2016年白夜・北欧旅行記8 ナルビクその2

ナルビクの中心部から歩くこと50分、ベイスフィヨルドの橋のたもとまでやってきた。

おおー、フィヨルドだ。
暑い中テクテク歩いてきた甲斐があった。

道路の脇から海辺へ下りてみる。ここも引き潮で、海藻がびっしりと覆っていた。

フィヨルドに架かる橋はベイスフィヨルド橋というらしい(Wikiより)。下を船が通るためか、真ん中部分が盛り上がった太鼓橋になっている。

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 峡谷に静かに水をたたえたベイスフィヨルド。

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 国道E6号線のベイスフィヨルド橋が架かる。

橋は車道と歩道が区切られているのだが、歩道の方は排水溝の蓋のような格子の鋼板になっていて下が丸見えになっている。
私は高所恐怖症。戻ろうかと思ったが、落ちるはずはないと自分に言い聞かせて進むことにした。

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 ベイスフィヨルド橋。

落ちることは絶対にないが、やっぱり怖い。しかも車が通るたびに橋が揺れる。足元から下の水面がよく見える。小物など落としたらそのまま海中へドボンだ。

しかし、橋の上からの眺めはまた格別だった。

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 ベイスフィヨルド橋からの眺め。

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 U字型にえぐれた氷河地形。

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 橋の下をボートが通り過ぎる。

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 歩道は格子の隙間から下がスケスケ。

歩道を自転車が通り過ぎる。ロードレーサーのような下を向いて乗るタイプで、颯爽と行ってしまったが怖くないのだろうか。

橋を渡った向こうには何もなさそうだ。真ん中まで行ったところで引き返す。

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 交差点とガソリンスタンド。

橋の手前にある交差点にガソリンスタンドがあって、コンビニも併設している。コンビニがガソリンスタンドもやっているというべきか。
日曜日だが営業している。飲み物を買おう。これはありがたいと店に入る。ガソリン以外の人も結構来ていた。

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 ガソリンスタンドにあるコンビニ。サークルKという店だが日本のとは関係あるのかな。

店内にはちょっとしたイートインコーナーがあった。ここで休ませてもらおう。

ところが値段を見てびっくり。コーラ1本31Kr(約420円)昨日スーパーで買った同じものは21Krだったから、コンビニは高い。だから日曜でも営業しているのか。

それでも涼しい店内で冷たいコーラを飲んだら生き返った。カフェにでも入ったと思えば安いもんだ。

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 31NOK(420円)のコーラ。

またテクテクと歩いてナルビクの中心部へと戻る。

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 ナルビクの町に戻ってきた。

こんどは、昨日は素通りするだけだったナルビク駅を見てきた。
駅は中心部を通り過ぎて脇道に入り、坂を下ったところにぽつんとある。昨日と同じようにひと気が無い。

ホームには15:12発のストックホルム行きナイトトレインが停車していた。いまは14:40だからそろそろ列車に乗る人が集まっても良さそうなものだが、待合室には2組の乗客らしき人がいるだけだった。

駅舎は立派な2階建てだが、中は小さい待合室があるだけ。きっぷりばの窓口もあるが閉まっている。そのかわりなのか、SJの券売機が1台あった。
かつて観光案内所が入居していた部屋は空き部屋になっていて、移転しましたと言う旨の張り紙があった。

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 赤錆色の鉄鉱石貨車。

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 坂を下った場所にあるナルビク駅。

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 ナルビク駅の駅舎。

停車中の列車は先頭が機関車で客車7両、うち2両はルーレオ行きと表示してある。最後尾はビストロカーだった。機関車も客車もすべてスウェーデンの車両。
車内に人影はない。

ナルビク駅を発車する便はこの1本前の10:38発ルーレオ行きといま停車中の2本だけ。数少ない貴重な列車のはずだが、この人の少なさは寂しすぎる。
観光シーズンいがいはいつもこんな感じなのだろうか。

ナルビク発の列車は、すぐに国境を越えてしまう。基本スウェーデン側の列車なので地元の利用はほとんど無いだろうし、観光客や旅行客が乗客のメインなのだろう。なによりこの鉄道の主役は鉄鉱石であって、旅客輸送は副業みたいなものである。とっくに貨物専用鉄道となっていてもおかしくない。それでも律儀に旅客輸送を行っているのは、さすがヨーロッパというべきか。

そういえば町中を歩いていたが、観光や旅行者のような人はほとんど見かけなかった。もちろん日本人も全く見ていない。ナルビクは鉄道の終点というだけで、特に見どころがあるわけではなかった。ロフォーテン諸島や、さらに北のトロムソ、そのさらに北のノールカップなどがあり、旅行者は素通りする町なのかもしれない。

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 ストックホルム行ナイトトレインが停車中。

ホームに石碑に北緯68°27′6″とあった。今日の陽気で忘れかけていたが、まぎれもなくここは北極圏の地。
この石碑にはスウェーデン王家の紋章の一部と、開通当時のスウェーデン王だったオスカル2世のサインが刻まれている。

駅構内だけは、どこもスウェーデンだった。

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 オーフォート鉄道記念碑(Minnebauta Ofotbanen)が立つ。

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 1903年ナルビクの鉄道開通時に使われていた蒸気機関車、ビフレスト号。

また戦争博物館前の広場に戻ってきた。広場には噴水があって、町の人が噴水のまわりで日向ぼっこしている。のんびりした町だ。
広場にはオープンテラスのカフェがあって、ビールを飲んでいる人もいる。ここで一杯飲んで行こうかと思ったが、高そうなのでやめた。

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 戦争博物館前の広場。

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 噴水のまわりは憩いの場みたいになっている。

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 戦争博物館向かいにあるシティーセンター。ツーリストインフォメーションや図書館が入っている。

広場の向かいに新しい建物があって、ツーリストインフォメーションの看板が見えた。もうどこにも行く気はないが、中に入ってみる。無料のパンフレットや地図をいくつかもらってきた。

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 ツーリストインフォメーション(観光案内所)。

日曜日はどこも休業ということは予想はしていたが、ここまで徹底しているとは思わなかった。
営業していたのはガソリンスタンド兼コンビニとコンゲンス通りにあるカフェ兼キオスク1軒だけ。
もしノルウェーを旅行するのなら、必要なものは土曜日のうちに買っておいたほうがいい。

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 ナルビク中心部、コンゲンス通り(Kongensgate)の商店街。

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 坂道を登ってホテルへ戻る。

3時半ごろホテルに戻ってきた。
昨日とは打って変わって人がいない。今日は空室だらけのようだ。まだドアをあけっぱなしで掃除もまだの部屋も多くあった。

部屋に戻ると掃除されていない。タオルも使ったままになっていた。『掃除してください』の札を出しておかないと掃除してくれないのだろうか。

まあ、ええわ。

洗面所の水が冷たくて気持ち良い。地球の歩き方によると北欧ではほとんどの場所で水道水が飲めると書いてある。それを信じて飲んでみた。ゴクゴク・・・、冷たくてうまい。ぬるいミネラルウォーターよりもずっと良い。

体中汗だらけなのでシャワーを浴びる。ついでに洗濯もした。

夕食はホテルのレストランでディナービュッフェをやっているのでそこで食べることにした。

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 レストランは貸切状態だった。

ビュッフェスタイルなのでセルフサービスになる。言葉のやり取りが面倒な海外では、この方がありがたい。
料理は選ぶほど種類は無かった。
デミグラスソースに浸ったステーキと付け合せ、サラダ、スープ、パンで全部だった。

ビールは別料金。カウンターで頼むと、缶ビールを出してグラスに注いで渡された。

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 ディナービュッフェの料理。

冷たいビールがうまい。あったかいメシがうまい。
ペロッと平らげた。

この先も多分まともな食生活では無いと思うので、これが最後のまともな夕食かもしれない。
お会計はディナービュッフェ189Kr、ビール85Krの計274Kr(3,725円)。

ホテルの食事とはいえ、やっぱり外食は高いね。

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 ビールが死ぬほど美味く感じた。

今日こそは白夜を体験するべく、午前0時まで起きていよう。

本当に体験するならば一晩中起きているのが一番いいのだろうが、明日の行動にも差し支えるし、そこまでする元気もない。
せめて午前0時の太陽を見て、白夜の体験とすることにしたのだ。

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 20:27、まだ午後4時くらいの感覚。

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 20:58、窓から容赦なく日が差し込む。

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 部屋のカーテンは白夜対策(?)で、遮光カーテンになっている。

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 22:02、ようやく日が傾いてきた。

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 23:02、日が屋根の影になって見えなくなった。

24時を回った頃、外に出てみる。北側の空は夕焼けになっていた。
太陽は水平線の下には沈まないはずだが、オーフォート湾の向こうにそびえる山々の影に隠れてしまっていた。

もっと夏至に近い時期ならば沈まない太陽が見られたかもしれない。
それでも、深夜0時でも昼間のように明るいことが確認できたので、これで良しとする。

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 0:08、ホテル向かいのスキー場から。太陽は山の影に隠れてしまったようだ。

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 白夜の証拠として腕時計を撮った。あまり意味はないが・・・

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 0:20、夕焼け空。

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 山の上のほうは日が当たっている。山頂では太陽が見られるのだろう。

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 0:27、日は隠れても普通に明るい。

午前0時をまたぎ、これで白夜の体験となった。

ここは文明社会なので、明るかろうと暗かろうと時計に従って生活している。昼間のように明るいが、この時間の町はほとんどの活動を終えているし、もう寝ている人が多いだろう。
昔、時計が無かった頃はどうしていたのだろう。いつ寝ていたのだろうか。

今は深夜0時すぎということは分かっているが、どうもまだ夕方くらいの感覚が抜けない。
ホテルの部屋に一人で過ごしていると、時が止まっているかのような感覚になる。
時が止まっているのに時計の針だけが進んでいるような感じ。

白夜の感覚を表現するとしたらこうなる。
昼間に部屋にいて、ふと時計を見るとなぜか夜中の時刻を指していた、というような感じ。

疲れているし、もう寝ることにします。

posted by pupupukaya at 16/08/07 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記7 ナルビクその1

 2016年5月29日 ナルビク ベストウェスタン・ナルビクホテル〜

目覚めると7時半だった。旅行中にしては朝寝坊だが、今日は丸一日ナルビクに滞在するのでゆっくりできる。

8時近くに1階レストランの朝食会場へ。結構混んでいた。昨日もロビーなどで見かけたが、子供連れの家族が多い。夏休みには早すぎるし、こっちでは土日は家族連れで旅行するのが一般的なのだろうか。

朝食はホットビュッフェスタイルで、メインはスクランブルエッグやベーコン、ソーセージなど。スモークサーモンのオイル漬けが唯一ノルウェーらしさを出していた。さすがにパンはおいしい。

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 ホテルの朝食。今回の旅行で初めてまともな食事かも知れない。

さて、今日はナルビク観光ということにしていたが、じつはどこへも行きようがなかった。
地球の歩き方に載っているナルビクの観光地を挙げると、戦争博物館、オフォーテン博物館、ファルゲネス山に登るナルビクロープウェイとなっている。

ところが出発前に調べていると戦争博物館とオフォーテン博物館は6月までは日曜休館、ロープウェイは夏季は6〜8月だけの営業となっていた。
しかも店は日曜日はことごとく休みである。こんな小さな町で丸一日どうやって過ごそうか。

そもそもどうしてナルビクで2泊としたかというと、最北の白夜の地で過ごしてみたかったことと、旅程の中程に予備日を設けるというのが主な目的だった。
ヨーロッパを旅したことがある人ならわかるだろうが、日曜日は街中の店はどこも休みという経験をしたことがあると思う。そんなことから、日曜日はできれば移動日に当てたかった。しかし、飛行機や鉄道の日程から、どうしてもナルビク滞在は日曜日となってしまった。

外は快晴。いつまでもホテルの部屋にいたら勿体ない。ホテルのロビーに置いてあったナルビクのタウンマップや地球の歩き方を見ながら、ナルビクの町を歩いてこようと思った。

ホテルを出たのは9時半、まず向かうのはタウンマップにVewpointとある場所。ホテル近くから道が続いているので行ってみることにした。
坂道を20分くらい歩くと茶色い建物が見えてきた。
見晴らしの良いレストランでもあるのかと思ったが、それらしき入口も無い倉庫みたいな建物。

Taraldsvik kraftverkと看板にあるが、何のことかわからなかった。後で調べると水力発電所の建物とのことだった。

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 タラルドシビック発電所(Taraldsvik kraftverk)。

建物の前には駐車場があって車が何台かあるが、人はだれもいない。ベンチに囲まれた小さな展望台があった。
標高200mほどの高さだが、眺めは悪くない。ナルビクの町が一望でき、フィヨルドやまだ雪をかぶったロフォーテンの山々が見えた。

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 小さな展望台があった。

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 発電所の展望台からの眺め。

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 ナルビク駅が見えた。

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 北側に見えるフィヨルド。

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 発電所と展望台の案内看板。

これも後で分かったが、毎日13時と21時には発電所の建物から高さ75mまで噴き上げる噴水が見られるそうだ。知らなかったので完璧に見逃したが、もしこれを読まれてナルビクに行く方がいたら、行ってみてはいかがでしょうか。

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 とりあえず市内を歩く。

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 『地球の歩き方』に掲載のナルビクの地図。『岩絵』と大きくあるのは・・・

展望台への道は途中まで住宅地の中の道となっている。下り道で、庭先に停めてある車を見ながら歩いた。ざっと見た感じでは日本車はあるけど少数派、やはりドイツ車が多い。あとボルボ。ヒュンダイも見かけた。

ずっと道を下って、町の中心部まで歩く。続いて向かうのは地図に『岩絵』と記してある場所。
なんだかアイテムを探して町を歩くドラクエの主人公のようになってきた。

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 ナルビクの町中

地図を見ながら岩絵目指して歩く。日差しがきつい、暑い。長袖を着てきたのは失敗だった。Tシャツ1枚でも良かったくらいだ。

中心部を抜けて、だんだん住宅地となってくる。地図の示す方向へ歩いて行くと、住宅地の終わりで行止りになった。
犬の散歩をしていた人とすれ違う。気のせいか不審そうに見られた気がした。

地図ではここで合っているんだよな。とりあえず進んでみると、崖のようになっていて、斜面を下って行く踏み分け道があった。引き返す気も起こらず、下って行く。

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 この先に岩絵があるらしいのだが。

地図に大きく『岩絵』とあるくらいなので、公園になっていて崖にアートっぽいのが描かれているというのをイメージしていた。
実際は斜面に露出した岩肌に、動物らしき形の線が彫られているだけのもの。ただ、それだけ。

立て看板があるので、これが岩絵で間違いないようだ。

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 茂みの中にあった岩絵(Helleristing)。歴史的には貴重なのだろうが・・・

看板によると、これはシカの絵で今から5000年前に描かれたものだそう。
考古学的には貴重なものなのだろうが、私では価値はわからなかった。

そのまま下ると再び住宅地が現れた。道なりに行くと海岸沿いに出た。

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 町の北側にある入り江。

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 ヨットハーバー。日曜だが誰もいない。

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 カラフルな住宅が並ぶ。

町の北側の海岸に沿って歩いて行けば、また中心部に戻れるようだ。

ヨットハーバーや、丘の斜面に並ぶカラフルな家々を見ていると、ここが北極圏とはとても思えない。
しかし、目の前の海はフィヨルドで、遠くにはまだ真っ白な山々が見えていた。

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 波ひとつない静かな入り江。

道から脇に入り、海辺まで行ってみる。海岸は岩場で、潮が引いてびっしりと海藻が覆っている。

岩に腰かけて、海を見ながらしばらくぼーっとしていた。
海面はベタ凪、波音もなく静か。

飛行機の通り道なのか、飛行機雲が現れては消えて行く。

このあともナルビクの町をあちこち歩き回るのだが、この町の一番の印象は
・・・平和だなあ。

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 現われては消える飛行機雲。

また歩いて中心部に戻ることにする。

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 小さな入り江に並ぶ漁師小屋。ミニチュア風にイタズラしてみた。

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 漁師小屋とフィヨルドの海。

途中にあったナルビクスタジアムという競技場では、たくさん人が集まっている。どうやら子供のサッカーの試合がおこなわれている。バスが何台か停まっているし、おそらく全国大会みたいなものだろう。

なるほど、ホテルに子供連れがやたらと多かった理由がこれでわかった。ナルビクのホテルが取りづらかったのも納得できた。

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 1925年建築、石造りのナルビク教会。

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 鉄鉱石貨車を牽いた貨物列車がやってきた。

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 貨車68両、8600トンを牽引してスカンジナビア山脈を越える、IORE形と呼ばれる出力10,800kwのマンモス機関車。

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 戦争博物館前の広場。

戦争博物館のある広場まで来た。ぐるっとひと回りしてきたことになる。

歩いている途中にショッピングセンターやスーパーを見かけたが、すべて閉まっていた。それどころか、店も飲食店も一部以外はほとんど閉まっている。日曜日は休業というのが徹底している。

道行く人もあまりいない。ノルウェーの人は日曜日は家から出ないのだろうか。
お金は使わなくて済むだろうな。

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 店は全てクローズ、人通りもほとんどない日曜日。

このままホテルに戻ろうかとも考えたが、地図を見ていたら、中心部から3〜4キロほど行ったところにベイスフィヨルドというのがある。

バスもあるようだが、歩いて行けない距離ではない。ノルウェーといえば誰もがフィヨルドと答えるくらいで、せっかくだからフィヨルドのひとつも見ておきたい。時間はたっぷりとある。

ということで、また歩き始めた。

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 国道E6号を歩く。左の建物はオフォーテン博物館。

暑い。炎天下というほどではないが、雲ひとつない快晴で日光が容赦なく照らす。しかし、日影に入ると涼しいのは北国らしかった。

町の人はみんな夏の格好をしている。長袖姿など自分くらいだった。
昨日列車の窓から見た国境付近の寒々とした風景がウソのようだった。

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 ナルビクの町の南側にある船着場。

途中にあった船着場から道路に並行して使われなくなったレールが延びている。
おおー、廃線跡だ!
テンションが上がる。

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 船着場付近の廃線跡。

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 道路に沿ってレールが続く。

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 インラインスケーターが抜いて行った。

道路に沿っている廃線跡はどこまで続いているのかわからないので、途中から歩道を歩くことにした。

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 踏切からナルビクの町を見る。

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 海沿いにあるファゲルネス貨物駅。ナルビク駅から3kmほど南にあるオーフォート鉄道の終点。

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 オスロからの貨物列車もスウェーデン経由でここに着く。

ひたすらテクテク歩いた。
50分くらいでベイスフィヨルドの橋の所に着いた。

posted by pupupukaya at 16/08/07 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記6 北極圏の鉄道、ナルビクまで

■ボーデン〜ナルビク IC96列車のルート
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ナルビク行の列車に乗る前にルーレオとナルビクを結ぶ鉄道の説明を少し。

この路線はスウェーデン側がマルムバナン(鉄鉱石鉄道の意)、ノルウェー側がオフォーテン鉄道と呼ばれている。
人口希薄と思われるこの北極圏の鉄道が建設されたのは、キルナ鉱山で産出される鉄鉱石を港まで輸送する目的であった。全通は1902年とかなり古い、和暦では明治35年だ。

スカンジナビア半島の山脈を越えてノルウェー側のナルビクまで建設されたのは、不凍港を求めてのことだった。ルーレオ港が冬季は結氷するのに対し、温かいメキシコ湾流の北上するナルビク港は凍らない。
第二次世界大戦で、ナチスドイツがノルウェーに侵攻したのは、この鉄道と鉄鉱石が目的のひとつだった。

キルナ鉱山の鉄鉱石は枯れることなく、現在でも産出し続けていて、鉄鉱石輸送の使命は変わることが無い。
地図だけ見ていると、最果てのローカル線というイメージだが、単線ながらも電化され、軸重30トンという大重量の鉄鉱石列車が行き交う大幹線である。

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 ナルビク行の客車。

これから乗るIC96列車は、スウェーデンとノルウェーを結ぶ国際列車であって、InterCity(インターシティ)という列車種別もあてがわれている。
ところが、入線してきた列車は、機関車が先頭で、53号車、52号車、51号車の順で3両編成。オール2等のモノクラスとずいぶんと寂しい編成だった。
最北端を行くローカル列車らしいといえば、よく似合う気もするが。

ボーデンから乗る列車もチケットに座席番号が書いてある。指定されているのは52号車で3両編成の真ん中の車両だった。
ホームで待っていた人たちと客車に乗り込む。
既に意外と人が乗っていた。ほとんどの人は始発駅のルーレオからだろう。車内はローカル急行列車といった雰囲気。

自分の席は進行方向を向いた窓側の席。通路側の席には先客がいた。ほかに空いている所もあるのだが、声をかけてとりあえず窓側の席に座らせてもらう。相席は窮屈だな。

指定席が窓側だったのはうれしいが、窓は煤か鉄錆みたいのがこびり付いて汚い。窓越しに写真を撮ると、景色も茶色く変色している。
そこは日本製の優秀なカメラで、汚れの少ない部分にレンズを押し当てて写し、あとで画像処理すると様になる写真になった。

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 窓は煤がこびり付いて汚い。

発車すると車掌が検札にきた。昨日寝台列車で見せたのと同じチケットを出す。また見るだけで返してくれた。寝台列車でもそうだったが、また女性車掌だった。

しばらくすると隣の相席の客が荷物を持ってどこかへ行ってしまった。やはり座席指定の人ではなかったのか。

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 2人掛け固定クロスシートが並ぶ車内の座席。

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各席にはコンセントが付く。

列車のスピードは測ってみると速くて135km/hくらい。カーブの手前に差し掛かるとザーーーッとものすごい音を立ててブレーキがかかり、車輪を軋ませてカーブを通過する。なんだか爆走と言いたくなるような走りっぷりだ。

車窓は丘陵地帯に白樺と針葉樹の林がどこまでも続く単調な風景。北海道と似たようだなと思うが、北海道でこんな車窓を見られるのは、花咲線や宗谷本線の末端区間くらいだろう。

12:13、信号場で運転停車。日本みたいに案内放送があるわけではないが、線路が複線になって駅ではない所で停車したのですぐにわかる。
しばらくして貨物列車とすれ違った。貨車の数を試しに数えてみたら、なんと60両。全部鉄鉱石の貨車だった。

ボーデンを発車して最初の停車駅がムリエク(Murjek )という駅。ボーデンからの所用時間は1時間1分、距離は87kmになる。
この駅を発車してしばらく行くと北緯66度33分の北極線を通過するはずだ。

北極線といっても緯度上だけの話で、実際にそんな線があるわけではない。出発前にいろいろ調べてはきたが、徐行して機関車が汽笛を鳴らすとか、白い石のサークルがあるということだった。
ずっと目を凝らして車窓を見ていたが、それらしいものは見つからない。行けども行けども無人の、荒涼とした景色が続くばかり。いつの間にか北極圏に入ったようだ。

しばらくしてまた信号場で停止する。すれ違う列車も無くすぐに発車した。
線路側に向けて看板が立っている。真新しいし、工事看板のように見えた。しかし看板に『Arctic Circle』(北極圏)の文字が見える。あわててカメラを向けた。12:50、いよいよ北極圏に入ったことになる。

そんなこと知ってか知らずか、ほかの乗客たちは寝ている人ばかりだった。

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 北極圏を示す看板。『Arctic Circle』と書いてあった。

北極圏に入ったからといって、景色が急に変わるというわけではなく、相変わらず丘陵地帯に細々とした林という眺めが続く。

13:55、イェリバレ(Gällivare )駅に停車。立派な2階建ての木造駅舎が建っている。駅周辺には集合住宅が立ち並び、ボーデン以来の町らしいところ。
ここからエステルスンド(Östersund)まで746kmもの長い支線が分岐していて、旅客列車は夏だけ1往復運行している。
ここで何人か下車客あり。乗車は無いようだった。

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 イェリバレ駅に停車。ボーデンを出てから最初の町。

この列車の私が乗っている52号車には売店があって、たまに乗客が来てコーヒーなどを買いに来る。
もう昼を過ぎたし、何か食べておこうと売店に行ってみた。レジに立つとさっきチケットを見せた車掌が奥から出てきた。
ここも、車掌が車内販売員も兼務している。

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 客車内の売店のメニュー。

ケースに品物が並んでいるわけではなく、レジのカウンターにメニューがあるだけ。言うと奥から出してくれるようだが、面倒になってコーヒーだけ注文した。コーヒーメーカーがあって、車内で淹れているようだ。

コーヒーは20Kr(約270円)と意外と安い。支払はクレジットカードにて。ここでもそうだが、端末にカードを差し込んで暗証番号を押すだけなので簡単だ。

席に戻って昨日の残り物を広げて昼食にした。

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 昨日の残りのパンと売店のコーヒーで昼食。

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 トナカイ?の群れを見つけた。

ボーデンを発車してから北極圏に入り、ずっと単調な景色が続いているが、それでも少しずつ変化している。木の丈はさらに低くなり、時どき広大な湿地が現れて視界が開ける。

ヨーテボリからの寝台列車から見えていた野生動物除けのネットはここでも続いている。
時おり遠くにトナカイらしき群れが見えた。

いつしか緑も少なくなって、枯れ木や枯れ草ばかりが地面を覆うようになった。

いまは暗くなる心配は全くいらないが、もし他の時期に一人で旅して夕暮れ時にさしかかれば、消えてしまいそうなくらい不安になるかもしれない。

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 行けども行けども人家も無く単調な車窓。ここはすでに北極圏。

13:34、運転停車。また貨物列車とすれ違う。こんど貨車の数を数えたら68両もあった。
14:24、また運転停車。ここでは10分くらい停まっていた。時刻表を見るとナルビク発ルーレオ行のIC95列車。こちらと同じ電気機関車牽引だった。
それにしてもすれ違う列車があると、こちらばかり待たされる。

だんだんと人工物が見え始める。人工物と言っても、殺風景な砕石の山だったり、貨物の引込線らしい線路が寄り添ったりするだけだが、鉄鉱山の町キルナが近づいてきた。

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 貨車の列の向こうにキルナの町が見えてきた。

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 湖の対岸に見えるキルナの町。

遠くに丘の上に広がるキルナの町が見える。このまま町の中に入って、キルナ駅があるはずだった。地図ではそうなっている。ところが、列車の進行方向がおかしい。
湖が見えてきて、その向こうにキルナの町が見えた。地図ではキルナの手前に湖など存在しない。何だかわけのわからないまま列車はキルナ駅に着いた。

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 キルナ駅に到着。レールを担いだオブジェが出迎える。

キルナ市は人口約2万3000人、ルーレオとナルビクを結ぶ鉄道の途中駅では最大の都市である。
キルナは鉄鉱山の町。ここで産出された鉄鉱石は、鉄道でルーレオ港へ、あるいはナルビク港へと輸送される。

ここキルナ止まりの列車も2往復あって、ボーデンからキルナまではストックホルム直通の寝台列車含め4往復あるが、キルナから先に行く列車は2往復だけとなる。

キルナには15:09に着くはずだったが若干遅れて15:15に着いた。発車は15:27なので12分ほど停車することになるので、ホームに降りてみる。

ホームは1面1線のみ。駅舎は小屋のような建物があるだけ。出発前にネットで見た駅とはずいぶん違う。ホームも駅舎も新し目で、仮設の駅のような感じがする。
駅の場所も工場の裏のような建物しか見えない。何だかわけのわからないままにキルナを後にすることになった。

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 キルナ駅でしばらく停車。

日本に戻ってから調べると、この駅は2013年に移設された仮設の駅ということだった。

現在地下1000mまで掘り進んでいる鉄鉱山の坑道が、町の下にまで及んでいて、このままでは町が陥没する危機にあるという。
市では鉱山の北に町ごと移転する計画を進めており、駅の移設はその一環ということだった。
さらに正式な場所へ再移転が予定されていて、その際は新しい町の中心部に隣接する場所に設けられるとのこと。

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 キルナ駅の駅舎は仮設のものだった。

ホームを歩いていると、機関車の切り離し作業が始まった。ここで機関車を交換するのかと思ったら、同じ機関車が反対側に付いた。キルナで方向転換になる。これも地図と違っていた。

発車時刻が近づき、車内に戻る。
車内の客は自分ともう1人だけになっていた。乗客はほとんどキルナで降りたということになる。他の車両も似たような乗車率だったので3両合わせても10人に満たないということになる。

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 キルナでほとんど下車してがら空きなった車内。

キルナから新たに乗ってくる人もなく、しずかに列車は発車する。発車も若干遅れて15:32だった。

進行方向が変わったので、今まで座ってきた席は後ろ向きになる。2人しか乗っていない客車で、こんな窮屈な席にいなければならない理由はない。3人掛けのボックスシートのほうに席を移した。

この辺りから景色はさらに荒涼としてくる。すでに緑は無く、生えているのは立ち枯れ木ばかり。
しかしよく見ると、枯れ木に見える枝先には若葉色の新芽をいくつも付けていた。5月下旬ではようやく雪解けが終わったばかり、これから春が始まるといった感じだった。

キルナからは国道が並走するようになるが、走る車はほとんど見かけない。それもそのはずで、この先国境までは町は無い。
そのかわりよく見かけたのがキャンピングカーだった。今日は土曜日、大都会の無いこの辺りでは週末を過ごすレジャーとして人気なのだろう。

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 国道を走るキャンピングカーと並走する。

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 トーネ湖が見えてきた。このあたりはアビスコ国立公園。

キルナの次はアビスコ東(Abisko Östra)駅に停まる。レンガ造りの立派な駅舎が建つ。
ホームで列車に乗るらしい何人かが見えたが、こちらの乗客ではないようだった。

しばらくして反対側のホームに列車が入ってきた。ストックホルム行ナイトトレイン93列車だった。大きなバックパックを背負った旅行者らしい人が乗りこんで行くのが見えた。あっちも客車内に人影はほとんど見えず、空いているようだった。

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 アビスコ東(Abisko Östra)駅。

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 ストックホルム行SJナイトトレインと交換する。

このあたりから停車駅が多くなってくる。
次はアビスコツーリストステーション(Abisko Turiststation)で、アビスコ国立公園の入口になる駅。観光地なのでいくらか乗ってくるのかと思ったが乗降ゼロ。まだ観光シーズンには早いのだろうか。

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 トーネ湖を眼下に見ながら高度を上げて行く。

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 残雪とまだ凍った湖。

アビスコを過ぎると、この辺りからスカンジナビア山脈の山越えになるようで、右側に見えていたトーネ湖も、高台から見下ろすようになってくる。
トーネ湖と別れて、高度を上げながら西へと進む。国境へ近づくにつれて残雪も多くなってきた。湖も白く凍っている。

すっかり冬景色になって、リックスグレンセン(Riksgränsen)駅に到着する。スウェーデン側最後の駅で、国境の駅ということになるのだろうが、板張りのホームが1面あるだけの駅だった。
駅前にはリゾート風のホテルがあって、まだ凍って真っ白の湖畔にはオートキャンプ場があるのか、キャンピングカーがたくさん見えた。

普通の駅と変わらず停車してまた発車する。列車はすぐにトンネルに入る。

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 リックスグレンセン(Riksgränsen)駅はスウェーデン側の国境駅。

トンネルや雪覆いが続き、どこが国境なのかわからないままビョルンフェル(Björnfjell)駅に着いた。駅舎の壁面に513.7mとの表示を見つけた。この駅の標高なのだろう。ここがノルウェー側の国境駅になる。

ここからはNSB(ノルウェー国鉄)の運営となり、路線もオーフォート鉄道に変わるが、何事もなかったかのようにすぐに発車した。両国ともシェンゲン協定加盟国なので、税関もパスポートコントロールも無い。
車掌の交代も無く、ここからノルウェーに入ったとわかるものは何も無かった。終点ナルビクまでは僅か40km余り、その先は無く、わざわざノルウェー側の要員と交代するまでもないということなのだろう。国際間の緊張も無く、平和なのは何よりだ。

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 ノルウェー側最初の駅、ビョルンフェル(Björnfjell)駅。

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 岩肌が目立つ国境付近の景色。

ノルウェー側に入ってから、停車駅ごとに乗車客があるようになった。どの駅も人家は無く、信号場のようなところばかりだが、乗客の格好を見ていると、登山かハイキング帰りというように見えた。

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 氷河地形特有のU字谷が見えてくる。

17:51、カッテラット(Katterat)駅を発車すると、氷河地形特有のU字谷が眼下に広がる。ここからナルビクまでは、車窓最後のハイライトとなる。ここは見逃さないようにしたい。

U字谷は次第に入り江になる。これがフィヨルドかと見入った。茶色く変色した窓から眺めているのはもどかしく、窓を開ける。
線路はフィヨルドに沿って、ナルビクへと下って行く。

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 ナルビク手前のフィヨルド。車窓のハイライトだ。

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 フィヨルドを見ながら峠を下って行く。

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 フィヨルドの先はオフォート湾が広がる。新しい橋を建設中。

フィヨルドが終わって湾口が開けるところでは新しい橋を架ける工事をしていた。ここを過ぎるとナルビクの町に入る。

18:22、終点ナルビク着。定時到着だった。
ボーデンから437km、ヨーテボリからは1923km、北緯68度27分にある最北端の終着駅に着いた。

幅広のホームに降りるも、出迎えの人は誰もいない。列車から降りた人たちも、あっという間にいなくなってしまった。
2階建ての駅舎があって、中に入ってみたが、小さい待合室があるだけで窓口も閉まっており、無人駅のようだった。

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 ナルビク駅に到着。

せっかく列車の長旅で着いたのだから、終着駅らしさを感じたかったが、誰もいない駅というのは何となく気味が悪い。駅は町から坂を下ったところにあって、駅前には家も商店もない所だった。

疲れているし、さっさとホテルに向かうことにした。ナルビクでは2泊することにしていて、明日は丸1日滞在するので、駅は町の観光がてらゆっくり見物することにしよう。

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 ホテルへは住宅街の坂道を登って行く。

ナルビクで予約していたホテルは『ベストウェスタン・ナルビクホテル』。中心部や駅からは少し離れているが、立地は悪くはない。
駅からは坂道を15分ほど登った高台にある。ホテルまでの道は、三角屋根の瀟洒な一軒家が並ぶ住宅地といった感じ。生活水準は高そうだ。

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 ナルビクで2泊するホテル。

坂道を登って、住宅地が途切れたところにホテルはあった。やれやれやっと見つけたという感じだった。隣はスーパーがあって、まだ営業している。ホテル前から来た道を振り返ると海が見えた。場所は悪くはない。

レセプションで名前を伝える。
Booking.comからの予約で、2泊で1,640ノルウェーKr(22,299円)だった。現地決済だったので、クレジットカードで支払うと、プリントした領収書と部屋のキーをくれた。
そういえば、一昨日のヨーテボリでもそうだったが、どこのホテルでも大抵書かされていた宿帳を書くことはなかった。予約書にはどこの何者か書かれているし、必要無いといえば無いのかもしれない。

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 ホテルのレセプション。

部屋に入ると、シャワールームとトイレがある。湯沸しのポットもあった。シングルルームながらも部屋は広いし、ようやく文明国らしい暮らしができると言ったら少し大げさだろうか。

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 居心地の良いシングルルーム。

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 シャワールームとトイレ。

部屋に荷物を置くと、まず隣のスーパーへ買い出しに行く。『REMA1000』というスーパーで、このあとノルウェーではあちこちで見つけ、また世話になったスーパーである。

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 ホテルの隣にあったREMA1000というスーパー。

ATMがあればノルウェークローネをいくらか引き出しておこうと思ったが、置いていないようだった。

カゴを持って店内を見て回る。昨日の残りもあるし、特にあらためて買うものも無い。
ビールの売り場があって、普通に売っている。が、張り紙があって読むと、土曜日の販売時間は18:00までとあった。すでに19時を過ぎている。残念。
結局、ミネラルウォーターとコーラ、それに魚の瓶詰だけ買った。

部屋に戻り夕食にする。酒がメインで、あとはつまみばかり。
ヨーテボリで買ったフエ・カセーロという白カビのサラミをナイフで刻む。ナイフの刃が立たないほどガチガチになった肉だが、口に放り込むと、油が溶けてホロリと崩れる。これをウオッカで流し込むと、ああ・・・

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 テーブルに広げた酒とつまみ。

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 フエ・カセーロという白カビのサラミ。切るのは一苦労だが・・・

酒飲みにとっては至福のひと時だが、我に返るとあほらしくなってきた。もうちょっとまともな食生活はできないのか。
ブログ記事にすることを意識するならば、もうちょっと見世物になるような食事をするべきであろう。

ただ、今回は予算の関係で節約を旨とする必要があること、それ以上に一人でレストランに入るのが面倒くさいというのがあって、貧乏くさい食事になってしまった。

北欧旅行をするとこんな貧しい食事になるということでは無い、誤解の無いように申し上げておく。

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 ファゲルネス山とロープウェイ乗り場。 

9時半ごろカメラを持って外へ出てみる。北の方角に太陽がまだ輝いていて、まだまだ昼間のようだ。

ホテルの向かいはスキー場になっていて、ゴンドラ乗り場がある。これに乗れば標高656mのファゲルネス山へ登ることができ、町とフィヨルドが一望できるようだが、この時期はゴンドラが全て取り払われて運休中だった。

まだ残雪のあるスキー場の斜面を登ると、眼下にオフォート湾とその向こうの山々が見えた。その北の空には、まだ沈まない太陽が輝いていた。

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 夜になると北方向に太陽が見える。午後9時30分頃

白夜を体験するには夜中じゅう起きている必要がある。さすがにそこまではできないが、少なくとも深夜0時までは起きていようと思っていた。
ところが部屋に戻って、ベッドに少し横たわると意識を失ってしまった。

ふと気が付くと、部屋はまだ明るい。時計を見ると3時。昼寝をして午後3時に目覚めたような感覚だ。寝ぼけ眼で、いまが午前3時とわかるのにしばらくかかった。

また外に出てみる。太陽は9時の位置からは移動しているが、相変わらず北の空に輝いていた。

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 午前3時頃の太陽。

理屈ではこれが白夜なのだとわかっているが、夜更かししすぎて昼夜逆転し、夕方に目覚めたような感覚が抜けきらない。
1日じゅう暗くならない世界を、体の方がわかってくれないようだった。

posted by pupupukaya at 16/07/24 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記5 SJナイトトレイン2日目

 2016年5月28日 SJナイトトレイン車内〜

目覚めると窓の外は明るくなっていた。時計を見ると4時を少し過ぎたところ。

外を見ると、背の低い針葉樹や白樺の林がどこまでも続いている。
昨日見た車窓は、人家や牧場が見えてまだ人里という感じだったが、この辺りまで来ると人家は無いのだろうか。寂しい北の景色を見ていると、寝ている間に遠くまで運ばれてきた感じがした。

目覚めると別世界とまではいかないが、やっぱり夜行列車の旅は良い。

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 一晩明けて、北方の風景が続く。

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 沼地のそばを通過。朝霧や水面が幻想的。

だんだん並行する道や牧草地などが見え始めてきた。4時10分、ヘルネサンド(Härnösand)着。
時刻表では4:22着となっているからずいぶんな早着だ。

雨が降っていたようでホームが濡れている。気温も低そうで、ここで降りた何人かの人は全員ジャンバーを羽織っていた。

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  雨上がりのホーム。ヘルネサンド駅に停車。

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 ヘルネサンド駅の駅舎側。通路の窓から。

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 朝焼けの地平線。北緯62度、北極圏はまだまだ遠い。

ヘルネサンドで13分停車し、発車は定刻の4時23分となった。停車中にホームに降りてみたかったが、発車時刻が早まっていれば置いてけぼりになるかもしれないしやめておいた。

町を過ぎると低い林ばかりの丘陵地帯が続き、単調な風景。
スマホで時速を測ってみると、最高は150km/h。スピードの割に揺れや騒音は少なく、乗り心地は良い。

6時40分、部屋を出てビストロカーへ行く。もちろんカギも持った。

SJナイトトレインでは、ファーストクラスの寝台は朝食代込みとなっていて、列車内のビストロカーか、列車を降りて指定されたレストランなどで朝食を食べることが出来る。
ビストロカーは6時半から営業している。早速行ってみようというわけだった。

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 連結部分の貫通路を何回も通ってビストロカーへ。

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 座席車を通り抜ける。

ビストロカーまでの途中に座席車もあった。途中で降りる人が多いのか空席が目立つ。座席はゆったりとしていて、一晩だけなら節約のために座席車にするのも悪くなさそうだ。

3段寝台の3人部屋個室も空き部屋がいくつかあったので覗いてみる。2人使用なのか中段は折り畳んである。個室内に洗面台もあり、2人ならばこっちでも快適だと思った。室外には共用のシャワールームもある。

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 3人用個室。2人使用の場合は中段は折り畳んである。

さて、ビストロカーに着いた。
テーブルと椅子が並び、雰囲気だけは食堂車という感じがする。

まだ客は誰もいなかった。車掌が4人、レジ近くのテーブルに座ってくつろいでいる。
レジには誰もいない。まだ開店前かなと思いつつレジの前に立つと、1人の車掌が席を立ってレジへやって来た。

一昨日スウェーデンに着いてからまともな食事をしていないので、ここでようやく温かい食事ができるものと思っていた。

列車のチケットを見せて「ブレックファースト?」と訊いてみる。
横のケースからサンドイッチ、ヨーグルト、エッグなどを選んで持ってきて、コーヒーは横の機械からというようなことを言われる。

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 ビストロカーのレジ。クレジットカード対応。

横のケースを見たが、食事になるものといえばパンやパイのほかスナック類ばかり。あとなぜかパック入りの寿司があった。
一番ボリュームのありそうなパック入りサンドイッチを手に取った。あとはヨーグルト飲料とゆで卵。寿司はダメなんだろうか。

レジへ持って行くとレシートをくれた。ん、金取るのか?と疑問に思い、見ると合計50SEKとなっていて、そこから50Kr割引となっていた。

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 ケースに並んだ商品。

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 コーヒーはセルフサービス。

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 ケースから取ってきた朝食。

サンドイッチはシーフード系だろうか。それにしても食べているとパン屑がやたらとこぼれる。そういうパンなのだろう。
ビールのツマミならば兎も角、一緒に飲むのがヨーグルトドリンクというのがとても侘しい。

ビールやワインも応置いてあるようで、言えば出してもらえるのかもしれないが、そこまでする気にはならなかった。

この車両はビストロカーということになっているが、実際は売店併設のラウンジカーといったところか。

もしかしたら夜は別のメニューがあるのかもしれないが、車内で食事をするのならば乗車前にスーパーなどで食料を買っておいた方がいいかもしれない。

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 閑散としたビストロカー。

突然、テーブルを囲っていた車掌たちが一斉に立ち上がっていなくなった。しばらくして駅に停車した。
どうやらそれぞれの持ち場に戻って行ったらしい。
車掌がビストロカーの店員も兼務しているのである。北欧はよく合理主義と聞くが、確かにビストロカー要員を別に乗せるよりは、はるかに合理的だし、サービスレベルも維持できる。

それにしても、カウンターもケースもそのままで留守にして大丈夫なんだろうか。

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 ウーメオー(Umeå)駅に停車中。

部屋に戻ってからシャワーを浴びてみる。
シャワールームは洋便器と洗面台があって、一応ホテルのシャワールームのようになっている。便器や洗面台は折り畳みではなくてそれぞれ占有しているので、シャワースペースは残りの空間ということになる。
ぐるり囲むようにシャワーカーテンがあり、これをしないと便器もタオルもずぶ濡れになってしまう。

シャワーを浴びて体や頭を洗ってみたが、シャワーカーテンが体にまとわりついて気持ち悪い。さっと流すくらいにしておいた方がいいのかもしれない。

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 狭いシャワールーム。シャワーカーテンを引くとスペースはさらに半分に。

バストゥトレスク(Bastuträsk)手前で車内放送があった。多分到着放送だろうが、今日初めての放送の気がする。
この駅で結構な人数が降りて行った。

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 バストゥトレスク駅。停車駅ごとに下車客がある。

駅間は相変わらずの風景が続くが少しずつ変化していて、木々は細く背も低くなってきて、湿地帯も多くなる。
確実に北へ向かっていることを実感する。

線路に沿ってずっとネットを張った柵が続いているのに気付いた。これは野生動物の線路への侵入を防ぐためだ。
北海道でも線路沿いにシカよけの柵を設けたりしている。スウェーデンの鉄道も同じ悩みがあるようだ。

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 貨物列車とすれ違う。

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 湿原と川。過酷な気候を思わせる。

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 立ち枯れの林。

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 神秘的な佇まいの氷河湖。

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 エルブスビュン(Älvsbyn)駅に停車。

北へ進むにつれて天気は良くなって、ボーデンに着くころにはすっかり快晴になっていた。

荷物をまとめて降り支度を始める。といっても持ち物は小さいキャリーケース1個だけなので簡単に終わる。
この列車はボーデンが終点ではなく、そのつぎのルーレオまで行くが、ボーデンでは停車時間が25分もあるのであわてる必要はない。

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 ボーデンの町が見えてきた。

ボーデンには11:10に着いた。定刻では11:04着だから若干遅れたことになるが、ヨーテボリから1400km以上も走ってきてということを考えるとほぼ定時刻ともいえる。

キルナやナルビク方面はここで乗換えとなる。しかし、下車客は数えるほどだった。車内も人の姿はほとんど見えず、まるで回送列車のようだ。
乗客のほとんどは途中で降りたということになる。
考えてみれば、ストックホルムからここまでの距離を見ても1000km以上ある。この距離の移動は通常ならば飛行機であり、寝台列車は沿線の空港が無い町に住む人たちの足になっているのだろう。

今乗ってきた列車は11:29に終着駅ルーレオに向けて発車する。この駅で進行方向が変わるため、機関車の付け替え作業が行われる。

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 ボーデン駅に到着。ここでナルビク行に乗換えになる。

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 ヨーテボリから1486km、ずっと牽引してきた機関車。同じ機関車が反対側に付け替えられる。

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 古めかしいホームと案内表示。

ボーデン駅は今乗ってきたストックホルム方面への路線、ボスニア湾沿いの港町ルーレオへの路線、そして国境を越えてノルウェーのナルビクまで行く路線と三方向からの路線が集まる鉄道の要衝といったところ。
それ以外にも、国境を越えてフィンランドまで伸びる路線もボーデンから分岐しているが、こちらは貨物専用となっている。

ホームの屋根は主要駅といった風格の、木造ながら堂々とした構えである。

次のナルビク行の到着時刻は11:29なので少し時間がある。駅舎や町の様子も見てこよう。

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イラストが描かれたカラフルな地下道。ボーデン駅。

ホームから駅舎へは地下道で結んでいるが、地下道はカラフルな壁画が描かれていた。

駅舎は木造の堂々とした構え。あとで調べたら1893年建築とあった。
建物の大きさに比べて、駅舎内は狭く若干のベンチとコインロッカーがあるだけだった。

駅前は普通の住宅地という感じで、駅前らしさは何もない。長距離列車やローカル列車が数往復発着するだけの駅は、すっかり脇役という感じだった。

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 ボーデン駅は木造駅舎。

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 駅前は何もない。

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 駅舎内にあったキオスク兼カフェ。

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 ボーデン駅の発車案内に表示の発着列車。

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 ルーレオに向けて機関車を前後に付け替えたSJナイトトレイン。

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 ナルビク(Narvik)行の表示。Gällivare (イェリバレ)は経由駅。

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 入線してきたルーレオ始発の列車。

再びホームに戻ってきた。ホームにいるのはSJナイトトレインからの乗継の数人だけ。

やがて電気機関車に牽引された列車が3番線に入ってきた。ルーレオ始発のナルビク行だ。
入線してきた列車の客車はわずか3両だけ。いかにもローカル列車だが一応『SJ InterCity』の列車種別が付けられている。

ヨーロッパ最北端の鉄道である、ノルウェーのナルビクまではスカンジナビア半島の山脈と国境を越えることになる。
距離にしてあと437km、7時間近くの乗車時間だ。途中で北緯66度を過ぎ、いよいよ北極圏となる。
posted by pupupukaya at 16/07/18 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記4 SJナイトトレイン

■SJナイトトレイン ヨーテボリ〜ボーデンのルート
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朝に荷物を預けたヨーテボリ中央駅に戻ってきた。時刻は4時過ぎ。もう街は行くところも無くなったし、列車乗車までは駅で過ごす。あと、買い物もしたい。

まずは駅舎の中を見物する。

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 1858年建築とスウェーデン最古の駅舎。

ヨーテボリ中央駅の古めかしい駅舎は1858年建築で、スウェーデン最古の鉄道駅舎といわれる。1923年に起こった火事で、かなりの部分が建てかえられたようだ。
ストックホルムを始めスウェーデンの主要駅とを結ぶ都市間列車やノルウェーのオスロ、デンマークのコペンハーゲンへの国際列車、それにヨーテボリの都市近郊列車もこの駅に発着している。
年間の利用者数は2,700万人で、これはスウェーデンではストックホルム中央駅に次いで2番目になる。

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 駅舎の内部もレトロな雰囲気。

駅舎内に入ると、朝は気づかなかったが、クラシック調のニス塗りの木の柱や壁が19世紀を感じさせる。天井には明かり取りの窓がたくさんあるので明るい。
昔の上野駅を小さくしたような、そんな印象だった。

コンコースはこれから列車に乗る人と着いた人がせわしなく行き交う。街の玄関口として駅がパワフルな姿を見ると鉄道好きとしては嬉しい。

駅内を歩き回る。テナントはレストラン、カフェ、ファーストフード、コンビニ、キオスクなど一通りそろっている。スシ屋もあった。
アーチ状の柱が連なる中央コンコースには列車発着の電光掲示板があって、大勢の人が見上げて自分の乗る列車を探していた。

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 中央のコンコース。

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 コンコースの上にある鉄道路線図。

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 鉄道のきっぷ売場。

きっぷ売り場の前にWiFiスポットの表示を見つけた。ちょうどここにベンチが並んでいるので座ってスマホで接続してみる。
繋がった。しばらくここで休憩も兼ねてネットで情報収集する。

PCのメールも開くことができた。昨日フィンエアからメールがきていて、ヘルシンキ・ヨーテボリ便は16:00発から16:30発に変更になりました旨の通知だった。今さら知ってもしょうがないが。

もう一つ心配事があって、3日後に宿泊する予定のホテルがちょっと変わっていて、そこの予約書にこう書いてあった。
「この施設にはフロントデスクがありません。予約した際に送られてきた到着日の午前 8 時に、アクセスコードが記載された電子メールが送信されます」
最初なんのこっちゃと思ったが、調べるとネットで予約してメールで暗証番号が送られて、その番号がルームキーとなる無人ホテルがあるそうだ。今回予約していたホテルは同様の無人ホテルということになる。
あとでしまったと思ったが、他より安いし、キャンセル料もかかるので結局そのままにしていた。

予約時のメールアドレスがPCの方だったので、繋がるかどうか心配だったがなんとか一安心だ。といっても8時に送信されてくるのなら前泊のホテルのWiFiを使えるが来なかったらどうすればいいのだろう。予約していた部屋に入れず、別のホテルを探すことになるのだろうか。

考え出したらキリがないし、心配事を抱えて旅行するのはイヤだし、とりあえず当日まで忘れることにした。

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WiFiスポットもあった。

こんどはホームと列車を見てくることにする。
これもヨーロッパなら当たり前だが、日本のように改札口は無いので自由に出入りできる。

駅舎内からホームに出た。ちょっとあれっ?と思った。

ヨーテボリ駅のホームは、ヨーロッパにある中央駅の標準タイプである頭端式ホームになっている。行止りの線路の正面に駅舎があるのかと思ったら、正面の駅舎は線路と平行にあるのだった。イメージで言えば、上野駅や今の函館駅など。これが頭にないと、ホームに出たときに方向感覚がおかしくなる。この位置関係がわかるまでしばらくかかった。

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 ヨーロッパらしく頭端式のホームが並ぶ。

ホームは1番から16番まであって、様々な列車が並んでいる。車両の知識が無いので、どれがなんという車両かはわからない。1編成だけ写真で見たことのある列車が停まっていた。前面が黒いゴムチューブで覆われたデンマークの列車で、IC3型という。連結した時に互いに密着させて、連結幌の代わりにするというユニークさで覚えていた。
デンマーク行きの国際列車だった。こんなところで実際に見られるとは。

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 流線型の電車はクングスバッカ行の近郊列車。

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 ゴム顔が特徴のデンマーク国鉄IC3型列車。コペンハーゲン行。

もうそろそろ5時になるので、預けた荷物を取りに行く。
預かり所の横にトイレがあったので先にそっちを済ませようと入りかけると、カウンターのおっちゃんに呼び止められる。指差す所を見たら、『10Kr』と表示してあった。ああそうか、トイレは有料なんだ。10Kr玉を渡してトイレに入る。

トイレを出てからまたさっきのおっちゃんに預かり書を渡す。朝に預けたキャリーケースを受け取った。
それにしてもコインロッカーだと60Krでカウンター預けだと50Krなのは謎だ。まあ安いことはいいことだ。

次に向かったのは駅前にあるノルドスタンというショッピングセンター。街歩きの時に1度入っていて、スーパーと酒屋があるのは確認していた。
まずはビールを買いにシステムボラーゲットへ行く。

レジはどこも長蛇の列。しかもどの人もカートに満載のガチ買い。考えたら今日は金曜日、週末に備えてまとめ買いなのだろう。日曜日は酒屋は全て休みになる。

こちらもビールを6缶選んでかごに入れ、レジに並んだ。

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 国営の酒屋システムボラーゲット。

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 週末に備えてかレジには酒好きの大行列が。

次に向かったのがスーパー。ここにも昨日と同じHemköp(ヘムショップ)というスーパーがあった。パンと白カビのサラミ。このサラミがビールと合うんだよね、日本ではなかなか売っていないし、しかも高いし。あとは惣菜でもと売場に行くと、惣菜はケースの中に並んでいて、店員に取ってもらわなければならない。しかも惣菜になるとどれも結構いい値段だ。日本のようにパック詰めの惣菜は無いようだった。

店員に声を掛けようと頭の中で英会話のセリフを考えていると、横にサラダバーを見つけた。紙製のカップが置いてあり、自分でよそってレジへ持って行けばいいらしい。
昼くらいにこれと同じカップを持って街を歩いている人をよく見かけたが、正体はこれだった。

これはいいと、他の人に倣ってあれこれカップに入れる。基本はサラダだが、肉やライスもあった。
詰め放題かと思ったら量り売りで、レジへ持って行くと100Krにもなってしまった。

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 スーパーにあったサラダバー。結構人気のようだった。

食料とビールが手に入り、また駅へ戻る。

そういえば財布にまだスウェーデンクローネが残ったままだった。明日はノルウェー領内に入る。ノルウェーの通貨はノルウェークローネとまた別になっているので、スウェーデンにいるうちに使ってしまわなければならない。
コンビニで絵葉書とチョコやお菓子を買う。現金は小銭だけ残してほとんど使い切った。

スウェーデンはカード社会。些細な金額の支払いまでクレジットカードを使うのが常識になっているようだった。極端な話、現金を全く持っていなくてもカードさえあれば事足りてしまう。

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 コンコースの掲示板前で表示が出るのを待つ。

コンコースで掲示板を見るが、これから乗る18:35発ルーレオ行きはまだ表示されていない。またきっぷ売場前のベンチへ行き、スマホでネットを見た。

しばらく経ってからまた掲示板を見に行くがまだ表示されていない。もうすぐ6時になろうとしているがどうしたんだろう。
まさか、運休?
海外にいるとちょっとしたことでも悪い方へ悪い方へと考えてしまう。

6時5分になってようやく1番下にルーレオ行きの表示が現れた。
「18:35 StockholmC Umeå Luleå 4」

さあ4番線だ。

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 ようやく一番下にルーレオ行きの表示が出た。

今回の旅行の目玉は北欧の夜行列車に乗ることである。日本では夜行列車はほとんど廃止され、夜汽車に乗りたければ海外に行くのが早い。

スウェーデンは南北に細長いため、長距離の夜行列車がいくつか運行されている。今回乗車する列車はそのうちのひとつ、ヨーテボリからボスニア湾北部の港町ルーレオまで行く列車である。
日本のように列車名称は付いていないが、夜行列車はSJナイトトレイン=スウェーデン語ではSJ Nattåg(ナットーグ)=と呼ばれている。

ここヨーテボリは北緯57度に位置する。ここから北極圏の始まる北緯66度までは直線距離で1,000km近くもある。これを列車で行こうというのだからかなりの長旅になる。

これからの予定は、ヨーテボリを18:35に発車し、途中ボーデン着が明日の11:04、さらに乗り換えて終点のナルビク着は18:22となる。これから明日の夕方まで列車に乗りっぱなしというわけだ。

鉄道の距離にするとボーデンまでは1,486km、ナルビクまでは1,923kmにもなる。これがどれほどの距離かというと、かつて大阪と札幌を結んでいた『トワイライトエクスプレス』の距離が約1,500kmあった。ナルビクまでとなると、札幌で乗換えてさらに稚内まで行くほどの距離になる。このキロ数だけでもスカンジナビア半島がいかに広いかおわかりいただけると思う。

それで改めて考えると、北欧の鉄道運賃は安い。キャンセル不可の早期割引とはいえ、個室寝台料金込みで1,487Kr(20,050円)はかなり安い。鉄道は公共福祉ということで運賃が低く抑えられているのだろうか。
リーズナブルに寝台列車の旅を体験したければ、北欧に行くのが良さそうだ。

■ヨーテボリ〜ボーデン〜ナルビクの時刻表
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Tidtabeller, sommar/höst 2016より抜粋・引用

4番線にはルーレオ行き92列車が停車していた。長距離列車らしく長い編成だ。
長い乗車に備えてか、ホームのいちばん駅舎側のところでタバコを吸う人が多い。

人がいるのはここだけで、先頭の方へ進んで行くと誰もいなくなってしまった。まだ発車まで時間があるせいだろうか。ずいぶんと寂しい発車前風景だ。

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 すでに客車が入線している4番線ホーム。

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 ホームは閑散としていた。

指定された車両は27号車とある。個室にトイレ・シャワー付きの1等寝台だ。ホームを歩きながら客車を見ていると鉄の虫が騒ぎだした。これはテンションが上がる。
ずっと進むと『27』『Luleå』と表示された車両が見つかった。1等寝台車は黒く塗装されて高級感漂っている。

車内に入るとどの個室もまだ無人だった。とりあえず自分の部屋に荷物を置いてまたホームに出た。

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 1等寝台車の入口。他の車両と違い、黒一色で高級感がある。

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 個室寝台の通路。すれ違うのが難儀なほど狭い。

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 個室寝台の室内。上段のベッドは跳ね上げてある

発車まではまだまだ時間があるのでホームから列車の編成を見て回る。先頭は機関車1両、次いで座席車、1等寝台×2、3人部屋の寝台車×2、ビストロカー、座席車、6人部屋の寝台車×2の計10両編成といったところ。全ての車両がルーレオまで行く。
一覧にすると以下のようになる。

機関車
24:座席車
26:1等寝台
27:1等寝台
31:3人部屋寝台
32:3人部屋寝台
33:座席車
:ビストロカー
35:座席車
36:6人部屋寝台
37:6人部屋寝台

先頭から順番に1号車〜にしないのは不思議だ。

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 先頭は客車を牽引する機関車。

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 SJマークを掲げた機関車。

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 ヨーテボリの駅名標とこれから乗る寝台車。

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 印刷してきたヨーテボリからナルビクまでのチケット。

ホームをひと回りして個室に戻ってくる。27号車の個室もいくつかは人が入ったようだが、まだ空き部屋の方が多い。やはりストックホルムから乗ってくるのだろうか。

さて、個室寝台車である。ここで明日の午前11時過ぎまで過ごすことになる。ベッド兼座席があって、嬉しいことに進行方向を向いた席だった。

部屋の広さはかつての『あけぼの』号のシングルデラックスくらい。それにシャワールームがある。ゴージャスとまではいかないがホテル並みの快適さは期待できる。
寝台は2段式で、上段の寝台は折り畳まれている。部屋は2人使用でもゆったりできそうだ。

シャワールームは洗面所とトイレ兼用でかなり狭い。シャワーを使うと全てずぶ濡れになりそうだが、一応シャワーカーテンで仕切られるようになっている。ただでさえ狭い中でさらにカーテンを閉じると体を洗うのに難儀しそうだ。タオルとドライヤーそれにボディシャンプーも備え付けられているのはこれもホテル並み。

洗面台にはこれもサービスで、ミネラルウォーターのパックが2個置いてあった。
鍵は壁掛けのホルダーに置いてあった。プラスチックのカードにパンチ穴を開けたのが2枚。

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 バスルームはトイレ、洗面台、シャワーが一緒になっている。
  
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 傾斜のついたテーブル。箱はサービスのミネラルウォーター。

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 室内から通路側を見る。

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 室内のコンセント。

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 備え付けのルームキー。

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 シャワーヘッド。

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 壁掛けのドライヤー。

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 申し訳程度に開く窓。

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 ベッド横の読書灯。



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座席にした状態。
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背もたれを折り畳むとベッドになる。

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 デッキに置いてある社内誌。各部屋にも置いてある。

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 一般記事のほか車内誌らしくスウェーデン国鉄の紹介も載っている。

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 通路側の窓はカメラが出せるくらいには開けることが出来る。

18時35分になり、ほぼ定時刻に発車した。何の前触れもなくスルスルと動き出す。しばらくは操車場や車両基地が続く。この個室寝台は満足だが、窓が小さいのが気になるところだ。座ってしまえば外を眺めるにはこれでも十分なのだが。
窓は一応開くが、ほんの少しだけ。換気の役にしか立たない。通路側の窓は1つおきに開くようになっていて、首を出して撮影くらいはできる(あぶないけど)。

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 通路の窓から見たホーム。

発車して15分くらいしてからドアをノックして女性車掌がやって来た。旅行前にプリントしてきたチケットを渡す。
車掌はチケットを見るとそのまま返し、「サンキュー」と言って去った。

えっ、見るだけ?
QRコードも印刷されているので、機械で読み取って、身分証明も出せとか言われるのかと思っていた。ずいぶんあっけない検札だった。

インターネットで予約したチケットも間違いはなかったということだ。これで明日のボーデン着まで暮らす城になる。
ビールも食料も乗車前に買ってきたのでたっぷりとある。まずは祝杯と行きたいが、その前に車内探索をしてこよう。

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 車両基地には近郊電車が何種類か見えた。

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 町を過ぎると湖も見えた。

プラスチックのルームキーとカメラを持って部屋を出た。個室のドアはオートロックになっていて、外側からはキーがないと開けることが出来ない。
試しにカードキーを鍵穴に差し込んでみた。

あかない(涙)

何回差し込んでも、ガチャガチャやってみてもビクともしない。鍵が間違ってるんじゃないのか。
さっき検札に来た車掌を追いかけて行ったら、一番先頭の座席車でまだ検札をやっていた。終わったらまた戻ってくるだろう。

狭い通路で待っていると、たまに人が通る。そのたびに壁に身を寄せる。車掌さん早く戻って来てくれよ。
他の個室はほとんど空き部屋のはずだが、全てドアが閉じられていた。

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 発車すると個室のドアは全て閉じられた。

車掌さんは20分くらいしてようやく戻ってきた。わけを話すと、何のことは無いようにキーを穴に入れて強く押し込んだ。ガグンという音がしてドアが開いた。なるほど、強く押し込めば良かったんだ。
「サンキューソーマッチ」と礼を言った。

なんか疲れてしまった。
まだ明るいけど一杯やることにしよう。明るいと言っても午後7時を回っている。今日はずっと歩きっぱなしで空腹も限界になっていた。

テーブルに買ってきたものを並べようとするが、このテーブルが斜めに傾いていて、物を置いても滑り落ちてしまう。キャリーケースを下に噛ますと水平になった。なんだか不格好だが仕方がない。

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 スーパーで買ってきた食料とビール。

ぬるいビールで一人乾杯。洗面台の水もぬるくて車内ではビールを冷やす術がない。

肴はサラダバーで盛ってきた惣菜。ミートボールやテリヤキ、マカロニサラダにライスサラダ、それにエビ・カニなどごちゃまぜ丼といったところ。盛りつけはイマイチだがうまい。
結構な量があるはずだがペロッと食べてしまった。

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 サラダバーの惣菜。ミートボールやエビ・カニなど。

食べ終わった後も、生ぬるいビールをちびちび飲みながら車窓を眺めた。

沿線の風景は緩やかな起伏に牧草地がどこまでも続く。ときどき遠くに牧場や家が見えたりする。道東や道北に行けばいくらでも見られる風景。北海道人の私にとっては国に帰ってきたような気持になった。

スピードは相当出ているようだ。景色は単調だが、線路際の草木はものすごい勢いで流れて行く。スマホのGPS機能で測ってみると、150〜160km/hとなった。
線路状態はかなり良くて、ほとんど揺れないし車内も静か。

この列車が一路目指すのはストックホルム。ヨーテボリからストックホルムまでの距離は455kmで、3時間58分かけて走る。この区間の表定速度は114.7km/hとなり、在来線としてはかなりの高速だ。

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 ずっと牧草地が続く車窓。

8時になっても9時になってもずっと明るい。ずっと同じような風景が続く。
ビストロカーへ行って、食堂車の雰囲気を味わうつもりでいたが、さっきたくさん食べたばかりだし、ビールもまだたくさんある。
窓辺で車窓を飽きもせず眺めていた。

10時近くなるとだんだん暗くなり始めた。
この列車はストックホルムには22:33に着く。今回の旅行ではスウェーデンの首都ストックホルムはパスとしたが、せめて車窓から街や駅を眺めようと思っていた。
この時間でもまだ薄明るいはずで、十分に街の様子は分かるだろう。

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 だんだんと夜の帳が下りる。ストックホルムが近づくと町が多くなってきた。

zzz・・・

はっ!気がついたら暗闇になっていた。
いつの間にか眠ってしまっていた。時計を見ると11時を過ぎている。肝心のストックホルムはとっくに寝過ごしていた。

悔しいがもうどうしようもない。目覚ましでもかけておくんだった。残っていたビールをまた飲みだす。

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 23時10分の車窓。空はまだ明るい。

どこかの駅に停車した。23:25着。駅名標をみるとUppsala(ウプサラ)とあった。今のところ定時運転である。座席車の方から結構降りる人がいる。どこの国でも夜行列車は最終列車としての役割も持っているのだった。

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 ウプサラ駅着。帰宅客らしい乗客が結構下車する。

ビールを飲み終わると、もう本当に寝ることにした。ベッドメーキングの必要はなく、ベッドカバーをめくるとその下が布団になっている。背ずりも座っているときは引き出しておくが、寝るときは引込めればよい。座席からベッドへ早変わり。

座席とベッドを両立させるというのは寝台車の宿命で、どこもそのために苦心した設計になっているが、スウェーデンの客車の仕組みはなかなかの傑作だと思った。

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 ベッドカバーを剥ぐとベッドに早変わり。

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 23時30分、雲の割れ目から光が見える。

窓の外は真っ暗だが室内灯を消すと雲の合間から明るい空が見えた。このあたりまで来ると夜でも完全には暗くならないようだ。
これが最後の夜になる。この先三日三晩、太陽の沈まない白夜の世界になる。

posted by pupupukaya at 16/07/03 | Comment(1) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記3 ヨーテボリ

 2016年5月27日 ヨリーテボリ スロッツコーゲンホテルから〜

目が覚めると明るくなっていた。いっても、昨夜寝たときはまだ明るかった。
時計を見るとまだ5時前。すでに日は昇っているはずだが、部屋の中は薄暗い。外を見ると曇り空だった。

テレビをつける。朝の情報番組らしいのを見ながら過ごす。天気予報もやっていて、どうも今日は天気はあまり良くないらしい。ヨーテボリは曇り、ストックホルムは雨となっていた。

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 朝の天気予報。

昨日の残りのパンとチーズ、それにヨーグルトで朝食にする。
このときてっきり素泊まりかと思っていた。

7時半にホテルを出る。もっとゆっくりしていても良かったのだが、そこが一人旅の身軽さであるが、身支度が終わると途端にすることが無くなったということもある。

レセプションにカードキーを返すために最初に来た向かいの建物に行くと、あとから次から次へと人が来た。奥が朝食会場となっている。もしかして朝食付きだった?
(あとで予約書を見たら朝食代込みと書いてあった、残念なことをした・・・)

トラムの停留所に向かう途中、昨日買い物したスーパーに寄る。昨夜飲んだ缶ビールの空き缶を引き取ってもらうためだ。スーパーの入口にペットボトルと空き缶の回収機があって、穴に投入してボタンを押すとレシートが出てくる仕組みになっている。昨日来たときに見ていて、やり方はなんとなく理解していた。

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スーパーにある空き缶回収機。

穴に空き缶を入れてみると、気持ち良くスルスルと飲み込まれて行く。昨日飲んだビールとミネラルウオーターの計5缶。タッチパネルに表れたボタンを押すとレシートが出てきた。これをどうするのか。レジに持って行くと、5Kr玉を1個渡された。

ホテル近くのオリーブダル停留所から1番のトラムでヨーテボリ中央駅に向かう。

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 トラムで中央駅へ向かう。

10分ちょっとで中央駅に着いた。スウェーデン最古と言われる古めかしい駅舎があった。旅行前にさんざん写真で見ていたが、こうして実際に見ると今ヨーロッパにいるんだなあとしみじみ思った。

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 石造りのどっしりとした構えのヨーテボリ中央駅。

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 大きくロッカーとトイレの表示、駅に入るとすぐにわかった。

まずは荷物をコインロッカーに預けることにする。

ホテルでも頼めば預かってもらえたかも知れないが、また荷物を取りに戻る必要がある。短い時間を有効に使いたいのもあって、あえて持ってきたのだった。

コインロッカーは駅の地下にあった。ロッカーはコイン式とクレジットカード式があって、コインを持っていないのでカード式を使う。

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 ヨーテボリ駅地下のコインロッカー。

ロッカーの使い方は、最近日本でも増えてきたICカード方式と同じで、先に荷物を入れて機械で支払うという仕組み。タッチパネルの画面はスウェーデン語と英語が選択できる。
料金は4時間までなら50Kr、24時間までは60Kr。
画面の案内に従って荷物を入れ、クレジットカードを差し込むが、何回やってもエラーになる。『TRANSACTION/TERMINATED』と印字されたレシートが出てきて、ロックが解除されるのだった。

ロッカーがおかしいのか、やり方が間違っているのか。
地下のロッカールームにはカウンターがあって、そこでも荷物を預かってもらえるようだ。

カウンターにいたおばちゃんに「これを預かってほしい」と言うようなことを英語で言う。何時までと訊かれて「アンチル・ファイブオクロック(5時まで)」と答えると50Krだと言う。オーケーと言ってクレジットカードを出した。とりあえず荷物を預けることができた。預かり証を受け取る。
あれ、ロッカーだと60Krだからカウンターの方が安いのか。5時までとちゃんと通じてたのか怪しいが、とにかく身軽になった。

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 ロッカーの説明画面。

まだ朝の8時半。観光しようにもどこも開いていないので、まずはトラムに乗車する。昨日の夕方に買った24時間券は今日の17:45まで有効なので、市内めぐりに活用できる。

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 中央駅の駅前広場を行き交う電車。

ここでヨーテボリの紹介など。

ヨーテボリはスウェーデン南部の港町で人口は約51万人。スウェーデン第二の都市でもある。17世紀に交易と海運の拠点として建設された。主要な産業は貿易と海運、それに工業。自動車メーカー『ボルボ』の本拠地もヨーテボリである。

スウェーデン語では『Göteborg』、英語では『gothenburg(ゴーゼンバーグ)』と書く。日本語ではイェーテボリやイエテボリとも書かれるが、ここでは航空会社や地球の歩き方の表記に倣って『ヨーテボリ』としています。
地元の人は『イッテボーリ』と発音しているように聞こえたが・・・

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ヨーテボリ市内トラム路線図。
Västtrafikのホームページより。

初めて来た街を車窓から眺めるのは楽しい。特にヨーロッパの電車は日本みたいにロングシートではなく2人掛けで前向きの座席なので景色をより楽しむことが出来る。
観光なんかしなくてもよいから、1日じゅうトラムに乗っていたいくらいだ。

持ってきた『地球の歩き方』に従ってまず向かったのはヨータ広場。ポセイドン像が建ち、ヨーテボリ美術館がある。

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 ヨータ広場からメインストリートを見下ろす。

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 ヨータ広場のポセイドンの像。後ろはヨーテボリ美術館。

昼になればもっと賑やかになるのだろうが、この時間はまだ閑散としている。10時にならないとどこも開かないし、それまでトラムに乗っていることにした。

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 ヨータ広場近くの停留所からまたトラムに乗る。

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 裸電球が車内を照らす古めかしい電車だった。

中心部では路面を走るトラムも、郊外では専用軌道になり結構スピードも出す。市内の住宅地でも芝生や林が多く、街並みがゆったりとしている。
トラムの車両は2両連結か3両の連接車に分かれる。3両連接車は真ん中の車両だけ低床となっているのが多い。車内に段々ができてしまうのは不格好だが、日本みたいに料金支払いのための移動は無いのでこれで十分と言うことなのかもしれない。窓の上にはロープが張られていて、このロープを引っ張ると次の停留所で停まる仕組みになっている。

5番のトラムに乗っているが、終点近くになると客は大きな袋を持ったおばちゃんと自分だけになった。袋には空き缶やペットボトルがたくさん入っている。次が終点というところで、おばちゃんは車内のくずかごをあさり始めた。
スーパーに持って行けば1本1Krで引き取ってくれるわけで、当然そういうことを生業(なりわい)とする人もいるのだろう。

5番の終点で1番のトラムに乗り換えた。これでまた中心部に戻る。

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 トラム1番と5番の終点、Östra Sjukhuset(東病院)停留所。


次に行こうと向かったのがヨーテボリ海洋センター。軍艦や潜水艦その他使われていた船を見学できるようになっている施設で、ヨーテボリで一番興味があったところだ。

中央駅でトラムを降りて歩いて行く。10分ほど歩くとそれらしい所へ着いた。
ところが、チケット売り場らしい所は閉まっている。今日は休業日なのだろうか。

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 ヨータ・エルヴ川に面するヨーテボリの港。


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 ヨーテボリ海洋センター。今日は休業だった。

せっかく来て休業とは残念だが仕方ない。つぎは市立博物館へ行こうとまた歩くことにした。近道しようと地図を見ながら歩く。地図はgoogleマップを画像にしてスマホに保存しておいたもの。

近道のはずなのだが、何だか変なところに来てしまった。
石畳の坂道にこれもまた石造り風の古風な建物が並ぶ小路。道に迷ったはずなのに今ヨーロッパにいるんだなあという感慨のほうが大きかった。それに特に急いで行かなきゃならない所があるわけでなし。

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 路地に迷い込む。

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 路地の道でも絵になる。

坂道を下るとトラムの線路の通りに出た。これで場所はわかった。電車道を歩くと運河があって、その運河沿いに市立博物館がある。

ヨーテボリ市立博物館についての説明は、ダイヤモンド・ビッグ社の『地球の歩き方』から引用させてもらいます。

17世紀初頭、北にはノルウェーが迫り、南はデンマーク領だった当時のスウェーデンにとって、唯一の港がヨーテボリだった。オランダ人の建築家を招いて建設された町は、運河と堀が旧市街を守っている。運河沿いにある石造りの建物は、東インド会社がこの町に繁栄をもたらした18世紀の大商人の住宅。現在の市立博物館は、東インド会社の建物だ。
(地球の歩き方より)

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 ストラ・ハム運河(stora hamn kanalen)沿いを行き交うトラム。

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 ゲスタフ・アドルフの像。
 19世紀のスウェーデン国王で、かのナポレオンが認めた英雄7人のうちの1人だそう。スウェーデン近代化の父とも呼ばれている。

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 もとは東インド会社の建物だった市立博物館。

市立博物館は東インド館とも呼ばれる。もとはスウェーデン東インド会社の本拠地として使われていた建物で、1750年に建てられた。
レセプションで40Krと言われ、クレジットカードを出しかけたが、お金使わなきゃと気付いて50Kr札を出した。10Kr玉のお釣り。

バッグはロッカーに預けるように言われる。ロッカーはコインロッカーで10Kr玉を入れて鍵を閉める仕組み。さっき現金で払っておいて良かった。お金は鍵を開ければまた戻ってくる。持っていなければ両替してもらえるのだろうが、コインは持っていた方が便利だ。

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 昔の暮らしを模した展示。

展示はヨーテボリの歴史や昔の暮らしぶりなど。説明文はスウェーデン語と英語だけなのでパス。
中国人の3人組がいて、ずっとしゃべっている。1人は自撮り棒での撮影に余念がない。どれだけ自分好きなんだと思いたくなる。
なるべく彼らとはかち合わないように見て回った。こっちまで同じだと思われるんだから。

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展示の木彫りの人形。

それにしても着いてから日本人らしき人は全く見ない。シーズンオフだからか、それともこんなマイナーな町へは来ないのだろうか。そのかわり良く見かけた東洋人は中国人だった。

博物館を出るとまた歩いた。この次に行ったのはフェスケショルカと呼ばれる魚市場。建物が教会風なため魚教会とも呼ばれている。港町のヨーテボリらしく新鮮な魚も売られている。

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フェスケショルカはヨーテボリの魚市場。

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 魚市場の内部。

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 ショーケースに並ぶ魚。サバ(makrill)79sekの値札が見える。

並んでいる魚の種類は豊富で、どれも新鮮だ。これをどのように料理するのか気になった。市場の客は観光客もいるが地元の人が多いようだった。
惣菜屋のような店もあって、ここで買って外のテーブルで食べることもできそうだ。

だがそのまま出てきてしまった。運河沿いに歩いて橋を渡るとハーガ地区というところに来た。

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 魚市場近くのローゼンルンド運河(Losenlund-kanalen)。

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 ハーガ地区の入口になるヤーン広場(Järntorget)。

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 ヤーン広場はトラムのターミナルになっていて線路が交錯する。

ハーガ地区はヨーテボリが開かれた17世紀の街並みが残るエリア。もともとは古い住宅地だったのを改装して、いまはカフェやアンティークショップなどが並ぶお洒落なエリアとなっている。

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 ハーガ地区(Haga)はヨーテボリが開かれた17世紀の街並みを残している。

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 観光地らしくカフェが多い。

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 こんな店もあった。

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 ハーガ地区の建物は1階部分が石造り、2・3階部分が木造という独特の建築なのだそう。

こうして並んでいるカフェを見て改めて思ったが、テラス席で道行く人々を眺めながらのんびりコーヒーでも飲めばもっとヨーテボリを堪能できたのかもしれない。
市立博物館を出てからずっとテクテクと歩き通し。何をそんなに生き急ぐ必要があるのだろうか。もっとゆったりと心豊かに行動できないのだろうか。日本に帰って写真を見てからそんなことをひどく後悔した。

そんなわけでハーガ地区も歩いて通り抜けるだけだった。

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 古い建築様式にトラムが似合う。

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 街の至る所で目にするトラムが走る風景。

このあともまたトラムに乗る。車内で検札があった。財布から昨日買ったチケットを取り出して渡す。大丈夫とは思うがちょっとドキドキした。係員は機械にかざすとそのまま返してくれた。ちゃんと有効なチケットだった。ちなみに罰金はいくらなのか調べたらVästtrafikのホームページに載っていた。1,200Kr(約16,000円)となっている。

クングスポルト広場(Kungsportsplatsen)という停留所で降りる。サルハールという市場があるのでやってきた。こうした市場が各所にあるのも港町らしいといえる。

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 サルハール(Saluhallen)という市場。

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 サルハールは庶民の市場という感じだった。

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 建物の外ではフルーツなどを売っていた。


【車窓動画】Kungsportsplatsen(クングスポルツ広場)からBrunnsparken(ブルンスバルケン広場)まで。1分33秒

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 ヨーテボリ中央駅に戻ってきた。

ヨーテボリの街はスウェーデン第2の都市という割には地味な印象だった。特に見どころが多いわけではなく、観光客の姿も少なかった。
どこも庶民的というか、あまり気取ったところがない街だが、道行く人々に混じって歩いたり、トラムから車窓を眺めたり、市場をのぞいたりしていれば、すっかり流浪の旅人気分になっていたのだった。

4時ごろ中央駅に戻る。

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 駅前もだんだんラッシュアワーの模様になってきた。

朝にキャリーケースを預けに来たときはバタバタして通り過ぎるだけだったが、あらためて駅前に立ってみた。
正面に建つ駅舎は2階建てながらも石造りのどっしりした構え。これは1858年建築とスウェーデン最古の駅舎といわれる。

駅前は車道を挟んでドロットニング広場(Drottningtorget)があり、その向こう側がトラムの中央駅停留所(Centralstationen)となっている。
トラムの停留所は線路が4線もあって、ターミナルといった様相になっている。ほとんどの系統がここを通過するので、次から次へと引っ切りなしに電車が発着し、そのたびに大勢の人が乗り降りするので大変な賑わいだ。

トラムの停留所のその向こう側は、ノルドスタン(Nordstarn)というショッピングセンターになっている。

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 混雑する駅前のトラム乗り場。

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 引っ切り無しに電車が発着して大勢の人が行き交う。

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 スウェーデン版『見ざる、言わざる、聞かざる』? ヨーテボリ駅前にあったオブジェ。

駅へ来て、いよいよ今度はヨーテボリ中央駅から寝台列車への乗車になる。

posted by pupupukaya at 16/07/02 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記2 ヘルシンキ〜ヨーテボリ

ヘルシンキは雨だった。空港内は人が多いせいかムシムシした空気。

とにかく飛行機を降りた人の後に続いて進むとゲートの前に着いた。ジグザグになる様にロープが張られ、長い行列がある。どうやらここへ並べば良いらしい。ここが保安検査場とわかるまでしばらくかかった。
ヘルシンキで降りる人はEXITと表示のある通路へ行くのだろう。そっちへ行く人は疎らだった。

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 最初の関門は保安検査場。

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 飲み物はここで捨てて行くことになる。

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 ヘルシンキで最後の人は真っ直ぐ進むと出口になる。

保安検査場を通過すると外に出た。どっちへ行けばいいのかさっぱりわからない。とりあえず出たところに出発便情報のモニターがあった。
『16:00 Gothenburg』は31Eゲートと表示がある。矢印が表示されていたのでそっちへ進めばいいのか?
あまり深く考えないで素直に従うことにした。

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 保安検査場を過ぎたところに乗り継ぎのインフォメーションがあった。

矢印の方向に進むと、通路の両側に免税店が並ぶエリアがあった。お酒の瓶が並んでいるのが目に入った。向こうで飲む用に1本買って行こうかなと思いかけたが、はっと我に返った。
こんなところでウロウロしている場合ではない。さっき外に出たと思っていたが、中に入ったのだ。まだイミグレーション(入国審査)を通過していない。早めに着いたとはいえ、乗り継ぎ時間は1時間30分しかない。急げ、急げ。

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 免税店が並ぶ通路。

免税店の中を抜けると、イミグレーションのあるホールに来た。ここも大勢の人が並んでいる。さっき成田から着いたらしい人たちも先に来て並んでいた。
念のためパスポートに帰りの便が記載されたeチケットを挟んでおく。

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 フィンランドのイミグレーション。ここからフィンランドに入国ということになる。

自分の番が来てパスポートを差し出す。英語で尋問される。「サイトシーイング」とか「ワンウィーク」とか答えた気がする。挟んでおいたeチケットが功を奏したのか、係員はこれを見るとパスポートを返してくれた。これで無事入国できた。これからスウェーデンに向かうわけだが、シェンゲン協定国内であればパスポートコントロールを行われることは無い。

飛行機を降りてからここまで約35分。所定の乗継ぎ時間は1時間10分だったので、飛行機が早く着いていなければギリギリだった。シェンゲン協定内エリアと外エリアがあるからややこしい。

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 2つの関所をクリアすると放免ということになる。

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 ここからはフィンランド国内かつシェンゲン協定国のエリアとなる。

ここまで急げ急げで来たので、ようやく免税店などを眺める余裕ができた。それでも既に15時10分を過ぎている。次の飛行機は16時発なのでゆっくりはできない。
ここはフィンランドなので、売っているものはユーロ建てである。外での値段がわからないので、高いのか安いのかよくわからなかった。

日本からの到着便と日本への出発便が重なる時刻のためか日本人が多い。パスポートコントロールの所で帰り行程らしいツアー一行さんにツアーコンダクターの人が説明をしていた。

「ここから中に入りますとシェンゲン協定外エリアになるため戻ってこれません、こちら側と向こう側では売っている物も違います、こちら側の店で欲しいものがあれば買ってから中に入ってください」

なるほど、なるほど。帰りはそういう風になるのか。

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 ヨーテボリ行の搭乗口。たむろしている中国人は無関係。

15時40分過ぎに31e搭乗口に行く。すでにゲートが開かれ、搭乗が始まっていた。チケットを見せるとここからバスに乗るように言われる。
バスは発車した後で、しばらくベンチに座って待つことになった。

日本人は自分だけだと思っていたが、もう1組日本人がいた。小さい子供を連れた女性とそのおばあちゃん。会話の内容から、海外旅行ではなく日本へ里帰りしていた模様。
旅慣れた様子で、自分とは関係ないが頼りに思えた。

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 飛行機まではバスで移動。

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乗客は観光客は少ない。

バスが到着すると外に出るドアが開いた。
乗客層はビジネスか用務といったところ。観光客風の人はいなかった。ヘルシンキからパリやロンドンへ向かう人から見ればGothenburgってどこやねんて感じだろう。

着いた飛行機は階段のタラップが架けられている。飛行機の小さいこと。ローカル路線扱いだ。

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タラップで搭乗する。飛行機も小型。

札幌からヘルシンキまでの飛行機は予約時に座席の指定ができたが、ヘルシンキからヨーテボリまではフィンエアということなのか座席指定ができなかった。新千歳空港で搭乗券を受けとったときにようやく座席が決まったのだが、嬉しいことに窓側だった。

狭い機内は結構混んでいた。先に通路側に座っていた人に「エクスキューズミー」と声をかけて窓側の席に座る。

飛行機は16時を過ぎたが一向に動かない。ドアも開いたままだった。
アナウンスがあり、最初はフィンランド語(多分)続いて英語だった。英語の方に聞き耳を立てると、「サーティーミニッツ」と聞こえた。30分遅れになるらしい。欠航ではないし、遅れても今時期ならば暗くなる心配はないが、海外でしかも初めて行くところなので少々焦る。

16時15分ごろになってバスが到着し、この飛行機に何人か乗ってきた。全員席に着いたところでタラップが外された。接続便が遅れたので待っていたのだろうか。20分ごろ動き出した。

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 最後のバスが着くとタラップが外された。

離陸して水平飛行になるとドリンクサービスになる。コーヒーやジュースは無料、アルコールは有料になる。この辺は日本の国内線と同様。

フィンエアーはフィンランドの航空会社。そのせいかコーヒーの紙コップはマリメッコ柄だった。
隣席のおじさんはワインの小ビンを買って、コーヒーとワインを交互に飲んでいた。変わった飲み方だ。

ヘルシンキを離陸するとすぐに雲の中となったが、次第に天気が良くなって下界が見えるようになった。

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 機内サービスのコーヒー。カップと紙ナプキンがマリメッコ柄なのはさすが。

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 雲が晴れて下界が見えるようになった。

機内アナウンスがあり、フィンランド語はさっぱりだが、英語の方は何となくわかる。ヨーテボリ着予定は16時45分、気温は16℃ということだった。

時計を1時間遅らせる。フィンランドとスウェーデンは1時間の時差がある。ここからは中央ヨーロッパ時間の夏時間であるUTC+2の時間帯になる。

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 スウェーデンの町が見えてきた。

ヨーテボリ空港着は16:45だった。こんどはExitとある方向に向かって歩く。ずっと進むとターンテーブルがあった。
新千歳空港で別れたキャリーケースが無事に出てきた。
税関も何も無く、そのまま出口へと向かう。

出口では名前を書いた札を持った出迎えの人が並んでいた。それを見てようやく着いたんだと実感した。

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 ヨーテボリ空港に到着。

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 ヨーテボリ空港の手荷物受取所。

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 出口ではボルボが出迎える。ヨーテボリはボルボの本社所在地。

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 名前を書いた札を持った人が出迎える。

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 ヨーテボリ空港は小じんまりとした規模の印象だった。

やれやれようやくヨーテボリに着いた。と安心している場合ではない。これからホテルへと向かわなければならない。
空港からホテルまでの交通機関は出発前にこれでもかと言うほど調べてきたのでわかっている。

ヨーテボリ空港は鉄道が通じていないので、空港バスが市内とを連絡している。日中は15分間隔で出ていて、料金は105Kr。
これは事前にインターネット(flygbussarna.se)で購入すると95krになるので事前に買っておいた。印刷したチケットを持っている。


しかしバスを降りてから今度はトラム(市内電車)に乗るので、トラムのチケットを買わなければならない。空港のインフォメーションがあったので、どこでトラムのチケットを売っているのか英語で訊いてみた。
インフォメーションの人はセントラルステーション(中央駅)と答える。訊き方がまずかったのかも知れないが、ここでは売っていないようだ。

あとATMはどこかと見回したが、見つからなかった。両替所はあるのだが。

中央駅経由でも良いのだが、遠回りになるなと思って外に出るとちょうど空港バスが停まっていた。とりあえず乗ってしまおう。乗るときに印刷してきたチケットを見せると、機械にバーコードをかざすように言われた。

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 バス車内のモニターに停留所が表示される。

空港を発車して最初の停留所が当初予定していたKorsvägenという停留所で、ここで思い切って降りることにした。あまり遅く着くのは嫌だった。暗くなる心配はないが、一番の理由が、酒を買える店が19時で閉まってしまうからだった。

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Korsvägen停留所でトラムに乗り換える。乗ってきた空港バス。

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 Korsvägen停留所は各方面へのトラムが発着する。

トラムのチケットはどこで売っているのか。券売機はないかと探したが無いようだった。
さすがに無札で乗る勇気はない。検札で見つかったらとんでもない額の罰金を取られるからだ。

トラム乗り場の真ん中にキオスクがあって、もしやと思いレジで訊いてみた。「トラム・ワンデーパス」というと通じた。1枚85Krで、最初に乗車してから24時間有効になる。
支払はクレジットカードで。見ていると、こんなキオスクでの買い物でもみんなクレジットカードの人ばかりだ。自分でカードを差し込んで暗証番号を入力するだけなので簡単だ。私もクレジットカードの方がレートが良いので、できれば現金よりカードで済ませたい。使いすぎには気を付けなければならないが。

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 1daypassをかったキオスク。

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 渡されたのはICカードのチケット。

これでトラムに乗ることが出来る。
「F」の乗り場から6番に乗る。これも事前に調べてきた。待っていると大きく「6」と表示した電車がやってきたので乗り込んだ。車内にカード読み取り機があるのでかざすと使用開始になる。

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降りる停留所は6つ目、車内放送は分からないので路線図と停留所を見比べながら行く。
最初の停留所に停まった。はて?路線図に無い停留所だ。間違えたかな、でも番号と行き先は合っているし。
車内の乗客が怪訝そうな顔をして何人か降りた。運転手に尋ねている人もいる。
なんだなんだ。

次の停留所も路線図に無い。どうなっているんだ????

いくつ目かの停留所でループ線をぐるっと回って引き返し始めた。
さては運転手が線路を間違えたな!

またKorsvägen停留所に戻ってきた。この電車がどうなるかわからないが、元のルートに戻ることは無いようだ。あらためて6番の電車を待つ。

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 改めて6番のトラムに乗る。

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 帰宅ラッシュのためか混んでいた。といっても満席になる程度。

こんどの電車はちゃんと路線図のルート通りに走ってくれた。
時間がどんどん過ぎて行く。酒が買えなくなる、ああ・・・(そうまでして飲みたいのか)

6つ目のOlivedals-gatan停留所に着いたのは18時半ちかく。先に酒屋に寄ってからホテルに行くことにした。

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 ホテル近くのOlivedals-gatan停留所。

スウェーデンでは酒類の販売が厳しく、システムボラーゲット(Systembolaget)という国営の酒屋のみでしか売っていない。しかも営業時間は平日は10時〜18時で日曜は全て休みなので、あらかじめ知っておかないと買いそびれてしまう。
レストランやバーで出す分には制限はないが、何せ物価の高い所なので何杯も飲むわけにはいかない。

ホテル近くの酒屋は19時まで営業している。これも調べてきていた。店の前へ着いたらまだ開いていた。店の入り口には物乞いが2人ほど。酒のあるところは品が落ちるのか。
中に入ると結構広くて綺麗だった。すごい品ぞろえで、世界中の酒を集めてきたのではないかと言うほどそろっている。とりあえず買いたいのはビールだがこれもすごい種類があった。
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見覚えのあるドイツビールやチェコビールもある。輸入物は関税がかかっているのか値段は高め。日本と同じく缶ビールが主流のようだ。冷やして売っていないのが残念なところ。スウェーデン産らしい3本見立てカゴへ入れる。安いので1本11.9Kr、高いので13.5Kr。日本円にすると162円〜184円くらい。意外と安い。ていうか日本の第三のビール並みだ。北欧は酒税が高いと聞いていたので、1本500円くらいするのかと思っていた。別に1本あたり1Krが容器のデポジットとして加算される。これは飲み終えてからスーパーなどに持ち込むと返金されることになる。
あとウォッカを1瓶。これはさすがに高くて197Kr(2680円)もした。

ビールが無事に手に入ったので、ホテルへと向かう。
トラムの停留所から坂を登ったところにある。近くまで行ったらすぐにわかった。ようやく長かった1日も終わりが近い。

とにかく無事に着いて良かった。ビールも手に入ったし、お祝いしよう。ホテルに入ろうと扉に手を掛ける。

あかない(汗)

鍵がかかって開かないよ、どうするんだよ。
4年前チェコで同じ経験をしたのが頭をよぎる。ほかに入口があるのかと建物のまわりを探したが、メインエントランスらしいのはここしかない。脇に呼び鈴があるので押してみた。誰も出てこない。人の気配はあるようだが。

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 1泊したスロッツコーゲンホテル。

4回くらい押すと中から開けてくれた。ホテルの人ではなくお客だった。呼び鈴を押すとレセプションからの遠隔操作で開錠される仕組みで、それに気づかずしつこく呼び鈴を押していたと言うことだ。
でもこれは、1人での海外旅行が初めてという人が最初にここへきたら、入口に鍵がかかっている時点でパニックだろうなあと思った。

レセプションはバイトのような兄ちゃんが1人でやっていた。支払いはクレジットカードで550Kr。カードキーをくれた。部屋と建物の出入りはこのカードで行うようだ。部屋はこの建物ではなく、行き方を英語で説明してくれる。外を指差して「ブラックサーフ」ナンヤラカンヤラと言う。私の英語力はここまで。「ウライトプリーズ」(書いてくれ)というとメモ用紙に書いてくれた。

向かいの黒い日よけの建物が宿泊棟になっていて、もらったカードキーを差し込むと鍵が開いた。

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 ホテルの部屋。寝るためだけと割り切ればまあまあ。

部屋はベッドが2つ、折り畳みの机、壁掛けのテレビとシンプル。バストイレは共同になる。ベッドの上にはタオル、机には缶入りのミネラルウオーターが置いてあった。

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 テーブルは折り畳み式。

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 共同のバスルーム。シャワー使用後は奥のワイパーで水を掻いておく。

部屋に荷物を置いてまた外に出る。今度は食料品の調達だ。
近くにHemköp(ヘムショップ)というスーパーがあるのでちょっと行ってくる。

買ったのはパン、チーズ、焼豚(?)、チューブに入ったたらこペースト、水、ヨーグルト。ビールも売っていたので1本買った。アルコール分が3.5%までのビールならば酒屋でなくても売っているそうだ。全部で114.2Kr(約1554円)、スーパーで済ませばそれほどの出費にはならなそうだ。
ちなみにレシートを見ると付加価値税が12.0%と表示してあった。酒屋のレシートでは25%とあり、やはり酒類は税金も高めになっている。

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 ヘムショップで買ってきた食料品。

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 システムボラーゲットで買ってきたビール。

無事にヨーテボリに着いたし、長い長い1日もようやく終わった。ビールで乾杯しよう。
ここでやっと気づいた。ビールが冷えてないのだ。

海外のホテルは冷蔵庫がついていないのが多い。もっともこんな安宿でそんなこと期待はしていなかったが、そういう時は洗面台で冷水にさらせば結構冷えるのだ。ここはバストイレ洗面台すべて共同なのでそれもできなかった。

仕方なく、そのまま栓を開けて口にする。ぬるいビールはずいぶん久しぶりのような気がする。
なんとかならないかと思ってたら少々ひらめいた。バスルームへ行ってタオルを湿らせてきた。これでビールを包んで、窓際に置いておけば少しは冷えるのでは。気化熱を利用しようというものだ。

時間は既に9時過ぎだが、外はまだまだ明るい。ちょっと散歩でもしてこよう。

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 気休めとは思いつつ、気化熱を期待して濡れタオルでくるむ。

海外では用もないのに夜の一人歩きはするべきではないが、こちらは9時を過ぎても普通に明るい。明るいけどやはり夜の9時過ぎで、通りの店は閉まっていて人通りも少なくなっていた。

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 はてどこかで見たようなイラスト。カフェの看板らしい。

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 北欧らしいデザインのマンション。

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 午後9時半だが、まだ暗くならない。

20分ほど歩いてホテルに戻る。廊下に『ゲストキッチン』と書かれた表示があるので何かなと見に行ったら広いキッチン部屋があった。鍋やフライパンもそろっている。自分で洗って元の場所に戻せば使ってもいいようだ。結構いいホテルじゃん。

タオルで包んだビールも1時間以上経つが、手に取ると結構冷えていた。時間はかかるがこのワザは使えそうだ。
部屋でテレビを観ながら残りのビールを飲んだ。

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 殺風景だが楽しい一夜の宿。

外がいつまでも明るいので、今が夜の時間だということを時々忘れる。今日のヨーテボリの日の入りは21時50分。しかし明日は白夜の北極圏へ向かって出発するので、こんなのはまだ序の口なのだが。

最後のビールを飲んだら猛烈に眠くなったのでベッドにもぐりこむ。今日はこれでEND。
しょぼい部屋だがベッドはさすがに北欧で、長旅で疲れた体が心地よく沈み込む。
外はまだ明るいが、横になるとすぐに爆睡した。

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 午後10時、まだ明るい。
posted by pupupukaya at 16/06/19 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記

2016年白夜・北欧旅行記1 札幌〜成田〜ヘルシンキ

 2016年5月26日 札幌から〜

海外旅行の旅立ちは朝早い。
朝5時起床、準備は前日までに終えているので忘れ物がないかだけ何度も確認して6時に家を出る。

最寄りの地下鉄駅の始発電車が6:13発、札幌駅で6:31発の快速エアポートに乗り継ぐ。新千歳空港7:55発の飛行機に乗るにはそれしか選択肢がない。

家を出たところで、表通りをタクシーが1台通っていった。駅までキャリーケースを引きずって駅まで行くのも面倒だしタクシーでもいいかなと思っていると、なんとさっきのタクシーが引き返してきたので止めて乗り込んだ。運がいいというか、何とも勘のいい運転手というべきか。
「いやね〜今日は夜中じゅうずっとススキノを流していたけど全然お客がいなくて、もしやと思って引き返したら拾ってくれたんですよ」と言われた。それからずっと札幌駅に着くまで運転手と話をしていた。これから行く海外旅行のことなど、興味津々に話を聞いてくれた。
朝から気分が良かった。

タクシーに乗ったおかげで快速エアポートも1本早い列車に乗れた。まずは幸先の良いスタートだ。

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 新千歳空港の国際線乗り継ぎカウンター。

新千歳空港に着いたのは7時前。JALの国際線カウンターへ行く。すでに長い列ができている。早めに来てよかったようだ。

印刷してきた「eチケットお客様控え」とパスポートを出す。印字してある行先は『GOTHENBURG』と英語表記で、係のおねえさんは読めなかった(へっへっへ)。

すぐに3枚のボーディングチケットが発券された。ここで預けた荷物は最終地のヨーテボリで受け取ってくださいと言われた。
キャリーケースに張られたタグを見ると確かに『GOT』と書いてある、間違いはなさそうだった。

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 ヨーテボリまでのボーディングチケットとパスポートなど。

今朝からひとつ気にかかることがあって、カメラの調子がすこぶる悪い。ピントがうまく合わないのか、ピンボケの写真になってしまう。電源を入れ直して写すとちゃんと写ったりするのだが。4年前のチェコ旅行の時に買ったニコンのコンデジなのだが、そろそろ寿命かもしれない。せめて旅行中は壊れないで働いてほしいのだが。

荷物を預けて身軽になると、土産物屋でも見物してこようかという気になるが、この時間ではまだどこもやっていない。保安検査場入口もだんだん混雑してきた。早めに中に入ることにする。

自分の番だけなぜかボディーチェックがあった。ランダムでお願いしているとのこと。そういえば伊勢志摩サミットが今日から開催になるんだった。各所のセキュリティが厳しくなっているに違いない。もっとも、日本を出国するまでのことだが。

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 成田空港行きJL3040便は小さい飛行機。

まずは一路成田空港まで。1時間35分のフライトはヘルシンキまで10時間飛行の助走といったところ。成田発着と新千歳空港発着の差額は1万円、考えようによっては余計に飛行機に乗れる分こちらの方がお得と考えることもできる。

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 座席の背面にはモニターが付いていた。早くも国際線気分。

成田行きの飛行機は窓側の席だったが、離陸するとずっと雲の上で下界は見えなかった。機内は満席ではないが結構混んでいる。成田行きということからしてほぼ全員海外旅行である。年齢層は高め。値上がりするシーズンを避けた年配客のツアー参加者が多いようだった。

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 成田空港の国際線乗り継ぎゲート。

定刻より10分早い9:20に成田空港の駐機場に到着した。
ここからは慌ただしい乗継になる。
次のフライトは10:30発のヘルシンキ行で、出発まであと1時間ちょっとしかない。そのあとヘルシンキ空港でも乗継があるが、そこでの乗り継ぎ時間は僅か1時間25分となっている。

ヘルシンキ空港を体験するのは今回が初めてで、しかもEU圏内の乗継というのも初めてとなる。そもそも預け荷物がヘルシンキで一旦受け取るのか、ヨーテボリまで行くのかもさっき新千歳空港で実際に預けるまで分からなかった。
そんなんで大丈夫なのかとも思うが、十分に乗り継げるから飛行機のチケットも発券されたのだろうし、多分大丈夫なんだろう。ただ、乗り継ぎ時間が短いおかげで早く着くのはありがたい。成田とヘルシンキと2回の乗継にも関わらず、当日の16:25にはヨーテボリに着けるのだ。

出口に向かう通路の途中に乗り継ぎのゲートがあって、そこから保安検査場、出国審査の順で通過する。出国エリアに出たのは9:35、混んでなかったというのもあるが、すんなりと通過できた。

しばらくは免税店を見物しながら過ごすことにする。
と、その前にお金を両替しなければならない。とりあえず必要なのはスウェーデンクローネ(以下スウェーデンKrと略します)で、別に無くても向こうのATMで引き出せば良いのだが、無ければ無いで不安なのが現金なので一応替えておく。

千葉銀行の両替所があったのでレートを見ると¥スウェーデンKrのレートは@15.65円となっていた。ネットで調べたら今日のレートは@13.25円となっている。やっぱりマイナーな通貨はレートが悪い。スウェーデンには2日間しか滞在しないし、欲しいのは小銭程度の額なので2千円程度を替えることにした。窓口で、2千円を少し出る程度で欲しいというと150Krならば2,300円と少しと言われたのでそうした。50Kr札3枚で2,347円也。

ノルウェークローネも必要だが、これは向こうでATMで引き出すことにした。

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 スウェーデン入国時唯一の所持金。

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 免税店が並ぶ出国エリア。

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 カメラコーナー。特に安いわけではない。

免税店をあれこれ見て歩く。成田空港も3回目ということもあってか、これといって変わり映えしているものは無いし、欲しいと思うものも無かった。もっとも、欲しくなったからと言ってこれから旅立つというときに買うわけにもいかないが。
電化製品の人気はカメラと炊飯器。『白い恋人』も専用のコーナーに積んであってここでも人気のようだ。

タバコはやっぱり安い。が、吸わないので関係ない。タバココーナーにはこれでもかというほどカートンの箱が並んでいるが、特に売れているようには見えなかった。
ヨーロッパへ海外旅行と言うと贅沢なように見えるが、考えたら何のことは無い、2年分のタバコ代だ。ちょっとほくそ笑んでみたりして。

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 タバコはさすがに安い。

初めて成田空港に来たときは、並んだ免税店を見るのも珍しくて面白かったものだが、回を重ねるうちに随分と覚めた目で物事を見るようになったものだと気付いた。人間だからそういう風になるのは仕方がないが、それでは旅の面白みも半減してしまう。せめて、過去の海外旅行と比較して物事を見るのは慎むことにした。

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 ヘルシンキ行きの搭乗口。乗客はやはり日本人ばかり。

82番搭乗口はすでに行列ができていた。昨日JALのホームページで座席の空き具合を調べたら、座席は全て埋まっていた。もうほかに行くところもないし、列に並ぶ。次々と搭乗客がやってきて、自分の後ろもかなりの列になった。

JALの係員がやって来て、前の方から搭乗券とパスポートの確認に回っている。自分の番の次の次あたりの人だろうか、突然その係員にキレていた。もういい年こいたおっさんなのだが、聞こえてくる内容はビジネスクラスなのに何でこんなところに並ばすんだ、早く乗せろ、サービスが悪いとかなんとか。係員は平謝り。話が終わったかと思ったらまた同じことがクドクドと始まる。クドクドというより相当お歳は召しているようでフガフガ口調だが相当にしつこい。
並ぶのが嫌ならそこらのベンチで座って待ってろよと思ったが、おそらく周りの誰もが同じように思っていただろう。

機内の調整が何たらかんたらとかでご案内が遅れておりますと放送がある。こちらもヘルシンキでの乗り継ぎ時間が限られているのでさっさと飛ばしてほしいのだが。そんなこんなだが、10:20に搭乗開始となった。

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 機材はボーイング787-8型機。

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 ビジネスクラスのシートを拝んでからエコノミーへ。一生座ることはないだろうけど。

JALの国際線は初体験となる。座席はJAL SKY WIDERUという新型の座席。シートピッチが従来より5p拡大されたのが最大の宣伝文句である。実際座ってみると前の座席との間隔も足元のスペースもゆとりがあって申し分ない。
初めて国際線の飛行機に乗ったとき、前座席があまりにも圧迫感があるので、この席で10時間も過ごすの?と思ったものだが、エコノミークラスの座席も年々進化しているのは嬉しいことだ。

座席だけではなく窓も新しくなっていて、上げ下げするシェードが無くなっていて、ボタンを操作すると窓がスモークガラスのように色がつく仕組みになっている。シェードがない分、窓も天地方向に大型化されている。
一昔前のプレミアムエコノミークラスなんてこんな感じ?と思えるほど良くできていた。さすが『おかげさまで、世界一位』と宣伝するだけのことはある。


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 エコノミークラスはJAL SKY WIDERUと呼ばれる座席。


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 ここで10時間過ごすことになる。

私は窓側の席。程なくして通路側の隣人も席に収まった。隣人は余程慣れている人なのか、座るやいなやスリッパに履き替え毛布を膝にかけて長期戦の構えである。

さてと、こちらはまずフライトマップで飛行ルートのチェック。
おや、あれが無い。てっきりあるものと思い込んでいたが、無い。
あれとはコントローラーのこと。自分の所だけ無いのかと見回したが、ついていないようだった。

モニターがタッチパネルになっており、直接操作すればいいらしい。操作は分かりやすいのだろうが、何か慣れないなあ。

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 東京からヘルシンキまでのフライトマップ。

10:40動き出した。11:07離陸、すぐに雲の中に入る。結構揺れる。11時半ごろようやく安定飛行になって、おしぼりが配られる。このおしぼりの強烈な香りで、ああ今外国に向かっているんだなと実感する。
窓の外は雲ばかりで下界は見えない。フライトマップによると現在佐渡上空あたり。

続いてウェルカムドリンクが配られる。お酒類は大抵ビールかワインだが、JALはほかにウィスキー、ジン、ウオッカ、ブランデー、梅酒といった品揃えとなっている。
こんな所でもないと飲む機会もないブランデーをお願いしてみた。CAが「飲み方はどうなさいます?」と言うので一瞬戸惑った。まさかここでストレートはどうかとも、考える間もなく口から先に出た「み、水割りで」。

CAはワゴンからブランデーの瓶を取り出してプラスチックのカップにドボドボと注いだ。ああ、それはちょっと濃いのでは。JALさんサービス良すぎ。受け取ったブランデーの水割りはアイスピックでぶっかいた氷も浮かべてかなり本格的。
飲んでみると案の定濃かった。それでも香りも良く、おいしい。私は洋酒については全くわからないが、うまいかまずいかくらいはわかる。これはきっと高いブランデーだよ。いいな、気分はすっかりファーストクラス。

濃いのでちびりちびりと飲んでいると、もうカップの回収が始まった。一気に飲もうとすると「ごゆっくりどーぞ」とのこと。

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 ウェルカムドリンクで注文したブランデーの水割り。

12:30、こんどはお待ちかね機内食の時間になる。日本発のフライトならば大抵和食か洋食か2択ということになるが、これもかなり悩ましいところである。どっちも大して変わらないということもわかっているが、それが余計に悩ませることになる。これでは決められないので、今回はある方法で選ぶことにした。それは『前の人と違うものにする』ということで、そんなわけで洋食をチョイスした。

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 機内食は洋食をチョイス。メインは鶏のレモンクリームソース。

ドリンクはビールにした。プレミアムモルツも久しぶりに飲む。飛行機で飲むビールもうまい。
メインディッシュは洋風だが基本は和食のようで、煮物や味噌汁がつくなど和洋折衷となっている。洋食なのでナイフとフォークを袋から出そうとしたが面倒なので全部ハシで食べることにした。まだここは日本だ。

食後はデザートにアイスクリームと緑茶が出た。

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 食後のお茶とアイスクリーム。

トレイの回収が終わり、映画でも見ようとヘッドホンを付けるといつの間にか眠っていた。朝早かったのと、ブランデーが効いたようだ。目覚めると窓はすべてスモーク状態になっていて客室内は照明を暗くしてあった。お休みモードということになる。日本時間ではまだ午後2時を回ったところで、起きている人ばかりだ。

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 機内の様子。

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 化粧室はペーパータオルや歯ブラシも備え付けがあった。

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 ボタン操作でスモークガラスのようになる窓。外の景色が見えるのは良い。

飛行機はロシア北方の北極圏を飛んでいる。まだ雲の上を飛んでいるのかと思ったが、よく見ると下界の世界もまだモノクロの冬景色なので雲のようにみえたのだった。このあたりは春が来ることはあるのだろうか。
写真を撮ろうと窓を明るくして外を見ていたらCAに暗くするように注意された。ハイハイ。

それでも写真を撮る時だけ一瞬明るくしてすぐに元に戻した。

これから北極圏に向かうというのに、いまからこんな景色を見ていていいのだろうか。むしろずっと雲に覆われていた方が良かったのかもしれない。

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 ロシア北部のオビ湾上空。海面は結氷して真っ白。

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 もうすぐ6月だというのに北極圏はまだ雪と氷の世界だった。

日本時間17:50、機内の照明が点いて明るくなる。また香りのきついおしぼりが配られる。グッドモーニングとでも言いたくなるような雰囲気だが、ヘルシンキ時間ではこれから昼の12時である。

ここからは時計を6時間遅らせてヘルシンキ時間とする。

何の前触れもなく、機内食が配られ始めた。飛行機の旅はイベントが始まると途端に慌ただしくなる。2回目のメニューは1種類のみ。悩むことが無いのでかえって良いのかも。スープとパンのみと言う質素なもの。トマトがベースの鶏肉のシチューで、日本に帰ったら自分で作ってみようと思った。

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 2回目の機内食。スープストックトーキョー製の鶏肉とトマトのシチュー。

いつのまにか飛行機はまた雲の上を飛んでいる。
13時過ぎ、あと1時間20分でヘルシンキ・ヴァンター空港に着くとアナウンスがある。天候は雨、気温は16℃。乗り継ぎの飛行機の時刻とゲート番号は出口の出発便情報のモニターで確認してくれとのこと。

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 ヘルシンキ・ヴァンター国際空港に着陸。

ヘルシンキ空港に着陸し、ゲートに着いたのは14:30だった。定刻では14:50着なので若干早く着いた。国際線の時間は相当余裕をもっているためか大抵は所定より早く着く。乗り継ぎ時間にも余裕ができるし、早く着く分はむしろ歓迎する。それは誰も同じだろう。

飛行機を降りてからが大変だ。ここからは未知の世界になる。ここが終点ならばひたすら『EXIT』のほうへ向かって歩けば良いのだが乗継となると。しかもここでEU圏のイミグレーションがある。

とにかく一緒に飛行機を降りた人たちのあとに付いて歩くしかない。

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 ヘルシンキに到着。とにかく人の後について行く。


posted by pupupukaya at 16/06/18 | Comment(0) | 2016年白夜・北欧旅行記
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