■ 2025年5月2日
おはようございます。
台湾4日目の朝。
テレビで朝の天気予報を見ていると、今日も晴れ。気温も30℃超え。
といっても台北を含めた台湾東部のことで、台湾西部は雨予報となっていた。
今日の予定はですね、台鐵の観光列車に乗って台湾を1周してくるというもの。
その列車とは、『環島之星(フォルモサエクスプレス)』。
台北を起点として台湾を一周する観光列車で、全車両商務座(日本のグリーン車)という豪華列車。
途中で積み込む弁当ながら三食付きというクルーズトレインでもあります。
今回旅行の計画当初は、左営まで高鐵で行って、そこから自強号(日本で言う特急列車)などを乗り継いで台湾を1周しようかと思っていた。
調べているうちに、台鐵の優等列車は原則全車指定席だということがわかる。
日本から台鐵のホームページから予約・購入できるけど、それだとガチガチにプランが決まってしまうしなあ。
かといって、現地で指定席のチケットを買うのも面倒だなあ・・
と思っていたところで見つけたのがこの列車だった。
お値段は台北〜台北1周コースで15,965円。
私自身は観光列車というか、クルーズトレインというのはどうも性に合わないと思っている。
やはり一般の列車に乗って、現地の人の中に混じって乗っている方が好きなのだ。
色々考えたが、台湾は初めてということもあり、今回ばかりは利用させてもらうことにしようか。
それ以上に惹かれたのは、この観光列車のサービスである『ハッピーアワー』というもの。
ディナータイムはビール飲み放題になるんだって。
意地汚い話はさておいて、とにかくこの列車に乗ることに決めたのだった。
スマホで表示する電子乗車券。
申し込みは日本の旅行代理店で取り扱っていて、私の場合はRトラベルで予約・購入した。
紙のチケットは無し。
乗車10日前にメールで電子乗車券が送付されてきた。
発信元はJTB台湾となっていて、こちらが日本側の総代理店となっているようだ。
台北 8:10 → 21:44【環島之星(フォルモサエクスプレス)】
7時半、ホテルを出て今日もまた世話になる台北車站へ。
駅の壁に表示の温度計は25℃を示している、今日も暑くなりそう。
さて今日乗る『環島之星』という列車は台北を8時10分に出発して、時計回りに台湾を1周して再び台北に戻るのが21時44分。
距離にして875.9km、乗車時間13時間34分は、なかなかの乗り応えではある。
こんな列車に1日中乗っているのは酔狂と見るか、乗っているだけで台湾1周できるので楽しそうと見るかは、人によって分かれそうだ。
私は鉄道ファンの中でも乗り鉄に分類される人なので後者。
1日中列車に乗っていられると思うと心がはずむってもんだが、堅気の一般人から見るとどうなんだろうか。
★ ★ ★
台鐵の改札口で駅員にスマホで表示した電子乗車券を見せる。
駅員はいぶかし気に画面を見たが、通してくれた。
この乗車券はスクリーンショットではだめで、オンラインで表示したものでなければ無効となる決まり。
その確認だったのだろう。
台鐵の4月台(ホーム)
『環島之星』が発車する4B月台(ホーム)へ行くと、すでにあちこちに人だかりが出来ていた。
行楽っぽい恰好の人ばかりなので、『環島之星』の乗客なのだとわかる。
この番線に停車中の列車は基隆行き区間列車。
立ち客をたくさん乗せて発車を待っている。
こちらは郊外へ向かう通勤ラッシュといった光景。
基隆行きは8時00分に発車、そのあと8時03分向かいの4Aホームに七堵行き区間列車が入線し05分に発車する。
この時間帯の東方面行き列車は『環島之星』も含めて5分間隔。
台鐵のホームは2面4線しかないので、同じ方向へ発車する列車は、島式ホーム両面を交互に発着するようになっている。
その列車に混じってやって来るのだから、なかなか慌ただしい。
電気機関車牽引の『環島之星』が入線。
8時06分、1台の電気機関車を先頭にした列車が入って来た。
乗客たちが一斉にカメラやスマホを構えるのは日本と変わらない光景。
8時07分入線、8時10分発車とわずか3分停車なのは、この列車も例外ではない。
長距離かつ観光列車らしからぬ余裕のない出発となるが、ホーム数が限られているので致し方ないところ。
サンリオキャラクターがラッピングされた客車。
客車はサンリオのキャラクターがラッピングされた、地下ホームに突然現れた珍客という感じがする。
今年の1月から、それまでディズニーキャラからこのサンリオキャラになったようだ。
車体だけでなく、車内も壁から天井までサンリオキャラでいっぱい。
基本子供向けということになり、乗客は小さな子供連れの家族が多い。
人気列車なようで、そういった顔ぶればかりで、座席は満席に近い状態だった。
こちらは列車に乗るのが目的でやってきたとはいえ、何となく場違いというか気恥ずかしさが湧いてくる。
1両に2列あるハズレ席。
客室の座席はというと、商務座だけあって2席+1席の並びで、シートピッチも日本のグリーン車並み。
これなら朝から晩まで乗り通しても快適に過ごせそうだ。
で、指定された席番の席を見つけると1人掛け席ながら窓が小さく、しかも上部が開くために窓の真中に太い中桟(なかざん)が横たわるという席。
他の席は2列分一緒の大型窓。
前後の車端部だけこうした窓配置になっている。
これはとんだハズレ席だ。
ちょっとがっかり。
宜蘭線 台北 → 蘇澳新
発車して10分、地下区間から地上へ出たあたりのタイミングでクルーがワゴンを押して現れる。
各席にサンリオのキャラクターが描かれたボックスを置いてゆく。
朝食というわけだった。
朝食ボックス。
続いて飛行機のドリンクサービスのようなワゴンが来て「飲み物は?」と聞いて回る。
セリフを日本語で書いてみたが、実際は中国語。
当方は中国語は全く分からないが、言わんとすることは分かる。
ポットは多分コーヒーなのだろうと思い、ポットを指さす。
その女性のクルーは突然、
「コーヒー、オチャ、ドッチ?」と言った。
日本語を話すほどでもないが、日本人の扱いは慣れているような感じ。
コーヒーをもらう。
サンドイッチとおにぎりがメイン。
ボックスの中身は、三明治(サンドイッチ)、おにぎり、カップ入りプリン、カットフルーツ。
サンドイッチはマーガリンの風味たっぷり。
具を混ぜ込んだおにぎりのご飯は固め。
イチイチ日本と比較してもしょうがないし、これも所変われば品変わると思うことにする。
のんびりとした風景。
列車は台北郊外の駅を次々と通過する。
車両基地の横を通ったり、鉄道好きには楽しい眺め。
そのうちに山が多くなり、渓谷沿いといった風景になってきた。
昨日乗った高鐵(新幹線)も良いけど、車窓を眺めるのならば台鐵(在来線)の方が断然良い。
渓谷区間から長いトンネルを抜けると左側に海が現われた。
ここからは宜蘭(イーラン/ぎらん)県となる。
しばらくは海沿いの風景となる。
海の向こうに亀山島を望む。
水平線上に島影が見え、おっあれが沖縄の与那国島か・・と思いたくなるが、そんなはずはなく。
あれは10kmほど沖合にある亀山島(クイシャンタオ/きさんとう)で、現在は無人島。
自然保護のため、上陸は事前許可性となっている。
一方の日本国最西端にある与那国島はというと、台湾から111km。
こんな海面に近い標高の場所から見えるわけないね。
★ ★ ★
台北を発車して1時間、だいぶ席も温まってきたところで車内探検をしてくることにした。
デッキもサンリオキャラクター。
デッキが客車の両端にあって客室とはドアで仕切られている。このあたりは日本と同じだが、優等列車ならば世界共通でもあるだろう。
デッキの片側には大型荷物置き場があって、スーツケースが何個か並んでいた。
あとコンセントが1つ。
豪華列車とはいえ車両自体が古いので、コンセントはここにあるだけ。
あとWi-Fiも無し。
ちょっと注意したいところ。
小便器がある化粧室。
大型荷物置き場の向かいに化粧室のドアがある。
洗面台とトイレが一緒になったタイプ。
大きく口を開けた男性用小便器が妙に印象的だった。
時間とともに汚れがちなトイレだが、終点までずっと綺麗なままだった。
きっとクルーが掃除していたのだろう。
2号車前側、バー車両。
今乗っているのが3号車で、後ろ側の隣2号車の半分はバー車両となっている。
カウンターと窓側に立席テーブルがあるが、食事等は基本座席に配られるので、本来のバーとしての利用はあまり無いようだった。
今の時間は何やらイベント中。
2号車後ろ側、カラオケ車両。
2号車のもう半分はカラオケ車両。
乗客であれば無料で利用でき、予約も不要。譲り合って利用する施設。
1号車、体験車両。
一番後ろの1号車は体験車両として、時間帯によってはイベントが行われるようだ。
それ以外はフリースペースとなり、ロビーカーのような位置付け。
座席が離れて指定されたのか、こちらに引っ越してきてる家族もいた。
| 号車 | 車番 | 種別 | キャラクター |
| 1 | DC10507 | イベント車 | |
| 2 | DC10504 | バー・カラオケ車 | |
| 3 | BCK10603 | 商務座 | マイメロディ |
| 4 | BCK10605 | 商務座 | ポムポムプリン |
| 5 | BCK10611 | 商務座 | クロミ |
| 6 | BCK10612 | 商務座 | シナモロール |
| 機 | E407 | 機関車 |
前から後ろまで見てきた編成は上記のようになる。
1号車のさらに奥には使われていないバーカウンターがあった。
まだ先に行けるようなので進んでみる。
1号車最後部のデッキ。
ドアの向こうは編成最後部のデッキだった。
仕切りドアの窓から後ろへ流れる景色が見えるではないか。
小窓ながら、最後部の展望車といったところ。
ただこの場所は車内で回収したゴミ置き場となっているようで、ゴミ袋が床に並んであった。
それさえ気にしなければ、ずっとここにいたいなあと思うほど景色は良い。
デッキからの後面展望。
複線の線路と交流電化の架線。
鉄橋に踏切。
う〜ん、日本のJRとあんまり変わらないねえ。
台鐵の軌間(ゲージ)も日本と同じ1067mm。
親近感は湧くけど、異国情緒に欠けるなあ。
でも面白い。
この場所を知っている人はいないようで、私1人の貸し切り状態だった。
ドア扱いは車掌さんの仕事。
ずっと後面展望を眺めていたら、客室ドアから車掌さんが現われた。
驚いて振り返ると、
車掌は、私に構わずどうぞと言った風に身振りで示し、出入り口ドアの方に立った。
何かと思ったら、駅に到着してのドアの開閉作業だった。
そういえば昨日の高鐵もそうだったけど、各出入口ドアの横に車掌用のドア開閉ボタンがあった。
逆に乗務員室ドアが無かったな。
台湾では、こうして客車の出入り口ドアから車掌のドア扱いを行うことになっているようだ。
礁渓停車中。
台北を出発してから最初の停車駅は礁渓(ジアオシー/しょうけい)。
自強号が通過するこの駅に停車するのは、温泉街があるからだろうか。
5分停車なのでちょっとホームに出てみる。
前の方はちょっと外の空気を吸いに、あるいは列車の撮影にと車内の乗客の姿も見えた。
ここでまた自席へ戻る。
礁渓を発車すると、またワゴンのクルーが現われて、お菓子の小袋を配って回る。
おやつタイムといったところ。
小袋を開けてみると日本と同じ米菓のあられ。
しかし、妙に胡椒の効いたあられだった。
このあたりは宜蘭(イーラン/ぎらん)平野といって台湾東部では数少ない平地でもある。
なお、宜蘭県の中心都市である宜蘭は通過というあたりは観光列車らしい。
北廻線 蘇澳新 → 花蓮
宜蘭平野の南端になる蘇澳新(スーアオシン/すおうしん)から宜蘭線から北廻線へと路線名が変わる。
この線は1980年に全通した新しい路線で、ここからはトンネルが多くなってきた。
やはり地形が険しい区間なのだろう。
沖に漁船が浮かぶ東海岸沿いを行く。
トンネルの間の地平区間は海沿いを走る。
波もおだやかな、列車が来ない時は静かな海岸を思わせる。
2024年花蓮地震での地滑り箇所。
この北廻線は全線複線なのだが、列車は山側の線路を走る。
海側の線路は閉鎖されているようで、ところどころ工事が行われていた。
あとで調べたらこの区間は、去年(2024年)4月に起こった花蓮地震での被災箇所だった。
30km/hの徐行標識があり、列車は速度を落として通過する。
クルーが弁当を積み込む花蓮車站。
次の停車駅、花蓮(ファーリェン/かれん)に到着。
花蓮市は人口約10万人の花蓮県の中心都市。台北以来の大きな駅といった感じだ。
地震による単線区間や被災箇所の徐行運転のためか3分遅れで到着。
ホームの電光表示板には『晩4分』(4分遅れ)と表示があった。
ホームではクルーがワゴンから弁当を受け取って走る姿が見えた。
きっと今日の昼ごはんとなる弁当だろう。
ランチボックスが配られる。
花蓮を発車するとすぐに朝と同じようにクルーが弁当を配りにやってきた。
飲み物は今度はお茶をもらう。
弁当箱は、今度のは日本の幕の内弁当のようなボール箱だった。それにカットフルーツが付く。
花蓮積み込みの焼きサバ弁当。
弁当はご飯の上に焼いた塩サバが乗る幕の内弁当風。
あとは揚げたカニ、味玉、コリコリした蒲鉾?、キャベツなど。
この塩サバが焼き加減が良く、美味しかった。
だけど食器がなぜか使い捨てのスプーンとフォーク。
もしかしたら日本の駅弁みたいに箱の中に箸を忍ばせてるのかなと思ったが見つからず。
なぜ箸じゃないの?
食べづらいことこの上ない。
『環島之星』に乗るならば、箸を持参した方がいいのかも。
台東線 花蓮 → 台東
花蓮からは路線名が変わり、ここからは台東線に入る。
台東線は、全線開通は日本統治時代の1926(大正15)年とわりかし古い路線だが、当初は軌間762mmという軽便鉄道規格の鉄道だった。
戦後も長らくナローゲージが続き、現在の1067mmに改軌されたのが1985年となっている。
トコトコのんびり走る軽便鉄道と思いきや、日本の特急列車に当たる『光華号』も運転され、さらに夜行列車もあり寝台車も連結されていたというから立派なものだ。
この当時の台東線では『光華号』が80km/h以上のスピードで走っていたという。
ナローゲージでの乗り心地はどんなものだったのだろうか。
その乗り心地を、宮脇俊三著『台湾鉄路千公里』の一文で見てみよう。
六〇キロぐらいで走っているときは、なかなか頑張るではないか、快適だぞと思った。 七〇キロを越えると、あまり無理するなと言いたくなった。 そして八〇キロを越えたときは、もうやめてくれと叫びたくなった。 乱気流のなかを行くジェット機のように揺れ動き、棚の荷物まで落としながらつっ走ってきた |
宮脇俊三著『台湾鉄路千公里』より引用。
そんな時代の恐ろしい列車に乗ってみたかった気もする。
今は1067mm軌間の電化された線路を95km/hで走っている。
単線の台東線。
花蓮からは単線区間となり、列車交換のためなのか停車駅が多くなる。
停車駅ごとに色々な列車を目にするのは楽しい。
池上で莒光号と交換。池上。
池上(チーシャン/いけがみ)で交換した『莒光号』(急行列車に相当)は、電気機関車牽引で8両の客車を連ね、プラス後ろ2両は荷物車を従えるという堂々とした編成だった。
時刻表で調べたら、台東を11時35分に出発し、台北を経由して終点の彰化着が22時51分という、とんでもないロングラン列車である。
台湾のほぼ2/3を大回りしているのだから、全区間通して乗る客などまずいないだろう。
こんど台湾に来たら、こんなのんびりとした列車にも乗ってみたい。
それまで残っていればいいけどな。
台東着。
台東(タイドン/たいとう)には定刻の13時11分着。
『環島之星』は、ここで24分間の停車時間が取られている。
台東市は人口10万人、台湾東部の主要な都市の1つ。
ホームは人も多く、新しくて垢抜けして見えた。
向かいと隣のホームには、真っ白な車体の新型電車EMU3000型の『自強号』が停車している。
これには派手派手のラッピング車両の『環島之星』号も少々古さを隠せない。
台北から牽引してきたE400型電気機関車。
24分の停車時間は、改札を出て駅前の様子を見てくるくらいの余裕はありそうだが、台東は雨が降っていた。
このままホームに留まることにする。
それともう1つ、なぜ台東で20分以上の停車時間が設けられているのか?
こんなことは、鉄道に詳しい方ならピンとくるに違いない。
私もちょっと見当をつけていた。
機関車の連結作業。
それは機関車の交換作業。
機関車の方に歩いて行くと案の定、係員が機関車の開放作業を始めていた。
台北から牽引してきた機関車はすぐにホームを離れて行く。
10分くらいして、付け替える機関車がまたやってきた。
今度はなんと重連。
機関車は客車の手前で一時停止。
誘導員の緑と赤の旗の合図で進み出し、「ガッシャーン」と連結する。
そして係員がホーム下に降りて、車両間の配線の接続作業。
日本とあまり変わらないと言いたくなったが、旅客列車の機関車の連結作業など日本では一昔前に消滅していたな。
それでも違うなあと思ったことが1つあって、それは連結作業の見物人が私ともう1人しかいなかったこと。
もし日本だったら、乗客たちがこれでもかというほど集まってきて、カメラやスマホで撮影していることだろうよ。
E400型とE200型の重連となる。
こちらでは見物人がいないのは、台湾では機関車牽引の客車列車がまだ残っていて、こうした機関車連結が普通に見られるからということもあるのだろう。
だけど、客車列車はこうした作業が避けられず、人手も費用もかかるのが欠点。
しかも台湾は2020年に南廻線が電化され、『環島之星』号の走行路線も全てが電化区間となっている。
こうなると機関車牽引である必要はなく、遅かれ早かれ電車化される、日本と同じ道をたどるのだろう。
実際、『自強号』で使用されているMU3000型電車は、客車列車の『莒光号』のほか、この『環島之星』も置き換える目的で導入されている。
今でこそ普通に見られる台湾の客車列車だが、電車に置き換えられる日は近いのかも知れない。