10月27日付で国土交通省に鉄道事業廃止届が提出された。
2015年1月の高波で厚賀〜大狩部間の路盤が流出し、以来ずっと運休中の日高本線鵡川〜様似間である。
その後も台風や豪雨による路盤や橋梁の流出が続き、復旧には数十億円もの費用が掛かるとして、JR北海道は復旧を断念して廃止したがっていたのだが、沿線自治体の反対で廃止もできず、かといって復旧もできるはずもなくと列車代行バスでしのいでいた。
それがこの度2021年11月1日に廃止と正式に決定したことになる。
廃止届には繰り上げが認められれば同年4月1日に廃止予定日を繰り上げますとあり、おそらくそうなるのだろう。
事実上廃線状態だし、路盤が崩壊して土砂が海に流出するがままの護岸など早急に自治体や国の事業で修復しなければならない箇所も多い。
だから決まってしまえばJRとしても自治体としてもさっさと廃止したいところだろう。
廃止に当たってお別れ臨時列車が走ることもないしね。
そんな日高本線は、運休になってから車で行って線路や代行バスを見るだけだった。
日高本線の列車は何度も乗ったが、代行バスに乗ったことはないなあ。
いっぺん、代行バスというのにも乗ってみようかと土曜日の朝出発した。
使用した切符は一日散歩きっぷ。
日高本線は列車代行バスなので鉄道の乗車券で乗ることができる。
快速エアポート62号で雨模様の札幌を出発。
これに乗るために始発電車の地下鉄で札幌駅まで来たのだった。
それにしても、朝イチで来て6時29分発に乗り継ぎって、札幌の地下鉄も随分のんびりしてるな。
雨模様の札幌を出発。
恵庭で東室蘭行普通列車に乗り換える。
キハ143の2両編成。苫小牧〜室蘭間では711系電車による運行だったが、同電車置き換えの時に学園都市線電化で不要になったこの気動車による置き換えとなったもの。苗穂運転所への送り込みのため、朝の上りと夜の下り各1本だけが千歳線も走る。
各駅停車なのでがら空きかと思っていたら、車内は結構客が乗っていた。
千歳あたりで降りる人が多いのかと思ったがそうでもなく、ずっと立ちっぱなしだった。
立っていたおかげでキハ143の素晴らしい加速度を体験できる。
低速の加速度は711系電車よりも良く感じた。駅間が短い南千歳までは90km/hで加速が止まってしまうが、南千歳を発車すると速度計はみるみるうちに110km/hを指した。
沼ノ端では特急北斗4号の退避のため8分停車。本来室蘭本線用のホームに入って特急通過を待つ。
キハ143の足ならば苫小牧まで逃げ切れるのではと思うが、これは苫小牧駅ホームの制約からだ。
1番線は日高線が停車中、2番線にこの東室蘭行が入ると、北斗4号が入れない。そのために沼ノ端で特急を先行させるのだ。
苫小牧着。ここで多くの人が席を立った。
鵡川行きの2両の列車は到着向かいの1番線に停車していた。
列車の撮影なんかしているうちに、あっという間に鵡川行きのドアの前に列ができた。
東室蘭行きの列車が意外と混んでいたのは、苫小牧で日高線に乗り継ぐ人が多かったからだった。
なんということだ。
さては全員列車代行バスで様似まで行く人たちだな。
日高線廃止事業届の提出がリリースされたのが10月27日火曜日、今日がその土曜日。
みんな考えることは同じだったわけだ。
様似まで行くというのは、苫小牧から様似までこの7:52発の鵡川行きに乗らないと日帰りできないからだ。
だからこうしてみんな朝早く出てきたわけだ。
例年ならば門別ししゃも祭りでにぎわう頃だが、今年はコロナのために中止になっている。
列車は鵡川行きだし、車内放送も鵡川行きと言っているが、駅の案内は様似行きと表示してある。
これは、様似行きの列車だけど、鵡川から先は災害で不通なので鵡川から様似までは代行バスに乗ってねということだ。
だいぶ古い話だが、かつて士幌線の糠平〜十勝三股間で乗客減のためバスによる代行運転が行われていた。
そのころ帯広駅の案内は堂々と十勝三股行きとなっていたのを思い出す。
車内はボックス席がすべてふさがるほどの乗車率。2両編成なのでゆったりとしている。
鵡川までの所要時間は28分。苫小牧〜鵡川間の距離は30.5km、線形も良く線内の最高速度85km/hで快調に走る。
走りっぷりだけ見ていると、昔あった札幌直通の急行えりもが2往復くらい存続していれば、日高本線の運命も変わっていたのかなと思わせる。
黄金色に染まった勇払原野を行く。
鵡川に到着。降りた乗客たちは駅前に停車中のバスを目指す。
鵡川から静内までの代行バスはジェイ・アール北海道バスのワンステップ車。
列車が着くとたちまち満席に。立つ人も見られる。
このバスに乗って行けば静内には10:25、そこで乗り継いで様似には12:15に着く。
おそらく終点の静内までこんな状態だろう。そこから様似行きに乗り継ぐ人も多そうだ。
だからみんな朝早く出てきたのである。
自分もそのうちの1人なので文句を言うわけにはいかない。
静内までの所要時間は1時間47分。もうこの先は行く気がしなくなった。
早ければ来年(2021年)4月1日に廃止になる鵡川〜様似間だが、機会があればまたリベンジもできるだろう。
そんなわけで日高本線乗り納めコースは、ここ鵡川でエスケープさせてもらう。
日高本線・・・ていうか日高本線の代行バスは、今後は週末は今日みたいな感じになるんだろうか。
折り返し8:37発苫小牧行きで戻ることにした。
こちらは高校生を中心に、地元の人ばかり10数人が乗り込む。
もう札幌圏では少数になったキハ40に乗りに来たと思えばよろしい。
こんなもの撮る人も少ないと思って、運転台の撮影をしてきた。
ローカル線の運行から急行列車まで幅広い運用を想定した設計となっているキハ40形気動車。その設計思想は乗務員室に一番感じ取ることができる。
なぜ運転席の背面にこんなに空間があるのか。
それは急行列車では通過駅で運転助士がここからタブレットの収受の作業をしていたから。
キハ40の製造当時は、単線区間ならばほとんどの路線はタブレット閉塞だった。
それが無い運用ならば全くのデッドスペース。両運転台の単行ならばなおさらだ。
客室設備は近郊列車並み、乗務員室は急行列車並みというのが私流のキハ40形の評価。
運転士側は未使用時は扉で閉鎖されるが、助士席は解放されたままだった。そんなわけで2両連結以上の場合はここが補助席みたいな席になった。
今はロープが張られて立ち入ることはできない。
急行宗谷時代に旭川から名寄までこの席に座っていたことがあったが、妙に位置が高くて落ち着かない席だったなあ。
2両編成なので空きボックスが目立つ。
乗客は土曜授業なのか部活動なのか高校生が多い。
浜厚真で苫小牧への高校生が2人乗って来た。
普段は乗り降りする人を見ることがないような駅だが、地味に通学生の利用があることになる。
どういうわけか後ろの2両目が人気で、こっち1両目は半分くらいしか乗っていない。
その謎は苫小牧についてわかることになる。
勇払で2人乗ってくる。
日本製紙の工場があってまとまった町があるところだが、利用者は多くないようだ。
9:05、苫小牧着。
なぜ2両目に乗客がかたまっていたかというと、2両目の方が階段に近いため。
苫小牧駅は南口が正面となる。
向かいの廃墟ビルはかつてダイエーが入居、そのあとが地下にラルズマートが核テナントとして入居するエガオというショッピングセンターとなっていたが2014年頃には廃墟ビルになっていたようだ。苫小牧駅と連絡通路で結ばれていたが今は撤去されている。
駅ビルはエスタとなっていたがこれも空きビル状態。
北口のメガドン・キホーテだけが駅前に唯一残った商業施設。
南口にダイエーと丸井今井苫小牧店があって駅と直結、北口には長崎屋とイトーヨーカドーが並び、駅周辺が苫小牧市の商業の中心地だったのはつい10数年前。
イオンができてからはあっという間にイオンの周辺にもショッピングセンターが林立し、あの辺はすっかりイオンの城下町のようになって栄えている。
室蘭本線も日高本線もちょうどイオンの裏を線路が通っているので、そこに新駅を作ればそれなりに利用者はいると思うが、そういった動きもないようだ。
追分経由で岩見沢へ行こうと調べたら次の列車は13時台。
もう札幌に戻ることにした。
普通列車手稲行きは733系6両編成。
たまにJRのことを汽車と呼ぶ人がいるが、年寄りかそれとも余程JRと縁遠い生活の人かどちらか。
こんなロングシートの電車を汽車とは言わないなあ。
本物の汽車などもう観光用でしかないが、汽車に乗りたけりゃ苫小牧か岩見沢まで行くしかない。
今日は汽車に乗りに来たのだと思うことにした。
南千歳で快速エアポートに乗り換える。
ホームは寒いし少し時間があったので上の待合室に行ってみる。
この待合室がこれから汽車に乗るんだね〜といった雰囲気だった。
キヨスクもいい味がある。少なくとも平成も10年代くらいまで戻ったような気分になる場所だった。
このキヨスクももう長いことはないんだろうということは察しが付く。
苫小牧駅のキヨスクもセブンイレブンになっていたし、新千歳空港駅のキヨスクももうだいぶ前になくなってしまった。
南千歳からの快速エアポートは嬉しいことに転換クロスシートの721系だった。
新型コロナ流行以降はいつもがら空きで走っているのを見ていたが、車内に入ると空席が疎らなほど混んでいた。
これより前の駅は新千歳空港駅なのでほぼ100%の乗客は飛行機からの客となる。
そういえば今日から文化の日の飛び石連休だったなと思いだした。
GoToトラベルキャンペーンもあるし、この連休は多くの人が北海道旅行に来るんだろう。
こんな大盛況のエアポートに乗るのも随分久しぶりだなと思いながら札幌まで戻って来た。
〜おわり
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