新十津川町にある金滴酒造で、『金滴酒蔵まつり』が開催される。
毎年おこなっているようだが、私はまだ行ったことはなかった。
一方で廃止が決定している札沼線の北海道医療大学〜新十津川間。
こちらは2020年5月7日の廃止、最後の営業日は前日の5月6日となる。
廃止まであと1年を切った。
終点新十津川までは1日1往復しかないので、日々混雑が増してゆくと思われる。
いい機会だし、今のうちに乗り納めに行くことにした。
札幌駅6:39発石狩当別行533Mは721系の旧エアポート編成。
6月22日土曜日。天気予報は雨。
金滴酒造祭りは雨天決行だし、雨の方が列車の乗客も減るだろうからむしろ望ましい。
1日1本の新十津川行は札幌6:58発北海道医療大学行でも乗り継げるが、1本早い6:39発石狩当別行で出発した。
使用するきっぷは『一日散歩きっぷ』。
2260円なので、札幌〜新十津川、滝川〜札幌だけの乗車でも元は取れる。
札幌駅の指定券券売機で買った一日散歩きっぷ。
札幌からの電車は721系の旧快速エアポート編成6両。
uシートもそのままで、自由席として開放されている。
エアポートに使用しないのならば座席を撤去してロングシートに・・とでもなるのだろうが、そのまま運用についている。
学園都市線は日中でもこのエアポート編成が頻繁に使用されている。
ていうか、ほとんど学園都市線専用車両になっている。
昔から学園都市線は、道内各地で使用された気動車が最後に奉公する路線でもあった。
まだ学園都市線の名がつく前は、国鉄型気動車の見本市みたいな雑多な車両が見られたものだった。
中古車両が回されてくるというのは、電車になっても変わらないようだ。
話がずれたが、この旧エアポート編成のアコモデーションは、ロングシートの新車よりはるかに良い。
そんなわけで、石狩当別まではuシートでゆったりと過ごせた。
1両編成の新十津川行5425D。
石狩当別駅は1番線に到着。
学園都市線と呼べるのは次の北海道医療大学まで。
ここからは札沼線と呼ばせていただく。
3番線にはすでに1両の気動車が停車していて、この列車の到着前からすでにボックス席はふさがっているほどの乗車率。
石狩当別からの客なのか、さらに早い電車からの乗り継ぎ客なのかは知らないが、1日1本の列車である。みんな早め早めにやってくるのだろう。
札幌発533M到着後の車内。
最悪立ちっぱなしも覚悟して出てきたので、座れるだけでありがたい。
空いていたロングシートに腰掛け、発車を待つ。
発車まであと20分もあるが、車内は話し声が賑やか。すっかり観光列車だ。
札幌からの2537Mが到着。
向かいの2番線に7:39着札幌からの2537Mが到着。
大勢乗り継いでくるのかと思ったが、意外と少なかった。
それでも車内は満席に近くなる。
9割以上は試乗目的の人たち。
唯一それ以外とわかるのは通学定期を持った、石狩月形までの2人だけだ。
年齢層も高め。50代以上の人が大多数。学生と思しき人は皆無。
若者の車離れが叫ばれて久しいが、車以上に深刻なのが若者の鉄道離れだろう。
かつては、若者が安く旅行をするとなると鉄道であった。
周遊券や青春18きっぷを使えば、格安で旅行ができた。
夜行列車を宿代わりにすれば、もっと安上がりになる。
それが、周遊券がなくなり、夜行列車がなくなり、あるのは新幹線と昼間の特急だけ。
安さを求める若者は、LCCやツアーバスということになる。
廃止が決まって遠くから乗りに来る人たちは、若い時に周遊券の世話になった人たちである。
上野駅から急行列車で青森へ、道内では夜行列車を宿代わりに旅行をしていた世代の人たちだ。
現在の10代20代の人たちがあと30年後に、鉄道に郷愁を覚えて乗りにやってくることは多分無いだろう。
乗り継ぎ客を降ろした2537Mは、北海道医療大学へ向けて一足先に発車する。
こちらはその6分後の7:45に発車した。
2537Mからの乗客を受け、ほぼ満席状態の車内。
外は雨。車内は蒸し蒸しする。窓ガラスも次第に曇ってきた。
次の北海道医療大学で降りる人は無いが、代わりに1人乗ってくる。
ざんばら髪でゴミ?の入った袋をたくさん下げていて、どこから見てもホームレスの恰好。
前にも札沼線の車内で見たことがある。
終点新十津川まで乗っていたが、一体何者?
関係ないのでこれ以上は取り上げない。
秘境駅で有名になった豊ヶ丘で2人乗車。多分1本前の浦臼行からの客だろう。
この雨の中ごくろうさんといった感じ。
石狩月形着。ここで23分停車。
ロングシートと曇った窓では車窓も見えず、車内観察しているうちに石狩月形到着。
ここで上り列車との交換のため23分停車する。
下車客は通学定期の2人を含め4人。
通常ならば石狩月形でほとんど降りるのだが、こちらは観光列車。
ここで席が空くなど期待してはいない。
雨の中、ホームや駅の撮影をする。
側線に停まっていたバラスト散布車。
石狩月形駅は島式ホームで、構内踏切が駅舎とホームを結ぶ。
駅舎側の側線はよく保線車両が停まっているのを見るが、今日は4両のバラスト散布車と保線用の機関車が停まっていた。
長らく草ぼうぼうのまま、いかにも放ったらかしだった線路だったので、何をいまさらという感じがしなくもない。
もう廃止が決定しているのにバラストの交換をするのかと思ったが、まだ1年近く営業は続くので線路のメンテナンスは続けなくてはならない。
とにかく安全第一、廃止日まで事故無く営業を続ける必要がある。
しかし、塗装の新しい4両のバラスト散布車は、妙にミスマッチに見えた。
石狩月形駅は郷愁のある木造駅舎。
改札口の改札案内。改札はしていないが。
石狩月形駅の駅舎は、国鉄時代からほぼ原形の木造駅舎が使われている。
有人駅は、改札口ときっぷ売り場が兼用になるように改造された駅ばかりなので、それぞれ独立したままの木造駅舎はもうここくらい。
待合室には、これもまた見なくなった煙突式の石油ストーブが健在だ。
これも昔はどこの駅にもあったが、今は大多数の駅では大型のファンヒーターに取って変わられた。
石狩月形駅のきっぷ売り場。
昔ながらのガラス越しのきっぷ売り場。
きっぷ売り場も、ガラスで仕切られた昔のまま。『出札口』という名が似合う。
窓口に張り紙があって、扱う券種は石狩月形〜石狩当別、石狩月形〜百合が原・新琴似間、石狩月形〜白石・手稲間の乗車券のみ。
硬券入場券もあったが、去年の『8月14日付で完売』とあった。
それと豊ヶ丘駅の『ご当地入場券』。
石狩月形駅で扱う券種は乗車券の3種類のみ。
もうすっかり珍しくなった軟券の常備券。
窓口の見本を見ていたら、無性に欲しくなった。
乗車券や入場券の類は、特に積極的に集めているわけではないが、乗り降りしたり立ち寄ったりした駅では記念に買うようにしている。
即断。
買ってしまった。
石狩月形→石狩当別の常備券。
常備券で一番安い450円の乗車券。
まあこれでいくらかはJR北海道に貢献したことになる。
気だるい雨の23分停車。
キハ40の運転席。
運転士時刻表。
雨の中の23分は意外と長く感じる。
ホームのスロープの場所や駅舎の屋根の下では数人のファンがカメラを構える。
さっき到着時の車内放送で、「列車を止めた場合、列車往来危険罪になる場合があります」と言っていた。
ホームの白線の内側は幅1mほどしかない。廃止が間近になるとどうなるのだろうか。
今はまだないが、そのうちホームや通路は柵で囲われることになりそう。
8:34に上りの5424Dが反対側のホームに到着。
地元客数人が乗り込んで行った。
上り石狩当別行5424Dが到着。
駅員がスタフの交換をする。(隣人のカサで顔が隠れた)
石狩月形駅の見ものはスタフ交換。
この先新十津川までは単線の線路に1列車しか入ることはできない。その通行手形のような物だ。
そのために、石狩月形駅は今でも駅員がいるのである。
留萌本線の留萌〜増毛間も同様のスタフ閉塞で、留萌駅でその交換風景が見られたが、同区間の廃止で無くなった。
この石狩月形駅が、道内では最後のスタフ交換駅ということになる。
終点新十津川に着くころには立ち客も出てきた。
月形から乗った人もあったようだ。
小駅からも1人2人と乗客がある。やはり1本前の浦臼行からの客なのだろう。
ここから先は30kgの短尺レール区間。
札沼線はもともと簡易線規格による建設で、最高速度は65km/hとなっている。
簡易線規格の路線は、道内では旧江差線と日高本線の富川〜様似間が該当する。
あとはすべて廃止になった。
札沼線の桑園〜石狩当別間は国鉄時代に重軌条化されて最高速度が85km/hに引き上げられている。
日高本線と江差線も、国鉄末期にはレールが50kgのものに交換され、簡易線規格のままJRに引き継がれたのは、廃止対象線区以外ではこの札沼線北部と深名線だけだった。
深名線は国鉄再建法による廃止対象線区からは除外されていたが、並行道路が開通すれば廃止の可能性が高く、実際にその通りになった。
札沼線北部も、末端区間は当時から1日3往復というダイヤと、他の路線がワンマン化される中で、最後までワンマン化されなかったことなどから、やはり廃止したがってるんだろうなとは感じていた。
1991年に学園都市線の愛称が付くと、全駅の駅名標が学園都市線規格のものに取り換えられ、1996年に強力化改造されたキハ40が投入されてワンマン化されるなど、少しはやる気を出したようではある。
しかし線路は放ったらかしなのか、夏など草ぼうぼうだし、枕木は割れたままで、廃線跡を思わせるような線路だった。
ここ数年来は保線の不備による事故が相次いだせいなのか、こまめに除草をするようになったようだが。
65km/hでも、もともと地盤が軟弱な場所だったこともあって、乗り心地は悪い。
小刻みな振動や時々ドスンと突き上げるような衝撃が続く。
キハ40の空気バネ台車でもこんな状態で、これが旧車だったコイルバネのキハ53では、特にバネが凍り付く冬季の乗り心地は相当なものだった。
床から突き上げる衝撃で、飲んでいた缶コーヒーを吹いた記憶がある。
浦臼でも数人の乗客があり、車内は立ち客も出てきた。
ロングシートではつまらないし、座ってるのにも飽きてきたのでここからは立つことにした。
ここから先は1日1往復のみ。
この列車が始発列車であり最終列車でもある。
鶴沼や於札内からも乗ってきた。
車内はざっと見で70人くらいだろうか。
これ以上混むと2両に増結も検討してもらいたいところだ。
車内は往年の急行列車の雰囲気。
9:28、終点新十津川に到着。
ほとんど外も見えず、車内観察ばかりの1時間43分だった。
といっても、ほとんどは田園風景で、並行する国道を走る車にスイスイと追い越され、見損なっても惜しいような沿線風景ではないが。
終点新十津川駅に到着。
1日1本の列車が到着。
新十津川の駅名標。
新十津川では雨は上がっていた。
ここからは、来た列車で折り返す人、滝川へ向かう人、私のように金滴酒蔵まつりへ向かう人と別れることになる。
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