◆ 釧路 14:16 → 川湯温泉 15:48【4730D】
13時50分、帯広行き普通列車の改札が始まると何人かが中に入って行った。
網走行き方はまだ改札中のランプが消えているが、もう身の置き場所もないのでホームで待つことにする。
2番ホームは数人の人が先に列車を待っていた。
4番ホームは帯広行きキハ40の1両、あちらはがら空きだった。
1両の網走行きが入ってきたのは13時56分。
花咲線仕様の転換クロスシート車だった。
釧路駅に入線する網走行き普通列車。
このキハ54形は1986年11月に登場した国鉄型最後の車両。
ステンレス車のため外見はさほど古さを感じないが、車内に入って座ると化粧板がめくれあがったり錆が浮いていたりとやはり年季を感じる。
旧型客車サイズの二重窓にロールスクリーン、JNRマーク入りの扇風機、壁の帽子掛け、扇風機のスイッチと座席以外は昭和時代の香りも漂っていそうな車内だ。
いや、その座席にしてもモケットは新しくなっているが、元々は新幹線の0系車両で使われていたもの。
外見は近代的でも、車内は昭和時代そのままなのだった。
花咲線仕様の転換クロスシート車。
車内は余裕があったが、発車時刻が近づくと次々と乗ってきた。
デッキにに立つ人も出てきた。
地元の人と、旅行客が半々くらい。
中にはスーツケースに飛行機のタグを付けた人もいたり。
コロナなのか最近の風潮なのか知らないが、相席を嫌って車端のロングシートへ、そこも空いていなければデッキに立つ人ばかり。だから全員着席できるくらいの乗車率ではある。
次の東釧路では高校生が数人乗ってきて、乗り具合だけ見てれば都市近郊の列車らしくなった。
釧網本線の0キロポストがある東釧路駅。
釧路湿原駅では2組の客が降りて行った。
この駅は冬でも営業はしているが、停車する列車は上り2本下り1本のみ。
ここで降りてしまうと今日は釧路へ戻ることができないし、次の上り列車は1時間50分後。
少し歩けばビジターセンターもあるのでそこで過ごすのだろうか。
ここから乗ってくる人もいたのには驚いた。
釧網線は地図で見る限りでは釧路湿原沿いを走っているが、実際は線路際はハンノキが茂っていて眺望は良くない。
車窓のオススメは細岡〜塘路〜茅沼の区間だ。
釧路湿原を流れる釧路川。さすがにカヌーはいなかった。
湿原ノロッコ号は終点になる塘路駅。
釧路湿原を車内から見たければ特に注視したいのが塘路〜茅沼間。
ここは進行の左右どちらからも釧路湿原を眺めることができ、夏ならば緑一色の草原、冬は一面の枯草と真っ白になったシラルトロ沼を眺めることができる。
夏に運行される湿原ノロッコ号は、川湯温泉延長運転時を除いてこの区間を通ることがないのが残念。
釧路湿原と真っ白になった沼。タンチョウが2羽写っていた。
茅沼駅のタンチョウは今日は2羽だけだった。
標茶でたくさん下車するのを期待したが、降りたのは地元客と東釧路からの高校生など10人ほどだった。
乗ってくる人もいて、車内はだいぶすっきりしたけどデッキに立つ人がいるまま標茶を発車する。
磯分内駅。小さな駅も1人2人下車客がある。
摩周駅は私などつい弟子屈と言ってしまうが、駅名の通り摩周湖の最寄り駅。
ここでも10人ほど降りて車内はだいぶ余裕が出てきた。
もう車内に残っているのは旅行客の方が多い。
摩周を発車する頃には陽がだいぶ傾いてきてだんだん薄暗くなってきた。
もうすぐ山影に夕日が沈む。
貨車駅の美留和駅。
釧路は雲1つ無い快晴だったのに、だんだん雲が増え始めて美留和を発車したころには雪がちらつくようになった。
同じ釧路管内でも、川湯まで来ると釧路から90km近くも離れているから、この辺りはオホーツク海側の天気なのだろう。
前から眺めると線路はうっすらと雪に覆われている。
天気予報では曇りマークになっているが、山の天気なのでどうなるかわからない。
昨日は川湯〜網走間が始発から15時まで運休となっていたし、明日は予定通り列車に乗れるんだろうか。
川湯温泉駅が近づくころには雪になった。
ポイント部分以外は雪に埋もれた川湯温泉駅構内。
新雪が積もる川湯温泉駅に到着。
川湯温泉で降りたのは私含めて8人ほど。地元の人は釧路から乗っていた老夫婦だけのようだ。
私たち旅行客を降ろして空席が目立つようになった列車は、真っ白になった線路上を峠に向かって発車して行った。
付着した雪煙で白くなった後部。
川湯温泉駅は丸太を組んだ山小屋風の駅舎が今も残っている。
この駅に来たことがあるのは2013年だから9年前。あのときは車で来た。
かなりリニューアルされて窓や壁が新しくなっているが、新しくなった感じがするだけで原形は変わっていないので安心した。
温泉地らしい趣のある川湯温泉駅ホーム。
元集札口から外に出ると温泉街らしく宿の送迎らしい車が何台か停まっている。
今夜の宿の名前を表示した車もあった。
駅の正面にあるバス乗り場には温泉街へ行く阿寒バスも発車を待っている。
◆ 川湯温泉駅 15:55 → 川湯温泉街 16:05【阿寒バス】
送迎の予約はしていなく、予定ではバスに乗ることにしていた。
天気が良ければ歩いて40分くらいだが、雪がちらつく今日はさすがにやめておく。
宿の送迎車に頼めば乗せてくれるのかも知れないが、こういう所の路線バスに乗ってみるのも面白いし、今日はバスの客となった。
車内はさっきの列車に釧路から乗ってきた老夫婦のみ。
あとの人は送迎車でそれぞれの宿に向かうのだろう。
川湯温泉駅は1936年建築の山小屋風駅舎。
バスの運転手に今日の宿の最寄り停留所を聞くと、
「郵便局前になります」
だけど、宿の前でバスを停めてくれるという。
料金は290円均一。
川湯温泉駅と温泉街を結ぶ路線バス。
地元老夫婦は途中で降りて、車内は自分1人だけになった。
バスは宿の正面に停まって、運転手に礼を言って降りる。
エントランスは宿の法被を着たスタッフが迎えてくれた。
◆ お宿 欣喜湯
入ると名前を聞かれて、
「順番にご案内しますのであちらでお待ちください」と言われる。
チェックインに1組1組丁寧に応対してるようだ。
お宿 欣喜湯の1Fフロント。
宿の名は『お宿 欣喜湯』。
9年前に車での道東旅行で泊ったことがある。
今回は『どうみん割』使用で、本来は14,800円のところ5,000円引きで1泊2食付き9,800円となる。
今回ここにしたのは、宿のHPにどうみん割プランがあってそこから予約できたから。
もう1つ検討したところもあったが、どうみん割は電話でお問い合わせくださいとあったのでパス。
面倒くさいのは嫌い。
マスクをした湯上り熊さん。
10分くらい待たされてようやく自分の番になった。
フロントでどうみん割の条件である住所を確認できる身分証明書〜私の場合運転免許証とコロナワクチンの接種証明を提示する。
接種証明はコピーしたのを持ってきた。
「今日は空きがあるので10畳の部屋をご用意しておきました」
やった、前回は狭い部屋だった記憶があるので嬉しい。
部屋のキーと夕食券、それに額面\500円のほっかいどう応援クーポン4枚を渡される。
次が別のスタッフによる温泉の説明。
温泉はリニューアルして露天風呂もできたとか、目に入ると染みるという説明だった。
そんなもの入ってみればわかるし、私は基本的におもてなしよりも放っておかれたほうがいい人間なので少々煩わしいがハイハイと聞いておく。
皮膚病に効くという話になると、
「前回来たときは水虫が治りましてねえ、はっはっは・・・」
なんて言ってみる。
さて10畳の部屋は・・・。
少し古びているが、なかなか立派な部屋。
畳が8畳、窓際に椅子とテーブルが置かれた広縁。いかにも和風旅館。
洒落たシティーホテルの部屋よりも、やっぱりこっちの方が落ち着くな。
極めつけはコレ ↓
懐かしいダイヤル式の黒電話が健在。
いや〜懐かしいですねえ。
こんなものがまだ現役で使われているとは。
うちの実家も私が高校1年の時までこの電話機だったよ。
この画像を見たら、泊まっている間にどこかへ電話してみればよかったなと思った。
コロコロコロ・・・ジ〜、コロコロコロ・・・ジ〜、携帯の090を回すだけでも大変だね (^^♪
ほっかいどう応援クーポン2千円分。どうみん割の特典。
部屋の窓からの眺め。
夕食は18時からの回を予約した。
まずは風呂へ入る。
時間が早いのか客自体が少ないのかはわからないが、風呂はガラガラだった。
おかげでゆっくりとできる。
お湯は硫黄の匂いがする強酸性。
さっきも書いたけど、前回来たときは水虫持ちで、お湯に浸かると指の間にキーンと染みたのを思い出す。
だけどここに1泊して3回ほど温泉に浸かって札幌に帰ったら本当に水虫がきれいに治ったんだよね。
今回は水虫もタムシも持っていないのでお湯に入っても染みる所は無い。
久しぶりに長湯して風呂から上がったら汗がドバドバと噴き出した。
脱衣所にあった冷水器の水が旨い。
本当は風呂上がりのビールといきたかったが、今日は夕食があるので水で我慢した。
エレベーター内にあった浴槽情報。
さて6時になったので2階の夕食会場へ。
テーブルには既に料理が並べられていた。
ミニコンロ付きの鍋ものと焼き物がメインらしい。意外と渋いメニューだね。
ドリンクは別料金。
テーブルにメニューが立ててあり、それから選ぶ。
生ビールもあるけど、この献立だと日本酒だね。
・・・あまりいい酒は置いてないな。まあ値段も分相応だけど。
まあいいや、釧路の地酒『福司』にした。
「お燗しますか?」と聞かれ、燗酒もいいけど風呂上がりだから汗だくになりそうなので冷やにした。
瓶入りかグラスで出てくるのかと思ったら、お銚子にお猪口で出てきた。
しかも口まで並々に注いである。
いいねえ、こういうの好き。
本日の夕食。お銚子も1本つけた。
真ん中の妙な空間はこれから焼き物でも出てくるのかと思ったら、出てきたのは天ぷらだった。
私は酒飲みなので、あまりどっさり出されてお腹いっぱいになってしまうよりは、色んなものを少しずつ食べたい。
これは酒飲みとか年寄りの客好みの献立だなあ。若い人やお酒を飲まない人には物足りないかも。
左上:コタン鍋特製豆乳白味噌仕立て、右上:本鮪・鯛・あしらい一式
左下:雲丹豆腐、右下:欣喜冬の茶碗蒸し
左上:牛ロース道産子陶板焼き、右上:海老と野菜の天ぷら
左下:日の丸摩周うどん、右下:摩周ルビー車厘(ゼリー)
そういえば、9年前に泊った時は年寄りの客ばかりだったなあ。
あれから起こったインバウンドバブルは、この温泉街には無縁だったようだ。
レストランを見渡すと、カップルや家族連ればかり。
新型コロナ禍があって思わぬところで客層が若返ったことは結構なことだが、懐石風の年寄り向けメニューでは物足りないだろうな。
お酒を1本空けたのでもう1本追加した。今度は根室の『北の勝』にした。
料理をつまみながらお酒を飲んでいたらあっという間に1時間が経っていた。
気づくと6時から組の人たちはいなくなっていた。
夕食会場の2Fレストラン。
夕食会場から部屋に戻ると布団が敷いてあった。
そうだったな、旅館は布団を敷いてくれるんだよ。
最近は温泉旅館でも布団は最初から敷いている所が多くなったので、すっかり忘れていた。
布団が敷かれた部屋。
食事だって昔は部屋まで運んできてくれたんだよね。
料理は足の付いたお膳に載せて、ご飯はお櫃に入れてね。
そして食事の後に風呂へ行って戻ってきたら、お膳が片づけられて布団が敷いてあったけなあ。
昔の旅館を知らない人は色々戸惑うことがあるかもしれないね。
昭和や平成ひと桁の温泉旅館の文化を味わいたければここに泊れば良い。
何となく、昔ながらのこの宿が愛おしく思えてきた。
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