札幌市電の朝ラッシュを見て市電の今後を考える

札幌市電は11月の中旬から翌年4月初め頃まで、毎年冬ダイヤに移行します。
これは、雪が多い札幌では冬になると降雪や積雪による交通障害を見込んで、所要時間を多めに取る必要があるからです。

また冬になると、夏は徒歩や自転車で通勤していた人たちが市電通勤に切り替えるために、冬になると混雑するのが毎年のことになっています。

その中でも山鼻西線(以下“西線”と略します)は利用者が多く、特に朝ラッシュ時の外回り電車の混雑は相当なものです。

私も過去に5年間ほど西線沿線に住んでいたことがあって、毎日市電で通勤していたので実感としてわかっています。
西線9条や西線6条あたりでは乗り切れずに積み残し客が出るのが常態化していました。

沿線はここ十数年で新しいマンションが次々と立ち並び、沿線人口が増えて市電の乗客が増えるのは結構なことですが、増えた乗客の多くは朝夕のラッシュ時に集中することになりました。

西線の朝ラッシュでは、基本の循環便に加えて西線16条で折り返す便を加えて、外回りの西線16条〜西4丁目間では約3分間隔の運行となっています。

2019年2月から冬ダイヤのみ西線11条折り返しの便が2往復登場しています。
これは西線朝ラッシュの混雑が激しくなり、一部停留場での積み残しが酷くなったことから設けられた措置でした。

この増発便の効果は大きかったようで、以降冬ダイヤでは毎年登場するようになりました。

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 ↑ 札幌市電 標準時刻表(2023年11月16日改正冬ダイヤ)より引用。

以前は2往復ありましたが、今シーズンからはどういうわけか1往復となっています。
上表の8:03発赤文字電車がそれに当たります。

毎年設定されるくらいだから、西線のラッシュ緩和にはある程度効果を発揮しているのでしょう。

今日はそんな気になる、西線11条折り返し電車と、久々に見る西線の朝ラッシュを観察してみました。
2023年12月某平日のことです。


 ◆ 朝ラッシュピーク時の西線11条停留場

朝7時50分、西線11条停留場までやって来ました。
時刻表では48分発になる外回り循環が停車しています。

もう既に遅れているわけですけど、停留場に掲示の時刻表はあくまで標準時刻表なので目安でしかありません。
この時間帯は西4丁目までは3分間隔。
等間隔で運行していれば特に問題ないわけです。

車両は『アオアオ サッポロ』の広告を纏った8502号。
山鼻線から来た便なので、結構混んでいます。

外から見れば空いているつり革がいくつか見えるくらい。
車内は乗ってみればまだ余裕がありそうです。

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 7:51、外回り循環(8502号)発車。

交差点の信号が青になると8502号は発車。
同時に内回りの西線16条行も発車して通過して行きます。

ホームに残った乗客は9人。
これは積み残しではなく、車内に比較的余裕がある次の便を選んで乗るからでしょう。
前の便が発車したばかりですが、停留場の手前には次の便が近くまで来ています。

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 7:51、内回り西線16条行(241号)も発車。

今度は外回り西4丁目行8511号。
この電車は中央図書館前始発の便ですが、全員乗車しました。

それでも外から見ても西線11条の時点で結構な混み具合とわかります。
53分、信号が青になると発車。

同時に内回り西線16条行が発車します。
内回りは西線16条行が2便続行となります。
8時台以降のラッシュ輸送に備えてのことになります。

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 7:53、外回り西4丁目行(8511号)発車。内回り西線16条行(3303号)も発車。

一旦乗客が捌けたホームですが、歩行者信号が青になるとまた続々と乗客がやってきます。

次の電車は54分発外回り循環1109号。
1100形電車、通称シリウスと呼ばれる車両です。

車内に段差があったり、構造上デッドスペースが多かったりとラッシュ時の運用には難がありそうな車両ですが、朝ラッシュ時でも例外なく運用されています。

ちなみにこの1100形電車の定員は60人。
旧型車が100人、A1200形ポラリスが71人と比較すると、収容力が劣るのがわかります。

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 7:54、外回り循環(1109号)到着。

西線11条到着時点で車内には多くの乗客が見えました。
10人ほど乗り込んで発車します。

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 7:55、外回り循環(1109号)発車。

ホームに残った人は2人。
無理に乗り込まなくても、前の停留場を発車した次の電車が見えているので見送ったのでしょう

歩行者信号が青になると、また続々と乗客がやってきます。
ホームの人数は18人にまでなっていました。

続いて来たのが57分発外回り中央図書館前行3305号。
西線16条発の便なので、車内は十分余裕があります。

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 7:57、外回り中央図書館前行(3305号)到着。

ドアが開くと待っていた乗客が乗り込みますが、停車中にも横断歩道から続々と乗客が集まってきます。
車内も混雑してきたし、後から来た人は乗車を見合わせる人が多かったようです。

結局ホーム上に18人を残して発車しました。

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 7:58、外回り中央図書館前行(3305号)発車、内回り循環(1107号)も発車。

内回りの方は、内回り循環1107号に続いて西8丁目始発の西線11条行が到着します。

西8丁目始発となっていますが、実際は西4丁目で折り返しています。
これは西4丁目で折り返すと乗車ホームがなく客扱いができないため。

それはともかく、これが1日1便の西線11条折返しの電車です。

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 7:59、内回り西線11条行(251号)到着。

その間にも外回りのホームには乗客が続々と集まってきて、59分発外回り循環 211号が着く頃には23人にもなっていました。

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 7:59、外回り循環(211号)到着。

山鼻線から来た便なので、車内はすでに混んでいます。
それでも車内はまだ余裕があり、全員は無理でしょうが半分くらいは乗れそうな感じ。

しかしこの便に乗った人はあまりいなかった様子。
ホームに大勢の乗客を残したまま、211号は発車します。

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 8:00、外回り循環(211号)発車、西線11条終点(251号)は移動。

外回り循環211号は発車し、西線11条で折り返す251号は一旦停留場南側にある亘り線の向こうまで移動します。

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 ホームに残る大勢の乗客。

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 亘り線の先で停止する251号。

ホームの乗客たちの視点は、ここで折り返しになる電車に向かっています。
この電車だけが唯一座って行ける電車ということからか、西線11条からの乗客たちからは人気のようですね。

もっとも、座っても立っても、西4丁目まではわずか15分ほどの乗車ですが。

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 8:01、エンド交換して『内回り西4丁目』となる。

亘り線の先で停止して、行先表示機が『外回り西4丁目』に変わり、運転手が反対側に移動し、ヘッドライトが点灯し、動き出すまで50秒。
なかなかの早業で折り返します。

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 亘り線を通って転線。

亘り線のポイントはスプリングポイントといって、ばねの力で常に曲線側に開いているためにポイント操作が不要になっています。
西線11条で電車が降り返す光景は、冬ダイヤで平日朝の1日1回だけ。
レアな光景とも言えそうですね。

折り返した電車がホームに入る頃には、30人にもなっていました。
皆さんこの始発便を狙って家を出て来るのでしょうか。

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 8:02、西線11条始発となる内回り西4丁目行(251号)到着。

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 ホームからはみ出るまでに増えた乗客。

ドアが開くと乗客は吸い込まれるようにして車内へと入ってゆきます。
交差点の赤信号で発車を待つ間にも、次から次へと乗客がやって来て乗り込みます。

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 青信号になるまで発車を待つ。

外回り西4丁目行251号は始発の西線11条だけで40人以上が乗りました。
それでも車内は十分余裕があり、次の西線9条や西線6条でたくさん乗客がいても余裕で収容することができそうです。

ところでこの250形電車は単車の車両としては札幌市電最長の13.1mの車長があります。
定員も他の旧型車より10人多い110人。

ラッシュ時は詰込みが効く車両で、ぎゅうぎゅう詰めにすれば、130人は乗れるんじゃないでしょうか。
私が西線の乗客だった当時は、実際そのくらい乗っていましたけれどね。

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 8:04、外回り西4丁目行(251号)発車。内回り循環(214号)も発車。

今度は全員が乗車し、乗客は全員捌けた格好になります。
しかしこれで終わりではなく、朝のラッシュは8時半頃までは続きます。

7時50分からわずか15分間、外回り電車6便の一覧を下の表にまとめてみました。

観察した西線11条外回り電車一覧
時刻表実際時刻行先 備考
7:487:51循環 
7:517:53西4丁目  
7:547:55循環  
7:577:58図書館  
7:598:00循環  
8:038:04西4丁目 11条始発

平均運転間隔は約3分、西線11条から乗車する外回り6便への乗客の合計は、ざっくりと数えた結果ですが、約90人程度となりました。
輸送人員では地下鉄やJRとは比べ物になりませんが、路面電車としては立派なものです。


 ◆ 山鼻西線ラッシュ輸送の今後を考える

今年(2023年)11月に行われた冬ダイヤ改正では、朝ラッシュ時間帯に大きく変化がありました。
下に札幌市交通事業振興公社HPの『札幌市電 標準時刻表』から引用した夏冬時刻表を比較してみます。

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  ↑ 札幌市電 標準時刻表(2023年4月11日改正夏ダイヤ)より。

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 ↑ 札幌市電 標準時刻表(2023年11月16日改正冬ダイヤ)より。

上画像は、札幌市交通事業振興公社HPの『札幌市電 標準時刻表』からの引用になります。
夏冬ともに西線11条停留場平日外回りダイヤの抜粋です。

夏ダイヤと冬ダイヤを比べると、朝ラッシュ7時台の増発が目立ちます。
夏ダイヤ16本→冬ダイヤ20本と大幅な増加。

ちなみに、1時間当たり20本は、路面電車1系統あたりの本数としては、高知のとさでん交通と並んで全国トップになります。

逆に8時台は1本減って18本となりますが、これは8時50分以降の1便を整理したから。
7・8時台トータルでは、冬ダイヤのほうが3便増便となっています。

特に西線11条始発便を含む7時57分から8時09分までは、ほぼ2分間隔での運行となりました。
今ダイヤ改正は、ピーク時に最大の輸送量となるように調整したようで、色々苦心も見て取れます。

札幌市電は沿線にマンションが次々と建設され、沿線人口が増えていることから、朝ラッシュの通勤対策が今後の課題といえましょう。

最近は、ラッシュ輸送だけでなく日中でも混んでいるのが見受けられます。
コロナの行動制限で外出を控えていた高齢者が、再び外出するようになった傾向もあるようです。
コロナ5類移行以来、市電の乗客数も増加してコロナ前に戻った印象を受けます。

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 日中の利用客が戻ってきた札幌市電。西線6条停留場にて。

いや、統計を見ても実際に増えています。

たとえば 統計さっぽろ(月報)から今現在入手できる最新の札幌市電乗車人員を見てみましょう。

最新のデータが2023年9月のもので、1日当たり23,021人となっています。
コロナ前の2019年の同月1日当たりが22,831人なので、既にコロナ前を上回っていることになります。

下の表で2015年度から今年度までの、各年9月単月度の乗車人員を比較してみます。

札幌市電9月度1日当たり乗車人員
年月乗車人員備考
2015年9月20,451人ループ化前
2016年9月22,969人ループ化後
2017年9月22,602人 
2018年9月20,944人震災運休の為減
2019年9月22,831人 
2020年9月17,885人コロナ
2021年9月15,831人コロナ
2022年9月19,910人コロナ
2023年9月23,021人 
(札幌市統計書より筆者作成)

9月度のデータを比較しただけなので、今年のものは一時的に増えただけという可能性はありますが、札幌市電の利用者が増加傾向にあることは間違いないでしょう。

乗客数の増加を踏まえて、今後の課題があるとすればやはりラッシュ対策となります。

西線の都心に向かう朝ラッシュは相当な混雑ですが、逆に都心から郊外に向かう便は利用者が少なく、まるで回送電車のような便も多く見られます。

ラッシュ時の短い間隔での運行は、利用者からすれば便利なのですが、1台ごとに運転手が必要になります。
短い時間帯に多くの車両と乗務員を配置しなければならず、しかも反対方向はガラガラとあっては、非効率と言わざるを得ません。

これだけが原因ではないのでしょうが、札幌市電は混んでいる割には経営状態があまりよろしいとは言えないようで、来年(2024年)12月には200円→230円への値上げも予定されています。

また将来的には、乗務員不足ということも視野に入れてゆかねばなりません。
バス業界はすでに運転手不足から、路線の廃止や本数の減便が現実のものとなっています。

今のところ鉄道はそのような話は聞きませんが、いずれは鉄道でも避けては通れない話でしょう。

札幌市電も、ラッシュ輸送の効率化ということを考えなくてはなりません。

現在の2〜3分間隔は利用者からすると待たずに乗れるという便利さはありますが、本数が多いと後の電車が前の電車に追いついてしまうダンゴ運転というものが発生してしまいます。
同方向の電車が2台立て続けに走るのでは、別々の電車の意味がなくなりますね。

DSCN1823.JPG
 2台続行の電車が並んだ西4丁目停留場外回りホーム。

2分間隔で2台走らせるよりも、2台分収容できる車両を4分間隔で走らせた方が遥かに効率が良いわけです。
路面電車は、1編成当たりの乗客を増やすことができるのが、バスにはない強みでもあります。

札幌市電は旧型車の置き換えということで3連接車のA1200形ポラリスを導入しました。
しかしポラリスは製造に時間が掛かることと保守の複雑さから3編成のみで製造が中止され、以降は単車の1100形シリウスの増備になっています。

ですが今後は、ラッシュ輸送の効率化を考えると、再びポラリスのような大型の連接車の導入が必要なのではないかと思われます。

一方で、既存のワンマン運転で大型車を導入すると、料金収受のための車内の移動距離が長くなり、乗降時間が長くなるというデメリットがあります。

しかしこれも、宇都宮ライトレールや広島電鉄で実施しているICカード乗車券利用者に限り全扉から乗降できるという制度を採り入れれば解決するでしょう。
ラッシュ時とか、特定車両限定とすれば、利用者は通勤通学者がほとんどなので、定着すれば混乱はないと思います。

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 3連接定員160人の宇都宮ライトレールHU300形電車。

桑園や苗穂方面、あるいは新幹線札幌駅への延伸が期待されていた札幌市電ですが、残念ながら札幌市は延伸の事実上断念を決定しました。
また、コロナ下における利用者数の減少や、経費の増加から来年度の運賃値上げも報道されるなど、札幌市電も先細り感となってきました。

先細り感は市電だけでなく札幌市全体にも言えることで、人口増加は頭打ちになり、一部の区では人口減少傾向となっています。
市電とは関係ありませんが、秋元市長肝いりだった札幌冬季オリンピックも実質断念となりました。

その一方で、中央区の発展だけは止まらず、都心は再開発ビルの完成が相次いでいます。
中央区の人口も増加の一途。
地味に市電の乗客数も増えています。

また市電は、ここ数年来のドカ雪による交通障害の影響をほとんど受けなかったことも忘れてはなりませんね。

札幌市電沿線人口が増加していること、インバウンド等の観光利用増えていること、雪に強い。
そんなことから、今後も札幌市電の重要性は高まってゆくと思われます。

市電ファンとしては、延伸の断念を“断念する”ことを期待したいところですね。
特に2030年度開業予定の新幹線札幌駅への延伸は大いに期待したい。

最後に、いち札幌市民としては一発逆転狙いのような世界的イベント誘致よりも、地に足がついた市民生活向上の市政を望みたいところです。

〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。  


posted by pupupukaya at 23/12/23 | Comment(0) | 路面電車・トラム
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