こんどは都心地域と創成川以東地域の市電延伸について考えてみたい。
都心地域はJR札幌駅、創成川以東地域はJR苗穂駅への接続が主眼となる。
延伸の3候補地区(札幌市路面電車活用計画より引用)
筆者が考えた札幌駅と苗穂駅への延伸ルートは下図の通り。
札幌駅と苗穂駅方面延伸のルート案。(地理院地図より筆者作成)
まず、創成川以東地域(以下苗穂方面とします)のルートは、北3条通りということで異論はないだろう。
幅員27.27m、現在片側2車線の北3条通り。
北3条通りはかつて市電苗穂線があった通り。
延伸ではその復活となる。
その他のルートとしては、北1条は国道で交通量が多いので論外。
北2条は都心を東西に貫通していることや、苗穂アンダーパスへ直進する道路なので、こちらも交通量がある。
苗穂駅に乗り入れるのならば、北3条通りをおいてほかにはない。
とりあえず苗穂方面のルートは北3条通りで確定である。
次は都心地域(以下札幌駅方面とします)である。
これはいくつものルートが考えられる。
1つは駅前通りを北進し、北3条通りや札幌駅へ向かうというもの。
2つ目は1条線から南1条通りを直進し、西2丁目通りを北進するというもの。
創成川通りも有力候補として挙げられそうだが、以下の画像で見るとちょっと無理っぽい。
北4条歩道橋から創成川通り南方向を見る。
創成川通りは、川側ぎりぎりまで車道になっていて、とても市電の軌道が敷設できそうにはない。
南北方向に通過する車の多くはこの創成川通りを通行する。
いくら路面電車党の筆者でも、創成川通りの車線を減らして軌道を設けるのは反対である。
それと創成川通りは、都心アクセス強化(創成川通の機能強化)として現在の札幌北ICから新たにバイパスを新設する計画がある。
そうなると、この付近にバイパスの出入口が設けられると思われ、ここに市電が乗り入れるとなると動線が交錯して大混乱になるだろう。
そういうわけで、創成川通り案は最初から却下。
同場所から創成川通り北方向。このあたりに新バイパスの出入口が設けられるかもしれない。
もう一つ有力候補になりそうなのが、西2丁目と西3丁目にそれぞれ単線の軌道を敷設するというもの。
両道路は一方通行になっていて、それに沿う方向に電車が走ることになる。
4車線一方通行の西3丁目通り。
却下とした理由に、西3丁目通りがあまり広くないことが挙げられる。
ここに無理に軌道を設けるくらいなら、無駄に広い西2丁目通りに複線で敷設したほうがいい。
それともう一つが、これらの通りが一方通行で、しかも都心発着のバス路線の多くがここを通行するから。
一方通行路に軌道敷を設けるとなると、サイドリザベーションということになるだろうが、そうなると歩道上のバス停からバスに乗降ができなくなることになる。
進行方向右側に軌道敷を設ければこの点は解消するが、こんどは電車が歩道から乗降ができなくなるし、停留場は車道側に張り出して設置する必要がある。
幅広の西2丁目通りはそれでも余裕がありそうだが、西3丁目通りでは停留場部分は車線が2車線となってしまうので、さすがにこれでは渋滞するだろう。
(路駐の多いこの通りは実質2車線しか機能していないが)
そんなわけで、創成川通りと西3丁目通りは初めから候補から外した。
片側2車線の札幌駅前通り。
で、まずは1番候補の駅前通り。
この通りは、駅前通り地下歩行空間の工事が始まる前は片側3車線道路で、現在でもそのままであれば、市電都心線と同様にサイドリザベーション+片側2車線とすることができた。
しかし、地下歩行空間の出入口が車道の1車線をつぶして設けられたので、現在は片側2車線となっている。
車線数を減らしてまで歩行者のスペースを確保するというのは、昔では到底考えられなかったことである。
なんでも車優先だった時代と比べると、良い時代になったものだ。
しかし、この歩行者優先の設計が、市電延伸にとって厄介なものになるのだった。
1車線を軌道敷とるすと、残りの車道は1車線ということになる。
左側にある停車帯を生かすと、道路中央側に軌道を敷設することになるだろう。
地下歩行空間の明り取り窓をふさいで、中央分離帯を撤去すれば2車線分の車道は確保できそうだ。
北3条から苗穂駅方向へ行く路線ならばそれが最適である。
しかしもう一つ。悩ましい問題。
それは、札幌駅や苗穂方面へ路線を延伸する上での最大の難問でもある。
そう、それは大東案で決着した新幹線の札幌駅である。
現在の1・2番線転用案や地下案ならば、駅前通りを直進し、南口駅前広場に入ればよかった。
現在の駅と離れた場所に新幹線駅ができるのならば、当然そちらへも市電を乗り入れさせたいところである。
駅前通りを北進し、苗穂駅と新幹線駅へ延伸するルート案。(地理院地図より筆者作成)
うーん・・・、2丁離れて同じ方向へ向かう2路線。
何だか無駄じゃね?
筆者でなくとも、誰もがそう思うところだろう。
また実際に電車を走らせるとなると、この2線は当然ながら別系統となる。
2つの路線を集約して、1本化すれば良いのではないかと誰もが考えるだろう。
駅前通りを北進し、在来線駅と新幹線駅を経由して苗穂駅へ向かうルート案。(地理院地図より筆者作成)
うん、だいぶすっきりした感がある。
札幌駅南口広場には入らず、北5条通りに右折して新幹線駅へ。
そこから南進して北3条通りに入るというもの。
一見良さそうだが、これもまた問題がある。
市電の苗穂方面延伸の最大の目的とは、苗穂駅周辺地域と大通地域を結ぶことである。
苗穂地域の人が札幌駅に行くにはJRを使えばいいだけだし。
それに、札幌駅へ迂回するこのルートだと、交差点の右左折が2つ増えることになる。
自動車と違い、路面電車が右左折するには、自動車の信号をすべて赤にして停止させる必要がある。
また、新幹線駅の駅前広場にも乗り入れさせたいところだ。
こうなると、大通〜苗穂駅間の所要時間で考えれば、おおよそ10分程のロスが発生することになる。
『虻蜂取らず』とはまさにこのこと。
苗穂駅方面か、札幌駅方面か、どちらかを諦めるしかない。
残念。
と思いかけたところ、一つの案を思いついた。
要するに、新幹線駅へ寄ってから苗穂駅へ向かえばいいんだろう?
新幹線の高架下を専用軌道で通せばいいんじゃね。

札幌駅を通り越して苗穂駅手前付近まで建設される新幹線。
※札幌市HP、 札幌市内のルート図より引用
新幹線は発寒駅付近から函館本線と並行して地下トンネルとなり、石山通りを過ぎたあたりで地上に出て、そこから高架で札幌駅へ向かうルートに決定している。
その新幹線の高架は、大東案の札幌駅で終わりではなく、現在の苗穂駅手前くらいまで引込線が設けられ、車両基地を持たない札幌側では、新幹線車両の留置線として使われる計画になっている。
その留置線がどのようになものになるかはまだ明らかにはされていないが、おそらく連続した高架橋となるはずだ。
ここを専用軌道として通せばいいのではないか。
これを新幹線高架下ルートとする。
というわけでこうなりました(下図)。
札幌新幹線駅を経由し新幹線高架下経由で苗穂駅へ向かうルート案。(地理院地図より筆者作成)
駅前通りルートは新幹線札幌駅へ乗り入れると右左折が増えて不利になるので、ここは西2丁目を北上とした。
北3条ルートと比べると、苗穂駅から大通へは若干遠回りになるものの、札幌駅から苗穂駅までは専用軌道となり、車との交錯がないぶん定時性は増すことになる。
地図上に路線を描いて、さらに計画中の再開発計画も書き入れてみた。
こうして見ると、新幹線高架下ルートの沿線は再開発計画が目白押し。
逆に市電の高架下延伸を狙っていた?と思いたくなるほどだ。
むしろ、当初の北3条ルートが地味に感じる。
中央体育館が北1条から北4条の線路沿いに『北ガスアリーナ札幌46』として移転したが、交通機関はどのようなものを想定したのだろうか。
一応、ファクトリーとは空中歩廊で結ばれているが、そこで終わりである。
また、地下鉄のバスセンター前駅からのアクセスとなると、北1条通りに面したファクトリーのフロンティア館からは屋内を通ることができるが、ゆうに800m以上は歩くことになる。
再開発計画の多くは商業施設のほか、ホテル、マンション、医療施設の建設ということになっていて、どれもが交通機関が貧弱では話にならないものばかり。
車でのアクセスを想定するならば、都心近くよりも郊外に建てるほうが余程良い。
これらの再開発計画があることで、高架下ルートが がぜん輝いてくる。
北3条など目じゃないというほどだ。
仮に北3条通りルートを採用したら、この高架下は駐車場にでもなるのだろうが、それはもったいない話。
市電を通せば、高架下の有効活用の好例となるに違いない。
現在は駐車場となっている新幹線高架建設予定地。
ただし、高架の構造が特殊なものになるので、建設費の増大はあるだろう。
JR北海道や国土交通省との交渉も必要になる。
建設費の増大は、特にJR北海道は嫌がりそうだが。
高架下の使用となるので、JR北海道に賃借料を払うことになるとすれば、JR北海道にとって悪い話ではあるまい。
あるいは高架はJR北海道、軌道は札幌市または交通局の所有とする区分所有的なものとすることも考えられる。
そうなれば双方が建設費を出し合うことになる。
新幹線の引込線となる予定の土地は、もともと地平線時代に線路が5線並んでいた場所で、複線の新幹線高架を建設してもまだ余裕がある。
この土地を都市計画道路として札幌市が買い上げ、高架下も含めて道路区域とし、高架下は路面電車軌道、その脇は遊歩道(札幌〜桑園間の緑道のような)として整備すれば交通局の持ち出し分は減るんじゃなかろうか。
あるいは、現在札幌駅西側の西5丁目から西11丁目まで市道となっている高架側道6号線(札幌桑園停車場緑道線)の一部、西2丁目から創成川通りまでの市道北6条線の一部も新幹線用地となる。
これはもともと函館本線の地平線の跡地を有効活用するべく、市が取得して道路や緑道として整備したものである。
新幹線建設となると、この市道が再びJRの用地として取得する必要がある。
一方で、札幌駅から苗穂方面の地平線跡地は、なぜかJR所有のまま残されている。
そこで、札幌市所有の新幹線用地として明け渡さなければならない道路と、高架下の市電用地とする用地を、等価交換するという手もある。
桑園方の市道と苗穂方のJR所有地を交換してみると・・・
この辺りは100%素人考えだし、鉄道線路に区分所有なんてものがあるのかは知らない。
専門家や関係者からすれば笑われるような話かもしれない。
ま、その辺は筆者の勝手な想像ということで勘弁してください。
次はこのルートに軌道を敷設するとどのようになるか想像してみます。
【おことわり】 この記事の内容は100%筆者の私案であり、沿線の環境問題ほか、あらゆる利害、権利などは考慮していません。 筆者は、市電延伸の関係者や関係団体とは一切関係ありません。 |
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