問題:札幌駅は函館本線の駅ですが、ではこの駅は起点の函館駅から何kmのところにあるでしょうか?
えっ?318.7km?
あんた若い人だね。
286.3km?、これがスッと出てきた人はおじさん(おばさん)以上だね。
最初の318.7km、これは特急のルートである室蘭本線・千歳線経由でのキロ数。
まあ実態数ではあるけれど正解ではない。
286.3kmというのが、函館本線である小樽まわりのキロ数ということになる。
この回答がなんでおじさんかって?
この小樽まわりの286.3kmという数字は、現在の時刻表ではもう載っていないからだ。
かつては長万部〜札幌間については、小樽経由でも室蘭経由でも、距離が短い小樽経由で計算した運賃・料金が適用される制度があったが、1994年に廃止されている。その後もしばらくは時刻表では小樽経由のままとなっていたが、長万部〜小樽間は別欄のローカル線扱いの掲載となり、この営業キロの記載も無くなった。
いわゆる山線と呼ばれる長万部〜小樽間は、当時普通列車しか直通しないローカル線になっていたし、実際小樽経由で乗車する人もほとんどいなかったので、実態に合わせた改定だった。
と言っても、それで32.4kmも距離が伸びたのでその分値段が上がるということになる。
要は体のいい値上げだったと言える。
最近は再び小樽経由の臨時列車の特急が『ニセコ』として復活したので、この列車に乗る場合は小樽経由の営業キロで計算した運賃・料金が適用されることになる。
まだ函館からの営業キロが記載された時刻表(道内時刻表99年3月号より引用)。
ちょっと話がずれたので、元に戻します。
で、函館から実際には何kmか、正解の前にこちらの画像。
札幌駅10番線ホームから。
上の画像左側にあるのは札幌駅にある287kmのキロポスト。
10番線ホームの向かい側にひっそりと存在している。
ただ、この場所にキロポストが設けられたのは最近のようだ。
まあ、こんなもの気付く人も少ないだろうし、10番線と11番線に電車が停車していれば見ることはできないものだ。
新設された『287』のキロポスト(2018年8月14日)
キロポスト設置前(2017年8月14日)
キロポストの下に手書きだが『287k000 / 駅中心』とあるので、ここが札幌駅のキロ程ということになる。
前述のとおり、函館からの函館本線での営業キロは286.3kmとなっていて、キロポストとの差は0.7km営業キロの方が短い。
この差はどこで発生しているかを調べてみることにした。これが今回の記事の目的である。
その前にこのキロポストの数字は何かということを説明しておく。
線路には測量中心線というものがあり、これは路線の中央に1本だけ引かれている。あくまで設計上のもので、実際にあるわけではない。
起点駅の駅中心を0k000m00として、そこからこの測量中心線に沿った距離がキロポストの数字ということになる。
この距離の1kmごとに下り線の左側に立てているのがキロポストである。
また、この距離は通常は小数点3ケタ(1m単位)で表し、駅(停車場)だけでなく橋梁、踏切、トンネルなど線路上のあらゆる施設に付けられる。いわば線路上の住所として使用される。
函館本線、白石駅東側の踏切に表示のキロ数。293K062Mとある。
営業キロも基本的には同様に設定されるが、測量中心線 <ここでは便宜的に以下『施設キロ』と呼びます> とは別物で、営業キロは鉄道の営業や運転上で使用されるが、施設キロはあくまで設計や施工、保守に使われるもので、営業上や一般の利用者には全く関係ないものだ。
ただ、開業当時から路線変更や線形改良工事で新旧両線の距離に変更になければ、両者は基本的に同じ数字となる。
じゃあこれが変更になったときはどうするのか。
営業キロの場合、新線に合わせて訂正するのが決まりのようで、新線に切り替わると営業キロも訂正されることが多い。
ただし、駅間のみの切り替えや変更ではそのまま据え置きということもある。
一方、施設キロの場合は、新線切り替え区間の終点までは新しい施設キロが設けられるが、そこから先はそのまま据え置きとなる。
つまり、いったん分かれた新線には新たな施設キロによるキロポストが立てられるが、もとの線に合流する地点で、旧線経由のキロ数に戻されるということだ。
この場合、新旧の合流する地点に距離更正点(ブレーキングポイント)という地点が設けられ、新旧の差を打ち消すことになっている。
なぜこうするのかというと、切り替えで起点からのキロ数の変更が生じるたびに、その先のキロポストの移設をしていては大変だからだ。
施設キロはあくまで線路上の構造物の住所を示すものとなる。
これの極端な例を挙げると、千歳線の苗穂〜北広島間は1973年に東札幌月寒経由の旧線から現在の新札幌経由の線に付け替えられている。これにより同区間の営業キロも21.9kmから19.6kmへと2.3km短縮されているが、一方、北広島から先の施設キロは変更されていない。
早い話が、北広島〜沼ノ端間のキロポストは現在でも苗穂起点東札幌経由旧線のままになっているのだ。
北広島駅には22km、南千歳駅には44kmのキロポストがホームから見えるが、実はこれは札幌駅からではなく、苗穂起点で今はサイクリングロードになっている旧線経由のキロ数である。
南千歳駅にある44kmのキロポスト。
南千歳駅にある石勝線の0キロポストと枕木にある44k130の表記。
南千歳駅の例を挙げると、この駅の苗穂からの営業キロは41.8km、同駅の施設キロは44.13kmとなっていて、歴然と旧線時代との約2.3kmの差が生じている。
あと余談だが、千歳線の起点駅は現在は苗穂駅ではない。
路線としての千歳線は白石〜沼ノ端間(※または沼ノ端〜白石)となっている。
苗穂駅に立つ千歳線の0キロポスト。
過去には国鉄時代に苗穂〜白石間が函館本線との二重戸籍になっていたが、JRになってから解消されている。
苗穂駅に立つ0キロポストはあくまで、千歳線の施設キロ上の起点というだけの意味になる。
これでおわかりいただけただろうか。
つまり営業キロは路線変更などがあれば新線に合わせて改定されるのに対し、施設キロは基本的に開業当初から変わることはない。
これが営業キロとキロポストの数字の差となって表れるのだ。
まあこれも例外があって、函館本線の納内〜近文間の旧線が複線の新線に切り替えられたときに、近文〜旭川間の施設キロも改定になっている。これは終点までたった1駅だけだったのでということだろう。
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