2020年沖縄・八重山旅行記4

 ◆ 地獄の波照間航路

そばを食べて、まだ帰りのフェリーまで40分くらいあったので港をぶらぶらと散歩する。
防波堤の突端では釣りをしている人が数人。港で見かける人といえばそれくらい。
ターミナルから離れた所には漁船も停泊していたが、日曜日は休みですというくらいシーンとしていた。

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 防波堤にペイントされた歓迎イラスト。

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 『んぎしたおーりょー』は波照間語でいらっしゃいの意味。

朝に着いた岸壁とは反対側に立派な桟橋があって、看板を見たら13時15分発の便はここ高速船用浮桟橋から出港すると書いてあった。
朝の段階では運行未定となっていた便である。

天気予報を見ると、八重山地方は依然として波浪注意報が出ている。
しかし港から見る限りでは海面は穏やか。風と雲が少し出てきたなと感じるくらい。

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 波照間港の乗船場所案内。

12時45分になって、1隻の船が港に入ってきた。あれが13時15分発の石垣行らしい。
行きに乗った朝の船と比べるとずいぶん小さい。

船から客が出てくるとフェリーターミナルにいた人たちもこちらに向かってきた。

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 ずいぶんと小さい船が入ってきた。

あっという間に10人くらいの行列ができる。自分もその中に加わって乗船開始を待つ。

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 高速船用浮桟橋に着く第十二あんえい号。

13時ちょっと前に乗船開始となった。
入口で最後の乗船券をもぎ取られて乗船。

船室は2つに分かれていて、1段低くなった前方は通路を挟んで3列のリクライニングシートが並び、後ろはプラスチック製のベンチが並んでデッキのような区画になっていた。
前方客室の前の方の窓側が空いていたのでそこへ座る。

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 狭い高速船の船内。

この船の座席にもシートベルトがあった。しかも前の背もたれに貼ってある注意書きには
『船が大きく揺れた際、腰椎圧迫骨折をするという事故が発生』
などと恐ろしい注意書きが・・・

しかしあまりシートベルトをしている人はいないようだ。

乗客はさっき桟橋で並んでいた人がすべてではなく、出航間際まで次々と乗ってきた。自分がいる席の通路側も後から乗ってきた客が座る。ペアが通路を挟んで別個になった模様。

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 シートベルト着用のお願い。

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 高速船の注意書き。

13:15になり、フェリーターミナルにいたフェリー会社の受付のおばちゃんがやってきて、係船ロープを桟橋のフックから外すと出航。
おばちゃんに見送られて船は桟橋を離れていく。ほかに見送る人もいない。

このおばちゃんは家に帰って、また夕方の船が着くころにまたフェリーターミナルへやってくるのだろう。
離島らしいのんびりとした出航風景ではある。

さて、こちらはと言うと、防波堤に描かれた歓迎のイラストを見ながら港外へと進む。行きの高速船も音と水しぶきだけは景気がいいが速度はさっぱりという感じだったので、今度もそんなものだと思っていた。

ターミナルの売店で缶ビールでも買っておけばよかったかなと思いかけたら、

ドバババババババババ〜!

船とは思えない勢いで加速しだした。
加速のGに加えて船底にぶつかる波がドンドンドンと次々と衝撃がやってくる。

島内ではあんなに穏やかだった海は、外海に出ると大きなうねりに囲まれるようになった。見ているだけで小さなこの船は転覆するんじゃないかと思うほどだ。

朝に天気予報で見た八重山地方は波浪注意報、波高さは4mというのは信じ難かったのだが、目の前に高さ4mのうねりに次々と高速船は、

うおりゃーーー!特攻!!

とばかりにうねりに突っ込んで行く。

ザーー!!!と突っ込んで持ち上がって宙を舞ってストーン!!と落ちる感じ。その度に下から叩きつけるような衝撃が来る。
その揺れもだんだん大きくなって、今絶対に宙を舞ったなと思うくらいまで持ち上がって、数メートルも一気に落ちたときなど船内に「キャー!」とか「おお〜!」という声が響き渡る。

おやおや、フェリーかと思ったら絶叫アトラクションに乗ってしまったようですな (^^;

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 高波に容赦なく突っ込むので水しぶきもすごい。

あり得ない勢いで次々と起こるピッチングと船底からの衝撃波に、もう必死になって耐えていた。
顔面蒼白、はっきり言って船酔いする余裕すらなかった

そんなのが30分ばかり続くと、次第に島が近づいてきた。
あれだけ飛ばしてきたのだからもう着いたのかと思ったら、この船は大原港に寄るとアナウンスがあった。
大原は西表島にある港で、船の時刻表にはこの便は不定期で大原経由の場合がありますと記載してある。

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 西表島の大原港に寄港。

大原港では石垣港行うみかじ号が先に出航し、そのあとに同じ桟橋に着いた。
ここで何人かの人が下船していったようだ。
乗ってくる人はなく、3分ほどでまた出航する。しばし小休止といったところ。

桟橋を離れて港外へ舳先を向けると

ちゅどーーーーーーーん!

また鬼のような加速で猛ダッシュ。

ここからはサンゴ礁の浅瀬が多いのか、さっきのような大きなうねりこそ無いが、それでも波に船底を叩きつけるようにして猛突進を続ける。

ドドン、ドンドン、ドドーンドンドン!

前の方にはこれも勢いよく水しぶきを上げて走る高速船がいたが、だんだん近づいてきてぶっちぎりで追い越した。
さっき大原港を先に出たうみかじ号ではないか。

このあとも白い水しぶきを上げて進む石垣港へ向かう高速船を、ボートレースさながらに次々と追い越して行くのだった。

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 並走する高速船うみかじを追い越す。

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 貨客船のかりゆし号をぶっちぎりで追い越す。

この船の船長はボートレースと勘違いして、もう完全に逝っちゃってるんじゃないかと思えてくるほどだった。

大原港を出てひたすら衝撃波を耐えること30分、ようやく石垣島と街並みが見えてきたとき、

あ〜生きて帰ってきた〜・・・

という思いが湧いてきた。

よく見ると石垣港には小さい虹が見えた。
と言うことは石垣島は雨が降っていたことになる。

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 石垣港には虹がかかっていた。

石垣港の桟橋に着いたのは14時40分。途中大原寄港で所要1時間25分だった。直行の場合は1時間となっている。

桟橋に足を下ろしたらもうフラフラになっていた。
まだ揺れている感じが消えない。しばらく続きそうだ。

昼に1往復の高速船は、絶叫アトラクション好きや、ぶっちぎりのボートレースを体験したい人にはおすすめの航路だが、普通は朝と夕方の船にした方が無難だろう。
それに、高速船の便は小型船のため欠航率も高く、季節風の強まる冬は特に欠航が多いようである。

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 石垣港にある具志堅用高の像。

朝は気づかなかったが、桟橋の一角に元プロボクサーの具志堅用高の像を見つけた。観光客が一緒になってガッツポーズをして写真を撮っている。

横にある現役当時のファイティングポーズの写真を見たら「ちょっちゅね〜」が思い浮かんだ。
ちなみにこの「ちょっちゅね〜」とは「そっすねー(そうですね)」から派生したのだそう。


 ◆ ユーグレナモール

まだ午後3時前。
当初の予定では昼の便で石垣に戻ってきたら、鍾乳洞に行こうと思っていた。
フェリーターミナルから歩けば片道40分程度。宿に戻れば自転車も借りられるようだが、もうどこに行く気力も残っていなかった。
さっきの地獄の高速船でフラフラになってしまったし、また自転車漕ぐのも勘弁してほしい。

ちょっと街をぶらついて土産物でも物色して、昨夜のスーパーで買い物して宿へ戻ることにした。

フェリーターミナルから市役所にかけてが石垣市の中心部ということになっていて、このあたりが飲食店も集中しているし、海側の美崎町は飲み屋街となっている。

その中でも一番賑やかなのがアーケード商店街のユーグレナモール。
商店街と言っても土産物屋ばかり並んでいる。公設市場もあるけど、基本観光客向けのようだ。

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 アーケード商店街のユーグレナモール。 

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 土産物屋が並ぶ。

昨日石垣に着いてから感じていたけど、こっちは那覇と違ってあんまり沖縄らしくしていないのが不思議に思っていた。
那覇の国際通りあたりはいかにも沖縄とか琉球らしさを前面に押し出しているけど、石垣は対照的でうちは沖縄じゃありませんと言わんばかりに沖縄らしさを封じ込めている。

実際ユーグレナモールを歩いていても『沖縄』の文字すらなかなか見つからない。

その辺の事情はググってみたら少し理解した。
過去の歴史的な経緯から八重山や宮古では琉球や沖縄に対しては複雑な感情があるようだ。

尖閣諸島は石垣市になるが、そこへ中国船がやってきても海上保安庁が水鉄砲で追い返すだけ。そんな現実に背を向けてその反対方向にばかり熱心な県や知事。

こちらは一介の旅人なのでこれ以上は踏み込まないが、ここは八重山でありうちらは八重山人(やいまんちゅー)なんよ、ということなのだろう。

難しい話はこれくらいにしておいて、土産物屋を見て歩くのは結構楽しい。
両親への土産と自分用に2つだけ買うことにした。
それに地域共通クーポンも使わなければならない。石垣ではどういうわけか飲食店で使えるところがほとんどないのだった。

いくつかの土産屋を出たり入ったりしていると、ななな〜んと波照間島名産の幻の泡盛『泡波』を発見。
港の売店で買ったミニチュアビンだけではなく3合瓶も置いている。
お値段は3合瓶が4,500円て、高え〜よ。

ミニチュアビンは800円。波照間港の売店で買ったのが410円だったから、石垣島に渡ると倍の値段になるようだ。

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 とある土産物屋で見つけた泡波。

両親用にマンゴージャムと自分用に調味料を1個ずつ買ってユーグレナモールを後にする。
また新川(あらかわ)にあるマックスバリュで買い出しをしてから宿に戻る。


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 宿近くの古い住宅地。


 ◆ 石垣島の夜

宿に着くと4時半だった。
今の日没は18時なので、今から鍾乳洞まで行って見学してきても明るいうちに戻って来れそうだが、今日はこれでおしまい。
それにさっきの地獄船ですっかり魂を抜かれてしまった。

はるばる石垣島まで来てなんともったいないと10年前の自分なら思っただろうが、今は旅先でのんびりするのも悪くないと思うようになった。

シャワーを浴びて汗を流したら早いけどスーパーで買ってきた酒と食材で一杯やることにした。

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 マックスバリュで買ってきた惣菜とビール。

ベランダから南国らしい庭先を眺めながらのひととき。
うん、悪くないね。

肴の総菜は沖縄らしいものをチョイスしてきた。ていうか、今日はあまり沖縄らしいものは無く、その中でらしい食材はこれくらいしかなかった。
揚げだし豆腐は島豆腐で作ったんだろうなと思ったので。

しかし静かだな。
今日は上の階の部屋は空いているようだ。玄関に自分以外の履物もないので、1棟貸し切り状態だ。
どんな高級ホテルよりもいい宿だよ。

逆に学生のグループなんかが泊まったらうるさいだろうなとも思ったが・・・

暗くなってからまた外に出てみる。
ユーグレナモールの方まで歩く。店はやっているが歩く人は少ない。
どこも空席が目立つ。どこかの店で一杯やっていこうかなとも思ったが、コロナの渦中なのでやめておく。
感染(うつ)されるかもというのもあるけど、自分が無症状なだけで実は・・・かも知れないので。

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 市役所通りの夜景。

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 夜のユーグレナモール。

夜景をいくつか撮影して宿に戻る。
昨日の泡盛の残りを飲み始めたら、外からドーンドーンと音が聞こえてきた。今夜は花火をやっているらしい。
ベランダから外を見ると、港の方に花火の明かりが見えた。残念ながらここから花火を見ることはできなかった。

もう着替えちゃったし、外に出るのも面倒だ。
一体何事かとググってみたら『石垣島まつり2020』というのをやっていたようだ。全然気が付かなかった。
そのイベントでの花火大会ということだった。

花火の音を聞きながら、あとは泡盛のお湯割りを飲んでいた。

11月8日(日)の費用
費   目場  所
波照間サイクリングBコース安永観光4,980
地域共通クーポン4枚  〃-4,000
自販機アクエリアス波照間島160
泡波ミニチュア2本あがでぐに820
そば並めっしー750
土産2品ユーグレナモール2,138
地域共通クーポン2枚  〃-2,000
夕食用ビール、総菜マックスバリュ新川2,087
地域共通クーポン2枚  〃-2,000
 11/8 合 計2,935

5へつづく


posted by pupupukaya at 20/12/13 | Comment(0) | 沖縄の旅行記
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