2019年稚内とサロベツ原野の旅

2019年7月6日からの土日は稚内まで行ってきました。

花が次々と咲き乱れるこの時期は、宗谷地方の一番良い季節。
晴れて青空が広がり、そこへ黄色いエゾカンゾウの花が一面に咲いて、バックには利尻富士がそびえるというのは絵になる風景である。

しかし、この一番良い季節の頃の宗谷地方は、曇り空の日が多い。
数少ない晴れの日と週末と重なることは少なく、何度行っても曇り空ばかりに当たってしまった。

この週末の天気予報は曇りのち晴れ。なんとも頼りない空模様だが、この晴れに賭けて行くことにした。

札幌を出発したのは土曜の8時半。
途中道の駅などに寄り道しながら北を目指す。

道中は曇り空だが、自分の真上だけは青空がついてくるような天気だった。

これもまたどういうわけか途中の道の駅も食事処も混んでいた。
天気なので皆一斉に出てきたという感じだった。

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 ひたすら何もない道道稚内天塩線。

天塩の道の駅で一休みして、道道稚内天塩線に入る。
天塩河口大橋を渡ると風景が一変する。

ここはもう日本離れというか北海道でもない。
宗谷海峡で隔たれているとはいえ、ここはもう樺太や遥か北の大陸と同じ空気である。

沖合には利尻富士のシルエットが見えた。

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 沿道はエゾニュウの花で出迎えてくれた。

乱れた草ばかりが茂る原野の中を1本の道道がどこまでも続く。

駐車帯に車を停めて、この亜寒帯の空気を吸う。
もうここは北海道とは違う空気。

馬や牛の姿はどこにも見つからず、人間の家の影さえなかった。
・・私は遠いロシアの曠野(こうや)へでも迷い入った旅人のような気がした。

とは猿払村にある風雪の塔の碑文からの引用。
もとは藤森成吉『旧先生』の一文で、オホーツク海側の猿払原野の描写だが、このあたりの風景のほうがしっくりとくる気がする。

同じさいはてでも、根室や標津あたりとも違う。
頑として人を寄せ付けない永久凍土の冷たさが、足元から血の中に湧き上がるような感覚は何だろうか。

もうここは北海道ではなく、北極星に吸われる不毛の大地。
しかし私など、時に北海道離れした冷たい空気の中に、無性に身を置きたくなるのだった。

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 遠くに逃げ水が光る。

今時期は、道の脇に一斉に咲いた黄色いエゾカンゾウが出迎えてくれるものだが、これは一足遅かったようで、今日迎えてくれたのは不気味に咲き乱れるエゾニュウの白い花だった。

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 レストハウスサロベツの店内。

稚咲内(わかさかない)から内陸に入ってサロベツ湿原センターへ行く。
花は咲いているだろうか。

着いたら花よりもレストハウスに入った。
途中はどこの店も混んでたので、札幌を出てからここまで何も食べていなかったのだった。

サロベツラーメンというのが名物のようだが、いももちと牛乳にする。
もう20年以上昔だが、旧原生花園だったときに、いももちが美味かった記憶がある。

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 いももち(300円)と牛乳(100円)。

いももちとは、つぶしたジャガイモに片栗粉を加えてよく練って餅状にして焼いたもの。
子供の頃はよく食べたものだった。

さて食べようとしたが、テーブルの調味料立てにはなぜか醤油がない。塩はあるから塩で食べるのかな。
しょうがないなあ、厨房へ行って醤油を借りてきた。

焼きたてで粘りもあって、醤油をつけて食べるとジャガイモの風味の磯辺焼きみたいで美味い。
それに、いももちには牛乳が合う。

なんとか一息ついて、湿原センター裏手の木道を歩いて湿原へ行く。

う〜ん・・・5月の熱波のせいで花は早く咲いてしまったらしい。
黄色いエゾカンゾウの群れを期待していたが、これも遅かった。

遠くの方に、もう終わりかけたエゾカンゾウの黄色い点々が見えているくらい。
その代わりに、紫色のノハナショウブが満開だった。

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 ノハナショウブが満開のサロベツ原生花園。

サロベツ原生花園からまた道道稚内天塩線に戻って北上する。

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 うねる道。

続いて立ち寄るのは抜海駅。
ここを通ると必ず寄りたくなる所だ。

抜海駅は、もう数少なくなった木造駅舎が今も残っている。
無人駅だが、冬季は除雪係の詰め所として使われる。

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 抜海駅正面。

駅の正面側は若干リフォームされているが、ホーム側は昔のままの佇まいが残されている。

かつて映画『南極物語』のロケ地にもなっている。
高倉健さん演じる隊員が、樺太犬リキの代わりの犬を連れて荻野目慶子演じる飼い主の姉妹の元へ現れるというシーン。

映画では駅舎もいい味を出していたが、その当時とほとんど変わっていない。

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 抜海駅ホーム。

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 なかなか味わいのある木造駅舎。

駅前は人家が1軒だけ。あとは何もない。
1軒の人家は空き家ではなく、人の気配がある。まさに野中の一軒家といったところ。

駅にいると、レンタカーやバイクの人が次から次へと現れる。
地味に観光スポットとなっている模様。

味のある駅舎なんだし、もうちょっと整えたら観光名所になるんじゃない。
新十津川の駅前のように、売店とかカフェなんか置いて、車を呼び込めばそこそこ繁盛するんじゃないか。

かといって、大型バスが出入りするようになって、観光客がゾロゾロというのも興ざめするが。

さて、稚内市内で給油と買い物。
今夜は車中泊となる。

今夜の宿は宗谷岬とした。
快晴となったので、夕日が拝めるかもしれない。

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 暗雲立ち込める宗谷岬方面。

宗谷岬へ向かうと、岬のあたりは何やら雲が覆っている。

で、着いたら見事に霧の中。
車を降りたら寒い。

とてもじゃないがこんなところで車中泊などしたくはない。
また稚内へ戻る。

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 宗谷岬は霧の中。

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 霧と寒さの中、観光客もご苦労様。

稚内は晴れていた。
どこに泊まろうかな。

道道稚内天塩線の、海岸沿いから山に向かう坂道の途中に駐車場があるのを思い出した。
道の駅でもいいが、どうせなら景色の良い場所で、一杯やりながら夕日を眺めるというのは悪くない。
あそこならトイレもあるし。

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 夕日が丘パーキング。

駐車場は夕日が丘パーキングという看板があった。
18時30分。

今日の稚内の日没は19:27となっていて、まだ1時間近くある。
夏至からまだ1週間しか経ってないので、まだまだ日が長い。

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 日が傾くがまだ沈まない。時刻は18時30分。

宇都宮ナンバーのおっさんは、三脚を2台も立てて夕日写真のスタンバイだ。
何でも、写真を撮るために北海道をあちこち回っているのだそうだ。
仕事もリタイアして暇だから、ということらしい。

最近は道の駅なんかでやたらと道外ナンバーを目にするようになった。
キャンピングカーも多い。
そのドライバーは大概が爺さんだったりする。

フェリーにマイカーを積んで来るくらいだから、何週間も車で北海道観光するのだろう。
暇もだけど、お金もあるんだねえ。
貧乏人の私からすれば感心するほかない。

宇都宮ナンバーのおっさんの話は、どこそこの写真のコンテストでこれは入賞したとか、要するに自慢話。
話の腰を折ってしまうとお互い気まずい思いになるし、私も日没までは暇なので、「へえすごいですね」とか言って自慢話に付き合う。

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 夕焼け空と利尻富士のシルエット。右側には礼文島も見える。

私は写真家ではないので、適当なスナップショットが撮れれば十分だ。
だけど、利尻富士をバックに沈む夕日が撮影できたら最高だ。

だんだん日が傾いて空が赤く染まってきたが、雲も出てきた。

この頃から、駐車場に続々と車が集まってきた。
車中泊組かなとも思ったが、夕日撮影のために来たらしい。

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 夕日の名所なのか続々と車が集まってきた。

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 水平線近くの空は雲が覆ってしまって残念。

夕日は完全に雲で隠れてしまった。
撮影隊の人たちは悲愴ムード。

集まってきた車も、ほとんどが退散してしまった。

宇都宮のおっさんは森林公園(稚内公園)に泊まるという。
今度は朝日を狙うんだとか。

私はここで車中泊で、これから一杯やってから寝ることにする。

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 三日月が浮かぶ夕日が丘パーキングからの夜景。

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 北斗七星と北極星。

シュラフに潜り込んで、目が覚めたのは午前3時。
普段ならばまだ夜中だが、夏至が近い稚内では3時を過ぎると明るくなってくる。

外に出るとあたりは霧の中だった。
寒い。
宗谷岬の霧がここまでやってきたようだった。

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 空が白み始めた午前3時、すっかり霧の中。

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 びっしりと夜露に覆われた車。

すっかり目も覚めたし、ここにいてもしょうがない。
車をノシャップ岬へと走らせる。

もしかしたら朝日が拝めるかもと淡い期待からだった。

途中、道路の真ん中にエゾシカの群れがいてびっくり。
こんな町に近いところでも出てくるのか。
ヤツらときたら油断も隙も無いな。

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 道道抜海港線に現れたエゾシカ。

ノシャップ岬も霧の中だった。
日の出時刻は3時50分。

だめだねこりゃ。

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 ノシャップ岬も霧の中だった。

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 霧に反射する灯台ビーム。

今度は道の駅わっかないへ。
洗面所の用で寄らせてもらう。

ここの駐車場は駅正面とは反対側にあるのだが、その駐車場が完全に満車状態
まだ4時過ぎだぜ。地元の人なわけないから、これ全部車中泊!?

しょうがないから正面側の一般車乗降場に停めて用足しをさせてもらう。

洗面所がお湯が出るのは驚いた。トイレもウオッシュレット完備。
そりゃあ人気の車中泊スポットなわけだ。

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 低い雲が垂れ込めた稚内駅前。

もう少し日が高くなれば晴れるのかもしれないが、低い雲が垂れ込めて暗い朝だ。

曇り空ならばこんな所に用はない。
明日から仕事なので、さっさと帰りたい。

また道道稚内天塩線を南へと走る。

ところが、抜海あたりまで来るときれいに晴れ渡っていた。
利尻富士も綺麗に見えている。

さっさと稚内を後にして正解だった。

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 朝日に映える秀麗利尻富士。

これはもしかして、サロベツ原生花園で利尻富士をバックにした花の写真が撮れるかなと思い、もう一度サロベツ湿原センターへ行ってみた。

ここの駐車場とトイレは24時間開放されている。
車中泊するのならこっちの方が良かったかなと思うが、湿原の中だからねえ。
蚊が多そう。

期待して木道を湿原へ向かう。
ところが、ちょうど地平線の部分だけ雲が覆って、山は隠れてしまった。
なんて意地悪な雲。

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 サロベツ原生花園に着いたら利尻山は雲に覆われてしまった。

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 原生花園に現れたエゾシカ。

日が高くなれば雲は晴れるのではないか。ちょっとそんな期待をして、しばらく粘ることにした。

お湯を沸かして、カップ麺の朝食。

STVのライブカメラは礼文島に設置されたものがあって、ネットで見ることができる。
8時頃には礼文のライブカメラに利尻山の姿が映っている。
これはいけるかもとカメラを持ってまた湿原へ。

そこで30分くらい待つと、ようやく山の姿が現れた。
でも霞んで薄いシルエットしか見えない。

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 再び姿を現した利尻富士。辛うじて咲いていたエゾカンゾウと。

この時期でこれだけ晴れたんだから上出来じゃないか。
山の姿が完全に見えたのも一瞬だったようで、また雲で覆われだした。

さて、札幌へ戻るか。

また道道稚内天塩線を南下する。
再び天塩河口大橋を渡って天塩の町へ。
ここからは留萌総合振興局の管内となる。

天塩まで来ると、なぜか人里へ戻ってきたような気になる。

何だか見えない線があるんだよね。
北海道と樺太や大陸へ続く亜寒帯を区切る線。

これが内陸ルートやJRからだと雄信内のあたり、オホーツク海沿いだと浜頓別のあたりだと思う。
この線の向こう側へ行って戻ってくると、海外から戻ったような気分に陥る。

え?私だけですか・・・(^^;

〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。


posted by pupupukaya at 19/07/14 | Comment(0) | 道北の旅行記
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