札幌市電延伸を勝手に想像する【系統・ダイヤ編】

札幌市電の延伸路線として、桑園線苗穂線都心線(北部)の3路線の詳細が出来上がった。


 1,札幌市電延伸ルートを勝手に想像する
 2,桑園編
 3,札幌駅・苗穂編
 4,都心線編
 5,苗穂線編

今度はここに電車を走らせようということになる。

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 桑園駅から苗穂駅まで全線開通後の想像路線図(地理院地図より筆者作成)

現在の循環線に加えて、桑園駅と苗穂駅への分岐路線という路線形態となる。
ここに系統を設けるとしたら、どのようになるのだろうか。

考えられるのは3案。
それぞれについて考えてみる。

第1案は単純に苗穂駅と桑園駅を結ぶ系統を追加したもの。

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 系統第1案(地理院地図より筆者作成)

従来の循環線を1番系統とし、新路線の桑園線と苗穂線を直通する2番系統を設ける。

利点は、循環線がそのままなので、既存の利用形態に与える影響はほとんどないこと。
また、系統も単純で分かりやすい。

欠点は、2番系統は電車事業所を経由しないので、乗務員交代は苗穂編で述べた新設した留置線に乗務員の拠点を設ける必要がある。また、出入庫のために電車事業所から西15丁目まで電車を回送することになる。

既存区間では変わるものがないので、新たな需要が見込めそうにない。
また、2番系統でも全線の所要時間は30分以上となり、通しでの乗客はまずいないだろう。


第2案は、現在の循環線を中央図書館前で2分割し、それぞれ桑園線や苗穂線へ向かうというもの。

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 系統第2案(地理院地図より筆者作成)

利点その1、電車の入出庫や乗務員交代は従来通り電車事業所となる。ただし2番系統は事業所から図書館前まで若干歩くことになるが。

利点その2、地下鉄の無い山鼻西線からの札幌駅へのアクセスが格段に良くなる。
新規に開業した桑園線や苗穂線だけではなく、西線地区の人たちも大きな恩恵を受けることができる。
これによって、既存路線から新たな需要が見込める。

欠点は、中央図書館前で系統が分断されるので、ここを直通していた利用客からは反発を招くだろう。
あと、せっかく定着した環状運転もなくなってしまう。


第3案は、中央図書館前で分断してしまった系統を1つにつなげて、全線通しで1系統にするというもの。

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 系統第3案(地理院地図より筆者作成)

苗穂から山鼻をぐるりと1周し、桑園へという路線。

利点は、1条線は2回通ることになるが、現在の循環線、それに西線地区から札幌駅へ直通という、すべての需要を満たしている。

欠点は、片道の運行距離が長すぎるといったところだろう。

市電の全盛期時代は、苗穂駅〜三越前〜教育大学前(現在の図書館前)〜丸井前という長距離の系統が運行されていた。
苗穂駅を出発し、山鼻線と山鼻西線をぐるりと循環し、1条線の丸井前までという長距離路線だった。

片道の運転時間が長い故に、途中で遅れが発生すると、雪だるま式に遅れが膨らんで、終点に着くころには3台も4台も連なった団子運転になるだろうし、いろいろ問題があったようで、のちに苗穂駅〜静修学園、三越前〜丸井前の2系統に分割されることになる。

現在は電車の運行状況が一目で確認できるので、無線で指示を出すなりして運行間隔の調整はできるだろうが、ダイヤや運行間隔の冗長性を確保するとなると、終点での折り返し時間を多めに取る必要がある。
起終点の停留場では、常時2台の電車が待機するような恰好になれば、そのためのホームの延長や新設も必要になる。

もう1つの欠点は、運行経路がわかりずらいということ。
特に西4丁目〜西15丁目間は、同じ系統でも行先の異なる電車が来ることになるのでややこしい。

そんなわけで、第3案はあまり実用的ではなく却下。


第1案第2案か。
第1案で継続する循環線は捨てがたいが、ここはあえて利点の多い第2案で行きたい。

定着した循環線ではなくなるのと、中央図書館前で系統が分割されるというデメリットはあるが、それ以外の点ではメリットが多い。

現在の循環線の問題点を挙げると、この運行形態は遅れのあまり発生しない専用軌道ならば利点もあるだろうが、常に遅れのつきまとう路上の交通では必ずしも望ましい運行形態とはいえないようだ。

通常ならば終点での折り返し時間で、遅れ時分の吸収や、運転間隔の調整をすることになる。
循環線は折り返しこそないが、この時間のためにどこかに余裕時間を設ける必要がある。

その余裕時間を現在の循環線では西4丁目〜すすきの間に設けているのだ。
この区間の所要時間は直通ならば6分のところ、約12分をかけている。この6分が余裕時間というわけだ。
西4丁目やすすきので、客扱いが終わってもすぐに発車しないのはこのためだ。

はっきり言ってこの区間は、西4丁目かすすきので電車を降りて歩いた方が早い。
歩いた方が早い乗り物など、交通機関として失格だ。
現在の運行形態では、せっかく延伸しても、それを生かし切っているとは言えない。

この西4丁目〜すすきの間を生かす意味でも、あえて系統を分割することにした。


 【系統と運行区間】

1系統苗穂駅〜札幌駅新幹線口〜西4丁目〜西線16条〜中央図書館前
    (※朝ラッシュ時、西4丁目〜西線16条もあり)
  往復1時間38分、昼間14両、朝ラッシュ16両(※8両)、夕ラッシュ17両で運行。
  車両のうち10両は苗穂滞泊、残り14両は電車事業所に収容。

2系統桑園駅〜西4丁目〜すすきの〜静修学園前〜中央図書館前
  往復1時間38分、昼間14両、朝ラッシュ16両、夕ラッシュ15両で運行。
  車両全16両は電車事業所に収容。

電車の運行両数は昼間28両朝ラッシュ時で40両
現在は昼間16両、朝ラッシュ26両で運行しているので、14両の増加。
うち10両は、夜間は苗穂線に新設の留置線に収容する。

中央図書館前で2系統に分割されるため、ここで乗り換える乗客には乗換券を発行する。SAPICAの場合は、降車時にタッチして1時間は乗り変えた電車で引き落とし額0円とすれば良い。

また、中央図書館前停留場のホームを延長して、双方の電車が同時に折り返しできるように改良する。
乗り換えは、電車を降車したら前の方に停車中の電車に乗り換えるといった感じ。

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 中央図書館前停留場のイメージ(筆者作成)


 【市電の時刻表】

市電にも一応ダイヤもあれば車両運用もある。
上記の条件で、エクセルに停留場と所要時間を入力し、計算式を使ってダイヤを作ってみた。

延伸区間の所要時間は前述の所要時間を以下の図にまとめてみた。
既存区間の所要時間は、札幌市交通局HPから標準の所要時間を当てた。

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 市電延伸路線の停留場間所要時間(地理院地図より筆者作成)

考慮したのは車両運用のみ。
実際には乗務員の運用とか、その他いろいろあるのだろうが、そんなことまで筆者にわかるはずもなく、単純に所要時間と運行両数だけ入力し、以下の条件でダイヤを作成してみた。

作成したのは平日夏ダイヤ
実際には土日祝ダイヤ冬ダイヤもあるが、ここでは1例を挙げるということで、そこまでは作成していません。

ここでは概要だけ挙げてみる。

 ◆ 主な停留場の市電始終発時刻
停留場系統番号行先始発終発
中央図書館前発

@苗穂駅行  6:00  23:02
A桑園駅行  6:00 22:48
西4丁目発




@中央図書館前行  6:19 23:25
@苗穂駅行  6:24
 23:26
A中央図書館前行
  6:51 
 23:19 
A桑園駅行  6:27  23:15
札幌駅新幹線口発

@苗穂駅行  6:34 23:36 
@中央図書館前行  6:09 23:15
苗穂駅発@中央図書館前行  6:01 23:07
桑園駅発

A中央図書館前行  6:35 23:03
A西15丁目行 23:35


 ◆ 電車運行間隔
系統区間
@苗穂駅〜中央図書館前 6分  7分  5〜6分  7〜10分 
@西4丁目〜西線16条 3分   ―    ―    ―  
A桑園駅〜中央図書館前 6〜7分7分5〜7分7〜10分


 ◆ 札幌駅新幹線口停留場1系統(苗穂駅〜中央図書館前)時刻表
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札幌の新たな表玄関となる札幌駅新幹線口の時刻表。

新幹線の札幌延伸については、とかく対東京の視点ばかり取り上げられているが、新幹線が開業すれば函館までは在来線乗り換え込みでも所要時間は1時間以内になるだろうし、東北各地から札幌へのアクセスも格段に改善する。

新幹線口は、名実ともに札幌、いや北海道の新たな玄関口となることだろう。
ここから大通方面へは市電が便利。

新幹線開業を当て込んで、付近には多くのホテルも開業するだろうし、チェックインしてから西線方面へ直通する市電で藻岩山観光へということも可能だ。

通勤輸送はマンションが増えつつある苗穂線から都心方向へ、各方面から再開発地区のオフィスへといったところ。
在来線のJR札幌駅から大通方面へは地下歩行空間を歩いた方が早いし、新幹線通勤の需要も現状ではあるのかないのか。

JR苗穂駅からは、大通方面へは短絡ルートというわけにはいかず、通勤客がJRから市電に乗り換える需要は思いつくものが無かった。

ファクトリー、アリオといった商業施設が沿線にあること、新幹線利用客のアクセスということを考えれば、ラッシュ時よりも昼間の輸送の方が主力となる路線になるのかもしれない。


 ◆ 西4丁目停留場2系統時刻表(桑園駅〜中央図書館前)
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市電運行の要となる西4丁目の時刻表。
左はすすきの・中央図書館前方面行(南1条日の出ビル前)、右は西15丁目・桑園駅方面行(駅前通4プラ前)の時刻。

朝ラッシュ時に桑園駅からJR乗り継ぎ客がどれほどあるのか未知数だが、既存の山鼻線と同等の本数とした。
また、市電ループ化後の山鼻線の乗客増も考慮して、朝夕ラッシュ時は若干増発してある。

桑園方に車両基地が無いため、他の系統に比べ始発が遅く、終発が早いのは致し方ないところ。

筆者想像のダイヤでは、電車事業所への出入りのため朝の始発1便と夜の終発2便は桑園駅〜西15丁目の区間便とし、西15丁目〜中央図書館前は回送とした。

桑園駅方面はJRへ乗り継ぎ、あるいは沿線マンションの通勤客が主力となりそう。
一方、すすきの、山鼻線方面は生活路線ということになる。


 ◆ 桑園駅停留場2系統(桑園駅〜中央図書館前)時刻表
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こちらは上記『』系統の桑園駅発時刻表。

乗客の主力は桑園地区のマンションから都心方面へ、桑園駅からJR乗り継ぎで1条線沿線への通勤客といったところ。

特にオフィス・官庁街である中央区役所前停留場へは、JR函館本線の西方面や学園都市線からだと、札幌駅まで行って地下鉄に乗っても大通で乗り換えで10分以上。桑園駅で降りて歩いても20分以上はかかる。

それが市電桑園線の開通により、桑園駅から中央区役所前までわずか10分。
JR桑園駅から1条線方面への短絡ルートとなるので、通勤需要がかなりありそうだ。

一方で日中や休日の輸送では、狸小路、すすきのへ直通する系統ということで、それなりに利用もあるものと思われる。
今まで不便だった大通地域から市立病院のアクセスも格段に良くなる。


 ◆ 西線16条停留場1系統(中央図書館前〜苗穂駅)時刻表
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札幌市電のドル箱路線(?)である山鼻西線・西線16条の時刻表。

今まで、山鼻西線沿線から札幌駅へ直通で行ける交通機関は無かった。
それが、新幹線口ということになるが札幌駅まで1本で行けるようになる。

ループ化ではほとんど恩恵の無かった山鼻西線だが、札幌駅へ直通ということで、沿線ブランドも大きく向上することだろう。

西線は並行する交通機関が無いので、市電の独占状態であるのだが、反面、朝ラッシュ時は混雑する。
近年は新築マンションの増加により、混雑はますます朝夕ラッシュに集中するようになった。

西線16条折り返し便が増車される西線16条〜西4丁目間は3分間隔で運行するも、冬季はそれでも積み残しが発生し、西線11条折り返し便も設けられるようになった。

この増車分の電車は、現在は西8丁目始発として運行されている。
これは西4丁目で折り返す際、乗車ホームが無いために西4丁目〜西8丁目間は回送ということになっている。

延伸後のダイヤでは、南1条パルコ前を西線方面のホームとすることで、再び西4丁目始発とした。

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 西4丁目停留場のイメージ(筆者作成)

  ★

最後に基にした全列車の時刻表を挙げます。
興味のある方は拡大してご覧ください。

 ◆ 基になる全列車の時刻表(クリックで拡大)
shidentimetable1.jpg  shidentimetable2.jpg 

エクセルで作成した市電の全列車時刻表。
左が@苗穂駅〜中央図書館、右がA桑園駅〜中央図書館前

   ★

以上、札幌市電の延伸を想像してみました。

欧米の都市ではもう当たり前のように目にするようになった路面電車、いやLRT。
あの自動車王国であった米国ですら導入が進んでいる。

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 2020年開業を目指しLRTの工事が進むオーストラリアのシドニー中心部。

日本ではもうだいぶ前からLRTの必要性が説かれているが、ごくわずかな都市を除いて一向に進展する気配がない。
一番の理由は、国内で前例がないということに尽きるのだろう。

無謀な交通政策により渋滞の原因とされ、独立採算制とした結果の赤字部門とされ、多くの路面電車が廃止や縮小の道をたどった。それらが過去の前例である。
その過去の前例を覆すのは並大抵のことではない。

2020年度に導入が予定されている、札幌市電の上下分離は、鉄道事業における独立採算制の矛盾を解決する方法でもある。

 * 路面電車事業における上下分離の導入について
  (2019/6/10 市営交通/札幌市交通局 交通局からのお知らせ)

一方、市電延伸の反論として、一部沿線住民だけが恩恵をうける偏った政策だという意見もある。

そうだろうか?

札幌のほか都市部では『都心回帰現象』といって、都心部での人口が増加する現象が起こっている。
これは、郊外では不動産の資産価値の上昇が見込めないというのと、学校、教育、買い物、医療といった生活面で、都心の利便性が見直されてきたからだろう。

行政側からしても、郊外の開発によって市街地が拡大しても、その社会インフラを維持するために目に見えないコストが増えるのである。
新たな住宅地の拡大を抑制して既存の市街地に集約できるのならば、インフラコストの点で望ましい。

過去に開発された郊外のニュータウンは、高齢化と人口減少という問題を抱えている。
しかし、一旦市街地化した地域は、いくら衰退しようとも、インフラ維持のための費用は半永久的に発生し続ける。
特に冬季の除雪が必要な都市ならば、なおさらだ。

これから少子高齢化問題は確実に現実のものとなる。都市を持続的に維持するために、都心部の公共交通をどのように形成するかというのがこれからの課題となる。

高齢者ドライバーの運転自粛という観点からも、公共交通機関は必要である。

札幌には幸い残された市電がある。
この遺産を最大限活用するのが、最も適した交通政策ではないだろうか。

というわけで、札幌市電の延伸の想像をここに披露させていただきました。
現実には実現不可能なものも多々あったと思われますが、そこは素人の想像ということでご勘弁願います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【おことわり】
この記事の内容は100%筆者の私案であり、沿線の環境問題ほか、あらゆる利害、権利などは考慮していません。
筆者は、市電延伸の関係者や関係団体とは一切関係ありません。

posted by pupupukaya at 19/06/19 | Comment(0) | 札幌市電
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