4日目 2006年7月12日
◆ワニノに到着、初めての大陸上陸
朝5時、案内係が起こしにあらわれた。船は何時にワニノへ着くのだろう。遅れてホルムスクを出港したので、到着も少し遅くなるのだろうが、まだ着かないのならもう少し眠っていたいし、着くのならば準備をしなくてはならない。
5時半ごろデッキに上がると、相変わらず霧の中。船はずっと停まっているようである。どのあたりなのだろう。遠くのほうからかすかに霧笛が聞こえるので、陸地は近いようだ。なぜこんなところで停船しているのかもわからない。他の乗船客はまだ寝ているみたいだ。
どうしていいのか分からず船室にもどって、ベッドに腰かけてウトウトとする。
ワニノ港は霧の中。
8時ごろ、またデッキに出る。まだ状況は変わらない。寒い、気温は10度くらいか。
部屋にもどると、ラジオ放送が再開している。内容は分からないが、いかにも朝の番組という雰囲気は分かる。
9時過ぎ、係が部屋をノックしてシーツの回収に現れた。交換でビレット(チケット)を返してもらう。
9:20、どこからかジリリリリーンとベルの音がしてエンジンが唸りはじめる。ベルの音はテレグラフ(船橋から機関室に指示を出す機械)の音かもしれない。デッキに上がると霧の中にワニノの港が見える。港の沖でずっと停泊していたようだ。船は後進で動き出す。
船室に戻ると、清掃のため荷物とともに部屋を出される。案内所で部屋の鍵を返す。他の乗客も疲れ切った表情でロビーに座り到着を待っている。
ワニノ港の桟橋。
桟橋に着岸し、船首に近いタラップから外に出たのは10:15であった。ホルムスクから延々と船に乗ること24時間!初めて大陸の地を踏む。他の人のあとに続いて、桟橋を船尾の方に歩いて行く。車両甲板からトラックが何台も出て行く。鉄道の貨車だけでなく、自動車の航送もしている。
歩いた先には、バスが1台停まっていて、全員乗車すると発車する。港の道路を10分ほど走ってワニノ駅に着く。
桟橋の入口に連絡バスが待っていた。
◆港町ワニノを歩く
ワニノの駅舎と幅広のホーム。停まっているのは保線用車両。
1面1線だけのワニノ駅。
連絡船の運航予定が表示された看板。
出港時刻が決定すると窓口に表示される。
ワニノ駅きっぷ売り場。
ワニノ駅の広い待合室は混んでいて、なんとか席を見つけて座る。駅の中は新しくきれいで、カフェや売店、それに有料トイレがあって滞在するには困らないのだが、ここで1日中じっと座っているのはつらいなあ。
しばらくすると待合室にいた人たちが荷物を持って一斉にホームへ出ていく。何かと思って一緒に出てみると、コムソモリスクナアムーレ行の列車が入ってくるところだった。
駅の出口の所に手荷物預かり所を見つける。68p払って荷物を預かってもらう。預かり料にしては高いが、重たい荷物を引きずって町を歩くよりはマシだ。
全部預けて、すっかり手ぶらになったので、ワニノの町を見物してくることに。
ワニノ駅荷物預り所。
駅前の交差点の真ん中に灯台が建つ。
ワニノ駅の駅舎は西欧風の建物で、堂々とした大きい建物なのだが、ホームがやたらと広いので逆に小じんまりとした印象がある。ホームも日本と同じく高床式で、ホームと線路だけ見ていると日本のローカル線の駅と変わりない。
旅客専用駅らしく線路は1本のみ。駅裏の港側には貨物線が何本もある。
ワニノ駅は線路を隔てて街とは反対側にあり、またホームは町よりも低い所にあって、跨線橋が町と駅とを結んでいる。駅前には灯台が建っているのが港町らしい。
駅前の灯台から登っていく広い坂道の通りが、メインストリートらしい。通りにはタクシーがたくさん停まっている。道の両側に建ち並ぶアパートの1階がテナントになっていて、どの店も目立つ看板を掲げている。人通りもあって、町の繁華街となっているようだった。坂を上りきったところに広いロータリーがあって、その向こうには4階建てのワニノの市庁舎が建っている。
駅からの坂道がメインストリート。
駅近くのホテル。
ロータリーで写真を撮ると間違ってフラッシュをたいてしまい、近くにいたオヤジが近づいてきてカメラを見せてくれと言う。デジカメを見せると「ハラショー」と言って去っていった。
どこへも行きようがないので、ロータリーの公園のベンチに座っている。あちこちに花壇があって市民が手入れをしている。
車の通りも少なく、ノンビリとしている。
ワニノ町庁舎。
町中の空き地には牛が放たれていた。
ちょっと町中をそれるとこんな感じ。
貨物列車が通過する。
通りの道端の露店でパンを売っていた。朝から何も口にしていないので、刻んだハムの入ったのと、揚げパンのようなのを2つ買う。
露店で買ったパン。
さっきのロータリーのベンチに座ってパンを食べていると鳩が寄ってくる。揚げパンの中にはひき肉が入っていた。パンをちぎって鳩に投げたりして時を過ごす。それにしても何もない町だ。
本屋があったので入ってみる。以前は本屋もすべて対面販売だったのだが、現在は直接手に持って立ち読みもできるようになった。ハバロフスク市内の詳細な地図を見つけ、これはあとで買いに来ることにする。
駅近くにはホテルやレストランもある。
一応町らしいのは、通り沿いのアパートの密集しているあたりだけで、そのほかは大陸らしい広々とした光景が広がる。
自由市場を見つけ、歩いて見る。赤い野いちごのほかは特に印象に残るものはない。食料よりも洋服など衣料品を売っている店の方が多かった。
ワニノ駅近くの自由市場。
ワニノ駅近くの自由市場。
ワニノの市場。これは靴屋。
市場の洋服屋。
市場のそばにあるアケアンという店に入ってみると、ここもセルフ方式のスーパーだった。セルフ方式もロシアでは標準になりつつあるようだ。マロージナエ(アイス)と水のペットボトルをレジでお金を払って買う。
アイスを食べようと棒をもって袋から出したとたん、棒から崩れ落ちそうになり慌てて袋に戻す。アイスキャンデーを食べるときも袋から出さないでかじったほうが良さそうだ。
もう行くところもないので、また駅に戻り、待合室で過ごすことにする。