2004年ロシアサハリン旅行記10

 2004年9月24日

 ◆ ユジノサハリンスクを歩く

長かったサハリン旅行もついに終りに近づいてきた。今日は何も予定は無し。1日中ユジノサハリンスクの街中をぶらぶらと過ごすことにしている。

8時半ごろ起きる。外はどんよりと薄暗く、曇り模様で雨が降り出すかもしれない天気だ。
テレビをつけて、ニュースを見ながらダラダラと支度する。映像と断片的にわかる単語で大体の内容を理解する。

9時近く、朝食券をもって2階のレストランに降りる。
時間が遅いせいか客はほかに1人いるだけだった。

朝食のメニューは、カニサラダ・目玉焼き・ソーセージそれにパンとバターとチーズ。相変わらずバターはこれでもかというほどたっぷりある。今日は牛乳ガユは付かなかった。コーヒーが飲み放題なので3杯もおかわりした。

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 目玉焼きとウインナーがメインのこの日の朝食。

10時少し前頃、ホテルを出て、とりあえずガガーリン公園を散歩する。公園の向こう側は山になっているのは、地理的に札幌の円山公園に良く似ている。そういえば、ラーダホテルや正教会のあるコムソモリスカヤ通りも、なんとなく円山あたりの雰囲気に似ているような気がする。

まだ開店前のキオスクや屋台の建ち並ぶ遊園地の中をまっすぐ歩いて行くと、子供鉄道の線路に突き当たる。
線路に沿ってまっすぐ行くと駅があった。コムソモリスカヤ駅と表示してあり、切符売り場もありその上に時刻表も表示してある。
ちょっと乗ってみたかったが、10:30から営業でまだ30分近くあるのであきらめる。

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 ガガーリン公園と子供鉄道の線路。

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 ガガーリン公園のガガーリン像。意外と目立たない。 

公園名の由来になったユーリイ・ガガーリンは人類初の友人宇宙飛行をした人物である。
その銅像が公園の入口にひっそりとあった。

やはりここは観光名所のようで、日本人の学生らしい人が記念写真を撮っていた。

ガガーリン公園を抜けて、サハリンスカヤ通り歩く。道路を走る車はほとんどが日本の中古車で、荒っぽい運転が多い。交差点を渡るときなど戸惑ってしまうが、地元の人の後について渡る。

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 通りはどこも日本車の中古車だらけ。

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 交差点の交通信号。日本とはだいぶ違う。

市内の通りにはバス停がある。ベンチが置いてあって、何人か人が立っていればそこがバス停である。
車の前面に系統番号を掲げた車が次々とやってきて人々が乗り込んで行く。

しかし、バス停に時刻表や路線図は無く、どの車がどこへ行くのかは全く分からない。

ユジノの市民ならば広報かなんかで周知されているのかもしれないが、旅行者に使いこなせるものではない。

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 市内のバス停と系統番号を掲げた車。

これに乗ることができればもう少し行動範囲が広がるのだろうが、乗り方も行先も不明とあっては歩くしかない。

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 大型バスは主として郊外路線のようだ。

市内はソ連時代の同じようなコンクリート5階建てアパートが建ち並ぶ。どの建物もかなり老朽化している。表通りに面した建物は、1階がカフェや食料品店になっているのが多い。

入口には頑丈な扉があり、店名を記した看板が1枚表示してあるだけなので、どこが何屋なのか営業中なのか判別できない。しかしそれが逆に街全体をにシックに見せている面もある。

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 ソ連型箱型アパート。

レーニン通りとサハリンスカヤ通りの交差点を中心とするあたりが、ユジノサハリンスクで一番賑やかなところだ。
ここからレーニン通りはレーニン広場まで、サハリンスカヤ通りは踏切の先にある市場までが繁華街となっている。

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 サハリンデパート前の雑踏。

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 サハリンデパートからサハリンスカヤ通りを見る。


 ◆ 市場、買い物、警官たち

繁華街の角にあるサハリンデパートに入ってみる。

店内は専門店別に店舗が別れていて、それぞれ対面販売だ。洋服屋でも靴屋でもやはりカウンターの中に品物があって対面販売なので、試着などさせてくれるのだろうか。

店に並んでいるのは、韓国や中国製品がほとんどである。

とある店のケースに、『ザ・フライパン』が220Р(約880円)で売っていた。ほかの店でも日本の100均商品が200〜300Рで売られていた。

日本の100円ショップがロシア人船員に大人気だという話は聞いたことがあるが、彼らが日本で仕入れて持ち込むのだろう。
日本ではほとんどガラクタのようなものが、サハリンでは8倍以上の値がついているのだ

サハリンデパートでは、みやげ物になるようなものは見つからず店を出る。次に踏切横の市場(ルイナク)へ行ってみる。

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 市場横、サハリンスカヤ通りの踏切と線路。

市場はまだ平日の午前中なのに多くの人で賑わっていた。

ここは犯罪が多いので、観光客が1人行っては行けないところとされているのだが、スリや詐欺にさえ気をつければ、強盗や殺人などの重犯罪に対しては人混みの方がかえって安全なのでは・・・などと勝手に解釈して市場に足を踏み入れる。

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 市場の内部。ここは魚屋。 

売っているものは食料品や日用品が中心だが、衣類や電気製品もある。
中には、明らかにそこらから拾い集めて来たような物を並べている店もあるが、色々なものが雑然と並べられて、見ていて飽きない。

毛皮のロシア帽を売っていて、ちょっと欲しくなったが値段を見てあきらめる。

色とりどりのフルーツを並べている屋台がひときわ美しく見える。
野菜やパンの販売トラックが停まっていて行列ができている。工場からの直売だろうか。

観光名所よりも、こっちの方がよっぽど面白い。

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 市場の雑踏。

自由市場ということになっているが、それぞれの露店や屋台は場所が割り当てられているように整然と並んでいる。誰かがきっちり場所を仕切っているのかも知れない。

市場の中を巡回している警官の姿が見える。
気のせいかこちらを見ているような気がする。
異色の外国人らしいのがこんな所をうろついているのは不審者に見えるのか。

しかし何だか気味が悪い。
別に買うような物もないし、市場から立ち去ることにした。

市場から、スーパーマーケットの中を通り抜けるとレーニン通りに出た。
この通りを行くとレーニン像があるレーニン広場になる。

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 レーニン広場とレーニン像それに車の列。

広場の道端にピロシキ売りが出ていたので、おばちゃんからピロシキを1つ買ってみる。

1個18Рで、保温箱の中から取り出して、アツアツなので持ちやすいように紙を添えて渡してくれた。
中には炒めたひき肉が入っていて、けっこう大きくてボリュームがある。

歩きながら食べるとこれがまたおいしい。3食付のツアーもいいけど、こうして買い食いできるのも自由旅行の楽しみだとおもう。

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 露店のおばちゃんから買ったピロシキ。温かい。

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 レーニン通りにある本屋『ヴレーミャ』。

レーニン広場の前を通り本屋へ入る。本屋も当然ながら対面販売だった。本の中身を見てから買うかどうかを決めることはできない。

ケースの中にサハリン州とユジノサハリンスクの地図を見つけたので買う。『ユジノサハリンスク120年誌』という写真集があったのでこれも買った。

本や地図は結構高いが、ルーブルを使い切るには手っ取り早い。
本が入ったカバンは、だいぶ重たくなったので、荷物を置きに一旦ホテルに戻ることにする。

水を買うためにホテル近くの店に寄ると、クワスのペットボトルを見つける。
これは珍しいと1本買い、ホテルの部屋で飲んでみた。黒パンやライ麦を発酵させて作る飲み物で、味は甘いビールといったところ。独特の風味はいかにもロシアという感じがする。

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 黒パンを発酵させて作るクワス。ロシア版コーラみたいな物。

ところで、あした日本に帰る予定であるが、実は明日の朝、コルサコフ港まで車で送迎してもらえるか、自分でタクシーを呼ばねばならないのかとの確認をしていなかったのである。

1Fのフロントで、最初の日にガイドのSさんに教えてもらった電話番号を書いたメモを見せ、「ここに電話したいのだが・・・」と片言のロシア語で言うと、最初に“9”を押してからダイヤルするのだと教えてもらう。

部屋に戻り、教えてもらった電話番号に掛けるが、当然ながら昼間なので留守だった。

代理店のT社から送ってきた日程表には、現地連絡先として、『インツーリスト・サハリン』の電話番号が記してある。サハリン側のホテルやガイドの手配はここで仕切っているはずで、ダメモトで電話してみることにした。

ダイヤルすると、女性が電話に出た。
「インツーリスト・サハリン?」と聞くと「ダー(はい)」と返事があった。

たどたどしいロシア語で必死に自分のことを説明する。なんとかT社を通じて日本から来た旅行者だと分かってもらう。
ガイドブックのロシア語会話を棒読みで、「日本語の分かる人はいませんか」と聞いてみると、たまたま運良く日本語の話せる人がいたようで、その人に替わった。

流暢な日本語を話す男性が出て、明日はホテルから港まで迎えに来てくれるということを確認できた。明朝7:45にAさんというガイドの人が迎えに来ますとのことだった。

やれやれ、初日の自分の不手際からとはいえ、とりあえず最後の懸念はこれでなくなった。

1杯やってお祝いでもしたいところだが、まだ時刻は2時前。
部屋にいるのはもったいないので、また市内見物に出る。


 ◆ 両替・買い物・警官

さっき本を買ったので、所持金がだいぶ少なくなってきた。みやげ物も買いたいし、少しルーブルに両替した方がよさそうだ。

レーニン広場から少し南側のほうに、みちのく銀行の支店があった。
くすんだ町並みの中に建つ新しい建物は、近未来の世界のように見える。日本語で「みちのく銀行」と書いた緑色の看板が建っている。

入口には制服を着た警備員が立っていた。中に入り、受付らしいところに近づいていくと「こんにちは」と日本語で挨拶された。

カウンターはサハリンでは珍しくオープンカウンターで、昼間でも照明をつけて眩しいくらいに明るい。なにか自分の格好が場違いに思えるほどである。

「両替したいのですが」と日本語でいうと、奥のドアを入った所だと言う。
そこに入るとまたドアがあり、2つくらいの個室になっていた。ガラスで仕切ったカウンターがあり、中に係の女性が座っている。
カウンターに箱があり、向こう側で箱をスライドさせて受け渡しする仕組みは、初日のアエロフロートの両替所と同じである。

1000Р(約4000円・30ドル)ほどを両替したかったのだが、何を勘違いして計算したのか150ドルも両替してしまった。
中から渡されたのは4300Рの大金

このときに間違えたと言えば良かったのだろうが、言いそびれて全額受け取る。急に金持ちになってしまった。

一応ロシアルーブルは国外への持ち出しは禁止されているようで、出国時に没収されることもあると聞く。
私も長く生きてきたが、お金が多すぎて困ったというのはこれが人生で最初の体験である。

銀行を出て、今度はミーラ通りにある『ドーム・タルゴーリ』へ行ってみる。
最近できたショッピングセンターで、ここへ行けば土産物も手に入るのではないかと思った。
お金もできるだけ使い切ってしまいたい。

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 『ドーム・タルゴーブリ』デパート。 

ミーラ通りを歩いて行くとデパートが見えてくる。2階建ての大きな建物で、郊外の大型スーパーという雰囲気である。デパート横の広場はここもルイナク(自由市場)となっていて、さまざまな露店や屋台が並んでいる。
この日は近所の買い物客がちらほらいるほかは閑散としていた。

中に入ると結構広く、サハリンデパートよりも商品は豊富だ。1Fの奥が食料品店となっていて、惣菜やランチボックスのような物も豊富に並んでいる。その隣にはカフェと両替所があった。当然ながらここも全ての店が対面販売方式となっている。

入ってすぐの所に“ロシアのおみやげ”と日本語の貼紙をしてある店があり、カウンターの中には民芸品やお酒が並んでいた。この店でお土産のマトリョーシカとウオッカと絵ハガキを買う。あとなぜかユジノ市内のバス路線図という物が売っていたので買ってしまった。

デパートを出て、横の市場をのぞいてみる。踏切横のバザールを小さくしたような感じで、ここにも色々なものが売っているが、デパートの門前町という感じがしないでもない。

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 どの店もテント張りで、お祭りの露店という感じ。

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 野菜の移動販売車。人だかりができる。

市場をあちこち物色してると、後ろから3人連れの警官に呼びとめられた。午前中に踏切横の市場にいた警官たちだった。

あんまりウロウロしていたので不審者に見えたかもしれない。警官は何か言うが分からない。片言のロシア語で「私は日本人だ」と言ってみる。どうも職務質問だったようだ。

「パスポルト(パスポートを見せなさい)!」
パスポートとビザを確認して、
「名前は?」とか「住所は?」、
「ガスチニッツァ(ホテル)は?」とかあれこれ聞かれる。

デパートや市場で買い物した袋も中を見せろという。デパートで買い物したお土産のほか、市場で買ったカップラーメンがたくさん入っている。これは珍しかろうとお土産に買ったものなのだが、「シトー(これは何だ)?」と聞くので「ラーメン」と答えた。

単なる旅行者だと分かったようで、パスポートを返してもらった。
警官の1人が「アパースナ(危ない)」と言った。「危ないからこんな所を1人で歩き回るんじゃない」と言われた気がした。

そうだった。ここは日本ではないのだ。年々治安が悪化する一方といわれるロシアの国なのである。

警官たちに尋問され、街歩きはもう嫌になった。ホテルに戻ることにする。


 ◆ サハリン最後の夜

ホテルにレストランがあるので、そこで少し豪勢な夕食にしようと思った。
両替しすぎたルーブルも少しは消化できるだろう。

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 2Fにあるレストランの入口。

席に着くと、ウエイトレスがやってきて何やら言う。
日本人だと分かると彼女は「オヘヤ」と言った。どうやらレストランは貸切になるらしく、食事はルームサービスでということらしい。

メニューを見せられ、適当なのを指さすと、肉はビーフかポークか、ライスにするかポテトにするかときかれる。それにビールを1本つけて、代金は399Р。
現金で支払って部屋に戻る。

しばらくすると、ウエイトレスがワゴンを押して部屋にやってきた。
運ばれてきた料理は、ポークステーキ・サラダ・パン。
ステーキの上にはケチャップソースがたっぷりとかかり、フライドポテトが添えてある。

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 ルームサービスの料理。

味は日本の町中にある洋食店のものといったところ。

窓際に料理とビールを並べて、景色を眺めながら食べた。
まずくはないが、格別うまいわけでもない。
それでも1人で食べるのは味気なく、寂しい夕食だった。

ロシア最後の夕食は、レストランで豪華にやりたかった。
しかし、昼間の警官の一件もあって、もう外に出る気はしなかった。

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 街歩きで買ってきた土産物。

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 本屋で買った絵葉書き。

明日は朝が早いので今のうちに荷物をひとつにまとめておく。本やウオッカの詰まったカバンはものすごく重くなった。

部屋でテレビを見ながらウオッカを飲んで、サハリン最後の夜は更けて行った。

11へつづく


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