2025年3月15日JR北海道ダイヤ改正について考える

12月13日、毎年12月恒例の来春ダイヤ改正の概要がリリースされました。

 *2024.12.13
  2025年3⽉ダイヤ改正について
    (ニュースリリース | JR北海道 - Hokkaido Railway Company)

ダイヤ改正の主な内容を要約すると、以下の通りとなります。
  1. 特急『大雪』を特別快速『大雪』とする。
  2. 早朝の上り『ライラック』、深夜の下り『カムイ』の運転取りやめ。
  3. 『おおぞら7号』の停車駅見直しにより所要時間短縮。
  4. 『北斗2号』の停車駅見直しにより所要時間短縮
以前から報道されていた内容で知ってはいましたが、公式にリリースされたことから今度のダイヤ改正についてあれこれ考えてみたいと思います。


 1. 特急『大雪』を特別快速『大雪』とする。

現在札幌〜網走間の特急は、札幌〜網走間直通の『オホーツク』2往復、旭川〜網走間の『大雪』2往復が運転されています。
両列車とも通常はキハ283系3両1組が3編成で共通運用を組まれています。
そのため『オホーツク』として網走駅に着いた列車が『大雪』として折り返し発車するという光景が見られます。

今回のダイヤ改正は、このうち『大雪』2往復を特別快速に格下げするというもの。
運休日を設けずに毎日運転とし、現在は通過列車がある白滝、丸瀬布の両駅にも全列車が停車するようになります。
特急『オホーツク』として存続する2往復は札幌〜網走間を単純に1往復する運用となり、運転時間帯も変更となります。

運用をわかりやすくするために、石北線関連の列車のダイヤグラムを作成してみました。

 2024年3月16日改正(改正前)
seki2403b.png
改正前は特急がキハ283系が3編成という運用です。
朝に網走を出て札幌まで1往復する編成が1本、それに『大雪』1往復と『オホーツク』片道の運用を受け持つ2編成。

有効時間帯を最大限活用する運用で、網走でも旭川でも短い時間で折り返すことになり、大幅な遅れや車両不具合などが発生すると、車両繰りでの運休が発生しやすくなります。

 2025年3月15日改正(改正後)
seki2503.png
改正後は特急が2編成、快速が3編成による運用となるようです。
特急の折り返し時間も十分にあり、遅れが発生しても折り返し時間で吸収できる余裕が出来ました。

札幌直通の特急は2往復とこれまでと変わらず、快速『きたみ』もグループに加えて旭川乗換えを含めれば札幌〜網走間は5往復とまずまずの本数となります。

これが特急車両を快速列車に使用するのであれば、JR北海道さんご自慢のサービス列車となるところですが、そう甘くはありません。
特別快速に使用されるのは、今や道内普通列車の標準となったH100形気動車となります。

DSCN5919a.JPG
 H100形特別快速『大雪』のイメージ。

特別快速となる『大雪』ですが、

“H100形2両で運転し、すべて自由席で特急料金は不要です”
 (2025年3⽉ダイヤ改正について より)

とあります。

快速だから特急料金は不要ですが、『トクだ値』の扱いはどうなるのでしょう。
場合によってはかえって高くつく可能性もあります。

 【旭川〜網走間】
・トクだ値50%OFF:4,270円(特急大雪利用)
・普通乗車券:5,610円

それよりもっと気になるのは、これまで特急として運転していた列車の乗客を、この車両に収容できるのかということ。

H100形気動車は2020年3月ダイヤ改正から函館山線から運転を開始し、順次各線区に投入されてきました。
基本的に通勤通学向けの車両で、座席はセミクロスシート。

この車両の定員は1両当り99人となっていますが、うち座席数は36席しかないあたり通勤電車仕様といえます。
残りの63人は立ち客になりますから。
車両中央部に6つのボックスシートがありますが18人分で、もう半分はロングシート。
旭川〜網走間の4時間近くをロングシートで行くのもどんなものでしょう。

快速なのだからロングシートでも文句を言う筋合いはないのでしょうか?
99人までは定員乗車だから問題はないという考えなのでしょうか?

  ★    ★

想像だけであれこれ批判してみても始まりません。
実際に数字を挙げてみましょう。

試しに記事を書いている翌日の、12月15日(日)『大雪1号』の乗車率はどんなものかと調べてみました。
但し、旭川〜網走間での表示なので、区間によっては人数が異なります。

ekinet20241215.png
 えきねっとで2024/12/15『大雪1号』のシートマップを表示したものを加工引用。

指定席の1・2号車で59人。これに3号車自由席が同じくらいの乗車率とすれば、編成全体の乗車人員は80~90人といったところになります。
H100形2両の座席は合計で72席ですから、同じ人数の乗客ならば立ち客が出てしまいますね。

さらに帰省ラッシュの12月29日の『大雪1号』を見ると、1両増結の4両編成となっています。
指定席はすでに満席に近い136席が予約済み。
当日は満席となり、自由席の人数も足すと乗客は全部で200人以上になると予想できます。
それでも全員着席となります。
特急型車両は、意外と収容力があるわけで。

これを仮にH100形2両で運転するとなると、1両当りの乗客は100人以上となってしまいます。
さすがにこれでは車内は満員電車並みの混雑になりますね。

1両増結して3両編成としても1両当り約67人。
36席のH100形では1両当り30人の立ち客が出る計算です。

このあたりは

“令和7年度以降、長距離移動の快適性向上のため、座席数の増加と座り心地の改善を行っていきます。”
 (2025年3⽉ダイヤ改正について より)

とあるので来年(2025年)度以降に順次車内の座席の交換を行い改善されるようではあります。

DSCN6693a.JPG
 新・特別快速に使用されるH100形の車内。

ですがこの車両、客室のかなりのスペースをバリアフリートイレが占拠して、さらに機器室の出っ張りがあったり、あまり改造の余地がない車両にも見えます。

DSCN6697a.JPG
 トイレ前は通路が狭く2人掛け席の設置は難しそう。

素人目の意見ですが、座席を改善するとしても、ボックスシート部分を特急から発生した中古座席へ交換するのが関の山という感じがします。
2人掛けシートが、せいぜい片側に5脚ずつ、両側で20人分の座席が並ぶ程度でしょうか。
せめて2両1ユニット運用として、片方のトイレを撤去して座席に充てるくらいしないと、根本的解決とはならないと思うんですが。

それに座席交換も来年度以降の話であって、ダイヤ改正後は当面は現在のH100形が使われることになります。

同じ車両を使用している函館山線や富良野線も混雑している列車をよく見かけますが、あちらの乗車時間は長くても1時間〜1時間半程度。
石北線の新しい特別快速は、北見や網走まで乗車時間3〜4時間の乗客が多い長距離列車。
ハイシーズンはそこへ青春18や北東パスの客も加わるはすで、大変なものでしょう。

また快速化と同時にワンマン運転となるわけで、これでは車内整理もままなりません。
ハイシーズンとなれば通路は立ち客とスーツケースがびっしりで身動きも取れず。
荷物を抱えた客が途中の駅で降りるに降りられず、停車するごとに後ろから
降りまーす!」と叫ぶ声がしたり。
途中駅では吹雪の中、積み残し多数。

やだ。こんな列車絶対乗りたくない。



 2. 早朝の上り『ライラック』、深夜の下り『カムイ』の運転取りやめ。

削減される列車は、次の2本となります。

旭川発 5:18 → 6:43 札幌着【ライラック2号】
札幌発 23:05 → 0:30 旭川着【カムイ47号】

旭川発が朝の5時台、旭川着が深夜0時半というこの列車の前身は、夜行列車だった特急『利尻』『オホーツク』になります。

夜行列車時代も札幌発の自由席は満席でも、旭川を過ぎたらガラガラなんてこともしょっちゅうで、旭川までに降りる人たちにとってはL特急(当時)の一員でもありました。

夜行列車が廃止となった際、代わりに『ライラック』系統の増発として新設されています。

DSC03217.JPG
 特急利尻があった頃(2006年2月撮影)

函館や帯広・釧路方面の特急列車に接続する列車であり、新千歳空港から朝早くの飛行機を利用する人や、逆に夜遅い飛行機で着く人などからは大事な列車だったでしょう。
時間帯からして利用客が少ないことは承知ですが、こればかりは公共交通機関としての使命を忘れていると思うのですが。

特急とはいえ、札幌〜旭川間は30分から1時間ごとに運転される電車感覚で利用できる区間なので、実質始発繰り下げと終電繰り上げということになります。



 3. 『おおぞら7号』の停車駅見直しにより所要時間短縮。

もう特急列車の大幅なスピードアップなど無いものと思っていましたが、今度の改正では下り『おおぞら5号』が、大幅に所要時間を短縮します。
こちらは今度のダイヤ改正で明るい話。

札幌〜釧路間で31分も短縮するのだから、なかなかの快挙・・・と思いきや、そうでもなかったようです。
これは改正前は『おおぞら5号』が下りの最速で、札幌〜釧路間を4時間05分で結んでいました。
それを7号の停車駅を減らして最速列車にするというものです。

特急おおぞらの所要時間比較
 改正前改正後差分改正前改正後差分
 おおぞら7おおぞら7おおぞら5おおぞら7
札幌 発13:5513:57 11:4513:57 
南千歳発14:2914:25△812:1714:25△4
帯広 着16:4116:18△2514:1616:18△10
釧路 着18:2017:51△3115:5017:51△11

改正前の5号と改正後の7号を比較すると、札幌〜帯広間は2時間21分運転で10分短縮、札幌〜釧路間は3時間54分運転で11分短縮となります。

ただ、速くなったのはこの1本だけで、しかもあちらを立てればこちらが立たずの図式。
反面、上りの『おおぞら6号』は8分、『おおぞら8号』は6分、それぞれ釧路〜札幌間で所要時間が増加しています。
これは石勝線と根室線内は単線区間なので、どちらかが道を譲らねばならない事情によります。

それにしても、車両も最高速度も同一で、停車駅が数駅違うだけで、どうしたら30分以上も所要時間が違うのかが不思議です。


 4. 『北斗2号』の停車駅見直しにより所要時間短縮。

所要時間短縮の対象列車は『北斗2号』の1本のみとなります。
かつて『スーパー北斗』の2時間59分運転を知る身にとっては、僅か4分の短縮など誤差の範囲内に思えてしまいますが、僅か4分でも札幌〜函館間の所要時間は3時間29分となり、3時間半を切るのは快挙と言えるのかも知れません。

ちなみにこの3時間29分という所要時間は、振り子式キハ281系『スーパー北斗』が登場する前の『北斗』の最速所要時間と同じです。
やっと今から30年前の水準に追いついたといったところでしょうか。

特急北斗2号の所要時間比較
 改正前改正後 
 北斗2北斗2 差分
札幌 発6:006:00 
新函館北斗着9:179:15△2
函館 着9:339:29△4

この札幌駅朝6時発の『北斗2号』は、私は3回乗ったことがあります。
地下鉄も始発前、札幌駅でも手稲始発の列車以外の接続がないので札幌発車時はいつもガラガラでした。
この列車の主な乗客は、新函館北斗から『はやぶさ18号』乗継ぎ客と東室蘭までの通勤客のようでした。

DSCN2567.JPG
 新幹線乗継ぎ客からすれば早く着いても意味はない。

東室蘭も新函館北斗も、早く着いても乗客からすればかえって迷惑という感じがしなくもありません。
時間短縮した分は、札幌発時刻を繰り下げて欲しかったと思うのは私だけでしょうか。

  ★    ★    ★

以上2025年3月ダイヤ改正について思うことを書き連ねてみました。
私はJR北海道の利用頻度は少ない方ですが、たまに利用するときは自腹できっぷを買っています。
そんな自腹でたまに利用する乗客からの目線による考察なので、少々ずれている点があってもご容赦願います。

それにしてもダイヤ改正の度に不便になる時代になってしまいました。
JR北海道を批判したくなりますが、こればかりは企業努力だけでどうにかなる問題ではありません。

人口減少に止まらない乗客減少。
人手不足に施設の老朽化。
せめて道路行政と同じように鉄道行政があるべきと思いますが、現状ではそういった制度が無いのでどうしようもありません。

あと数年もすれば、運行しているだけでもありがたいと思え的な、最低限の本数とサービスを残すだけとなっているのでしょうか。
これは鉄道だけではなく、バスも同様・・・いやバスの方がより深刻でしょうか。

政府や政治が腰を上げない限り、地方交通衰退のトレンドは続くでしょうね。
現状の交通政策といえば、新幹線や高速道路誘致ばかり。
地元に密着した交通政策を解決できる政治家っていないのでしょうか。

・・鉄道ファンで内閣総理大臣の石破さん聞いてる?

〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。


posted by pupupukaya at 24/12/14 | Comment(1) | 鉄道評論
この記事へのコメント
おそらく大雪系統廃止することで繁忙期は臨時オホーツクを走らせようとしてると考える
乗り換え必須の大雪よりオホーツクの方が断然使いやすいし
えきねっと使うくらいなら期間中に北&東パスを使うようシフトするだろう
(ともかく定期運行しなければいけない大雪に283を使わないことで少なくともあと10年運用継続させようとしてるのは確定)
北斗おおぞらもネームバリュー向上を狙ってそうだし
JR北海道も流石にこれ以上客が減るような行為をしないよう心がけてるとは思う

知らんけど。
そもそも労組が死滅した段階で分割の意味ないからJR統合すればいいのに。
Posted by 通りすがり北見民 at 2024年12月26日 06:05
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