2023年丘珠空港発、特急ニセコ号旅行記2

ここから今回旅行の目的である特急『ニセコ』号の乗車記になります。

青函連絡船記念館摩周丸から函館駅へと向かう。
北海道の玄関口としての役割は新函館北斗駅へと移ったけれど、函館市の玄関口として、また特急『北斗』の始発駅としてまだまだ貫禄がある函館駅。

2030年度末を予定している北海道新幹線札幌開業後は第三セクター鉄道に移管が予定され、この駅も電車駅になってしまう運命だ。

しかし、現在函館市が検討している新函館北斗〜函館間のミニ新幹線が実現すれば、新たに新幹線の始発駅として生まれ変わるだろう。

これは大泉新函館市長公約による肝入りの新幹線乗り入れプロジェクト。
まだ調査開始が決まったばかりだし、実現の可否も決まっていない。

ただ、私ら鉄道ファンにとってはワクワクする話だし、期待を持ちながら動向を見守ってゆくことにしよう。

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 函館本線の起点は函館駅。

とにかく函館本線の起点であり、特急『北斗』系統の始発駅である函館駅である。
駅前は寂れる一方だが、駅の中は観光客で賑わっている。

発車まで40分以上時間があるので、また駅前へ出て市電の撮影をしたり。

おっと、まだ切符の発券をしていなかった。
『ニセコ』号の切符はえきねっとで予約し支払い済みだが、飛行機と違ってJRは紙の切符を専用端末で発券しなければ乗車できないという面倒なことになっている。

函館駅に3台ある指定券券売機に行くと、3台とも先客がいるので後ろに並ぶ。
しかしこの先客が長いこと。
えきねっとの受け取りではなく、ここで購入して座席の選択までしているのだから長いわけだ。

ようやく番がきて、予約した券を発券する。
えきねっとのクレジット決済ならば、インターネット予約受け取りボタンを押して決済に使ったクレジットカードを入れると自動で切符が出てくる。

『ニセコ』号はえきねっとの設定がないので、片道利用ならば正規の運賃・料金の切符を買うしかない。
それでも室蘭線経由の特急『北斗』は函館〜札幌間特急指定席利用の9,440円に対し、『ニセコ』号の値段は8,890円と若干ながら安い。
これは距離の短い函館本線経由で計算されるから。

このあとは駅の土産物屋をぶらぶら見て回るが、特に買いたいものは見つからなかった。
私は出張で函館に来ることが多いのでね。函館は今年で5回目になる。

土産物は買わずに、車内で飲む用のお酒を3本買った。
それから、酒の肴になる駅弁も調達。

買い物が済んだので、改札の中に入る。


 ◆ 函館 → 札幌 臨時特急『ニセコ』号の旅。

ニセコ』号が停車する4番線ホームは、主に普通列車が使用するホームなのだが、臨時列車ということからか特急『北斗』や『はこだてライナー』が使用するホームには入れてもらえないようだ。

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 函館本線ゼロキロポストと特急『ニセコ』号。

しかし、この番線は函館駅通路にある函館本線0キロポストの真ん前で、これは函館本線経由特急の旅立ちにふさわしい。

長万部から室蘭本線へ行ってしまう特急と違って、こちら『ニセコ』号は正真正銘函館本線の主といえる。
これで旭川まで行ってくれたら完璧なんだけどね。

ちなみにこの0キロポストが建つ場所は、函館起点0k219m00地点であることを表す表示も書かれている。
これはどういうことかというと、本当の函館起点は旧函館桟橋駅ということになっていて、のちに桟橋が函館駅構内とされてからも函館本線の起点位置は変更されなかったことによる。

青函連絡船もなくなり、旧桟橋付近まであった線路も撤去されると、本来の函館本線の起点からこの0キロポスト位置までの219mは、現在では概念上の存在となってしまった。

なお、このキロ数は時刻表に掲載されている運賃計算の基になる営業キロとは別物で、営業キロの起点は函館起点0k290m00に位置しており、この位置に当たるホーム下には『停車場中心』と書かれた標柱が設けられている。

無味乾燥とも思える数字だが、こうした駅構内の数字を拾ってみるだけで、函館駅の歴史と重みを感じることができる。

話が脱線しましたが、特急『ニセコ』号に戻ります。

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 隣のホームから撮影したはまなす編成。西日の影が・・・

快晴なのはいいんだけど、早くも西に傾いてきた秋の日差しがくっきりと影を作るので撮影泣かせ。
せめてもうちょっと後ろに停車してくれたらと思うがどうしようもない。

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 特急ニセコ(小樽経由)の表示。

13時40分、車内清掃の札が外されたので車内に入る。
はまなす編成の車両に乗るのは3回目かな。
最初に乗ったのが2020年の特急『宗谷』の編成に使用されたとき。

カラフルな座席やフリースペースとなる『はまなすラウンジ』など観光列車らしい車内設備や、今どきは標準装備となったWiFiや座席のコンセントが完備されたことなど、ようやく今の時代に追いついた車両ができたことを喜んだものだ。

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 はまなす編成車内。

去年まで『ニセコ』号はノースレインボーエクスプレスで運転されていたが、今年からはこの『はまなす編成』で運転されている。
同時に全車指定席となった。

1号車はフリースペースとなる『はまなすラウンジ』。
飲食物を持ち込んだり、見知らぬ人との相席に疲れた時に立ち寄ったりに便利な空間。

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 1号車はフリースペースの『はまなすラウンジ』。

自由席があると、こういったフリースペースは自由席代わりの客に占拠されてしまいがちだが、今年から全車指定席となったことから、フリースペースとしての本来の機能を発揮できることになった。

ホームからの撮影や車内探検を終えるとそろそろ発車時刻。
自席に戻って駅弁と呑み鉄タイムとしよう。

13時55分、函館駅発車

発車時点で車内はガラガラだった。
えきねっとで予約したとき、なるべく周りに人のいない席を選んだのだが、この一角だけ見事に人がいない。
これは途中で乗ってくると思われる。

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 キハ150が進出する函館運輸所。

発車すると函館運輸所の構内に1両のキハ150が見えた。富良野線で使用されていたラベンダー色の車両。
デクモの進出や室蘭本線の電車化によって余剰車両となっているキハ150。

今は国鉄型キハ40形ばかりの道南だが、今後は急速に置き換えが進むに違いない。

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 函館駅弁の鮭いくらごはんとお酒。

新函館北斗から新幹線乗継ぎ客が乗ってくるかも知れないし、周りに人がいないうちに駅弁を食べてしまおう。

今回購入したのは函館みかどの『鮭いくらごはん』。
それにお酒2種。
海鮮の駅弁なので日本酒といきたい。

新函館北斗で乗ってくるのかと思っていたが、この号車には2人ほど乗ってきただけだった。
相変わらず周りの席には誰もいない。

翌日は仕事や学校がある日曜日ということもあるのだろうが、ちょっと寂しい運転最終日だ。

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 小沼と駒ヶ岳、手前の線路は藤城線。

仁山を過ぎて、少し長めのトンネルを抜けたら進行左側に注目したい。
突然景色が開けて、小沼と駒ケ岳が見える絶景ポイントに差し掛かる。

この景色も北海道新幹線が札幌開業すれば見られなくなる可能性が高い。
報道を色々見ていると、並行在来線となる新函館北斗〜長万部間は貨物専用線となる方向で話が進んでいる。

観光列車やクルーズトレインは走ることがあるのだろうが、少なくとも気軽に眺められる車窓風景ではなくなるのだろう。

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 赤井川で4834Dキハ40単行と交換。

こちらは特急とはいえ臨時列車とあって、やたらと単線区間での交換待ちが多い。
赤井川でも待避線に入り5分停車。
特急を待たせて、キハ40形の4834Dが悠々と入ってきた。

そういえばなぜか大沼公園には停まらない。
道南の一大観光地を通過してなぜか森には停車する。そして八雲は通過。

この停車駅の不思議。
『ニセコ』号運行当初からそうなっているからと言われればそれまでだけど。

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 森駅構内から見える羊蹄山。

森駅の裏側はすぐ海になっている。噴火湾だ。
空気がとても澄んでいて、この噴火湾越しに対岸の山々がはっきりと見える。

三角形のひときわ高い山は羊蹄山だとすぐわかった。
森駅から羊蹄山が見えるなんて、初めてのことかも知れない。

自席は左側席だが、席が空いているので駒ケ岳が見えている間だけ右側に席を移させてもらう。

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 噴火湾と駒ケ岳。石倉〜落部間。

森を発車するとしばらく駒ケ岳とお別れになるが、しばらく進むと再び後方に姿を現す。
今日は順光で本当にきれいに見えている。

車内もすいているし、本当にいい日に当たったものだ。

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 まんべくんが出迎える。長万部駅。

長万部15:42着/15:53発

ここでは11分停車、ホームは多くの乗客が降りてきて賑やかになる。
まんべくん』も出迎えにきていた。

昔、気動車急行の『ニセコ』に乗ったときは、駅弁の箱を提げたおじさんがいて、窓を開けてかにめしを買ったのを思い出す。
そのかにめしも、今は途中下車しないと手に入らなくなってしまった。

上り『ニセコ』ではかにめしの予約販売を行っているが下りは無し。
西日が照らす長万部駅のホームは、まんべくんの着ぐるみだけが異彩を放っていた。

ところで、ここ長万部駅は新幹線の高架駅ができるところ。
室蘭本線は新幹線開業後も存続することになっていて、長万部駅は室蘭や苫小牧方面への在来線との乗り換え駅として機能することになる。
特急『北斗』は札幌〜長万部間に短縮の上存続するのか、東室蘭までは普通・快速列車だけになるのかは未定。

そんな長万部駅構内はというと、一期工事として気動車庫が函館側に移転した以外はまだ新幹線工事は始まっておらず、一面草むらのままとなっていた。

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 長万部を発車して室蘭本線と別れる。

さて、長万部を発車するといよいよ山線(やません)へと進んで行く。

室蘭本線は非電化とはいえ複線で直進し、本線の貫禄だ。
一方でこちらは単線で左にカーブして山へと分け入って行く。
こちらが正真正銘函館本線なのだが、完全にローカル線と化してしまっている。

国道5号線が並行するが、走っている車はほとんど見かけない。
栄誉ある一桁国道なのだが、札幌へは遠回りとなるためにメインルートから外されてしまった。

今はどちらも裏街道となってしまった函館本線と国道5号線は一路黒松内へ向かう。

二股駅を通過すると最初の峠越えとなる。
強力エンジンを搭載したはまなす編成のキハ261形ならば難なく登る勾配だが、連続する急カーブには勝てないようで、スマホの速度計アプリを見ていると時々50km/hまで速度が低下する。

函館山線はこの先長万部〜小樽間で5つもの峠越えが待っている。
戦後に抜本的な改良工事が施された海線(うみせん)と呼ばれる室蘭本線に対し、山線のこちら函館本線は一部改良工事が施された区間もあるが、基本的に明治期に開業した当初のままとなっている。

急勾配に急曲線が連続し、単線でスピードも出せない輸送力の弱い線路では、ローカル線に落ちぶれてしまうのも仕方がないことだった。

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 のどかな函館山線の車窓。

長万部からここまではずっと深い山の中だったが、目名駅の手前あたりから田畑が増えてきて人里らしくなってくる。
とにかく高速ですっ飛ばす海線とは違い、長閑な田園風景の中をのんびりと走る。

この辺りは尻別川の流れが平地を形成し、ニセコの山々に囲まれた盆地に位置する蘭越町。
この町はらんこし米で知られる米どころでもある。

しかしこの列車は、なぜか町の中心である蘭越は通過して、次の昆布に停車する。

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 羊蹄山がだんだん近づく。昆布駅停車中。

昆布では、「後ろ5号車がホームにかからないためにドアが開きません」との放送が流れる。
しかし蘭越駅を差し置いて、なんで昆布に停車するんだろ。

昆布駅停車中は、羊蹄山がきれいに見えていた。

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 車内販売で買ったどら焼さんど(350円)とのむヨーグルト(180円)。

黒松内から乗り込んだ『SLニセコ号』の半被を着た車内販売が回ってきたので思わず呼び止めた。
メニュー表を見せてもらうと、ゲッ!甘いものばかり

甘いものは嫌いじゃないけど、飲み物はお酒しか持っていないし。
今更いらないとも言えないので、ダチョウ卵使用という『どら焼さんど』と『のむヨーグルト』を買った。

せっかく車内販売で買ったんだから、車内で食べてしまいますよ。
普通のより一回り大きなどら焼と、ドリンクはのむヨーグルト。
ダチョウ卵だと何が違うんだろうと思いながら、甘いあんこを甘いヨーグルトで流し込む。

さっき食べた駅弁とお酒のデザートだと思えば悪くはないが、口の中も体も甘ったるくなってしまった。

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 ニセコ駅停車中。

ニセコ駅16:59着/17:14発

すっかり秋の日が西に傾いたニセコ駅では15分停車。
ここも乗客が出てきてホームは賑やかになる。

駅長犬のハーディーも出迎えに来ていた。

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 ニセコ駅の駅長ハーディーも出迎え。

ニセコ駅といえばニセコ観光の中心なんだろうと思われがちだが、実はニセコ観光の主だったものは倶知安町にある。
インバウンドとそれを当て込んだホテルや観光施設が次々にできて、今はすっかり1つの町のようになった山田地区も倶知安町になる。

その山田地区も、去年の10月に住居表示を実施して、正式に倶知安町ニセコひらふという住所になった。
ニセコの名称がすっかり倶知安に奪われたような恰好で、隣のニセコ町としてはあまり面白くないところだろう。

北海道新幹線を待たずして函館山線の廃止が決定しているが、そうなるとこのニセコ駅もなくなってしまう。
有名ブランドのニセコの名称が鉄道から消えてしまうわけで、新たにできる新幹線の倶知安駅が『ニセコ倶知安駅』などに改称される可能性もある。

だけどそうなったら個人的には嫌だな。
倶知安駅は新幹線になっても倶知安駅であってほしい。

だけどそれは隣の倶知安駅の話でしたな。
またまた話を元に戻します。

ニセコ駅での15分停車は、長万部行2948Dとの交換待ちのため。
記念撮影か何かのためと思っている人がほとんどなのだろう。発車時刻が近づくと多くの人は車内に戻ってしまった。

そろそろ車内に戻らなきゃという気持ちをぐっと堪えて跨線橋でカメラを構えて待つ。
果せるかな、駅東側の踏切が鳴り始めた。

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 ニセコ駅に入線する長万部行2948D。

踏切の音とともにやってきましたよ、1両の長万部行デクモ。

この列車が到着しなければ『ニセコ』号は発車できないし、出発信号機が赤現示のまま車掌がドアを閉めれば運転事故扱いとなってしまう。

だから慌てることはない。
長万部行が停車してからカメラのシャッターボタンを押す。

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 長万部行2948Dと交換。

で、跨線橋の上から長万部行と『ニセコ』号が並んだ画像が撮影できた。
ねばった者勝ちの画像。

まあでも、あまり無理はしませんように。

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 夕日を浴びる羊蹄山。比羅夫〜倶知安間。

ニセコからは1号車のラウンジの席が空いていたので、しばらくそこで過ごす。
羊蹄山が見えるのは進行右側。
何といっても、函館山線の主役は羊蹄山だ。

きれいな円錐型で独立しているこの山は、その容姿から蝦夷富士の名でも呼ばれている。
その蝦夷富士も、倶知安側から見ると右側の稜線がすこし膨らんだ、太った富士山のように見える。

話は変わるが、いま建設中の北海道新幹線の新函館北斗〜札幌間はそのほとんどがトンネル区間であり、唯一まとまった明かり区間は長万部駅の前後と倶知安駅の前後だけとなっている。

その新しい北海道新幹線の列車で札幌を出発して、ずっとトンネル内を走ってきて倶知安駅の手前でこの羊蹄山が姿を現したら、思わず歓声が上がるほど感激するだろうなと想像する。

そんなことを思ってだんだん赤く染まる羊蹄山を見ながら、倶知安駅に到着した。

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 ホームでの立売があって賑やかなホーム。倶知安駅。

倶知安駅17:27着/17:37発。

倶知安駅ホームは新幹線工事のために移設された新しいホームだ。

以前は長いホームと重厚な上屋が幹線ルートだった時代を残していたが、新しいけれど軽い感じのホームになったのは残念だ。
ここ倶知安駅では10分停車。

弁当や名産品の立売が2か所出店して、乗客も次々と降りてきてお祭り騒ぎのようになっている。
函館から札幌までの間に買い物ができるのは、黒松内〜ニセコ間の車内販売と、ここ倶知安駅の立売だけとあって飛ぶように売れている。

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 駅弁や豪雪うどんを販売する第一会舘の立売コーナー。

駅弁販売もあって、基本は予約販売制なのだが、当日販売分が3個。
これは早い者勝ちとなる。
まだ2つ残っていたので、そのうちの1つを思わず買ってしまった。

羊蹄山麓弁当は1,200円。
袋の中を見るとお茶のペットボトルも入っていた。お茶込みでの値段ということになる。

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 ホームにかからずドアカットの5号車。

ホームの南側は5号車がホームにかからず、ドアカットとなっていた。
山線主要駅の筆頭であろう倶知安駅にしては情けない姿だ。

これは新ホームを設計した段階では、4両編成までの列車しか想定していなかったからだろう。
新ホームは2021年10月から使用開始となっているが、当時は臨時特急『ニセコ』を含めて最長の列車は3両編成だった。

同年から『ニセコ』はノースレインボーエクスプレス使用による5両編成となったが、在来線の廃止がほぼ決定している駅なので延長工事が行われることはないだろう。

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 新幹線工事が始まっている倶知安駅旧ホーム跡。

ホームと駅舎の間にあった旧ホームと線路は跡形もなく、すでに新幹線の倶知安駅建設工事が始まっていた。
在来線ホームから羊蹄山を眺められるのも、そう長くないだろう。

再び自席へ戻る。
さっきラウンジで過ごしていた間に、空いていた席が結構ふさがっていた。
ニセコと倶知安で乗ってくる人が多かったようだ。

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 意外とボリュームのある羊蹄山麓弁当(1,200円)。

さて、さっきホームで衝動買いしてしまった弁当であるが、せっかく買ったんならば車内で食べたい。
函館駅で買ったお酒もまだ1本残っていることだし、この弁当も酒の肴とすることにした。
羊蹄山麓弁当の名の通り、羊蹄山麓の食材がぎっしり。

留寿都豚のソテー、ソースカツ、ネギの牛肉巻き、じゃがいものバター煮、ホタテ、とうきび、ご飯は五穀米、デザートにシャインマスカットとボリュームたっぷり。
お酒は千歳鶴の函館臥牛山。

あ〜お腹一杯。もう食えません、飲めません。

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 倶知安行1952Dと交換のため小沢駅で運転停車。

日が沈んで、空はまだ明るいけど地上は夜のとばりが下り始める。
そんな寂しい小沢駅でまた運転停車。

この駅はかつて岩内線が分かれていて、定期列車時代の急行『ニセコ』も停車していたものだが、岩内線が廃止になり急行『ニセコ』が廃止となると、無人の中間駅になってしまった。
今でも昔ながらの跨線橋とホームの上屋は残されていて、往時を偲ぶことができる、

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 小沢を発車するころにはすっかり日が暮れた。

小沢からは20パーミルの連続勾配が続く峠越え。
国鉄型気動車のキハ40形ならば30km/h台にまで速度が落ちた峠越えだが、このはまなす編成こと261形気動車はエンジンの音も軽く峠道を登ってゆく。

しかし勾配には強くても、急カーブだらけの線形の悪さには勝てないようで、速度はずっと50km/h台のまま。
稲穂トンネルを抜けると今度は下り勾配だが、やはりブレーキを効かせながら慎重に下る。

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 仁木〜余市間では最高95km/hを記録。

然別を通過したあたりから列車のスピードが上がる。
規則正しく刻むレールの音も軽やかに、仁木〜余市間では山線ではMAXスピードの95km/hに達した。
山線で唯一まとまった直線区間で、ここだけは特急らしい走りを見せてくれる。


 ◆ 『ニセコ』号、旅の終わり

日が暮れてからひたすら暗闇の中を走り続けていたが、小樽が近づくとだんだん街の灯りが増えてくる。
列車は小樽駅4番ホームに到着。

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 観光客で賑わう小樽駅ホーム。

小樽駅18:41着/18:43発。

停車時間が短いので降りることはできないが、デッキのドアから外をのぞくと、今までの『ニセコ』号とは全く別の世界があった。

小樽観光を終えて札幌へ戻るのだろう。ホームは次の快速『エアポート』を待つ観光客ばかり。
ここはもう札幌近郊の電車駅だということを思わせる。

札幌行の表示を見て乗り込もうとする人も多く、駅員がホームに立って、
この列車は全車指定席でーす!
指定券をお持ちでない方は乗車できませーん!
と叫んでいる。

それでも乗り込んでくる人があって、デッキに乗り込んだ人に対して指定券の有無を確認して、持っていなければ降ろしていた。
外国人観光客も多くて、駅員もなかなか大変だ。

小樽でさほど降りる人もなく、駅員の整理のおかげもあって、誤乗は防げたようだ。
それでも発車してから車内に誤乗らしき人は見かけた。

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 暗い石狩湾と対岸の夜景。

小樽からは札幌近郊の複線電化区間となる。

ここからは特急らしい走りを期待したいところだが、この列車は小樽18:36発滝川行普通列車の後追いとなるダイヤとなっていて、途中追い越しもない。
各駅停車の後ろをひたすらノロノロと走行する。

まだ日のある頃ならば夕暮れの石狩湾を眺めながらのんびりと行くのも悪くないのかも知れないが、行けども行けども暗闇では早く着いてほしいと思うようになった。

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 終点札幌に到着。

札幌駅19:28着。

浮世離れした『ニセコ』号の世界はここでおしまい。
ここからは嫌でも現実の世界に戻される。

函館から5時間33分は長い乗車時間だったけど、途中の駅で停車時間にホームで気分転換できたりするので、それほど長い乗車時間とは感じなかった。
天気が良くて、景色も素晴らしかったこともある。
あとは運転最終日ということもあってか、わりとすいていたこと。

そんなこともあって、この『ニセコ』号乗車は行って良かったと思える貴重な体験だった。
行きの飛行機も、これも貴重な体験だった。


 ◆ 最後に

札幌を朝に出発して夜に帰ってくるという日帰り旅行でしたが、今回の旅行はまさに『非日常』三昧の行程でした。
ただ函館へ行って帰ってくるだけの旅行でしたが、いつもと違う経路にしてみるだけで、海外旅行にも匹敵する刺激のある体験ができる。

遠くへ行くばかりが旅ではない。
通いなれた日帰り旅行でも、ちょっと行程を変えれば非日常の世界が味わえるのだということを、改めて感じさせられた秋口の旅行でした。

2023年丘珠空港発、特急ニセコ号旅行の費用
費目内 訳金額摘 要
交通費丘珠→函館(JAL)0円4000マイル使用
交通費函館→札幌(ニセコ)8,890円乗車券+指定席特急券
交通費中島公園→丘珠空港380円地下鉄→中央バス乗継
食費生ビール500円丘珠キッチン
交通費函館空港→函館駅490円函館バス→函館市電
入場料摩周丸500円 
食費鮭いくらご飯1,200円函館みかど
食費お酒3本909円四季彩館
食費どら焼、のむヨーグルト530円
ニセコ号車販
食費羊蹄山麓弁当1,200円倶知安駅
合 計14,599円 

〜最後までお読みいただきましてありがとうございました。   

posted by pupupukaya at 23/10/01 | Comment(0) | 道南の旅行記

2023年丘珠空港発、特急ニセコ号旅行記1

今年(2023年)も函館山線経由の臨時特急『ニセコ』号が走りました。
この山線経由で函館〜札幌間を結ぶ臨時特急は、運行初年が2012年ですから、もう12年目になるんですね。

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 はまなす編成『ニセコ』のイラスト。
 (JR北海道HPより)

山線の特急といえば『北海』、それに急行『ニセコ』がありましたが、国鉄最後のダイヤ改正である1986年11月で廃止されてしまいました。
私は定期列車時代の山線優等列車には乗ったことはありませんが、その後もしばらくは多客期に臨時急行『ニセコ』が運転され、それには何度か乗ったことがあります。
(〜なぜ写真撮っておかなかったんだあ、自分の大馬鹿野郎)

そんなこともあってか、山線経由の優等列車は自分にとってさほど珍しいものでもなかったので、臨時特急『ニセコ』号には乗らずにいました。

今年は『はまなす編成』に衣替えした新生『ニセコ』号ですが、突然乗ってみようと思い立ちました。
旅の虫はいつも突然知らせにやって来ます。

さっそく『えきねっと』で検索。
混んでいたらやめようかと思っていましたが、運転最終日の下り函館→札幌だと空席が結構あり、これに決めました。
自宅にいながら、座席表から好みの席を選択できるなんて便利な時代になったものですね。

これで『ニセコ』号の指定席は押さえたわけですが、今度は札幌から函館までどうやって行くか。
これは飛行機にしました。
なぜかというと、JALマイル6000ちょっとのうち1600マイルが今年の12月で消えてしまうので。

その前にどこか片道利用で使ってしまわなきゃなあ・・と思っていたのですが、今持っているマイルでは一番遠くて花巻や秋田までしか利用できないわけです。

これもいい機会なので、丘珠→函館の片道で使ってしまうことにしました。
丘珠8時45分発、JAL2743便
4000マイル使用、座席も運のいいことに窓側席が取れました。

今回は日帰り旅行になります。
では旅行記本文どうぞ ↓ ↓ ↓


 ◆ 丘珠空港 → 函館空港

当日朝、JALからメールが来ていた。
内容は、8:45発函館行時刻は、機材変更の影響で出発予定時刻が1時間50分遅れの10:35になるというもの。

予定のある人にとってはとんでもない話だが、私としては函館発『ニセコ』号乗車に影響はないし、当初は朝7時前に家を出る予定でいたので、出発に余裕ができた格好になるので、逆にありがたい。

当初は札幌駅前から北都交通の空港連絡バスに乗ることにしていたが、時間に余裕ができたので麻生駅まで地下鉄で行き、そこから路線バスで丘珠空港へ行くことにした。 

8時過ぎ、自宅近くの中島公園駅から地下鉄南北線で麻生駅へ向かう。
麻生バスターミナルから中央バス麻26 麻生東苗穂線の豊畑行に乗り換える。

丘珠空港へは札幌駅前発の北都交通空港連絡バスが便利だが、あちらは700円。
こちらは路線バスなので地下鉄→バス乗継割引で380円。
時間に余裕があれば路線バス利用が経済的だ。

ちなみにこのルートは、PCやスマホで経路検索すると麻生駅→麻生町3丁目乗り換えと表示されるが、これだと乗継割引適用となるのかどうかは不明。

空港リムジンバスは飛行機の発着時刻に合わせて運転されるが、路線バスは基本1時間に1本。
麻生バスターミナルから乗車するバスは8時30分発豊畑行。

この1本後の9時30発の便でも十分間に合うのだが、初めての丘珠空港発なのでじっくりと空港見物しようと1本早いバスとしたわけだ。

車内は一般客ばかりで麻生を発車する。
バスターミナルを出ると交差点を3つも右折して丘珠空港通りに出た。

途中で栄町駅のバスターミナルにも寄って、丘珠空港に着いたのは8時44分。
それでも麻生から僅か14分なのだからやっぱり丘珠空港は近い。

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 中央バス麻26 麻生東苗穂線のバスで丘珠空港に到着。

今日は朝から雲ひとつない快晴。
この間まで暑い暑い言っていたのが、気が付けば秋になっていたんだと思わせる空気。

だけど強い日差しがくっきりと影を作る撮影泣かせの天気でもある。
爽やかな秋晴れの空も、カメラを構えるとそれが憎たらしい気持ちにさせられる。

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 丘珠空港ターミナルビル。

さて、出発1時間50分前に着いた丘珠空港。
中に入ると、ここは離島の空港かと思うほど小さなターミナルだった。

入ると目の前にチェックインカウンターがあり、思わずカウンターの係員と目が合ってしまうほどの狭さ。
預け手荷物検査場もカウンターもまだ客は誰もいなくて手持無沙汰なように見える。
隣が到着ロビー。

カウンター隣に階段があって、そこを上がった2階が出発ロビーとなる。

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 1階の出発カウンターを階段から見下ろす。

出発ロビーと言っても、ベンチがいくつか並んでいるだけで病院の待合室のよう。
保安検査場入口にロープがジグザグに張られているが、ここもまだ誰もいない。
空港とは思えないほどのんびりとしている。

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 出発口の出発案内。

狭い出発ロビーだが、奥のほうは机と椅子が並べられたコーナーがあって、壁面に札幌の歴史を紹介したパネルがある。
そんなものを眺めていれば退屈はしないが、なんだか空港というより図書館といった雰囲気だ。

隣の部屋は机と椅子が前向きに並べられていて教室のようになっている。
セミナーか何かに使われることがあるのだろうか。
しかし、前方に飛行機の発着案内があるのは紛れもなく空港だ。

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 教室のような部屋もある。

あとは小部屋のような場所にある売店のスカイショップおかだまと飲食施設の丘珠キッチン
あるものといえばそれくらい。

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 丘珠キッチンは空港内唯一の飲食施設。

丘珠キッチンのメニューを見ていたら生ビールがあったので、ここで景気づけの1杯としよう。
食券制なのとセルフサービスは1人旅ならば気軽なのでありがたい。
滑走路の見える窓側はカウンター席となっている。

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 滑走路を眺めながら飲む生ビール。

空気が澄んでいて、遠くの山々がはっきりと見える。
滑走路に飛行機はなし。
たまにチャーターらしいヘリコプターやセスナ機が飛び立って行く。

そんな光景をぼんやり眺めながらビールをチビチビと・・・
平和だなあ・・・

20分くらい居て、9時半を過ぎたあたりから店内の客が増えてきた。
落ち着かなくなってきたので退散する。

3階は送迎デッキとなっていて外に出られる。
ちょうど名古屋小牧空港からのフジドリームエアラインズ(FDA)の391便が着いたところだった。

しばらくすると釧路空港からのJAL2860便、次いで利尻空港からのJAL2880が次々と到着した。

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 利尻空港から到着したJAL2880便。

到着した飛行機の、後ろの乗降口から乗客がパラパラと降りてきて空港ターミナルへ歩いて向かう様は何とも長閑な光景。

駐機場からターミナル到着口までは一応歩道らしき白線が引かれているが、みんなそこは通らずに斜めに近道で歩いているのが面白い。
ときどき振り返って飛行機の撮影をする人とか。

本当に離島かどこかのローカル空港の風景。
とても札幌市内の空港とは思えない、ある意味札幌の秘境とも呼べる風景でもある。

10時前の丘珠空港は到着便ラッシュ。
駐機場には3機並んで、ようやく飛行場らしくなった。

2階の出発ロビーに戻ると、さっきとは打って変わって保安検査場入口は長蛇の列が出来ていた。
10時台になると今度は出発便ラッシュ。
女満別行、名古屋行、それに遅れ函館行と3つの便が集中する。

行列に並ぶが、入口が1つだけなので列の進みは遅い。
お客様の中に女満別行きの方はいらっしゃいますかぁ〜」と係員が叫ぶと2〜3人が手を挙げて、先に検査場に連れて行った。

行列はさらに伸びて、ジグザグロープからはみ出すほどにまでなっている。
こんどは、
名古屋行きの方はいらっしゃいますかぁ〜」と言う声に、並んでいる人たちが一斉に手を挙げた。
私ら函館行きの人たちは一旦脇に寄せられて名古屋行きの人たちを先に通す。

さっきまで離島の空港のようだったターミナルはラッシュアワーのような様相だ。
これも3便が飛び立つと、またさっきのような静かなターミナルとなるのだろう。

名古屋行きの乗客を全員通すと、今度は我々函館行きの番となる。
それとて今日は満席なので、これも後ろに延々と行列ができている。

保安検査場の入口が1つしかないので、各方面の便が重なるとこのような大渋滞となってしまうわけだ。
かといって建物の構造上と基本ローカル便しかない空港で入口を増やすことも難しかろう。
各便が重なるときは、いっそのこと昔の列車別改札のようにしてはいかがだろうか。

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 丘珠空港の搭乗待合室。

行列に並んでから搭乗待合室に出るまで約20分てところ。
早めに入っていればこんな目には合わないのだろうが、搭乗待合室は売店もなく飲料の自販機があるだけ。
早く来すぎて、ここでじっと座っているのはちょっと辛いだろうな。

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 1階の1口だけある搭乗口。

先に出る名古屋行きの搭乗が終わると今度は函館行きの改札となる。
今回は紙出力したチケットは持ってきておらず、スマホに表示したQRコードをかざすだけ。
預け荷物もないので、保安検査がある以外はバスにでも乗る感覚で飛行機に乗ることができる。

改札口を通ると階段を下って1階へ。
足の悪い方はエレベーターもあるのでご安心を。

外へ出ると、駐機場を歩いて飛行機へと向かう。
飛行機の手前にバリケードが立ててあって、そこには『翼下通過禁止』と書いてあった。
歩道線らしき白線内を歩くと翼の下に入ってしまうので、ターミナル出入口から飛行機までは斜めにまっすぐ向かうのだった。

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 駐機場を歩いて飛行機に向かう。

とてもノビノビしているというか、自由というか、こんなに開放的な飛行機搭乗は初めてだ。
機内への入口はタラップではなく、ドアの裏側が階段になっているエアステアというもの。

とにかく、何もかもが珍しい。
交通機関での函館行きならば私は鉄道一択だが、たまにはこんな旅もいいよね。

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 エアステアを昇って搭乗する。

機材はATR42-600、48人乗り。

外から見ると小さい飛行機だが、機内に入って座ってしまえばさほど狭い感じではない。
シートはJAL国内線標準の黒レザー張りのもの。

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 ATR42-600の機内。

指定の座席は前方の右窓側。
この右側の最前列はなんと4人向かい合わせのボックスシートとなっていた。
グループ用というわけではなく、非常口がある関係でこういう配置になってしまったようだ。

非常口席はいざというときは手伝いをする義務が生じるが、普段は足元が広く人気席となる。
だけどこの席だけはちょっとねえ・・
この席も後からすべてふさがったわけだが、見知らぬ4人向かい合わせで戸惑っている様子だった。

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 一番前右側の1・2番席はボックスシート仕様。

全員が機内に収まり、出発時刻が近づくとプロペラが勢いよく回転を始める。
この席は窓の外がすぐにプロペラとなっている。
うるさいかと思っていたが、機体や窓が防音性に優れているためか、さほどの騒音には感じない。
それでもプロペラ機特有のブ〜〜ンというのはジェット機とは違う。

遅れ出発時刻の10時35分に飛行機は動き出して滑走路へ。
駐機場から誘導路を北へ向かう。

滑走路に合流したところから向きを変えて離陸するのかと思ったが、飛行機はさらに北へ進む。
そっちは行き止まりじゃないのかと思うのだが、滑走路の北端へ来ると飛行機はくるっと方向変換して南へと向きを変えた。
小型機だからこそ成せる技だ。

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 丘珠空港を離陸。

ここからフワッと離陸するんだろうなと思っていたら、走り出した途端に鬼加速。
加速度はジェット機の倍はあるんじゃないだろうか。

まさにロケットスタート。
一気に加速して一気に離陸、あっという間に上昇する。
走り出してからものの1分で空港上空を離れた。

南へ向かって離陸したのでそのまま函館に向かうのかと思ったら、大きく北側に旋回して、石狩川や石狩平野、石狩湾や石狩の市街地を見ながら高度を稼ぐ。
天気が良く空気も澄んでいるので、遠く雄冬岬や積丹半島まで見ることができた。
大きく南へと進路を変え、手稲上空から函館へと向かう。

まるで札幌近郊の遊覧飛行のようだった。
函館へ飛行機で行っても僅か40分の飛行時間なのでつまらんと思い込んでいたが、こんな楽しい遊覧飛行が体験できるとは。

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 手稲区上空。中央はJR札幌運転所。

ここからは山ばかりになるが、手稲山や豊平峡ダム、中山峠などよく知っている場所を上から見下ろすのは気持ちが良い。
中山峠を越えると羊蹄山が姿を現す。

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 羊蹄山(右)と尻別岳(左)。

夢中で外を眺め撮影していると、CAが籠を持って現れる。
籠に入ったキャンディーを1つ貰う。

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 機内の飴のサービス。

僅か40分のフライトなのでドリンクサービスは無理なのだろうが、こういうちょっとしたサービスが嬉しい。
JALマーク入りのキャンディー2個の袋にはCAのメッセージが加えられていた。

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 洞爺湖と噴火湾。

洞爺湖を見て、室蘭の白鳥大橋の上空を通る。
上空からの景色は、今はネット上でいつでもどこでも見ることができるようになったが、こうして実際に自分の目で見るのとではスケールが違う。
初めて見る風景に、子供のように心が躍っていた。

飛行機は室蘭上空から噴火湾へ。しばらくは洋上を行く。
鹿部から駒ケ岳を見ながら内陸へ、そして一旦津軽海峡へ抜けてから北へ向きを変えて函館空港へ向かう。

津軽海峡の向こうには、本州側の下北半島の山々がはっきりと見えている。
北海道と本州はこんなに近かったんだと思える風景だった。

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 函館山と津軽海峡、その向こうに下北半島が見える。

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 函館駅とJR函館運輸所。

函館山や函館駅を見下ろしながら、今度は函館の遊覧飛行。
函館の街を見下ろしながら高度を下げ、函館空港に着陸する。

函館空港の駐機場に停止したのは11時15分。
僅か40分間の飛行だったが、まさに空の旅。
2時間も3時間も乗っていたかのような充実したフライトだった。

だけど2030年度末予定の北海道新幹線札幌開業となれば、この丘珠・函館線は廃止になる可能性が高い。

札幌〜新函館北斗間の所要時間は最速列車で1時間と見積もられていて、さらに函館市が検討している新函館北斗〜函館間のミニ新幹線化が実現すれば、札幌駅〜函館駅間が最速で1時間20分以内で結ばれることになるだろう。

新千歳・函館線は国際線等からの乗継ぎ客が見込めるが、ほぼ独立路線の丘珠線の廃止が免れないのは想像に難くはない。

最近は新幹線の並行在来線となる函館山線の存廃議論がまた浮上しているが、HAC丘珠・函館線の存廃は話題にはならないようだ。

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 函館空港も歩いて空港ターミナルへ。

ジェット機は一番前が出口となるが、この飛行機は一番後ろが出口なので、前方席に乗っていると降りるのが一番最後になる。
それでも着いてから飛行機の外に出るまで5分とかからなかった。

この函館空港はボーディングブリッジがある普通の空港。
ターミナルビルから100mほど離れた場所が駐機場となっていて、普通ならばこんな場所を歩くことはないんだろうけど、ここでもやはり歩いてターミナルビルへ向かう。

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 近くから見る飛行機。

非常口のような階段を上って長い通路を歩くとばバゲージ・クレーム(手荷物受取)に出た。
ちょうど同じ時刻に東京からのANA553便が到着したところで、ここは人だかりができて活気がある。

なんだかローカル空港から都会に戻ってきたような気分だった。
本当は逆なんだけどね。

ここは用はないのでスルーする場所だけど、ベルトコンベアの上にある到着表示がなんとパタパタ式のやつ。
今時これは珍しいと1枚撮影してから出口へ。

で、到着ロビーにある到着便案内が、これもパタパタ式のものだった。
パタパタ式とは正式名を反転フラップ式案内表示機というもので、表示が変わるときに2枚の板がパタパタと倒れるようにして表示が変わることから。

懐かしいねえ、80年代まではこれが最新だったものだけど、80年代終わりから90年代にかけてLEDの表示機が主流になってしまい、今ではほとんど見かけないものだ。

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 反転フラップ式案内表示機が現役の函館空港。

う〜ん、しばらく表示が変わるのを眺めていたいけど、今日は時間がないので泣く泣く後にする。

いずれこいつを眺めるために函館空港に来なければならないな。
これもいつ最新の液晶表示のものに置き換えられてもおかしくはないので、早めに来なくては。

東京からの便が着いたばかりの到着ロビーは観光客らしき人たちで賑やかだ。


 ◆ 函館空港 → 函館駅

到着ロビーから外に出たところに函館駅行のシャトルバスが停まっていて人だかりがしている。
奥のほうには路線バスが停まっていて、こちらは五稜郭や亀田支所を回って函館空港へ戻る循環バス。

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 函館バス7B 五稜郭、亀田支所前経由函館空港行。

函館空港発着の路線バスは系統が様々だが、ほとんどの系統は市電湯の川電停最寄りの湯倉神社前を通る。
発車間際なので、とりあえず乗ってしまう。

バスは空港を出ると街とは反対方向に進み、それからも住宅街をあっちへ曲がってこっちへ曲がってなので、どこへ連れていかれるのか不安になりそうな路線だ。
これは空港アクセスのほかに瀬戸川町や上湯川町の住民の足も兼ねているため。
途中から地元客が1人2人と乗ってくる。

このバスは丸井や五稜郭タワーのある五稜郭まで行くが、私は湯倉神社前で降りる。
ここで函館バスから市電に乗り継ぐと、乗継割引で50円引きとなるのだが、適用となるのは現金とイカすニモカ利用の場合だけで、それ以外のICカード乗車券は対象外となっている。

私が使用したKitacaは当然対象外なので50円多く支払ったことになるが、割引があってもなくても湯の川から市電に乗り換えていただろう。
ただ単に市電に乗りたいだけなので。
歩いて湯の川電停へ。

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 2・5系統の終点湯の川電停。

函館市電のダイヤも寂しくなったもので、2系統と5系統の運転間隔はそれぞれ16分間隔となっている。
昔はそれぞれ10分間隔で、両系統が走る十字街〜湯の川間は5分間隔だったものだ。
当時は『待たずに乗れる路面電車』と宣伝していたのを思い出す。

今は両系統合わせて8分間隔、1時間当たり7〜8本と市電の面目は保っているが、西部の末端区間では時刻表を見てから家を出る乗り物になってしまった。

コロナの頃は市電も大丈夫なんだろうかと思うほど、どの電車もガラガラで走っていたものだが、また観光客で混雑するようになったのは結構なことだ。
だけど昔のような待たずに乗れるようなダイヤに戻ることはないだろう。

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 駒場車庫前停車中。

久しぶりに乗った函館市電は、車内放送が面白いことになっていた。

ご案内は○○の○○が担当します」の自己紹介から始まって「次は○○(停留所名)」となる放送。
停留所ごとに違う人のアナウンスとなる。

これは調べたら、
函館の路面電車開業110周年記念 車内放送してみませんかぁ?
企画として一般公募から選ばれた人たちのアナウンスなのだとか。
放送期間は2023年の9月いっぱい。

停留所ごとに異なる人の自己紹介と次停案内はとてもユニーク。
この案内放送はYouTubeでも公開されているので、興味のある方は見られてはどうでしょうか。

湯の川発車時は空席が多かった車内は、途中停留場で地元の人らしい乗客が増えてくる。
五稜郭公園前では観光客が大勢乗ってきて立ち客も多くなる。

五稜郭は函館市内で一番の商業地区であり、五稜郭公園やタワーなどの名所最寄りでもある。
その五稜郭と函館駅、函館観光の中心であるベイエリアや西部地区を結ぶ市電の利用客は多い。

函館観光は市電があってのものだ。
市電がなくなれば、観光の利便性も街の魅力も半減してしまうだろう。

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 函館駅前電停の賑わい。

湯の川から33分で函館駅前着。
ここで降りる人も多いが、乗る人も多い。
駅前のボーニ森屋が閉店してからすっかり寂しくなった函館駅前だが、電車の発着時は賑わう一瞬が訪れる。


 ◆ 青函連絡船記念館摩周丸

ニセコ号の時刻まで1時間半ほどあるので、久しぶりに摩周丸の見学をすることにした。
かつて青函連絡船として就航していた摩周丸は、函館市青函連絡船記念館摩周丸として保存・展示されている。

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 旧函館第2岸壁に保存されている摩周丸。

この摩周丸は過去に2回来たことがあるけれど、かつての船室の座席や船内の設備はことごとく取り払われて、現役当時そのままに残されたものはブリッジと甲板しかなかったのが残念だった。
それでも当時の桟敷席やグリーン席が復活したと聞いていたので、ちょっと楽しみでもある。

受付で入場料500円を払って中へ。

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 復活した青函連絡船の桟敷席。

階段を上って一番上の階にありましたよ、復活した桟敷席。
一応それっぽくはなっているが、後ごしらえ感が半端なく、所詮レプリカだ。
それにこの場所は中央の煙突周りの機械室だったはずで、客席ではなかった場所だ。

妙に広くてがらんとした空間の一角に設けられても、やっぱり何か違うな。
別な場所に普通席やグリーン椅子席が展示されたコーナーもあったけど、やっぱり違う。

ブリッジ(操舵室)は往時のまま保存されているが、一般の人が立ち入る場所ではなかったので、当時を懐かしむようなものではない。

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 現役当時のまま保存されているブリッジ。

この摩周丸を見学するたびに思うけど、保存するのならばあまり手を加えるべきではない。
現役当時のまま手を加えずに保存していたら、後世に伝える本当に貴重な産業遺産となっていたことだろう。

外側は青函連絡船時代そのままだが、これじゃ巨大な張りぼてだ。

一方では、張りぼてでも保存されたのは関係者の大きな努力によるものだということも忘れてはいけないだろう。
これだけ大きなものを保存するだけでも大変なお金がかかっているだろうし。

こちら摩周丸も、保存と公開が決まった時に、船内でいろいろやろうとしたのだろう。
だけど結局上手くいかずに、空間だけが残されてしまった印象だった。

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 当時のまま保存されているグリーン自由席。

そんな残念な中身の摩周丸だが、唯一現役当時で保存されている場所がある。
それがグリーン自由席
ここはなぜか公開されていないので、甲板の窓からしか見ることはできない。

壁の向こう側にはグリーン桟敷席もあるはずなので、もし青函連絡船の船室内を再現したロケに使用できる場所があるとすれば、このグリーン自由席くらいなものか。

コロナも終わって観光客が増えている函館にあって、摩周丸の船内はガラガラだった。
手前にクルーズ船ターミナルの建物ができてから、目立たない場所になってしまったこともあるだろうが、この展示物では1回来た人が再度来ようなんて思わないだろうな。

もうちょっと何とかならないものかと思うけど、それにはお金も人手もかかるし、このまま朽ちてゆくだけなのだろうか。

出るときに受付の売店で『青函連絡船の人びと』という白黒の写真集を買った。
1430円と少々高いが、連絡船の風景だけでなく、それにまつわる人々が写っているのが気に入った。

過去の写真とか画像って、人が写っているとその時代の社会や風俗が浮かび上がってきて臨場感が俄然盛り上がる。

人が全くいない、カタログみたいな写真集なんてつまらんよ。


posted by pupupukaya at 23/09/30 | Comment(0) | 道南の旅行記

北斗星に泊まりに行く2

おはようございます。
5月6日金曜日、飛び石ゴールデンウィーク中の平日です。

時刻は朝6時30分過ぎ。窓の外はすっかり明るくなっている。
静かなので駅に停車中のようだ。

〜1往復時代の上野発北斗星ならば函館駅停車中。

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 寝台車で迎える朝。

機関車付け替え作業のため8分停車。ホーム先端はその作業を見ようと人だかりができているだろう。
食堂車はそろそろモーニングタイムの営業が始まったころ。

・・・てなわけはなく、ここは動かない北斗星寝台車。


 ◆ 意外と歴史のある茂辺地を散歩

表にあるトイレに行くついでに天気がいいので散歩してくることに。
昨日の夕方は逆光になるので撮らなかったが、朝は順光となるので裏側を撮影する。
こちら側には、車両を宿泊施設とするために必要な配管やケーブルがむき出しになっている。
いわば北斗星を演出するための舞台裏。

乗降扉から出入りするウッドデッキが設けられている。
今回は出入りできないようになっていたが、こうして見ると仮乗降場のホームのようだ。
駅名標を立てたりして、ホームのように飾り付けしてみたら面白いだろうと思う。

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 ウッドデッキのホームと配管がむき出しになった北斗星の裏側。

矢不来天満宮でお参りしようと、北斗星車両裏手から茂辺地川の土手を歩いて行く。
橋を渡ると福山街道と呼ばれた国道228号線の旧道。
いかにも旧道らしい砂利道だった。

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 裏手を登る砂利道は福山街道と呼ばれた旧国道228号。

坂道を登りながら、茂りかけた林の隙間からブルーの車体が見える。
2両しかない車両も、ここから見ると長い編成の一部のようだった。

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 福山街道から見た北斗星。交換待ちで停車中のようにも見える。

矢不来天満宮は、天満宮の名の通り天神様(菅原道真公)をお祭りする神社。
長禄年間(1457〜1460年)に、住んでいたアイヌの人々が海岸に流れ着いた天神像を拾い上げて祭ったのが始まりとされる。

この場所はさらに前、1443年に津軽十三湊城主・安東氏が館を造り、アイヌと和人の交易を行った場所。
道南12館と呼ばれる館のひとつで、あたり一帯は茂別館跡として国指定史跡となっている。
全蝦夷地を支配する松前藩が成立したのが1604年だが、その100年以上前からこの辺りは和人豪族の支配下に置かれていた。

この津軽海峡に面した地方は日本人の支配地となって半世紀以上。
良くも悪くも紛れもなく、中世からの日本歴史の一部分でもある。

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 八重桜が満開だった矢不来天満宮。

天満宮の参道入口向かいに階段があって、下ると北斗星の裏手にある小橋に出た。
今度は茂辺地の町を通って国道を渡って浜へ行ってみる。

波はほとんど無く穏やかな海面。
函館山のシルエットが見えているが、春らしい靄(もや)がかった空。
今日は気温が上がりそうだなと思える空でもあった。

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 穏やかな函館湾と、ぽっかり浮かんだような函館山。

宿に戻りかけたら、7時26分発木古内行きが来る頃なので、撮影しようと茂辺地駅に行く。
入って来た列車は朱色の1両。

同じ時間帯の列車は、90年代に乗ったときは、3両編成だった記憶がある。
木古内の高校も閉校となって久しい。
しかし、通学生がいないのでがら空きだと思っていた車内は意外と混んでいた。

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 朱色の木古内行き120Dが到着。

木古内行き120Dからは、ジャージ姿の中学生らしい数人がぞろぞろと出てきた。
代わって、どこへ通学しているのかランドセルを背負った小学生が2人乗り込む。
朝イチの上り列車は、意外な通学需要があるのだった。

次の列車は7時40分発函館行き。
こちらは通勤列車。発車時刻が近づくと1人2人とホームに集まって来る。
国道を走るバスもあるが、あちらは本数も少なく時間もかかるため、この辺りの人にとっては道南いさりび鉄道が一番便利な交通機関なのだろう。

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 ながまれ号の函館行き123D。こちらは朝のラッシュ。

上下2本の列車を見送ると、次は9時40分発まで空白となる。
私は次の列車で出発することにしている。また宿の北斗星に戻る。

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 ウッドデッキから広場を見る。

北斗星広場にはトレーラーハウスが2台あって、こちらに宿泊するプランもある。

楽天トラベルにある説明書きには “お部屋から北斗星が望めます” とあるが、大きなガラス窓は広場からも室内が丸見え。
懐かしい寝台車に泊まれるからこその宿なので、こちらの価値は微妙なところ。

昨夜は2室とも空室のままだった。
ただ、完全個室のためプライバシーの確保と、バス・トイレ付なので北斗星B寝台よりも居住性は高い。

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 2ルームあるトレーラーハウス。単に居住性ではこちらの方が良さそう。

出入りはまた貫通扉から。
昨日スタッフがいた時間は開け放たれていたが、いない時間は施錠され、渡されたキーで開け閉めすることになる。

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 車内へは貫通扉のカギを開け閉めして出入りする。

昨夜はお酒を飲んでそのまま寝てしまったが、シャワールームがあるので、せっかくだから浴びてくることにした。
2室あったシャワールームは今は1室しか使われていない。

シャワー室は無料で使える。
予約制ではなく、客同士で譲り合って使う恰好。ドア横に会議室にあるようなスライド式表示板があって、シャワーを使用するときは『空室』から『使用中』にしておく。

現役時代は食堂車でシャワーカードの購入と時間の予約をして、1回の利用時間は30分、お湯は6分間使えるというものだった。
デジタル表示のタイマーがあって、お湯を出している間だけタイマーの時間が減って行く仕組み。

時間の残り具合を気にして、シャワーのお湯を出したり止めたりしながら体を洗ったのも懐かしい思い出。

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 現役時代そのままのシャワールーム。

北斗星スクエアのシャワーはそんな時間制限はなく使えるのでご心配なく。

ただ、使用中はシャワーの音が隣のロビーまで聞こえるのが難点。
基本客車は振動や騒音が絶え間ない走行中を想定して作られているため、居住区ごとの防音など全く考慮されていないからだ。
だから現役時代は気にもならなかった音が、停止中の静寂の中では思いもよらぬ音となって車内に響くことになる。

洗面台が全員で共用のが1台だけといい、シャワーといい、あまり女性におすすめできる宿ではないようだ。
まあでも、当時のまま保存された懐かしの寝台車を疑似体験するものと割り切れば苦にならないかも。
こういった不便さも、寝台車当時と一緒なのだっだ。


 ◆ 北斗星スクエアを後に

北斗星スクエアにある7室は満室だった様子。
うち2組は車で来ていて。私を含め5組は列車利用だった。
男ばかりかと思っていたが、女性客も1組いた。

他の列車組は6時台と7時台の列車で発っていったので、残るは私と車組だけとなる。
また個室に居を移して『ソロ』当時を思い出したり、車内をあれこれ撮影しているうちにあっという間に時間が経って行った。

9時20分過ぎ、そろそろ出発しなければならない。
一応チェックアウトは10時までだけど、私は9時40分発の列車で茂辺地を発ちます。
無人のフロント小屋にあるロッカーにキーを納めればチェックアウト完了。

北斗星スクエアを聞いたとき、これは面白い宿泊施設ができたものだと思った。
実際泊まってみたら、期待以上に面白かった。
懐かしい寝台車にまた1晩乗ってみたい人でも、過去のものになった寝台車にいっぺん乗ってみたいという人もこれなら満足できるだろう。

寝台車当時の不便さもそのままとなっているが、そこはアバタもエクボ
他人同士で乗り合わせて、寝台以外は全て共用して1晩過ごしていた寝台車を体験できる貴重な宿ということで・・・

また寝台車に乗りたくなったらここに泊ろう。
今度は車で行くかな。
どこかで北斗星時代の走行音を仕入れて、ヘッドホンで聞きながら過ごせばもっとリアルに過ごせるかも。

ただ懸念もあって、基本的に野ざらしなのと、津軽海峡からの潮風と夏冬の寒暖差で近い将来に車体がまた傷んでくるに違いない。
車内の内装にしても長い時間が経てば老朽化したり破損したりするし、そうなっても交換する部品もない。
あれこれ修復したり交換されたりするうちに、次第に往時の北斗星からは似て非なるものになってゆくのだろうか。
そんなことを考えながら茂辺地駅へ。


 ◆ 茂辺地 9:40【122D】10:08 木古内

茂辺地駅に近づくと、中をほうきで掃いている人の姿があった。
こんな無人駅でも、駅の管理を委託されている人がいて、掃除に来ているわけだ。

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 再び茂辺地駅。

駅舎の中に入ると、待合室と仕切るドアが開いていて、カウンターに『キップ売場』と張り紙がしてある。
思わず中の人に、
切符売ってるんですか?」と聞くと
ええ売ってますよ、ここ切符売り場ですから」と返って来た。

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 きっぷうりばが営業中だった茂辺地駅の駅舎内。

今までに車でこの駅に来たことはあったが、こんな窓口があったとは知らなかった。
これから乗る道南いさりび鉄道の乗車券は『いさりび1日きっぷ』をスマホ決済で買ってあるのだが、せっかくなので記念に1枚買い求める。
上磯まで310円だった。

道南いさりび鉄道の乗車券といえば券売機でしか売っていないと思っていたので珍しいなこれは。

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 記念に買った茂辺地から上磯行きの乗車券。

函館から来た木古内行きはまたも1両編成。また『ながまれ号』だった。
この鉄道の看板車両でもあるので当たれば嬉しいが、乗ってしまえば他の車両と変わるものではない。
これも午前中の木古内行きとなればがら空きと読んでいたが、意外と多くの乗客の姿が見えた。

列車のドアが開くと、これも以外にも下車客が何人かあった。
乗車したのは私1人。今降りた客が座っていたらしいボックスが1つ空いていたのでそこに座る。

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 ながまれ号の木古内行き122D。

向かいのホームには茂辺地で交換する函館行きの朱色車両が入って来た。
あちらは地元客らしい3人を乗せて発車する。
こちらとは対照的に、向こうはがら空きだった。

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 結構乗客がある木古内行き車内。

次の渡島当別駅はトラピスト修道院の最寄り駅なので、それらしい観光客が何人か下車する。
車内の乗客もかばんを持った旅行者っぽい人が多い。

木古内からの折り返しもこんな感じなのかな。
一方、オタっぽい人は私だけ(?)のようだった。

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 多数のポイントが主要駅であるかのような木古内駅。

木古内駅到着。
今年の1月に来たときは、4か月後にまた来るとは思わなかった。

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 木古内駅で1時間8分の折り返し休憩。

それもこれも、700円の『いさりび1日きっぷ』のおかげだろう。
五稜郭〜木古内間の片道運賃980円よりこっちの方が安いのだから。

しかもスマホがあればどこでも購入できる手軽さ。
これなら列車に乗ってちょっと木古内に行ってくるわって気になるというものだ。

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 DohNa!!で買ってスマホで表示する『いさりび1日きっぷ』。

木古内に着いた122Dは木古内で1時間8分停車したあと127Dとして折り返す。
その間はどこか木古内見物をと言うところだが、今年に入ってからプライベートでは2回目、仕事でも2回来ているので今さら行きたいところも無かった。

駅前通りをまっすぐ歩いて行けば浜に出る。
晴れていればここから津軽半島の山々が見えるはずなのだが、もやがかった空ではその姿は見えなかった。
また歩いて駅に戻る。

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 新幹線木古内駅は道南いさりび鉄道の駅舎の陰になる。

駅前に戻ると、新幹線のホームから案内放送が聞こえてくる。
もしかしたら新幹線が見られるかも。
橋上駅の通路を上り下りして新幹線の木古内駅に向かった。

ちょうど10時36分発新函館北斗行き『はやぶさ203号』の表示があった。
窓口で入場券を買うと、妙に細長い『北の大地の入場券』を出してきた。

ホームに上がると、先頭の方には小さい子供を連れた家族連れらしい1組の姿が。
乗客ではなく、入場券での見物人のようだ。
新函館北斗駅でもこうした見物人をよく見かけるが、やはり新幹線は子供にとっては憧れだろう。

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 木古内駅にはやぶさ203号が到着。

はやぶさ号は滑るように入線。
これに乗って新函館北斗まで戻りたいが、6日間パスは新幹線は対象外。乗車券としての効力も無いのは残念。

窓から車内を見ると、車内は案の定ガラガラ。
ドアが開いて下車したのはスーツケースを引いた女性客が1人だけだった。

列車が発車すると、見物の家族連れも引き上げてホームは誰もいなくなる。
せっかく入場券を買って入ったのだから、反対側のホームにも行ってみた。
ここから見る木古内駅停車中の眺めは新幹線ホームに立ち入れる客の特権だ。

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 新幹線12番線ホームから道南いさりび鉄道を見下ろす。

またエスカレーターで登って通路を歩いて階段を下ってと、町から新幹線駅への行き来が面倒だ。
在来線の駅が地平で、新幹線が高架なのでこうなってしまった。

新札幌駅のようにホームが3階でコンコースが2階とするか、新函館北斗駅のように新幹線も地上とするとこんな面倒は無くなるのだが、3階建て高架とすると建設費が高くなるし、まさか町中で地上を走行と言うわけにもいかず、どうしてもこうなってしまう。
地上の在来線に高架の新幹線駅が併設される駅の宿命みたいなものだ。

倶知安駅みたいに、在来線は新幹線の開業を待たずして廃止にし、駅施設は早々に撤去して駅前広場としたいという意見が出るのも、まあ無理も無かろう。

今度は駅前ロータリーを隔てた向かいにある道の駅『みそぎの郷きこない』に行ってみる。
駅の閑散ぶりとは対照的に、こちらは多くの客で賑わっていた。

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 駅とは対照的に賑わう道の駅 みそぎの郷きこない。

道の駅といってもピンからキリまであるが、ここ木古内はオープン時から人気スポットとなっている。
GWだからか、外には食べ物の露店もでていて、まるでお祭りのようだった。

本来ならば国道やバイパス沿いに出来ることが多い道の駅だが、木古内のは駅前に持ってきたというのが道南いさりび鉄道にとって良かったことだろう。

駅前に何かしらの観光施設があれば、列車で行ってみようという気になるものだ。
さらに片道より安い『いさりび1日きっぷ』の存在。
道の駅側からすれば鉄道利用の来客数など知れたものだが、鉄道側から見れば大きな数字だ。
この数字こそが実績だからね。
鉄道駅の近くに集客施設を作ることは、鉄道と駅を育てることにもなる。

ただもう一歩進めて、木古内駅に併設という恰好だったらさらにベストだった。
稚内駅みたいに。

木古内駅から道の駅に行く人は多いが、道の駅に車で来た人が木古内駅に行くことはまずない。
駅前ロータリーの反対側じゃ、駅の存在すら気づかない人も多いだろうし。
せっかく『ながまれ号』が停車中なのに、スマホすら向ける人がいないのは残念だ。

もし駅に併設だったら案内表示に『新幹線』の文字を見て、ちょっと新幹線を見てこようかという人が出てきて入場券の売上げも増えたかも知れない。

何より車からでも鉄道が身近に見られれば、町の人のマイレール意識もだいぶ違ってくるだろう。

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 この時期の名物は、木古内札苅産の行者にんにく。

土産物屋で行者にんにくを見つけたので2束買って駅に戻る。


 ◆ 木古内 11:16【125D】函館 12:14

列車のドアは開いていて、乗車できるようになっていた。
行きの列車が混んでいたので、多くの人たちはこの列車で折り返すものと思っていたが、予想に反してこちらはガラガラだった。

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 ガラガラだった折り返し函館行き127Dの車内。

今度は海側の席。
車内は暑いくらい。窓を開けて津軽海峡の景色を楽しむ。

こんな窓からの風を顔に受けて列車に乗るなんてのも、確実に過去のものとなるのだろうな。
そう、夜行列車や寝台車がそうなったように。

寝台車は動かなくてもそれらしい気分にはなるが、こればっかりは走っていなければどうしようもないね。
このキハ40形はデクモことH100形の導入で次々と廃車となっているらしいが、今のところキハ40形の保存の話は聞かない。

自治体や公的機関は鉄道遺産とも言うべき国鉄型車両の保存に興味は無いようだ。
車両だけではない。
鉄道廃止には反対するくせに、いざ廃止となると駅跡など保存する気もなく、負の遺産とばかりにモニュメントだけ残して一掃してしまうところが多いのは残念なところ。

北斗星車両だけでなく、このキハ40形も最後の最後になって、どこかの民間団体による車両購入・保存が決まるのだろう。

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 函館山とベタ凪の函館湾。

上磯からは地元の利用客が停車駅ごとに数人ずつ乗ってくるようになった。
ボックス席の相席を嫌ってロングシートに座る人やデッキに立つ人が多いので乗車人数以上に混んだ車内に見える。
地方都市の昼の列車としてはまずまずの乗車率となって五稜郭へ。

五稜郭では半分くらいの人が下車する。
余計なことだけど、ここで降りる人は一体どこへ行くんだろうと思う。

駅前はゴーストタウンみたいなことになっているが、駅裏に市立病院やショッピングセンターがあるのでそこへ行くのか、バスに乗り換えて五稜郭(市電の五稜郭公園前の方)へ行くのか。
ここから先へ行くとJR区間になるので運賃が跳ね上がることもあるのかも知れない。

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 五稜郭に到着。隣は『はこだてライナー』

隣は新函館北斗行き『はこだてライナー』が到着。
GWらしく、車内の座席はそこそこふさがるほどの乗車率だった。やはり観光客風の人が多い。
五稜郭から乗ってくる人もいて、ここからはJRの近郊列車としての役割も加わる。


 ◆ 函館13:31【北斗13号】札幌 17:30

今日は平日なので『はまなす編成』の『北斗91号』の運転は無し。
次の『北斗13号』で札幌に帰る。

いい天気だし、せっかくプライベートで函館に来たんだからもうちょっとどこかへ行きたいところだが、えきねっとで見たら、この次の『北斗15号』だと指定席は混んでいるようだ。
函館は公私ともにまた来るだろうから今回は帰ることにする。

6日間パス所持者は駅の四季彩館で買い物すると10%引きになる特典があるので、四季彩館であれこれ物色する。
他人に渡すような土産物は無いので、自分用にということになる。
こういう時になると、大して欲しいものも無くなるもので、結局うちに帰って食べる用の塩辛とトラピストバターにした。

あと、車内で飲む用の大沼ビールと青函トンネルで熟成したという『青函トンネル熟成 年輪』というワインを買った。
駅弁は、みかどの売店で鰊みがき弁当。
これらすべて6日間パスの特典で10%引き
特典は使えるうちにどんどん使うべし。

改札口上の発車案内には、北斗13号は12時50分から乗車できますというような表示が流れていた。
発車40分も前から乗車できるとはサービスがいいと言うべきか、のんびりしていると言うべきか・・・
最近は特急といえども、終着駅では折り返しの清掃もままならないほど短い時間で折り返す列車が多くなったが、ここ函館駅はなかなか感心する。

腐っても鯛というか、北海道の玄関口の地位は新函館北斗駅に譲ったとはいえ、まだまだ旧玄関口の貫禄は衰えない。
せっかく旅に出るのに、発車ぎりぎりまで入線しないし、乗ってから慌ただしくわからないうちに発車していたなんて、ちょっと残念だからね。

だからといって発車40分前にやって来る人もそういないだろう。

もうほかに行くところもないので、車内にいようと乗ってみたが、乗客は誰もいなかった。
席に荷物だけおいて、先頭車両の撮影に行く。
普段は5両編成だが、今日は3両増結して堂々の8両編成。久々に見る特急らしい編成となった。

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 堂々8両編成の261系『北斗13号』。

周りに誰もいないので、こういう時に駅弁を食べてしまおう。

発車して走行風景を眺めながら・・・と思うでしょうが、北斗は函館を発車すると五稜郭、新函館北斗と停車駅が続いてそのたびに通路や周りの席がざわつくので、あずましくないことこの上ない。
だから今のうちに食べてしまおうというわけだ。
それに人がいるとお酒も飲みにくい。

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 鰊みがき弁当と大沼ビール。

鰊みがき弁当は柔らかく炊いた身欠きにしんと数の子が白飯に乗ったシンプルな弁当。
函館駅弁といえばやはりこれが一番。
最近は札幌駅の四季彩館にも置くようになったけど、ちょっと行きすぎのような気もする。

ビールは大沼ビールの『インディア・ペール・エール』。
ホップが効いた苦みとアルコールが高めのビールはなぜか味の濃いにしんと妙に合う。

流れる車窓こそないけれど、おかげでゆっくりと食事することができた。
発車20分前くらいになると、次々と乗客が現われた。

函館を発車するとすぐに五稜郭。やはり駅弁はさっき食べておいて正解だった。
その次の新函館北斗では、新幹線からの乗り継ぎ客が乗ってきて、空いていた列もほとんどふさがったようだ。
発車してしばらくのトンネルを抜けると、左側に水を湛えた小沼、その後方に駒ヶ岳という美しい風景が広がる。

鉄路で北海道へ来たら誰でも最初に見る車窓風景。
青函連絡船時代も、海峡線時代も、今の新幹線時代でもそれは同じ。
だけど9年後に予定されている北海道新幹線札幌延伸開業後は、この車窓風景も過去のものとなる。
現在建設中の新幹線は大沼公園を通らず、新函館北斗からはトンネル区間をひたすら北上する。

北海道新幹線の並行在来線とされるこの区間は、新幹線開業と同時にJR北海道から切り離され、第三セクターによる存続か廃線してバス転換かの選択することになっている。
今のところ廃止とも存続とも結論は出ていないが、ここを通る旅客列車が残る可能性は低い。

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 進行左側に見える小沼と駒ヶ岳。

左側席で眺めがいいのは、ここ大沼駅の手前と、あとは有珠山や樽前山が見える区間くらい。
だんだん退屈してくる。
そんなころに車内販売が来ればお酒でも買うところだが、車内販売も過去のものとなった。

そこでワインを出す。
青函トンネル内にある海面下283mの『青函トンネル蔵置所』で1年間熟成させたワインの味はいかに。

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 青函トンネル熟成 年輪(赤)。

私はワインの味はわからないが、熟成した大人の味ということはわかる。
甘みが抜けた濃い味わいにチェダーチーズなどが合いそう。
退屈な午後の特急車内の呑み鉄にはぜひおすすめです。

あとはウトウト眠ったり起きて車窓を眺めたりしていると、まもなく終点札幌に到着の頃だった。
長かった道内鉄道旅行も終わりが近い。

5月6日の旅費
品目場所金額(円)備考
いさりび1日パススマホ700クレジット決済
道南いさりび鉄道乗車券茂辺地駅310 
行者にんにく2束木古内560 
お酒四季彩館函館店995パス特典10%引
お土産1,623パス特典10%引
鰊みがき弁当函館駅900パス特典10%引
5/6 合計5,088 


 ◆ 最後に

以上、北から南まで道内を鉄道で駆け巡った6日間パスの旅行記でした。
この6日間で体験したこと、思ったことをつらつらと書かせていただきました。

どこへ行っても混んでいるゴールデンウィークの旅行なんて、と思っていましたが、実際出かけてみると思いがけない再発見があるものだと思えた旅行でした。

ときに批判の文章ともなりましたが、悪口というより北海道が好きな故に、あるいは同じ北海道人として意見すべきと思ってのことで綴らせていただきました。
悪しからずご容赦願います。

最後に今回の旅行の決算を上げておきます。
北海道旅行を計画されている方がいましたら、費用の参考としていただければ幸いです。

HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス旅行の総費用
費目金額(円)備考
HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス12,000 
宿泊費3泊23,350 
交通費1,740 
食費11,046クーポンと特典割引後
土産物1,993クーポンと特典割引後
その他経費510 
 合 計50,639 

〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。

posted by pupupukaya at 22/05/21 | Comment(0) | 道南の旅行記

北斗星に泊まりに行く1

北斗市茂辺地に元『北斗星』の客車2両が保存されていて見に行ったたこともあるが、まさかそこに泊まれるようになったと知って驚いた。
潮風にさらされてボロボロになっていた車両を再塗装し、空調や給排水設備を取り付けて宿泊可能としたもの。

調べると、寝台単位ではなく4人用1ボックスを個室に見立てて、客室単位での予約受付となるようだ。
現役時代の寝台車のように他人と相部屋ということはない。
1室に寝台は4つあるが、1室の定員は2人として予約を受けつけていた。

予約と決済は楽天トラベルから行う。
2人部屋のシングルユースで1泊7,500円としているが、当面は特別価格で5,500円になっていた。

北斗星に乗りに・・いや泊まりに行くんだから列車で行きたいところ。
GWは『HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス』を使って道内鉄道旅行を決め込んでいた。
それで前半は前回記事の深名線バスと宗谷本線を乗り継いで稚内へ。

後半は道東の方にしようかと思っていたが、ホテルがGWの強気価格なのと割引プランも見つからないのでどうしたものかと思っていたところに、この北斗星スクエアを知って急遽函館・北斗行きとしたのだった。


 ◆ 札幌 7:43【北斗84号】函館 12:23

5月5日木曜日こどもの日。
今日は早起きして7時に家を出て、『北斗84号』で函館まで向かう。
北斗星以外に用はないのでもっと遅い列車でもいいのだが、この列車が『はまなす編成』での運転となるので、あえてこの列車を選択した。

コンコースで駅弁とビールを買ってホームへ行くと、はまなす編成こと『北斗84号』は入線していた。
指定席の車両は、指定券券売機で指定券を取ったときガラガラだったが、運転日の今日もガラガラのようだ。

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 カラフルな座席が並ぶ車内。

発車時刻になるころにはそこそこ席が埋まったが、それでも半分以上の列が空いている。
すいているのはこの列車に限らず臨時列車の宿命だ。

時刻表では『北斗』の一員として肩を並べているが、所要時間はなんと4時間40分
函館到着時は、この1時間後に発車する『北斗6号』に11分差まで追い上げられるという鈍足ぶり。
誰だって休日に早起きしたくないしね。
昼頃に函館に着きたけりゃ、普通は北斗6号を選ぶだろう。

この列車は、どこをどうしたらそんなに時間がかかるのかは知らないが、こちらは早さよりも車両とか移動そのものを楽しみましょうというコンセプトと思えばいい。

こちらも、すいているおかげで朝から遠慮なく一杯やらせてもらうことができるってもの。

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 北斗星に乗る前祝に、幕の内弁当いしかりとビールで呑み鉄。

わざわざ臨時列車のはまなす編成を選ぶくらいだから、全員が函館まで乗って行くのかと思っていたら、登別や東室蘭までの人が多く、東室蘭を発車したら半分くらいにまで減ってしまった。
各車両、片手で数えられるほどの乗車率じゃ、せっかくのはまなす編成が泣くような状況。

それに比べて自由席の増1号車は盛況だった。
こちらは『はまなすラウンジ』となっていて、本来はパブリックスペースとしての活用を想定しているんだろうけど、営業運転時は自由席扱いとなっている。

『ノロッコ』号のようなレイアウトなので楽しそうだが、座席は固く、窓向きの席も横に他人がいるというのが結構あずましくないもので、ここで4時間以上過ごすのはちょっと・・・

ふらっと立ち寄って一時的に過ごす分には申し分ないんだけど、今日みたいにガラガラだと普通の客室内のほうが落ち着いて過ごせる。

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 はまなすラウンジの増1号車。通常は自由席扱いとなっている。

稀府で運転停車。
この先単線区間が所どころに存在するので、このような交換待ちが増えそうだ。
このあとも伊達紋別で『北斗3号』の待ち合わせ。

極めつけは森を発車した次の姫川信号場で『北斗9号』待ちの12分停車があった。
そんなに停車するんなら砂原回りにすればいいんじゃないかと思ったが、それだと大沼公園駅を通らないので、観光列車としては具合が悪いのだろう。
実際、大沼公園では自由席に何人か乗客があった。

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 函館駅に到着したはまなす編成の北斗84号。

がら空きのはまなす編成乗車とはいえ、4時間40分は結構な乗り応えだった。ようやく函館に到着。
この11分後には札幌を1時間後に発車した『北斗6号』が到着する。

のんびり走って来たはまなす編成も、函館に到着すると忙しい。
僅か22分の折り返し時間で、今度は12時45分発『北斗91号』として札幌に戻る。
到着して数少ない乗客が下車するとすぐに車内清掃員が乗り込んで行った。


 ◆ 函館市電で五稜郭公園へ

函館に着いたら摩周丸を見学するか、市電に乗って五稜郭公園へ行こうか迷っていたが、五稜郭公園に行くことにした。
桜でも観てこようというのと、やっぱり市電に乗りたかったから。
五稜郭公園は結構観光客が来て賑わっていた。
その代わり、桜はもう終わりかけていたのは残念。

函館はやっぱり観光客がいないと寂しいね。
あの悩ましかったインバウンドたちがいないのは、落ち着いて過ごせるのでありがたい。

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 観光客で盛況の函館市電。電停には案内員が立っていた。

函館駅に戻る途中、五稜郭公園近くのハセガワストアに寄ってやきとりのパックを買っておいた。
今夜の酒のつまみ用である。
ハセストは注文を受けてから焼いて作るやきとり弁当が有名だが、すぐに食べない場合は既に焼いたパック入りのものを買って、あとでチンすれば焼き立てと同じようにいただける。

函館駅で駅弁を買おうかと思ったが、駅弁は明日の楽しみにして、函館駅近くのマックスバリュで寿司とお酒を買った。


 ◆ 函館 15:15【128D】茂辺地 15:48

函館駅は一番駅舎側の1・2番ホームが実質道南いさりび鉄道用のホームとなっている。
2番ホームに旧塗色に復元された車両が1両停車していたので乗ろうとしたら『回送』の表示があった。
しばらくして1番ホームに急行型の旧塗色となった1両が入って来た。こちらが木古内行きとなる。

急行型と言っても単行なので、深名線や札沼線北部で走っていたキハ53形そっくりだった。

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 旧国鉄塗色車両が並んだ函館駅1・2番ホーム。

ホームにいた5〜6人が車内に入る。
懐かしいブルーのボックスシート。

かつては道内いたるところで使われて、普通列車で旅していると食傷気味にもなった車両だが、JR北海道のほうは急速にデクモと呼ばれるH100形への置き換えが進んでいる。あと数年もすればここ道南いさりび鉄道でしか見られなくなってしまうのだろうか。

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 青いボックスシートが並ぶキハ40形車内。

乗った時はボックス席も選び放題だったが、次々と乗ってきてデッキに立ち客もでるようになる。
半分は地元客っぽいが、あとの半分は観光客や私とご同業と察する方々。

みんな茂辺地で降りるのかなあ。
駅からぞろぞろと北斗星スクエアに向かうのかなあ・・・なんて思えてくる。

次の五稜郭でも乗ってきて、このボックスも相席となった。
1両編成ながら、休日にもかかわらず車内が盛況で結構なことだ。

午後の函館発だけあって、北斗市旧上磯町内の各駅では地元客が数人ずつ下車する。上磯を発車する頃には、地元客らしい人は少なくなった。
それでもまだ今どきのローカル線とは思えないほど乗客が多い。

上磯を発車してしばらくすると津軽海峡を望む高台を走る。
津軽海峡線時代に快速『海峡』や特急『白鳥』から飽きるほど見た車窓。
快晴で海も穏やかだが、春らしくもやっとした空。函館山も霞んでいた。

さて問題の茂辺地着。

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 茂辺地駅に到着。

やはり荷物を持った何組かが同時に席を立つ。
まあ、宿に着くにはちょうど良い時間帯の列車だしね。

ワンマン列車なので、下車時に運賃を支払う。
私は乗車券も整理券も持っていないので、6日間パスを見せて五稜郭からの運賃を支払う。480円

なぜ乗車券を持っていないのかというと、函館駅の券売機で売っているのは函館〜五稜郭間のJR運賃込みの乗車券だから。
JR線内で有効な乗車券所持者が函館駅の券売機で乗車券を買ってしまうと、この1駅区間分余計に払うことになってしまうので注意したい。

同時に降りたほかの人たちは発車する列車の撮影をしてから向かう模様。
私はさっさと北斗星スクエアに向かう。


 ◆ 北斗星スクエアへ

駅を出て正面の通りを行くと、突き当りに『北斗星広場 約100m』と記した案内看板があった。
こういう何気ないところに親切というか温もりを感じますな。

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 旧中学校跡なので敷地が広い茂辺地北斗星広場。

またやって来ましたよ。
またとは、実は先々週に出張で車で通った時に、工事中の北斗星広場に立ち寄ってたのだ。
その前にも出張で通った時は立ち寄ってたし・・
おっと、内緒の話ね。

まあとにかく、宿泊施設として再スタートした北斗星スクエアである。
車両の手前に新しく小屋が立っていて、そこがフロントとなっていた。

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 北斗星スクエアのフロント小屋。

「こんにちはー」
と中に入ると、係のおねえさんがいた。
宿帳を書いてキーを受け取る。
朝は無人になるので、キーはロッカーに返してとのこと。

了解了解。
海外旅行で安宿に泊まるとこんなところばかりだったので慣れている。

これで終わりかと思ったらついてきてくださいと先導する。
色々調べてきてわかっているのだけど、説明は素直に「ハイ」と聞いておく。

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 貫通扉が客室のエントランス。

車内・・いや客室内は土足厳禁となっているのでスリッパに履き替える。
中に入ると、日向に放置していた車と同じ空気を感じる。

「車内は暑いですけど、5時になったら係の人が来て空調入れてくれますから」

そのあとシャワー室の使いかたや、トイレは外にあることなど説明を受ける。

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 玄関と1つしかない共同洗面所。

キーは2つあって、1つは車両の出入り口となる貫通扉のもの。夜間は施錠するので、車内からの出入りはこのキーを使ってくれとのこと。
もう1つは、B個室ソロのキー。
こちらは鍵がかかるので荷物置き場として使ってくださいとのこと。

「こっちで寝たらだめなんですか?」と聞いてみた。
「一応簡易宿泊所ということになっているので、鍵のかかる部屋は使えないんですよ」

あとで調べたら、鍵のかかる個室に寝泊まりさせると、法令上は『旅館』の扱いとなり、それに相応しい設備を追加する必要が出てくるようだ。

「まあでも、そこはご自由にどうぞ」

同じことを聞く人が多いのか、おねえさんは笑って答えた。

さて、今夜の宿となるB寝台。
正確には『Bコンパート』。

北斗星2往復時代は、1・2号の車両はJR北海道持ち、3・4号がJR東日本持ちとなっていた。
このBコンパートは北斗星1・2号に連結されていた車両。

BコンパートとはB寝台のボックスに扉を設けて、4人利用の場合は個室とできるようにしていた。
発売は部屋ごとではなく解放寝台と同様に寝台ごとの個別発売としていたから、コンパートとは名ばかりで、通常は扉も開けっ放しで解放B寝台同様に使用されていた。

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 客室ルームになったBコンパートの通路。

「私は5時までおりますので、それまで何かありましたらフロントにお越しください」
と案内のおねえさんは戻って行った。

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 向かい合わせ2段ベッドのB寝台がそのまま使われる客室。

4人1組のコンパートだが、宿としては2人部屋となっている。
扉はガラス戸だが、カーテンが設置してあるのでプライバシーの確保は可能。
コンセントが新設されている以外は基本的に現役当時のまま。

テーブル下の灰皿もそのままで、車内に禁煙の表記も見当たらなかったから本当に灰皿として使う人が出てきそうだ。

下段寝台の上には寝具(シーツ、掛け布団、枕)が置かれている。
麻袋の中身は、タオルとバスタオル、それに歯ブラシと紙コップ。
ソープやシャンプー類は洗面所とシャワー室に共用のボトルが備えてあるし、一応必要なものは全て揃っている。

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 まぎれもなく現役時代の寝台車そのもの。

腰かけて見渡すと懐かしい眺め。
でも、シーンと静まり返って物音ひとつしない車内ってのも妙なものだね。

それにしても暑い。

日当たりのいい場所だから、車内が温室みたいになってしまうわけだ。
空調は故障でもしているのだろうか。

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 上段寝台も現役時代そのまま。

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 車窓からの風景。

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 元Bコンパートなので、ドアを閉めて施錠することもできる。

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 テーブルのセンヌキ。瓶ビールを持ってくるんだった。

茂辺地駅で一緒に降りた人たちが来る前にササッとあれこれ撮影してしまう。
こちとら鉄道ファンの端くれですからね。そこのところは抜かりなく済ませる。

今列車で着いた人たちとは別に、車で来た人たちは先に滞在していた。

ロビーカー、じゃなかったロビー室かな。
JR東日本編成は1両丸ごとロビーカーだったけど、JR北海道の車両はロビー・ソロの合造車となっていた。

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 共用スペースのロビー室。

奥のガラス張りの個室は電話室だった。テレホンカード専用の公衆電話があった。
まだ携帯電話など近未来の話だった時代に、ここから実家に電話をかけたことがあるよ。
当時は車内から電話ができることすら画期的なことだった。

このスペースは今は冷蔵庫と電子レンジが置いてあって自由に使える。

電話室と反対側には自販機があるが、これも現役時代からそのままの物らしく、電源は入っていなかった。
飲み物が欲しくなれば、最寄りの自販機は茂辺地駅ということになる。

あと茂辺地にはスーパーもコンビニも無いので、食料や飲み物は持参する必要がある。
駅近くに寿司屋が1軒あるが、今日は閉まっていた。
広場にあるコンテナハウスはカフェやラーメン屋だったこともあるが、今は営業していない模様。

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 ロビー室反対側から。自販機は使用不可。

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 鍵が掛かるソロは荷物置き場となる。

暑いので外へ出てあちこち見てくることに。

あらためて外から車両を見る。
一時は錆びだらけで塗装も変色し、廃車置場のようになっていたものだが、すっかり修復されてきれいになった。
しかし、このまま野ざらしだとまた同じようになってしまうだろう。
せめて屋根でもかけてあげたいところだけど、その費用を捻出するとなるとまた大変な話になるし、難しいところなんだろう。

海から潮風が吹いてくる場所だけに腐食も早そうだ。
北斗星の現役時代だって、塩害を受ける青函トンネルを毎日通るうちに塗装が剥げて錆が出ている車両をよく見たし、酷いのになると全身皮剥け状態のようにボコボコになった車両まで見ることがあった。
茂辺地の北斗星車両も、錆びては塗装し、錆びては塗装しの、いたちごっこになってしまうのだろうか。

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 北斗星『オハネフ25 2』と『スハネ25 501』外観。

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 ブルーの車体に金帯が北斗星のデザインだった。

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 北斗星エンブレムと行先表示幕。

北斗星は最後に乗ったのは2006年。
当時発売していた29,500円の『札幌・東京フリーきっぷ』で東京までの行き帰りに利用してのこと。

 そのときの旅行記はこちら
 北斗星スクエアが現役当時だった頃の『北斗星1号』車内の画像があります。

もう1度くらい乗っておきたかったな。
後悔してもしょうがないんだけど。


 ◆ 北斗星の夜

5時を過ぎたけど一向に空調が入る様子はなかった。
夕方になって気温が下がって来たので、車内の室温も自然と下がってきた感じ。
日もだいぶ傾いてきたことだし、そろそろ一杯始めることにする。

ハセガワストアのやきとりは、ロビーの電子レンジでチンしてきた。焼き立てのような香ばしさが復活。
酒と寿司はマックスバリュで買ってきたもの。
お酒は金滴北の純米酒。
寝台車の気分でチビチビやろうかと日本酒を買ってきた。
こう暑いとビールの方が良かったかな。

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 本日のディナー。マックスバリュの寿司とハセガワストアのやきとり。

窓からは傾いた西日が入るようになった。

時刻は18時10分

〜上野発北斗星1号ならば宇都宮到着前。
〜札幌発北斗星2号ならば苫小牧を発車した頃。

食堂車では1回目のディナータイムが始まった頃だね。

食堂車の予約制ディナータイムなんて高くて行けないからね、こちらは寝台車のテーブルに酒と料理を広げてディナータイム。

パブタイムになったら食堂車に行ってみるか・・・ナンチテ (^^;

車内は暑いせいか、表のテーブルで食事をとる人が多い。
気づくと窓の下に近所の飼い猫だろう。首輪をつけた猫が遊んでいた。

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 気分だけはブルートレイン。

相変わらずシーンとした車内。
時どき隣室の人の会話が筒抜けで聞こえてくる。
客車なんて常に走行しているものだから、基本的に寝台車の仕切りは防音仕様になんてなっていないからね。
足音とか話声は意外と大きく車内に響く。

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 黄昏時の北斗星。今にも発車しそう。

食べ終えたらごみ出しとトイレを兼ねて外へ出る。
いつの間にか5月なんだな、7時を過ぎても空は明るい。
広場は照明もなく、客車の窓から明かりが漏れる様はまさしくブルートレイン。
2両だけしかないのは寂しいところだけど。

ひとつ贅沢を言わせて貰えば、北斗星のテールマークも光っていれば良かったんだけどな。
こちらは側面表示幕ともども消灯したままだった。

車内に戻ったら、今度は1人用B個室寝台だった『ソロ』の室内に席を移し、ここで二次会をすることにした。

このブログ記事で北斗星の旅行記としているのはB寝台だけど、個人的に北斗星で一番懐かしいし馴染みもあったのがソロの下段だったりする。
なぜかソロは下段が当たることばかりだった。だから余計に懐かしい。

1990年代だった当時利用していたのは、ほとんどが上野行き上り列車だった。
『北斗星』で上野に着いて、帰りは急行『八甲田』というのが定番だった。
八甲田としたのは、当時あった周遊券では、周遊地までの行き帰りに急行の自由席は料金なしで利用できたから。

当時と同じようにテーブルにお酒を置いて、夜景を眺めて、まだ20代前半だった頃の私ならば、煙草の煙を燻(くゆ)らせていた。
色んな事を思い出すな。

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 個人的に一番懐かしいソロ下段。

最後にソロに乗ったのはたしか2000年のGWだった。上野から札幌まで。
だからこのソロとは22年ぶりの再会となる。
あの時は有珠山噴火による海線不通のため、山線の迂回運転だったなあ。

最後に北斗星に乗った2006年は、劣化しないデジカメの画像が残ってるので、そんなに昔という感覚はない。それでも16年前の出来事になる。
だけどよく北斗星のソロに乗った1990年代となると、さすがに遠い昔の出来事だと思うようになった。

もっと写真を撮って残しておけば良かったな。
あの頃、私は旅行先で写真というものをほとんど撮らなかった。
90年代以前は、今みたいにデジカメやスマホじゃないからね。
バカスカ撮ったらフィルム現像代だけでも結構な値段になってしまうから。

もう1つ理由があって、それは故宮脇俊三氏の “カメラの功罪” という随筆にあった。
その中の “カメラを持参しない。自分の眼さえあれば十分” という一文。
若かった私は、氏のカメラ不要論に感化されていたのだった。

バカスカ撮るようになったのは一眼レフを買ってから。
その頃には現像代もかなり安くなっていたし。
デジカメを買ってからは現像代も写真の保管もいらなくなり、誰はばかることなくバカスカ撮影するようになった。

DSCN0821.JPG
 しんみりとソロの旅を思い出す。

お酒をチビチビやりながら昔のことを考えていたら、いつの間にか座ったまま寝落ちしていた。

22時50分、ここはどこだ?

〜上野発北斗星1号ならば一ノ関と盛岡の間を走行中。
〜札幌発北斗星2号ならば青函トンネル走行中。

お酒も全部飲んでしまって、自室のB寝台に戻る。
ベッドメーキングは自分でやるのはこちらも同じ。
シーツを敷いて枕と掛布団を載せると座席から寝台に早変わり。

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 寝台車は座席をベッドにするのは万国共通。

DSCN0894.JPG
 カーテンを引いて、おやすみなさい。

コンパートの天井にある蛍光灯は灯ったまま。
これは室内にスイッチがあるわけではないので消すことはできない。

現役の頃の営業運転中であれば、車掌の「これより先深夜帯に入ってまいります」で始まる『お休み放送』のあとで通路の照明だけ残して消灯したものだが、夜は無人となる北斗星スクエアでは一晩中煌々と灯ったままとなる。
そこは寝台のカーテンを閉じて眠るしかない。

それにしても走っていない寝台車ってのも妙なものだね。
横になって見えている眺めは紛れもなく『北斗星』や『はまなす』のB寝台と同じはずなんだけど。
同じ眺めなのに物音ひとつせず揺れもないという新しい感覚に頭がついていけないようだ。

5月5日の旅費
品目場所金額(円)備考
宿泊費北斗星スクエア5,500事前クレジット決済
駅弁札幌駅弁菜亭850 
ビール札幌駅キヨスク284パス特典10%引
五稜郭公園前往復函館市電460Kitaca使用
やきとり2パック
ハセガワストア691 
夕食と酒と朝食マックスバリュ2,335 
五稜郭→茂辺地道南いさりび鉄道480 
水2本茂辺地駅自販220 
5/5 合計10,820 


posted by pupupukaya at 22/05/15 | Comment(0) | 道南の旅行記

2022年 HOKKAIDO LOVE!旅行記 道南編2

 ◆ 湯の川温泉 → 函館駅

おはようございました(北海道弁)。

ここは津軽海峡を望む温泉宿の部屋。
旅先での目覚めは世界中どこにいてもいいものだ。
しかも今回は出張じゃないしね。

朝食は7時30分から。
また性懲りもなく、バイキングでたらふく食べてしまった・・・
今日も食事は夕方までいらないな。

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 朝食バイキング。飯とおかずはてんこ盛りで。

ホテルは9時過ぎにチェックアウトする。また川沿いの道を湯の川温泉電停まで歩く。
市電の終点の先に湯倉神社があるので、ちょっと寄ってお参りする。

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 湯倉神社は温泉の神様。

この神社の名物はユニークなおみくじ。
その中の1つ、『イカすおみくじ』を引いてみる。
道内にある10か所の神社でやっている『えぞみくじ』の1つ。
ここのおみくじはイカの形をした張り子の中に入っていて、それを釣り竿で引っ掛けて釣るというもの。

で、釣り竿をもって釣り針をこれはというイカに引っ掛けて釣り上げる。

DSCN0636.JPG
 釣り竿でイカの張り子に入ったおみくじを釣る。

『吉』

“良い事と駄目な事どっちも起こるんでないかい。
気持ちの整理が付かず、あずましくないべさ。”


これじゃあずましいのかあずましくないのかよくわかんないべさ。
幸運の北海道名物は、北見名物『塩焼きそば』と書いてあるっけ、こんなら年内に食べに行かなきゃならんしょや。

んだども、北海道弁丸出しの神様から、ありがたいお告げを頂いたべ。

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 釣り上げたおみくじ。お告げが北海道弁になってる。

北海道弁のありがたいおみくじとイカの張り子を手に入れて湯の川電停へ。
函館どつく前行き電車に乗る。

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 終点の湯の川電停。

発車したときはがら空きだったが、次の湯の川温泉電停で温泉帰りの観光客や地元の人が乗ってきた。
昨日と同じ後部運転台横に立って、後ろからの景色を眺めることにした。

休日とはいえ、途中の電停から地元の利用客の乗車が2人3人とある。
みんな五稜郭や駅前まで行くのかと思ったら意外とそうではなく、途中で降りる人もあるので、車内はそれほど混むわけでもない。
車社会の函館だが、7〜8分間隔で走っている市電は車の無い人や観光客にとって便利な足だ。

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 市電の後面展望。

ところが、函館の市街地はどんどん郊外に拡がっていて、市電の走る旧市内は寂れる一方だ。
郊外はバスということになるのだが、函館のバスは本数が少なくて使い物にならない。
なぜなら、路線当たり1時間に1本走っていればマシな方で、大体は1日数本といったレベル。
だから、函館は完全に車社会。

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 函館駅前電停と旧塗色の812号。

今は脱クルマの風潮もあるし、便利な市電があるのだから市電沿線が発展しても良さそうに見える。
しかし、知っている人ならば知っているが、函館ならではの困った土地事情が旧市内の発展を阻んでいると見受けられる。

今日はハプニングもなく、乗車30分で函館駅前に到着する。


 ◆ 函館 10:34 → 木古内 11:37【124D】

今日は道南いさりび鉄道に乗って木古内まで往復する。

使う乗車券は『いさりび1日きっぷ』という、道南いさりび鉄道線が1日乗り放題というもの。
本来は1,000円のところ、北海道による『ぐるっと北海道・公共交通利用促進キャンペーン』の補助を受けて3割引きの700円になっている。
五稜郭〜木古内間の片道運賃が980円だから、片道だけで元が取れることになるかなりお得なきっぷ。

このきっぷは函館駅では発売していないので、駅以外にある発売所で買わなければならないのだが、スマホで『DohNa!!』というサイトで購入し、画面に表示させればチケットとなる便利なものがある。

道南いさりび鉄道のほか、市電の1日乗車券などもあって、函館市内や近郊を観光するならここから買う方が早い。

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 クレジットカード決済でスマホで表示する『いさりび1日きっぷ』。

便利でお得な切符だが注意事項があって、函館〜五稜郭間はこのきっぷじゃ乗れないということ。
この区間はJR北海道なのでJRの乗車券が別途必要になる。
私は『HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス』所持なので、そのままフリーパス。

函館駅1番ホームに行くと10時13分着、木古内からの125Dが着いたところだった。
JR北海道から譲り受けたキハ40形1両で、車両は運よく『ながまれ号』だった。

結構ぞろぞろと降りてくる。
高校生らしい若者が多いのは、冬休み最後の連休は函館に遊びにといったところか。

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 木古内行き124Dは『ながまれ号』だった。

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 津軽海峡のいさり火と夜空の星をモチーフとした車体。

乗客が全員下車したら折り返し木古内行き124Dとなる。
乗り込んだのは数えるほど。まだ発車まで20分近くあるものの、午前中の木古内行きとあっては、がら空きだろうと思っていた。
進行左側、海側のボックス席に陣取る。

ブルーの4人向かい合わせボックスシートが妙に懐かしい。
少し前までは道内どこへ行っても見られたものだが、ここ1〜2年で新しいH100形気動車が進出して少数派になりつつある。
あと数年もすれば、残るのは道南いさりび鉄道だけになっているのかも知れない。

そのうち道南いさりび鉄道で最後の国鉄型車両に乗りましょう、なんてツアーが流行ったりして。

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 車内は他の車両と変わらずブルーのボックスシートが並ぶ。

発車時刻が近づくにつれて乗客はだんだん多くなってきた。
ボックスシートは全てふさがり、ロングシートもふさがってきた。デッキには立つ人も・・・

旅行客風の人もいるけど、函館地元の試乗組と見受けられる人が半分くらい。子供を連れた家族連れも目立つ。
なぜか同業者こと鉄っちゃんの姿は目立たない。

いさりび1日きっぷで安く乗れるから、冬休み最後の連休ちょっと子供を連れて乗りに来ましたと、乗客の顔ぶれを見ていると観光列車のような車内である。

函館人って結構ミーハーなようで、江差線木古内〜江差線廃止前は鉄っちゃんよりも函館からの人らしい乗客で満員だったし、去年開通した函館外環状道路開通初日に仕事で函館に行ったら、夜になっても地元組の試乗の車で大渋滞していた。

盛況で大いに結構と言いたくなるほどの乗車率で函館を発車。
1日きっぷを700円に値下げしたのは、とりあえず大成功だったといえる。

次の五稜郭でも乗ってきた。こちらは沿線の人ばかりのようだった。

DSCN0739.JPG
 五稜郭からは道南いさりび鉄道線となる。

七重浜、清川口、上磯と地元の人が下車して、もう車内は観光列車だ。
函館は曇っていたが、天気も良くなって青空が出てきた。

上磯を過ぎてセメント工場を過ぎると津軽海峡を望む海岸段丘を走る。
かつて特急『スーパー白鳥』から見たのと同じ風景。
さらに古くは、夜行快速『ミッドナイト』から乗り継いだ快速『海峡』からの眺め。

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 函館湾と函館山を望む。上磯〜茂辺地間。

北海道新幹線開業と引き換えに三セク化されて特急列車も消え、上磯から先は1日9往復の気動車が走るだけのローカル線になってしまった。
と言っても、それは時刻表上だけのことで、実際乗ってみると線路の上には架線が張られて、とてもローカル線に似合わない幹線級路線に見える。

この区間の主役は電気機関車が牽引するコンテナ貨物列車
そのすべてが本州と北海道内各地を結ぶ直通列車だ。
今乗っているこの列車も、茂辺地と釜谷の2回貨物列車との交換待ちがあった。

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 コンテナ貨物列車と交換する。茂辺地駅。

進行左側は津軽海峡。下を通る道路は国道228号線。線路は海岸段丘上にあるので、どちらも見下ろすように列車は進む。
空気が澄んでいれば津軽半島の山々も見えてくるのだが、今日は見えなかった。

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 津軽海峡を望む海岸段丘を行く。渡島当別〜釜谷間。

快速『海峡』から特急『スーパー白鳥』まで、もう数えきれないくらい乗ったことがある路線だが、普通列車で乗ったことはあったかな。
久しぶりに乗ったせいもあるのだろうが、同じ路線のはずだが何だか違う路線のように新鮮に見えた。

終点木古内ではスマホに表示した『いさりび1日きっぷ』を運転士に見せて下車する。

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 木古内駅に到着。


 ◆ 木古内駅

木古内駅は橋上駅舎なのは新幹線開業後も変わらない。
変わったのは無人化されたことと、北口と南口にエスカレーターとエレベーターが増築されたこと。

新幹線駅が町と反対側の南口側に出来たので、町側から新幹線の木古内駅に行くには道南いさりび鉄道の木古内駅を通り抜ける必要がある。エスカレーターがあるものの上りしかないので面倒だ。

高架駅になることが決定した北海道新幹線の長万部駅も、木古内駅と同様の構造となるのだろう。
長万部駅は新幹線開業後もJR北海道の在来線駅も併設となるが、存続しても三セクとなる倶知安町は在来線などいらんわと言いたげなのも、南北で分断された木古内駅を見ると何となくわかるような気がした。

木古内での折り返し時間は1時間14分。
取り立てて観光するような場所もないが、新幹線開業で変わった駅や駅前を見てくることにする。
これも車の旅行や出張では何度も来たことはあるのだが、木古内駅に降り立ったのは新幹線開業以来初めてということで・・・

で、駅の南口広場に出て驚いたのが、これでもかと積み上げられた雪山。
道南でこんなにすごい雪山を見るとは思わなかった。
あとで調べたら、木古内は特別豪雪地帯に指定されるほど道南では雪が多いところなんだとか。

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 雪山がすごかった木古内駅南口広場。

どこを歩いているのかわからなくなるほどの雪山だが、駅前広場向かいに道の駅があるのはわかっている。
道の駅 みそぎの郷きこない
売店は土産物を中心に充実して、カフェやレストランもあって、ここにいれば1時間はあっという間だろう。

それにあの雪山を見たら、もうどこへ行く気もしなくなった。
反対側の新幹線駅へ行ってみると、上り列車は1時間後、下り列車は3時間近く待たねばならないとあってか、待合室に列車待ちらしい1人の人影があるだけだった。

また道の駅に戻って、売店で珍しい日本酒を見つけたので買った。これは帰ってから飲む用。

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 売店やカフェが充実した道の駅 みそぎの郷きこない。

また駅に戻る。
ホームにはさっき着いた『ながまれ号』の車両がエンジンをアイドリングさせて停まっているが、ドアは閉まっている。
券売機横にある時刻表には『出発時間の概ね10分前よりご乗車いただけます』と表示してあった。

旧改札口横の、かつてみどりの窓口だったところは塞がれて壁になっている。
駅事務室だったところは運転事務室となって、運転士の休憩所となっているようだった。

『いさりび1日きっぷ』はスマホでクレジット決済で買えばそのまま乗車できる。あとは外部の業者による販売。

このように駅における営業要員を一切置かないというのは、JR各社もローカル線の営業モデルとして見習ったらいい。
これは鉄道業に限らない。小売業でも無人レジというのが普及しつつある。

ネットやスマホアプリでチケットの購入と決済できるのならば、当然わざわざ不便な窓口を利用する客はいなくなるわけだ。
海外の鉄道はこのようなシステムをとっくに実現している。
道南いさりび鉄道は、JRを差し置いて世界標準になったともいえる。

それに比べてJR各社は何と遅れていることか。
みどりの窓口や専用券売機による磁気券の発券にいつまでも固執しているのが滑稽に思える。

最近はJR東日本をはじめとして、交通系ICカードを利用したチケットレス乗車券というのが出てきて、そっちに誘導したがっているようだけど、それとて有人駅でICカード対応自動改札機があるという前提だ。

日本独自に進化した『ガラケー』はスマホに取って代わって淘汰されつつあるが、全国統一のマルスシステムによるJRの“ガラ鉄”はまだ淘汰されそうにない。

いつになったらJRも飛行機同様に本当のチケットレスになるのだろうか

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 無人化されて寂しくなった旧改札口。

でも無人となった駅は寂しいね。
かつてスーパー白鳥が発着していた頃は、改札前はこの待合室もよそ行きの空気が漂ったのを思い出す。

待合室内に展示された過去の列車のサボや、SLの模型などを見ていると、さっきの列車で木古内まで一緒だった人たちも戻ってき始めた。

12時30分過ぎ、連絡通路の窓から外を見るといつの間にか3番線に上り貨物列車が停車中。
木古内を発車すると新幹線と合流するので、きっとここで新幹線の通過待ちだろう。

線路を眺めていたら、気のせいか踏切の音がする。
これはもしかして下り列車?
いや間違いない、遠くに見える警報機が点滅しているのが見える。

12時38分、下り貨物列車が通過して行った。

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 木古内駅を通過する貨物列車。機関車は海峡線用に開発されたEH800形。

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 道南いさりび鉄道の主役は貨物列車ということを思わせる。


 ◆ 木古内 11:37 → 函館 13:55【129D】

通過する貨物列車を撮影してからホームへ下りる。
待合室の人がいなくなっていたので、もう列車に乗れるようだった。

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 木古内駅4番ホームで発車を待つ函館行き129D。

車内はさっきの列車の折り返しの人ばかり。
それでも半分くらい?
あとの人はどこへ行ったのだろう。

車内は海側のボックスは塞がり、山側のボックスに空きがあったが、戻りはロングシートにした。
新たな乗客がさほど増えることもなく木古内を発車する。

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 すいていれば車端部のロングシートも悪くない。

3つ目の釜谷でまた貨物列車と交換。
上りはさっき木古内駅に停車中だったけど、もう次のが来た。
本当に道南いさりび鉄道は貨物列車街道だ。

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 泉沢駅でまたも貨物列車と交換。

渡島当別からは地元の乗客が2人3人と乗ってくるようになる。
ロングシートに横向きに座って海側の風景を眺めてきたが、座る人が来たのでもうおしまい。

五稜郭の1つ手前七重浜に着くとホームには大勢の人影が見えた。
ドアが開くと続々と車内に入って来る。その数20人ほど。
若い人が圧倒的に多い。ここからは都市近郊列車らしい車内になった。

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 七重浜で126Dと交換。ここから車内は賑やかになった。

七重浜からの人は次の五稜郭で半分くらい降りて行った。
五稜郭駅といっても、丸井がある五稜郭とは全く別の場所だし、駅前は家電量販店、駅裏は市立病院と郊外型のショッピングセンターがあるくらい。
函館駅まで行くと運賃が跳ね上がるから、五稜郭方面へはここからバスを利用するのだろうか。

13時55分、終点函館着。
向かいの1番ホームには国鉄色の14:04発上磯行き普通列車が停車していた。

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 旧国鉄塗色とながまれ号が函館駅ホームに並ぶ。

再び函館駅まで戻ってきて、次は『北斗15号』で札幌に戻ります。
乗継時間は59分。
駅裏の岸壁から摩周丸と函館山を眺めて、駅2階の『いるか文庫』で青函連絡船グッズ見るくらいはできる。
そのあとは1階の四季彩館で買い物をする。

買うのは車内で飲むビールとカップ酒、それに粗びきがごめ昆布。
この粗びきがごめ昆布ってのが便利でね、水に漬けると物凄い粘りが出るのが特徴。
私の知る限りでは、函館駅の四季彩館でしか手に入らない物だ。

レジに持っていくと、
「6日間周遊パスをお持ちですか?」
と聞かれた。
そういえば、このきっぷは特典もあるのだと思い出し、思わず
「持ってる、持ってる」
と言ってきっぷを出した。

これで会計額から10%引きになる。
酒類や鉄道グッズも同じく割引になるようだ。
もっと早く知っておけばよかったな。

DSCN1045.JPG
 旧青函連絡船摩周丸と函館山。

朝にあれだけ詰め込んでも夕方近くなれば腹も減るもので、帰りの車内用に駅弁を買う。
函館駅コンコースの駅弁屋は2つ並んでいて、左は昔からの『みかど』右は『旬花』。
いつもはみかどの方ばかり買っていたので、今度は旬花の『はこだて大沼黒牛めし』にした。

四季彩館内の店だと思って6日間周遊パスを見せたら、「うちは対象外なんですよ」と言われた。
「隣(みかど)ならば使えるんですけど・・・」
もう仕方ない。値引きになるったって120円だし。


 ◆ 函館 14:54 → 札幌 18:58【北斗15号】

こんどの北斗15号も混んでいるようで、えきねっとで見たら指定席は満席近くにまでなっている。
隣席が×ならば自由席にするところだが、幸い隣席は〇印になっていた。

北斗15号は、14:27に札幌から到着する北斗10号の折り返しとなる列車で、その北斗10号は途中雪害により現在27分遅れで運転中とのこと。
コンコースに流れるアナウンスは、
「14時54分頃の到着で、そのあと車内整備をおこなってからのご案内となります」

やれやれ、冬は定時運行を期待してはだめだね。
こっちは帰るだけだから少しくらい遅れても支障はないが、それでも早く帰りたい。

そうこうしているうちに、
「北斗10号は車両不具合が見つかったため、当駅で運転を終了します」
「折り返しになる15号は代わりの車両を用意しておりますのでもうしばらくお待ちください」
となった。

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 吹き抜けの函館駅コンコース。

代わりの車両なんてあるのかと半信半疑だったが、信じて待つしかない。
この次の列車は16時38分発の『北斗17号』。
次の列車に振り替えなんて嫌だぞ。そうなったら間違いなく札幌まで立ちっぱなしだ。

14時56分、札幌からの『北斗10号』が29分遅れで到着。ヘッドマークは早くも『回送』となっていた。
乗客を降ろした10号は車庫へと折り返して行った。

ここからは本当に来るのかもわからない代わりの車両を待つしかない。
連絡通路からホームを眺めていたら、いつの間にか雪が降り出していた。

DSCN1063.JPG
 札幌からの北斗10号が到着。このあと入庫となった。

それから30分ほどして、
「代わりの車両の用意ができたため間もなく到着します」
とのアナウンス。
改札口からも北斗15号の乗客が向かってきた。

15時30分、7番ホームに代車が入線。
本来の10号の折り返しになるはずだった車両と同じく261系6両編成だった。

北斗の車両運用など私はよく知らないが、時刻表を見る限りでは函館駅に着いた車両がそのまま折り返すという単純なものではないようだ。
初めから予備の編成があったのか、本来は別の列車に充てるはずだった編成を持ってきたものかはわからない。
一つだけ気になったのは、普段は車両基地構内で眠っているキハ281系車両を機関車で引き出しているのが見えた。

え?まさかあれを動かすつもりじゃ・・・※

 ※翌日札幌駅で本来261系で運転される北斗8号の車両が281系に変更されていた。

とりあえずは後続の列車に振り替えにならずに済んでやれやれだ。
函館発車は15:35、定刻より41分遅れの発車となった。

満席近いはずなのに、空席が目立つ。中にはまとまって空いている所もある。
これは新函館北斗から乗ってくるのだろう。
車内に余裕があるうちに駅弁を食べてしまおう。

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 はこだて大沼黒牛めしとサッポロクラシック。

やはり新函館北斗から乗る人は多かった。
『はやぶさ19号』からの乗り継ぎ客だ。ここでほとんどの席が塞がった。
まとまった空席はツアーの客だった。添乗員もいて、なかなか立派なツアーだ。この席まわりだけは年齢層が高い。

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 真っ白の小沼と裾野だけ姿を見せる駒ヶ岳。

函館をこの時間帯に出発する北斗に乗ると、30年前の『北斗11号』を思い出す。
今日のと近い時間の15時00分に函館を出発する列車だった。
あれはまだ振り子車両の『スーパー北斗』が登場する前の話。

あの頃は道内旅行を卒業して私も本州に進出し始めた頃。
学割の周遊券を持って、行きは『北斗星』で行って、帰りは節約して上野から急行『八甲田』で戻ることが多かった。
『八甲田』『海峡3号』の乗り継ぎだと函館から普通列車乗り継ぎで札幌まで帰れたんだけど、それだと帰りが遅くなるし、特急に乗っても自由席特急料金は2,270円(当時)だったから、面倒になって特急に乗ることもあった。
(当時の周遊券は、フリー区間までの行き帰り区間は急行に限って料金不要で利用できた)

その『北斗11号』に乗ったのが1991年と1992年のどちらも春休み。
今でも思い出すことは何かというと、2回とも函館から札幌までずっと立ちっぱなしだったこと。
92年のは指定席の通路まで立ち客で溢れていた。
「すいませ〜ん、失礼します」と言いながら車販ワゴンも回っていたっけ。

初代キハ183系7両編成、所要時間は3時間46分時代の思い出。
『スーパー北斗』になって本数が増えてからはそんなこともなくなったし、学割が使えなくなってからは青春18きっぷでの夜行快速『ミッドナイト』利用が多くなった。

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 函館駅で買ったお酒『函館臥牛山』。

森を発車することには外は暗闇になってしまった。
退屈になった。カップの酒も飲んでしまおう。

6日間周遊きっぷは残り2日。
明後日は仕事なので使えないから、実質明日1日分となる。
天気次第だなあ。遠くまで行って帰って来れなくなったら大変だしね。

札幌着は19時32分、45分遅れでの到着となった。


posted by pupupukaya at 22/02/05 | Comment(0) | 道南の旅行記

2022年 HOKKAIDO LOVE!旅行記 道南編1

『HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パス』の最初2日間は1泊2日で道東へ行ってきましたが、次の2日間は道南へ行ってきます。

前回記事

1月4日から函館市による『はこだて割』という旅行代金助成制度がスタートしたので、今度はこれを使って温泉旅行をしてこようと思いました。
宿泊先は函館の湯の川温泉。その足で、三セク化されてから今まで乗っていなかった道南いさりび鉄道にも乗ろうと思います。

↓ では旅行記スタート ↓

土曜日、成人の日の3連休初日とあって、各方面の特急列車も混んでいるようだ。
えきねっとで今日乗る予定にしていた『北斗6号』の指定席の予約状況を見ると、自分の隣席である通路側席も×印になっている。
すでに窓側の空席は無い状態。

安いきっぷがあるのと、コロナ渦で列車が空いているからこそ鉄道旅行を楽しんでいるんだから、窮屈なのはいやだ。
そこで、持っている『北斗6号』の指定券はキャンセルすることにした。
自由席で行くということだ。

指定席は満席状態なのに、自由席を覗くとガラガラ状態ということは結構あることだ。

改札を入る前にみどりの窓口に行って指定券のキャンセルを申し出た。
1回分フイにしたって構わないのだが、キャンセルしたら券面の指定席発行済みを示す4つある★マークの1つをボールペンで2重線を引いて、その上に『札幌』の訂正印を押した。
指定席券売機は使えないので、残り1回の指定券は窓口でと言われる。
今から北斗6号の指定席を取る人は、運よく窓側の席が取れることになるだろう。


 ◆ 札幌 8:32 → 函館 12:23【北斗6号】

今日の北斗6号は261系編成、1両増結の6両編成。
自由席は5・6号車の2両。

5号車を覗くと、空いている列もまだ残っているが、そこそこ席はふさがっている。
隣の6号車はというと、こっちはなぜかガラガラだった。

とりあえず6号車自由席の客となる。
左右どちらの席にするか。
いつもは海側となる左側ばかり選んでいたので、今日は山側になる進行右側の席にした。
空いていれば好きな席を選べるのも自由席の良さ。

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 JR北海道特急のスタンダードになった261系。

そろそろ発車時刻となった頃、
「接続待ちで発車が遅れます」とアナウンスがあった。
今度はどれくらい遅れるのかはわからないが、これからの予定で確定してることと言えば湯の川温泉のホテルに泊まることくらいなので、明るいうちに函館に着いてくれればいいよ。

5分ほど過ぎて今度は、
「別方向の列車が先に発車してからの発車となります」
とアナウンス。
ホーム向かいの6番線には8:36発のエアポート86号が停車中。
きっとエアポートの方を先に出すんだろうと思ったが違って、8時40分にこちらが先に発車した。
札幌は8分遅れでの発車となる。

まずは缶ビールで出発の乾杯。
土曜日だし、連休初日だし、今日は堂々とロング缶でいきます。

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 今日のお供はビールと柿の種。

次の新札幌で乗ってくる人も多く、がら空きだった6号車も席はそこそこふさがった。

北斗に乗るといつも海側の席ばかり選んでいたから、山側の席からの眺めが結構新鮮だったりする。
苫小牧を過ぎると、今日は真っ白に雪化粧した樽前山がはっきりと見えていた。

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 真っ白に雪化粧した樽前山がしばらくの友。苫小牧〜白老間。

自由席も結構乗ってきたけど、途中で降りる人も多い。
東室蘭を発車したら空き列も目立つようになった。
指定席をキャンセルして自由席にして正解だった。

列車の遅れは札幌駅発車時の8分から12分に拡大している。
新函館北斗から新幹線に乗り継ぐ人は気を揉むだろうが、こちらは『はやぶさ28号』の発車まで41分もの待ち時間があるので余裕がある。
それよりも寒いホームで待たされる途中駅からの乗客の方が気の毒だ。

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 長万部付近は線路が雪に埋もれるほどの大雪だった。

小幌駅前後の長いトンネルを抜けると道南の渡島地方。
冬は雪が少ない地方なのだが、今年はどうしたのと言いたくなるほどたくさんの雪が積もっている。
長万部駅のホームは列車の下半分が隠れるほどの雪山ができていた。

長万部発は11時06分、2分ほど回復したが、八雲の1つ手前の山崎駅で下り『北斗7号』と接続待ちになる。
本来ならば八雲〜鷲ノ巣(信)間の複線区間ですれ違っていたはずの列車だ。
長万部までの回復運転の甲斐もなく、八雲発車は15分遅れの11時06分となった。

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 山崎駅で281系の北斗7号と交換待ち。

森駅ホームの向かいにはキハ40の2両編成が停車していた。
11:46発函館行き普通列車で、この列車に接続待ちをしている。
乗り継ぐ人なんかいるのかと思ったが、2人向かいの列車に乗り継いで行った。

森から乗ってくる人は多く、自由席の乗車口には4〜5人の乗客の姿があった。
学生と見える年恰好の人が多い。冬休み最後の連休は函館に遊びに行くのかな?

森を発車すると4点チャイムに続いて新幹線の乗り換え案内が延々と続く。
聞いてる人はいるのかと思うが、どうなんだろう。
それにキンキン声の中国語。

新幹線の乗換駅、新函館北斗でまとまった下車がある。しかし、こちら自由席から降りる人は意外と少なく、新幹線に乗り換える人は圧倒的に指定席の人が多いようだった。
しかし、降りた人以上に新函館北斗から乗ってきたのには驚いた。
12:17着の『はやぶさ7号』からの乗客だろう。
ホームの先には12:35発快速『はこだてライナー』が停車中。

『北斗6号』は定時ならば12:08発。本来は接続しない列車なのだが、この時点で18分遅れの12:25発となったので発車標の『函館』の表示を見て乗ってしまったのだろうか。
こちらに乗るには特急券が必要だ。
先に特急券を買ってあるとも思えないし、車掌も特に特急券が必要とも言ってない。
札幌行き特急でも、たまに新札幌から乗ってくる人もいるしね。
こういうのは誤乗扱いということになるのかな?

デッキには立つ人も出て12時41分、18分遅れで終点函館到着となった。

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 終着駅、函館に到着。

函館駅の正面口から外に出ると、雪が舞っている。
しかも気温がプラスのベタ雪。

もう何年も前から函館は出張で数えきれないほど来ている。
なので改めて行きたいところも特にないのだが、せっかくのプライベートなので観光めいたことをしようと思っていた。
だけど、この雪じゃどこにも行く気がしなくなった。

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 函館駅前は雪が舞っていた。


 ◆ 函館山へ

駅前で市電の撮影なんかしていたらいつの間にか雪が止んで日が差すようになった。
青空も出てきたし、いっちょ函館山に行ってみようと駅前から市電に乗る。

函館市電は交通系ICカードが使えるので持っていくと便利だ。
私はKitaca(キタカ)を持ってきた。

函館市電での使い方は乗る時に入口ドア横にあるカードリーダーにタッチして、降りるときに料金箱にあるカードリーダーにタッチすると乗車区間の運賃が引き落とされる仕組み。

しかし、KitacaってJR北海道のICカードなんだけど、JR函館駅で使えないのが不思議。
地方のバスもICカード採用が増えているのに、Kitacaだけは未だに札幌圏の駅以外に広まる気配は無し。
普通列車もバスと同じでワンマンカーばかりなのだから、運賃箱に取り付ければ運用できると思うのは私だけか。

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 市電谷地頭行きに乗る。

話がずれたので函館山行きに戻します。
十字街で降りてロープウェイ乗り場へ歩く。
ロープウェイで函館山に登るのって20年ぶりくらいかなあ。
あとは車で登ることばかりだった。

この道だったかなという坂を登って行く。歩道は雪が踏み固まって滑りそう。
五島軒本店の横を通って坂を登り切ったがロープウェイ乗り場は無く、『函館山』とある看板の方向へさらに歩くと乗り場を見つけた。
どうやら登る道が違っていたようだ。

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 二十間坂から見た函館山。

山麓駅1階で往復チケット(1,500円)を買って乗り場に並ぶ。

改札が始まって、改札機にチケットにあるQRコードをかざして改札。
もう磁気券なんて鉄道くらいでしか見ることなくなったね。

ロープウェイのゴンドラは125人乗りという大型のもの。
そこへ乗り込んだのは20人ほどなので、ゆったりと外を眺めることができる。
ひところならば、インバウンドの人たちにびっしりと囲まれたんだろうな。

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 ロープウェイで函館山に登る。

いっぺん夜に来て夜景を見たいと思っていたけど、湯の川からここまで来るのは大変だ。
ロープウェイを降りて、階段を登って展望台の屋上へ出る。
さあ眼下に巴形をした函館の街が広がりますよ・・・

ありゃ・・・

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 雲と降雪に包まれて一面真っ白の山頂。

何だよ、さっきまで函館山の山頂が見えていたのに、今は一面真っ白。
山頂は雲の中に突っ込んでしまったようだ。
同じロープウェイの便で来た人たちは諦めムード。ほとんどは次の便で下山して行った。

さっきまで青空が出ていたのでもしかして・・・
と期待して待ってみたが、一向に晴れる様子もない。雪の降り方も強くなってきた。
こりゃあ駄目だね。
その次の便で下山することにした。

帰りのゴンドラは私入れて5人だけ。
そりゃ、雲の中ってわかっているのにわざわざ登って来る人もいないよなあ。

ゴンドラが動き出して、ちょっと下ったら眼下に巴形の函館の街が現われた。
雲に覆われていたのは山頂部分だけだったということだ。

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 函館山は山頂だけが雲の中だった。

山麓駅へ戻ってきて、雪の坂道を下って十字街に戻ってきた。
14時30分。
いまは雪が止んでいるが、雲がどんよりと立ちこめていつでも降ってきそう。
ほかに行きたいところもないし、もうホテルにチェックインすることにした。


 ◆ 十字街 → 湯の川温泉【函館市電】

ホテルのチェクイン開始は15時から。
市電で十字街から湯の川まで30分以上かかるので丁度良い時間だ。

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 十字街から市電に乗る。

やって来た電車は5系統函館どつく前〜湯の川温泉の便。
コロナ渦以来函館市電も観光客がいなくなったせいでどの電車もガラガラで走っているのをよく見かけたが、この電車は十字街で乗る人が多く、立ち客も出るほど盛況となった。

ほとんどは観光客のようだ。
こうして日本国内の観光客が増えてきているのは観光都市函館としては喜ばしいことだろう。

函館駅前で乗客が入れ替わって、再び立ち客が多いまま発車となる。
私は電車後部の出口ドアの前に陣取って後方からの景色を眺めている。
立っているのなら、路面電車はここが最上の場所だ。

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 乗客の多くが下車した五稜郭公園前。

五稜郭公園前で多くが下車。
丸井今井デパートがある五稜郭と呼ばれるこの辺りが函館の実質中心街だ。
特別史跡五稜郭や五稜郭タワーはここが最寄り、ホテルや飲食店も多いので観光客の乗り降りも多い。

しかしコロナ前は人通りが多くて賑わっていたこの辺りも、今じゃ人通りがほとんど無くなって、表通りの店もテナント募集の張り紙も目立つようになってしまった。
コロナが収束しても前のような賑わいは戻ってくるのだろうか。

五稜郭公園前を出て、立つ人こそいなくなったが、相変わらず席はふさがっている。
詰めてもらえば座れるが、ずっと後ろで立っていることにした。
ロングシートで、向かいの人と目が合ってしまうよりは立って外を眺めていた方がいい。

そうしていたら、函館アリーナ前に停車したときにハプニングがあった。

突然「わーーー!」という叫び声と、ガタン!と大きな音がした。
そのあと「キャ〜大丈夫ですか〜」と呼ぶ声。
15時10分。

何かと思って振り返ると入口ドアの前に人だかりがしている。
どうやら電車に乗ろうとした人が滑って転倒したようだ。

運転手も駆け寄る。
頭を強く打ったらしく、意識はあるが動けない様子。

運転手は無線で救急車を呼ぶ。

「このままじゃ寒いから車内へ」
「いや、頭を打ったから動かさない方がいい」

車内は騒然となる。
この場所からは死角になって見えないが、話の内容から70代女性ということだった。

「いま救急車呼んだから、もうすぐ来ますからね」
どうやら買い物して重い荷物を背負って電車に乗ろうとしたら、バランスを崩してひっくり返ったということだった。

駒場車庫からの職員2人も車で駆けつけてきた。

「いま救急車呼んでるけど、消防から出払ってたら来るまで相当かかるかも」
「これ(企業局の車)で病院に運びますか?」
「いや、頭強く打ってるから、素人が動かさない方がいい」

そうこうしているうちに救急車が到着。
15時18分。

「救急車着きましたからね、もう大丈夫ですよ」
「お名前言えますか」

救急隊員はオレンジ色のシートに転倒した女性を手早く包んで救急車へ運び込む。
あとは救急隊員の仕事だ。

私はこの間、ずっと無事を祈ることしか出来なかった。
救急車が発進すると、こちらも発車となる。
15時23分。

「湯の川温泉は奥に停車、719号を先に出してから入庫してください」
無線はそう伝えていた。

後ろは函館アリーナ前で停車中に追いついた719号が続行する。

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 ハプニング停車で後続の電車が追いついた。

15時26分、終点湯の川温泉着。
電車を降りたら、表示幕は『回送』となっていた。
きっとこの電車の折り返しになるはずだった便は、駒場車庫前始発として出庫した電車に置き換えられたんだろう。

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 終点湯の川電停と回送車になった8007号。

ここからホテルからは歩いて10分の距離になる。
1つ手前の湯の川温泉からの方が若干近いようだが、終点湯の川からの方が道が分かりやすい。
産業道路の交差点を過ぎた湯の川という川の沿って歩くとそのホテルに着く。


 ◆ 湯の川観光ホテル 祥苑

今夜のお宿は『湯の川観光ホテル 祥苑』。

数あるホテルの中からここをチョイスしたのは、夕食バイキングに飲み放題が付いているから。
それと1月から函館市内の宿泊代を助成する『はこだて割』という事業が始まった。
これは1人1泊あたりの宿泊代金3,000円以上ならば半額を助成するというもの。

要するに『はこだて割』で宿泊代が半額になるということだ。
そのプランだと、1泊2食飲み放題付きで4,833円となりました。
いや、すばらしい。

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 湯の川観光ホテル 祥苑のエントランス。

はこだて割の効果なのか、フロントは混んでいた。
7〜8分並んで自分の番に。
ここも、住所の分かる身分証明書とワクチン接種証明を提示する。
どうみん割もそうだけど、うっかり持ってくるのを忘れると正規の料金になってしまうので注意したいところ。

キーを渡されて部屋へ。
さ〜て、お邪魔しま〜す。

うお〜!広い!
これ1人で使っていいの!

手前は8畳の和室で、奥がベッドが2台並ぶ洋室になっている変わった造り。それにテーブルとソファー。
やっぱり旅館だなあ、和室だなあ。
去年、シティホテルに泊まる機会があったけど、部屋の広さじゃこっちにはかなわないよ。

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 本館和洋室8畳+ツイン(禁煙)の部屋。

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 奥のベッドルームだけでビジネスのツインくらいの広さがある。

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 夕食券と朝食券、それに饅頭。

窓からの眺めはどうでしょうか。
カーテンを開けると、じゃ〜ん!

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 部屋の窓からは津軽海峡が見える。

おお、窓の外は津軽海峡。
今日はあいにく雪模様だが、晴れていれば彼方に本州が望めそう。

しばらく畳の上でゴロゴロして、5時過ぎに風呂へ行く。
浴衣に着替えて・・・
浴衣がまた妙にちんちくりん。
さっきフロントで、浴衣のサイズが合わなければフロント横に置いてある浴衣を持って行ってくださいと言われていた。

でもいいや。部屋にいるときと風呂に行く時しか着ないし。
大浴場は空いていてゆっくり浸かれた。

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 大浴場の入口。

温泉でたっぷり汗を流してから6時、夕食バイキング会場へ。
は〜、ビールだビール。すっかり喉が渇いたぞ。

手指の消毒と、使い捨てのポリ手袋をして、トレーをもってあれこれ回る。
エビフライにカキフライ、天ぷら、グラタン、ハンバーグ、塩焼きそば、お刺身・・・

大した物はないけどね、子供は喜びそうだけどね、まあこの値段じゃね・・・
ビールのつまみと思えば上等上等

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 夕食バイキング会場。

次はビール。
ビールは全自動のビールサーバーが置いてあって、ここにグラスを置いてボタンを押すとビールが注がれて最後に泡が出てくる仕組み。
初めはどうするのか戸惑うが、グラスを置いてボタンを押せばいいとだけ覚えておきましょう。

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 ボタンを押すだけの全自動ビールサーバー。

さあ、揃いました。
では風呂上がりのビール。
・・・うめ〜〜〜!

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 色々と取ってきたビールのつまみ。

料理は子供だましみたいなものばかりだけど、メインは温泉に入ってビールを飲むことなので、これで上等だよ。
最初に2杯持ってきたけど、これはあっという間にカラになった。
またビールを注いでくる。
ビールのお代わりは空いたグラスは返却場所に置き、新しいグラスを使うルール。これもコロナ対策だ。

見回すとやはりカップルや家族連れが多い。
まだ冬休みということと、『どうみん割』と『はこだて割』で安くなっているから行ってみようという感じ。
昼間見たときも、大型のスーツケースを引いた遠方からという感じの人は少なかった。

あとは私を筆頭とする、男の一人客。
こちらは黙々と食べて飲んでいる。

ビールは5杯目までは数えていたが、あとは何杯飲んだかわからなくなった。

19時10分、バイキングタイム終了。
この頃にはテーブルは19時組の人たちに入れ替わっていた。

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 1階のホールとフロント。

食事の後はロビーや売店をブラブラと見て回る。
『はこだて割』はクーポンは発行されないので、特に買うものもない。
函館だったら、来月出張でまた来るしね。
実は再来月も出張で来るしね。

あんた何しに函館に来たのって?
温泉に入ってビールを飲むためですよ。

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 土産物が並ぶ売店。

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 1階ロビーと幻想的にライトアップされた中庭。

そうだ、ホテルの中にカラオケルームがあったな。
宿泊客は1時間無料で使える。

フロントで「カラオケルームを借りたいんですが」と言うと、奥からルームのキーの入ったカゴを取ってきて渡された。
本来は先にフロントで予約しなければならないようだ。
「1時間経ったらフロントに返してください」

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 2階の娯楽コーナーにある麻雀室とカラオケルーム(奥)。

カラオケもずいぶん久しぶりだ。
最後に唄ったのは5年くらい前かな。

とりあえず十八番(おはこ)の『あずさ2号』を歌ってみる。

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 久々にカラオケで熱唱する(1人だけど)。

1人でカラオケしてもあまり面白くないね。
それでも久々に熱唱したらストレス解消にはなったようだ。
カロリー消費にはあまりならなかったかも。
1時間と言われていたが、3曲ほど歌ったら戻ることにした。

戻る途中にある麻雀室を覗いたら、浴衣を着た4人囲んでいた。
老夫婦と息子2人かな。家族麻雀だね。なんかいいね。
うちの家族じゃ麻雀出来るのが私1人だけなのでちょっと羨ましい。

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 部屋からの夜景。この時期はいさり火は見えない。

部屋に戻って、持ってきた焼酎をお湯割りにしてまた飲み始める。
明日は道南いさりび鉄道で木古内まで往復してから札幌に戻る予定にしている。


posted by pupupukaya at 22/01/30 | Comment(0) | 道南の旅行記

2021年 北東パスで北海道新幹線に乗りに3

おはようございます。
7月17日土曜日。
晴れ。今日も暑くなりそう。

ここはJRイン函館、トレインビューの部屋。

5時17分、キハ40の2両編成が入線。これが函館駅の1番列車。
5時30分、道南いさりび鉄道の2両編成入線。
5時40分、特急北斗1号入線。
5時43分、はこだてライナー入線。

朝から忙しい。
なんせ、窓から駅構内を一望できるので、出入りする列車が気になってしょうがないのだった。

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 5時45分、朝イチの列車が並んだ函館駅。


 ◆ 朝市食堂へ

朝食は、朝6時半からやっている函館朝市の食堂へ行ってみた。
昨日通りかかったときに、『500円丼』の看板を見かけて気になってたからだ。

実は昨日チェックインする際に「今日からバイキングが復活するので朝食はいかがですか」
と聞かれ、値段を訊くと2200円と言うことだった。

1200円くらいなら検討もしただろうが、朝から腹いっぱいというのもちょっとね。
海外旅行とか、出張のときは朝食のバイキングで腹いっぱいにして昼食を食べないというのはよくやるけど。

そんなわけで朝市に行ってみた。

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 函館朝市駅二市場。

その食堂は函館朝市の駅二市場の2階にあって、市場の中にある階段から上がるようだ。
店から声をかけられたら嫌だなと思って中に入ったがそんなことはなかった。

2階の食堂は7時前からお客が結構いたが、空きテーブルもあったのですぐそこに案内された。
500円丼はいくつか種類があるが、一番上にある『五目丼』にした。

出てきた五目丼は甘エビ、まぐろ、サーモン、鮭そぼろ、イクラ、トビッコ、カニ、卵焼きと8品も乗っている。
何千円もする海鮮丼には及ばないが、朝食ならばこれで十分。

それにしても、これに味噌汁と漬物付きで500円(税込み550円)とは大したもんだ。

こんな時期でなければ、朝から行列覚悟で入らなきゃならない店なんだろうな。

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 朝市食堂二番館の五目丼はなんと550円。

店を出てから朝市をちょっと覗いてみる。

爆買いの客で大忙しだったひと頃の活気はどこへやら。
ようやく戻ってきた観光客を相手に細々とやっているという感じだった。

あちこちで中国語が飛び交って、来る客来る客みんな万単位でお買い上げなんてインバウンドバブルは戻ってくるのだろうか。

まあ・・・難しいんじゃなかろうか。

バブルってのはそういうもんだ。

リスクは新型コロナ禍のようなパンデミックだけではない。
どこかの隣国からあったように、反日運動でひっくり返ってしまった例もある。

国ぐるみの舌先三寸で180度変わってしまう特定国からのインバウンド相手の商売なんて、もはやハイリスクビジネスの筆頭でしかない。


しかし、こんな静かな函館朝市ってのも初めて見るよ。
かといって、あんな呼び声でせかされるような朝市なんて御免だな。

せっかくだから何か買おうかと思ったが、観光地価格ということと、これならスーパーで買った方が・・・という思いが先に出てだめだね。

それに私はカニもメロンも興味全くなし。
地元スーパーや、道の駅の野菜直売所を眺めていた方がよほど楽しい。

これを機会に、函館朝市も市民や一般の観光客が楽しめる場所に変わることができるといいのだけれど。

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  12Fラウンジからの眺め。

朝市を一回りしてホテルへ戻って、12階のラウンジで無料のコーヒーを飲んだ。

函館山と港を一望。天気も良いし最高の眺めだった。
これはホテル宿泊者の特権。


 ◆ 函館 8:17 → 長万部 11:16【821D】

出発前に立てた予定では、函館10時55分発森行で出発することにしていたが、1つ早い8時17分発長万部行きで出発することにした。

もう行くところもすることもないこともあるけど、早く帰りたいということもあった。
7時50分にチェックアウトして函館駅へ行く。

3番ホームには1両のキハ40気動車が既に入線していた。

ドアが開いているし、ホームの電光掲示にも表示が出ているので、これが8:17発長万部行らしい。
らしいというのは、列車の側面にも前後にも行先の表記が何もないので。

側面のサボ受はカラのままだし、前面の表示器は『ワンマン』と表示してあるだけ。

ローカル線では経費削減のためサボ(行先標)を省略する列車が増えたが、特急も走る函館本線で、しかも藤城線まわりや砂原線まわりもある路線でこれはないんじゃない?

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 8時17分発森行普通列車は1両編成。

さてこの1両の列車は全国でも北海道くらいしか残っていないと思われる非冷房車。
これに長万部までの約2時間の乗車となる。

天井に並ぶのは扇風機に代わって取り付けられたクールファン。
冷房ではないので、車内の温度を下げる役には立たない。

車内の温度計は、発車直前には30℃を指した。

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 函館始発時の車内。

ほぼボックス席が埋まったほどの乗車率で函館を発車する。
次の五稜郭でも何人か乗ってきて、ロングシートも埋まるほどになった。

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 道南いさりび鉄道の起点となる五稜郭駅。

七飯までに地元客数人が下車するが、乗る人もいるので乗車率は変わらず。
乗客はあまり地元の利用者風にも見えない。

新函館北斗で降りるのかと思ったがまた乗ってきた。

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 新函館北斗駅で貨物列車の交換待ち。

みんなどこまで行くんだろう。
長万部で乗り継いで札幌まで?
まさかね、青春18きっぷは20日から使用開始だし。

と思っていたら、大沼公園で半分くらいの人が降りた。
函館に泊まって大沼へ行く観光客だったのだろう。

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 赤井川駅で特急北斗5号に抜かれる。

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 駒ヶ岳駅手前からきれいに見えた駒ヶ岳。

大沼で特急北斗2号の交換待ち、赤井川では17分停車して北斗5号に追い抜かれ、森で14分停車で北斗4号と交換。
七飯から森までずっと単線区間なので、対向列車が現れたり後続の特急に追いつかれる度に数分停車となる。

もっとも、こちらもその度にホームに出て撮影したりできるので、趣味的には楽しい列車だ。

森からは複線区間になるので、もう数分間停車はない。
穏やかな噴火湾沿いを1両のキハ40が飛ばす。

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 ローカル線の佇まいを残す落部駅。

海沿いの区間は窓から入る風が心地よい。
たまには窓が開く列車もいいものだ。

考えたら、この区間を普通列車で通過することは意外と少なかった。
青春18きっぷを使っていたときは札幌〜函館間に夜行快速『ミッドナイト』があったし、北海道&東日本パスができてからは急行『はまなす』が利用できたからだ。

だからそれらの切符で旅行するときは、今乗っている区間は夜行で移動することがほとんどだった。

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 噴火湾は今日も穏やか。落部〜野田生間。

函館から1時間59分、終点の長万部に到着。
ここからは山線の列車を乗り継いで札幌へ向かうことになるのだが、次の列車まで2時間以上もある。

長万部で一体何をして過ごせばいいんだろうか。

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 長万部駅に到着。


 ◆ 長万部駅とかにめし

長万部駅も北海道新幹線の駅が併設されることになっている。
新幹線駅ができるのは今の側線や機関区跡の空き地となっている場所。

函館側はもう重機が入っていて、移設される新しい車庫ができていた。
駅の東側にある跨線橋から特急北斗の撮影などをしてみる。

新幹線工事が本格化したらここからの眺めも様変わりするんだろう。
新幹線の長万部駅は高架駅になることが決定したので、木古内駅に似た造りになるのだろう。

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 長万部駅を発車する281系札幌行き北斗7号。

さて、新幹線ができると並行在来線となる函館本線の運命はどうなるのか。
函館〜長万部間は第三セクターが引き継ぐことになる。
貨物列車が走り、本州〜道央間の物流の大動脈になっている路線なので廃止にはできない。

次に長万部〜小樽間。
余市〜小樽間は結構利用者がいるので存続する可能性が高いが、長万部〜余市間、特に長万部〜俱知安間は存続は厳しいというのは誰の目にも明らかだ。

ここから左に向かってカーブする函館本線もこれが見納めだろう。

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 左に曲がるのが函館本線、右の真っすぐなのが室蘭本線。

跨線橋から長万部温泉街を通って反対側の跨線橋から今度は北斗8号を写した。

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 長万部駅を発車する函館行き北斗8号。

ぐるっと回ってまた長万部駅に戻る。
昼食は、かにめしにしようと思っていた。


特急北斗に乗って、車内販売員にかにめしの予約をしておくと、長万部を発車してからかにめしを届けてくれたのを思い出す。

この長万部のかにめしを受け取るのが特急北斗乗車の習わしだった。
昔は札幌発が午前中の特急で函館に向かうと、長万部で昼時になるものだった。

長万部はかにめしだけでなく、もりそばってのもあったな。
もりそば党は年寄りが多かった気がする。

このかにめし、長万部駅にキヨスクがあった頃はキヨスクで売っていた。
昔はホームに立売の人がいて、開いたドアから買うこともできた。

その後、ホームで立売する人がいなくなり、キヨスクが閉店してからは駅で買えるものではなくなってしまった模様。

今はどこで買えるかというと、駅の斜め向かいに駅弁直売所があってそこで買うことができる。
買ったかにめしは、隣のイートインコーナーで食べることもできる。

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 駅前にあるかにめし本舗かなや本店の駅弁直売所。

直売所には鮭めしというのもあって一瞬迷ったが、ここは素直にかにめしとした。
1個1180円。ずいぶん高くなったな。

直売所には飲み物は売っていないので脇にある自販か他所の店で調達する必要がある。

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 包装紙と経木の容器が懐かしい『かなやのかにめし』。

長万部のかにめしを食べるのもずいぶん久しぶりだ。
容器が今では絶滅危惧種になった経木なのがうれしい。

さっそくかにめしを口に入れると・・・・

なんか物足りないな。
味が落ちたとかではなく、昔からそうだった。

ご飯が味付けでなく白いご飯だからなのか。物足りなさを補うためにワカメの佃煮があるのか。

快速海峡のお古のシートに腰かけて、これも懐かしさに浸りながらかにめしを頂いた。

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 快速『海峡』で使われたシートが並ぶ自由席。

食べ終わってからもしばらく休んでいると、車でやって来た人も隣の直売所でかにめしを買ってきてここで食べていた。
物珍しさからだろう。

ここの座席は快速海峡で使われたものだが、元々は0系新幹線車両で使われていたもの。
現役当時と同じく背ずりの転換もできるし、ひじ掛け内臓のテーブルも出てくる。

普通列車の待ち合わせだけでなく、車で来てここでかにめしを食べるのもいいんじゃないだろうか。

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 インフォまんべが入居する長万部駅。

駅をぐるっと1周してきて、かにめしを食べてきたら1時間20分ほど時間をつぶすことができた。
あとの40分は駅にいることに。


 ◆ 長万部 13:18 → 倶知安 14:58【2943D】

12時55分に倶知安行の改札が始まった。

ホームに停車しているのはH100型(通称:デクモ)と呼ばれる新型気動車。
去年(2020年)春のダイヤ改正で山線に登場した。

今年のダイヤ改正では宗谷本線の旭川〜名寄間の列車に集中配置となったし、昨日は東室蘭駅でも見かけた。
キハ40形気動車の置き換えということで増備が進んでいる。

あと数年もすればキハ40形は少数派になっているのだろう。

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 長万部からの山線区間はH100型気動車(デクモ)が活躍する。

このデクモに乗るのは実は初めてだったりする。
前からいっぺん乗ってみたかったのだが、わざわざ乗りにいかない限り乗ることはできないので、今回がいい機会だった。

さてその新型車両は・・・

第一印象は、トイレにやたらとスペースを取っているということ。
バリアフリー仕様としなければならないんだろうけど、そこまで必要なんだろうか。

もう一つは、やはり新型車両の宿命なのか、ボックスシートが少ないこと。左右合わせて6区画しかない。
窓側にテーブルもなし。

基本は通勤通学仕様のようだ。

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 デクモの車内。ボックスシートは6区画だけ。

外観はかっこよくても、内装が安っぽい車両はおことわりだ。
そんなわけで、デクモは好んで乗りたい車両とは思わなかった。

同じ新型気動車でも、4年前に山陰本線で乗った車両はよくできていたな。
あと仙石東北ラインの車両に乗った時もクロスシート復活に驚いたくらいだったが、こっちはどうもだめだね。

改札が始まった頃はがら空きだったが、だんだん席が埋まってきて、ロングシートの部分にも座る人が出てきた。

このデクモは電気式気動車という形式で、ディーゼルエンジンで発電機を回した電気でモーターを動かす仕組みらしい。
だからと言って、電車のような静寂さや滑らかな発進というわけではなく、乗っている限り違いはよくわからなかった。

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 黒松内で長万部行き2938Dと交換。

黒松内で上り列車の待ち合わせで10分停車となる。
やって来たのは同じくデクモの1両。

あちらの車内は混んでいて、立ち客の姿もあった。
しかも、小樽や札幌から長万部まで行く列車としては1番列車でもある。
今日は土曜だから一日散歩きっぷの客も多そうだ。

ニセコで何人か乗ってきて倶知安駅の3番ホームに到着。

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 倶知安駅ホームから見る羊蹄山。

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 駅裏は新幹線工事のため移転するホームの建設中。

山線の列車は、いつからか日中は倶知安駅で分断されるようになってしまった。
接続も良いとは言えず、なんでこうなっちゃたんだろう。


 ◆ 倶知安 15:18 → 小樽 16:28【1945D】

小樽行きは2番ホームからの発車で、15時07分に小樽から来た列車の折り返しとなる。
ここからは2両編成なので車内は余裕があるのは何より。

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 小樽から来たデクモ2両編成。折り返し小樽行きとなる。

倶知安から小樽までの区間は3つの峠越えがあり、ここからデクモの本領発揮を期待したいところ。

峠道をグイグイ登って行くところを期待したのだが、小沢を発車してからずいぶん速度が落ちてしまった。

登り20パーミルの連続勾配の稲穂峠越え。
キハ40形ならば30km/h台まで速度が落ちる区間だった。

スマホのアプリで速度を測定してみると50km/h前後を行ったり来たり。そのうち45km/hまで落ちてしまった。
かつてここをキハ150形の列車で通った時、70km/h近くで駆け上っていた記憶がある。

さしものデクモも、急勾配にはお手上げか。
キハ40形の置き換えならばこれで十分だんだろうけど。

峠を下って平坦になると快調に走り、仁木〜余市間では速度は91km/hにも達した。
このあたりは線形も良いし、かつては特急列車も走っていた函館本線。
さすがは腐っても鯛といったところ。

余市で乗ってくる人は多く、新幹線ができても小樽〜余市間は存続することを思わせる。

蘭島からの登り勾配もまた情けない走りっぷりになり塩谷に着く。
やれやれあと1駅かと思ったら、駅舎から続々と人が出てきた。

駅舎からの人はこれも次々と列車に乗りこんできた。
総勢20〜30人くらい?
恰好や話の内容から、登山の人たちのようだ。

通路までの立ち客や車内の喧噪を乗せて終点小樽駅4番ホームに到着。

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 小樽駅に到着。


 ◆ 小樽 16:33 → 札幌 17:07【エアポート172号】

小樽からは快速エアポート172号がすぐの接続になる。
塩谷からの一行も乗り継ぐようだし、混んでいたら次の普通列車にしようと思った。

エアポートの車内は結構混んでいた。
それでも先頭の方まで行くとガラガラだったので、このエアポートに乗ることにした。

小樽からの快速エアポートに乗るのも何年ぶりだろう。
少なくともここ7〜8年は無いなあ。

車窓から石狩湾を眺めていると、あらためてきれいな景色だなあと思った。

思えば、列車内から日本海が見える区間って、ここと宗谷本線の抜海〜南稚内間くらいになってしまった。
江差線の上ノ国〜江差間、留萌本線の留萌〜増毛間、どっちも廃止されちゃったね。
もっと古くは羽幌線というのもあった。

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 朝里〜銭函間は石狩湾を眺めながら。

函館駅を8時17分発の列車で発ってから普通列車を乗り継いで札幌まで戻ってきた。
所要時間は8時間50分の大旅行だった。

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 札幌駅に到着。

さて、北海道&東日本パスは有効日数7日間。
今日は2日目で残りは5日間。

このきっぷはまだまだ使います。
それはまた別の旅行記で近いうちに・・・

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

posted by pupupukaya at 21/07/25 | Comment(0) | 道南の旅行記

2021年 北東パスで北海道新幹線に乗りに2

 ◆ 新青森 12:36 → 新函館北斗 13:33【はやぶさ13号】

はやぶさ13号は、東京を発車すると途中停車駅は大宮、仙台、盛岡、新青森のみで、東京〜新函館北斗間を3時間57分で結ぶ最速列車だ。
新青森〜新函館北斗間もノンストップ57分で結ぶ。

東北・北海道新幹線の看板列車だが、新青森から乗るとガラガラ。
指定席券を持っていない私などからすれば席が選び放題なのはうれしいが。

DSCN2868.JPG
 やっぱりガラガラのはやぶさ13号の車内。

新青森を発車して10分間くらいは右手に青森平野と夏泊半島の山を見ながら行く。
だけどまとまった地上区間はここでおしまい。最初のトンネルに入ってからはもうずっとトンネル区間ばかりになる。

トンネルばかりの乗り物はつまらないなあ。
10年後に予定されている北海道新幹線札幌延伸開業となっても、ここから先は札幌までトンネルばかりになる。

前回乗ったときは車内販売があったけど、今は無し。

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 新青森を出てしばらくの車窓は青森湾と夏泊半島の山々。

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 在来線共用区間の三線軌道。

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 防音壁が途切れた一瞬に函館山が姿を現す。

はやぶさ13号は終点新函館北斗駅へ。
到着列車は12番線に着くようになっていて、在来線ホームへは一旦上へ行ってから下りるということになる。
せっかく便利な構造にしたのに、対面乗り換えを行うのは上り列車の場合だけなのはもったいない。

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 新函館北斗駅到着。


 ◆ 新函館北斗 13:47 → 函館 14:02【はこだてライナー】

新函館北斗から札幌方面へは北斗13号が接続し、それに乗れば明るいうちに札幌に戻れるが、今日は函館に泊まることにしている。

エスカレーターを下りて在来線ホームの1番ホームにはヘッドマークをつけた『はこだてライナー』が停車中。
はやぶさ13号の乗客のうち半分ほどは、はこだてライナーに乗り継ぐ。

車内は札幌の通勤電車でお馴染みのロングシート。
新幹線アクセスというよりは空港アクセス列車という感じの車内。

あまり楽しい電車ではないけど、腰かけて窓からの景色を見ると、ああ北海道だなあ・・・と感じた。

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 新函館北斗から快速『はこだてライナー』に乗り換え。

この列車は新函館北斗〜函館間を途中五稜郭だけ停車で15分間で結ぶ快速列車。
つぎは11分で五稜郭に停車する。

「次は五稜郭です」
「五稜郭公園へおいでの方は次の函館でお降りください」
とアナウンス。

五稜郭へ行くのに五稜郭駅で降りる人が後を絶たないのだろう。

五稜郭とは立派な駅名だが、ここは函館市北部に住む人が使う駅だ。
地元の人は『ごえき』と略す。

そんな駅だがただ1つ利点があって、駅からタクシーで五稜郭に行くのならば五稜郭駅で降りた方が近い。

「まもなく終着、函館につきます」
終点よりも終着が似合う函館駅に着いた。

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 函館駅に到着。

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 『ようこそ函館へ』のホーロー看板。

ホームで下車客を迎える『ようこそ函館へ』の看板は、元々は連絡船桟橋からホームへ向かう通路に設置されていたものと覚えている。
駅舎が新しくなってもこうして旅人を迎えてくれる。


 ◆ 函館市電と函館観光

函館の良いところは市電が走っていること。
私のような路面電車ファンには大変うれしいことだが、観光客にとっても市内の有名観光地は市電で行くことができるので大変便利だ。

さっき青森まで行ってすぐに引き返してきたのは駅からどこへも行きようがないからだった。
青森にも素晴らしい観光地は数多くあるが、そこへ行くには駅からは遠い。

バスに乗れば観光地へは行けるのだが、そうするには路線や時刻を調べなくてはならない。
そう考えれば函館周辺の観光地は鉄道アクセスに恵まれている。

大沼公園など新函館北斗駅から特急だったら1駅10分じゃないか。
トラピスト修道院も渡島当別駅から少し歩くけど最寄り駅だ。

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 市電が走る函館駅前。

函館は数年前から仕事でちょくちょく来るようになったが、プライベートで来るのはいつ以来かなあ。
出張で来ても、もっぱら五稜郭や湯の川のホテルに泊まることばかりなので、駅前もずいぶんご無沙汰だ。

駅前の棒二森屋は閉店して、すっかり寂れた駅前になってしまった。
ここの跡にはイオンが出店して、大型複合施設ができることになっている。
その頃にはまた活気づくのだろうか。

とりあえずは市電で五稜郭に向かう。

DSCN3103.JPG
 函館駅前電停。

函館から市電に乗って五稜郭公園前で降りる。
函館へ来たらまた行きたいところがあって、それでやって来たのだった。

その場所とは、五稜郭電停の交差点に建つシエスタ函館という複合施設。
ここの4Fにある函館コミュニティプラザ Gスクエアに行きたかった。

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 五稜郭公園前電停の角にあるシエスタ函館。

いや別にここに用があるわけではないのだが、ここのカウンターデスクから五稜郭電停の交差点を行き交う電車を見ることができるので。

そんなわけでまたGスクエアにやってきましたよ。

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 4FのGスクエアから見た五稜郭電停。

DSCN3150.JPG
 市電が行きかう交差点を見下ろす。

もうほとんど時間つぶしに来たようなものだけどね。

この炎天下で歩くのも嫌だし。
ここでしばらく電車を眺めて過ごす。

DSCN3167.JPG
 GスクエアのGLAYのレリーフとからくり時計。

ここのGスクエアはフリースペース、椅子とテーブルは自由に使える。飲食も可。
函館市民の憩いの場となっている隠れた名所なのだった。

Gスクエアの椅子に座っていると、地元函館のおばさんの井戸端会議から高校生の進路や恋の相談までいろんな話が聞こえてくる。
ここに1時間もいたら誰だって函館っ子の1人になったような気になる、そんな場所だったりするのだった。

しばらくいて、また市電で駅前に戻る。

DSCN3178.JPG
 五稜郭公園前電停で市電を待つ。

電車は駅前では降りずに十字街まで行ってみた。

せっかくプライベートで函館に来たのだから少しは観光の真似事もしたい。
十字街で電車を降りて、ベイエリアを歩いて駅前のホテルに向かうことにした。

DSCN3204.JPG
 市電と旧丸井今井百貨店(函館市地域交流まちづくりセンター)の建物。

DSCN3211.JPG
 黄色い操車塔が建つ十字街交差点。

コロナ前は観光客だらけだったベイエリアもさすがに今は観光客は少ない。
インバウンド観光客だらけだった頃は近づきたくもなかったが、こうしてブラブラと歩いているといいところだね。

旅行ってのはこういう人が少ないときの方がいいな。
落ち着いた古い町並みの函館を見たければ、今を置いてほかになさそう。
観光客より、下校の高校生の方が目立つくらいだった。

いやしかし暑いな。

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 レンガ造りの金森倉庫と函館山。


 ◆ トレインビューのホテル

今日の宿はJRイン函館。
前からいっぺん泊まってみたかったのだが、この度実現した。

出張じゃこんなホテルに泊まらしてなんてくれないからね。

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 函館駅横にあるJRイン函館。

駅直結というわけにはいかないが、函館駅のすぐ隣。
エントランスは鉄道ホテルらしく、レールのモニュメントと、かつて函館駅に発着していた列車のヘッドマークが飾られているのが楽しい。

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 レールのモニュメントとトレインヘッドマークが出迎え。

特急オプション券は今日中有効だし、特急に乗ればまだ札幌に戻れるのに函館に泊まることにしたのは訳がある。

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 6階シングルルーム函館駅側。

その訳とはこの眺め。
駅を見下ろすトレインビューの部屋に泊まりたかったからだ。

シングル1泊で7200円(素泊まり)は安いものだ。
ここのホテルの良いところは予約時に函館山側と函館駅側の部屋を選択できるところ。

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 窓からは駅構内が見下ろせる。

ここから出入りする列車を、ビールを飲みながら眺めていよう。

部屋に荷物を置くと、さっそくビールとつまみの調達に出る。
ビールは駅横のローソンで仕入れ、つまみはこれも駅前にあるハセガワストアで仕入れた。

ハセガワストアと言えばやきとり弁当。
やきとり弁当とは別にバラのやきとりも6本注文した。

ここの店はコンビニではなくてカウンターだけとなっている。
元々は棒二森屋の地下にあった店がこちらに移ってきたのだろう。

注文を受けてから焼くのはどこも一緒。

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 ハセガワストア函館駅前店。

部屋に戻ってビールを冷蔵庫に入れたら12階の大浴場へ。
ここの大浴場からも駅構内を一望できた。

ひと汗をかいたら風呂上がりのビール。
ああ〜たまらんね。
体には相当悪そうだけど。

やきとりをつまみにサッポロクラシック。
ビールがジョッキの生だったら最高なのだが、贅沢を言い出したらキリがない。

やきとり弁当の味は『たれ』。

個人的にはたれがおすすめです。
なぜかというと、たれとやきとりの脂がしみ込んだ海苔がまた旨いのよ。

あとのやきとりは塩とした。

DSCN3304.JPG
 やきとり弁当中たれ、やきとり6本。ビールはサッポロクラシック。

窓から駅構内を眺めていると意外と頻繁に列車の出入りがある。

やたらと長いホームは、寝台特急北斗星や急行はまなすが発着していた名残り。
快速海峡も最長で12両というのがあった。

函館駅と言えば津軽海峡線の全盛期を思い出してしまう。
快速海峡が特急白鳥に変わり、日本海が消え、北斗星が消え、カシオペアが消え、白鳥も消え、函館駅も寂しくなったなあ。
10年後には北斗も消え、函館駅は三セクの電車駅となる。

函館運輸所の草ぼうぼうの留置線は、かつて快速海峡の50系客車が停まってたっけ。
今は運用を離れた281系気動車が押し込まれていた。

DSCN3311.JPG
 頻繁に列車が出入りする函館駅。

19時を過ぎた頃、夕焼けに誘われるように外に出た。
ビール3本じゃ足りないので買い足しするためでもあった。

歩いてすぐの岸壁から見える夕日に照らされる函館山と摩周丸は絵になる風景だ。

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 夕暮れの函館山と青函連絡船摩周丸。

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 夕焼けの岸壁。

駅のコンビニでビールを買って部屋に戻る。

それからも、だんだん暗くなる黄昏の函館駅を飽きずに眺めていた。

DSCN3448.JPG
 駅構内はすっかり日が暮れた。

DSCN3531.JPG
 函館駅構内の夜景。

23時11分発のはこだてライナーを見送ったら寝ることにした。

明日は普通列車乗り継ぎで札幌へ戻る予定でいる。


posted by pupupukaya at 21/07/25 | Comment(0) | 道南の旅行記
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