2018年 釧路湿原ノロッコ号2

 ◆ 釧路 11:06【くしろ湿原ノロッコ2号】11:54 塘路

前回の続き、くしろ湿原ノロッコ号の自由席車である。

さっきコンコースの売店で買ってきた駅弁をいまのうちに食べることにした。
発車8分前だが、こちらにもまだ人が乗ってきそうだ。

本当は発車してから車窓を眺めながらの方がいいのだけれど、1人なので周囲に人がいると落ち着いて食べられない。
4人掛けボックス席ならばなおさらだ。

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 釧路駅で買った駅弁『いわしのほっかぶり』と往復乗車券。

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 握り寿司が8カン入り。

いわしのほっかぶり寿司は酢で締めたイワシの身と、これも酢締めの大根の薄切りがのる握り寿司だ。
脂がのったイワシに、さっぱりとした酢締め大根が絶妙な相性。

1080円はチト高いが、値段さえ気にしなければ食べて損はない。

釧路の地酒、福司(ふくつかさ)が飲みたくなった。
脂があるがさっぱりとした寿司に、福司が合いそう。
しかし、帰りは車を運転するので飲むわけにはいかない。

こんどは釧路で泊まるか、特急スーパーおおぞらで来た時だね、残念 (´・ω・`)

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 薬味はワサビではなくショウガ。

発車時刻の11:06になったが、この列車に接続するスーパーおおぞら1号が、地震の徐行箇所があるために遅れているとのこと。
「到着して、お客様が全員乗り換えたことを確認してからの発車となります」とのアナウンスがあった。

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 地震による運休で厚岸始発になったルパン列車が入ってきた。

11:12頃に1番線に札幌からのスーパーおおぞら1号が入線。
こちらに乗り継ぐ人が少なからずある。この自由席車にも数人が乗ってきた。

それでも湿原側のボックス席はすべてふさがったが、山側のほうはまだ空いているボックスがある程度の乗車率。
全員乗り継いだのを確認し終わり、発車は11:15となった。

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 釧路駅を発車する。

ピーーー、っと汽笛が鳴って動き出す。

う〜ん、動き出し方といい、重厚な振動や音といい、これぞ客車列車といった感じがする。
紛れもなく汽車だなあ。JRの列車を汽車と呼んでいたころを思い出す。

一般の方であれば、展望車や車窓の釧路湿原が一番見たいところでしょうが、こちらは鉄道マニアなのでこういうところに感激してしまう。

マニアとかオタクってのはヘタすると変人に見られがちだが、こんなことで感激、脳内麻薬アドレナリンが出てくるのなら安いものだと思うのだが、どうだろう。
金のかかる車とかギャンブルとかより、はるかに健康的と思うけどねえ。

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 釧路川を渡る。

発車すると車内放送が始まって、同時に車掌が車内を回って車内改札を行う。
4両編成ながら車掌が2人も乗務するとは何とも贅沢な列車だ。

塘路まで指定席料金込みで片道1,060円。
この列車も赤字なんだろうな・・・

全く余計なお世話ながら、そう考えてしまった。

自分の番がきて、塘路までの乗車券を見せると、裏がスタンプ台紙になった乗車証明書というのをくれた。2号車にスタンプがあるのでどうぞとのこと。

車内を見ていると、意外と乗車券を持たない客が多い。
だから車掌が2人も乗っているのかわからないが、結構大変そうだ。

釧路川を渡って東釧路に到着。
ここで2人乗ってくる。

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 東釧路駅は立派な駅舎があるが無人駅。

ノロッコ号だが、遠矢あたりまでは普通に走る。
ときどきドンという前後の衝撃があるのが客車列車というか汽車という感じ。
規則正しく刻むジョイントの音も心地よい。

東釧路〜遠矢間では国道391号線と並行するが、走っている車をスイスイと追い抜いて行くのは気持ちが良い。
スマホのGPSアプリで測ったら、最高速度は70km/hくらいのようだ。

しばらくは釧路の市街地が続くが、遠矢駅を通過したあたりから人家は途切れて釧路湿原が見えるようになる。

遠矢と釧路湿原の間で徐行箇所があり、岩保木(いわぼっき)水門が見えた。

観光列車なので、車掌の観光案内放送もある。
「岩保木水門は現在の塔があるものは1990年に完成、奥に見える木造の建物が初代の水門で1931年完成のものでございます」
「完成から一度も開けられたことがなく、開かずの水門とも呼ばれております」

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 最初の徐行箇所から見る岩保木水門。

岩保木の徐行が終わるとまたスピードを上げ、釧路湿原駅に着く。
ここから乗ってくる人も多く、ボックス席はすべて埋まった。

この列車の釧路湿原発車時刻は11:30で、前の列車は上りも下りも9時台のしかない。
2時間もここで過ごすにしては軽装な人ばかり。
駅の近くに細岡展望台があって、その駐車場もあるから、車で来たのかもしれない。

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 釧路湿原駅ではまとまった乗車があり。

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 指定席車両はやはり人気。

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 自由席もそれなりの乗車率。

釧路湿原駅からは指定席の展望車にも乗車があり、車内はそこそこ盛況になった。
車掌が釧路湿原駅から乗った人に乗車券を売って回る。

普段は女性なんかは髪が乱れるので窓を開けたがらない人も多いが、このノロッコ号はここぞとばかりに窓を開ける人が多い。
今日は晴れていて暖かく、吹き込む風はむしろ心地よい。窓を全開にして、釧路湿原の空気を思い切り吸い込みたい。

北海道内ならば、窓が開く非冷房の車両がまだまだ現役だが、本州のほうでは今どきこんな車両は無いだろう。

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 車窓の釧路湿原。

次の細岡駅は待合室があるだけの無人駅。
ここでも数人の乗り降りがある。

駅前は何もなく、観光地や観光客が嫌いな人は、ここ細岡駅で降りて散策するのもアリだろう。

昔はあったのだろうが、今は駅付近に人家は全く無い。JR北海道としては廃止したがっているようである。

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 細岡駅に停車。ここも数人の乗降がある。

次は終点の塘路。
細岡〜塘路間は他の列車ならば9分で走るが、この列車は18分もかけて走るので、ノロッコ号の本領発揮(?)する区間になる。

途中に釧路川が見える箇所があって、列車はここも徐行して進む。

「皆さん、どうぞカヌーに向かって手を振ってください」

車内の人は皆大きく手を振る。
カヌーの人も一所懸命手を振っていた。

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 釧路川のカヌーが手を振っていた。車内からも手を振る。

地図で見ると線路は湿原に沿っているように見えるが、実際は線路際は林が多く、展望はあまりよろしくない。

釧路湿原が見える区間で一番景色がすばらしいのは塘路〜茅沼間だと思うが、残念ながらノロッコ号は塘路で折り返してしまう。
塘路の次だと、標茶まで行かなくては折り返せないので仕方がないところではある。

釧路川の場所を少し過ぎた所に、草原の中に1軒の廃屋が見える。
周りには道らしい道も無いところだ。ここで牛を飼って生活していたのだろうか。

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 草原と廃屋。ここも開拓の物語があったんだろうな (´;ω;`)

あとはずっと林の中を走り、終点の塘路に着く。
4両の乗客が全員下車するので、ホームはラッシュのように人が溢れた。

ホームの出口では車掌が集札する。
集札する係の人は3人いて、もう1人は機関士?

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 終点の塘路駅に到着。

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 3名の車掌さんが集札する。

塘路駅前はノロッコ号の折り返しの20分間、しばしの賑わいになる。
折り返しの列車で戻る人はどこへ行くところもなく、駅前で過ごすしかない。

駅前はソフトクリームやいももちなどを提供する軽食店が3店舗、駅の中にカフェもあって、この間に軽く飲み食いすることはできる。

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 ノロッコ号の乗客でにぎわう塘路駅前。

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 駅横にある売店はソフトクリームが人気のようだった。

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 塘路駅では、1号車の半分と機関車はホームから外れる。


 ◆ 塘路 12:17【くしろ湿原ノロッコ1号】13:05 釧路

折り返しの列車は特に改札はしておらず、勝手に乗っていいようだ。

発車10分前だが、着いた時と違ってどの車両もがら空きだった。
指定席車両のメインだった中国人観光客はバスに乗り移ったのか姿を消している。
あとは、次の13:01発快速しれとこ摩周号があるので、そっちで戻るのかもしれない。それなら、塘路湖あたりまで散策してこられるだろう。

せっかくなので人がいないうちに車内の写真を撮らせてもらう。

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 指定席のノロッコ車両。折り返しの列車は余裕があった。

以下、懐かしの50系51形客車の車内の画像。

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 青いボックスシートが並ぶ1号車の自由席。

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 5人掛けロングシートとつり革。この辺りが一般型ということになる。

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 トイレが張り出した側のロングシート。

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 天井に並ぶ、JNRマーク入りの扇風機。

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 足元の暖房ダクトは撤去されていた。

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 旧型客車と同じ形の窓が汽車らしい雰囲気を出している。

この客車の内装は50系客車の原形と説明したが、正確には若干改造されている。
片側の出入り口はふさがれていて、電源供給用の発電機が置かれている。だから停車中は客車のような静寂というわけではなく、発電機のエンジンの唸る音が小さいが響いている。

またノロッコ号用に改造されてから、形式もオハフ51からオハ510に改められている。

それでも、この青いモケットのボックスシートのつくりは国鉄時代からそのまま変わらない。

50系客車自体は全国でも希少となっているが、残っていることは残っている。
しかし、国鉄時代からの原形となれば、全国で唯一だろう。

このノロッコ号の車両も、車齢を考えるとそう長くはないということは想像がつく。
客車以上に老朽化が進んでいるのは実は機関車だが、先に機関車が老朽廃車のためにノロッコ号が廃止になることも十分考えられる。
実際、網走〜斜里間の流氷ノロッコ号は、冬季間の機関車の確保が出来なくなったことで廃止されている。

もし廃止されることになったら、この『オハ510-1』だけはどこかでちゃんと保存してくれないだろうか。
できれば改造前の赤い塗装に戻して。

おそらく全国でただ1両だけだろう、国鉄の50系客車の生き残りは。解体してしまうのはあまりにも残念だ。

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 オハ510の車番。

私が創作した小話をひとつ。

JR北海道、JR東日本、JR西日本、JR九州、いすみ鉄道の各社長が最後の50系客車をどうするかについて話し合った。

JR北海道社長:まだ走れるけど保存するお金も無いので海外譲渡しよう。
JR東日本社長:SLに牽かせて東北の路線に走らせ、新幹線でお客を連れてこよう。
JR西日本社長:朱色に塗装してラッシュ時の気動車の増結用として使おう。
JR九州社長:クラシカルな展望車に改造し、観光特急として走らせよう。
いすみ鉄道社長:昭和の国鉄客車列車を再現して鉄道ファンを呼び寄せよう。

いすみ鉄道社長さ〜ん (^^)/


折り返しのノロッコ1号は、行きの2号の半分以下の乗車率で塘路を発車した。
片道だけ乗車するのならば釧路発よりも塘路発を選んだほうが良いだろう。

1号車の自由席も私を入れて5人だけ。
落ち着けるのはいいが、少々寂しい気もする。

帰りの2号も行きの1号と同じ場所で徐行し、同じ観光案内がある。
写真ならばもうさんざん撮ったので、今度は客車の乗り心地を堪能する。

このノロッコ号、乗るのはこれが最後のような気がしてならない。

流氷ノロッコ号は2016年冬を最後に廃止され、翌年からは既存の気動車による『流氷物語号』として運行されることになった。
釧網本線の看板列車であり、観光列車とはいえ、短い区間を走る普通列車では収入も知れている。
そのための専用車両を用意することなど、いまのJR北海道には不可能だ。

快速しれとこ摩周号に指定席を試験導入するというのも、ノロッコ号の今後を見据えてのことか。ま、考え過ぎかもしれないが。

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 くしろ湿原ノロッコ号の乗車証明書とスタンプ。

1号車自由席の客は、細岡、釧路湿原と停車駅ごとに下車してしまった。
かわりに釧路湿原で数人の乗車があった。

それでも車内は閑散としたまま、終点の釧路に到着した。

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 釧路駅に到着。

地震の影響で、観光客のキャンセルが相次いだというニュースを聞いて、このノロッコ号もがら空きかと思われたが、連休で天気も良かったせいか盛況でまずまずといったところ。

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 反対側の4番ホームからノロッコ号を撮影。

ちょうど札幌からのスーパーおおぞら3号が着くところで、コンコースは出迎えの人や折り返しの8号に乗る人で賑わっている。
釧路駅は旭川駅や帯広駅よりも乗降客数は少ないが、なぜか釧路駅のほうが駅内の活気があるように見える。
そう考えると、駅のコンコースもあまり広すぎるのは考え物ではなかろうか。


 ◆ 終章、札幌まで

釧路駅を後にして車に戻る。

先にここのスーパーで買い物をする。
秋刀魚が1尾55円なのはさすが釧路。
いくら安くても、釧路からじゃさすがに持ち帰れないしね。

さてと、札幌へ向かって出発。長いぞー。

道東道の無料区間を本別ICで降り、あとはひたすら下道を行く。
池田、幕別、帯広、芽室、清水、日高、夕張、由仁、長沼、北広島・・・

前回道東に行ったときは、国道274号線が不通のため、道東自動車道が占冠〜十勝清水間に限って無料措置となっていたが、開通した今はそんなものは無い。

274号の日勝峠はあまり通りたくないところである。

十勝清水〜夕張間で千円ちょっと位だったら高速に乗るかな、と思って料金を調べたら1,630円。
う〜ん、やっぱり国道で行く。

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 おまけ:夕日に照らされた十勝平野。日勝峠展望台から。

日勝峠を越えたあたりで日没となる。

黄昏ゆく空の下を、考え事でもしながら走っていられるのならば高尚な一人時間となるのだが、そうは問屋が卸さないのが石勝樹海ロードと呼ばれるこの1本道。

普通に走っていてもトラックに追いついちゃうんだよね。
ストレスたまる国道なんだよね。
(文句あるんなら高速使えってか・・・)

道央と道東の貨物輸送はすべて鉄道にシフトする法案でも作ってよ。
ね、偉い政治家の人。

札幌の自宅に着いたのは夜8時過ぎ。釧路から6時間かかったことになる。
まあ、事故もなく、捕まることもなく、無事帰ってこられて良かった。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

〜おわり〜


posted by pupupukaya at 18/09/22 | Comment(2) | 道東の旅行記
この記事へのコメント
ノロッコ号乗車当日は天候に恵まれ、何よりでした。
懐かしい客車に乗っての釧路湿原の旅で、大いに英気を養えたことでしょう。

釧網本線の列車には、私も1度だけ乗ったことがあります。
乗車した列車は、「しれとこ」という名の快速でした。約20年前のことです。
釧路から乗車して、網走で特急「オホーツク6号」に乗り換えましたが、
特急券券面の21号車の表記に驚いたのも、今ではいい思い出です。

料理と酒のブログも、拝見しました。

帆立の貝焼き味噌も、そして牛肉と椎茸の軸の煮物も、酒には勿論のこと、
御飯にも合いそうですね。
料理が出来上がるまでの手順と画像も、毎回楽しみです。

禁煙してから20年とのことですが、旧ホームページの中の記事では、
読み応え十分の「私の禁煙日記」が、お気に入りでした。
(喫煙の)常習性がなくなることを以って良しとする、との一文が印象に残っています。

すすきの交差点にあるニッカウヰスキーの看板が明るくなった映像を見て、安心しました。
札幌は、もう大丈夫!ですね。
Posted by 北斗星51号 at 2018年09月23日 22:32
ありがとうございます。
被災された方々の復興はまだ時間がかかりそうですが、だからと言ってなんでも自粛していては全体が沈んでしまいます。
まだ全道一斉停電から全路線が復旧していない頃でしたが、なにか明るい話題をということで今回の記事としました。
(というのは半分くらいはあとからのコジツケですが)
禁煙20年は、10月の値上げを知って初めて気がついたもので、当時の記事は禁煙から6年目くらいに書いたものではなかったでしょうかね。
早いもんですなあ・・・
Posted by pupupukaya at 2018年09月24日 17:30
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