◆【SL冬の湿原号】
釧路 11:05 ⇒ 標茶 12:35
釧路駅3番ホームはSL冬の湿原号が発車を待つ。
シューーーと音を立てて蒸気に包まれたSLを見たら、来てよかったと思った。
機関車はC11 171号機。
釧路機関区で廃車になり、その後は標茶町内の公園で静態保存されていたものを、1998年から苗穂工場で動態復元工事が行われて1999年からまたSLとして復活したんだとか。
機関車の後ろに連ねる客車は5両。うち4両は14系客車となっている。
急行はまなすの運転終了で14系客車は全部なくなったと思っていたが、地味にこんな所でまだ活躍していたのだった。
車内は4人向かい合わせのボックスシートに改造され、各車両に1箇所石炭ストーブが置かれている。
各ボックスにはテーブルがあって、その上にアクリル板のパーテーションが設置してあるのは新型コロナ対策のため。
ボックス席に改造されダルマストーブが置かれた『オハ14 526』車内。
2号車のカフェカーには販売カウンターがあって発車前から営業しているが、こちらは隣の3号車まで伸びるほどの大行列ができていた。
SL冬の釧路湿原号の実物大レプリカのサボを下げて戻る人が多い。1枚3,500円なので手ごろな記念品といったところ。
え? あんたは買わないのかって?
そりゃ値段的には手ごろだけど、買っても部屋に飾るかなあ・・・
とにかく、指定された席について発車を待つ。
山側(進行右側)の進行方向窓側席。
この券もえきねっとで取ったものだが、冬の湿原号は座席マップでの指定ができないので、窓側か通路側、あるいはABCD席いずれかの指定になる。
わからないので窓側を指定して予約して、札幌駅で発券したら行きも帰りもA席だった。
ボックス席は相席だったが、隣席は空いていた。
ざっと見だが、全体の乗車率は6割といったところ。空きボックスはないけど、ボックスごとに1席か2席空席がある程度。
11時5分、汽笛が鳴って、ホームにいる大勢の見送り人に手を振られて発車する。
前後にドンという衝撃はいかにも客車。
沿線はあちこちに三脚を立てたカメラマンや見物人がたくさんいた。
やがて釧路川の鉄橋を渡る。川岸には大勢のカメラマンというか撮り鉄たちが並んでいた。
今朝は冷え込んだせいか、釧路川の水面に薄氷が張っている。
さぞかし良い写真が撮れたことだろう。
薄氷の張った釧路川を渡る。
川岸に並ぶ撮り鉄の皆さん。
撮り鉄や見物人は煙を吐いて走るSLの雄姿を堪能できるが、乗っていればSLもディーゼルも大して変わらないのは乗り鉄の宿命か。
しかし、私ら乗り鉄は金払って乗ってるわけですからね。
いく良い写真撮らせても運行側には1円にもならない彼らと違って、SL列車を本当に支援しているのは私ら乗り鉄なのでありまして・・・
それはともかく、東釧路でもホームにはたくさんの人がいた。乗ってきた人は少なかったので、ここも撮り鉄と見物人ばかりだった。
東釧路を発車してしばらくすると地元のネイチャーガイドの人がやってきて車内の中央に立ち釧路湿原のガイドが始まる。
地元のネイチャーガイドが釧路湿原のガイドをしてくれる。
ストーブの前の席が空いていたので座ってみる。
この列車の名物であるダルマストーブ。
14系客車は冷暖房完備なのでストーブなど不要だが、これは観光用に上でスルメなどをあぶるために置かれたもの。
この列車は全車指定席だが、このストーブの前にある4席はフリースペースということになっている。
ストーブに当たりたい人やスルメなどを焼きたい人がこの席を使うためでもあるが、このストーブの前に座っていると結構熱くなって長い間座っていられないということもある。
ダルマストーブと石炭。
上の網にスルメやシシャモの干物を乗せて焼けるようになっている。
たまに車掌さんが十能(じゅうのう)で石炭をくべる。
「釧路湿原駅で降りる方がいましたら車掌までお知らせください」といいながら車掌が回ってきた。
釧路湿原駅のホームが短いために1号車からしか乗り降りできないからだ。
真冬にこんなところで降りる人がいるのかと思ったが、ここで降りた人が何人かいた。
ここは坂を登ったところに駐車場があるので、車で来てここから往復したのかもしれない。
釧路湿原駅に停車。
ガイド
「釧路湿原駅を発車しますと1000分の15という勾配を登って行きます」
「はたして機関車はこの坂を無事登れるのでしょうか」
そういわれてみると、列車の走りっぷりも苦しそうだ。
何とか無事登り切ったようで、だんだんスピードが上がる。
この辺りから釧路川が車窓の友となる。
東釧路から塘路までは釧路湿原の眺めはあまり良くない。
細岡を過ぎてから釧路川のそばを走るくらいで、あとは冬枯れの林が続くばかり。
釧路湿原に生える木の多くはハンノキで、これが増えると湿原の乾燥化が進むとさっきガイドで聞いた。
細岡〜塘路間の見どころは釧路川。この区間が一番近くを通る。
もう1つの隠れた名物(?)が湿原の中に佇む1軒の廃屋。
通じる道も無い場所で、いったいどんな人が住んでたのだろうかと気になる物件だ。
その廃屋の前に差し掛かると、なんということ、倒壊していた。
名物(?)の廃屋は倒壊していた。
塘路では2分停車。ちょっと外に出てみる。
機関車からは発車に備えてか勢いよく煙と蒸気が噴き出していた。
塘路に停車中。
勢いよく煙と蒸気を吹き上げる。
車内に戻って自席に戻る途中カフェカーに寄ってみる。
カフェカーと言っても客車内の1/3ほどが販売カウンターとなっていて、あとは普通の指定席となっている。
他の客車と違い、この2号車だけは旧型客車からの改造なので、シートピッチはかなり狭い。
しかし、高い天井と板張りの床は、どこかノスタルジックなムードに浸ることができる。
2号車のストーブの前に座ると、昔釧網本線で走っていた混合列車はこんな感じだったのかとちょっと思った。
塘路と茅沼の間は一番釧路湿原らしい景色が眺められる区間だ。
真っ白になったシラルトロ湖や凍り付いた湿原の草原の中を列車は走る。
夏に運転される『釧路湿原ノロッコ号』は塘路で折り返してしまうためにこの区間を通ることは無いのは残念だが、標茶まで行くこの列車は冬の釧路湿原を堪能することができる。
湿原の中に20〜30頭はいるだろうか。エゾシカの群れがいた。
乗客はみんなそっちに釘付けになる。
遠くに見えたエゾシカの群れ。
28kmのキロポストと凍ったシラルトロ湖。
塔路の次の茅沼駅はタンチョウヅル(丹頂鶴)が来る駅として知られている。
有人駅だった時代にタンチョウへの餌付けが始まり、駅長が変わるときには事務の引継ぎ事項となっていたそうだ。
無人駅となってからは、地元住民に引き継がれているという。
さて今日はタンチョウはいるのでしょうか。
茅沼駅裏の雪原に集うタンチョウヅル。
お〜いたいた。8羽、9羽、いっぱいいる。
SLに警戒してこちらには近づいてこないようだ。
ガイド
「あっ、いまツルが頭を下げたから飛びますよ、ほら」
茅沼駅停車中に2羽のタンチョウが優雅に飛び立つ。
優雅に飛ぶ2羽のタンチョウ。
タンチョウの向こうには撮り鉄さんが何人も見える。きっとSLと一緒に収めた写真を撮ったんだな。いいな〜。
このタンチョウこそ日本で親しまれているツル(鶴)そのものだということは意外と知られていない。
優雅に飛ぶタンチョウを見ながら茅沼を発車すると、またハンノキ林となり、この辺りからは夏なら牧草地も見えてくるころ。
釧路湿原とはお別れになる。
ホームでは標茶町ご当地キャラクターの出迎え。
12時35分、終点標茶に到着。
標茶町ご当地キャラの『ハッピーくろべえ』と『ミルクックさん』の着ぐるみの出迎えもあってホームは大賑わいとなった。
◆ SLの入替作業を見る
標茶に着いたが、一般の方は改札口に向かうが、私どもはホームに残る。
これから機関車の入替作業があるので、それを見学しようというわけだ。
釧路から客車5両を牽いてきた機関車。
ホームから機関車の先頭を撮影したいところだが、機関車の先頭部分がホームの端ギリギリのところにあるためそれは叶わない。
動き出すのを待って機関車の前に立っているが、なかなか動き出さない。見物人も1人2人と離脱して少なくなる。
機関士と車掌が入替え作業の打合わせをする。
「汽笛鳴らすから耳、注意してくださいね」
と機関士。まもなく動くようだ。
12時47分、耳をつんざくような汽笛を鳴らして、機関車と客車はバックで動き出した。
1番線に到着したSL冬の湿原号の編成を、2番線に据え付けるために一旦単線のところまで引上げるのだ。
それなら最初から2番線に入れればいいのでは?と思うが、2番線は12:41発の釧路行快速『しれとこ摩周号』が発着したので入れなかったのだ。
昔は3番線まであって、標津線の列車が使用していたのを思い出す。
1番ホームから推進運転で釧路方に引上げる。
後退する機関車の撮影をしたら跨線橋へ。
ちょっと電線が邪魔だが、ここからSLが走る姿を撮れるんじゃないかと思ったからだ。
釧路方に引上げたら今度は2番線に進入。ホームの跨線橋から撮影。
おお、いいアングル。
ただ、基本撮り鉄はやってないので、ちょっと斜めになってしまった。
2番線に進入するSL冬の湿原号。
2番線に停止したら機関車と客車を切り離す。
今度は機回しと機関車の整備。
機関車だけ網走方へ引上げる。
今度は右側の側線に入る。
しばらく停止して、灰落としや給水作業を行う。
引込み線に入ったら機関車の整備作業になる。
これでしばらく動きはなさそうだ。
一旦改札を出ることにする。
夢中で撮影などしていたら、着いてからもう30分も経っていた。
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