2020年礼文島旅行記7 礼文島から札幌まで

 ◆ 礼文島→利尻島→稚内(サイプリア宗谷)

香深13:25発稚内行のフェリーに乗れば、稚内では1時間26分の接続で札幌行特急『宗谷』に乗り継ぐことができる。

当初は朝8:55発の便でと考えていたのだが、稚内からの特急サロベツがコロナ運休になってしまい、稚内でほぼ半日過ごすことになるなと思ったが、乗り継ぎを調べると午後の便でもその日のうちに札幌に着くことがわかった。

宗谷本線の特急2往復が旭川短縮になったことによる車両繰りの関係で、朝の時刻が繰り上がり、夜の時刻が繰り下がってずいぶん使いづらいダイヤになったものだなと思っていた。
しかし、このおかげで利尻礼文へのフェリーとの乗り継ぎが相当改善されたという思わぬ効果あったことを今回の旅行で発見した。

それまでは朝イチの便で香深を出発して、特急サロベツに乗り継ぐしか札幌へ日着できなかった。しかも稚内で3時間近い接続時間があり、先に高速バスがフェリーの客を乗せて札幌へ向かうのでは、対札幌に関してはJRの出る幕はなかったことだろう。
それが、昼のサロベツの稚内発が繰り上がって接続時間が短くなり、夜の宗谷の稚内発が繰り下がったことにより昼のフェリー便に接続が可能となった。

また、稚内駅が新しくなってから、それまで駅正面から出て踏切を渡って行かなければならなかったフェリーターミナルへの道も大分ショートカットされて近くなっている。

皆様も利尻礼文への旅行の際には、

JR特急の利用も検討されてはいかがでしょうか。

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 稚内からの乗船客が下船。だんだん観光客も増えているようだ。 

13:00に稚内からの便が到着して、乗船客がぞろぞろと出てくる。『どうみん割り』の効果なのかはわからないが意外と多く降りてくる。
フェリーは朝と夕方の便はそれそれの島に直行するが、昼の1往復だけはどちら行も利尻島に寄港する便となっている。
利尻島と礼文島を直接結ぶ唯一の便でもある。利尻空港に着いて1泊してから礼文島へという場合はこの便に乗るしかない。

こんど13:25発稚内行の便も利尻島に寄港する便となる。
直行ならば香深〜稚内間は1時間55分だが、昼間の寄港便は2時間50分かかる。
船に弱い人は敬遠したい便だろうが、基本的に乗り物に乗っているのが好きな私などには楽しい便だ。ちょっとだけど利尻島も見ることができるし。

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 乗船開始。いってらっしゃい!礼文島へまたお越し下さい。

13時15分に乗船開始となる。
船内に入ると、行きに乗った船とは違って椅子席がメインだった。船首のほうにカーペット敷きのスペースもあって、どっちも2等の乗船券で利用できる。
どうせ半分くらいの時間は甲板で過ごすので、空いている席に荷物だけ置いて外に出る。

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 サイプリア宗谷の客室は椅子席がメインだった。

下にはどこかの宿なのかサークルなのか、見送りの人が10人ほどかたまって手を振っている。
名物の桃岩荘の見送りではない。あっちは今年の営業は休止とホームページにあった。

3年前に来たときは『遠い世界に』の熱唱と、ふしぎな踊り(ドラクエかよ)で盛大に見送ってくれたが、残念ながら今年は無し。

もっとも、あの中に加わりたいとは思わないが・・・(^^;

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 どこかの見送りがあった。

誰だかわからない見送り人たちは、小さく見えなくなるまで手を振り続けていた。
これで4泊5日過ごした礼文島ともお別れ、少しセンチメンタルな気分にもなる。

同じ北海道内なのだから、来たくなればいつでも来れるんだけどね。
車なら0泊2日で行くこともできるし。
秋あたりにまた行っちゃうかもしれないね。

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 さようなら礼文島。

礼文島に別れを告げて、船が一路目指すは利尻島。
これもまたこの時期は滅多に姿を現さない利尻富士がくっきりと見える。
しかも船上からは順光。火山の荒々しい岩陰まではっきりとあらわになっている。

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 船は寄港地の利尻島へ向かう。

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 海上から見る利尻富士の秀麗な姿。

利尻富士に見とれているうちに利尻島の鴛泊(おしどまり)に入港する。
意外と下船客が多く、1/3ほどは下船して行った。といっても全体の客が少ないので大した人数ではないが。
代わりに乗船してきた人はそれよりも少なく、香深を出たときよりも船内は空くことになった。
利尻島は利尻空港があり、千歳と丘珠にそれぞれ直行便があるので、そちらを利用する人が多いのだろう。

礼文島にも空港はあるが、稚内から利尻と礼文に飛んでいた飛行機が千歳と丘珠発着に改められてからは礼文空港は休止ということになっている。

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 鴛泊港では25分の停泊。

鴛泊では車を何台か積み込む。車だけはフェリーでしか運べないし、物流の主役はフェリーである。
最後にトラックを乗せたら終わり。車も人も少ないので、作業員は25分間の停泊時間も持て余し気味だ。

それでも早く出ることはしないで、出航時間になると腕時計の秒針がジャストを示すと同時に係船ロープを緩めた。
こんな離島でも1分1秒の正確さを見ていると、ここは日本だなあと思う。

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 利尻島をあとに稚内へ。

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 利尻も礼文もすっかり小さくなった。

秀麗な利尻富士もだんだん遠ざかる。
礼文島を出たときは順光でくっきり姿を見せていたが、利尻を出港すると逆光になってしまい、あとはシルエットとなってしまった。

かわって水平線に見えてくるのが北海道の島影。
北海道ってあんなに平べったかったかなあと思う。道北地方はあまり高い山がないからなのだろう。稚内半島で一番高いところでも200m程度しかない。

何年か前、北海道の熊が泳いで利尻島に渡って、また泳いで北海道に戻ったということがあったなあ。
あの熊も同じ島影を目指して泳いだのかなあ、なんて思った。

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 ノシャップ岬が近づく。

15時40分ごろ、稚内半島がもう近くに見えてくる。もうすぐ稚内かと思うが、到着までまだ40分もある。
宗谷岬の方の丘の上にはこれでもかってほど風力発電の風車が立っている。
そういえば礼文島では1基も見なかった。
あんなもの立ってれば景観は台無しだな。近くだと騒音も相当なものだし。

いつだったか、風力発電の風車の下でキャンプしてからあれは嫌いになった。

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 稚内へ戻ってきた。

16時15分、稚内フェリーターミナルに接岸し下船する。
コンコースは出迎える人もなくガランとしていた。
フェリーターミナルの出口にはタクシーが下船客を待っていた。あまりタクシーに向かう人はいない。
客が少ないのと、駅が近くなってタクシーに乗るほどの距離じゃなくなってしまったのもある。

札幌行の高速バスはフェリーターミナルから直接発車する。次の便は16:40発で、これに乗れば札幌には22:30着と特急宗谷を待つよりも30分近く着く。こっちの方が安いし、やっぱりフェリーの客はこっちに流れてしまうのだろうか。

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 タクシーが並ぶ稚内フェリーターミナル。

フェリーターミナルから稚内へ向かう人たちも10人くらいはいたようだ。
ここから稚内駅までは700mほどの距離。歩くのが早い人なら7〜8分といったところ。


 ◆ 稚内→札幌 特急宗谷飲み鉄旅

駅に着いたらまず指定席の確保。
持っている切符は6日間有効の『指定席往復割引きっぷ(Rきっぷ)』。
行きは買ったときに座席指定しておいたが、帰りは指定してない状態だった。別に自由席でもがら空きだろうが、せっかくなので指定席にしておく。

こんな稚内駅にも指定券の券売機が置かれるようになっていた。
窓口でも指定券は発行してもらえるが、機械だと自分で座席表で好きな席を選択できるので便利だ。
座席表を見て、なるべく人から離れた席を選択する。
ソーシャルディスタンスというのもあるけど、稚内から札幌まではずっと飲んで行こうと決めていたからだ。

車じゃないから、堂々と飲んで行ける。それに金曜の夜だから許してもらえるんじゃないか。
たくさん飲めば匂いもするだろうし、それには人がいない方が良い。
バスならばこうはいかないしね。

そういうわけで酒とつまみを調達してくる。
駅の向かいにはスーパーがあって、惣菜に食指が動くが、こんなパックを車内で並べたらかえってむなしくなるだろうな。
駅弁があれば一番いいのだが、道の駅の売店キタカラに駅弁は休止中との張り紙が出ていた。
結局セイコーマートとキタカラで酒とつまみを仕入れた。

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 特急宗谷の改札が始まった稚内駅。

17時半を過ぎて改札が始まる。
改札口を通ったのは僅か10数人。これが始発稚内からの乗客全員となる。

特急が全て札幌発着だった頃は17:00発スーパー宗谷3号だったのが、唯一の札幌行となってからは17:46発に繰り下がっている。札幌着が22時過ぎに到着だったのが23時近くになってしまったので、稚内だけの用で来たのなら不便なダイヤという感は否めない。
その前は13:01発のサロベツしかないし、その間は普通列車すらない状態。
反面、利尻礼文からのフェリーが接続できるようになった面もあるのだが。

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 唯一の札幌行になる特急宗谷。

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 稚内発車時の車内。札幌まで乗車率はあまり変わらなかった。

一番後ろの席に陣取っている2人の鉄道ファンらしい兄さんたちの話し声が気になるが、まあこっちも酒を飲ませてもらうのでまあええわい。これはしばらくすると静かになった。

列車は次の南稚内へ。
この駅から何人か乗ってきたが、ほとんどは自由席の方の客だった。
車内はさっき見た券売機の座席表通りにがら空き状態で南稚内を発車する。

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 南稚内は地元の人の利用が多い。

南稚内を出ると、買ってきたつまみをテーブルに並べて1人酒宴を始めることにする。
ビールはぬるくならないように保温袋に入れてきた。

『わっかないし出汁之介』というホッケの燻製は意外とビールに合うな。

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 札幌までは飲みながら。

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 ビールは保温バッグに入れて。

車窓から利尻富士を見ようと進行右側の席を取ったのだが、こっち側は西日がモロに差し込んで来る。
宗谷本線で日本海が見える唯一の場所では、利尻、礼文両島のシルエットがくっきりと見えた。

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 南稚内〜抜海間のビュースポットから見えた利尻島と礼文島。

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 利尻富士のシルエットがずっと追いかけてくる。徳満〜豊富間。

もう食堂車も車内販売も無いが、こうして乗車前に準備しておけば座席は食堂車にも居酒屋にもなる。

ビール2本飲んで飽きてきたから今度はワンカップ。
おいちーずといって裂いたチーズを燻製状にした珍味が意外とワンカップに合うのだった。

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 次はワンカップだ。おいチーズが意外と日本酒に合う。

豊富では自由席から数人の下車があった。高校生の姿も見える。
稚内と豊富の間は町民限定の乗車票というのがあって、それだと特急が普通運賃の10円増しの片道1,140円で利用できるので重宝されているようだ。

かつては稚内発の帰宅時間帯の普通列車は14時台、17時台、19時台だったものが普通列車削減で17時台と19時台に集約され、さらに特急の旭川短縮による特急宗谷の時刻繰り下げにより、17時台だった普通列車は18時台に繰り下げられてしまった。
かつては稚内への通学や通院、買い物などで使い分けられていた稚内からの帰宅列車も、特急を除けば18時台と20時台だけになってしまって久しい。

こんな状況では普通列車の利用者も極端に減って、宗谷本線では利用客の極端に少ない13駅が来年3月で廃止になることが決まっている。

駅とか鉄道の廃止というと、とかく地域住民を切り捨てるような話になってしまいがちだが、実際は廃止が決定すれば代替輸送が用意されることになる。その運営は自治体にしろバス会社にしろ、バスによる運行ならば通学や通院に合わせたきめ細やかな便が設定できる。江差線のようにバス化したほうが逆に利用客が増えた例もある。

地域輸送をいつまでも鉄道にこだわっていると、逆に住民に不便を強いることにもなりかねない。

宗谷本線稚内口の例では、帰宅するには18時過ぎの列車まで待たなければならない不便な鉄道。
思い切って廃止すれば、利用実態に合わせて運行できる代替バスの運行になる。どちらが地元住民にとって便利かは明白だ。

それで考えると、宗谷本線北部の地域輸送はバスなどに譲り、石勝線のように都市間輸送専用の路線とするのも、宗谷本線を存続させる1つの方法かもしれない。

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 西日に染まった黄金色の空と利尻富士。豊富〜下沼間。

礼文島にいるときは観光客気分だったが、また戻ってきて列車に乗ると、いやでもJR北海道の、また宗谷本線の厳しい現実を見せつけられる。

幌延を出るとだいぶ日も傾いてきて夕焼け空になった。もうそろそろ利尻富士も夕日も見納めだ。

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 夕日が傾いてくる。南幌延〜安牛間。

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 天塩川の向こうに月が見え始めた。

雄信内を通過するあたりから山峡を行くので日が暮れたように感じるが、今日の日の入りは19時25分(稚内市)。天塩中川の少し先あたりとなる。
音威子府まで来ると空も暗くなり始めた。

なぜか音威子府の駅名を見ると里まで下りてきたような感覚になる。
急行時代は、この駅に着くとホームの乗車位置には乗客が並んでいたのを思い出す。
ここはオホーツク側の浜頓別や枝幸からのバスが発着していたので、そっち方面からの乗り換え客が多かったのだ。
それも、それぞれ旭川や札幌に直通バスが走るようになってからは過去のものになったようだ。

里らしさを感じたのは、きっと稚内方面とは違う客がたくさん乗ってきたので、ここから車内の空気が変わったからなんじゃないかと思う。
今はそんなことも無くなってしまった。

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 19時50分、音威子府着。空はまだまだ明るい。

美深ですっかり暗くなる。
名寄で少しは乗ってくるのかとおもったが、自由席の方に何人か乗っただけだった。

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 20時37分名寄着。さすがにもう空も暗くなった。

名寄を発車すると眠ってしまい、気が付くと岩見沢だった。
この指定席の乗車率は、旭川で少し入れ替わったようだが、稚内始発時とそう変わってはいなかった。

いまはコロナウイルス禍による需要減少ということで、鉄道に限らずバスも飛行機も乗客減がひどいが、コロナウイルスが収束したら乗客が戻ってくるのだろうか。
需要が戻ればまた乗客は増えるのだろうが、この期間に公共交通機関を嫌って車にシフトした客はそう簡単に戻ってはこないだろう。

自分自身がいい例で、道内完結の移動だけでJRの指定席の特急に乗るのは8年ぶりになる。宗谷本線の特急は10年ぶり。すっかり鉄道の旅とは縁遠くなっていた。
その理由は車を持ったから。

今回は駐車場とガソリン代を考えたらJR利用と差額が少なかったからということでJRを選択したが、それがなければ車の一択だっただろう。

旅行前に、宗谷線の特急に乗るのもこれが最後になるかもしれないねなどと冗談を言っていたが、残念ながら案外現実のものとなる日も近いと言わざるを得ない。
これが前回乗った10年前と比較した、宗谷線特急の変わりようと現実見て思った率直な感想である。

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 22時57分札幌着。

岩見沢発車時でも1両あたり10人に満たない乗車率のまま札幌へ。自由席の方は知らないが、到着しても人は疎らだったので似たようなものか。

なんだかわびしい旅の終わりだった。もう礼文島も遠い出来事である。

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 礼文島で買ってきた土産物。

久しぶりに慣れないことをすると何か失敗するもので、家に着いてからスマホがないことに気づいた。
いくら探しても見つからないので、どうやら車内に忘れてきたらしい。無意識に背もたれのポケットに入れてしまったかな。

これは明日札幌駅に電話するしかない。
もしやと思い、自宅のPCで、グーグルマップのタイムラインを見ると簡単にスマホの居場所が見つかった。


7月3日(金)の費用
費目場所金額(円)
レンタカートヨタレンタカー礼文店6,600
食費(外食)炉ばた ちどり(現金分)1,500
土産物代マリンストアー香深2,900
土産物代加藤商店1,460
食費(酒つまみ)セイコーマート1,562
食費(つまみ)ワッカナイセレクト972
7/3 合計14,994


 ◆ 7月4日(土)

翌日公衆電話で札幌駅の忘れ物センターに電話すると、
「もしかすると折り返しで稚内へ向けて出発したかもしれませんね」
「そうしますと稚内駅に着いてから捜索しますので、見つかっても送料がかかりますよ」
とかさんざん言われたが、とりあえず捜索をお願いして電話を切る。

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 昨日グーグルマップのタイムラインで見るとスマホの居場所が・・・

昼にまた電話を掛け直すと、スマホは無事苗穂運転所に駐泊中の車内で発見されたようだ。
これは月曜日に苗穂駅に取りに来てくださいということになった。

受け取りが苗穂駅なのはともかく、なんで月曜まで待たなければならないのかと思ったが、事務関係が土日は休みになるからだろう。
思わぬところで鉄道のタテ割り組織を知ることになった。

そもそも悪いのは車内に忘れてきた自分なので分が悪い。
それはそれで経験と思うことにした。

〜おわり

2020年礼文島旅行総費用
費目金額(円)
宿泊費26,200
交通費(JR)13,310
交通費(フェリー)5,700
交通費(島内バス)2,380
レンタカー6,600
食費14,555
土産物4,360
その他費用610
合計73,715

最後に今回の旅行の総費用をあげます。
礼文島へ旅行するときの参考にしていただければ幸いです。

〜最後までお読みいただきましてありがとうございました。


posted by pupupukaya at 20/07/26 | Comment(0) | 道北の旅行記
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