2006年5月13日(土)
今日も朝から天気が良い。7時半に旅館を出る。
朝から日差しが強く、歩いていると汗が出てくるほどだ。
途中の久茂地川の上には、こいのぼりがたくさん吊るされていた。その上をモノレールが通過して行く。
ここから、離島フェリーの発着する泊港までは国道58号線を歩いて10分ほど。フェリーターミナルは『とまりん』といって、ショッピングやホテルなどが入る複合施設となっていて、港にむかってそびえ立っている。
こいのぼりがたくさん吊るされた久茂地川。
沖縄まで行ったならば、那覇市内だけではなく、離島へも行って見たい。本当は宮古島や石垣島の方に行きたかったのだが、日程や予算の都合でそこまでは行けない。那覇から日帰りで行ける本島周辺の離島へ行こうと朝早くから出てきたわけである。
東シナ海の中に、慶良間列島、粟国島、久米島、渡名喜島といった島々があるが、今向かおうとしているのは渡名喜(となき)島という那覇の沖合58kmほどにある、さんご礁の離島である。金曜と土曜に限って那覇からこの島へ日帰りのできるダイヤが組まれる。
とまりん1Fの久米商船の窓口で渡名喜島までの往復乗船券を買う。待合所の売店もすでに開いていて、のぞいてみると弁当も積んであったので、350円の弁当とさんぴん茶、それにサーターアンダギーを一袋買う。弁当を買うとなぜか茹で玉子を一個サービスしてくれた。
フェリー待合室の売店。
那覇から渡名喜島への往復乗船券(4,010円)。
久米島行のフェリー『ニューくめしま』。
港の先には久米島行きのフェリー『ニューくめしま』がいた。タラップの前で乗船券を渡して船に乗り込む。客室は飛行機のような座席が並んでいて、こちらは定員61名。ほかに、桟敷席や甲板にもベンチが並べられている。桟敷席は人気があってすでにふさがっていた。
船上から見たフェリーターミナルとまりん。
船内の座席の座り、とりあえずさっき買った朝食の弁当を開く。
350円の弁当はスパムとメンチカツ、卵焼、沖縄ソバの焼そば、サバの照焼などのおかずがご飯の上に直接並べられている沖縄スタイルで、なかなかボリュームがある。
弁当を食べ終わったころ、出港となった。時刻は8時30分。渡名喜島までは2時間15分の船旅が始まる。
デッキから見た乗船タラップと見送りの人。
デッキに出ると、日差しは強いが海風が涼しい。
船は徐々に岸壁から遠ざかってゆく。澄んだ青空とまさにマリンブルーの海。しばらくすると右側に無人島がいくつか見えてくる。双眼鏡で見ると船着場なんかも見える。那覇から近いこれらの島は、那覇から日帰りツアーもあるようだ。
青空に映える信号旗。
船内の様子。
海は波もなく穏やかなのだが、小さい船のせいかわりと揺れる。船内の乗船客は、ぐったりと横になる人と、甲板で元気にしている人との二手に別れている。お年寄りの方が元気は良いようだ。
左手には海から突き出たような荒々しい慶良間諸島が続く。
たまには船旅もいいものだ。
慶良間列島を見ながら船は進む。
甲板にも座席が並ぶ。海風が心地よい。
渡名喜島がだんだん近づいてくる。
南の海風に吹かれながら島を眺めたり写真を撮ったりしながらの船旅は楽しく、あっという間に2時間は過ぎた。目的の渡名喜島がだんだんと近づいてくる。
渡名喜島はさんご礁の島で、島を取り囲むように浅瀬が続いている。港までの船が通るところだけ深くなっていて、船はそこを慎重に進む。
フェリーは渡名喜港に寄港する。
渡名喜島で下船する人は20人ほど。見ただけではよく分からないが地元の人が多いようだ。
渡名喜は空港が無く、那覇からの便は1日1回この船のみ。港には那覇からの荷物を受け取りにきた車や客を迎えに来た民宿の車が待ちうけている。
ぐらぐらと揺れるタラップを渡って、下船する。すぐ前にはフェリーターミナルの建物があるが、ほかには何も無い。客を降ろしたフェリーはしばらくすると久米島へ向かって出港していった。
渡名喜港の下船風景。
海の上は涼しかったが、陸地にあがると暑い、日光が刺すように照りつける。
フェリーターミナルの近くには村役場があるだけで、ほかには商店も食堂も何もない。港の前の道路に横断歩道と押しボタン式の信号機があって、船上から見るとそれらしい町のように見えるが、車などほとんど通ることはない。
渡名喜島の2万5千分の1地形図をプリントして持ってきたので、それを片手にとりあえず歩き出す。
村内はフク木の垣根と白砂の道が続く。
さて、どこへ行こうか。とりあえず島の反対側の浜まで行ってみようと歩き出す。集落の道は白砂が敷き詰められていて、道の両脇にはフク木の高い垣根が続いている。緑濃いフク木の間から赤瓦屋根の古い民家、そして澄んだ青空。
この集落は国の重要伝統的建造物保存地区に選定されている。
ああ、まぎれもなくここは沖縄の離島だ。
念願がかなってただただ感激である。
掃き清められた白砂の道は歩く人もいなく静まりかえっている。背の高いフク木に囲まれて木陰になっている道は涼しい。
背の高いフク木に囲まれた古い家並。
木陰の道を抜けて港と反対側の東(あがり)浜に出る。ここもやはり人影は無い。白砂の海岸は引き潮で、沖の防波堤のところまで干上がっていた。
島内あちこちに『ハブに注意』の看板が。
東浜近くから山を登る階段があり、上にはあずま屋らしいものが見えたので階段を登ってみる。階段を登って山の中腹あたりにさっき見えたあずま屋があり、ちょっとした展望台になっていた。
ここから、濃い緑のフク木に囲まれた島の集落がほぼ一望できる。あずま屋のテーブルにはこんな一文が・・・
“夕日に向いて
この丘から
一人の愛を
誓い 祈れば
必ず 願いは
かなう”
マリンブルーの海も美しいが、ここから見える夕日はさぞかし美しいのだろう。
あずま屋から島の集落を見る。
階段はさらに上まで続いていて、NTTのアンテナの横を通り一番上まで登ると小さな祠があった。看板には『渡名喜里遺跡』とある。
゛「里殿」「ヌル殿内」の拝殿があり、島内随一の信仰地であります″と説明文があり、古くから島の神聖な場所のようだ。
よく分からないがとりあえずお参りしておく。ちなみにこの場所は、国土地理院の地形図ではなぜか神社の記号で載っている。
里遺跡の祠。
東(あがり)浜を見下ろす。
山を下ってまた集落の道を歩く。
集落はどこも絵になるような風景。
門柱のシーサー。
11時半過ぎ、またフェリー乗り場まで戻ってきてしまった。
昔ながらの沖縄の離島風景に感激したが、どこか行く当てがあるわけではない。
帰りの船は15時45分発、まだまだ時間はたっぷりとある。
地図を見ると、島の南側にある山道を辿ると島を1周してこられるようだ。せっかくだから歩いて行ってみよう。
今度は西側の海岸にある道路を歩く。
集落を抜け、港を過ぎると道路は岩肌が露出した荒々しい山裾に沿って道路が続いている。眼に入るのはコンクリートの道路と白い石灰岩の山肌、干上がった海岸ばかり。
日を遮るものは何も無く、とにかく暑い。
そびえ立つゴミ焼却場の前を過ぎたあたりからきれいな砂浜が広がる。海岸の岩に腰かけて一休み。海岸には人っ子一人いない。
足元の白砂はサンゴのかけららしいものが一杯。波は穏やかだが、すこし沖のサンゴ礁から外海になるあたりは白波が立っていた。
引き潮で干上がった海岸。
白砂が美しい呼子(ユブク)浜の海岸。
海岸沿いの道が途切れるあたりから今度は山道を登ってゆく。クネクネと曲がりくねる細い舗装道路を登って行くと、山の上に展望台があったのでそこでまた休憩する。
いやはやまったく暑い。
渡名喜園地の展望台。
展望台は三面海に囲まれて眺めが素晴らしかった。
那覇で買ってきた生ぬるいさんぴん茶を飲みながらサーターアンダギーをほうばる。
ほかに誰もいない展望台のベンチに腰かけて、どこまでも青い海と遠い島影を見ていると、一国の王様になったような気分になってきた。
展望台には望遠鏡(無料)もある。
沖合にぽっかりと浮かぶ無人島の入砂島。
北側は荒々しい風景。
海を眺めながらボーっとしていた。屋根の日陰に腰かけて風に吹かれているといつの間にか汗が乾いていた。フェリーの時間さえ気にしなければ日暮れまでずっと居たいくらいここが気に入ってしまった。
今度は島の東側の方へ出発する。
展望台を出るとき、壁面にこんな一文を見つけた。
”この島の山や海 そして集落風致には
沢山の数々の思い出がある
寄る年並みに 里心 増さてィ
眺めてィん 飽きらん 我が生まり島
変わるなよ 姿 幾代までィん
幾世代にも渡たり そこに住み 働き
支え合っている 村民が大きく
躍動することを祈り 願います”
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