さて前回で決めた西2丁目、新幹線高架下ルートがどのようになるか実際に見てみたい。
まずは西4丁目〜札幌駅(新幹線駅)へのルート。
西2丁目通りまでは既存の1条線から直進となる。
で、西4丁目から西2丁目までの南1条通りの現状はどうかというと以下の画像をご覧ください。
客待ちタクシーと路駐のため実質片側1車線の南1条通り。
一応片側2車線ということになっているが、客待ちタクシーと路駐が両側を占拠して、実質片側1車線としか機能していない。
ここへ複線の軌道を敷設するとなると、両側の車はどこかへ行ってもらわなければならない。
路駐はともかく、駅前通りから締め出された客待ちタクシーを、またしても締め出すとなると業界から大反発を食らいそうだ。
欧米ならばこんな道路は歩行者と路面電車のみ通行可としたトランジットモールになるところだが、日本ではまだまだそんなものに理解など無いに等しい。
ここはひとつ、一方通行にしてしまおう。
これならば、片側2車線、幅員7m以上は確保できる。
軌道は南側に寄せるダブル・サイドリザベーションとし、北側車道は東行き一方通行とする。
これならば路肩に客待ちタクシーが駐車していても、十分余裕がある。
一方、締め出された西行きの車は、1丁北側の南大通りへ迂回してもらえばよい。
これは、東2丁目や創成川通り(現在は右折禁止)の交差点に、右折専用レーンや右折専用信号を設けることで誘導する。
南1条通りに市電の軌道を敷設した道路断面図(筆者作成)
次の問題。
それは南1条西2丁目、丸井1条館角のコーナリング。
この角は隅切り8mとなっているが、これは床面だけ削って8mに合わせただけで、2階から上は建物が張り出している。
ここを曲がれるのだろうか。
その前に、西2丁目通りは西側(丸井側)に軌道を寄せたサイドリザベーションとする。
その理由は、西2丁目通りが南行一方通行なため、道路中央を電車が通行すると、北方向へ向かう電車は逆走ということになる。
また、軌道を跨いだ車線変更も困難となるため、サイドリザベーションがベストということになる。
東側の歩道はバス停が多くあるので、軌道を東側に寄せるのも無理だろう。
丸井今井一条館角のコーナリング。
で、問題の丸井1条館角の曲線。
JWCADで描いてみたら、半径18mとすることで何とか収まった。
緩和曲線なし。
それでも、歩道縁石の隅切りが必要になるなど苦しい曲線である。
ちなみに、『低床車両デザイン検討業務プロポーザル実施要領』によると、低床電車A1200形電車(ポラリス)の設計最小曲線半径は14mということだ。
R18mとすることで南1条西2丁目交差点はクリア。(JWCADで筆者作成)
丸井角はクリアしたが、続いての問題は南1条から南大通までの区間。
5車線(以前は6車線)の西2丁目通りだが、ここの1丁だけは4車線のボトルネックとなる。
またしても丸井今井1条館の建物が張り出しているためで、丸井側の歩道幅員は図面上は5.72mとなっているが、実際は4.5mほど。
タクシー乗り場部分はさらに歩道が狭くなって、ここは約3m(筆者目測)の幅員になっている。
このタクシー乗り場部分まで歩道を削れば複線の軌道を敷設しても3車線の車道は確保できそう。
歩道は街路樹や駐輪自転車が占拠しているので、現状は実質この有効幅員となっているのと、南1条と中通りの短い間だけなので、狭い歩道で勘弁してもらおう。
車道側に安全柵も設けなければならないし、実際はさらに狭くなる。
大通館側は1階部分がアーケードのようになっていて、そこを通行することができる。
丸井今井一条館横の西2丁目通り、タクシー乗り場付近。
丸井今井大通館横の西2丁目歩道。自転車が置いてあるあたりまで歩道を削ることになる。
南大通りから北側は堂々とした5車線区間で、複線の軌道を敷設しても3車線+路肩は確保できる。
ここから札幌駅までは一直線だ。
車道17.45mの左端に軌道敷6mを想定した図。大通から北方面。(筆者作成)
西2丁目通りに市電の軌道を敷設した道路断面図(筆者作成)
上図の路面に停留場ホームを設置した道路断面図(筆者作成)
と思ったら、北1条西2丁目、創成スクエア前の交差点には西2丁目地下歩道の出入口になる階段とエレベーター室が車道の1車線を塞いで占拠している。
以前、西2丁目通りは北5条から北1条までは6車線だったのだが、この出入口が新設されたので5車線に減らされたのだ。
車線を減らしてまで歩行者の空間を確保するなど、以前では考えられなかったもので、とにかく歩行者優先で設計される良い時代になった。
しかし、この歩行者優先の設計も、市電延伸となると厄介な存在となる。
西側1車線を潰して設けられた西2丁目地下歩道の出入口。
北1条交差点はバス停もあるし、バス路線も右折や左折で北1条通りに行く路線が多い。
ここを2車線としてしまうと相当なボトルネックとなる。
都心発着のバス路線の大半はこの道路に集中している。やはり3車線は確保したいところ。
これはちょっと移設するか、廃止するかしかないだろう。
西2丁目地下歩道の出入口を裏から見る。
この2つのボトルネックをクリアすればあとは快調に北5条まで。
たまにこの通りを車で通ることがあるが、西2丁目通りは本当に無駄に広いとおもう。
道路の幅員は十分にあるが、北1条から北4条まではビルの駐車場の出入口、デパートの搬入口などがいくつも存在するのが頭の痛い問題。
そもそも市電の敷設予定など全くなかった道路だし、駐車場の設置者に罪はない。
市電の軌道を横切って出入りする形になるので、これは安全のためにミラーや電車接近の警報装置などを市電の費用で設置するべきだろう。
片側2車線を軌道としても、まだ余裕がありそうな西2丁目通り。北4条から南方向。(筆者作成)
エスタの歩道橋から見た北5西2交差点。普段は3車線で十分なほどの通行量。
北5条西2丁目交差点で、電車は右斜め方向に曲がることになる。
大東案に決定した新幹線の駅前に乗り入れるためだ。
新幹線駅建設予定地。現在は広大な駐車場と駐輪場の北5西1街区。
2019/4/10 北海道建設新聞
現在は広大な駐車場と駐輪場となっているが、北海道新幹線開業に合わせてここにタワービルが建つことになる。
JR北海道単独の事業ではなく、札幌市も *札幌駅交流拠点再整備構想 としており、札幌市も再開発事業として絡むようだ。
『道内最大の交通結節点にふさわしい交流拠点の形成を目的とし』とあるので、タワービルや新幹線を含めて、ここを一大交通拠点とする計画のようだ。
その計画書には今のところ市電乗り入れの構想は無い。
現状のまま計画が進めば、市電乗り入れなど困難になってしまう可能性が高い。
早い段階で市電延伸関係者がこの再開発計画に加わる必要がある。
筆者の想像では、このタワービルを含めた駅ビル内を、斜めに市電の軌道を通すことにした。
西2丁目通りから新幹線高架下へは最短ルートとなるし、建物の縁を通すとなると3回も90度のカーブを曲がらなければならないのでそれを避けるため。
タワービルの下に軌道を斜めに通すのが可能かどうかはわからないが、そうさせてもらう。
札幌駅交流拠点の構想。
札幌市HP『北5西1街区の活用に関するサウンディング型市場調査」の実施について』の参考資料より引用。市電路線(赤破線)は筆者記入。
1階部分が分断されるのでは、と思われるだろうが、新幹線改札は1階に設けられるものの、1階から外に出てもほとんど何もない場所なので、新幹線の旅客は2階や地下からのアプローチになり、また新幹線からの降車客もそちらに分散するものと思われる。
1階部分は市電のホームのほかは、新幹線駅のコンコース、タクシー乗り場などが設置されることになるだろう。
札幌駅交流拠点再整備構想をもとに勝手に駅ビルと市電の線路を想像したのが下の図。
札幌駅新幹線口となる北5西1街区に、勝手に駅ビルと市電軌道を入れた図。(地理院地図より筆者作成)
ここまで、西4丁目から札幌駅新幹線駅までのルートが決まった。
これを都心線の北部分とし、地図に路線を描くと以下のようになる。
都心線、西4丁目〜札幌駅の詳細図(クリックで拡大)
途中の停留場はテレビ塔前、北2条、北4条と2丁ごとに設けた。
2丁ごととしたのは、サイドリザベーションの歩道側の速度が20km/hに抑えられていることで、2丁走れば赤信号で停止となるだろうから。
西4丁目停留場は札幌駅・苗穂駅方面乗り場は現在のループ線外回りと共用。1条線方面乗り場は南1条通りのパルコ前の歩道上に新設とした。
南1条西4丁目交差点からは軌道を南側に寄せたサイドリザベーション。
昔は南1条西2丁目に丸井前停留場があったが、ここには停留場を設けず、大通公園に面した場所に設けることにする。
西4丁目の次はテレビ塔前。丸井今井大通館と札幌市役所へは横断歩道を渡ればすぐだ。
北1条西1丁目のNHK札幌放送会館は移転することになっていて、同じ街区の市民ホールも実は仮設のもの。
ここへ札幌市役所が新築移転する構想があるらしい。
2015/11/16 北海道建設新聞
北2条は、創成スクエアの前。
創成スクエアができてからここの交差点は歩行者の通行量が増えた。
北4条は、いるかなと思ったが、東急デパートと地下鉄東豊線さっぽろ駅が最寄りとなることから設けることにした。
新幹線の札幌駅はタワービルとなる新駅ビルの1階。停留場名は札幌駅新幹線口とした。
在来線の改札口は新駅ビルの3階に設けられる予定になっているが、在来線の利用者が市電で来ると逆に不便になるのと、地下鉄さっぽろ駅とは別の場所にあるために区別するため。
想定した場所は、新幹線の改札口を出てから約50mほどの距離。
改札口から市電の乗り場が目の前に見えることだろう。
地下鉄東豊線さっぽろ駅改札口までは、最短の通路が設けられたとしても160m以上、しかも地下2階まで下りることになる。
大型のスーツケースを持った人がたくさん乗り降りしそうだ。
西4丁目〜札幌駅新幹線口間の営業キロは1.3kmとなる。
所要時間はどのくらいになるのだろう。
それは信号のサイクルが問題になる。
サイドリザベーションということで、最高速度が20km/hに抑えられるわけだが、青信号になり発進した電車が、次の信号を止まらずに通過できるのかという問題。
西2丁目通りは、北1条を除いて歩車分離信号となっている。
1サイクルは約2分。これを西2丁目通りと東西方向通りの持ち時間が各約35秒、歩行者が約35秒、全部が赤になる時間が各5秒と割り振られ、それぞれの通りの交通状態によって5〜10秒ほど前後するようだ(筆者実測)。
西2丁目通りの場合、青信号になって約30秒で黄色信号となる。
青になって発車した電車は、30秒以内に次の信号を通過できなければ、それこそ1丁ごとに赤信号で停止する羽目になり、これでは歩くのと変わらない。
20km/hでは、約130m先の次の信号までどうしても30秒ほどかかってしまうようだ。
それに青に変わったら即GOというわけにもうかず、どうしてもタイムラグが発生する。
そこで、電車が交差点に接近したらトロコン※などで検知し、5〜10秒ほど青信号を延長するなどの措置も必要だ。
※ トロコン=トロリーコンタクターの略。架線に設置し、電車のパンタグラフが触れることで電車を検知する装置。
これで前の停留場を発車してから、2丁先の次の停留場を発車するまでちょうど2分ということになり、所要時間が決定する。
あと、西4丁目交差点は現在では、歩行者信号の青が終了してから20秒間路面電車の矢印進行となるが、これではタイミングが悪ければ、1サイクル分最長2分30秒ほど待たされることになる。
電車を検知すれば、信号の各変わり目に電車の矢印進行が出るように改善していただきたい。
ただし西4丁目の交差点は、南1条を一方通行としたことで、直進する電車に限れば青信号で通過できることになる。
これで西4丁目を発車すると3分でテレビ塔前へ。乗客扱いと信号待ちで1分。
そこから北4条まで停留場2つ分で4分。
北4条を発車し、北5条はここも路面電車の矢印進行による通行となる。北5条の信号待ちを含め札幌駅新幹線口まで2分といったところ。
西4丁目〜札幌駅新幹線口までの所要時間は計10分。
表定速度は7.8km/h。
だいぶ情けない数字で、歩くよりマシといったところ。
地下鉄ならば大通〜さっぽろ間の所要時間は僅か1〜2分。
しかし地下鉄の改札口から新幹線の改札口までの移動距離は、東豊線でも160m以上、南北線からだとゆうに400mを超える。
これを重たいスーツケースをガラガラと引いて歩くことを考えれば、大通〜新幹線駅の移動は市電にも分がありそうだ。
バスがあるじゃないかという意見もあるだろうが、札幌駅のバス発着場所が各社でバラバラ、大通や南4条あたりまでのバス停留所も同様にバラバラということを考えればほとんど利用価値はない。
北3条西1丁目にある中央バスの札幌駅前停留所。駅前を名乗るバス停では札幌駅から一番遠い。
福岡市の博多駅〜天神の100円バスのように、駅前の停留所を集約すればそれなりに利用価値がでるのだろうが、バス会社も方面もバラバラなバスを使いこなすのは慣れた人以外は無理だろう。
それにすべてのバスが大通まで行くわけではない。
さて、札幌駅新幹線口へ乗り入れた市電。
今度は新幹線の高架下を通って苗穂駅へ向かうことになる。
【おことわり】 この記事の内容は100%筆者の私案であり、沿線の環境問題ほか、あらゆる利害、権利などは考慮していません。 筆者は、市電延伸の関係者や関係団体とは一切関係ありません。 |
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