2011年急行はまなすとはやぶさ号旅行記

2020年GW真っ最中ですが、新型コロナウイルスによる外出および旅行の自粛により、せめて旅行気分を思い出そうと過去の画像から旅行記を作成しています。
今回は2011年、前回の記事2007年と同様に急行『はまなす』で札幌を夜に出発し、新幹線に乗り継いで東京まで行った時の旅行記になります。



2010年12月に東北新幹線が新青森まで延伸開業した。ただ、ダイヤ的には従来の『はやて』を延長しただけで、急行『はまなす』乗り継ぎでは下りが東京発の時刻が1時間繰り下がったが、上り東京行のダイヤは変化がなかった。
それが2011年3月5日のダイヤ改正は新たに『はやぶさ』号が登場することとなる。最高速度300km/hで東京〜新青森間の所要時間が3時間10分にまで短縮されることになる。
新設される2往復のうち上り1本は『はまなす』との接続列車となり、今まで東京着が9:51→9:24着と大幅に早くなるのだった。

『はまなす』を愛用してきた私にとって、そんな画期的なダイヤと新たに走り始めた『はやぶさ』号に乗ってみたいと思っていた。しかし、その1週間後に東北地方は未曽有の大災害が襲うことになり、鉄道を含め交通網は寸断することになる。

 ★  ★  ★

今年(2011年)の3.11以来、日本中が暗いムードだったのだが、GW頃には明るさを取り戻すようになっていた。この頃には東北新幹線も全線復旧、被災地ではまだまだ大変な状況が続いていたが、それ以外の地では普通の生活に戻っていた。
それとは無関係だが、この年は自分にとっては厄年のような1年だったと後になって思うようになった。

重い足枷がようやく軽くなりかけていた頃ではないかと思う。私は何を思ったか、9月の末に旅行をしている。
いままでずっと、旅行に出るたびにホームページに旅行記をアップしていたが、この頃はそんなモチベーションもすっかり失われていて画像以外に記録が残っていないのだった。

出発日は9/30、きっぷの購入日は9/26となっており、週末に突然思い立っての旅行ではなかったようだが、この年の9/23から東北新幹線の全線で速度規制が解除され、震災前の通常ダイヤに戻ったことを知って、同年の3月から東京〜新青森間に登場した『はやぶさ』号に乗りたいと思って駅にきっぷを買いに行ったのだろう。

札幌から東京までの行程は以下のようになる。

9/30 札幌 22:00【はまなす】翌5:40 青森
10/1 青森 5:46【つがる2】5:51 新青森
 〃  新青森 6:10【はやぶさ】9:24 東京

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今回使用したきっぷは『東京往復割引きっぷ14,500円。2010年に札幌・東京フリーきっぷ』に代わって発売開始になった。乗車券のみの効力で、特急券等は別に買うことになるが、行きを『はまなす』(自由席)→『はやぶさ』、帰りを『はやて』→『はまなす』(自由席)とすると28,760円となり、かつての『札幌・東京フリーきっぷ』29,500円よりも安くなることになった。
逆に『北斗星』等を利用する場合は寝台券のほか、青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道の運賃・料金が別途必要になるために、かなりの値上がりとなっている。

3月以来念願だった『はやぶさ』の乗車と、早くなった東京着の旅に出発する日となった。

 ★  ★  ★

2011年9月30日(金)

金曜日に仕事を終えた後、自宅に戻って支度をしてから乗車できる夜行列車はありがたい存在だ。
今日もいつものように夜の札幌駅へやってきた。自由席の夜行で旅立つことができるのは、この『はまなす』が唯一の列車となって久しい。

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金曜で月末の夜とあって、どのホームも人が多い。
それに反するかのように急行『はまなす』の発車する5番ホームは乗車口の前で並ぶ人も少なく別世界のようだ。
21:40近くなって列車がゆっくりと入線する。ドアが開いた車内に乗客たちが乗り込むとホームは閑散としてしまう。
キヨスクもそば店もすでにシャッターが閉まっている。駅弁の立売もいない。人影の消えたホームに客車のディーゼルエンジンの音だけが響く。

昼間の特急が表玄関とすると、こちらは裏玄関。人知れずひっそりと旅立つような佇まいに旅情を感じるのは私だけだろうか。

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『はまなす』で使用されるこの客車は1972年の製造だから走り続けて38年になる。最初は本州で走り始め、80年代初めに北海道に渡ってきた車両だ。
その際に折り戸を引き戸に変更するなどの改造を受けている。以来道内夜行列車や昼間の急行『ニセコ』『宗谷』『天北』といった列車にも使われた。
道内の過酷な気候の中で走り続けたせいか、車体の凹凸が目立つ。
2015年末を予定している北海道新幹線開業時に廃止・廃車となることは確実だ。

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発車20分前の車内はこの通り。
東室蘭までは特急すずらん系統の最終列車としての役割があるので発車時刻が近づけばもう少し乗ってくるのだろうが、シーズン以外の乗車率は大体こんなものである。

前の座席を回転させてボックスシートにする。深くリクライニングするドリームカーもいいけど、空いていればこちらの方が快適。足も延ばせるしね。

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発車したらまず1杯。
いつもは乗る前にビールやワンカップを仕入れてくるが、今夜はウイスキーをスキットルに入れて持ってきた。売店で買った水をチェーサーに交互に飲む。

快速『ミッドナイト』時代はウイスキーの小瓶を愛用していた。がら空きのボックスシートの自由席、車両はキハ56だった。タバコの煙をプハ〜〜〜。懐かしいね。タバコはもう吸いたいとは思わないが。

東室蘭を出たあたりで身体をくの字にして、カバンとひじ掛けを枕にして就寝体制。昼間は働いていたのでこんな姿勢でもすぐに眠れる。ガタンゴトン・・・とレールの響き。
特別な時間が過ぎてゆく。

 ★  ★  ★

2011年10月1日(土)

気づくと夜が明けていた。

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青函トンネルを抜け、車窓には陸奥湾が見えている。
目覚めると遠い地に運ばれている。夜行列車というものは、いつ乗ってもいいものだ。

やがて到着案内放送が流れ、各地への接続列車を聞くともうすぐ終点青森である。

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青森到着。
ここから東北線で八戸や新幹線方面に向かう人、奥羽線の弘前・秋田方面に向かう人が分かれることになってたのだが、今は新幹線に乗る人も奥羽線の特急に向かうことになる。秋田行の特急『つがる』が新青森までの接続列車となったからだ。

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ひと駅だけだが特急つがる2号で新青森へ。車内は立ち客がいるほど混んでいた。
『はまなす』を新青森まで延長すれば乗り換えが解消できるが、電車列車の『白鳥』と違い機回しの必要もあることから実現は難しいだろう。
せめて同じホーム同士で乗り継げるように改善してくれれば乗り換えも楽になるのだが。

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立っていても新青森まではわずか5分。
この駅に来たのは今年で2回目になるが、前回は在来線同士の乗り換えだった。

階段を登ってから折れ曲がった通路を歩く。何だかわかりにくい駅だなという印象を持った。

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乗り換え時間は22分。駅そばを食べるくらいの余裕はある。
そばにしようか駅弁を買おうか迷ったが、結局駅弁を買った。

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9月23日から通常ダイヤに戻ることを告げた横断幕。
世の中もだんだん震災前に戻りつつある。

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1日2往復の運行を始めた『はやぶさ』号。そのうち1本だけだが、『はまなす』の接続となったのはありがたい。

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E5系車両の先頭写真。
新幹線と言えばそれまで白を基調としたデザインだったが、こちらはグリーンを基調としたデザイン。
新幹線も新時代になったのだなと思わせる。

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隼をモチーフとしたロゴマーク。

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指定席の車内はこの通り。
この先、盛岡、仙台といった大量乗車駅が控えているので、始発駅での乗車率はこんなものなのだろう。

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新青森→東京の新幹線特急券。

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車内はすいているので快適ではある。
駅弁とビールで朝から1杯飲(や)らせてもらう。
休日の鉄道旅行だけの特権である。
コンコースの売店で買ってきたのは『しゃけいくら釜めし』。イクラと鮭の親子のコンビはこれぞ秋の味覚。

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新幹線の新線区間というのはトンネルばかりでつまらない。
長いトンネルを抜けるとすぐに高架橋。高い防音壁が続くので眺めも良くならず。
新幹線というのは本当に移動のための手段だと思う。

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思った通り仙台でたくさん乗ってきた。ここで車内の乗客も倍くらいに増えたのではというくらいだ。それでも席には余裕がある。平日ならばもっとたくさん乗ってくるのだろう。仙台発7:49で所要時間1時間35分はいかにもビジネス向けというダイヤだ。この4号が『はまなす』の接続を持ったのはたまたまで、実は仙台〜東京間のビジネス需要のために設定されたのではという気がする。

旅情あふれる夜行急行も遠くなり、ここまで来れば東京圏の通勤電車の空気が漂い始める。

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東京着、9時24分

札幌を夜22時に出発して、翌午前9時半前には東京駅に立っているのだ。所要時間にして11時間24分。
2回の乗り換えが煩わしいが、ダイヤだけ見れば普通に使えるルートではないか。

飛行機でも朝イチの千歳発に乗っても羽田着は9:05となる。そこから移動時間を考えるとわずかだが鉄道の方が『早い』ことになる。
東京往復割引きっぷを使えば往復でも3万円以内、安く上げたい旅行や急な所要などでも十分に使える。

ついに札幌〜東京間でも飛行機と互角に戦えるようになったんだなと思った。
だが、そう思ったのは私が鉄道ファンだからであって、JRとしても特に宣伝していると言い難く、一般に知られているわけでもない。また、夜行の座席利用など、一般人からすれば敬遠されるのはよくわかる。

新幹線の開業や新列車ばかり華々しく報道されるが、急行『はまなす』も人知れず進化しているのだった。
参考までに下りの『はやて』→『はまなす』利用の東京〜札幌間の乗り継ぎダイヤも上げておく。
(2011年10月現在)

東京 18:56【はやて】22:24 新青森
新青森 22:34【普通】22:40 青森
青森 22:42【はまなす】6:07 札幌

 ★  ★  ★

東京着時刻は、のちに『はやぶさ』スピードアップにより、東京着は1分早まって9:23分着となっている。

しかし、この画期的なダイヤは、あまり知られることもなかったようで、世間はともかく、鉄道ファンの間でも日の目を見ることはなかったようである。
私自身、このダイヤを利用したのは今回の1度だけであった。

2016年3月26日の北海道新幹線開業のダイヤ改正に先立つ同年3月20日、急行『はまなす』の終焉とともに姿を消すことになる。

2020年現在、2030年度の開業を目指して北海道新幹線札幌延伸工事が進められている。
『はやぶさ』号の最高速度320km/hからさらに360km/hに引き上げ、東京〜札幌間4時間半を目指す取り組みも始まっている。

10年後の札幌延伸ダイヤがどのようになるのかはわからない。
しかし、少なくとも東京駅に9時台に着くレコード(記録)が破られることは無いと思われる。

飛行機よりも東京に着く画期的な『はまなす』→『はやぶさ』の乗り継ぎダイヤ。北海道新幹線開業の陰に隠れてひっそりと消えて行った。

でもそんな韋駄天ぶりを私は忘れない。

急行『はまなす』の旅情と合わせて、この画期的なダイヤを記録に残すべく当ブログ記事とさせていただく。

おわり


posted by pupupukaya at 20/05/03 | Comment(0) | 東日本の旅行記
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