2020年礼文島旅行記5 礼文林道・礼文滝コース

 ◆ 7月2日(木)

今日は目覚めたら6時だった。昨日までは3時台に目覚めてたので、ずいぶん寝坊したような気になる。
素泊まりなのだから、早く起きたら早く出ればいいのだが、そうすると戻りも早くなってしまう。
天気予報は概ね曇りか曇りのち晴れといったところ。とりあえず雨に当たる心配はなさそう。

朝食は昨日セイコーマートで買っておいたカップヌードルとパン。なんか情けない食事だが、ごちそう続きだったので、こういうのも妙に恋しくなる。

今日の予定は、香深井まで行ってそこから礼文林道を経て礼文滝まで行き、そこで折り返して礼文林道に戻り、香深へ戻ってくるというもの。
トレッキングコースの礼文林道コース(8.2km)と礼文滝コース(4.0km)を合体させた格好となる。

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 礼文林道・礼文滝コースのルート(地理院地図より筆者作成)

7時40分少し前に宿を出る。
1Fの店は9時からオープンなので誰もいない。しかし、2Fの宿へは店を通らないと出入りできないためか鍵を掛けずに開放している。
ずいぶんと物騒な気もするが、島には悪い人はいないんだろうか。

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 誰もいない1Fのカフェ店内。

香深井は香深の町とは別で、フェリーターミナルからだと4.8km北にある漁村だ。バスならば11分だが、歩けば1時間はかかる距離。
ちょうど7時45分発のスコトン行のバスがあるのでそれに合わせて出てきたのだが、既に停車しているバスの車内には4〜5人のハイカーが見えた。一緒になったら嫌だなあと思い、香深井まで歩くことにする。
時間はたっぷりあるし、それに途中のセイコーマートに寄れるという利点もある。

フェリーターミナルの自販機でスポーツ飲料を買ってからスタートする。
買ってから気が付いたが、セコマで買えば良かったんじゃ・・・

途中のセイコーマートで昼食用のおにぎりとサーターアンダギーを買った。なぜか13年前に行った沖縄の離島を思い出したから。
道道礼文島線を北へ向かってテクテク歩く。歩いているうちに曇り空だったのがだんだん青空へと変わってきた。

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 香深から香深井までは道道を歩いて1時間。

香深井のバス停は香深井郵便局の真向かいにあり、バスで来たのならばここが出発点となる。横の家に自販機があったので、バスで来たならここで飲み物しか手に入らない。
時刻は8時43分、香深から歩いてセイコーマートに寄って、ほぼ1時間少々ということになる。


 ◆ 礼文林道コース

橋の手前を左に曲がって狭い道路に入る。人家が終わるあたりに除雪車の車庫があって、そこから礼文林道が始まる。

礼文林道は車の通行は一応可能だが、入口には『自粛』をお願いする看板が立っていた。
林道と言っても二条の轍だけが続いているような道だし、轍が深くなっていたりぬかるみがあったり、対向車が来てもすれ違いは不可能なので車では入らない方が無難である。

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 礼文林道の入口にある看板。

林道に入ってしばらく行くと8時間コースの道が分かれて行く。桃岩荘でやってる『愛とロマンの8時間コース』はスコトン岬を出発してここに出て、礼文林道を南下して戻るコースとしている。この次来たときは挑戦してみたいところ。

礼文林道に入って30分くらいはずっと林の中を通る。上り坂は緩やかだが、退屈な道をダラダラと歩く。この辺りから携帯も圏外となった。
地図は国土地理院の地形図を画像にしてスマホに入れておいたので、それを見ればどこにいるのかはわかる。
が、トレイルコースは整備されているので、地図がなくても不便なことは無いと思う。

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 二条の轍が続く礼文林道。

ずっと歩いているうちに林がなくなり、ヤブの丈も低くなってきて視界が開けるようになった。
礼文滝入口の看板が立つ分岐点に着いたのは9時45分、香深井からここまでが大体1時間というところだった。


 ◆ 礼文滝コース往復

ここから礼文滝へ向かうことになる。
この礼文滝コースは西海岸の礼文滝までの片道2kmのコースで、ロープを伝って下りる急斜面や沢を渡る箇所もある険しい道だ。
コース入口の看板には、
礼文滝コースは川を複数個所横断する大変険しいコースとなっております。通行の際は足元に十分注意し、安全に気を付けてご利用ください
とあった。

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 礼文滝入口。

最初は笹を刈ってつけたような道が続くが、だんだんヤブに覆われてきて、こんどは林の中を下ったり登ったり。
海に向かうので基本下り坂、戻りはこれ登らなきゃならないのかとため息が出そうな急な連続の下り斜面もあった。そんな道が1kmほど続く。
時どき高山植物の可憐な花が足元に咲いているのが唯一の慰め。

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 鬱蒼としたアップダウンが続く。

暗い林や背の高いヤブの中をずっと行くと突然視界が開ける。
そこはロープで囲まれた、ちょっとした広場のようになっていた。
ここへ来た人が少しずつ積んで出来たのか、小さなケルンもあった。

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 ケルンのある広場。

10時06分、礼文滝入口からここまでちょうど20分。

ここから見下ろすV字谷が素晴らしい。
ここは通称ハイジの丘と呼ばれる。アルプスの少女ハイジに出てくるようなアルプスの丘のようだということでそう呼ばれるようになったらしい。

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 ケルンから見下ろしたハイジの丘。

確かにここにヤギでもいたらハイジの世界だな。
青い空、青い海、緑の草原、風が気持ちいい、あ〜もうここから動きたくない。
ずっと暗いヤブの中を登ったり下りたりしてきたので余計にそう思う。

5分ほど佇んで、また出発する。道はさらに礼文滝へと続く。
谷を見下ろしながらしばらく歩くと、今度は一気に谷底へと下る。
一気にといっても、道は一応つづら折りにつけられているが、それでも板で階段状になるほど急になっている。戻りはこれを登らなきゃならないのか。
谷の底からはこんどは沢伝いに道が続く。

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 谷底からさっき下りてきたつづら折りを振り返る。

V字谷の底に流れる沢の脇に足場を求めてつけられた道なので、途中で何回も川を渡る箇所がある。
橋はなくて、そういうところはロープが渡してある。
ロープなど無くても飛び石に乗って越えられるところはいいが、ロープをしっかり握って飛び越えるところはスリルがある。
着地に失敗しても足元がずぶ濡れになるだけだが。

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 数か所ある渡河箇所。ロープが頼り。

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 トレイルの脇に咲く花。

何度も何度も川を渡って下って行くうちに海が目の前に現れた。
礼文滝まであと一息。

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 また川を渡る。

海が目前というところが、ちょうど礼文滝の上に当たる。
ここからは滝を見ながらロープ伝いに下る。

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 海が見えてきた。ここがちょうど滝の上部になる。

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 海岸から見上げる礼文滝。

10時40分、礼文滝に到着。
ハイジの丘のケルンからここまで30分。礼文林道からここまで1時間もかからなかった。
岩肌を流れ落ちる滝は、近くで見ると迫力がある。

どこにでもある滝だが、ここは沢伝いに何度も川を渡ってロープ伝いに下りてこなければ辿り着けない秘境である。
いや〜うれしいねえ。

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 礼文滝の浜。

海岸は、礼文滝のまわりだけは石の浜になっているが、その両側は断崖が続く。
昔は『愛とロマンの8時間コース』のルートはずっと西海岸沿いにあって、今いる場所もそのコースの一部だったが、事故が起きてから礼文林道を迂回するコースに改められたのだという。

昼には早いが、岩に腰掛けてセイコーマートで買ってきた昼食のおにぎりを食べる。
海は波がずいぶんと高い。これは日本海上の低気圧のせいだろう。天気予報を見ると今日晴れているのは道北地方だけで、道南道央は雨となっていた。

ここは今は晴れているが、山々にはどんどんガスがかかり始めている。
せっかく苦労して来たのだから、ゆっくりしていきたいところだが、ガスがこっちにも流れてくるかもしれない。
おにぎりを食べたら早々に戻ることにした。

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 元地漁港の防波堤が思いのほか近くに見える。

岩の向こうには元地漁港の防波堤と灯台が見えている。ここから直線距離だと1kmほどの距離。
昔は岩伝いに元地まで歩いて行けたのだが、もう大分前に通行禁止になってしまった。

また登って下りて礼文林道まで戻らなければならない。
意外と近くに見える元地の漁港がうらめしく見えた。

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 低気圧のせいか海は荒れていた。

11時00分、礼文滝を出発。今度はロープを引いて滝の脇をよじ登る。
また谷底の沢伝いの道を戻ることになる。
遠くにみえていたガスは、この谷にも流れ始めていた。

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 ハイジの丘にもガスが忍び寄ってくる。

つづら折りを登ってまたケルンの所まで戻ってきた。
ここで4人ほどのガイド付きのパーティーとすれ違う。礼文滝まで往復するようだ。

ガイドが私のカメラを見て、
「カメラのレンズは大丈夫ですか?さっきレンズフードが落ちてましたが」
「えっ?」
慌ててカメラを見たが、自分のではなかった。

ハイジの丘もだんだん霞んできた。晴れているうちに往復してこれたので運が良かったよ言えよう。
こんどは礼文林道目指してまた下りたり登ったりの道を行く。

途中で、なるほどレンズフードが石の上にあった。ニコンのレンズフード。私のはキヤノンだしレンズも純正ではないのでね。
落とし主もレンズフードのためにわざわざ探しにくることはないだろうな。
レンズ落としましただったら血相変えて引き返してくるかも知れないが。

再び礼文林道の礼文滝入口まで戻ってきたのが11時52分
戻りは登りだから行きより時間がかかるのかなと思っていたが、戻りも1時間はかからなかった。

雄大な風景や険しい道に登山のような印象を持っていたが何のことはない、ここから礼文滝までの高低差は僅か180mでしかなかった。

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 礼文林道は完全にガスの中になってしまった。

礼文林道は南半分の方が景色は良さそうだが、もう完全にガスってしまって山も谷も白一色になってしまった。
東側の斜面を伝うように海からのガスが流れ込んで来る。今日はもうダメだね。

途中にあるレブンウスユキソウ群生地にはトイレがある。
晴れていればここから元地海岸を見下ろし、利尻富士も見えるスポットなのだろうが、今日は白一色。
ここで用を足して、ガスが晴れないかなあ・・・と期待して柵にもたれて谷を見ていたが一向にその気配はないようだった。

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  レブンウスユキソウ群生地。奥の建物はトイレとレンジャーハウス。

林道とは別に谷の斜面に歩道が設けられて、そこからレブンウスユキソウの花を見ることができる。ちょうど今が満開のようで、緑の中に白い花が点々と咲いていた。

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 斜面に点々と咲く群生地。

薄い雪をまとったようなウスユキソウ。ヨーロッパではエーデルワイスとなる。
ドイツ語でエーデルワイス(Edelweiß)は訳すと『白い貴族』とでもなるのだろうか。

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 薄く雪をまとったようなレブンウスユキソウ(礼文薄雪草)。

白くて小さい花は見るからに弱々しい。
ガスって薄暗いくらいのほうが花には健康的なのだろうか。

この時期の利尻礼文は曇り空やガスが多くて旅行者は落胆させられることが多い季節だが、だからこそ低地でも高山植物が自生する環境になり、花が咲いて私たちの目を楽しませてくれる面もある。

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 礼文林道元地口。

13時08分、礼文林道はここで終わり。道道を下って行けば宿まで20分とかからないだろう。
また意外と早く着いてしまった。
ガイドに載っているトレイルコースの所要時間もまた相当余裕を持った時間になっているので、これで行程を組むと早く着きすぎるのだった。

このまま宿に戻っても13時半、もうちょっと歩いてこようかと町とは反対側へ歩き出す。
もしや、と思って桃岩展望台に行ってみることにした。

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 桃岩展望台に続く登山道から桃岩登山口を振り返る。

桃岩展望台まで登ってきたが、やっぱり何も見えなかった。
こんなガスの中歩こうなんて人もいないようで、ここまで全くの無人。
やっぱり宿に戻るしかないのか。

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 桃岩展望台もガスって何も見えなかった。

展望台までの道沿いはピンクの穂をつけたイブキトラノオが満開。
昨日は晴れていたが今日はガスの中。だけど、日光の下よりもガスってる方が色つやが良いように見える。
写真うつりも全然違っていた。

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 ガスってる方が花は元気そうに見える。

そのまま町まで下ってきて、結局2時半には宿に戻ってしまった。
これで、今回の礼文島行で行きたいところはすべて行ってきたことになる。

もう行くところもないしすることもない。シャワーを浴びて、布団に入ってひと眠りする。


 ◆ 炉ばた ちどり

今日はホッケのちゃんちゃん焼きを食べることに決めていた。
これは『炉ばた ちどり』か『海鮮処 かふか』ということになる。どちらも網の上で炭火焼きにするという礼文島独特のスタイルで出している。

4時半宿を出てちゃんちゃん焼きを求めて店へ向かう。入ったのは炉ばたちどり。海鮮処かふかは漁協直営だが17時にならないと開店しないので。
こっちのちどりの方はちゃんちゃん焼きの元祖らしい。今時期ならば外まで行列ができるほどの有名店だが、さすがに今年は閑古鳥だろう。

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 ちゃんちゃん焼発祥とされる炉ばたちどり。

店に入ると小あがりの炭焼き用のテーブルが何卓か、椅子の大テーブルそれにカウンター。先客は観光客の夫婦が1組、地元の兄さんらしい2人がカウンターでビールジョッキを手に話をしていた。

出てきたとうさんにちゃんちゃん焼きが食べたいと言うと、
「ちょっとお時間いただきますよ」
とのこと。
炭焼きだからいろいろ準備があるんだろう。別に急ぎじゃないし早く来過ぎたのでゆっくり待たせてもらう。

炭焼きの準備が出来たテーブルに着いて、ちゃんちゃん焼きと生ビールを頼む。
ホッケは大ぶりのもの。これに特製の甘味噌とネギを乗せて、下からの炭火で焼く。
ビールをチビチビやりながらしばらく待つ。

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 名物のホッケちゃんちゃん焼き。

焼けてきたら結構忙しい。生ビールは空になったのでもう1杯頼んだ。
炭火に落ちた脂で燻されたホッケと味噌を絡めながら食べるとビールによく合う。
身を食べ終わったらひっくり返して身の方を焼く。こうすると皮がパリパリになって美味いのよ。

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 尻尾の方から焼けてきたら、ほぐして味噌を絡めて食べる。

カウンターの方から地元の兄さんたちの会話が聞くとは無しに聞こえてくる。

「俺、ビール飲めないんだ、この間の健診で痛風(つうふう)だって言われてさ」
「ああ、俺も痛風だって言われたよ」
「酷いのになるとビッコ引いて歩くようになるしね」
「足に来るのはまだマシで、手首に来るとヤバいらしいよ」

何だよ、揃いも揃って痛風かよ。
島の男たちの悩みは痛風らしかった。

ネーちゃんいる飲み屋も無いし、飲むしか楽しみが無いしね

こっちまで泣けてくるような島の男たちの愚痴 (´;ω;`)

「この夏はさっぱり出ないねえ、こっちゃあノルマもあるのに」
「本土から車を航送してくるだけ赤字だよ」

レンタカー屋に勤めているらしい兄さんの愚痴。
これが島訛りで喋るので、余所者の私には寄席のように滑稽に聞こえる。

「電話で予約受けたら、なんでそんなに高いんだと文句言われてよお」

「前の客がマット泥だらけにしてきたんで、洗って次の客に貸したら、なんでマット濡れてるんだとまたクレーム来てさあ」

「この間なんか、消費者センターまでクレーム行って」

島の男たちの悩みは尽きない

そうしているうちに、店内のテレビは東京都でコロナ患者が107人出たと報じていた。

こりゃ終わらんべ、また旅行自粛がはじまるわ

遠い東京の出来事も、観光に生きる礼文島にとっては他人事ではないのだった。

そろそろ帰ることにする。
ホッケのちゃんちゃん焼きと生ビール2杯で2150円
2千円分は礼文島プレミアム商品券で支払う。
残りは3千円分。これは明日土産物でも買うことにしよう。

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 7/2、本日の歩数(スマホの歩数計)

今日が一番歩いた。
スマホの歩数計を見ると今日の歩数は35,998歩。距離にして27.4km

もう目的は果たしたので、明日は朝のフェリーで稚内へ戻る。
7/1からはコロナ運休していた特急サロベツも運転再開しているので、夕方には札幌に戻れる。

7月2日(木)の費用
費目場所金額(円)
食費(飲料)香深フェリー(タ)160
食費(昼食)セイコーマート319
食費(外食)炉ばた ちどり(現金分)150
7/2合計629

6へつづく


posted by pupupukaya at 20/07/24 | Comment(0) | 道北の旅行記
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