今年(2023年)も函館山線経由の臨時特急『ニセコ』号が走りました。
この山線経由で函館〜札幌間を結ぶ臨時特急は、運行初年が2012年ですから、もう12年目になるんですね。

はまなす編成『ニセコ』のイラスト。
(JR北海道HPより)
山線の特急といえば『北海』、それに急行『ニセコ』がありましたが、国鉄最後のダイヤ改正である1986年11月で廃止されてしまいました。
私は定期列車時代の山線優等列車には乗ったことはありませんが、その後もしばらくは多客期に臨時急行『ニセコ』が運転され、それには何度か乗ったことがあります。
(〜なぜ写真撮っておかなかったんだあ、自分の大馬鹿野郎)
そんなこともあってか、山線経由の優等列車は自分にとってさほど珍しいものでもなかったので、臨時特急『ニセコ』号には乗らずにいました。
今年は『はまなす編成』に衣替えした新生『ニセコ』号ですが、突然乗ってみようと思い立ちました。
旅の虫はいつも突然知らせにやって来ます。
さっそく『えきねっと』で検索。
混んでいたらやめようかと思っていましたが、運転最終日の下り函館→札幌だと空席が結構あり、これに決めました。
自宅にいながら、座席表から好みの席を選択できるなんて便利な時代になったものですね。
これで『ニセコ』号の指定席は押さえたわけですが、今度は札幌から函館までどうやって行くか。
これは飛行機にしました。
なぜかというと、JALマイル6000ちょっとのうち1600マイルが今年の12月で消えてしまうので。
その前にどこか片道利用で使ってしまわなきゃなあ・・と思っていたのですが、今持っているマイルでは一番遠くて花巻や秋田までしか利用できないわけです。
これもいい機会なので、丘珠→函館の片道で使ってしまうことにしました。
丘珠8時45分発、JAL2743便。
4000マイル使用、座席も運のいいことに窓側席が取れました。
今回は日帰り旅行になります。
では旅行記本文どうぞ ↓ ↓ ↓
◆ 丘珠空港 → 函館空港
当日朝、JALからメールが来ていた。
内容は、8:45発函館行時刻は、機材変更の影響で出発予定時刻が1時間50分遅れの10:35になるというもの。
予定のある人にとってはとんでもない話だが、私としては函館発『ニセコ』号乗車に影響はないし、当初は朝7時前に家を出る予定でいたので、出発に余裕ができた格好になるので、逆にありがたい。
当初は札幌駅前から北都交通の空港連絡バスに乗ることにしていたが、時間に余裕ができたので麻生駅まで地下鉄で行き、そこから路線バスで丘珠空港へ行くことにした。
8時過ぎ、自宅近くの中島公園駅から地下鉄南北線で麻生駅へ向かう。
麻生バスターミナルから中央バス麻26 麻生東苗穂線の豊畑行に乗り換える。
丘珠空港へは札幌駅前発の北都交通空港連絡バスが便利だが、あちらは700円。
こちらは路線バスなので地下鉄→バス乗継割引で380円。
時間に余裕があれば路線バス利用が経済的だ。
ちなみにこのルートは、PCやスマホで経路検索すると麻生駅→麻生町3丁目乗り換えと表示されるが、これだと乗継割引適用となるのかどうかは不明。
空港リムジンバスは飛行機の発着時刻に合わせて運転されるが、路線バスは基本1時間に1本。
麻生バスターミナルから乗車するバスは8時30分発豊畑行。
この1本後の9時30発の便でも十分間に合うのだが、初めての丘珠空港発なのでじっくりと空港見物しようと1本早いバスとしたわけだ。
車内は一般客ばかりで麻生を発車する。
バスターミナルを出ると交差点を3つも右折して丘珠空港通りに出た。
途中で栄町駅のバスターミナルにも寄って、丘珠空港に着いたのは8時44分。
それでも麻生から僅か14分なのだからやっぱり丘珠空港は近い。
中央バス麻26 麻生東苗穂線のバスで丘珠空港に到着。
今日は朝から雲ひとつない快晴。
この間まで暑い暑い言っていたのが、気が付けば秋になっていたんだと思わせる空気。
だけど強い日差しがくっきりと影を作る撮影泣かせの天気でもある。
爽やかな秋晴れの空も、カメラを構えるとそれが憎たらしい気持ちにさせられる。
丘珠空港ターミナルビル。
さて、出発1時間50分前に着いた丘珠空港。
中に入ると、ここは離島の空港かと思うほど小さなターミナルだった。
入ると目の前にチェックインカウンターがあり、思わずカウンターの係員と目が合ってしまうほどの狭さ。
預け手荷物検査場もカウンターもまだ客は誰もいなくて手持無沙汰なように見える。
隣が到着ロビー。
カウンター隣に階段があって、そこを上がった2階が出発ロビーとなる。
1階の出発カウンターを階段から見下ろす。
出発ロビーと言っても、ベンチがいくつか並んでいるだけで病院の待合室のよう。
保安検査場入口にロープがジグザグに張られているが、ここもまだ誰もいない。
空港とは思えないほどのんびりとしている。
出発口の出発案内。
狭い出発ロビーだが、奥のほうは机と椅子が並べられたコーナーがあって、壁面に札幌の歴史を紹介したパネルがある。
そんなものを眺めていれば退屈はしないが、なんだか空港というより図書館といった雰囲気だ。
隣の部屋は机と椅子が前向きに並べられていて教室のようになっている。
セミナーか何かに使われることがあるのだろうか。
しかし、前方に飛行機の発着案内があるのは紛れもなく空港だ。
教室のような部屋もある。
あとは小部屋のような場所にある売店のスカイショップおかだまと飲食施設の丘珠キッチン。
あるものといえばそれくらい。
丘珠キッチンは空港内唯一の飲食施設。
丘珠キッチンのメニューを見ていたら生ビールがあったので、ここで景気づけの1杯としよう。
食券制なのとセルフサービスは1人旅ならば気軽なのでありがたい。
滑走路の見える窓側はカウンター席となっている。
滑走路を眺めながら飲む生ビール。
空気が澄んでいて、遠くの山々がはっきりと見える。
滑走路に飛行機はなし。
たまにチャーターらしいヘリコプターやセスナ機が飛び立って行く。
そんな光景をぼんやり眺めながらビールをチビチビと・・・
平和だなあ・・・
20分くらい居て、9時半を過ぎたあたりから店内の客が増えてきた。
落ち着かなくなってきたので退散する。
3階は送迎デッキとなっていて外に出られる。
ちょうど名古屋小牧空港からのフジドリームエアラインズ(FDA)の391便が着いたところだった。
しばらくすると釧路空港からのJAL2860便、次いで利尻空港からのJAL2880が次々と到着した。
利尻空港から到着したJAL2880便。
到着した飛行機の、後ろの乗降口から乗客がパラパラと降りてきて空港ターミナルへ歩いて向かう様は何とも長閑な光景。
駐機場からターミナル到着口までは一応歩道らしき白線が引かれているが、みんなそこは通らずに斜めに近道で歩いているのが面白い。
ときどき振り返って飛行機の撮影をする人とか。
本当に離島かどこかのローカル空港の風景。
とても札幌市内の空港とは思えない、ある意味札幌の秘境とも呼べる風景でもある。
10時前の丘珠空港は到着便ラッシュ。
駐機場には3機並んで、ようやく飛行場らしくなった。
2階の出発ロビーに戻ると、さっきとは打って変わって保安検査場入口は長蛇の列が出来ていた。
10時台になると今度は出発便ラッシュ。
女満別行、名古屋行、それに遅れ函館行と3つの便が集中する。
行列に並ぶが、入口が1つだけなので列の進みは遅い。
「お客様の中に女満別行きの方はいらっしゃいますかぁ〜」と係員が叫ぶと2〜3人が手を挙げて、先に検査場に連れて行った。
行列はさらに伸びて、ジグザグロープからはみ出すほどにまでなっている。
こんどは、
「名古屋行きの方はいらっしゃいますかぁ〜」と言う声に、並んでいる人たちが一斉に手を挙げた。
私ら函館行きの人たちは一旦脇に寄せられて名古屋行きの人たちを先に通す。
さっきまで離島の空港のようだったターミナルはラッシュアワーのような様相だ。
これも3便が飛び立つと、またさっきのような静かなターミナルとなるのだろう。
名古屋行きの乗客を全員通すと、今度は我々函館行きの番となる。
それとて今日は満席なので、これも後ろに延々と行列ができている。
保安検査場の入口が1つしかないので、各方面の便が重なるとこのような大渋滞となってしまうわけだ。
かといって建物の構造上と基本ローカル便しかない空港で入口を増やすことも難しかろう。
各便が重なるときは、いっそのこと昔の列車別改札のようにしてはいかがだろうか。
丘珠空港の搭乗待合室。
行列に並んでから搭乗待合室に出るまで約20分てところ。
早めに入っていればこんな目には合わないのだろうが、搭乗待合室は売店もなく飲料の自販機があるだけ。
早く来すぎて、ここでじっと座っているのはちょっと辛いだろうな。
1階の1口だけある搭乗口。
先に出る名古屋行きの搭乗が終わると今度は函館行きの改札となる。
今回は紙出力したチケットは持ってきておらず、スマホに表示したQRコードをかざすだけ。
預け荷物もないので、保安検査がある以外はバスにでも乗る感覚で飛行機に乗ることができる。
改札口を通ると階段を下って1階へ。
足の悪い方はエレベーターもあるのでご安心を。
外へ出ると、駐機場を歩いて飛行機へと向かう。
飛行機の手前にバリケードが立ててあって、そこには『翼下通過禁止』と書いてあった。
歩道線らしき白線内を歩くと翼の下に入ってしまうので、ターミナル出入口から飛行機までは斜めにまっすぐ向かうのだった。
駐機場を歩いて飛行機に向かう。
とてもノビノビしているというか、自由というか、こんなに開放的な飛行機搭乗は初めてだ。
機内への入口はタラップではなく、ドアの裏側が階段になっているエアステアというもの。
とにかく、何もかもが珍しい。
交通機関での函館行きならば私は鉄道一択だが、たまにはこんな旅もいいよね。
エアステアを昇って搭乗する。
機材はATR42-600、48人乗り。
外から見ると小さい飛行機だが、機内に入って座ってしまえばさほど狭い感じではない。
シートはJAL国内線標準の黒レザー張りのもの。
ATR42-600の機内。
指定の座席は前方の右窓側。
この右側の最前列はなんと4人向かい合わせのボックスシートとなっていた。
グループ用というわけではなく、非常口がある関係でこういう配置になってしまったようだ。
非常口席はいざというときは手伝いをする義務が生じるが、普段は足元が広く人気席となる。
だけどこの席だけはちょっとねえ・・
この席も後からすべてふさがったわけだが、見知らぬ4人向かい合わせで戸惑っている様子だった。
一番前右側の1・2番席はボックスシート仕様。
全員が機内に収まり、出発時刻が近づくとプロペラが勢いよく回転を始める。
この席は窓の外がすぐにプロペラとなっている。
うるさいかと思っていたが、機体や窓が防音性に優れているためか、さほどの騒音には感じない。
それでもプロペラ機特有のブ〜〜ンというのはジェット機とは違う。
遅れ出発時刻の10時35分に飛行機は動き出して滑走路へ。
駐機場から誘導路を北へ向かう。
滑走路に合流したところから向きを変えて離陸するのかと思ったが、飛行機はさらに北へ進む。
そっちは行き止まりじゃないのかと思うのだが、滑走路の北端へ来ると飛行機はくるっと方向変換して南へと向きを変えた。
小型機だからこそ成せる技だ。
丘珠空港を離陸。
ここからフワッと離陸するんだろうなと思っていたら、走り出した途端に鬼加速。
加速度はジェット機の倍はあるんじゃないだろうか。
まさにロケットスタート。
一気に加速して一気に離陸、あっという間に上昇する。
走り出してからものの1分で空港上空を離れた。
南へ向かって離陸したのでそのまま函館に向かうのかと思ったら、大きく北側に旋回して、石狩川や石狩平野、石狩湾や石狩の市街地を見ながら高度を稼ぐ。
天気が良く空気も澄んでいるので、遠く雄冬岬や積丹半島まで見ることができた。
大きく南へと進路を変え、手稲上空から函館へと向かう。
まるで札幌近郊の遊覧飛行のようだった。
函館へ飛行機で行っても僅か40分の飛行時間なのでつまらんと思い込んでいたが、こんな楽しい遊覧飛行が体験できるとは。
手稲区上空。中央はJR札幌運転所。
ここからは山ばかりになるが、手稲山や豊平峡ダム、中山峠などよく知っている場所を上から見下ろすのは気持ちが良い。
中山峠を越えると羊蹄山が姿を現す。
羊蹄山(右)と尻別岳(左)。
夢中で外を眺め撮影していると、CAが籠を持って現れる。
籠に入ったキャンディーを1つ貰う。
機内の飴のサービス。
僅か40分のフライトなのでドリンクサービスは無理なのだろうが、こういうちょっとしたサービスが嬉しい。
JALマーク入りのキャンディー2個の袋にはCAのメッセージが加えられていた。
洞爺湖と噴火湾。
洞爺湖を見て、室蘭の白鳥大橋の上空を通る。
上空からの景色は、今はネット上でいつでもどこでも見ることができるようになったが、こうして実際に自分の目で見るのとではスケールが違う。
初めて見る風景に、子供のように心が躍っていた。
飛行機は室蘭上空から噴火湾へ。しばらくは洋上を行く。
鹿部から駒ケ岳を見ながら内陸へ、そして一旦津軽海峡へ抜けてから北へ向きを変えて函館空港へ向かう。
津軽海峡の向こうには、本州側の下北半島の山々がはっきりと見えている。
北海道と本州はこんなに近かったんだと思える風景だった。
函館山と津軽海峡、その向こうに下北半島が見える。
函館駅とJR函館運輸所。
函館山や函館駅を見下ろしながら、今度は函館の遊覧飛行。
函館の街を見下ろしながら高度を下げ、函館空港に着陸する。
函館空港の駐機場に停止したのは11時15分。
僅か40分間の飛行だったが、まさに空の旅。
2時間も3時間も乗っていたかのような充実したフライトだった。
だけど2030年度末予定の北海道新幹線札幌開業となれば、この丘珠・函館線は廃止になる可能性が高い。
札幌〜新函館北斗間の所要時間は最速列車で1時間と見積もられていて、さらに函館市が検討している新函館北斗〜函館間のミニ新幹線化が実現すれば、札幌駅〜函館駅間が最速で1時間20分以内で結ばれることになるだろう。
新千歳・函館線は国際線等からの乗継ぎ客が見込めるが、ほぼ独立路線の丘珠線の廃止が免れないのは想像に難くはない。
最近は新幹線の並行在来線となる函館山線の存廃議論がまた浮上しているが、HAC丘珠・函館線の存廃は話題にはならないようだ。
函館空港も歩いて空港ターミナルへ。
ジェット機は一番前が出口となるが、この飛行機は一番後ろが出口なので、前方席に乗っていると降りるのが一番最後になる。
それでも着いてから飛行機の外に出るまで5分とかからなかった。
この函館空港はボーディングブリッジがある普通の空港。
ターミナルビルから100mほど離れた場所が駐機場となっていて、普通ならばこんな場所を歩くことはないんだろうけど、ここでもやはり歩いてターミナルビルへ向かう。
近くから見る飛行機。
非常口のような階段を上って長い通路を歩くとばバゲージ・クレーム(手荷物受取)に出た。
ちょうど同じ時刻に東京からのANA553便が到着したところで、ここは人だかりができて活気がある。
なんだかローカル空港から都会に戻ってきたような気分だった。
本当は逆なんだけどね。
ここは用はないのでスルーする場所だけど、ベルトコンベアの上にある到着表示がなんとパタパタ式のやつ。
今時これは珍しいと1枚撮影してから出口へ。
で、到着ロビーにある到着便案内が、これもパタパタ式のものだった。
パタパタ式とは正式名を反転フラップ式案内表示機というもので、表示が変わるときに2枚の板がパタパタと倒れるようにして表示が変わることから。
懐かしいねえ、80年代まではこれが最新だったものだけど、80年代終わりから90年代にかけてLEDの表示機が主流になってしまい、今ではほとんど見かけないものだ。
反転フラップ式案内表示機が現役の函館空港。
う〜ん、しばらく表示が変わるのを眺めていたいけど、今日は時間がないので泣く泣く後にする。
いずれこいつを眺めるために函館空港に来なければならないな。
これもいつ最新の液晶表示のものに置き換えられてもおかしくはないので、早めに来なくては。
東京からの便が着いたばかりの到着ロビーは観光客らしき人たちで賑やかだ。
◆ 函館空港 → 函館駅
到着ロビーから外に出たところに函館駅行のシャトルバスが停まっていて人だかりがしている。
奥のほうには路線バスが停まっていて、こちらは五稜郭や亀田支所を回って函館空港へ戻る循環バス。
函館バス7B 五稜郭、亀田支所前経由函館空港行。
函館空港発着の路線バスは系統が様々だが、ほとんどの系統は市電湯の川電停最寄りの湯倉神社前を通る。
発車間際なので、とりあえず乗ってしまう。
バスは空港を出ると街とは反対方向に進み、それからも住宅街をあっちへ曲がってこっちへ曲がってなので、どこへ連れていかれるのか不安になりそうな路線だ。
これは空港アクセスのほかに瀬戸川町や上湯川町の住民の足も兼ねているため。
途中から地元客が1人2人と乗ってくる。
このバスは丸井や五稜郭タワーのある五稜郭まで行くが、私は湯倉神社前で降りる。
ここで函館バスから市電に乗り継ぐと、乗継割引で50円引きとなるのだが、適用となるのは現金とイカすニモカ利用の場合だけで、それ以外のICカード乗車券は対象外となっている。
私が使用したKitacaは当然対象外なので50円多く支払ったことになるが、割引があってもなくても湯の川から市電に乗り換えていただろう。
ただ単に市電に乗りたいだけなので。
歩いて湯の川電停へ。
2・5系統の終点湯の川電停。
函館市電のダイヤも寂しくなったもので、2系統と5系統の運転間隔はそれぞれ16分間隔となっている。
昔はそれぞれ10分間隔で、両系統が走る十字街〜湯の川間は5分間隔だったものだ。
当時は『待たずに乗れる路面電車』と宣伝していたのを思い出す。
今は両系統合わせて8分間隔、1時間当たり7〜8本と市電の面目は保っているが、西部の末端区間では時刻表を見てから家を出る乗り物になってしまった。
コロナの頃は市電も大丈夫なんだろうかと思うほど、どの電車もガラガラで走っていたものだが、また観光客で混雑するようになったのは結構なことだ。
だけど昔のような待たずに乗れるようなダイヤに戻ることはないだろう。
駒場車庫前停車中。
久しぶりに乗った函館市電は、車内放送が面白いことになっていた。
「ご案内は○○の○○が担当します」の自己紹介から始まって「次は○○(停留所名)」となる放送。
停留所ごとに違う人のアナウンスとなる。
これは調べたら、
『函館の路面電車開業110周年記念 車内放送してみませんかぁ?』
企画として一般公募から選ばれた人たちのアナウンスなのだとか。
放送期間は2023年の9月いっぱい。
停留所ごとに異なる人の自己紹介と次停案内はとてもユニーク。
この案内放送はYouTubeでも公開されているので、興味のある方は見られてはどうでしょうか。
湯の川発車時は空席が多かった車内は、途中停留場で地元の人らしい乗客が増えてくる。
五稜郭公園前では観光客が大勢乗ってきて立ち客も多くなる。
五稜郭は函館市内で一番の商業地区であり、五稜郭公園やタワーなどの名所最寄りでもある。
その五稜郭と函館駅、函館観光の中心であるベイエリアや西部地区を結ぶ市電の利用客は多い。
函館観光は市電があってのものだ。
市電がなくなれば、観光の利便性も街の魅力も半減してしまうだろう。
函館駅前電停の賑わい。
湯の川から33分で函館駅前着。
ここで降りる人も多いが、乗る人も多い。
駅前のボーニ森屋が閉店してからすっかり寂しくなった函館駅前だが、電車の発着時は賑わう一瞬が訪れる。
◆ 青函連絡船記念館摩周丸
ニセコ号の時刻まで1時間半ほどあるので、久しぶりに摩周丸の見学をすることにした。
かつて青函連絡船として就航していた摩周丸は、函館市青函連絡船記念館摩周丸として保存・展示されている。
旧函館第2岸壁に保存されている摩周丸。
この摩周丸は過去に2回来たことがあるけれど、かつての船室の座席や船内の設備はことごとく取り払われて、現役当時そのままに残されたものはブリッジと甲板しかなかったのが残念だった。
それでも当時の桟敷席やグリーン席が復活したと聞いていたので、ちょっと楽しみでもある。
受付で入場料500円を払って中へ。
復活した青函連絡船の桟敷席。
階段を上って一番上の階にありましたよ、復活した桟敷席。
一応それっぽくはなっているが、後ごしらえ感が半端なく、所詮レプリカだ。
それにこの場所は中央の煙突周りの機械室だったはずで、客席ではなかった場所だ。
妙に広くてがらんとした空間の一角に設けられても、やっぱり何か違うな。
別な場所に普通席やグリーン椅子席が展示されたコーナーもあったけど、やっぱり違う。
ブリッジ(操舵室)は往時のまま保存されているが、一般の人が立ち入る場所ではなかったので、当時を懐かしむようなものではない。
現役当時のまま保存されているブリッジ。
この摩周丸を見学するたびに思うけど、保存するのならばあまり手を加えるべきではない。
現役当時のまま手を加えずに保存していたら、後世に伝える本当に貴重な産業遺産となっていたことだろう。
外側は青函連絡船時代そのままだが、これじゃ巨大な張りぼてだ。
一方では、張りぼてでも保存されたのは関係者の大きな努力によるものだということも忘れてはいけないだろう。
これだけ大きなものを保存するだけでも大変なお金がかかっているだろうし。
こちら摩周丸も、保存と公開が決まった時に、船内でいろいろやろうとしたのだろう。
だけど結局上手くいかずに、空間だけが残されてしまった印象だった。
当時のまま保存されているグリーン自由席。
そんな残念な中身の摩周丸だが、唯一現役当時で保存されている場所がある。
それがグリーン自由席。
ここはなぜか公開されていないので、甲板の窓からしか見ることはできない。
壁の向こう側にはグリーン桟敷席もあるはずなので、もし青函連絡船の船室内を再現したロケに使用できる場所があるとすれば、このグリーン自由席くらいなものか。
コロナも終わって観光客が増えている函館にあって、摩周丸の船内はガラガラだった。
手前にクルーズ船ターミナルの建物ができてから、目立たない場所になってしまったこともあるだろうが、この展示物では1回来た人が再度来ようなんて思わないだろうな。
もうちょっと何とかならないものかと思うけど、それにはお金も人手もかかるし、このまま朽ちてゆくだけなのだろうか。
出るときに受付の売店で『青函連絡船の人びと』という白黒の写真集を買った。
1430円と少々高いが、連絡船の風景だけでなく、それにまつわる人々が写っているのが気に入った。
過去の写真とか画像って、人が写っているとその時代の社会や風俗が浮かび上がってきて臨場感が俄然盛り上がる。
人が全くいない、カタログみたいな写真集なんてつまらんよ。
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