◆ ヘルシンキ、クリスマスの朝
12月25日水曜日の朝、今日はこちらではクリスマスということで祝日である。
明日26日はボクシングデーということでまたも祝日。
24日から3連休ということになっている。
日本ならば祝日はうれしいが、ヨーロッパ、特に北欧では旅行者にとってはあまりありがたくない。
町中のデパートやショッピングセンターは概ね休業となってしまうからだ。
もう一つ気を付けたいのが、25日朝は交通機関の運行開始時刻が大幅に繰り下がることになる。
詳細はヘルシンキ交通局(HSL)のホームページにアップされるので25日だけは必ず確認が必要だ。
2019年のクリスマスの運行状況をHSLのホームページから引っ張ってきたのが下の一文。
“On Christmas Day 25 December, a Sunday service will operate from about 12noon.”
(クリスマスデーの12/25は日曜ダイヤで12時頃から運転します)
トラムやバスだけでなく、地下鉄や近郊列車もこの対象になる。
特に25日の朝に空港へ行く予定の人など、別の交通機関を調べておく必要がある。
私はというと、今日は18:49発の夜行列車に乗る予定。
それまではトラムに乗ってヘルシンキの観光というのんびりしたものだ。
とりあえずは朝食だ。
キッチンにインスタントコーヒーがあり、お湯は電気ポットで沸かせる。キッチンからコーヒーだけ持ってきた。
パンは昨日スーパーで買っておいたもの。
1つはお馴染み(映画かもめ食堂を見た人なら)のシナモンロール(korvapuusti)。もう1つはなんだろうか。
朝食のシナモンロール、右はライスピーラッカと呼ばれるパイ。
シナモンロールは甘くてシナモンたっぷり。初めて食べるけどなかなか美味しい。コーヒーに合う。
右のは真ん中にもっちりとした具が入っている。味はついていない。つぶしたポテトかなと思ったが、調べたらライスとのこと。
2つともフィンランドではメジャーなようで、この先旅行中どこのスーパーでもこの2つだけは必ず見かけた。
ところで、フィンランドは物価が高いと聞いていたのだが、スーパーで買い物している限りはそんなことはぜんぜんない。
昨日のレシート見ると、シナモンロールが0.81ユーロ(81セント)、パイが0.25ユーロ、ヨーグルトは0.29ユーロ。
合計で日本円なら167円といったところ。
高いどころか、日本の半分くらいの感覚。
昨日の買い物で、ビール以外で一番高いのはサラミとブルーチーズで、どちらも1個1.99ユーロ。
スーパーで買い物ばかりしていたら、だいぶ食費は抑えられそうだ。
午前9時近く、ようやく空が明るくなってくる。
海外旅行でこんなにのんびりした朝は久しぶりではないか。
長居したい部屋ではないけど、外はまだ暗いし電車も動いていない。天気も雨模様。
テレビをつけても、祝日だからか子供向け番組しかやっていない。
海外旅行なんかすると、とにかく予定を詰め込んであっち行ったりこっち行ったりとなってしまうが、たまにはのんびりした旅行もいいんじゃないか。
しかし何度も言うけど、お世辞にも長居したい部屋ではない。
もう1度シャワーを浴びたり、バックパックの荷物を詰めなおしたりしていたら外も明るくなってきた。
9時半も過ぎたら外もだいぶ明るくなってきた。
そろそろチェックアウトする。
といっても、壁にあるキーポストにルームキーを落とし込めば完了。このあたりは面倒が無くて良い。
滞在した部屋の窓の外側はフリースペースのバルコニーだと思っていたが、ゲッ、喫煙所だった。
幸い昨夜は利用者がいなかったようだが。
クリスマスの朝、ホテル前から7番トラムで出発。
25日の交通機関は12時頃から運行開始ということになっているが、7番のトラムだけは9時過ぎから運行している。
これも事前に調べてきたのでわかっている。
まず向かうのは中央駅。
コインロッカーに背負ってる荷物を預けてしまいたいからだ。
普通のホテルならばレセプションで預かってくれるが、安宿では難しい。ていうかホテルの人いないし。
この時間唯一動いているトラムなためか、やってきた電車は結構混んでいた。
ヘルシンキ中央駅の正面。
ヘルシンキ中央駅は花崗岩で造られた石造りの建物で、1919年完成となっている。
右手には時計塔があり、正面の大きなアーチと両側に立つ4体のランプを持つ石像が特徴。
この石像は見たことがあるな。
それはフィンランド鉄道(VR)のホームページ。
こいつがエプロンをかけて腰に手を当てている画像は、列車の時刻を調べたりチケットを買ったりする度に見ていて、何だろうなと思っていたのだが、ここで正体が分かったわけだ。
この石像は名前もあって、『Lyhdynkantajat』とか『Kivimiehet』というらしい。ウィキペディアのフィンランド語版に詳しい説明があった。
和訳すると前者は『ランタンを差し出す人』、後者は『ストーンマン』とでもなるだろうか。
VRのシンボル(?)駅の石像。
駅に入ろうとドアに手を掛けるが、鍵がかかって開かない。
隣のドアも同じ。
駅にやってきた人も開かないドアに首をかしげている。
歩いていたおっさんが「あっちあっち」というように大きく指を差す。
言われた通りの方へ行ってみると、脇の方にも出入口があり、そこからは普通に出入りできた。
コンコースの正面側はアコーディオンの扉で閉鎖されている。中には地下へ続くエスカレーターがあった。
そうか、地下鉄が昼にならなければ運行しないので、地下に通じる場所は閉鎖しているのか。
地下鉄が運行を開始する11時頃までは一部閉鎖されるコンコース。
コインロッカールームは地下にあるので、それまでは預けられないのかと思ったが、ロッカーとトイレの階段は別にあり、そこへは行くことができた。
コインロッカーというものは、最新のものは使い方が難しくて困ってしまうのだが、ここヘルシンキ中央駅のロッカーは昔ながらのコインを入れてキーを回すだけという単純なものが健在である。
料金は一番小さいタイプで1日4ユーロ。
使用できるのは1ユーロと2ユーロ、それに50セントのコインのみ。入口には両替機もあるのは親切。
私は昨日空港駅でチケットを買った釣銭と前回ドイツ旅行の使い残しのコインをたくさん持っている。
中央駅のコインロッカールーム。
ロッカーは奥行きが結構あり、今背負ってきたバックパックならば詰めれば3個は入りそうな感じだった。
扉を閉めてコインを入れ、鍵を回して抜けば完了。
コインロッカーだけは昔ながらのが一番便利だと思う。
これは一番小さいタイプ。バックパックはスッポリ収まった。
ショルダーバッグだけ持って夕方まで市内観光。
とはいってもまだ7番のトラムしか運行していない。
この7番のトラムの終点まで行ってみるか。
この時間で唯一運行している7番系統。
車内の機械にデイチケットをかざすと有効期限が表示される。
座席のモケットの柄はヘルシンキのトラム路線図だった。
7番の電車は狭い道を右へ曲がったり左へ曲がったり。
そうしているうちに港が見えてきた。
終点にはフェリーターミナルがあって、電車から降りた人はみんなそっちに入っていった。
ヘルシンキはフィンランド湾に面した港町。市内のあちこちにフェリーターミナルがあって、そこからフィンランド湾の島々や、対岸のエストニアなどと結んでいる。
ウエストハーバー(Länsisatama)の風景。
終点の停留場から岸壁を来た方向に歩いてみる。
雨は上がっているが、雲がどんよりと覆って薄暗い。
祝日だからか船も港も休みのようだ。
寒いなあ。
今日はプラス5度だというからインナーを着てこなかったし手袋もロッカーに預けたバックパックの中だ。
もうずっと夕方まで電車に乗ってるかな。
途中の停留場からまた電車で中央駅に戻る。
この頃には他の系統も動き始めていた。
2番の電車に乗っていると、露店が立ち並んで賑やかな所を目にした。
何だろうとそこで降りてみる。
中央駅やその周辺の繁華街はひっそりとしているが、ここは反対に賑わっている。
スマホの地図を見るとマーケットスクエアとなっていた。
観光客でにぎわう港近くのマーケットスクエア(Kauppatori)。
マーケットスクエア近くから見たサウスハーバー(Eteläsatama)。
ここも港になっていて、島々と結んでいるフェリーの桟橋が並んでいる。
観光船乗り場のような桟橋は中国人観光客が群がっていた。
私はあまり観光地というものに興味はないが、今日のようにどこもひっそりとして人も歩いていない中心部よりは、こちらの方がいくらか救われる気がする。
ウスペンスキー大聖堂とトラム。
エスプラナーディ公園。
マーケットスクエアからヘルシンキ大聖堂にかけての一帯がヘルシンキの観光地区のようである。
しかし寒いなあ。
入れるところといえば教会くらい。
ヘルシンキ大聖堂の礼拝席でしばらく休ませてもらう。
このあたりは観光客ばかり。
やたらと中国人が目立つ。
ヘルシンキ大聖堂。手前は元老院広場とアレクサンドル2世像。
大階段の上から元老院広場を見下ろす。
ヘルシンキ大聖堂の大階段。さすがに腰を下ろしている人はいなかった。
大聖堂の内部。内装が簡素なのはプロテスタントだからなのだそう。
大聖堂の出入口の脇に英語で『トイレ1ユーロ』と張り紙のある箱が置いてあった。
こちらでは公衆トイレはすべて有料である。
日本人からするとお金払ってトイレというのは抵抗を感じるが、これはしょうがない。
1ユーロを箱に入れて用を済ませてくる。
次はどこに行こうかとなるところだが、どこにも行きようがない。
博物館も美術館も、今日はほぼお休みなのだ。
◆ ヘルシンキはトラムの街
ヘルシンキの一番の名物はトラムだろう。日本でいう市電とか路面電車というやつ。
日本では車の脇をノロノロと走るイメージだが、こちらのは強い。
何が強いって、車なんか蹴散らすように堂々と走っているし、結構飛ばす。
まさに道路上の王者である。
石畳と縦横無尽に走るレールにも美を感じる。
ヘルシンキには地下鉄があり、中央駅からは郊外電車もあるが、郊外電車はヴァンター空港への行き来に乗るくらい、地下鉄沿線に観光客が行くところも無いようだ。
ヘルシンキ観光となるとトラムのお世話になるのが一番便利である。
あと北欧でトラムが大活躍しているのは、ノルウェーのオスロ、スウェーデンのヨーテボリ。ヘルシンキと合わせればこれが北欧三大トラム都市ということになる。
ということなので、あとはずっとトラムの電車に乗っていた。
トラムの系統が全て集まるマンネルヘイミン通りの交差点。
中央駅東側のミコン通り(Mikonkatu)のガントレット。
ガントレット区間を行く7番トラム。
トラム車内。これは中間車両だけ低床のタイプ。
路面電車なので車道を走る。
昼を過ぎると中心部も人が出てきた。
しかし店はどこも開いていないし、ほとんどは観光客かもしれない。
服装がフィンランド人ぽくないし。
電車で郊外の方へ行くとさすがに地元の人ばかりになる。
地元の人はどんなかというと、車窓から見ていると皆黒っぽいコートを着て歩いているのが印象的だった。
曇って薄暗い石畳の町を、無言でうつむいているような、そんな印象だった。
そうやって暗い冬が過ぎるのを待っているようだった。
何となく3年前のオスロを思い出した。
5月も終わるころになればライラックが満開になり、人々は公園で裸になって寝転がって日光浴、オープンカフェでビールを飲んで、夜は8時9時を過ぎてもまだ昼間のように明るくて・・・
冬はまだまだ長いなあ・・・
私も同じ北国の人間なので痛いほどよくわかる。
あー、待ち遠しいなあ・・・
電車に乗っているうちに日が暮れてきた。
マンネルヘイミン通り交差点の夜景。敷石とレールが美しい。
夕方には人通りが多くなってきた。アレクサンテリン通り。
午後は3時を過ぎるともう暗くなってくる。
店が開いているわけでもないし、中心部の雑踏をウロウロしているか、またトラムの電車に乗っているしかない。
吹き抜けののイルミネーションをボーっと眺める。
今夜の宿はサンタクロースエクスプレスという名で呼ばれる寝台夜行列車。
この列車でヘルシンキから北へ900kmの町、ロヴァニエミま行くことになっている。
時刻は4時を少し過ぎたところ。すでに外は真っ暗。
駅へ行っても座るところもないし、もう1回トラムでどこか往復してこようか。
クリスマスの北欧と聞くと、とてもロマンチックな印象と思われるだろうが、実際にはこのようなシケた過ごし方しかできないのだった。
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