、今日は木道破損のため立入禁止になっていた。
歩いてみる所といえばそれくらい。また道の駅に戻る。

ちなみにオロンコ岩の “ロ” は “ろ” ね。
伏字ではありませんよ(←誰も思わねーよ!


 ◆ 白夜気分のホテル知床

セイコーマートでビールとホットシェフの総菜を買ってホテルに戻る。
16時30分。
それなりに充実した1日ではあった。

今日も温泉に入って風呂上がりのビール。
旨いけど、体にはめっちゃ悪そうだな。

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 セイコーマートで買ってきた夕食。

窓の外を見ていると、6時を過ぎたあたりから観光バスが続々と到着しだした。
さっきホテルに着いたとき、玄関にあった歓迎看板をみたら今夜宿泊のツアーは8組。
多いのか少ないのかはわからないが、さすがに多いってことはないだろう。
朝食会場以外は広い館内を持て余しているような印象を持った。

昨日は時どき廊下から話声がしたけど、今日は静か。
外だけがずっと明るく、時が止まったような感覚すら覚える。

ノルウェーのナルビクという港町にあるホテルに滞在したときを思い出した。
あの時も2泊して、1日目は混んでいたけど2日目はガラガラで、静かだった。
ちょうど白夜の季節でね、夜中だけどずっと昼間のように明るいの。
静まり返ったホテルの部屋と、いつまでも明るい窓の外に時が止まったような不思議な感覚を覚えたものだ。

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 瀟洒な飾り付けのエレベーターホール。

ここは日本だからそんなことはないけど、瀟洒な内装と静かな部屋。ずっと明るい窓の外を見ながら白夜の北欧を思い出した。

DSCN4358.JPG
 客室の廊下。

DSCN4365.JPG
 日が当たるスキー場の斜面。

また日が差してきたし、今日は夕日が見られるかなと期待したが、西側の空は雲が覆っていて今日も無理そうだ。
日没の時間になるとまたガスが出てきた。

DSCN4354.JPG
 今日も夕日は無理そう。

DSCN4366.JPG
 19時過ぎ、またガスがかかってきた。

今日はずっとガスったり晴れたりの繰り返しだった。
明日こそ晴れてくれないとなあ。

知床の天気なんて山の天気と一緒で誰にもわからない。
天気予報は基本的に網走の天気だしね。

8時過ぎ、ビール3本飲んだら猛烈に眠くなってきたのでもう寝ます。


タグ:北海道
posted by pupupukaya at 22/07/03 | Comment(0) | 道東の旅行記
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