2031年春の開業を目指して工事が進む北海道新幹線。
札幌駅でも、新幹線駅や再開発ビルの工事が目に見えるようになってきました。
通勤通学等で毎日札幌駅を利用されている方々にとっては何のことはない光景なのでしょうが、私は札幌駅へ行く機会があまりないもので、日に日に変化する札幌駅を訪れる度に驚くことばかりです。
9月9日に行われた苗穂工場一般公開をちょっと覗きに行った際に、そんな工事が進む札幌駅の様子を見てきました。
8月31日にエスタが閉店となり、エスタ1階のバスターミナルも9月30日を最後に閉鎖となります。
そんな変わりゆく札幌駅の様子をお伝えしたく、また移り変わりの記録として記事としました。
またしばらくお付き合い願います。
まずは札幌駅ホームから。
新幹線工事の第一弾として去年(2022年)10月に11番ホームを新設し、1番ホームを廃止しています。
これは札幌駅南側に建設される複線の新幹線の線路が建設するために、その用地を確保するためのもの。
2番ホームへの入り口。
ここもエスカレーターの取り換えや階段を狭める工事が始まるところです。
右側にあった旧1番ホームは仮設囲いで覆われています。
この向こう側では線路の撤去作業が進行中。
2番ホームの西側ホーム端から見ると、旧1番線の線路はきれいに撤去されていました。
高架橋は左側に拡幅され、ここに2本の新幹線軌道が並んで東京まで続くことになります。
こちら側は同ホーム東側。
右側のJRタワーの向こうに新幹線の札幌駅が建設されます。
東側はホームからは見えませんが、列車内から見ると一部高架の撤去など工事が始まっていることがわかります。
苗穂駅方向から進入する1・2番線は配線の変更も行われていて、2番線の線路は3番線へ向かう線路から分岐するようになっていました。
この部分の線路を撤去して、新幹線駅の建設をすることになっています。
新幹線工事のために撤去された線路(地理院地図を加工して筆者作成)
これによって、それまで2番線に函館本線から、3番線に千歳線から同時進入できていたのが不可能になります。
特に桑園方向へ直通する列車は2・3・4番の3本しか使わないわけですから、ダイヤ作成上大変そうです。
この代替としてか苗穂側に亘り線が2箇所新設され、一番南側の函館本線上り線からでも全ホームに入ることができるようになったようですが、通常ダイヤで使用されることはなさそうです。
雪害などの輸送障害時に活用されるのでしょうか。
各ホーム東側では早くも乗換こ線橋の工事が始まっていました。
このこ線橋は通路幅9m、各ホームへはエスカレーターとエレベーターを配して新幹線駅までは動く歩道も設置するという大掛かりな構造物となります。
そのために既存の高架橋も強化工事をしなければならないので、高架下にあったパセオ閉館も致し方ないところではあります。
ちなみに閉店したパセオは現在どうなっているのかはこちら。
札幌駅旧パセオ東側出入口横の工事車両出入口から東コンコース方向を撮影したもの。
店舗だったものがすっかり取り払われて完全なスケルトン状態。
ここまでしなければならないので、パセオを営業しながら工事は無理でした。
こちらは北側に新設された11番ホーム。
床や案内看板に新しさを感じますが、北側の壁は仮設パネルのまま。
北口側の壁面と合わせて、現在はこのまま工事がストップした感があります。
現在は新幹線高架増築のための耐震工事が行われており、北口側もその工程に合わせての工事再開となるのでしょう。
基本学園都市線の発着ホームですが、午前中の2本だけ函館本線下り列車が使用します。
11番ホームの柱に取り付けられた縦型駅名標。
こちらはサッポロクラシックの広告です。
そういえば、従来の『北海道はサッポロビール』広告入りの縦型駅名標が新しいデザインのものに交換されるという話がありましたが、広告がサッポロクラシックになるのでしょうか。
こちらは11番線の下。
仮設パネルやコンクリートむき出しで、まだ工事中のようにも見えます。
これはおそらく、既存のコンコースも新幹線工事と並行して改装工事が行われると思われるので、それに合わせて内装工事を行うと思われます。
あと気になるのが、11番ホームだけエスカレーターの方向が他のホームと逆だということ。
このエスカレーターの向きは新幹線連絡こ線橋の方を向いています。
ここだけ動線が違うのと、ちょっとした広場のようになっているので、コンコース内でも独立した格好となってしまっています。
こちらは既存のラッチ内コンコース。
ちょこちょこと改装工事は行われていましたが、基本的には高架開業時から変わっていません。
新幹線開業に合わせて、それに相応しいデザインの内装に一新されるのではないでしょうか。
8月31日を以て閉店したエスタの地下入口。
北5条通りに出る地上出入口くらいは通すのかと思っていましたが、旧エスタの通路はすべて閉鎖されました。
今はシャッターですが、解体工事が始まれば仮設パネルで覆われることでしょう。
しばらくは寂しい光景となりますね。
東豊線のさっぽろ駅へ続いていた通路も閉鎖。
平日はここに警備員が立ち、テナントの商品や什器を搬出するための通路として開けていました。
では南北線さっぽろ駅やアピアから東豊線へ行くにはどうするのかというとこちら。
JRタワーの地下通路は従来通りとなっているのでこちらを通ることになります。
紙出力した案内があるだけなので、ちょっとわかりにくいですね。
こちらはちゃんとした案内看板を設置してほしいところです。
エスタ閉館にともなう通路案内図も各所に掲げられていますが、紙出力したものをラミネート加工しただけの簡易なもの。
バスターミナルも10月1日から閉鎖となるために、しばらくはこのままとなりそうです。
エスタは閉店しましたが、バスターミナルは9月30日までは稼働します。
こちらは1階のバスのりばへの出入り口。
東西の通り抜けができなくなったエスタの通路ですが、東側の南北を結ぶ通路は現在も解放されて、地下鉄東豊線改札口から各方向を結ぶ通路として利用されています。
ただこの通路も来年(2024年)1月で閉鎖され、2月からは新たに設けられた接続口から直接ステラプレイスへ出入りすることになります。
これによって旧エスタ内は完全に閉鎖され、本格的に解体工事が始まるのでしょう。
JR北海道『北5西1・西2地区第一種市街地再開発事業に伴うエスタの閉店について』より引用。
南口広場から2階デッキへの階段は閉鎖されて立入りができなくなっています。
2階コンコースも閉鎖され、そこにあった定期観光バスの案内所は札幌駅西口コンコースに移転、また乗り場は一足早くバスターミナルから北口へ移転しています。
バスターミナルは9月30日までは平常通り発着します。
ですがエスタの閉店により出入口が限られてしまったので、少々不便になりました。
10月からはバスターミナルが閉鎖され、新しいバスターミナルが完成する2028(令和10)年度までは路上のバス停から発着することになり、バス利用者は不便を強いられそうです。
移転する乗り場のうち一番遠いのは北3条の赤レンガ道庁正門前まで行ってしまうので、しばらくは混乱が続きそうですね。
こちらは主にJRバスが使用する北レーン。
南口広場から平面で接しているレーンですが、狭いですね。
以前はこのレーンを通って南口広場から西2丁目通りへ行けましたが、現在は工事のために通り抜けはできなくなっています。
各レーンへはかつては地下やエスタ2階から階段を使うしかなかったのですが、いつの頃からか遮断機付きの横断歩道が設置されました。
屋内のバスターミナルに横断歩道というのも他では見ない気がします。
全国的にもちょっと珍しいものでしょうね。
中レーンから横断歩道を見る。
こちらは高速バスのほか、じょうてつバス、旧市営バス路線が発着します。
南レーンは主に中央バスの高速バスが発車。
高速あさひかわ号の乗り場は、冬にJRが運休すると長蛇の列ができて階段を登って2階コンコースまで続いたこともありました。
南レーンの中央バスが発着する乗り場には、バスの発車に合わせて行先の掛札が下がります。
これは中央バスの案内係が発車時刻に合わせてかけ替えているというアナログなもの。
本当は電光掲示にしたかったんでしょうが、不慣れな乗客の案内も兼ねてこうした古いものを残していたのでしょうか。
苫小牧と留萌じゃ行き先がまるで反対ですからね。
こちらも時代がかった字体の案内板。
地下に下る階段なのに『札幌駅』とあるのは、開業当時は札幌駅は地下にも改札口があったからです。
昔の地平駅時代は地下鉄と直結した地下改札が圧倒的に利用者が多かったですね。
現在バスターミナルからJR札幌駅に行くには、地下に下りずに横断歩道を渡って北レーンから南口広場かJRタワー通路に出るのが正解。
どこからか昭和時代の香りも漂ってきそうなバスターミナル。
これもまた一つ消えてゆく風情ですかね。
こちらは中央バス案内所の上にある高速バス発車案内。
道内各地に向かう高速バスは、ほぼこのバスターミナルから発車するので30分間に7本ものバスが並ぶのは壮観です。
しかも表示されているのは中央バスとその共同運行便だけで、これ以外に道南バスと沿岸バスも発着しているわけですから、北海道内の交通の中心と言えるでしょう。
当然ながらエスタの閉鎖された区域への階段はシャッターが閉まっていました。
こちらはバスターミナルから一斉に出てくるバスを西2丁目通りから見てみます。
特に毎正時と30分は発車するバスが多いので壮観です。
このバスが出てくる順番は一番右のレーンが最初で、そこから左側のレーンへ向かって順番に出る習わしになっています。
昔はこの順番が逆で、一番左の北レーンが先だったのを覚えています。
毎時00分と30分は、JRバスの快速小樽行きという便があって、そのバスに乗っていると信号が青になってターミナルから出るときに、右側のレーンのバスを差し置いて1番で出ていきましたから。
札幌駅発着のバスとしては国鉄バスから引き継ぐJRバスが一番古いわけで、そのさらに一番古い札樽線のバスが1番に出る伝統かと思っていましたけれど。
上画像は牧歌の像とエスタを一緒に撮ってみました。
牧歌の像は、製作は本郷新氏で、札幌駅開駅80年を記念して1960(昭和35)年に完成したもの。
先代駅舎時代は南口正面に設置してあり、札幌駅の顔でもありました。
先代の南口駅舎が解体されてからこの像も一旦撤去されましたが、工事終了後は南口広場の一角に復元されています。
エスタの閉店、バスターミナルの閉鎖によって、新幹線工事に係る周辺施設の閉店や閉鎖はひとまず完結します。
ここからは新幹線駅と関連施設の建設工事に突き進んでゆくことになります。
一足先に閉店したパセオは、早ければ2025年には再開、エスタの跡に建設される再開発ビルは2028年度完成予定となっています。
この再開発ビルは、資材高騰や人手不足の影響から規模縮小という報道もなされておりますが、札幌の顔であり表玄関でもある南口広場の風景が大きく変わることには変わりありません。
上の画像は、エスタ地下からの出入口吹き抜けに飾ってあった『1935年頃の札幌駅』。
これはまだエスタ営業中に撮影しておいたもの。
3代目駅舎のモザイク絵ですが、こんな絵があったことに気づいていた人は少なかったでしょうね。
作品の右下に『′78』とあるので、1978(昭和53)年のエスタ開業当初から飾られていたものでしょう。
この明治の時代に建てられたルネサンス様式の木造2階建て駅舎は、当時としてはハイカラな建造物として話題となったほどでした。
長らく札幌の顔となっていたわけですが、長年の風雪にさらされて、また戦中戦後を経て老朽化と乗客増に耐え切れなくなり、1952(昭和27)年に4代目駅舎に建て替えられます。
ボロボロになっていた木造駅舎から4階建て(後に5階建てに増築)の近代的駅舎に生まれ変わったときは、当時の市民はどのように感じたんでしょうか。
その後も地下鉄南北線の開業、札幌駅名店街の開業、エスタの開業と札幌駅は発展します。
この絵は、その発展の中で、昔の札幌駅も忘れまいと描かれて飾られた作品なのでしょう。
エスタ解体後はこの作品の行方が気になるところですが、新しい再開発ビルが完成した暁には、どこかにまた飾って欲しいものです。
今度は4代目駅舎の絵と一緒に。

これはそごうがあった頃の札幌駅。
撮影時期は1995年夏。まだ20代だった頃の筆者撮影。
札幌駅自体は1988(昭和63)年11月に現在の高架駅になっていますが、それからも長い間5階建ての4代目駅舎とエスタが南口の顔でした。
すでに老朽化していた駅舎はいずれ取り壊されることは確実でしたが、奥のエスタが取り壊されて建て替えられるなど当時は思いもしないことでした。
これを撮影した当時から既に30年近くの時が流れ、この建物がいよいよ無くなるのだと思うと、時の流れを感じます。
話を戻しますが、この新幹線開業の一連の再開発について否定的な意見もあります。
曰く、税金の無駄遣いだとか、少子高齢化で日本は衰退するのだから無駄な投資だなどというもの。
だけどその否定的意見の根底にあるのは、変わりたくない、新しいものについてゆけない、凝り固まった老人の発想の延長のように私は思えます。
私は、昔は良かった今は駄目だ的なことは極力考えないことにしています。
昔は良かったけど、今も良い。将来はさらに良い。
意識してそう考えないと、あっという間に心は老人になってしまいますからね。
人は歳を取ると自然と老いるのではなく、自ら望んで老いてゆく。
また余計なことを言ってしまいましたね。
私自身は、この様変わりする札幌駅が完成するのを楽しみにして待っていようと思います。
〜最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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新幹線工事は先が不透明になってしましましたね。
一番最後の青い札幌駅の写真、懐かしく拝見致しました。
以下、ご存知でしたら読み飛ばしてください。
青い札幌駅は昭和30年代に4階建を5階建てに増築しております。
私が幼少の頃の記憶では、札幌駅の外壁の色は「白色」でした。
気付いたら建物が囲われ、結構長い間囲われたままで、
ようやく囲いがなくなったら、駅の色が変わっていました。
同年代の知り合いなどにこの話をしても、知ってる人は
誰もいません( ;∀;)
親だったらきっと知っていると思いますが、遠くへ行ってしまいました。