呑み鉄 イン・ザ・札沼線1

6月最後の金曜の夜、たまには飲みにいこうか。

といっても、居酒屋ではなく、今日は呑(の)み鉄。
ローカル線の古びたボックスシートで、ワンカップを傾けようというものだ。

札幌から近くて、空(す)いていて、ボックスシートのある列車・・・

石狩当別まで行けば、札沼線北部のワンマン列車が走っている。

というわけで退勤後、札幌駅へと向かう。
ピークは過ぎたとはいえ、札幌駅は帰宅ラッシュ。ものすごい人だ。

こんなの、ものの数ではないと言われそうだが、私は普段徒歩通勤なので、たまにラッシュの電車に乗ることがあるとこの人の多さに参ってしまうのである。

まずはみどりの窓口で石狩月形までの乗車券を買う。1070円。
休日ならば1日散歩きっぷがあるが、平日は普通乗車券で乗るしかない。
といっても、石狩月形までの単純往復ならば乗車券のほうが安いが。

改札を通って、コンコースのキヨスクでお酒とおつまみを買ってカバンに入れてホームへ。

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 帰宅ラッシュの札幌駅ホーム。

呑み鉄の極意は質素さにある。
金額じゃない。持ち込むアイテムの少なさである。

駅構内で購入したお酒とおつまみ。
せいぜい駅弁まで。

デパ地下で購入した惣菜を並べ、ワインの瓶を抜いて・・・

そういうのはよそでやれ。

あとはボックスシートだな。
転換クロスシートもいいけど、昔ながらのボックスシートが一番味わいがある。


 ◆ 札幌 18:45 【633M】 19:26 石狩当別

まず、札幌駅から学園都市線の電車で石狩当別へと向かう。
石狩当別から、石狩月形行の普通列車に乗るためだ。

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 石狩当別行733系電車。

車両は733系電車の3両編成。
日中は元エアポートの6両編成が行き交う学園都市線だが、夕方ラッシュ時は3両編成が運転される。
その代わりに、日中は20分間隔だが、ラッシュ時は15分間隔になる。

つり革につかまって大きな窓から景色を眺める。
昼間は小雨もぱらつく曇り空だったが、晴れ間がのぞいた西の空からは夕日が顔を出していた。

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 新川駅付近の高架橋から夕日が差し込む。

桑園〜新琴似の高架橋からは夕日に照らされた街並みと、手稲山の山並みが見える。
あらためて、なかなか良い景色だと思った。
車内の乗客は、そんなもん見飽きたとばかりに、スマホに熱中している。

途中駅では次々に下車していくが、意外と乗ってくる人もあって、空いた席もすぐに埋まってしまう。
そんなわけで、あいの里教育大駅でようやく座れた。

あいの里公園を発車するとさすがに空席が多くなった。

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 札幌市内を抜けると車内は落ち着いてきた。

防風柵で覆われた残念な石狩川鉄橋を渡ると当別町。
ここからは今までとがらりと変わって田園風景になる。

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 19:20、夕暮れの風景。

石狩太美でさらに降りて、空席だらけになった電車は石狩当別に着いた。


 ◆ 石狩当別 19:32 【5435D】 20:04 石狩月形

乗り継ぐ石狩月形行は向かいの3番ホームに入線している。
札幌からの電車から降りた人のうち何人かは石狩月形行に乗り込んだ。

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 石狩当別に到着。左が石狩月形行。

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 石狩月形行は1両のワンマン気動車。

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 呑み鉄列車は、キハ40 401が務めます。

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 『石狩月形ー石狩当別』の表示。

ホームで列車の撮影などをして車内に入る。
乗客はたったの5名。

石狩当別からの人が1名、今の電車から乗り継いだ乗客が4名となる。
私を入れていないが、私自身は普通乗車券で乗っているので人数にカウントしてもいいかもしれない。

それにしても、札幌を18時台に発車した乗り継ぎの列車がこの有り様とは。

一番稼ぎ時の乗客数が、たったこれだけとはあまりにも情けない。

これで廃止反対などと言うやつは 出てこーい (# ゚Д゚)

と、叫んでみてもしょうがない。
〜叫んでないけど (^^;

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 想像していた通り閑散とした車内。

ここからは札沼線の車内となる。
JRの名称は学園都市線だが、ここからはあえて札沼線と呼ばせていただく。
時刻表の表記も『札沼線』だし、間違いではない。

周りにだれもいないし、さっそく一杯やるとしよう。
窓側の窓框(かまち)にお酒とおつまみを並べる。

框といっても若干広めになっていて、小テーブルのようにはなる。

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 お酒とおつまみを並べる。

お酒は純米酒 金滴。新十津川のお酒だ。
新十津川は札沼線の終点。今は1日1往復しか列車が行かなくなってしまった所だ。

この金滴のカップ酒は、札幌駅のキヨスクでしか見たことがない。

札沼線の呑み鉄になかなかふさわしい酒ではないか。

しぱーん、とフタを空ける。
カップ酒のフタは、固いところに置いて瓶を動かないように固定して開けないと中身がこぼれるから注意してね。

ぐびっと。
う〜ん、純米酒だけあってうまい酒だ。
1本258円もしたが、居酒屋あたりで飲めば700円くらいにはするだろうか。
安いものだ。

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 お酒は純米酒 金滴。

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 札幌駅で買った札幌ー石狩月形の乗車券。

石狩当別を発車する。
つぎの北海道医療大学で1人乗ってきた。学生のようだ。
後ろのロングシートの2人連れとは友人なのか、一緒になっていた。

ずっとおしゃべりをしている。元気がいいね。
ローカル線車内では話し声も酒の肴になるのだ。

つぎの石狩金沢でも1人乗ってくる。
しかしこちらは地元の人ではなく、乗り鉄のように見受けられた。
それにしてもどこからやってきたんだろう。

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 発車してしばらくはまだ辛うじて景色が見える。

日はとうに沈んだが空はまだ明るく、黄昏(たそがれ)の景色を見ることができる。
杯を重ねるごとに気分が良くなってきた。

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 19:45、6月下旬はまだ空が明るい。

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 今まさに呑み鉄してます。

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 ごま塩鮭おにぎり。

この札沼線、ついに廃止になる。

まだ正式な発表はないが、5月に北海道医療大学〜新十津川間について月形町が廃止・バス転換を容認したことで、廃止の方向で固まった。
次いで新十津川町も廃止受け入れとなり、浦臼町、当別町も廃止容認の姿勢であり、これで廃止が確定したことになる。

ことし(2018年)の夏には正式決定される見込みであるという。

廃止に向けた具体的なスケジュールはそれから決定するのだろうが、以前にも2020年度を目途に廃止したいというJR北海道の表明がなされていたので、そうなると残り2年はまだ存続するようだ。

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 中小屋駅。

廃止が決定すれば、札幌に近いこの札沼線も名残乗車客で混雑しそうである。
すでに朝1往復だけの新十津川行の列車は、休日ともなると相当混雑しているようである。

普段からあれだけ乗っていればねえ、と言いたくなるが、それ以外の列車の乗客数を考えれば焼け石に水というもの。

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 青い色のボックスシート。

札沼線だけでなく、いよいよ道内ローカル線の廃止が本格化しそうだ。

石勝線の夕張支線は来年(2019年)の4月1日の廃止が決定している。
運休区間のある日高線、同じく根室本線の富良野〜新得間もたぶん廃止になる。

釧網線は微妙、あとの路線は貨物列車の運行があったり、国土形成や北海道の骨格をなす路線という位置づけとして、道や政府が関与するらしいが、どうなるんだか。

一方で、函館本線の長万部〜小樽間は、北海道新幹線の札幌開業と同時にJRの経営から自動的に離れることになっている。
一部は三セクで残るのか、そういう話はまだ無いようだ。
いずれにせよJR北海道としては、オラ知らね〜といったところ。

ただ確実なのは、これから数年間は道内は廃線が相次ぐということだろう。

今から30年以上昔の1980年代、やはり道内は廃線ラッシュだった。
国鉄再建法による、『地方交通線のうち旅客輸送密度4,000人未満の路線』をバスか第三セクターの鉄道に転換するというものである。
これによって、人口の少ない北海道内のローカル線は軒並み姿を消した。

あのころ『廃線フィーバー』などという言葉もあって、ローカル線や夜行列車は本州からの旅行者でにぎわっていたものだった。

その廃線フィーバーも繰り返す。
江差線、留萌本線も廃止が決まってから廃止日までは結構な混みようだった。

廃止決定の夕張支線も、廃止決定とあって休日は結構な乗客数のようである。

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 窓ガラスに映る車内。

普段は見向きもしないが、廃止と聞くと乗っておかなきゃとなる。

人間なんてそんなものだ。

廃線フィーバーも結構なものじゃないか。
JRも記念きっぷやグッズを大いに売るが良い。
沿線の人たちも、土産物や沿線グッズ、飲食の露店など出して大いに盛り上げて稼ぐと良い。

こういう廃線フィーバーや便乗商法に異を唱える人も多いが、勘弁してやってくれよ。

オレが代わって謝るからさ (^^;

鉄道の廃止でしか人を集めることができなかった所なんだから。

な、せいぜいこの時だけいい思いさせてやんなよ。

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 『JNR』マークの扇風機。

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 扇風機のスイッチ。

まだ1本しか飲んでないが、だいぶ酔ってきたね。

全員が終点まで行くのかと思っていたら、知来乙で後ろの学生が1人降りていった。
夜は秘境駅のようだが、実はここから月形市街の南端が近い。

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 知来乙駅では、当別からの学生が1人下車。

石狩当別からわずか32分、終着の石狩月形に着いた。
酒を飲んでいたらあっという間だった。

運転士に乗車券を渡して下車する。もう真っ暗になっていた。

地元の乗客たちは駅舎の脇から町へと消えていった。

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 終着、石狩月形に到着。

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 夜の石狩月形駅。

石狩月形駅で降りるのは初めてだ。
いや、降りたことはあるが、それは列車交換の停車中に降りただけで、正式に降りるのは今回が初めてだ。

駅舎内のこのレトロ感はどうだ。
国鉄時代からまったく変わっていない待合室やきっぷうりば。

私が初めてこの駅に降りたのはまだ国鉄時代のころ。
あのころは待合室の奥にキヨスクがあったのを覚えている。

変わったのはキヨスクがなくなったくらい。
ここまで原型で残っている駅舎も、ここくらいではなかろうか。

ストーブがデンと鎮座しているのは、この間まで寒かったからまだ使っていたのかも。
このストーブも今じゃファンヒーターに置き換えられて、見ることも少なくなった。

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 待合室は昭和時代から取り残されたようだ。

こんどは札幌に戻る。

帰りのきっぷは石狩月形駅で買おうと思っていたが、きっぷうりばの窓口には『只今、運転作業中です』の札が掲げられてあって、『恐れ入りますが、車内で整理券をお取りのうえ、下車時または着駅にてご精算下さいませ』と書いてあった。

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 これも昭和調のきっぷうりば。『運転作業中』の札があるときは買えない。

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 石狩月形駅の駅舎。

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 すでに眠ってしまった石狩月形駅前。

駅前は虫の音だけが響き、あとは静まり返っていた。

駅舎といい待合室といい、ここまで昭和な駅もないんじゃないか。
夜に1人この駅に降り立てば、昭和映画の端役にでもなった気分になれる。

いかにも終着駅の最終列車という感じだが、このあと22:03着の列車が最終となる。



posted by pupupukaya at 18/06/30 | Comment(0) | 北海道ローカル線考
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