札沼線のラストランは自宅で見送ろう

2020年5月6日を最後に廃止となることが決まっている札沼線 北海道医療大学〜新十津川間
私が最後に乗車したのは去年(2019年)の10月12日、臨時列車運転の時だった。
あれから、もう1度くらい乗りに行こうかなとも思っていたが、なかなか重い腰が上がらず、そうこうしているうちにこんな情勢になってしまい、もう乗りに行く気はない。

その理由は新型コロナウイルスである。政府あたりは当初春くらいには終息するようなことを言っていたし、私も含め誰もがそう思っていただろう。ところが4月になり、これからが感染拡大の本番となってきている。
政府は4/7になり、ようやく4都府県に緊急事態宣言を行った。5/6までの効力になる。

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 2020/4/12夜現在の感染者数推移グラフ
 (データとグラフで見る「新型コロナウイルス」|日テレニュース24より引用)

そんな中、JR北海道のHPに4/3付のニュースリリースで、『札沼線 石狩当別〜新十津川間の運転計画について』という記事が掲載された。
新型コロナウイルス感染拡大の予防対策として、ゴールデンウィーク中の5/2(土)〜5/6(水)は石狩当別〜新十津川間の全列車を指定席にするというものだ。

空調もなく窓を開けない限り換気も悪い気動車に満員の乗客を乗せて1時間以上も走るというのは、まさに『換気が悪く』『人が密に集まって過ごすような空間』『不特定多数の人が接触するおそれが高い場所』という3つの条件を満たしてしまい、クラスター(集団)感染リスクが大変高くなる。

しかし、列車は指定席としても、直接駅へラストランを見送りに来る人たちもいるわけで、新十津川駅の狭い駅舎やホームが人であふれることもありうるわけで、どうするんだろう。
この時勢で、まさか駅頭で廃止イベントを行うなんてことはしないと思うが、それでも道内外から葬式鉄が駆けつけてくることは想像に難くない。

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 ホームや駅舎が狭く、密集・密接は避けられない(2019/10/12新十津川駅)

また指定席はみどりの窓口での発売となるのなら、例によってネットオークションに不当な価格で出品する、いわゆる転売ヤーというのがまた出てくるんだろうなとも思っていた。

昨日(4/11)から札沼線では浦臼止まりの列車が1往復新十津川まで延長され、土日祝は1日2往復体制となる。乗客も分散されて混雑も緩和されるのだろうが、1箇所に大勢の人が集まることには変わりがない。

以下のリンクはどうしん電子版の記事。UPされた画像を見るとマスクをしていない人も多いようだ。



今週末から臨時の延長運行も始まり、着々と運行最終日に向かっている一方でこんな記事も出てきた。

 * 札沼線「道医療大―新十津川」 最終運行25日に前倒し JR検討 04/11

JR北海道は営業最終日を5/6から4/25(土)に前倒しする検討を始めたということである。

 〜以下同記事の一部引用〜

“大型連休中に道内外の鉄道ファンが沿線に押し寄せ、新型コロナウイルス感染拡大の危険性が高まることを避けるため。最終列車の乗客は沿線の4町民限定にする方向で調整する”

最終列車は沿線4町民限定とし、運転日は4/26とするか5/6とするかはこれから検討することになるということだ。

 〜以下同記事の一部引用〜

”連休中は鉄道ファンが沿線駅に車で駆け付け、列車を撮影したり、駅舎に集まったりすることも予想され、JRは全席指定にするだけでは、感染拡大を防ぐことは困難とみて、最終運行日前倒しの検討に入った。”

ラストランは静かに、せめて地元住民だけは最後のお別れ乗車をさせてあげたいということはよくわかる。
ところが『道内外の鉄道ファンが』というあたりが一番懸念されるところ。

列車の乗客は地元招待客だけとしても、ラストランを見送りに駅やホームに大勢の人が集まる。沿線には大勢の撮り鉄がやって来る。
緊急事態宣言の都府県からもやって来るのだろう。『不要不急の旅行は控えて』と政府は言っているが、強制力は全くないので来るのを拒むことはできない。(彼らは不要不急ではないと言い張るのかも知れない)

いや、そんなことより沿線4住民限定の最終列車も中止すべきではないだろうか。
現在は大から小まで、ありとあらゆるイベントや集まりが中止となっている。今年は札幌のYOSAKOIソーランも中止になった。個人でも、冠婚葬祭ですら中止したり少人数で済ましたりしなければならないほどだ。

乗客は4町民限定とはいえ、人が集まる以上簡単ながら催しがあるはずで、そのために乗客以外の人が大勢集まることになる。駅前に仮設テントを建てて関係者の挨拶くらいはするのかもしれない。
沿道には道内外から撮り鉄が大勢やってくることも考えられる。

4月25日をもってスパッと終わり。いや、もう1日前倒しして24日金曜日が最終でいいのではないか。
廃止に先立って、4/1からすでに代替バスの運行が始まっている。一般の利用客はそちらにシフトできるので、最終日が早まっても困ることはないと思われる。

新型コロナウイルスは東京都での感染者が急激に増加している。緊急事態宣言の出ている大阪や愛知などでも感染増加が始まっている。北海道でもしばらく収まっていたが、再び増加傾向が始まっている。
その上に、最終列車運行イベントでクラスター感染なんてことになったらどうするのか。
都会から持ち込んだウイルスで、農村地帯のじいちゃんばあちゃんを殺す気か。

もうやめよう。
もう終わったんだ。代替バスもすでに運行している。もういっぺんくらい名残に乗っておきたかった人もいるだろうけど、それを今やらなきゃならないことなのか。自分くらいはという小さな欲のために、自分だけではなく他人の命を落とすことだってありうるのだ。
新型コロナウイルスを甘く見てはいけない。

ゴールデンウィークに最後の札沼線に乗ろうと思っていた人も多いだろう。せめてお別れに行きたいと思う人も多いだろう。
私だってそうです。

でもやめよう。本当にやめよう。

せめて留萌本線増毛駅の最終日のようにニコ生あたりで中継をやってくれれば、自宅で最終列車を見送れるのだが。

札沼線の最終列車は、自宅で、心の中で見送ろう。

私ごときがこんなことを主張するのは身の程知らずとは重々承知の上ですが、一刻を争うようなコロナウイルス感染急増とあって、あえて主張させていただきました。

最後に過去に撮影した札沼線の画像をいくつか貼って札沼線とのお別れとさせていただきます。

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 新十津川駅で発車を待つ3往復時代の最終列車(2016/3/23)

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 片手で数えられる程が毎日の乗客。新十津川行5433D(2016/3/23)

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 南下徳富〜下徳富間。一面穂波の長閑な車窓(2016/10/2)

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 コスモスの花が揺れる新十津川駅ホーム(2016/10/2)

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 1日1往復の最終列車は園児たちに見送られ(2016/10/2)

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 またきてね(2016/10/2)

合掌。


posted by pupupukaya at 20/04/12 | Comment(0) | 北海道ローカル線考
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