白夜―――
この言葉にずっとあこがれや畏れにも近いイメージを抱いていた。
もともと私は北方志向の人間ということもあって、いつか白夜の国へ行ってみたいと思っていた。
北極圏とは、北緯66度33分以北の地域を指す。この北極圏では、夏至の前後1か月間は夜中でも太陽が沈まない白夜の季節を迎える。
白夜の太陽。ナルビクにて筆者撮影。
旅の最初は去年(2015年)の秋ごろまで遡るのかもしれない。
そのころ来年は海外旅行に行くような気がしていた。お金もないのに。
いろいろ検討しているとだんだん欲が出てくる。どうせならまだ行ったことが無い北欧に行きたくなった。
まずは往復の航空券の確保である。5月下旬から6月上旬を出発日としてあれこれ検索してみた。航空会社はANAかJAL。短い日程を有効に使える直行便が良かった。乗継があるとどうしても1日余計にかかってしまうからだ。あと、マイレージが欲しいというセコい考えでもあった。
検索してみると、まずは5月下旬発オスロ往復でサーチャージ込み10〜12万円台。成田からオスロまで直行便は無いが意外と安い。どういうわけか国際線の運賃は日によって違う。
↑ トーマスクックヨーロッパ版。4年前に使用した物だが計画を立てる際は紙の時刻表は便利。
航空券を買う前に、大まかな計画は立てる必要がある。今回の一番の目的は白夜を体験しようというものなので、北極圏まで行かなければならない。ヨーロッパ最北端の鉄道はノルウェーのナルビクという町まで伸びている。北緯68度、北極圏に位置する町である。
オスロからこの町へ鉄道で向かうには、直通の鉄道が無いので、ボードーという町まで鉄道で行き、そこからバスで行くことになる。
ナルビクへの鉄道はスウェーデン側から伸びていて、首都ストックホルムからナルビクまで直通する夜行列車があった。
これでルートは決まった。
ところがよく調べるともう1本夜行列車があって、こちらは途中のボーデンで乗換えとなりナルビク着も遅くなるが、個室寝台車が連結されているのが大きな魅力であった。ナルビク直通列車は寝台車こそ連結されているが、おそらく相部屋だろうし窮屈な思いをするのなら1人部屋の個室寝台のほうがいい。ということでボーデン乗換の列車の方で行くことにした。この列車はストックホルムからも乗車できるが、ヨーテボリという所が始発駅となっている。どうせ乗るならば始発駅からがいい。ということで飛行機の行先はヨーテボリとしたわけである。
2月初めには旅行のルートがほぼ確定した。ということで往復の航空券を買うことにした。あれこれ検索して調べた結果、JALが一番安かった。札幌発着で、行きは成田からヘルシンキ乗継でスウェーデンのヨーテボリまで。帰りはノルウェーのオスロ発で行きと同じくヘルシンキ乗継で中部空港に帰ってくるというルートになる。初日のヨーテボリ着時刻が16:25着と申し分ない。
現地の到着地と出発地が異なるのは『オープンジョー』と呼ばれる形態で、これも往復航空券と同じように正規割引運賃の適用がされる。いまではこんな航空券の買い方も覚えた。運賃名称は『JALエコノミースペシャル 共同事業2周年』。
成田出発日が5月26日、オスロ出発日が6月2日の組み合わせが一番安かった。出発日が木曜になり、余計に仕事を休む必要があるが、まあ勘弁してもらおう。
JALのホームページから直接予約と購入をおこなった。支払額はサーチャージ、空港諸税全て含めて98,850円、払い戻しは不可。
まだ3か月以上も先のことでどうなるかわからないが、すっかり行く気満々だった。今にして思えば、随分と思い切った買い物だったと自分でも呆れる。
一種の賭けともいえる。
↑ JALの予約画面。
つぎは鉄道の予約もしておきたい。
夜行列車の予約・チケット購入もSJ(スウェーデン国鉄)のホームページから直接おこなうことが出来る。支払はクレジットカードの番号を入力して送信すれば決済となる。
これも早めに購入すれば安くなるが、変更や払い戻しは不可のようだ。ヨーテボリからナルビクまで個室寝台車利用で片道1,487スウェーデンクローネだった。日本円で20,050円(後日クレジットカードの請求額)。金額を見てこれは安すぎないか?と疑った。もしかしたらこれは寝台料金だけで乗車券は別に買わなければならないのかもしれない。
しかし、PDFファイルのチケットを添付して送られてきたスウェーデン語のメールには、印刷して身分証明書と一緒に持つようにというような意味のことしか書かれていなかった。
良く分からないが、現時点ではこれを信じるしかなかった。
↑ スウェーデン国鉄の公式HPから予約する。
↑ HPは基本スウェーデン語か英語かだが、プラウザの翻訳機能を使えばこの通り。
ナルビクからはノルウェー国内を南下し、オスロへ向かうこととする。ナルビクからノルウェー鉄道最北のボードーまでは鉄道が無く、バスで移動することになる。このバス路線の時刻はトーマスクック時刻表にも載っている。
色々調べているうちに、ロフォーテン諸島というところの景色が素晴らしいらしい。せっかくナルビクまで来てただ戻るだけというのは物足りない。どうせならばロフォーテンの先端にあるÅ(オー)という町まで行ってみたい。
ナルビクからバスの時刻を調べたが、そのためにはもう2泊ほど追加する必要がありそうだった。途中にスボルベルという町があって、そこまでならばナルビクからバスで4時間程で行ける。そこから鉄道のあるボードーまで高速船で3時間半で行けることがわかった。
中途半端な感じがしなくはないが、スボルベルでの1泊を追加した。そのかわり、ボードーからオスロまでは夜行列車での移動とし、オスロでは1泊のみとなってしまった。
↑ ノルウェー国鉄の予約ページ。
ボードーからオスロまでの鉄道チケットもNSB(ノルウェー国鉄)のホームページから直接購入することが出来る。座席と寝台があって、どっちにしようかと迷ったが、寝台車利用だと900ノルウェークローネ(約1万2〜3千円)が追加でかかるため、節約のために座席車とした。
これも変更・払い戻し不可の割引運賃で、なんと349ノルウェークローネ。
日本円で4,724円――って安すぎ。大丈夫なのか本当に。
ボードーからオスロまでの距離は1,262qもあり、これは東京から札幌までのJRでのキロ数に匹敵する距離になる。本当にこの値段で乗れるのだったらLCCも格安ツアーバスもびっくりの値段だ。
予約・購入してから数日後にそれぞれPDFファイルのチケットがメール添付で送られてきた。これを自分で印刷して直接列車に乗車すればよいらしい。
↑ 左がスウェーデン国鉄、右がノルウェー国鉄のチケット。
つぎにすべきことは宿の予約である。利用したのはエクスペディアとbooking.com。どちらもインターネットからの予約になる。
飛行機と鉄道の行程がほぼ確定したので、ホテルも早めに予約することにした。
まず着いた日のヨーテボリが1泊。続いてナルビクが2泊、スボルベル1泊、最終のオスロが1泊となる。北欧は物価が高いと言われているだけあってさすがにホテル代も高い。普通にバス・トイレ付きホテルだと軒並み1万円以上となる。地方のナルビクやスボルベルのホテルが高いのは仕方がないが、ヨーテボリとオスロはホテルのランクを下げると1万円以内のホテルが見つかった。そのかわり、バス・トイレ共同だが、1人旅だし問題ない。それ以下だと相部屋のドミトリーになってしまうが、さすがにそれは勘弁してである。
白夜の時期で混んでいるのだろうか、ナルビクのホテルがなかなか見つからない。値段がバカ高いか、町から思い切り遠いかどちらかになってしまう。それでも根気よく探していたら良いホテルが見つかった。
3月初め頃には旅行中必要な予約はすべて終えた。
行程も確定して、以下のようになった。
2016年北欧旅行の日程
| 日付 | 行程 |
1日目 | 5/26 | 新千歳空港〜成田空港〜ヘルシンキ空港〜ヨーテボリ空港〜ホテル |
2日目 | 5/27 | ヨーテボリ観光 夕刻ヨーテボリ駅から列車乗車 |
3日目 | 5/28 | 〜ボーデン駅(乗換)〜ナルビク駅〜ホテルへ |
4日目 | 5/29 | ナルビク観光 |
5日目 | 5/30 | ナルビク〜スボルベル〜ホテルへ |
6日目 | 5/31 | スボルベル〜ボードー〜トロンハイム(乗換)〜夜行列車 |
7日目 | 6/1 | 夜行列車でオスロ到着 オスロ観光 ホテルへ |
8日目 | 6/2 | オスロ〜オスロ空港〜ヘルシンキ空港〜 |
9日目 | 6/3 | 〜中部空港〜新千歳空港 |
2016年北欧旅行のルートマップ
キャンセルできるのはホテルだけとなった。一部のホテルを除いて既に支払済みとなっている。
無事出発できるのだろうか、天気は大丈夫だろうか。もう運を天に任せるしかない。
旅行は計画を練っているうちが一番楽しい。今回は早めにチケットを確保しておいたこともあって、現地の下調べをする時間はたっぷりあった。毎日出発する日を待ち遠しく過ごした。
それから3か月近く経ち、無事に仕事の休みも取れて、何事もなく出発の日を迎えることになった。
それでは本文、第1回目からどうぞ。↓↓↓