2004年ロシアサハリン旅行記2

 2004年9月20日

 ◆ とりあえずユジノを歩く

7時ごろ起きる。天気が良くて気持ちが良い。

今日は夜行列車でノグリキへ行く予定になっているが、ホテルをチェックアウトした後は夜の21時過ぎまでどこかで過ごさなければならない。

今日からはガイドもいない。
心細いが、なんとかやってゆくしかない。

ユジノサハリンスク市内もあちこち見物したい。それとも路線バスで隣町のコルサコフかホルムスクにでも行ってみようか。

8時過ぎ、朝食のため1階に降りる。フロントの前に立っていた“用心棒”の兄さんに、「グジェ(どこ)?」と言って、朝食券を見せると、あそこだと指差して教えてくれた。

2階のレストランに入ると昨日飛行機で着いたらしい日本の人が数人いた。席に着いてウエイトレスに券を渡す。
コーヒーと紅茶はセルフサービスで自由に飲めるのだと先にいた日本の人に教えてもらった。

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 朝食のサラダとパン、チーズとバター。

パン1個と魚の油漬けがのったサラダ、それにバターとチーズがたっぷりと出る。サラダはマヨネーズがたっぷり。バターは作りたてなのかナイフでサクッと切れるようにやわらかい。
乳製品だけは日本のよりずっとおいしい。

案外と質素だな、と思いつつ食べていると、つぎにミートローフとお粥が出てきた。お粥の上にはたっぷりとバターが浮いており、食べてみると砂糖で少し甘みがついている。まずくはないが、慣れないと少々気持ち悪く見える。

それでも全部平らげる。朝からボリュームのある食事で腹いっぱいになってしまった。

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 ロシア風のお粥とミートローフ。

部屋に戻り、身支度をする。重い荷物をもってあちこち歩くわけにもいかないので、荷物はどうしたものか。日本ならばコインロッカーに預けるのだが。事前に、荷物はホテルで預かってもらえると聞いていたのだが、大丈夫だろうか。

9時少し前、荷物をもって1階に降りる。
フロントにキーを返し、パスポートを受け取る。「バカージ(荷物)を夕方まで預かって貰えないだろうか?」と言ってみた。

言ってみた、と書いたが、文法もヘッタクレもない、知っているロシア語の単語を総動員して並べただけの無茶苦茶な言葉だが、それでも何とか通じたようで、フロントの人が入口に立っている“用心棒”のお兄さんを呼ぶ。

お兄さんに「パイジョーチェ(ついて来い)」と言われ、奥の部屋に連れて行かれる。
ドアの前でトランシーバーでやり取りすると中からドアが開いた。警備室のようだ。

鍵を開け、倉庫のようなところに「ここに荷物を置け」といわれ、預り証をくれた。客の荷物を預かるというのはよくあることのようで、何も心配することはなかった。

「ここに置いておけば安心だ」と言うようなことを言われ、礼を言ってホテルを出る。

   

とりあえずどこへ行こうか。今日は月曜日。街では普段の朝が始まっている。今日は昨日とは逆のサハリンスカヤ通りの方へ出てみる。

ユジノサハリンスクは昔は『豊原』と言って、札幌と同じく碁盤の目の道路で町を作られた。
今は当時の道路は結構つぶされてしまったようで、市内を貫通する道路は少ない。

道路はすべて直角で交わるので、方角さえ把握してれば地図がなくても道はわかる。ただ、どこもアパートが立ち並ぶ似たような光景なので、ときどきどこを歩いているのかわからなくなってしまう。建物に表示してある住所表示が唯一の手がかりになる。

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 ユジノサハリンスクの街角。

歩いていくと、レーニン通りとの交差点に出る。まだ開店前だがサハリンデパートもあり、信号が変わるたびに大勢の人の波ができる。

ここから踏切の前後にあるバザールまでの通りがいつも賑わっている。踏切にさしかかる。線路はユジノを中心に更新が進んでいるようで、枕木はコンクリートになり、バラストも入れ替えられて見違えるようになっていた。

線路を渡ると高層の建物も少なくなり、いかにも駅裏というたたずまいになってくる。10分ほど行くと橋があり、これがユジノ市内を流れるススヤ川であるが、よどんだ水は汚くてドブ川のようだった。ここで駅の方に引き返す。

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 ゆっくりと流れるススヤ川。 

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 ススヤ川の橋から埃っぽい道路を見る。

街中は埃っぽいし、どこへ行っても排気ガスの臭いが鼻をつく。
日本も昔はこんなふうだったのかも知れない、などと思いながら道端をトボトボ歩いていた。

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 駅横のレンガ積み倉庫は日本時代の建物。 


 ◆ ドリンスクへ行ってみる

しばらく散歩してから駅前に行く。駅前のSLを展示してある広場では、ビルでも建てるのか工事をしていた。駅の入口の所にはビール片手のような人が常にたむろしているのは相変わらずである。

ユジノサハリンスクは、帰国日の前日も丸1日滞在することになっている。
だから今日は別に市内観光することもない。
かといってどこか行くところがあるわけでもない。

あてがないと、何となく足が駅へと向かう。

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 ユジノサハリンスク駅前広場。

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 ユジノサハリンスク駅の入口。

駅に入るとすぐ上に時刻表が掲示してある。切符売り場は時刻表の下のところにあり、1人2人とやってきては、切符を買っていく。
JRのみどりの窓口のような窓口もあって、1週間分の夜行列車の予約状況がはってあった。柱にはタッチパネル式の列車案内が設置してあったので少しいじってみる。列車の時刻表や空席状況が画面に現れる。

日本のように列車の時刻表というものは無いが、柱のインフォメーションに全列車の列車ごとの時刻表が貼り出してある。

時刻表を眺めていると、ちょうど10:45発ティモフスク行きの列車がある。駅にいるうちになんだか列車に乗りたくなってきた。ドリンスクまで乗車することは出来ないだろうか。ドリンスクまでならば、バスが頻繁に出ているので、ユジノに戻ってくることができる。

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 ユジノサハリンスク駅のきっぷ売り場。

思い切って、開いてる窓口に『No.967 10‐45 Долинск(ドリンスク)』と書いたメモとパスポートを差し出してみた。

ダメだと言われるかな、と思ったが窓口の女性はパスポートをパラパラとめくって、コンピューターになにやら入力し、紙に11Р60Кと書いて差し出してきた。60Кとは60カペイカ(ルーブルの下の単位)のことで、112Р渡して40Кの釣銭と切符を受け取る。
サハリンでも列車の切符の発券はコンピューター発券となったようである。

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 きっぷ売り場で買った967列車の乗車券。

ベンチに座って待つ。
ユジノサハリンスク駅はサハリンの鉄道では最大の駅である。

列車の本数は多くない。
ほとんどが中長距離列車となっている。

ソ連時代は近郊列車もあったようだが、民主化以降に自動車の普及と道路事情が良くなったことから、一部を除いてなくなった。

駅舎は2階建て、町側の半分は吹き抜けになっている。
1つのコンコースに待合所、きっぷ売り場があって、それを取り囲むようにずらりと並んだキオスクは、さながらステーションデパートと言ったところ。
日本のUFOキャッチャーのゲームが1台置いてあり、子供が遊んでいた。

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 キオスクとベンチが並ぶコンコース。

待合室のベンチに座って待っていると、10:30頃なにやら放送が流れる。スピーカーが悪いのか、音が割れて聞き取りにくい放送で、「今から列車の改札をするからホームに来てください」と言っているようだ。コンコースにいた数人がホームに向かったので後について行く。

駅とホームの間は改札口はなく、自由に行き来できる。
ホームに出ると、なぜかホームのはるか先端のほうに列車は停まっていた。先頭は機関車で1両目1号車が寝台車、2両目2号車が座席車、3両目が荷物車となっている。客車はたった2両のみ。客車の入口の前には人だかりができている。

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 ティモフスクまで行く長距離列車だが、客車は2両のみ。 

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 客車に乗り込む乗客。

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 ホームの光景。いかにもローカル列車といった雰囲気。

車掌に切符とパスポートを見せる。
パスポートの身分証明の部分と切符を怖い顔をして見ている。なんとなく緊張するなあ。切符の2枚あるうちの1枚をもぎ取って、切符を返してくれる。低いホームからステップを昇って乗車する。

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 デッキからホームを見る。

車内は中央で仕切られて2室となっている。2人掛けの座席が並ぶが、座席の向きは変えられず、前向と後ろ向きの座席が半分ずつ中央に向かって並ぶ。
一番奥はトイレでその奥もデッキとなっているが、こちらの出入り口は使用されないようだ。

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 座席車の車内。

指定された34番の通路側の席に座る。車内は薄汚れた感じで座席も硬く、あまり良い感じはしない。

10:45列車は定時に音もなく発車した。

車内はほぼ半分くらいの席が埋まっている。乗客は旅行者と言うよりも、ちょっとユジノサハリンスクに出てきたか、近郊の山に山菜を取りにといった人たちが多い。隣の窓側の席は空いたままなのでそちらに移る。

列車はバザール横の踏切を通り、すぐに次の駅『ユジノサハリンスク貨物駅』に着く。ここで14分停車する。停車中に右側の線路をノグリキから来た列車がすれ違っていった。15両は連結していただろうか。乗り降りする人もいないまま、発車する。

沿線は、しばらくユジノ郊外のダーチャ(別荘)地域を走る。

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 小屋が立ちならぶロシアの別荘(ダーチャ)。

ノボアレクサンドフカに着は、日本時代の名残か、高床式のホームが残っている。ここからシネゴルスク支線が分岐していたが休止路線になってしまった。

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 高床式ホームの残るノボアレクサンドフカ駅。 

ここで数人乗ってきて、そのうちの1人のオヤジが隣の座席を指差して何か言った。
窓側の席の客が乗ってきたのだと思い、席を移ろうとすると、「いいから座ってろよ」と言うように制止される。

どうやら「隣は空いてるか?」とたずねたようだ。なんだかよく分からないが「ダー(はい)」というとオヤジは隣の席に座った。全席指定のはずだが、途中から乗る人は空いている席に自由に座っているようだ。

ノボアレクサンドフカからはシネゴルスク支線が分岐しているが旅客列車は数年前から運休となっているのは知っていた。分岐するレールもすっかり錆びてしまっており、このまま廃線になってしまうのだろう。このあたりから人家がなくなり、林の中を列車は進む。

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 固定式リクライニングシートの車内。

停車駅ごとに数人ずつ乗車してきて、だんだん座席が埋まってきた。
隣のオヤジは2駅だけ乗って、ソコルで席を立った。

並行する国道をバスが頻繁に走っているので、どうしてわざわざ列車に乗ってきたのだろう。
バス路線が必ずしも駅近くにあるわけではないので、鉄道駅のほうが家が近い人たちなのだろうか。

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 ソコル駅の貨物列車。

ソコルはブイコフ支線が出ている。乗ってみたいが、ユジノからブイコフへは朝夕2往復が走るのみとなっている。ソコルは5階建てアパートが建ち並び、割と大きな町のようである。

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 ドリンスク近くは湿原が多い。

列車はまもなくドリンスクに着く。放送案内も何もないので途中で降りる場合は自己責任で乗り越しのないよう気をつけなければならない。
駅近くまで来たので、デッキに向かう。ドリンスクで降りる人は自分のほかに3人いた。

12:07列車が到着すると、車掌がドアを開け、ステップを降ろす。切符はどうするのかと思ったが、集札はしないようで、これは手元に記念品として残った。
列車を降りると、10人ほどの乗客が列車に乗車していった。

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 ドリンスクに到着。だだっ広いホーム。

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 ドリンスクから乗る人は10人ほど。 

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 安全確認は車掌の役目。 


 ◆ ドリンスクからの路線バス

広いホームに降り立つ。列車が出てしまうと駅には誰もいなくなった。
ドリンスクは日本時代は落合と呼ばれたところで、パルプ・製紙工業が盛んであったと言う。

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 ドリンスク(落合)の街並み。

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 小さな町でも、日本時代の建物はソ連時代に一掃されたようだ。

少し街中を散歩しようと思ったが、道がさっぱり分からない。とりあえず国道らしい通りまで出てみる。商店らしいのが何軒か並ぶが、同じようなソ連型アパートが立ち並び、これといって何もない。
駅から数百mを歩いただけで引き返す。

駅前には『ラーダ』という昨夜宿泊したホテルと同じ名前のカフェがある。ここで食事しようかと考えていると、ちょうどユジノサハリンスク行のバスがやってきた。

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 露店のカフェ。

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 バスターミナルになっている駅前。左の黄色いバスがユジノ行のバス。

駅前はバスターミナルとなっているが、バス停も時刻表も何もない。バスが停まっていて、乗り場らしいところに人だかりができているので、バス乗り場だと分かるだけだ。

次のバスはどのくらい待つか分からないので、とりあえずこのバスでユジノに戻ることにする。『112・ユジノサハリンスク』と表示してあるのを確認して、バスに乗る。

日本では30年以上前に走っていたような古い車両だ。ソ連製のバスだろうか。運転室と客室は電車のようにきっちり壁で仕切られている。お金はどこで払うのだろうか。一番前の運転手横の席が空いていたのでそこに座る。

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 バスの運転台は電車のように仕切られている。

車内には、日本ではすでに見られなくなった女性の車掌が乗っていた。乗客に切符を売って回っている。車掌に「ユジノサハリンスク」と言って、紙に値段を書いてもらう。55Рを払い切符を受け取る。学校帰りと思われる小学生もいて、バス通学だろうか。発車直前まで1人2人と乗ってきて、立ち客も出てきた。

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 ドリンスク〜コルサコフ間のバス切符。

12:25、船のエンジンかと思うような音を震わせて、バスは発車する。

ドリンスクの市内を抜けると草原の中を舗装道路が真っ直ぐと続く。町と町の間は時おり畑や牧草地が現れるだけで、無人の荒地が広がる。
停留所ごとに乗客は降りていき、ソコルで半分くらい降りると車内はだいぶすいてきた。晴れていたのに突然曇ってきてにわか雨が降り出す。

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 バスの車内。

バスはまっすぐな直線道路を走るが、スピードはさっぱり出ない。何度も日本車の乗用車に追い抜かれる。途中の停留所からは快速運転となるようで、いくつかの停留所は通過するようになった。

突然、バス停でもないところでバスは停止し、運転手が空のペットボトルを持って飛び出して行った。何かトラブルか?と見ていると、道端に水が湧き出しているところがあり、ボトルに水を汲んで戻って来てゴクゴク飲みはじめた。なんかノンキだなあ。

ユジノサハリンスク市内に入ると急に車が多くなりだす。あちこち渋滞だらけだ。

レーニン通りのサハリンデパート近くのバス停に停まるとほとんどの乗客たちが一せいに席を立つ。
このバスは駅まで行くが、ほかの人たちに倣ってここで降りることにする。

時刻は13:20、ドリンスクからちょうど1時間かかったことになる。
ユジノの雑踏の中に降りたった。



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