国道230号 定山渓〜中山峠の旧道 続編

前回の続きです。

9月20日、再び中山峠旧道の探索にやってきた。
実は前日に来るはずだったのだが9月の4連休、国道230号の渋滞にはまって、こりゃあダメだと引き返し、こんどは朝早く出てきたわけである。

国道230号線、中山峠旧道の概要については既に説明済みなので省略させていただく。

前回は中山峠側のゲートから入り、豊平峡ダムが見えるポイントまで行って引き返してきた。
今回は国道230号線の定山渓トンネルの中山峠出口側に駐車スペースがあるのでそこへ車を駐車させてもらうことにした。

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 国道230号の新旧ルートを3Dで表示。安江峠から見た図。
 (地理院地図Globeから筆者作成)

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 続編の旧道を歩いたルート。(地理院地図より筆者作成)

地理院の地形図では、定山渓トンネルの中山峠側出口横から林道が旧道へ繋がっているのが確認できる。
今日はここから旧道へ向かうこととした。

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 スタートの定山渓トンネル中山峠側入口。

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 定山渓トンネル入口脇にある大曲林道とゲート。

林道入口には中山峠側と同様のゲートがあり、自動車・オートバイ・バギーカー等の通行を禁止する旨の看板がある。
歩いて入る分には構わないようなのでゲート脇から入らせてもらう。

わりとここを通る人は多いらしく、ゲート脇は踏み分け道のようになっていた。
山菜取りのほか、私のような旧道探索の人が結構いるのだろう。

ゲート脇にある木製の看板には『大曲林道/1001m』とあった。

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 大曲林道入口のゲート。

ゲートから先は2条のタイヤの轍の道が続く。
ヘアピンカーブのきつい登り道。
林の向こうからは車の通過する音がこれでもかというほど響いてくる。

約1.5km、20分ほど歩いた先に、先日中山峠から歩いてきた旧道に出た。

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 大曲林道が旧国道230号と合流するT字路。

この定山渓トンネル脇から旧道へ通じている道は現在は林道ということになっているが、元々は現在の国道となっている道路を建設するための仮道として設けられたもの。
前回は新国道のルート案として現在の薄別峡案のほか豊平峡案と現道(現在の旧道)案を紹介したが、薄別峡案に決定した理由の一つに豊平峡案だと工事の着手が定山渓側と中山峠側の2か所からしか手が付けられず、工期が余計にかかるという事情もあった。
現在の国道である薄別峡案だと、現道から仮道を通せばそこからも工事着手ができるというもの。

定山渓トンネル脇から旧道へ登ってきた道はその当時の仮道のひとつ。

定山溪国道の仮設備について-論文・刊行物検索−寒地土木研究所
によると、当時は『4号仮道』の名がついていた。

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 “定山溪国道の仮設備について-論文・刊行物検索−寒地土木研究所”より引用。

中山峠の600mほど札幌よりから続く旧道は、ほとんど高度を下げることなく安江峠を通って定山渓トンネル脇から登る林道と合流する。
この付近までは前回歩いたので、旧道歩きはここからリスタート。

先週の長雨のせいか足元はぬかるみというほどではないが、ぐちゃぐちゃしている。スニーカーでなく皮の登山靴を履いてきて正解だった。
道は2条の轍だけが土が出ていて、あとは草生している。
それでも定期的に草を刈っているのか、芝生のような状態。緑色でなければ往時の旧道の面影が良く残っている。

前回は豊平峡ダムが見える石碑があるところで引き返したが、今回はさらに先へ進む。
中山峠から安江峠までの道は下ったり登ったりだったが、もうここからは基本下り坂。
山肌にへばり付くようにして九十九折で高度を下げることになる。
旧道時代は『魔の山道』と呼ばれていた場所だ。

前回引き返した場所から少し進むと、豊平峡ダムがさらにはっきり見える場所があった。
それでも木が茂って写真に収めるのは一苦労。
豊平峡ダムを裏から眺める格好で、木さえ茂っていなければ中々の絶景。

定山渓トンネル脇からここまでの道を開放してここに展望台でも設ければそれなりの観光スポットになりそう。

DSCN8284.JPG
 ワイヤーロープ式防護柵の遺構が現れた。

旧道時代も、ここから豊平峡を一望できる展望スポットだったろうなあ、などと想像する。
しかし道路の脇はすぐに急な断崖。草木が茂っていて画像ではわかりにくいが、ハンドル操作を間違えれば豊平峡の谷底まで落ちてしまいそうな場所に道路は通っている。

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 眼下に見える豊平峡ダム。

この辺りから旧道の遺構が目に付くようになった。
傾いたり埋まりかけたりしているワイヤーロープ式防護柵が道端に目に付く。
おそらく旧道時代に設けられたものだろう。

もう少し進むと土留めの石垣が現れた。
長方形に切った石を斜めに組んだもの。
昭和初期あたりのものかなあ。同様の石垣は小樽市張碓町の国道5号線旧道脇に残っている。

苔むしているが立派なものだ。林道ではなくまさしく国道を思わせる。

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 石垣がまさしく旧国道を思わせる。

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 苔むしているが立派な石垣。

このあたりからやたらと動物の足跡が増えてきた。雨で土が緩んでいるのではっきりとその跡を残している。
多いのはエゾシカ。2つ並んだ蹄の足跡が点々と並んでいる。夜はエゾシカの道となっているのだろう。

けものの足跡はキツネだろうか。キツネよりはるかに大きい足跡も。まさかクマ?
熊鈴を付けてチリーンチリーンと甲高い音を立てて歩いているが、出くわしたらと思うと鳥肌が立ってくる。

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 轍の真ん中には動物の足跡。まさかクマ?

今までは進行右側が谷だったが、今度は左側が谷となる。
旧道は安江峠から豊平峡側の谷へ回り込んでいたが、今度は薄別川の谷沿いの山肌を伝って下る道となる。

草木が茂って画像ではわかりずらいが、道路脇からは急な斜面で落ち込んでいる。
場所は現国道の溪明大橋の上あたり。
草木に遮られて国道を見ることはできないが、谷底を通る車の音はひっきりなしに聞こえる。

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 険しい山肌にへばりつく山道。現国道230号溪明大橋の崖上を行く。

道幅も狭くなって、幅は目視で3〜4mくらい。普通乗用車でもすれ違うのは大変で、ましてや大型車と鉢合わせたらどうするんだろう。
どちらかが待避所までバックで下がるしかないのだが、ひとたび間違えれば崖下へ真っ逆さま。
そりゃあ鉢合わせたらにらめっこになるわな・・・

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 国道230号の新旧ルートを3Dで表示。無意根大橋上空から見た図。
 (地理院地図Globeから筆者作成)

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 九十九折りのカーブと急勾配が続く。

カーブでは道幅が広めに取ってあるのがわかる。
こういう道の走行の仕方は、以前に四国の道を運転したことがあるのでわかる。

カーブの箇所で次のカーブまで車がいないのを確認してから次のカーブまでピャーッと行って、そこでまた確認して次のカーブまでピャーッと。対向車が見えたらその車が着くまで待機する。
しかしこちらは砂利道で急勾配。しかも見通しも悪い。どうしていたかは当時を知らない若い私では想像するしかない

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 倒木もあるがチェーンソーで切って通れるようにしてあった。

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 転落したら崖下まで真っ逆さまだろう。

こんな道をバスやトラックも走っていたのだから驚く。当時の運転手はまるで軽業師のようだっただろう。
私などこんな道を運転していたら、カーブの向こうから突然対向車が現れて・・・

あ〜っ!!・・・

なんてなりかねない。

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 こんなところで急に対向車に出くわしたらと思うと恐ろしい。

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 木々の隙間から無意根山が見えた。

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 待避所なのか若干広めになっている箇所もある。

定山渓トンネル脇のゲートから歩くこと1時間10分、薄別川の谷底から登ってくる道と合流する地点まできた。
地形図では1条の実線の道となっているが、草が覆っていて歩くのは難儀そうだ。
脇にある看板には錆びた表示板に赤ペンキで『大曲4』と書いてある。
この下る道も林道なのだろうか。歩きやすい旧道と違って、そちらは荒れるがままという風に見えた。

DSCN8448.JPG
 地形図で現国道から登ってくる1条の実線の道と合流。

旧道はこの先も同じような感じで続いている。
この道はどこまで行くかというと、谷まで下りた薄別川の手前で終わり。
橋はかなり昔に落ちてしまったらしく、国道へ出るともなれば今は歩いて渡るしかない。
そうでなければ、下ってきた道をまた延々と戻ることになる。
最後は行き止まりになるのはわかっているのでどうしたものか。

シカの足跡も増えてきて、新しいフンも見かけるようになった。クマも怖いしなあ。

ん?
少し先に何か立っている。
道路標識じゃないか。

DSCN8421.JPG
 道路標識を発見。

行ってみるとまぎれもなく道路標識だった。黄色い菱形の警戒標識。
林道に、しかもここだけ取り付けるのも不自然なので、旧道時代からのもので間違いないだろう。

もっと進めば何か発見があるのかもしれないが、もうこれで満足だ。
ここで引き返すことにしよう。

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 警戒標識  左方屈曲あり。

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 コの字型の鉄柱に標識が打ち付けられている。

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 道路標識が残る風景はまさしく旧道。

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 往時を想像してセピア色に合成してみた。

旧道当時の画像はいくらググっても見つからなかったので、拾った画像を組み合わせてみたのが上画像。
ちぐはぐだが往時を想像していただければと思う。

標識の先も道は同じような状態で続いている。
クマさえいなけりゃまだまだ行けるが、戻ることにする。

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 標識の先へ続く道。

前回中山峠から安江峠まで歩いたときは途中で圏外になったが、今回は国道が並行しているためか圏外になることはなかった。
そのためにスマホで地理院地図を表示して場所を確認しながら歩いてきた。
今は便利になって、GPS機能で自分の位置を地形図上に表示することができる。

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 地理院地図にて現在位置を確認。

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 斜面を切り取ってつけられた道。

行きとは逆に戻りは上り坂。歩く分にはさほどには感じないが、旧道当時の性能の車だと大変だったろうなあ。特にトラックとかバスなど。
ずっとローで走っていたら夏ならオーバーヒート起こしちゃうよ。

途中で対向車どうしが対面したら登りが優先で下る車が待避所まで下がる決まりだった。
これは、登る方の車が止まったら再発進するのが大変という理由からで、教習所でもそう習う。
しかしこの山道は下る車の左側が崖。大型車同士がすれ違うには狭い道の崖っぷちギリギリまで車体を寄せて停まらなくてはならない。
一歩間違えると崖下へ落下。

転落事故が後を絶たず、『魔の山道』と恐れられていたのが実際歩いてみたらよくわかる。
昔は峠を越えるのも命がけだったんだなあ。

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 君はここを大型バスが通っていたと信じられるか。

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 旧道当時は上り8本下り9本の定期バスがあった。
 (交通公社の時刻表1967年9月号復刻版より引用)

国道とは1kmほど離れているが、歩いていると車の通る音がかすかに聞こえてくる。
そのうちの1つがだんだん近づいてくる気がする。
とつぜん1台のバイクが現れてすれ違って行った。

森林管理署の人には見えないので、ゲートから入ってきたのだろう。
一応バイクの乗り入れは禁止になっているが、私のような旧道マニアがしょっちゅうやってくるのだろう。
バイクが吹かすエンジンの音に驚いてクマも逃げ出したに違いない。
ずっとクマにおびえて歩いていたので、バイクの兄ちゃんようこそ入ってきてくれましたという気分だった。

豊平峡ダムが見える所まで戻ってきたら雨が降ってきた。さっきまで青空だったのに山の天気はわからんね。
標識のところで引き返してきて正解だったようだ。

標識から歩くこと1時間で定山渓トンネル脇のゲートに戻ってきた。
車に戻って、中山峠であげいもでも食べて帰ろうと思ったら、靴はベチャベチャ、裾は泥だらけになっていた。
これで店に入るわけにはいかんなあ。
今日はこのまま帰ることにしよう。

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 林道入口ゲートに戻ってきた。

峠道の旧道というものはどこにでもあるが、大抵は使われなくなると自然に帰ってしまい、地形図からもその姿を消してしまうものだ。
ところが中山峠の札幌側の旧道だけはずっと2条の道として描かれていた。
林道として管理されていたためだろう。

こうして実際に歩いてみると、林道として管理され、国道だった当時の遺構が残っているのが意外だった。
本願寺道路から始まり『魔の山道』と呼ばれていた命がけで崖っぷちの峠越えをしていた当時の思いをはせることができた。

現在は何気なく車で通り過ぎている中山峠までの国道230号だが、興味を持ったおかげでその歴史や現国道への切り替えの経緯を知った今、今後は通るたびに襟を正す気持ちになった。

〜最後までお読みいただきありがとうございました。

タグ:北海道 道路

posted by pupupukaya at 20/09/21 | Comment(0) | 旧道を行く
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