ついに留萌本線の廃止日が正式に決定しました。
*ニュースリリース | JR北海道 2022.09.09
留萌線(石狩沼田・留萌間)の鉄道事業廃止届の提出について*
数年前からJR北海道が廃止の方針を示していましたが、このたび沿線市町村が廃止受け入れを合意したことから正式に届出となったものです。
といっても全線廃止ではなく、石狩沼田〜留萌間、深川〜石狩沼田間の2区間に分けて段階的に廃止となります。
今回の廃止はその第一段。
届け出では石狩沼田・留萌間を2023(令和5)年9月30日で廃止とありますが、ニュースリリースの文面にある通り、実際の廃止日は2023年4月1日(最終運行日同年3月31日)となる模様です。
留萌線はというと、もう半年以上前からお名残り乗車客が目立つようになっていましたし、今年のGWにキハ150単行の4925Dを見たときは、立客も出るほどの混雑ぶりでした。
正式に廃止が決定したことから、今後は休日などラッシュ時と変わらない混雑ぶりとなるのでしょう。
私も最後にもう一度くらいは・・・と思っていますが、もう何度も乗った路線ですし、わざわざラッシュ並みに混雑した車内で過ごすのもうんざりするし、今年の1月に留萌まで往復したのが最後の乗車となるかもしれません。
せめてもう一度乗車した気分になろうかと過去の画像を探すと、2007年のものが見つかりました。
当時の画像を見ながら乗車記を書いて、もう一度留萌本線に乗った気分を味わってみましょうか。
以下15年前の2007年を思い出して書いた乗車記になります。
◆ 札幌 → 深川
2007年8月11日土曜日、小樽始発の旭川行711系電車で出発。
所持している切符は青春18きっぷ。
18きっぷの余りの始末ということで、留萌まで往復してこようと出かけたわけだ。
留萌本線は一日散歩切符の区間外だし、札幌からだと普通列車との接続も悪い。
18きっぷの余りでもなければわざわざ乗る機会もないだろう。
札幌から乗った711系電車は、夏休みで18きっぷシーズンなのと数少ない旭川直通列車ということもあって混んでいた。
みんな考えることは同じだなあ、と考えながら憮然と車内で過ごしていた。
岩見沢、滝川と長時間停車があって、札幌から3時間以上かかって深川に到着。
18きっぱーの多くは旭川まで乗り通すらしく、深川で降りる人は少なかった。
留萌本線の旅は深川駅から。
深川駅で1時間以上の待ち合わせとなるので一旦改札を出る。
北空知地方の中心都市ながら深川駅は地味な存在だが、L特急が30分おきに発着する深川駅は活気がある。
待合室は駅弁屋の高橋商事の売店と立食いそばの『そば処深川』、その向かいにはキヨスクがあり、3店舗ひしめき合っている。
奥の入口は深川物産館となっていて、北空知地方のの名産品や『そばめしおにぎり』を売っていた。
駅弁の売店と立ち食いそば屋が並ぶ待合室。
昼時で、1時間以上の待ち時間があるので、そば処深川で腹ごしらえ。
ウロコダンゴや駅弁が並んだ売店とそば屋は中でつながっていて、同じ人が両方の店番をしているようだ。
メニューはかけ、玉子、天ぷら、山菜、山菜玉子の各そばとうどん。
山菜というのも惹かれたけど、天ぷらそばにした。
そば処深川の天ぷらそば(380円)。
これといって特徴のあるそばではないが、天ぷらは手作りらしく、ずっしりとした野菜のかき揚げ。
タネが偏っていたのか、栄養のバランスを考えてなのか、やたらとニンジンが多いかき揚げだった。
◆ 深川 → 留萌
13時11分に留萌からの普通列車が到着すると13:23分発増毛行の改札となる。
4番線ホームには折り返しとなるキハ54が1両停車していた。
4番線に停車中の増毛行キハ54。
キハ54の車内は簡易リクライニングシートが集団見合い式に並んだタイプ。
転換リクライニングシートタイプは全席前向きにすることができるが、簡易リクタイプは席の回転ができないので、半分は後ろ向きに座ることになる。
改札が始まったばかりの車内はがら空きだったので、進行向きの一番良い席をゲット。
発車時刻が近づくにつれて地元客や特急からの乗り継ぎ客が乗車してきて席が埋まってきた。
単行のキハ54車内は地元客や帰省客が多かった。
785系『スーパーホワイトアロー』が発車。
車内の乗客は夏休み中の部活帰りの高校生や子供を連れて実家に帰省するらしいお母さんなどが中心。
私のような鉄道ファンの試乗客と思しき人も居なくはないがごく少数だった。
秩父別では部活帰りの高校生の下車が目立ち、石狩沼田では荷物を持った帰省らしき人たちの下車が目立った。
深川始発時は賑やかだった車内も、石狩沼田を発車するころには大分落ち着いてきた。
主要駅であるかのように立派な石狩沼田駅のホーム。
板張りの短いホームと待合所が印象的な真布駅、1999年放映のNHKドラマのロケで明日萌駅として使われた木造駅舎がある恵比島駅と各駅に停車する。
この先は留萌まで乗り降りする人は見なかった。
短いホームに背が高い木造待合室が特徴の真布駅。
NHKのドラマ『すずらん』のロケに使われた恵比島駅。
木造駅舎が残る峠下駅。
現役の木造駅舎が残っている峠下駅で上り列車と交換。
隣の恵比島駅はNHKドラマのロケのために明日萌駅が新築されたわけだが、こっちの峠下駅を使えば改造だけで済んだだろうに何でだろ。
列車交換があったり、無人駅だけど保線関係の詰め所として使われているだろうからロケに使えなかったのだろうか。
この駅も以前は駅員がいて、列車が着くたびにタブレットを交換していたのを覚えている。
調べたらタブレット閉塞から自動閉塞になり、無人化されたのは1998年とのこと。
サビサビになった貨車駅の幌糠駅。
留萌駅1番ホームに到着。
深川から約1時間、留萌に到着する。
この列車は増毛行だが、ここまで乗っていた10人ほどの乗客はほとんどが席を立ち、残ったキハ54の車内は回送列車のようになってしまった。
◆ 留萌駅と駅そば
改札を出て留萌駅の駅舎を見る。
鉄筋コンクリート建ての2階建て駅舎は1967(昭和42)年11月の竣工。
いまの留萌本線からすれば不釣り合いなほどに堂々とした立派な駅舎。
昭和40年代初め日本は高度成長期駅。
斜陽化が始まったとはいえ炭鉱はまだまだ北海道の主力産業だった時代だった。
羽幌、赤平、芦別の炭鉱で産出された石炭は貨物列車で留萌へ運ばれ、留萌港から船積みされて全国へ運ばれていた。
旅客列車はというと、急行列車が札幌へ2往復、旭川へ2往復運行され、旅客輸送の主役だった時代。
この立派な駅舎を見ていると、そんな栄光の時代を彷彿とさせる。
ローカル線とは思えない堂々とした留萌駅の駅舎。
駅舎正面にあった大時計は故障してそのままになったのか、塗りつぶされているあたりに留萌本線と留萌駅の落ち目を示しているようだ。
今着いた人たちがいなくなると、駅コンコースも駅前も急にガランとしてしまった。
改めて駅舎の中を見物する。
誰もいないコンコースは妙に広く感じる。
昔、急行列車が走っていたころは、札幌行急行の改札が始まる前など、これでも狭いと感じるほどに人がわんさかといたのだろう。
広々としたコンコース。
コンコースの隣はガラスの壁で仕切られた、これも立派な待合室がある。
手前に大きな暖簾を掛けた立食いそば屋、奥にはキヨスクが営業中だ。
一番奥がトイレで、その入口前は駅員が育てているのかガーデニングコーナーがある。
その中にモジャ君の立て看板が。
待合室のガーデニングとモジャ君。
待合室は立食いそば屋からの良い香りが立ち込めている。
さっき深川駅で天ぷらそばを食べたばかりだが、そばの香りに誘われて立食いそば屋の客となった。
待合室にある立喰そば。
立喰そば屋の品書き。
天ぷらはさっき食べたので、今度はにしんそばを注文。
昔ニシン漁で栄えた留萌らしい品だ。
にしんそば(500円)。
北海道らしい濃いツユに甘辛く炊いた身欠きにしんが乗る。
ツユにも身欠きにしんの風味が混ざってなかなかのもの。
この店では昔90年代にも食べたことがあって、あの当時はきしめんがあって、これは珍しいときしめんを食べた記憶がある。
うろ覚えなので、どこかほかの店とごっちゃになっていたかも知れない。
ただ、あのとき店の姐さんがテレビの笑っていいともを見て大笑いしながら店番をしていたのだけはハッキリと覚えている。
◆ 留萌の街
戻りの列車は16:14発深川行。
時間はたっぷりとあるので、留萌の街を歩いて見物してくることに。
駅を出ると目立つのがアーケード商店街。
ここも地方都市では珍しくなくなったシャッター商店街と化しているが、留萌駅前は昔から寂れていて、市の中心部は駅から歩いて10分ほど離れた錦町になる。
アーケードがあった留萌駅前。
アーケードから見た留萌駅。
留萌駅前のアーケード商店街。
駅から歩いて国道231号線に出ると、留萌の中心街らしく人通りも多かった。
歩道には夏祭りでもあるのか提灯が掲げられている。
しばらくラルズプラザの本屋で時間をつぶす。
ラルズプラザがあった錦町が留萌の中心街だった。
◆ 留萌 → 深川
15時過ぎ、再び留萌駅へ戻る。
さっきのそば屋はすでに店じまいしていてシャッターが下りていた。
待合室は次の深川行の客なのか、ベンチで雑談している2人の姿だけ。
奥のキヨスクはまだ営業中だが、中のおばちゃんも暇そうだった。
待合室とキヨスク。
深川行の改札が始まると数人がホームへ。
数人といっても片手で数えられるほどだが。
『只今の改札』の札が掛けられた留萌駅の改札口。
ホーム屋根から下がる電気時計とのりば案内が主要駅であったことを伝える。
やがて増毛から来た深川行が見えてくる。
さっき留萌まで乗ってきた列車の折り返しだ。
事務室から赤い帯の制帽の駅員が出てきて停止位置に立つ。
留萌〜増毛間はタブレットの閉塞方式となっているので、運転士からタブレットを受け取るためだ。
留萌駅ではローカル線では珍しくなったホームの立番風景が見られる。
増毛発深川行の列車が近づく。
助役帽の駅員が増毛からのタブレットを受け取る。
増毛から来た列車は回送列車のようだった。
乗客はいたのかいなかったのか覚えてないが、回送列車とか空気輸送といった言葉が当てはまる格好で増毛まで往復してきたことになる。
留萌からの数人と私が増えた車内は、それでもガラガラだった。
がら空きだった深川行。
秩父別〜北一已間の後面展望。
途中から乗ってくる客もほとんどなく、ガラガラのまま終点深川着。
パラパラとホームに降りた客はすぐに改札口へと向かっていった。
夏休み中の土曜日だからなのか、いつもこうなのかは分からないが、夕方の留萌本線は寂しいものだった。
深川駅に到着。
深川駅で50分の待ち合わせ。
改札を出ると駅弁の売店がまだ営業中だった。
幕の内弁当しか残っていなかったが、それを1つ買う。
車内で夕食にするとしよう。
◆ 深川 → 岩見沢 → 札幌
再び赤い711系電車。
行きに乗った旭川行と違って下りの旭川発岩見沢行はガラガラだった。ボックスシートも選び放題。
駅弁はこういう時に食べてしまうのが良い。
包み紐を解いて蓋を開ける。
深川駅で買ったおたのしみ幕の内弁当。
ザンギを筆頭に焼鮭、がんもの煮物、卵焼、煮しめ、昆布巻、素朴だけどどれもが美味しい。
地味だけど、ご飯もとても美味しい。
観光客受けのするものではないし、どこぞの駅弁大会で売られることもない名もない駅弁。
さりげなく栄養のバランスも考えられているし、調整元の良心がひしひしと感じられる。
深川駅弁はボール箱にプラ容器だが素朴なおかず。
駅弁を食べながら1杯やって、ひと眠りしたら真っ暗になっていた。
岩見沢では19分の待ち合わせで小樽行区間快速『いしかりライナー』に接続する。
岩見沢駅ホームと711系電車。
乗り継ぐ列車もまた711系電車だった。こんどのはラッシュ輸送の折り返しなのか6両編成。
夏休み中の土曜日ということもあってか、こんども札幌までガラガラの車内で過ごせた。
〜2007年版乗車記おわり
◆ 最後に
以上2007年、今から15年前の留萌本線乗車記になります。
たかが15年、されど15年。
鉄道も変われば街も変わるものですね。
乗車記の画像は、2022年の今では存在しないものが写っているものを選んでみました。
いっぱいありますね。
・深川駅の駅そば
・785系のスーパーホワイトアロー
・留萌駅前のアーケード
・錦町のラルズプラザ
・留萌駅のキヨスク
・留萌駅ホームの時計
・増毛駅方向から到着する列車
・留萌駅のタブレット収受
・深川駅の駅弁
・赤い711系電車
あなたはいくつ見つけられました?
あの当時は何でそんなもの撮影してるの、と言いたくなるようなものばかり写していましたが、15年経つとどれもが貴重な画像ばかり。
鉄道ファンだからといって鉄道車両ばかり写していちゃ駄目だということですね。
駅舎、待合室、改札口、駅前、町の風景、人物など、10年以上経てばどれもが貴重な画像となります。
人物はやたらとカメラを向けるのは憚(はばから)られますけどね。
え?、ストリートビューで過去の風景も見られるからそんなもの必要ないって?
う〜、今はそういう時代になってしまいましたね・・・
それはともかく、廃止となるもの、無くなってしまうものを嘆いていても仕方がありません。
私たちにできることといえば、今あるものを記録しておくくらいなもの。
留萌線の石狩沼田〜留萌間は、廃止日の繰り上げが認められれば残り半年と少しとなります。
これからはますます混むようになりますね。
札沼線廃止のときは新型コロナの緊急事態宣言下だったのでひっそりと終了した感がありますが、今後はさすがに行動制限もないでしょうから営業最終日はお祭り騒ぎのような人出となりそうです。
廃止の噂すらなかったけど鉄道ファンからも忘れ去られたような2007年当時の留萌本線。
当時の画像を見て、当時の乗車記を書いていたら乗り納めしたような気分になりました。
以上、最後までお読みくださいましてありがとうございました。
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