JTB時刻表の路線図では市の代表駅(中心駅)は二重丸で示され、そこが主要駅であるような表現となっています。
原則はJR駅かつ市の名前を冠した駅が対象となるのですが、JR駅があってもバス路線の方に付けられたり(新夕張など)、JR駅が市と同名なのに私鉄の方に付けられたり(弥富など)、付け方はどうも恣意的なところがあるようです。
JTB時刻表の索引地図より。
で、室蘭市の場合は、特急『北斗』の停車駅であり、実質室蘭市の中心は東室蘭駅周辺となっていますが、市の代表駅である二重丸は室蘭駅に付されています。
これは室蘭駅が市の名前を冠した駅名であり、市役所のほか胆振総合振興局などの主要な役所は室蘭駅近くにあることから、室蘭駅が文句なしに市の代表駅にふさわしいといえます。
みどりの窓口を示す緑色とともに、二重丸が主要駅を示す頼もしい駅のように見えます。
実際、特急『すずらん』の始発駅でもあるわけで。
ところが、そんな主要駅に見える室蘭駅もついに時代の流れが・・・
室蘭駅無人化を伝えるJR北海道のチラシ。
なんと室蘭駅が無人駅に。
特急の始発駅であり、室蘭市の代表駅である室蘭駅もついに無人化。
合理化と人手不足の折、やむを得ない措置とは思えますが、あの室蘭駅が?という思いもあります。
1997年に新築移転した室蘭駅。
無人化の張り紙がある駅入り口。
室蘭本線の一部でもあり、複線電化もされたこの室蘭支線ですが、営業的に見れば盲腸線ということになるのでしょうか。
今はワンマン仕様の737型電車が投入されて苫小牧方面への直通運転が復活しましたが、それ以前は特急と朝夕の通勤通学列車以外は単行のワンマン気動車が往復するだけの路線となっていました。
途中の、輪西、御崎、母恋の3駅は国鉄時代に無人化されています。
さて、無人化される室蘭駅、利用者はどれくらいいるのでしょうか。
年度 | 乗車人員(人) |
2015 | 578 |
2016 | 609 |
2017 | 619 |
2018 | 625 |
2019 | 633 |
(室蘭市統計書令和元年より筆者作成)
上の統計を見ると、コロナ前の2019年の1日当り乗車人員は633人。
札幌近郊の駅と比較すれば少ない数字ですが、地方の駅とすれば立派なもの。
2019年度で同じくらいの乗車人員の駅を挙げれば、北見駅675人、余市駅631人、富良野駅596人といったところ。
これら3駅も無人化という話は今のところ聞かないが、乗車人員だけ見れば室蘭駅も道内主要駅と同等の駅という見方ができます。
しかしこの統計はコロナ前のものであり、コロナによる利用者減の影響により現在はかなり減少している可能性があります。
全車指定席化により特急『すずらん』の利用者が大幅に減っているという話も聞きます。
この室蘭駅無人化に踏み切った理由は、利用者減だけなのでしょうか。
無人化となる改札口。
室蘭駅の無人化といっても、実は室蘭駅窓口の営業時間は7:20〜17:30となっており、それ以外の時間帯は無人駅と同様ということになっています。
ですから、室蘭駅無人化といっても、朝夜の無人時間帯が終日になったと言うこともできます。
無人化になっても指定券を買うことができる『話せる券売機』は引き続き設置されるので、特急券の購入や『えきねっと』で購入したきっぷの受け取りは可能です。
今後は『話せる券売機』と『えきねっと』をご利用くださいということになります。
話せる券売機は無人化後も利用できる。
室蘭駅は室蘭支線の終点であり、特急始発駅でもありますが同市内の東室蘭駅が特急『北斗』も停車する主要駅であり、そちらの方が利用者も圧倒的に多いことから室蘭駅の無人化に踏み切ったのだと思います。
室蘭市は胆振総合振興局が置かれた道内の主要都市の1つです。
2000年代の前半には10万人を超えていた人口ですが、人口減少が止まらず2024年8月現在の人口は7万5千人あまり。
同じ市内に2つの有人駅の維持はコスト的にも大変という営業判断もあったのでしょう。
あとは昨今問題となっている人手不足。
営業窓口は自動化できますが、列車の運転や施設の維持管理は人手が必要ですから、そちらの人員確保が優先となるでしょう。
もう1つ、これは個人的な希望からの推測ですが、チケットレス化への布石なのではないかということ。
飛行機はとっくにチケットレス化となっており、自宅のPCやスマホで予約・決済してQRコードの表示だけできれば搭乗することができます。
JRの特急などでも一部ではチケットレス化が始まっていますが、これは料金券に対してだけのものであり、乗車券はICカード乗車券を利用するか別途紙の乗車券を所持する必要があります。
これが本当のチケットレスとなり、『えきねっと』等で購入してプリンターで印刷したものや画面上で乗車券を表示すれば可とすれば、駅できっぷを発券しなくても直接列車に乗車できることになります。
PCやスマホで購入し、好みの座席を選択できて直接駅から列車に乗車できるなんてとても便利ですね。
反面、駅できっぷを購入する人が激減することから、駅の営業窓口は不要となるわけです。
『えきねっと』では手元で好みの席を選択できる。
事前にみどりの窓口に出向いて駅員に端末を操作してもらって購入し、利用日になったらまた駅に出向いて乗車するなんて不便なことをする必要がなくなるわけですから。
有人のみどりの窓口なんてのも主要駅だけ残して、あとは無人化されることでしょう。
それと、無人駅から乗車する場合は、現在のところ車内で乗車券・特急券を正規の料金で買うしかないわけですが、無人駅からの利用でも『トクだ値』などを利用することができるようになります。
特急『すずらん』でいうと、母恋、御崎、輪西、鷲別といった無人駅からの利用機会が増すことになります。
え?
お年寄りガ〜?
銀行のATMだって窓口利用だと振込手数料が880円(北洋銀行の場合)かかる時代だし、スーパーのレジだってセルフレジが増えました。
鉄道だけが保守的な利用者のためにコスパの悪い営業窓口を残すわけにはいかないでしょう。
ということで筆者は鉄道のチケットレス化推進論者なわけです。
でも今後は買えなくなるので記念に紙の入場券と乗車券を買ってきました。
室蘭駅で買ったきっぷ。
乗車券は引き続き同じ様式のものが指定券券売機で買えますが、入場券はどうだったでしょう。
有人駅の証拠ということで改札スタンプも押してもらいました。
この裏が黒色になった磁気券。
考えたら、磁気媒体って周りから姿を消して久しくなっています。
昔はカセットテープ、ビデオテープ、フロッピー、プリペイドカードと磁気で記録したものが溢れていたわけですが、もうふた昔も前のことですね。
私が今使っている磁気媒体といえば銀行のキャッシュカードと鉄道のきっぷくらい。
それでも市内や近距離ならばICカード乗車券利用だから紙のきっぷを買うことは滅多にありません。
今の磁気券システムもいつかは更新の時期が来るわけで、今や鉄道のきっぷくらいにしか使われなくなった磁気媒体機器は大変高価なものになることは想像がつきます。
実際、JR東日本を始めとした関東の鉄道各社は2026年以降に磁気乗車券から順次QR乗車券に移行するとしています。
(2024年5月29日 JR東日本のニュースリリース)
近距離券からとあるので、『えきねっと』等にも適用されるのはまだ先のようです。
それでもコスパとタイパ(タイムパフォーマンスの略)が良い物が出回れば、あっという間に全国に普及することでしょう。
あと数年後には磁気券のきっぷというものは無くなっている物の1つなのかもしれません。
こんな光景も早く過去のものになって欲しい。
磁気券だけでなく、今や全盛のICカード乗車券もこれからは縮小となる可能性があります。
熊本県内の交通事業者が、今後は全国交通系ICカード利用を停止して、クレジットカードのタッチ決済を導入することを決めています。
理由は全国交通系ICカードに対応する機器の更新代が高いということ。
クレジットカードのタッチ決済とは何ぞや?という人も多いでしょうが、これは今の新しいクレジットカードはレジにあるリーダーにカードをかざすだけで決済ができるというもの。
私も使っていますが、なかなか便利なものですよ。
かざした瞬間に「ピッ」と鳴って完了。いやあ早いこと。
電子マネー系よりもずっと早い。

↑ タッチ決済のイメージ。
特に資金の乏しいJR北海道では、次に機器の更新の時期を迎えたら、高価になるシステムをやめてQRコードやクレジットのタッチ決済に移行することも考えられます。
考えてみたら90年代に紙のきっぷに鋏を入れていたものが自動改札になり、2000年代にはICカード乗車券が登場して紙のきっぷが不要になりと進化しているわけです。
特急や長距離のきっぷだけが紙の磁気券のままというのはちょっと考えられないわけで。
こうした新しいシステムが導入されれば駅の有人窓口というものが不要となるわけです。
主要な駅の窓口だけ残して、駅は無人化はさらに進むことでしょう。
室蘭駅はその始まりとも言えそうです。
〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。
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