特急おおぞらとSL冬の湿原号乗車記1

JR北海道HPに掲載されたニュースリリース。

*2021.01.22

これを見たのが1月23日土曜日だった。

元々私は鉄道ファンながらSL列車というものにあまり興味はなく、わざわざ混んでる列車に乗りたいとも思ってはいなかった。
ところが、リリースの一文

“例年、指定席の発売と同時に満席になることが多く、国内外のお客様にご利用いただき乗車率が約 80%の人気観光列車ですが、今年度はお座席に余裕があります”
(同リリースより引用)

を見て、突然『SL冬の湿原号』に乗ってみたくなった。
元々人混みが嫌いなので、混んでいるのなら行く気はしないが、すいているのならば行ってみたい。

道内のSL列車も、冬に運転されるこの列車だけとなってしまった。この先続くのかもわからないし、こういうときがチャンスなのだろう。

最初は釧路まで車で行くつもりだったが、特急列車も新型コロナでがら空きだと思って、特急『おおぞら』で釧路まで往復することにした。

車ならば高速で釧路まで片道5時間だが、往復高速代とガソリン代を合わせると1万3千円以上はかかる。
下道ならガソリン代だけだが、片道7時間は見なければならないし、凍結の日勝峠越えも覚悟しなければならない。

というわけで、釧路までは往復特急『おおぞら』利用とした。

切符の購入は、初めて『えきねっと』を使ってみた。

行きは『おおぞら1号』、えきねっとトクだ値40で片道5,990円
帰りは『おおぞら10号』、えきねっとトクだ値15しかなかったが、片道8,480円
合計で14,470円。1人ならば往復JRでもそれほど割高感もない。

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 えきねっとの座席選択画面。

釧路から標茶まで『SL冬の湿原号』の往復もえきねっとで予約した。
こちらは往復で4,260円
日帰りながら結構いい金額になってしまった。

往復特急を利用すれば新型コロナで乗客減のJR北海道の支援にもなるだろう。
とは言っても微々たるものだろうけど。


 ◆ 釧路へ出発

翌日、1月24日日曜日。

えきねっとで予約しただけでは列車に乗れないので、みどりの窓口か指定席券売機でチケットを発券する必要がある。
そんなわけで早めに駅に着いておこうと、始発の地下鉄で札幌駅へ。

券売機画面の『予約の受取』ボタンを押して、登録してあるクレジットカードを入れると予約画面が出てきた。
往復のおおぞらとSL冬の湿原号の4件の予約があるのだが、これを1つ1つボタンを押して選択する。

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 札幌駅の指定席券売機。

下の方に何に使うのか知らないが、QRコードの読み取り装置もあるんだから、予約時にQRコードを発行して、それをかざすとピッと券が出るようにしてくれよ。

いやそれよりも、ネットで購入したらQRコードを発行して、改札機に直接かざすチケットレスにしてくれよ。

どうもJRさんはネット販売の意味を理解しておられないようだ。

ええ、いい機会だからここで言いたいだけ文句を言わせてもらいますよ。
何でかって?

自分の金出して『えきねっと』で買ったんだから、

私には文句を言う権利がある

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 『予約の受取』を押してクレジットカードを入れると予約一覧が表示される。

最後に支払い画面になり、クレジットカードの暗証番号を入力する。

あれ?
ネットで予約したときに支払いじゃなかったの?

飛行機のネット予約は、予約時に支払いが確認されてからEチケットなどがメールで来る。
海外の鉄道をネットで予約する際もそう。

普段、飛行機の予約の方が多い人にとっては意味不明なシステムだ。
後日、クレカの利用明細を見ると、発券日が利用日となっていた。

支払いと4枚発券でここまで約2分。
面倒臭いなあ。
発車ぎりぎりに駆け込んできた人など、どうするんだろ。

とにかく4枚のチケットを発券したので、改札機にチケットを通して中に入る。
いまだに磁気券ってのも前時代的ですね・・・
自動改札が広まった平成10年代から基本的には変わっていない。
令和も10年代になっても、同じことをやって列車に乗るのだろうか・・・

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 自動改札機が並ぶ札幌駅東改札口。

まずは駅弁と酒を調達する。
車内で朝酒。これのためにわざわざ不便な鉄道を選択したのだ。

ラッチ内コンコースにある弁菜亭の売店は、感心なことに朝5時45分から開いている。
しかし、行ってみるとまだ閉まっていた。
『営業時間短縮のお知らせ』の張り紙があって、新型コロナ感染症対策のため、当面は6:50〜21:00とのこと。

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 いつも6時前からやっている駅弁屋も短縮営業。

6:30になるとキヨスクが開店する。

しょうがない、つまみで酒を飲むしかないのかと思っていたら、弁当の棚には今朝入ったパック入りの弁当が所狭しと並んでいた。

どれも揚げ物中心のボリューミーな弁当か寿司ばかり。酒の肴にするには貧弱だ。
その下に悩ましい弁当箱が1つだけあった。

それは1つだけあった『北の駅弁屋さん』1,300円。
ラベルに『函館みかど』とあったので函館駅の駅弁だ。

本当はもう1つ900円台の別の弁当があったのだが、それは先に取られてしまった。
駅弁が欲しければこれしかないのだった。

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 キヨスクの弁当の棚。

結構いい値段だしどうしたものかなあと考えていると、後ろから変なオッサンが「このいなり旨いんだよ」と何度も1人でつぶやきながらやってきて、いなりのパックを2つ掴み取った。
手に抱えた、いなり2個入りパック。

「旨いんだよ旨いんだよ」と言いながら、そのままレジへもっていくのかと思ったら、「あ、先にオシッコしなきゃ」と言ってまた棚に戻したではないか。

買わないんなら手に取るんじゃねえよ汚ねえな (# ゚Д゚)

変なオッサンが消えたので、その1,300円の駅弁と金滴純米酒のカップを持ってレジへ。
こんな機会も今度いつあるかわからないし、たまには贅沢もいいか。


 ◆【おおぞら1号】
  札幌 6:48⇒ 釧路 10:58

ホームに上がったのが6時40分ころ。
まだおおぞら1号は入ってきていなかった。
ホームには各乗車口に2〜3人といったところ。自由席は7〜8人の列ができていた。

ホームで入線を待っていると、えらくしばれる。
今朝の気温はマイナス10度。3分と経たないうちに指先が痺れてきた。下げてきた弁当も凍ってしまうよ。

ホームの自販機で飲み物を買う人がどこかで見た人だなと思ったら、参議院議員の鈴木宗男氏ではないか。
ひと頃はいろんな意味で時の人だったが、また政界に戻られて活躍されているのは何より。
今日はおおぞら1号で地元に向かわれるのだろうか。

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 おおぞら1号が4番線に入線。

まだかまだかと震えながら待っていたら、6:44になってようやく入線してきた。
発車4分前とはずいぶんギリギリの入線だ。

車両はキハ283系6両編成。
それでも先頭車の撮影をして車内へ。

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 おおぞらのヘッドマーク2態。『スーパー』の文字が外された。

指定された車両は4号車。
予約時にえきねっとで座席表を見て自分で選んだので、指定したと言うべきか。
自分で座席表をみて席を選べるようになったのは便利になった。

車内は自分入れて3人だけ。予約時は7席埋まっていたはずなので途中から乗ってくるのかな。

指定席の座席は新しいものに交換されていて座り心地が良い。
私はJRの特急に乗るより飛行機に乗る機会の方が多い。
それから比べると鉄道車両のシートはとても前後左右が広くて快適だと思う。

しかし、基本は90年代の車両。コンセントなどあるはずもないし、車内のフリーWi-Fiも無し。

普段飛行機や高速バスに乗り慣れた人がJRの特急に乗ったら面食らうかも知れない。
2010年代後半からコンセントもWi-Fiも、バスや飛行機ならば、とっくに標準装備の時代になっている。
チケットの販売方法にしてもそうだけど、鉄道だけは時代から取り残された世界になってしまっている。

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 見事にがら空きの4号車指定席の車内。

6時48分、車内はがら空きのまま札幌駅を発車する。
自分の後ろは完全に無人状態。
日曜の早朝ということもあるのだろうが、気の毒に思えてくるほど乗客がいない。

去年からの新型コロナ発生以来、鉄道に限らず交通機関は乗客の減少が深刻だ。
かといって人の移動が活発で、どの列車も満員というのもあってはならないが、それにしても困ったことだ。

札幌を発車して苗穂を過ぎたあたりから加速を始める。
エンジンの音と振動は相変わらずだった。変速するときもドンと前後に振動が。

北斗系統の281系、おおぞら系統の283系、違いは私にはよくわからないが、エンジンの振動と走りっぷりはかつてのスーパー特急時代を思い出した。

かつて最高速度130km/h、札幌〜釧路間を最速列車で3時間35分で結んでいた283系。
それが諸事情から最高速度は110km/hに引き下げられ、283系での最速所要時間は4時間2分(おおぞら4号)となってしまった。

当時乗って思ったことは、速いは速いけど、車体をブルブル振るわせてエンジンの爆音を轟かせて、右へ左と車体を傾けて走行するスーパー特急よりも、少々時間がかかるけどスーパーの付かない183系車両の方が静かで良かった。

いまは110km/h止まりなので、少しは大人しくなったかも。

走行エンジンのほかに、ウィ〜〜ンとか、チュイ〜ンとか床下は賑やか。
エンジンファンには楽しいのかもしれないが、ヤカマシイことこの上ない。

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 朝焼けの札幌貨物ターミナル駅構内。

車掌が車内改札に回るが、基本は自由席のみ。指定席は、指定席の券を持っていれば車内改札なし。
どうやら車掌は発売済みの席の情報を得ているらしい。
そこまで出来ているんなら、なおさらチケットレスでもいいんじゃないかと思った。

新札幌で乗ってくる人もなく、ここから駅弁、呑み鉄タイムとさせていただく。
1,300円也の北の駅弁屋さんと金滴のカップ酒をテーブルに出す。

弁当は鮭、イクラ、カニ、ウニ、数の子といった北の幸が小分けになっている。
丼物に見立てたのか、どれもご飯の上に乗っている。

残念だったのは、すっかり冷めきって御飯がカチカチになっていたこと。
9マスのうち7マスは御飯が詰まっているので、酒の肴とするには御飯が多すぎた。

豪華な呑み鉄旅となるはずが、冷や飯と冷酒のわびしい食事となってしまった。
それでも良い米を使っているのか、冷めても御飯自体は良いものとわかる。

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 キヨスクで買った『北の駅弁屋さん』と金滴純米酒カップ。

駅弁を食べながらチビチビと飲っていると7時20分、南千歳に着いた。
まだ接続する飛行機が無いのでホームの人はまばら。

ここで4号車に1人乗ってきたが、がら空きには変わらない。
ここから石勝線へと入る。

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 前方の窓から朝日が差し込む。

石勝線に入ってからは景色が北海道らしくなる。
最後に石勝線の特急に乗ったのはいつだったか忘れたが、こうして久しぶりに乗ると景色が新鮮に見える。
もうずっと前から車から線路を見るだけだった。

札幌から1時間4分で新夕張へ。
夕張支線が廃止になったのは何年前だったかな。
去年の5月に仕事で夕張に行ったときは線路はまだ残っていた。

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 かつて夕張支線が分岐していた新夕張駅。

新夕張を発車すると雪をかぶった夕張支線の路盤が左側へ分かれて行く。
ここからは無人の山岳地帯を行く石勝線。長いトンネルばかりになって車窓はちょっと残念なことになる。
あとトンネル内は圏外になるので、電話したりどこかと通信中のときは注意。

ゴミを捨てるついでにトイレに寄る。
石勝線に入ってから揺れと振動がひどくなったと感じていたが、これでも110km/h運転。130km/hだったころはどんなものだったのか。

振り子式車両は揺れに規則性がないので、立って用足しをしてるとどこに振り回されるかわからないので大変だった。

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 極寒の占冠を通過。

ずっと長いトンネルばかり続き、ようやく明るいところに出たところが占冠。
占冠の市街地にある家々からは、煙突から煙がモウモウと上がっていて、今朝は冷え込んだことを思わせる。

スマホのアプリで占冠村の天気を見たら、今の気温はなんとマイナス25.5度。
最低は29度まで下がったらしい。

この1号はその占冠を通過する。

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 現在の占冠の気温。

占冠からはトンネルは少なくなり、手つかずの大自然の景色を堪能できると言いたいが、それは20年前の話。
今は道東自動車道が並行し、線路のはるか上を立派な高架橋で乗り越えたりする。

やがてリゾート駅のトマムに停車する。
あまりじっくりと見たことがない駅だったので、ドアが開いたらデッキからホームを覗いてみた。

出口の前には星野リゾートトマムと駅を結ぶバスが客を待っていた。
この列車から降りたのは親子連れ3人とスノーボードを背負った1人だけだった。

かつてはトマムへのスキーリゾート輸送は鉄道の独断場で各種リゾート列車も運転されていたが、道東自動車道が伸びてトマムにもICができたので鉄道にとっては苦しいところ。
ここ数年は某外国人の利用が目立っていたとか。

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 星野リゾートトマム行きのバスが待つトマム駅。

新狩勝トンネル内で、もう列車が走ることは多分ないだろう滝川からの根室本線と合流する。
日高本線の廃止日はもう決まっているが、その次はおそらくここだろう。

トンネルを抜けると気持ち良いくらいの十勝晴れ。ここからは十勝平野を見下ろしながら新得へ下る。
現在の新得町の気温はマイナス14度。しばれたねえ〜。

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 新狩勝トンネルを抜けると広い十勝平野が広がる。

新得からは白い雪原に一直線に並んだ防風林という十勝地方らしい風景が続く。

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 十勝平野らしい車窓風景。御影〜芽室間。

帯広着は9時19分。札幌からここまで2時間31分。
スーパーおおぞら時代は2時間16分だったので15分延びたことになる。

札幌〜帯広間は車なら高速経由で3時間、高速バスならば最速3時間25分。
道東自動車道が未開通の頃は、車でも4時間以上&日勝峠越えだったので、冬場は連日増結して9両編成でも高い乗車率だったのは既に昔の話。

JRも対抗して札幌〜帯広間の『お先にトクだ値』55%OFFで3,490円と格安販売しているのを見ると、この区間の競争の激しさがわかる。

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 帯広駅からは自由席に数人が乗車。

帯広で結構降りると思っていたが、ホームにそれほど人は出てこない。日曜日で朝早いせいかもしれない。
ホームにはグリーン車から下車した鈴木宗男氏の姿もあった。
この4号車は1人降りて、1人乗ってきた。



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 利別で札幌行おおぞら4号の待合わせ停車。

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 池田の手前では凍って真っ白になった利別川を渡る。

池田で1人下車。車内は3人だけになった。

ここからは列車のスピードがガクンと落ちる。
池田までは線形が良く、直線や緩い曲線が多かったので順調に走っていたが、この先は急曲線が多くなるため60〜70km/h台で走ることも多くなった。
それでも短い直線区間を見つけては110km/hまで加速する。

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 音別〜白糠間は太平洋沿いを走る。

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 凍った馬主来(パシクル)沼ではワカサギ釣りらしき人が。

音別からは釧路総合振興局になる。
太平洋岸の釧路地方は夏は濃霧が多いため農業もままならず、ただ荒涼とした浜や凍り付いた湿原が目に入る。
そんな景色を見ていると、1年前に行ったフィンランドの北部を思い出した。

10時58分、終点釧路に到着。
各車両から下車する人は片手で数えられるほどの人数で、着いた1番ホームはすぐに人がいなくなってしまった。

ホームは何やら異臭が漂っている。何だろう。

DSCN0580.JPG
 終点釧路に到着。『くしろ』の字体が懐かしい。

異臭の正体は3番ホームに停車中のSLの煙だった。
そうだ、そうだった、これに乗りに来たんだった。
今どき石炭なんて見なくなったので異臭だと思ってしまったのだった。

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 2・3番ホームにはSL冬の湿原号の見物人がたくさんいた。

特急の着いた1番ホームとは対照的に、隣のホームは人だかりがしている。
SL冬の湿原号は釧路11時05分発。おおぞら1号との接続時間は7分しかなく、あまりのんびりしている暇はない。
急いで3番ホームへ向かう。

2へつづく


posted by pupupukaya at 21/01/30 | Comment(0) | 道東の旅行記
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