◆ サンタクロース村を後に
13時を過ぎ、雪は止んだようだが風が強い。土産物屋も一通り見たしもう見るものはない。
やはり男の一人旅で来るようなところではなかったな。
こことは別にサンタパークというのもあって、そっちは元核シェルターだった人工洞窟を利用して造られているとか。
そっちの方が面白そうに思えてきた。かといってもう行く気にならない。
ここサンタビレッジからは8番の路線バスで市内に向かう。土日は1時間に1本の本数で、午後からしか運転しないあたり地方の車社会を思わせる。
バス停はインフォメーション棟を国道側へ出て右の方に行くと、吹きさらしの広場にバス停だけが立っている。時刻表も貼ってあるのでここで待っていればいいのだろう。しかし外に立っているのは寒い。エントランスの風よけ室でバスが来るのを待った。
バスのマークのポールが立つだけのバス停。
ところが、13:30が近くなっても一向にバスが来ない。
インフォメーションの上にもバス停はこっちと矢印で表示してあるので間違いはないと思うのだが。
13:30になって8番の表示を掲げたバスがやってきた。
ここが始発なので早めに来ているのかと思っていたが、ぎりぎりに来るようだ。
8番、サンタ村〜ロヴァニエミ駅の路線バス。
バスは乗るときに運転手からチケットを買う。このあたりは長距離バスも路線バスも同じシステムだ。
降りる停留所を告げて料金を払うと、運転手は機械を操作してレシートのようなチケットをくれる。片道3.5ユーロと結構高い。
行先は「セントラルシティー」でも通じるようだ。
中国人の客はやはりスマホを見せてチケットを買っている。
客は自分以外では中国人が2組とそれ以外が2組。サンタ村の賑わいとは逆に空席ばかりのまま発車する。
この路線バスとは別に『Santa's Express』というバスもあって、そっちは空港やサンタパーク経由で中心部や鉄道駅とを往復している。観光客はそっちの方を利用するのかもしれない。
国道に出てすぐ停留所があって、バスはそこにも停まる。イナリからのバスを降りた場所だ。ここからも観光客が何組か乗ってきた。
8番バスは国道はまっすぐ行かず、住宅地の中の道路を回り道しながら、途中の停留所では地元の乗客を何人か拾って中心部へ向かう。
森に囲まれた住宅地の中を行くバス。
中心部の手前にある停留所で地元客は一斉に降りる。私もここで降りるはずだったのだが、降りそびれてしまった。
車内放送も、バス停に停留所名の表示もないので、うっかりすると乗り越してしまう。
まあいいや、最悪終点まで行ってしまっても、鉄道駅なので歩いて戻ってこられる。
次の停留所で、運転手は後ろの中国人たちに向かって停留所名を叫んだ。さっきスマホで見せていた停留所だろう。
彼らと一緒にバスを降りた。
ああ、なんだ、見覚えのある場所。
初日に来たコスキ通りとの交差点にある停留所だった。
再び戻ってきたコスキ通り。
◆ ロヴァニエミの町
コスキ通りは歩行者天国の商店街になっていて、ロヴァニエミの一番賑やかなところだ。
道を歩く人は少なく、いても観光客らしい人ばかり。
すこし行ったところに大きなショッピングセンターがあるので、地元の人はそっちに行くのだろう。外を歩いても寒いしねえ。
ロルディ広場と屋台。
デジタルの時計塔があるロルディ広場がロヴァニエミの中心。
クリスマス市の名残か、屋台がいくつか並んでいた。歩きながらチラ見したが、土産物ばかり。
土産物だけはさっきのサンタ村でさんざん見たので、食傷気味である。
午後2時を過ぎるともう暗くなり始めた。もう観光するのも面倒になった。ホテルにチェックインして、あとはショッピングセンターでも覗いていよう。
ホテルはショッピングセンターからコスキ通りを歩行者天国とは反対側に500mほど歩いた場所にある。
鉄道駅へも1.4kmなので歩いて行ける。場所的にはまずまず。ていうか、ここしか空いてなかった。
レセプションに行くと、チェックインは4時からという。係のおばさんは「ビコーズ、ルームイズクリーニング」と言って掃除の恰好をした。
掃除中じゃしょうがないね。4時まで2時間近くどこかで過ごしているしかない。
背中に背負っているバックパックだけ預けてまた外に出た。
とりあえずショッピングセンターへ行ってみる。1階はスーパーのK-スーパーマーケットや国営酒屋のAlkoが入っている。これはあとでまた買い物に来ることになる。
ATMがあったので、お金を引き出しておこうとしたが、少し考えてやめた。
フィンランドに着いてから現金を使ったのは初日の電車のチケットとその翌日のコインロッカーとトイレ代のみ。
あとは全部クレジットカードで事足りていた。この先もおそらく現金を使うことはないだろう。
土曜日ということもあるのか、結構混んでいる。2階にも別のスーパーが入っていた。同じショッピングセンターに普通のスーパーが2店同居しているのも珍しい。本屋があったので覗いてみる。日本の漫画が人気で、フィンランド語に訳されたMANGAが並んでいると聞いていたのだが、そういうのは見当たらなかった。
一通り見て回ったが、どこか店にでも入らないと座って過ごせるような場所はなかった。
博物館があったなあ。そこへ行ってみるか。
一応出発前にここもマークしておいてある。寒いし面倒だからヤーメタにしていた。
アルクティクムという博物館。地図で見るとここから600mとある。すっかり暗くなった雪道を歩いてそこへ向かった。
宮殿のように見える正面は、古そうに見えるが開館は1992年と意外と新しい。
観光バスが何台か停まっている。そこから階段を下りてエントランスへ。
宮殿のようなアルクティクムの正面。
入場料は13ユーロと高め。カードリーダーにクレジットカードを差すと、なんとユーロとJPYの選択画面になった。JPYを選択すると1629円の支払いとなった。
@125.3円のレート。同日の別のクレジット払い請求を見ると、ユーロ払いのは@125.2円となっていたので、ユーロ払いを選択した方が若干お得だったようだ。大した差額ではないけど。
中に進むと、天井がガラス張りになった真直ぐな廊下が続いている。その両脇に展示室が並ぶという構造。
北極についての科学の展示がある北極圏センターと少数民族やラップランドの歴史を展示したラップランド地方博物館からなる。
最初に入ったのは北極やオーロラについての展示。
北極海の氷の衛星画像を並べ、氷が年々減少しているのを図示したコーナーは環境問題について取り上げているのだろう。
英語の説明文など読まなくともそれくらいはわかる。
ここも案の定というか中国人だらけ。客の半分はそうじゃないかと思う。
さすがロヴァニエミは観光都市だけあって、貸切バスでやってきた団体さんが多い。
同じ人たちを見ていても、イナリ村やそこへ行くバス車中で見た人は品があったなあと思い出す。
オーロラを上映しているプラネタリウムもあって、そこは大人気のようだった。
廊下の両側に展示室が並ぶ。
続いてはラップランドの歴史や自然についてのコーナー。
蝋人形で昔の生活を模したコーナーがあって、こういうの結構好きだ。
北極コーナーの方は1枚も撮影していなく、画像があるのはラップランド博物館の方ばかりだった。
ラップランド地方の昔の生活を再現したジオラマ。
ラップランドに暮らす男たち。
ラップランドの歴史で避けて通れないのが第二次世界大戦である。
1つはソビエト連邦がフィンランドに侵攻した冬戦争。侵略するソ連軍に対して、フィンランド軍による抵抗は多くの犠牲を出しながらも善戦し、『雪中の軌跡』とも呼ばれた。しかし結局は領土の一部はソ連に奪われることとなってしまう。
2つ目がラップランド戦争。
冬戦争の休戦協定の条件としてフィンランド国内のナチスドイツ軍を追放することがあった。これを巡ってフィンランド軍とドイツ軍の衝突が起こると、ドイツ軍は焦土作戦を取り、ラップランドの町を焦土にしながらノルウェー北部へと撤退することになる。
ロヴァニエミの町も戦争に先立ってドイツ軍によって徹底的に破壊されてしまった。
一方、住人はそれに先立って全員避難しており、これによる犠牲者はいなかった模様。
〜以上の説明はWikiのを要約したものです。
ということから、戦争のコーナーもある。
英語の説明文までじっくりと読んできた。ていうか、前の客が長いんだよね。1つ1つをじっくりと眺めるので、説明書きまで読んでしまうのだった。追い越して先へ行けばいいんだけど、こういうものをさらっと通りすぎてしまうと軽い人間に思われるような気がして・・・・
ま、ここで時間をつぶさなきゃならない身なので別にいいんだけど。
1939年のロヴァニエミ市街地の模型。
1944年、ドイツ軍による戦災後のロヴァニエミ市街地の模型。
ロヴァニエミの町が新しく見えるのは、戦争で破壊され、新たにまた作り直した町だったからだ。
この博物館に来なけりゃこんなことは知らなかった。
ロヴァニエミといえばサンタ村やオーロラ鑑賞など観光都市のイメージだが、こんな北極圏の小さな町でさえも戦争に巻き込まれていた一面も知ることができた。
北極圏のコーナーにはわんさかといた中国人たちはこの辺りでは見かけなくなった。こういうものは興味がないのか。
なくてはならないクマのはく製。
館内を全部見て回っていたら4時も過ぎていた。
博物館を出てホテルへと向かうことにする。
ここからは中心部よりもホテルの方が近い。住宅地の雪道は粉雪が舞っていて雪明り。
札幌の郊外を歩いているのと何もかわらないね。
雪明かりのロヴァニエミ。
◆ ホテルアーケヌス ペウラ
ホテルアーケヌス(Hotelli Aakenus)は2階建てのさほど大きくはない建物。
エントランスの上にあるネオンの表示は一部が点灯しない状態。ロヴァニエミ駅で見た駅名表示も点灯しない字があったが、このあたり安普請のホテルにも見える。
ホテルの本館。
球切れのネオン。
ホテルの1階はレストランになっていて、そこと兼業のようでもある。
レセプションの呼び鈴を押すと、さっきと同じおばさんが現われた。今度こそチェックインになる。
今日予約してあったのはこのホテルの部屋ではなく、裏にある離れになるペウラという建物。
キッチン付き、シャワー共同というアパートメントタイプというもの。
普通の部屋で良かったのだが、一番安いのがここしか空いてなかったからだ。あとは1泊数万円といった超高級なのか暴ったくりなのか知らないが、そんなホテルしかなかった。
それでも1泊113ユーロ(14,074円)もした。
キーを受け取って、裏の方に回るとその建物がある。部屋のドアは3つ並んでいて、長屋のような感じ。
その1室に入る。
別館のアパートメントタイプ。
ベッドは2人ぶん。広さも十分あって、何よりもキッチン付きなのはうれしい。
キッチンは食器のほか料理の道具が一通りそろっている。
初日のヘルシンキの宿もキッチン付きだったが、こちらは貸切である。
これはなかなか面白い所に泊まったな。スーパーで食材を買ってきていっちょ料理でもしてみるか。
アパートメントタイプの室内。
キッチンと奥がトイレ・洗面所。
すぐに外に出て、歩いてショッピングセンターへ。
カゴを持ってスーパーの店内を歩くのは楽しい。が、今日は輪をかけて楽しい。
食材が買えるからだ。肉を焼いてステーキにしようかとかいろいろ考える。その辺は店内で品物を見て決めよう。
Alkoが開いていたのでビールを買った。ビールならば普通のスーパーでも売っているが、アルコール度数の高いものはAlkoでしか買えない。
リンテーンクルマ・ショッピングセンター。
国営の酒屋アルコ。
普通のホテルならば生鮮コーナーなど素通りだが、今日は食材を求めての買い物である。
野菜が少ないね。こっちの人はあんまり野菜を食べないようだ。ホテルイナリの朝食も、野菜は少ししか置いてなかった。
肉や魚は対面販売のコーナーで切り分けてもらうようだが、面倒なのでパス。パック入りの肉を物色する。
Poro(トナカイ肉)コーナーもあって、トナカイの冷凍肉やソーセージやジャーキーなんかが並んでいる。
肉は大きいし冷凍だから買えない。ここはトナカイのソーセージで行こうかと思案するも、さんざん考えた挙句、特売の味付けチキンをカゴに入れてしまう自分がいた。
なんでお前はこういうところでケチ根性なんだあぁ!!
(from未来の自分)
だって高かったんだもん (ToT)
スーパーで買い物していると、日本人の姿もチラホラと見かけた。
本当にチラホラで、目立つ中国人に比べれば微々たるもの。
同じアジア人で、中国人と日本人の見分け方なんてものがあるとすれば、周りに溶け込んで見えるのが日本人ということになるのだろう。
アメリカなど移民の国で、中国系はチャイナタウンというコロニーを形成するが、日系人は3世にもなると同化してしまうのとは対照的だ。
ショッピングセンターで買ってきた食材。
今夜の夕食の食材と、明日の朝食も買ってきて部屋に戻る。
さっそくキッチンで夕食を作る。
料理の詳細は別館の、
の方でアップしているので、そちらを参照願います。
昨日はオーロラも見られたことだし、ビールでお祝いしよう。
ジャガイモをチンして、味付けチキンを炒めただけだが、温かい料理というのはいいものだ。
しかも安いしね。
夕食で温かいものを食べるのは、こっちに着いてからこれが初めてのような気がする。
ビールも美味い。
味付けチキンとポテト。
海外に来て自分で作った料理を食べてビールを飲んでいたら、自分の家にいるような気分になってきた。
留学なんかで住んでみたらこんな感じなのだろうか。
食器を洗って、こんどはシャワーへ行く。
部屋はキッチンとトイレ、洗面台はあるがシャワーは共同になる。
一度外へ出てからシャワー室へ。どうせ隣だからと寝間着に1枚羽織るだけの恰好で出てきた。
キーは2個あって、1つは部屋の、もう1つはシャワー室のキーとなる。
入ると奥がシャワー、脇にサウナがあった。
サウナには張り紙があって、このサウナは使えません、本館のを使ってくださいという英語書きがあった。
アパート専用のシャワールーム。
サウナルームもあるが、こちらは使用不可。
シャワー室から自室へ戻る。
キーを差し込んで回すがドアが開かない・・・
お〜い、勘弁してくれよ (TдT)
引っ張ったり押したりしながらキーを何回か回しているうちにドアが開いた。
開け方にコツがあるようだった。
そういえば、玄関というか自室のドアを開けて中に入るとまたドアがあるのだが、その先が1段高くなっているのだった。
その手前は日本でいうところの三和土(たたき)のようになっている。
私は何の違和感もなしにそこに脱いだ靴を置いて部屋に上がっていたが、これは正しかったのだろうか。
尤(もっと)も、こんな構造になっていなくても、私は日本でも海外でも、ホテルでは部屋に入ってすぐのところで靴を脱いで、裸足(はだし)で過ごしている。
三和土(たたき)になっている玄関入口。
ネットで調べてみると、フィンランドの家庭では日本と同じく靴を脱いで上がるのが普通なのだそうだ。
知ると、なんだかフィンランドに親近感が湧いてきた。
それを知らない客は土足で部屋に上がり込んでいそう。
サンタクロース村で買った土産の小物。
またビールを飲んで日記を書いて過ごす。
明日はヘルシンキへ戻る予定。9:47発の列車に乗り、ほぼ1日列車の中だ。
外はまた雪。雪明りがぼんやりと町を照らす。
ネットの雨雲レーダーを見ると、今夜はラップランド全域は雲が覆っていた。
今夜ばかりはオーロラは全滅だね。
部屋の窓から。
オーロラは昨日だけのワンチャンスだったようだ。
この旅程が1日ずれていただけでもオーロラは見られなかっただろうな。
我ながら旅行中の場面での引きの強さ、運の強さを思い知る。
ここで女性の諸子(しょし)に、いい男の見分け方というのを教えて進ぜよう。
いい男ってのはね、お金でも仕事でもルックスでもなく、一番肝心なところで引き寄せてこれるか、ここ一番という場面で上がれるかどうかを見るべし。
運に左右される場面であっても、これができない奴は、お金があっても、いい所に勤めていても、イケメンでも ダメね。
まことに勝手な手前味噌ではございますが・・・
一番目的のオーロラも見れたことだし、ビールで気持ち良くなって、もう無敵モード。
買ってきたビール4本全部飲んだら猛烈に眠くなってきた。
時計を見ると、まだ9時。明日は早起きする必要もないのだが、もう寝ることにする。
費用 | 場所 | ユーロ | 円換算 |
ぬいぐるみ2個 | サンタ村 | 9.6 | 1,201 |
サンタ村→中心部(バス) | ロヴァニエミ | 3.5 | 438 |
アルクティクム | ロヴァニエミ | - | 1,629 |
Alko(ビール2本) | ロヴァニエミ | 7.18 | 898 |
K-スーパーマーケット(ビールと食品) | ロヴァニエミ | 15.47 | 1,936 |
12/28 合計 | 35.75 | 6,102 |
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