道北の無人駅を訪ねて2003年へ前編

私は今週の金曜日は有給休暇になっていた。

4月に会社の年間スケジュールとして入れておいたもの。
あの頃は、まさか6月になって緊急事態宣言中とは思わなかった。

緊急事態なので旅行は自粛せいという世の中。
別に行ってもいいんだろうけど、世間様に後ろ指さされる思いまでして旅行したいとは思わない。

こんな時こそモグタンの出番。
またタイムトラベルをして、緊急事態もコロナウイルスも無い時代で旅に出てこよう。

「モグタンいる〜?」
「なんだい、今日はまだ木曜日だよ」

「じつは明日休暇なんだ、またタイムトラベルに連れてってよ」
「今日はだめだよ、ほか当たってちょうだい」

「あ〜あ、これモグタンにあげようと持ってきたんだけど、仕方ない帰って一人で飲むか・・・」

「待って待って!これは十勝ブランデー原酒じゃないか!」

「タイムトラベルさせてあげるから!
  出発は夜だろ?それまで付き合ってよ」

とモグタンは言った。

特急『利尻』で出発ならまだ4時間以上あるな。
それまで時間つぶしにモグタンに付き合ってもいいか・・・

私がモグタンと知り合ったのは最近というわけではないが、そう昔のことでもない。
しかしモグタンっていったい何者なんだろう。

昔はテレビに毎週のレギュラー出演していたこともあったらしいが、モグタンは昔のことはそれ以上話したがらなかった。

そんなモグタンだが、今日は酔うほどに口数が多くなった。

「ボクも昔は毎週テレビに出て全国の子供たちに大人気だったんだよーっ!」
「大人たちが子供に見せたい番組ナンバーワンなんて言われていたんだ」

〜ま、話半分に聞かないとな・・・

80328.jpg
 酔うほどに宙に浮かぶモグタンの図(撮影禁止のため筆者作成)

「へえへえ、すごかったんですね〜先生」

「ボクのコンビ役は美人のおねえさんだからね」
「どこかの薄汚い狸とメガネのコンビとは格が違うよ」

「ほうほう」
「ところで先生、そろそろタイムトラベルの時間ですが・・・」

「ん?もうそんな時間か」
「じゃあいくよ〜」

「クルクルバビンチョ・・・(以下略)」

PICT0017.JPG

ここは2003年の札幌駅だよ〜〜っ!

平成15年。
18年前か。今とあんまり変わらないね。

ふっふっふ・・・私は2021年から来た未来人だ。

この年は何かあったっけ。
阪神タイガースがリーグ優勝した年か。
それくらいしか思い浮かばないなあ。

道内夜行列車全廃、ローカル線の廃止、相次いだ事故による減速減便ダイヤ、北海道新幹線開業・・・
どれもまだ先の出来事だしなあ。

2ちゃんねるに書き込んだって、この時代の人たちから『ソースだせやゴルァ』と返信されるのがオチだ。

さて、現在時刻は22時30分少し前。網走行『オホーツク9号』が出たばかり。
このあとの夜行は23:00発『まりも』か、23:02発『利尻』の2択。

どっちにしようかなあ・・・
また『利尻』にした。

DSC03212.JPG

懐かしい特急『利尻』。
急行時代のキハ400形時代の『利尻』はよく乗ったけど、特急になってからは数えるほどしか乗っていない。

『利尻』と聞くと、急行時代の狭い座席や、たまに増結になる木の床で青いボックスシートを思い出す。
ところが、キハ400形時代の写真は1枚も持っていない。

あの当時は、あまりにも当たり前すぎて写真を撮る気にもならなかったのだった。
それに、狭いリクライニングシートや固いボックスシートにもたれながら、14系時代の方が良かったな〜なんて思っていた。

札幌発は23時02分
あいにく指定券や寝台券を用意する時間がなかったので今回は自由席だ。

自由席は混んでるねえ。
とは言っても、ほとんどが岩見沢か滝川あたりまでの客だ。旭川を発車すればがら空きになる。
この自由席の多くの人にとって『利尻』は『スーパーホワイトアロー』や『ライラック』の最終列車に過ぎない。

通路側の席しか空いていなかったので相席させてもらう。

乗客の姿格好は2021年とそう変わるものではないが、のちにスマホと呼ばれる手のひらサイズの板を見つめている人はいない。
みな手にしているのは、後にガラケーと呼ばれることになる2つ折りの携帯電話。

新聞を広げている人もチラホラ。
そうか、この頃は車内での読み物と言えば新聞だったんだな。

スマホ全盛の2021年では車内でこんなもの読む人はいない。
2030年にもなる頃には、新聞のようなアナログで原始的なメディアなど消滅していることだろう。

どこにいても常時インターネットに接続できるようになるとは、この2003年の人たちは思ってもいない時代。

PCですら家庭も企業もようやく普及した頃だし、ホームページ上に画像をたくさん貼ると閲覧者たちからブーイングを食らう時代だった。
回線もスペックも大量の画像を読み込むことに追い付いていなかったのだ。

江別の次の岩見沢で窓側の隣人は席を立った。
やれやれ、一杯始めるか。

美唄、砂川と降りる人ばかり。
0時15分発の滝川を出るころには札幌を出た時の半分くらいの乗客数になっていた。

ここで車内放送で予告していた通り減光となる。
蛍光灯の明かりは消されて代わりに小電球が灯る。
手元は暗くなるが、その代わり車窓の夜景はよく見えるようになる。

DSC00071.JPG

流れる夜景を見ながらお酒をチビチビ。
窓かまちに頬杖をついて色々考え事をしていたらだんだん眠くなってきた。

鞄と肘掛けを枕にして横になる。

ZZZ・・・・

後編へ続く


posted by pupupukaya at 21/06/12 | Comment(0) | 架空の旅行記
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