◆ 北海道新幹線の並行在来線問題
小樽〜余市間でもだめだったか、というのが正直な感想。
*どうしん電子版 2022/3/27
並行在来線 長万部―小樽廃線へ バス転換合意 27日決定*
2030年度末に予定されている北海道新幹線札幌開業と引き換えにJR北海道から経営分離される並行在来線のうち、長万部〜余市間についてはバス転換が決定していたが、残る余市〜小樽間もバス転換にほぼ決定した模様です。
これで北海道新幹線並行在来線対策協議会のうち、後志ブロックについては結論が出たことになります。
日中でも利用者が多かった余市駅。これもバス転換になる。
今後は渡島ブロックになる函館〜長万部間についての協議に移るのでしょう。
函館〜長万部間は貨物列車のルートとなっているために物流だけではなく北海道経済にとっても影響が大きいために、旅客輸送が赤字なので鉄道は廃止しますと簡単にはいかないでしょうね。
このあたりの事情は前記事に書いたのでそちらをご覧ください。
渡島ブロック構成員のうち、長万部町はすでにバス転換支持を表明しています。
残る沿線自治体は函館市、七飯町、森町、八雲町。
現在のところ直近で開催された第8回渡島ブロック会議(令和3年4月26日)を見ると、函館〜長万部間については次の3案が検討されているようです。
1,第三セクター鉄道(函館〜長万部間鉄道)
2,バス転換
3,三セク+バス転換(函館〜新函館北斗間鉄道、新函館北斗〜長万部バス)
山線唯一の希望だった余市〜小樽間までもがバス転換合意となってしまったので、どの自治体も鉄路存続には今まで以上に慎重にならざるを得ないでしょう。
このままの流れで沿線自治体だけの存廃議論だけで道や国が介入しないとなると、少なくとも新函館北斗〜長万部間もバス転換になり鉄道も廃止されてしまいそうな勢いです。
検討案にはありませんが、仮に貨物専用の三セクとしても、沿線で貨物取扱駅があるのは函館市だけで、残りは貨物列車が通過するだけでは何の恩恵も無しということでは沿線自治体からの投資も期待できません。
この区間の物流となると北海道経済の問題となるので、道と道内の経済団体の出資して三セクの鉄道保有会社を立ち上げ、運営はJR貨物ということになるのが一番現実的でしょう。
どういう形であれ、もし貨物専用鉄道として運営するとなると今までの協議はご破算にして、また別なスキームを立ち上げる必要があります。
新函館駅を発車するはやぶさ号。新幹線への期待は大きいが、代償もまた大きい。
今の流れでは、沿線自治体がバス転換という結論を出して鉄道を廃止するということもありうるわけで、じゃあ、この区間の鉄路存続を断念。在来線の線路が無くなった場合、鉄道貨物輸送ははどうなるのでしょうか。
この場合考えられるのは次の3点になりましょう。
1,新函館北斗〜長万部間を新幹線と貨物共用とする
2,貨物列車の北限は函館貨物駅とし、それ以外の貨物はフェリー+トラックで代替する
3,青森〜室蘭または苫小牧間に鉄道連絡船を就航して貨物列車を航送する
1は札幌までの延伸区間はトンネルばかりなので、青函共用区間問題と同様に最高速度が160kmとなって新幹線の効果が薄くなってしまうという大きな問題が起こります。
2はフェリーはともかくトラックとドライバーの確保が困難。またフェリーから積み下ろしたコンテナはトラックで各地に向かうことになり、それが再び列車で運ぶことは考えられないので、JR貨物の駅は函館貨物駅だけ残してあとはオフレールステーション(トラック代行のコンテナ基地)となることでしょう。
3は突拍子のない発想ですが、過去には青函連絡船で貨車航送を行っていたし、意外と現実味はあるのかもしれません。
それに、青函トンネル区間から貨物列車が激減することで、現在海峡線内での新幹線の最高速度が160km/hに抑えられているという青函トンネル共用走行問題も解決することになります。
実際、鉄道連絡船経由での貨物列車運行となるとどのようなものになるのでしょうか。
『東洋経済』あたりでよく目にする鉄道連絡船復活論。
それが現実的なのか、また復活するとなるとどのようなダイヤになるのか。
前置きが長くなりましたが、この記事のタイトルである『鉄道連絡船復活は並行在来線問題の切り札となるのか』について検証してみたいと思います。
◆ 青函連絡船時代の貨車航送
その前に、津軽海峡線開業の1988年3月13日まで運航されていた青函連絡船の貨車航送についておさらいしてみることにします。
懐かしいですね、青函連絡船。
私は3回しか乗ったことはありませんが、それでも懐かしく当時の記憶が蘇ります。
こんな郷愁を誘うのは、もう40歳代も半ば以上の人でしょうけれど。
青函連絡船のイメージ(連絡船廃止記念の下敷きより)
残念ながら現役当時の写真は持っていないので、廃止前に記念に買った下敷きの画像を貼ってみました。
で、青函連絡船のおさらいです。
連絡船の本数は、国鉄最後の1986年11月のダイヤ改正の時刻表を見ると、臨時便を含めて下り10本、上り9本となっています。
下り 青森→函館 | 上り 函館→青森 | |||||
便 | 青森発 | 函館着 | 便 | 函館発 | 青森着 | |
◆101 | 0:05 | 4:00 | ◆102 | 0:10 | 4:05 | |
1 | 0:30 | 4:25 | 2 | 0:40 | 4:30 | |
21 | 5:25 | 9:15 | ◆170 | 2:40 | 6:35 | |
23 | 7:30 | 11:20 | 4 | 7:20 | 11:15 | |
◆153 | 9:50 | 13:40 | 6 | 10:10 | 14:05 | |
25 | 10:10 | 14:05 | 8 | 12:15 | 16:10 | |
3 | 12:10 | 16:05 | 20 | 15:00 | 18:55 | |
5 | 15:00 | 18:50 | 22 | 17:00 | 20:55 | |
7 | 17:05 | 20:55 | 24 | 19:45 | 23:35 | |
9 | 19:50 | 23:45 |
◆=臨時便
(1986年11月の時刻表から筆者作成)
時刻表に掲載されている便は旅客扱いしている便だけで、意外と知られていませんが、それ以外にも貨物便が運航されていました。客貨船と貨物船合わせると、1日19往復もの便が運航していました。
別な見方をすれば、全運航本数のうち約半分しか旅客扱をしていなかったことになります。
だから青函連絡船の主な役目は貨物列車を航送することで、その中の一部の便で旅客輸送もしていたとも言えます。
下は昭和61年11月発行貨物時刻表から作成した青函連絡船の時刻表です。
継承列車(本州側) | 青函航路 | 継送列車(北海道側) | |||||
列車番号 | 始発駅時刻 | 青森着 | 便番号 | 青森発 | 函館着 | 函館発 | 終着駅時刻 |
4091 | 梅田 1:26 | *22:12 | 101 | 0:05 | 4:00 | 5:13 | 10:43 札幌(タ |
951 | 東青森 22:56 | 23:09 | 1 | 0:30 | 4:25 | ||
3051 | 隅田川 15:15 | 1:25 | 171 | 2:35 | 6:25 | 7:31 | 12:35 札幌(タ |
◆8553 | 梅田 11:50 | 1:05 | ◆8061 | 3:10 | 7:00 | 8:23 | 14:38 札幌(タ |
5161 | 飯田町 5:01 | 3:09 | 151 | 5:00 | 8:50 | 10:25 | 20:27 札幌(タ |
4097 | 沼垂 17:10 | *3:25 | 21 | 5:25 | 9:15 | 10:51 | 16:24 札幌(タ |
3067 | 宮城野 23:48 | 6:19 | 23 | 7:30 | 11:20 | 12:40 | 18:06 札幌(タ |
◆8153 | 隅田川 17:33 | 7:02 | ◆8063 | 8:15 | 12:05 | 13:06 | 18:12 札幌(タ |
3061 | 東京(タ 11:05 | 8:36 | 153 | 9:50 | 13:40 | 15:26 | 21:56 札幌(タ |
3053 | 隅田川 20:43 | 8:14 | 25 | 10:10 | 14:05 | 15:20 | 20:34 札幌(タ |
3063 | 越谷(タ 21:39 | 21:39 | 3 | 12:10 | 16:05 | 17:18 | 22:28 札幌(タ |
151 | 隅田川 21:16 | 11:26 | 51 | 12:40 | 16:35 | 18:13 | 0:40 札幌(タ |
3065 | 隅田川 0:20 | 13:10 | 155 | 14:30 | 18:20 | 19:43 | 1:17 札幌(タ |
3081 | 小名木川 22:32 | 13:37 | 5 | 15:00 | 18:50 | 20:04 | 1:32 札幌(タ |
4093 | 大阪(タ 19:22 | *14:06 | 7 | 17:05 | 20:55 | 22:10 | 4:03 札幌(タ |
4087 | 名古屋(タ 22:51 | 18:08 | 157 | 19:20 | 23:15 | 0:35 | 5:40 札幌(タ |
551 | 梅田 21:47 | *17:50 | 9 | 19:50 | 23:45 | 1:04 | 6:16 札幌(タ |
4079 | 西浜松 20:44 | 19:47 | 173 | 21:55 | 1:45 | 3:05 | 8:18 札幌(タ |
4095 | 四日市 17:14 | 20:55 | 53 | 22:20 | 2:10 | 3:32 | 8:44 札幌(タ |
継承列車(北海道側) | 青函航路 | 継送列車(本州側) | |||||
列車番号 | 始発駅時刻 | 函館着 | 便番号 | 函館発 | 青森着 | 青森発 | 終着駅時刻 |
3060 | 札幌(タ 17:54 | 23:00 | 102 | 0:10 | 4:05 | 5:57 | 21:24 東京(タ |
950 | 2 | 0:40 | 4:30 | 7:05 | 7:19 東青森 | ||
554 | 札幌(タ 19:37 | 1:21 | 170 | 2:40 | 6:35 | *9:07 | 11:55 四日市 |
3068 | 北旭川 18:09 | 1:28 | 50 | 3:05 | 7:05 | 8:15 | 21:14 隅田川 |
550 | 札幌(タ 21:35 | 3:40 | 150 | 4:55 | 8:50 | *11:07 | 11:59 浪速 |
3052 | 釧路(操 17:24 | 4:03 | 160 | 5:20 | 9:15 | 10:24 | 20:35 隅田川 |
3064 | 札幌(タ 0:01 | 5:58 | 4 | 7:20 | 11:15 | 12:38 | 0:16 隅田川 |
◆8152 | 札幌(タ 0:55 | 6:28 | ◆8062 | 7:55 | 11:45 | 13:10 | 12:13 隅田川 |
4092 | 札幌(タ 2:53 | 8:14 | 152 | 9:45 | 13:35 | *15:08 | 9:10 大阪(タ |
3080 | 札幌(タ 3:15 | 8:57 | 6 | 10:10 | 14:05 | 15:28 | 4:53 小名木川 |
3062 | 札幌(タ 4:55 | 11:00 | 8 | 12:15 | 16:10 | 17:32 | 4:56 越谷(タ |
4096 | 札幌(タ 6:54 | 12:55 | 154 | 14:35 | 18:25 | *20:27 | 5:49 沼垂 |
556 | 札幌(タ 6:30 | 13:36 | 20 | 15:00 | 18:55 | *20:35 | 15:34 梅田 |
5160 | 苫小牧(操 5:10 | 14:54 | 22 | 17:00 | 20:55 | 22:08 | 14:24 飯田町 |
150 | 苫小牧 10:50 | 15:53 | 52 | 17:30 | 21:20 | 22:35 | 14:06 小名木川 |
3066 | 札幌(タ 12:36 | 18:00 | 156 | 19:15 | 23:10 | 0:49 | 8:11 宮城野 |
156 | 札幌(タ 13:09 | 18:23 | 24 | 19:45 | 23:35 | 0:20 | 22:39 名古屋(タ |
3050 | 札幌(タ 15:32 | 20:39 | 172 | 21:50 | 1:40 | 2:59 | 12:54 隅田川 |
◆8552 | 札幌(タ 15:08 | 21:05 | ◆8064 | 22:20 | 2:15 | 3:30 | 7:34 梅田 |
◆=臨時便、*=青森操車場発着時刻
(昭和61年11月ダイヤ改正貨物時刻表から筆者作成)
この頃の貨物列車は既にほとんどの列車が主にコンテナ列車による拠点間の輸送に切り替わっていて、本州と北海道を直通する列車は両側とも列車番号が同じで、1本の貨物列車が連絡船1隻を介して本州と北海道を結んでいました。
青函連絡船時代のダイヤで、試しに下り3051列車の場合の青森到着から函館発車までの時刻を見てみましょう。
この列車は隅田川〜札幌貨物ターミナル間を21時間20分で結ぶ、同区間の貨物列車としては当時最速だった列車です。
1:25、青森に3051列車到着。
1:40、1岸に172便が到着、搭載していた上り3050列車を車両甲板から降ろす。
続いて3051列車を4分割して車両甲板に積み込む。
貨車積みが終わると貨車に緊締具を付けて船体に貨車を固定する。
これら貨車の積み下ろし作業の所要時間は通常30〜40分程度だったようだ。
2:35、171便として青森出港。
6:25、函館の2岸に入港。
171便の車両甲板から4分割されていた列車を積み下ろして1本の列車にする。
7:31、北海道側3051列車として札幌へ向けて発車。
3051列車が青森に着いてから連絡船で航送され、函館駅を発車するまでの所要時間は6時間6分となります。
これが現在の青函トンネル経由だと青森信号場〜五稜郭間で2時間49分にまで短縮されているわけですから、貨物列車にとっても青函トンネル効果は大きかったわけですね。
この流れで見ると、連絡船出港の1時間10分前に本州側の貨物列車が到着し、函館入港の1時間6分後に発車していることになります。
列車と連絡船の接続時間は1時間程度と考えられます。
これを踏まえて、貨物列車の新・連絡船ルートをシミュレーションしてみることにしましょう。
◆ 新・連絡船による貨物列車輸送をシミュレーションする
まずは本州側と北海道側の連絡船桟橋をどこに設けるか。
いろいろ検討案はあるようですが、とりあえず本州側は青森、北海道側は苫小牧とします。
この両市のどこに設けるかというのは別の議題にするとして、とにかく青森〜苫小牧間に新・連絡船を就航するものとします。

現在の貨物列車のルートと新・連絡船ルートの比較(地理院地図より筆者作成)
連絡船の所要時間は、八戸〜苫小牧間のシルバーフェリーを参考にすると、北行きが7時間15分、南行きが7時間30分で結んでいいます。
地図上で測ってみると、青森〜苫小牧間もシルバーフェリーとほぼ同じ距離なので、所要時間も同じくらいと考えて良さそうです。
地図上で測ってみると、青森〜苫小牧間もシルバーフェリーとほぼ同じ距離なので、所要時間も同じくらいと考えて良さそうです。
過去には東日本フェリーが青森〜室蘭間に就航していて、その所要時間は北行きが6時間30分、南行きが7時間となっていました。
北行きと南行きで所要時間が大きく異なるのは津軽海峡の潮流の影響でしょう。
これで考えれば、青森〜苫小牧間連絡船の所要時間は北行き(下り)7時間、南行き(上り)7時間30分といったところでしょうか。
で、現在の鉄道ルートでの青森〜苫小牧間の所要時間を2021年発行の貨物時刻表で見てみましょう。
これは青森信号場の到着時刻と苫小牧貨物駅の発車時刻の差分としました。
これを下り列車の場合で同区間の所要時間を定期列車だけで見ると、最短が仙台(タ)発札幌(タ)行きの2051列車で6時間25分、最大は東京(タ)発札幌(タ)行き6095列車で9時間17分となっています。
定期列車19本の平均は7時間34分。
列車によってばらつきがあるのは、五稜郭駅での機回しや解放・連結作業、単線区間での交換待ち、新幹線の通過待ちなどから発生する時間と思われます。
ここで、貨物列車のうち一番本数が多い区間の隅田川〜札幌貨物ターミナル間を最速で結ぶ3057列車が、新・連絡船ルートになるとどれくらい時間が変わるのかを比較してみましょう。
先に述べた通り、列車と連絡船の接続時間は1時間、連絡船の所要時間は下り7時間とします。
現行の3057列車の場合16時間55分。
駅名 | 隅田川 | 青森着 | 青森発 | 苫小牧 | 札幌タ |
3057列車 | 17:02 | 2:47 | 3:03 | 9:12 | 9:57 |
連絡船経由とした場合19時間58分。
鉄道 | 連絡船 | 鉄道 | ||||
駅名 | 隅田川 | 青森着 | 青森発 | 苫小牧着 | 苫小牧発 | 札幌タ |
3057列車 | 17:02 | 2:47 | 4:00 | 11:00 | 12:00 | 13:00 |
隅田川駅を17:02に発車した3057列車を現行のダイヤでの時刻と、青森〜苫小牧間を連絡船経由としたシミュレーションを比較してみるとこうなりました。
最速列車3057列車の場合で、現行よりも約3時間所要時間が延びることになります。
ただ、これは最速列車で比較した場合で、隅田川〜札幌貨物ターミナル間の所要時間は現行の定期列車の最長が19時間23分、臨時列車に至っては20時間を超える列車もあり、必ずしもスピードを身上としない貨物列車であれば意外とアリなのかもしれませんね。
ダイヤだけ見れば新・連絡船案は頭ごなしに却下する案でもなさそうです。
次に新・連絡船は1日当たり何本運航することになるのでしょうか。
現在の本州〜北海道間の貨物列車の本数は臨時列車も含めると下りが26本、上りが25本となっています。
一応青函連絡船時代に倣って1列車1便とし、現在の運行本数を確保するとなると、これが新・連絡船の本数となります。
ざっくりとですが、連絡船1隻が青森〜苫小牧間を1日1.5往復することになるでしょう。仮に1日26往復設定すると考えると計算上必要な船は18隻ということになります。
また、青函連絡船時代は1隻でコキ17両を航送していましたが、現在の貨物列車は最長20両編成。
さらに1周り大型の船になりそうです。
1便で貨物列車2列車分運べば必要な船の数は半分になりますが、それとて巨大船が必要になります。
さらに、鉄道の車両航送という特殊な船体の大型船を18隻(あるいは9隻)新造しなければなりません。
貨車の積み下ろしのための専用岸壁を設ける必要もあるし、なにより大型船が発着する埠頭を作ってそこまでの貨物線も建設する必要が出てきます。
青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸の車両甲板と保存車両。
まあ、巨額の初期投資が必要になることは間違いないでしょう。
それに、貨物列車が新・連絡船ルートで青森〜苫小牧間をスルーするとなると、青森〜函館間の貨物列車は1日1〜2往復程度で十分ということになります。
そうなると道南いさりび鉄道に入るJR貨物からの線路使用料は激減するでしょうから、同社の経営自体も危うくなりかねないことになります。
(道南いさりび鉄道の収入のうち9割はJR貨物からの線路使用料といわれる)
また、線路使用料が期待できなくなると、新幹線アクセス鉄道となる函館〜新函館北斗間の鉄道存続も困難となってしまうでしょう。
下手をすると渡島半島から新幹線以外の鉄道が消滅することも考えられます。
◆ 函館〜長万部間並行在来線問題の結論
新・連絡船案は、青函共用走行問題が解決するのが一番のメリットですが、それ以外の代償が大きすぎます。
また、1988年に鉄道の車両航送が廃止されてからすでに34年もの年月が過ぎています。
当時の技術を伝えられる人も高齢化していることから、一から人員を養成する必要も出てきます。
そこまでするくらいならば、十分に使える既存の鉄道に貨物列車を走らせた方が早いし安い。
というわけで、新・連絡船案はまず無いものと考えてよさそうです。
青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸と青森桟橋可動橋跡。
ところで、鉄道連絡船復活と聞くと、ちょっと心がときめくのは筆者だけはないでしょうね。
オールドファンとしては、かつての青函連絡船の旅情やロマンの再来を期待したいところです。
しかし、仮に連絡船が復活したとしても、それは貨物専用としての航路となる可能性が高いです。
旅客輸送をするとなると、それはそれでまた追加投資や旅客のための人員が必要となるし、既存の民間航路との競合も発生するわけであり難しいところでしょう。
また、岸壁での航送車両の積み下ろし作業も、人手に頼った青函連絡船時代とは違って、多くの作業がオートメーション化され無人で行われることでしょう。
仮に新・連絡船が就航しても、青函連絡船とは似ても似つかぬ桟橋風景となりそうです。
結論として、函館〜長万部間の並行在来線問題については以下の2択が考えられます。
1,新函館北斗(あるいは五稜郭)〜長万部間は何らかの形で貨物専用鉄道として存続する。
2,新函館北斗(あるいは五稜郭)〜長万部間の鉄道は廃止して、フェリー+トラックによる貨物輸送を新たに構築する。
いずれにしても前例のないことだし、1は資金調達の面から、2はトラックドライバー不足の面から難航しそうです。
あっさりとバス転換が決まった山線の長万部〜小樽間と違って、函館〜長万部間の存廃協議は一筋縄ではいかないことはお分かり頂けたと思います。
新幹線札幌開業まであと9年を切ったいま、残された時間は多くありません。
新函館北斗〜長万部間の並行在来線問題は、少なくとも鉄道による旅客輸送と沿線自治体からの投資はあきらめて、貨物専用鉄道への転換とするスキームを早々に立ち上げた方が良いのではないかというのが筆者なりの結論となりました。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
【参考文献】
昭和61年11月改正貨物時刻表(社団法人鉄道貨物協会)
2021年3月ダイヤ改正貨物時刻表(公益財団法人鉄道貨物協会)
青函連絡船物語 大神隆著(交通新聞社)
東洋経済オンライン
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