◆ 祝 開業!宇都宮ライトレール
さて、いよいよ宇都宮ライトレールである。
こいつに乗るために、わざわざ札幌から宇都宮までやって来たのだ。
改札を出たら、自由通路を通って東口へ向かう。
ライトレール乗り場は東口にあって、停留場名も宇都宮駅東口となっている。
開業当初は『宇都宮ライトレール』『宇都宮芳賀ライトレール線』『ライトライン』と様々な呼び名が混在していたが、これは愛称『ライトライン』の名前で統一されたようだ。
駅や自由通路の案内板も『ライトライン』と表示されている。
自由通路の上から見ると、ライトラインの電車がちょうど停車していた。
路面電車の新線開業、しかも今からあれに乗るんだと思うとワクワクしてきたぞ。
宇都宮駅東口に停車中の宇都宮ライトレールHU300形電車。
いままでライトレールというか路面電車の新線開業といえば、廃止路線を置き換えたものや既存路線の延伸といったものばかりだったが、こちら宇都宮のは100%新設路線。
これは日本国内の路面電車の新規開業路線としては、富山県にある万葉線(1930年開業)以来75年ぶりなのだとか。
私など、海外旅行に出るたびにトラムと呼ばれる路面電車に乗り、今でも新規開業が相次いでいるのを目にしている。
一方で日本では、路面電車など過去の遺物であり、こんなものを建設するために大金を投じるなどけしからん、みたいな意見ばかりなので、日本では路面電車の復権などありえないのだろうと思っていた。
それが今度の宇都宮ライトレールの開業である。
日本でもようやく世界中で復活・・・というか標準となっている路面電車が新規に開業するようになったわけで、大いに感激だ。
私などもう30年も前から路面電車の復活を夢見ていたのだから。
さっそく乗車といきたいが、その前に一日乗車券を買う。
1枚1,000円。
全線(14.5km)乗ると片道運賃が400円だから、何度も乗ったり降りたりするなら一日券の方がお得かな。
ホームに下りたエスカレーターの裏側に定期券売り場があり、一日乗車券はそこで買うことができる。
厚紙に『ライトライン一日乗車券』と印刷したチケットにはネックストラップ・・・ていうかただの紐が付いている。
販売員は、「乗車するときはこれを首から下げて乗ってください」と説明した。
ライトライン一日乗車券は首から下げて乗車する。
各乗降扉にはICカード乗車券のカードリーダーが設置された近代的なライトラインだけど、一日乗車券だけはなぜか紙。
首から下げるのは、どこの扉からも乗降できるためのようだが、何だか冴えない姿だなあ。
もうちょっといい方法はなかったのだろうか。
しょうがない、電車に乗るときだけは首から下げることにした。
◆ ライトラインに乗る
停車中の電車は、ホームと車内の段差がほとんど無いのはさすが。
まさに水平エレベーターといったところ。
これなら介助がなくても車椅子利用ができる。
電車は11時46分発、もうすぐ発車時刻になる。早速車内へ。
ICカード乗車券と一日乗車券所持者はどの扉からも乗降できる。
お昼前の時間帯だが、車内は立ち客がチラホラ。意外と混んでいる。
一番前の運転士後ろが空いていたので、そこに立つことにした。
左側には両替機付きの運賃箱が置かれていて、現金払いの客は降車時にここで支払うことになる。
整理券を持って、運賃表で確認してから投入するのは他のワンマンバスなんかと同じ。
現金支払用の運賃箱が設置された車両最前部。
発車するとしばらくはノロノロと進むが、やがて広い通りに出る。
鬼怒通りという宇都宮駅東側の大通りを進む。
元は片側3車線の道路だったが、1車線減らされてライトラインの軌道となっている。
車線を減じてまで路面電車用の軌道を設けるなど、一昔前ならば考えられなかったことだ。
その車線が減らされた鬼怒通りはというと、信号のある交差点には右折レーンが設けられているので、車の通行にはあまり影響なさそう。
その交差点の信号は右折分離方式が採用されている。
右折分離方式とは右折車は右の青矢印の時にしか通行できない方式のやつ。
これの利点は、右折車が右の青矢印が出る時しか交差点に入れないので、軌道に入り込んだ右折車が電車の進行をふさぐことがないわけだ。
あとは、軌道の上下間には柵が連続して設けられたことで、交差点以外の場所で車が右折したりターンすることができないので、基本的に車が軌道内に侵入してくることがない。
よく考えて作ったものだなと、見ていて感心する。
交差点を過ぎた場所に設けられた停留場。
もう1つの特徴は、停留場は交差点を過ぎた場所に設けられているということ。
これは交差点手前に右折レーンが設けられたからということもあるだろうが、乗降が終わればすぐに発車できる利点もある。
札幌市電みたいに交差点手前に停留場があると、乗降中に信号が変わって乗降が終わっても赤信号で発車できないということになるわけだ。
それとに、現金客を除いて全扉から乗降できるので、降車客の車内での移動や1つの出口に集中することもなく、停車時間の短縮に貢献している。
余計な信号待ちや、右折車による妨害がほとんどないので、乗っている乗客からしてもそういったストレスは全く感じない。
これまでの路面電車の悪いところが全部改善されているわけだ。
これは所要時間の短縮にも大いに効果を発揮していて、たとえば併用区間である宇都宮駅東口〜宇都宮大学陽東キャンパス間(2.8km)の所要時間は10分となっている。
この区間の表定速度を計算すると16.8km/hになった。
これは路面電車としては、なかなか立派なもの。
専用軌道区間の高架橋を行く。
宇都宮大学陽東キャンパスからは専用軌道区間となるが、併用区間より若干スピードが上がったくらい。
立派な専用軌道を車より遅いスピードで走るのは、何だかじれったい気がする。
これは広島電鉄や富山ライトレール(現在は富山地鉄富山港線)なんかで、ノロノロ走っていたのが専用軌道区間に入ると快調にかっ飛ばすのというイメージがあるからなのかも知れないが。
これは宇都宮ライトレールが全線軌道法が適用されているためで、専用軌道区間でも鉄道信号がなく目視での運転となるために、最高速度が40km/hに抑えられているから。
ただ、将来予定では専用区間で70km/hまで引き上げられ、さらに快速運転も実施される計画がある。
さらに快速運転も実施されれば、現在全線で48分かかっている所要時間が36分に短縮される。
2面4線と大掛かりな平石停留場。
途中の平石停留場はホーム2面4線という立派な造り。
うち2線は現在は車両基地への出入庫線となっているが、将来的に快速運転が実施されればここで快速と普通の追い抜きに使用されることだろう。
ここからはしばらく専用区間ながらも地平区間となる。
高架区間と違うのは、軌道内が舗装されていること。
なぜ舗装されているのかというと、これは地平区間では交差する道路があるからだろう。
平面交差となると踏切を設けたいところだが、現在の日本では事実上踏切の新設は不可能に近いので、あくまで併用軌道という体で道路と交差させたのではなかろうか。
信号のある交差点では、電車も交通信号に従って走る。
鬼怒川を渡る。
再び高架橋になると、今度は長さ643m鬼怒川橋梁で鬼怒川を渡る。
道路との併用橋ではなく、堂々とした宇都宮ライトレール専用の橋。
窓から広々とした河原を見ていると、さっきまで街中の路上を走っていたのと同じ電車だということを忘れてしまいそうだ。
鬼怒川を挟む専用区間は、田畑の中に農家や雑木林が点在するといったローカル線のような眺めが続く。
清陵高校前からは再び市街地になるものの、今までの街中とは違って今度は工業団地。
それも道路わきの緑地帯だった場所に線路を敷設した格好なので、妙に広々としている。
ヨーロッパのトラムに乗っていると、郊外まで乗っているとこのような広々としたところを走ったりするが、まるで日本ではなくて海外旅行しているような錯覚にもなる。
いや、ここはまぎれもなく日本で、新たにライトレールが開業した宇都宮なのだ。
日本にも、いよいよこうした本格的なライトレールが出来たと思うと、もう感動してしまう。
ゆいの杜西からは再び併用区間となり、車と並走する。
このあたりは宇都宮市西側のショッピングセンターのようになっていて、スーパーやホームセンターをはじめとした路面店が道路沿いに並ぶ。
ライトレールが出来て交通の便が良くなったし、買い物にも便利そうなので、これから発展株の町という印象だった。
芳賀台からは宇都宮市から芳賀町となり、再び工業地帯へ。
ホンダの城下町のようで、あちこちにホンダのロゴマークを見かける。
ところで、高架橋への上り下りをはじめ、宇都宮ライトレールには急勾配が多く、その最急勾配は60‰(パーミル)となっている。
東京都電には66.7‰、函館市電には58‰の坂があって、どちらも難所のようにして電車が走っているが、この電車は出力にまだまだ余裕があるという感じで、むしろスピードが出すぎないようにマスコンのON、OFFを繰り返しながら坂を登る。
その中でも見どころは、芳賀町工業団地管理センター前〜かしの森公園前間にある60‰勾配のアップダウンだろう。
坂の上から谷間をアップダウンする線路を眺めていたら、何となくサンフランシスコのケーブルカーを思い出した。
宇都宮駅東口を発車してから48分、終点の芳賀・高根沢工業団地に到着。
時刻は11時34分、路面区間を走行してきたにもかかわらず定時刻通りの運転だったのは見事というほかない。
車両を高性能にしたり、旅客設備を充実させたりというのは多くの路面電車事業者が取り組んでいるものだ。
しかし、これらがいくら良くなっても所要時間の短縮や定時運行だけはどうにもならない。
これは車と一緒に道路上を走行するのと、ワンマン運転の客扱いがあるからどうにもならないのが路面電車の宿命ともいえる。
それがここ宇都宮では、交差点の通行方法や乗客の乗降時間の短縮など、相当に知恵を使って改善している。
これまでの路面電車の欠点が見事に解消されていると言ってもいいくらいだ。
宇都宮ライトレールは、日本の路面電車の完成形と言っても過言ではないだろう。
◆ 宇都宮ライトレールと新たな文化
終点の芳賀・高根沢工業団地停留場は道路中央にあり、歩道とは横断歩道と歩道橋が結んでいる。
場所は本田技研工業の北門前で、停留場周辺にあるものといえばそれくらい。
ホンダ専用駅のような恰好となっている。
開業前の仮称は、本田技研工業北門前となっていた。
宇都宮芳賀ライトレール線の終点、芳賀・高根沢工業団地停留場。
なぜこんな場所を終点としたのかというと、これまで従業員の多くは車通勤となっていて、朝夕には出退勤の車で渋滞が絶えなかったことから、定時性の確保と渋滞の緩和という理由から決まったのだそうだ。
実際工場への通勤者には車から電車にシフトした人も結構あり、朝ラッシュ時に宇都宮駅東口から発車する電車は大変混雑するようになったようである。
またホンダだけではなく、ライトレールが通る清原工業団地、芳賀工業団地,芳賀・高根沢工業団地と3つの工業団地の従業人口は合計で3万人という。
ものづくり県とちぎの中核といえる位置づけだ。
そう考えると、このライトレールは日本のものづくり産業を裏方で支える存在ともいえる。
終点まで来たけれど、ホンダの工場以外に何もないので折り返しの電車に乗る。
乗客は折り返しの試乗客くらい。
ガラガラのままの折り返し電車で戻る。
ボックス席に座ってみたが、今度は後面展望で行こうと席を立って最後部に陣取ることにした。
向かい合わせクロスシートが基本のライトライン車内。
ワンマン運転用に監視モニターが並ぶ運転席。
立ちっぱなしはつらいけど、新規に開業した線路を眺めているほうが面白い。
そんなわけで折り返しの電車で40分以上ずっと立っていた。
駅東公園前に停車するライトライン。
今度は駅東口まで乗らずに2つ手前の駅東公園前で降りてみる。
ここから歩いて、道路上を走る電車を撮ってみたかったから。
鬼怒通りの歩道を歩いていたら、宇都宮駅東口発の電車がやってきた。
カメラを構えるも、車と被ってしまって上手くはいかなかった。
う〜ん、見ていると路面電車ではあるけれど、今までの路面電車とは別物だという感じがする。
どこか遠い存在のような気がする。
道路が広いということもあるけれど、古くからある路面電車のように街に溶け込んだという感じがなく、どことなくよそよそしいのはどうしたことか。
路面電車というものは、狭い道を自動車とバトルしながら行き交うほうが風情はあるのかも知れない。
歩いて再び宇都宮駅東口に戻ってくる。
この東口もライトレール開業と合わせて再開発が行われ、商業施設とホテルが入居する宮みらいライトヒルと宇都宮ライトキューブもオープンしている。
宮みらいライトヒルの大階段と宇都宮ライトレール。
ここの2階入口に通じる階段があって、この段々に腰かけている人々がいる。
下校途中の高校生が多いようだが。
ここも宇都宮の新たな名所になるんだろうか。
別に何のことはない場所だけど、文化というものは得てしてこういう場所から生まれてくるもので・・
いいなあ、ライトラインが開業しなかったら絶対に生まれなかった空間だよね。
路面電車など無駄だと反対する頑固な年寄り連中に見せてやりたい光景。
このあとも宇都宮駅東口から2回ほど往復してきた。
一日乗車券なので、何回も乗って元を取らなきゃね。
ほかに行きたいところも特になかったこともあるけれど・・・
宇都宮駅東口停留場のホーム。
乗務員交代が行われる平石停留場。
再び宇都宮駅東口に戻ってきたのが4時過ぎ。だんだん薄暗くなってきた。
夕方のラッシュに差し掛かって混むようになってきたこともあるし、試乗もそろそろ切り上げることにする。
◆ 宇都宮餃子とライトライン
東口からすぐのところにあるホテルにチェックインする。
今日は宇都宮で1泊することになっていて、東口近くのホテルを予約してあった。
1泊6,200円のところ、クーポン券や溜まっていたポイントを使って3,890円に。
ウツノミヤテラスにある宇都宮みんみん。
部屋で一休みしてから外に出れば、すっかり日が暮れていた。
ついこの間までならば十分に明るかった時間なのだが、日が経つのは早いものだなあ。
外に出たのは餃子を食べるため。
宇都宮に来たからにはやっぱり餃子でしょ。
ライトレール開業に合わせて東口に出来たウツノミヤテラスという複合商業施設の中に、宇都宮みんみんが入っているのでそこへ行ってみる。
本店の方は行列ができるほどの有名店と聞いていたのだが、さすがに平日の夕方5時過ぎではガラガラだった。
この店のシステムがちょっと変わっていて、変わっているというか近代的というべきなのか。
テーブルにメニューと注文の端末が置いてあって、その端末を操作して注文すると厨房へ伝わる仕組み。
焼き餃子と水餃子が一緒になったヤキスイライスにした。
あともちろん生ビール。
ヤキスイライス(ライスハーフ)と生ビール。
焼き餃子を一口食べてみるが、これと言って特徴もなく普通の餃子。
わが札幌の『みよしの餃子』のクセがありすぎる味に慣れているせいか、どこにでもある餃子のように感じる。
それでも、お店で餃子を食べるのは久しぶりで美味しい。
途中で生ビールをお替りした。
会計もセルフレジで、テーブルにあるQRコードを印刷してある札をレジのリーダーにかざすと値段が表示される。
ヤキスイライス(半ライス)と一番搾り2杯で2,040円だった。
日が暮れても人が絶えない大階段。
2階のエントランスから外に出た大階段では、所々に制服姿の高校生が集っている。
彼らにとっては格好の寄り道スポットなのだろう。
若者たちが大階段と腰かけて駄弁っている姿は、今年旅行したフィンランドのヘルシンキ大聖堂を思い出した。
ライトレールが開業したことでこうしたスポットが生まれたのだとすれば、これだけで大きな資産だろう。
彼らに交じって大階段に腰掛け、行き交うライトレールの電車を眺めるのも悪くないが、今時期は尻が冷たくなりそう。
真っすぐホテルには戻らず、東口周辺でライトレールの夜景をいくつか撮影する。
夕方の帰宅ラッシュを迎え発車を待つ電車。
ライトラインが行き交う鬼怒通りの夜景。
必殺、流し撮り!
またウツノミヤテラスに戻って、1階にあるヨークベニマルで部屋飲み用のお酒とつまみ、それに明日の朝食を買ってホテルに戻る。
宇都宮ライトレールデザインの特別純米酒四季桜LRT缶。
見つけて思わず買ってしまったのが、宇都宮ライトレールデザインの特別純米酒 四季桜LRT缶。宇都宮酒造のお酒。
もうこんなものが出たんだね。
お土産にでもしたいところだが、部屋で飲んでしまう。
明日は宇都宮駅から快速電車で東京へ行き、品川発の特急『ひたち』で仙台に戻る行程だ。
また朝早いので、LRT缶とカップの焼酎をお湯割りにして飲んだらさっさと寝ます。
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