縦長の駅名標からサッポロビールが消える

北海道の駅でお馴染みといえば、黄色で縁取りした紺地に白抜きのひらがなで表示した縦長の駅名標。

ホーロー製で独特の字体のひらがなで駅名を記してあって、見るとどことなくノスタルジーな気分にもなってきます。
この字体はスミ丸ゴシック体といって、国鉄時代は標準的な字体に定められていました。

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 ホーロー製の駅名標。今はなき日高本線 浦河駅にて。

さらに特徴的なのが、駅名表示の下にある赤文字の『サッポロビール』の広告。
これを見て、ああ北海道に来たな〜と思う方も多いのではないでしょうか。

もっと昔は、単純に紺地に白抜きで毛筆体のもあったようですが、国鉄時代の昭和59年(1984年)に今の様式の駅名標に一斉に取り換えられたようです。

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 本場の味サッポロビールの広告。

ところが最近、駅名標の『サッポロビール』の部分が白く塗りつぶされた駅名標を多く目にするようになりました。

その理由は情報源の北海道リアルエコノミー(2021/06/09)の記事から引用します。

“サッポロビール(本社・東京都渋谷区)はJR北海道ソリューションズ(同・札幌市東区)と協議、定期的に実施している広告施策の見直しの一環として駅名標広告の掲出を終了することにした。”
 〜以上北海道リアルエコノミー(2021/06/09)より引用

同記事によると、2022年度からは新デザインの駅名標が掲出されることになっているようです。
新デザインのものに移行する駅は、小樽〜岩見沢間、旭川、札幌〜苫小牧間、札幌〜北海道医療大学間、帯広、釧路、上富良野それに北海道新幹線の3駅。

それ以外の駅は広告部分を塗りつぶすか撤去する作業を6月から進めているようです。

新デザインになる駅以外では今までの駅名標を引き続き見ることができるようですが、あちこちでサッポロビール部分を白く塗りつぶされた駅名標を見ると寂しく感じますね。

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 サッポロビール部分が塗りつぶされた駅名標。

とはいうものの、古いものが消えて新しいものになるのは変えようがありません。
そこで、道内で使用されているサッポロビール広告付き縦長駅名標をあれこれ集めてみました。

画像は100%筆者撮影です。

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札幌駅(函館本線)。

北海道を一番代表する駅を最初に。
電光掲示板が最新のものに交換されたり、案内板が新しいデザインのものになっても、ホームのこの駅名標を見ると昭和時代に引き戻されたような感覚になる。
新デザインになったときは、ホームも少しは垢抜けするのだろうか。

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平岸駅(根室本線)、山部駅(根室本線)。

根室本線の東滝川〜東鹿越間の各駅のは、7月段階で白く塗りつぶされていた。
このほかに函館本線長万部〜塩谷間など、本社管轄の駅は早くから塗りつぶしが進んでいるようだ。
古いホーロー看板の、塗りつぶした部分が妙に明るく目立つ。

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長万部駅(函館本線)。

他の駅のは広告のホーロー板全部を塗りつぶしているのに対し、これは文字部分だけ塗りつぶした例。

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富良野駅(根室本線)、上富良野駅(富良野線)。

富良野線の上富良野駅のは新デザインになり、富良野駅のは旧来のまま据え置かれる。
でも何で富良野駅でも美瑛駅でもなく上富良野駅だけ置き換え対象なんだろう。

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新札幌駅(千歳線)、厚別駅(函館本線)。

これは駅名の下に□囲みの『札』のマークが付いた例。
『札』とは札幌市内のこと。

JRの運賃計算には特定都区市内という制度があって、札幌駅から201km以上の距離の乗車券は札幌市内発着とする制度がある。
その札幌市内発着の乗車券を持っていれば『札』マークの付いている駅で乗り降りしてもいいですよという印。

横長の大きい駅名標も良く見ると右上の隅に『札』マークがある。

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北海道医療大学駅(学園都市線)、あいの里教育大駅(学園都市線)。

今度は長い駅名のものを並べてみました。
JR北海道で1番長い駅名の『ほっかいどういりょうだいがく』は14文字、2番目の『あいのさときょういくだい』は12文字。

文字を横長に圧縮して幅も従来の半分くらいにしてようやく収まる長さ。
『札』が入るあいの里教育大のはもっと苦しい。

何としても規格のホーロー板に収めなきゃという執念すら感じる。

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森駅(函館本線)、目名駅(函館本線)。

こちらは短い駅の例。
文字をめい一杯上下に寄せて、他の駅より文字が縦長になっている。
道内でひらがなにすると1文字の駅名はなく、2文字が最短の駅名。

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稚内駅(宗谷本線)、東根室駅(花咲線)。

特にどうということもない普通の駅名標ですが、日本最北端と最東端の駅を並べてみました。
この2つを並べると、やっぱり北海道も果てまで来たねえという気分になる。

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函館駅(函館本線)、ようこそ函館へ(函館駅)。

函館駅は玄関口としての役割は新函館北斗駅に行ってしまったが、しかし北海道の始発駅といえばこの函館駅。
他の駅と同じデザインのホーロー板だが、はこだての文字は他とは違う風格を感じる。

そして赤いサッポロビールの文字。
この駅名標を見て北海道にやって来たと実感した人も多いはず。

右の看板は駅名標ではないが、これもホーローの看板で『ようこそ函館へ。』の文字が表示されている。
この看板は、元々は青函連絡船の桟橋通路に掲げてあったものだと記憶してるがどうだろう。
それが連絡船の廃止で跨線橋から改札口への通路に移されて、今の新しい駅になった時にホームから連絡通路に出入りする今の場所に掲示されるようになった。

函館駅の駅名標は新デザインのものに移行するが、ようこそ函館の看板はどうなるのだろう。

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南千歳駅(千歳線)、サッポロビール庭園駅(千歳線)。

どちらも平成になってから付けられた駅名。
南千歳は平成4年(1992年)千歳空港から改称、サッポロビール庭園は平成2年(1990年)の開業。

すでにJR北海道の駅となっていたが、ホーローの駅名標は同じものが設置された。

縦長駅名標は原則ひらがな表記だが、スポンサーだからなのかは知らないがサッポロビール部分はカタカナで書かれている。

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新函館北斗駅(函館本線)、野幌駅(函館本線)。

新函館北斗駅は平成28年(2016年)北海道新幹線開業時に渡島大野から改称された。
野幌駅は平成23年(2011年)に高架駅となった際に駅名標も新しいデザインのものとなったもの。

さすがにこの頃にはホーローのものは作成されなくなった。
サッポロビール広告の文句は『北海道はサッポロビール』に変更されている。

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木古内駅(北海道新幹線)。

これは北海道新幹線ホームにある駅名標。
地色はスピード感を表すためか萌黄色と深緑のグラデーションとなったが、文字が目立たなくなってしまった。。
広告の文句は『ONLY北海道CLASSIC』と企業イメージではなく商品の宣伝になっている。

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苗穂駅(函館本線)。

これは苗穂駅が平成30年(2018年)に移転となって設置された新しい駅名標。
元の駅で使用されていたものを移して来るのではなく新たに作られた。
デザインは従来と変わらないが、広告部分がサッポロビール園とサッポロビール博物館となっている。

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長都駅(千歳線)。

千歳線長都駅は『キリンビール北海道千歳工場前』の副駅名称がつき駅名標の下に掲示されている。
横長の駅名標の下にキリンビール、縦長の駅名標の下にサッポロビールではどっちの駅やねんとツッコミたくなりそう。

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小幌駅(室蘭本線)。

秘境駅の駅名標と言いたいが、縦型ホーロー駅名標の設置基準がどのようなものだったかを考えてみる。
この駅名標が設置されたのは国鉄時代の昭和59年(1984年)。

全線全駅に設置されたわけではなく、当時なりの設置基準があったようだ。
その設置基準も、当時の鉄道管理局ごとに定められていたらしい。

この駅名標のあるなしを見て行くと、設置条件の傾向がある程度見えてくる。

1つは、仮乗降場には設置しない
仮乗降場とは主に国鉄時代に時刻表で営業キロの表示がない駅を指す。
留萌本線の瀬越、石北本線の柏陽、あと函館本線の鷲ノ巣や仁山は信号場が客扱いするという営業上は仮乗降場と同じ扱いだった。これらの駅にはJRになっても設置されることはなかった。

2つ目は、特定地方交通線第1次廃止対象線には設置しない
これは、1984年の駅名標設置の翌年には全線廃止されているので当然といえば当然といえよう。
第2次廃止対象線区は、駅名標設置当時は存廃が確定していなかったので設置された。

ただし、釧路鉄道管理局管内だけは2次廃止対象線区は対象外とされている。
例えば、池北線に乗っていると釧路管内の池田から小利別までは設置されなかったが、旭川管内の置戸から北見までは設置されているなんてこともあった。

小幌駅

この駅も仮乗降場だったにも関わらず設置された。
同じく仮乗降場だが設置された駅があって、室蘭本線の北舟岡と旭浜、日高本線の東町駅。
どうやら北海道総局直轄管内は仮乗降場でも設置対象とした模様。
ところがなぜか札沼線の於札内だけは仲間はずれで設置されなかった。

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抜海駅(宗谷本線)、新十津川駅(札沼線)。

最後はサッポロビールの広告が無い縦長駅名標。

抜海駅のは手作り感満載の縦長駅名標がある。
正式なものが他に3枚あるのになんでまた?

新十津川のは、駅の中に観光案内所が設けられてから設置されたので、観光案内所が作成したものだろう。
広告部分には『ようこそ札沼線終着駅』の文字が入る。

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天ノ川駅

今度は番外編。
天ノ川駅といっても、駅ではなく旧江差線の線路わきにあったホームを模したモニュメントだった。
廃止の日が近くなってからホーム上に設置されたもの。

もちろんJRが設置したものではない。
字体も下の広告も本物そっくりに作られているが、ライセンス的なものはどうだったのか気になる。

 ★  ★  ★

来年には北海道でおなじみのホーローの駅名標とサッポロビールの赤い文字が見られなくなるようです。

先のリアルエコノミーの記事の最後の方に、やっぱりこの一文が・・・

『関係者は駅見回りを強化、駅名標の盗難を防止』

くれぐれも盗ろうなんて思っちゃいけませんよ。
その代わりにスマホやカメラで撮っておきましょう。

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画像両脇の『さっぽろ』『はこだて』は実物の1/10サイズの駅名標ミニチュアレプリカ(1枚1100円)。

駅の四季彩館で売っているし、ネット通販もあるのでこんなのもそろえてみてはいかがでしょうか。
 ・・・って宣伝みたくなっちゃいましたね。

最後までお読みいただきありがとうございました。


posted by pupupukaya at 21/08/15 | Comment(2) | 北海道の駅鉄
この記事へのコメント
天の川の駅名標なんですが、地元情報によるとJR北から地元自治体への譲渡だったみたいです。
Posted by サンケピパイ at 2021年10月13日 12:04
>でも何で富良野駅でも美瑛駅でもなく上富良野駅だけ置き換え対象なんだろう
サッポロビールのホップ研究所の所在地である為との話だそうです
Posted by 雅楽戦隊 at 2022年04月15日 23:13
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