ここから今回旅行の目的である特急『ニセコ』号の乗車記になります。
青函連絡船記念館摩周丸から函館駅へと向かう。
北海道の玄関口としての役割は新函館北斗駅へと移ったけれど、函館市の玄関口として、また特急『北斗』の始発駅としてまだまだ貫禄がある函館駅。
2030年度末を予定している北海道新幹線札幌開業後は第三セクター鉄道に移管が予定され、この駅も電車駅になってしまう運命だ。
しかし、現在函館市が検討している新函館北斗〜函館間のミニ新幹線が実現すれば、新たに新幹線の始発駅として生まれ変わるだろう。
これは大泉新函館市長公約による肝入りの新幹線乗り入れプロジェクト。
まだ調査開始が決まったばかりだし、実現の可否も決まっていない。
ただ、私ら鉄道ファンにとってはワクワクする話だし、期待を持ちながら動向を見守ってゆくことにしよう。
函館本線の起点は函館駅。
とにかく函館本線の起点であり、特急『北斗』系統の始発駅である函館駅である。
駅前は寂れる一方だが、駅の中は観光客で賑わっている。
発車まで40分以上時間があるので、また駅前へ出て市電の撮影をしたり。
おっと、まだ切符の発券をしていなかった。
『ニセコ』号の切符はえきねっとで予約し支払い済みだが、飛行機と違ってJRは紙の切符を専用端末で発券しなければ乗車できないという面倒なことになっている。
函館駅に3台ある指定券券売機に行くと、3台とも先客がいるので後ろに並ぶ。
しかしこの先客が長いこと。
えきねっとの受け取りではなく、ここで購入して座席の選択までしているのだから長いわけだ。
ようやく番がきて、予約した券を発券する。
えきねっとのクレジット決済ならば、インターネット予約受け取りボタンを押して決済に使ったクレジットカードを入れると自動で切符が出てくる。
『ニセコ』号はえきねっとの設定がないので、片道利用ならば正規の運賃・料金の切符を買うしかない。
それでも室蘭線経由の特急『北斗』は函館〜札幌間特急指定席利用の9,440円に対し、『ニセコ』号の値段は8,890円と若干ながら安い。
これは距離の短い函館本線経由で計算されるから。
このあとは駅の土産物屋をぶらぶら見て回るが、特に買いたいものは見つからなかった。
私は出張で函館に来ることが多いのでね。函館は今年で5回目になる。
土産物は買わずに、車内で飲む用のお酒を3本買った。
それから、酒の肴になる駅弁も調達。
買い物が済んだので、改札の中に入る。
◆ 函館 → 札幌 臨時特急『ニセコ』号の旅。
『ニセコ』号が停車する4番線ホームは、主に普通列車が使用するホームなのだが、臨時列車ということからか特急『北斗』や『はこだてライナー』が使用するホームには入れてもらえないようだ。
しかし、この番線は函館駅通路にある函館本線0キロポストの真ん前で、これは函館本線経由特急の旅立ちにふさわしい。
長万部から室蘭本線へ行ってしまう特急と違って、こちら『ニセコ』号は正真正銘函館本線の主といえる。
これで旭川まで行ってくれたら完璧なんだけどね。
ちなみにこの0キロポストが建つ場所は、函館起点0k219m00地点であることを表す表示も書かれている。
これはどういうことかというと、本当の函館起点は旧函館桟橋駅ということになっていて、のちに桟橋が函館駅構内とされてからも函館本線の起点位置は変更されなかったことによる。
青函連絡船もなくなり、旧桟橋付近まであった線路も撤去されると、本来の函館本線の起点からこの0キロポスト位置までの219mは、現在では概念上の存在となってしまった。
なお、このキロ数は時刻表に掲載されている運賃計算の基になる営業キロとは別物で、営業キロの起点は函館起点0k290m00に位置しており、この位置に当たるホーム下には『停車場中心』と書かれた標柱が設けられている。
無味乾燥とも思える数字だが、こうした駅構内の数字を拾ってみるだけで、函館駅の歴史と重みを感じることができる。
話が脱線しましたが、特急『ニセコ』号に戻ります。
隣のホームから撮影したはまなす編成。西日の影が・・・
快晴なのはいいんだけど、早くも西に傾いてきた秋の日差しがくっきりと影を作るので撮影泣かせ。
せめてもうちょっと後ろに停車してくれたらと思うがどうしようもない。
特急ニセコ(小樽経由)の表示。
13時40分、車内清掃の札が外されたので車内に入る。
はまなす編成の車両に乗るのは3回目かな。
最初に乗ったのが2020年の特急『宗谷』の編成に使用されたとき。
カラフルな座席やフリースペースとなる『はまなすラウンジ』など観光列車らしい車内設備や、今どきは標準装備となったWiFiや座席のコンセントが完備されたことなど、ようやく今の時代に追いついた車両ができたことを喜んだものだ。
はまなす編成車内。
去年まで『ニセコ』号はノースレインボーエクスプレスで運転されていたが、今年からはこの『はまなす編成』で運転されている。
同時に全車指定席となった。
1号車はフリースペースとなる『はまなすラウンジ』。
飲食物を持ち込んだり、見知らぬ人との相席に疲れた時に立ち寄ったりに便利な空間。
1号車はフリースペースの『はまなすラウンジ』。
自由席があると、こういったフリースペースは自由席代わりの客に占拠されてしまいがちだが、今年から全車指定席となったことから、フリースペースとしての本来の機能を発揮できることになった。
ホームからの撮影や車内探検を終えるとそろそろ発車時刻。
自席に戻って駅弁と呑み鉄タイムとしよう。
13時55分、函館駅発車。
発車時点で車内はガラガラだった。
えきねっとで予約したとき、なるべく周りに人のいない席を選んだのだが、この一角だけ見事に人がいない。
これは途中で乗ってくると思われる。
キハ150が進出する函館運輸所。
発車すると函館運輸所の構内に1両のキハ150が見えた。富良野線で使用されていたラベンダー色の車両。
デクモの進出や室蘭本線の電車化によって余剰車両となっているキハ150。
今は国鉄型キハ40形ばかりの道南だが、今後は急速に置き換えが進むに違いない。
函館駅弁の鮭いくらごはんとお酒。
新函館北斗から新幹線乗継ぎ客が乗ってくるかも知れないし、周りに人がいないうちに駅弁を食べてしまおう。
今回購入したのは函館みかどの『鮭いくらごはん』。
それにお酒2種。
海鮮の駅弁なので日本酒といきたい。
新函館北斗で乗ってくるのかと思っていたが、この号車には2人ほど乗ってきただけだった。
相変わらず周りの席には誰もいない。
翌日は仕事や学校がある日曜日ということもあるのだろうが、ちょっと寂しい運転最終日だ。
小沼と駒ヶ岳、手前の線路は藤城線。
仁山を過ぎて、少し長めのトンネルを抜けたら進行左側に注目したい。
突然景色が開けて、小沼と駒ケ岳が見える絶景ポイントに差し掛かる。
この景色も北海道新幹線が札幌開業すれば見られなくなる可能性が高い。
報道を色々見ていると、並行在来線となる新函館北斗〜長万部間は貨物専用線となる方向で話が進んでいる。
観光列車やクルーズトレインは走ることがあるのだろうが、少なくとも気軽に眺められる車窓風景ではなくなるのだろう。
赤井川で4834Dキハ40単行と交換。
こちらは特急とはいえ臨時列車とあって、やたらと単線区間での交換待ちが多い。
赤井川でも待避線に入り5分停車。
特急を待たせて、キハ40形の4834Dが悠々と入ってきた。
そういえばなぜか大沼公園には停まらない。
道南の一大観光地を通過してなぜか森には停車する。そして八雲は通過。
この停車駅の不思議。
『ニセコ』号運行当初からそうなっているからと言われればそれまでだけど。
森駅構内から見える羊蹄山。
森駅の裏側はすぐ海になっている。噴火湾だ。
空気がとても澄んでいて、この噴火湾越しに対岸の山々がはっきりと見える。
三角形のひときわ高い山は羊蹄山だとすぐわかった。
森駅から羊蹄山が見えるなんて、初めてのことかも知れない。
自席は左側席だが、席が空いているので駒ケ岳が見えている間だけ右側に席を移させてもらう。
噴火湾と駒ケ岳。石倉〜落部間。
森を発車するとしばらく駒ケ岳とお別れになるが、しばらく進むと再び後方に姿を現す。
今日は順光で本当にきれいに見えている。
車内もすいているし、本当にいい日に当たったものだ。
まんべくんが出迎える。長万部駅。
長万部15:42着/15:53発。
ここでは11分停車、ホームは多くの乗客が降りてきて賑やかになる。
『まんべくん』も出迎えにきていた。
昔、気動車急行の『ニセコ』に乗ったときは、駅弁の箱を提げたおじさんがいて、窓を開けてかにめしを買ったのを思い出す。
そのかにめしも、今は途中下車しないと手に入らなくなってしまった。
上り『ニセコ』ではかにめしの予約販売を行っているが下りは無し。
西日が照らす長万部駅のホームは、まんべくんの着ぐるみだけが異彩を放っていた。
ところで、ここ長万部駅は新幹線の高架駅ができるところ。
室蘭本線は新幹線開業後も存続することになっていて、長万部駅は室蘭や苫小牧方面への在来線との乗り換え駅として機能することになる。
特急『北斗』は札幌〜長万部間に短縮の上存続するのか、東室蘭までは普通・快速列車だけになるのかは未定。
そんな長万部駅構内はというと、一期工事として気動車庫が函館側に移転した以外はまだ新幹線工事は始まっておらず、一面草むらのままとなっていた。
長万部を発車して室蘭本線と別れる。
さて、長万部を発車するといよいよ山線(やません)へと進んで行く。
室蘭本線は非電化とはいえ複線で直進し、本線の貫禄だ。
一方でこちらは単線で左にカーブして山へと分け入って行く。
こちらが正真正銘函館本線なのだが、完全にローカル線と化してしまっている。
国道5号線が並行するが、走っている車はほとんど見かけない。
栄誉ある一桁国道なのだが、札幌へは遠回りとなるためにメインルートから外されてしまった。
今はどちらも裏街道となってしまった函館本線と国道5号線は一路黒松内へ向かう。
二股駅を通過すると最初の峠越えとなる。
強力エンジンを搭載したはまなす編成のキハ261形ならば難なく登る勾配だが、連続する急カーブには勝てないようで、スマホの速度計アプリを見ていると時々50km/hまで速度が低下する。
函館山線はこの先長万部〜小樽間で5つもの峠越えが待っている。
戦後に抜本的な改良工事が施された海線(うみせん)と呼ばれる室蘭本線に対し、山線のこちら函館本線は一部改良工事が施された区間もあるが、基本的に明治期に開業した当初のままとなっている。
急勾配に急曲線が連続し、単線でスピードも出せない輸送力の弱い線路では、ローカル線に落ちぶれてしまうのも仕方がないことだった。
のどかな函館山線の車窓。
長万部からここまではずっと深い山の中だったが、目名駅の手前あたりから田畑が増えてきて人里らしくなってくる。
とにかく高速ですっ飛ばす海線とは違い、長閑な田園風景の中をのんびりと走る。
この辺りは尻別川の流れが平地を形成し、ニセコの山々に囲まれた盆地に位置する蘭越町。
この町はらんこし米で知られる米どころでもある。
しかしこの列車は、なぜか町の中心である蘭越は通過して、次の昆布に停車する。
羊蹄山がだんだん近づく。昆布駅停車中。
昆布では、「後ろ5号車がホームにかからないためにドアが開きません」との放送が流れる。
しかし蘭越駅を差し置いて、なんで昆布に停車するんだろ。
昆布駅停車中は、羊蹄山がきれいに見えていた。
車内販売で買ったどら焼さんど(350円)とのむヨーグルト(180円)。
黒松内から乗り込んだ『SLニセコ号』の半被を着た車内販売が回ってきたので思わず呼び止めた。
メニュー表を見せてもらうと、ゲッ!甘いものばかり。
甘いものは嫌いじゃないけど、飲み物はお酒しか持っていないし。
今更いらないとも言えないので、ダチョウ卵使用という『どら焼さんど』と『のむヨーグルト』を買った。
せっかく車内販売で買ったんだから、車内で食べてしまいますよ。
普通のより一回り大きなどら焼と、ドリンクはのむヨーグルト。
ダチョウ卵だと何が違うんだろうと思いながら、甘いあんこを甘いヨーグルトで流し込む。
さっき食べた駅弁とお酒のデザートだと思えば悪くはないが、口の中も体も甘ったるくなってしまった。
ニセコ駅停車中。
ニセコ駅16:59着/17:14発。
すっかり秋の日が西に傾いたニセコ駅では15分停車。
ここも乗客が出てきてホームは賑やかになる。
駅長犬のハーディーも出迎えに来ていた。
ニセコ駅の駅長ハーディーも出迎え。
ニセコ駅といえばニセコ観光の中心なんだろうと思われがちだが、実はニセコ観光の主だったものは倶知安町にある。
インバウンドとそれを当て込んだホテルや観光施設が次々にできて、今はすっかり1つの町のようになった山田地区も倶知安町になる。
その山田地区も、去年の10月に住居表示を実施して、正式に倶知安町ニセコひらふという住所になった。
ニセコの名称がすっかり倶知安に奪われたような恰好で、隣のニセコ町としてはあまり面白くないところだろう。
北海道新幹線を待たずして函館山線の廃止が決定しているが、そうなるとこのニセコ駅もなくなってしまう。
有名ブランドのニセコの名称が鉄道から消えてしまうわけで、新たにできる新幹線の倶知安駅が『ニセコ倶知安駅』などに改称される可能性もある。
だけどそうなったら個人的には嫌だな。
倶知安駅は新幹線になっても倶知安駅であってほしい。
だけどそれは隣の倶知安駅の話でしたな。
またまた話を元に戻します。
ニセコ駅での15分停車は、長万部行2948Dとの交換待ちのため。
記念撮影か何かのためと思っている人がほとんどなのだろう。発車時刻が近づくと多くの人は車内に戻ってしまった。
そろそろ車内に戻らなきゃという気持ちをぐっと堪えて跨線橋でカメラを構えて待つ。
果せるかな、駅東側の踏切が鳴り始めた。
ニセコ駅に入線する長万部行2948D。
踏切の音とともにやってきましたよ、1両の長万部行デクモ。
この列車が到着しなければ『ニセコ』号は発車できないし、出発信号機が赤現示のまま車掌がドアを閉めれば運転事故扱いとなってしまう。
だから慌てることはない。
長万部行が停車してからカメラのシャッターボタンを押す。
で、跨線橋の上から長万部行と『ニセコ』号が並んだ画像が撮影できた。
ねばった者勝ちの画像。
まあでも、あまり無理はしませんように。
夕日を浴びる羊蹄山。比羅夫〜倶知安間。
ニセコからは1号車のラウンジの席が空いていたので、しばらくそこで過ごす。
羊蹄山が見えるのは進行右側。
何といっても、函館山線の主役は羊蹄山だ。
きれいな円錐型で独立しているこの山は、その容姿から蝦夷富士の名でも呼ばれている。
その蝦夷富士も、倶知安側から見ると右側の稜線がすこし膨らんだ、太った富士山のように見える。
話は変わるが、いま建設中の北海道新幹線の新函館北斗〜札幌間はそのほとんどがトンネル区間であり、唯一まとまった明かり区間は長万部駅の前後と倶知安駅の前後だけとなっている。
その新しい北海道新幹線の列車で札幌を出発して、ずっとトンネル内を走ってきて倶知安駅の手前でこの羊蹄山が姿を現したら、思わず歓声が上がるほど感激するだろうなと想像する。
そんなことを思ってだんだん赤く染まる羊蹄山を見ながら、倶知安駅に到着した。
ホームでの立売があって賑やかなホーム。倶知安駅。
倶知安駅17:27着/17:37発。
倶知安駅ホームは新幹線工事のために移設された新しいホームだ。
以前は長いホームと重厚な上屋が幹線ルートだった時代を残していたが、新しいけれど軽い感じのホームになったのは残念だ。
ここ倶知安駅では10分停車。
弁当や名産品の立売が2か所出店して、乗客も次々と降りてきてお祭り騒ぎのようになっている。
函館から札幌までの間に買い物ができるのは、黒松内〜ニセコ間の車内販売と、ここ倶知安駅の立売だけとあって飛ぶように売れている。
駅弁や豪雪うどんを販売する第一会舘の立売コーナー。
駅弁販売もあって、基本は予約販売制なのだが、当日販売分が3個。
これは早い者勝ちとなる。
まだ2つ残っていたので、そのうちの1つを思わず買ってしまった。
羊蹄山麓弁当は1,200円。
袋の中を見るとお茶のペットボトルも入っていた。お茶込みでの値段ということになる。
ホームにかからずドアカットの5号車。
ホームの南側は5号車がホームにかからず、ドアカットとなっていた。
山線主要駅の筆頭であろう倶知安駅にしては情けない姿だ。
これは新ホームを設計した段階では、4両編成までの列車しか想定していなかったからだろう。
新ホームは2021年10月から使用開始となっているが、当時は臨時特急『ニセコ』を含めて最長の列車は3両編成だった。
同年から『ニセコ』はノースレインボーエクスプレス使用による5両編成となったが、在来線の廃止がほぼ決定している駅なので延長工事が行われることはないだろう。
新幹線工事が始まっている倶知安駅旧ホーム跡。
ホームと駅舎の間にあった旧ホームと線路は跡形もなく、すでに新幹線の倶知安駅建設工事が始まっていた。
在来線ホームから羊蹄山を眺められるのも、そう長くないだろう。
再び自席へ戻る。
さっきラウンジで過ごしていた間に、空いていた席が結構ふさがっていた。
ニセコと倶知安で乗ってくる人が多かったようだ。
意外とボリュームのある羊蹄山麓弁当(1,200円)。
さて、さっきホームで衝動買いしてしまった弁当であるが、せっかく買ったんならば車内で食べたい。
函館駅で買ったお酒もまだ1本残っていることだし、この弁当も酒の肴とすることにした。
羊蹄山麓弁当の名の通り、羊蹄山麓の食材がぎっしり。
留寿都豚のソテー、ソースカツ、ネギの牛肉巻き、じゃがいものバター煮、ホタテ、とうきび、ご飯は五穀米、デザートにシャインマスカットとボリュームたっぷり。
お酒は千歳鶴の函館臥牛山。
あ〜お腹一杯。もう食えません、飲めません。
倶知安行1952Dと交換のため小沢駅で運転停車。
日が沈んで、空はまだ明るいけど地上は夜のとばりが下り始める。
そんな寂しい小沢駅でまた運転停車。
この駅はかつて岩内線が分かれていて、定期列車時代の急行『ニセコ』も停車していたものだが、岩内線が廃止になり急行『ニセコ』が廃止となると、無人の中間駅になってしまった。
今でも昔ながらの跨線橋とホームの上屋は残されていて、往時を偲ぶことができる、
小沢を発車するころにはすっかり日が暮れた。
小沢からは20パーミルの連続勾配が続く峠越え。
国鉄型気動車のキハ40形ならば30km/h台にまで速度が落ちた峠越えだが、このはまなす編成こと261形気動車はエンジンの音も軽く峠道を登ってゆく。
しかし勾配には強くても、急カーブだらけの線形の悪さには勝てないようで、速度はずっと50km/h台のまま。
稲穂トンネルを抜けると今度は下り勾配だが、やはりブレーキを効かせながら慎重に下る。
仁木〜余市間では最高95km/hを記録。
然別を通過したあたりから列車のスピードが上がる。
規則正しく刻むレールの音も軽やかに、仁木〜余市間では山線ではMAXスピードの95km/hに達した。
山線で唯一まとまった直線区間で、ここだけは特急らしい走りを見せてくれる。
◆ 『ニセコ』号、旅の終わり
日が暮れてからひたすら暗闇の中を走り続けていたが、小樽が近づくとだんだん街の灯りが増えてくる。
列車は小樽駅4番ホームに到着。
観光客で賑わう小樽駅ホーム。
小樽駅18:41着/18:43発。
停車時間が短いので降りることはできないが、デッキのドアから外をのぞくと、今までの『ニセコ』号とは全く別の世界があった。
小樽観光を終えて札幌へ戻るのだろう。ホームは次の快速『エアポート』を待つ観光客ばかり。
ここはもう札幌近郊の電車駅だということを思わせる。
札幌行の表示を見て乗り込もうとする人も多く、駅員がホームに立って、
「この列車は全車指定席でーす!」
「指定券をお持ちでない方は乗車できませーん!」
と叫んでいる。
それでも乗り込んでくる人があって、デッキに乗り込んだ人に対して指定券の有無を確認して、持っていなければ降ろしていた。
外国人観光客も多くて、駅員もなかなか大変だ。
小樽でさほど降りる人もなく、駅員の整理のおかげもあって、誤乗は防げたようだ。
それでも発車してから車内に誤乗らしき人は見かけた。
暗い石狩湾と対岸の夜景。
小樽からは札幌近郊の複線電化区間となる。
ここからは特急らしい走りを期待したいところだが、この列車は小樽18:36発滝川行普通列車の後追いとなるダイヤとなっていて、途中追い越しもない。
各駅停車の後ろをひたすらノロノロと走行する。
まだ日のある頃ならば夕暮れの石狩湾を眺めながらのんびりと行くのも悪くないのかも知れないが、行けども行けども暗闇では早く着いてほしいと思うようになった。
終点札幌に到着。
札幌駅19:28着。
浮世離れした『ニセコ』号の世界はここでおしまい。
ここからは嫌でも現実の世界に戻される。
函館から5時間33分は長い乗車時間だったけど、途中の駅で停車時間にホームで気分転換できたりするので、それほど長い乗車時間とは感じなかった。
天気が良くて、景色も素晴らしかったこともある。
あとは運転最終日ということもあってか、わりとすいていたこと。
そんなこともあって、この『ニセコ』号乗車は行って良かったと思える貴重な体験だった。
行きの飛行機も、これも貴重な体験だった。
◆ 最後に
札幌を朝に出発して夜に帰ってくるという日帰り旅行でしたが、今回の旅行はまさに『非日常』三昧の行程でした。
ただ函館へ行って帰ってくるだけの旅行でしたが、いつもと違う経路にしてみるだけで、海外旅行にも匹敵する刺激のある体験ができる。
遠くへ行くばかりが旅ではない。
通いなれた日帰り旅行でも、ちょっと行程を変えれば非日常の世界が味わえるのだということを、改めて感じさせられた秋口の旅行でした。
費目 | 内 訳 | 金額 | 摘 要 |
交通費 | 丘珠→函館(JAL) | 0円 | 4000マイル使用 |
交通費 | 函館→札幌(ニセコ) | 8,890円 | 乗車券+指定席特急券 |
交通費 | 中島公園→丘珠空港 | 380円 | 地下鉄→中央バス乗継 |
食費 | 生ビール | 500円 | 丘珠キッチン |
交通費 | 函館空港→函館駅 | 490円 | 函館バス→函館市電 |
入場料 | 摩周丸 | 500円 | |
食費 | 鮭いくらご飯 | 1,200円 | 函館みかど |
食費 | お酒3本 | 909円 | 四季彩館 |
食費 | どら焼、のむヨーグルト | 530円 | ニセコ号車販 |
食費 | 羊蹄山麓弁当 | 1,200円 | 倶知安駅 |
合 計 | 14,599円 |
〜最後までお読みいただきましてありがとうございました。