奥津軽いまべつ駅の謎 2

さて、奥津軽いまべつ駅最大の謎とは何か。

それは、駅横に新しく出来た今別町の無料駐車場である。
屋内と屋外の駐車場があって、両方合わせて82台収容できるのだが、結構な台数が駐車してある。

ざっと見で3/2くらいはふさがっている。50台くらいといったところだろうか。

DSCN0390.JPG
 屋内外合わせて82台収容の今別町営無料駐車場。

ここに車を停めても駅以外にはどこへも行きようがないので、この駐車場の利用者のほぼ100%が新幹線利用者ということになる。

で、その異様な光景とは何か。

ここの車がやたらと函館ナンバーと札幌ナンバーが多いのだ。

気のせいか? いや、実際多いのだ。両ナンバーの車を数えたら15台もあった。
駐車場の車のうち、これもざっと見だが、約1/3がこれらの車が占めている。

ここは本当に青森県か?

DSCN0335.JPG
 なぜか函館や札幌のナンバーが多い。

これはどうしたことか。

北海道の空知振興局の北部では旭川ナンバーになっているので、津軽半島の北部では函館ナンバーが使用されているのかとも思ったが、陸続きならともかく、津軽海峡で完全に隔たれているのであり得ない。

うーむ。
これが1台や2台ならば、青森〜函館間にフェリーがあるので何てことはないが、ちょっと多すぎないかこれは。

どういうことなのか。
確実に言えることは次の2点だ。

1,何らかの事情で北海道から青森県に渡ってきた車である。
2,その車で奥津軽いまべつ駅まで来て新幹線でどこかへ行っている。

これが大間あたりならば函館とフェリー航路があるので、道内ナンバーを多く見かけても不思議ではないが、ここは津軽半島の北端である。
過去には三厩〜福島間にフェリー航路があったが、20年も昔に廃止されている。

函館から青森まで車ごとフェリーで渡って、そこから奥津軽いまべつ駅まで行って新幹線に乗る?

まるでミステリーのような話だ。

気になってしょうがないので、道の駅の事務所へ行って聞いてみることにした。
駐車場の入口に、”宿泊で利用される際は道の駅に申し出てください”との旨の掲示があったから何か知っているだろう。

道の駅の管理人さんに聞いてみると、

「ええ〜、たしかにここの利用者は他県ナンバーが多いんですよ」

函館ナンバーの持ち主がどういう人なのか尋ねたら、

「いや〜、それがわかんないんですよ」
「ここへ停めて、(新幹線で)どっかへは行ってるようなんですがねぇ〜」

と、要領を得ない。

話してるうちに、

「JRの人たちは向こう(北海道)から車を持ってきて乗ってるねえ」

ああ、わかった。

ここは本州とはいえ、北海道新幹線も青函トンネルもJR北海道の管理となる。

新幹線工事こそ終わったが、青函トンネルや新幹線の保守や保線のための人がいるわけで、その職員や関連会社を含めるとそれなりの人数になるはずだ。

札幌や函館から単身赴任や出向という形で来ている人も多いだろう。
そういう人たちが道内から車をもってきて、こっちで使用しているのだ。

DSCN0322.JPG
 奥津軽いまべつ駅の南側は保線基地となっている。

休日は奥津軽いまべつ駅まで車で来て、新幹線で函館や札幌へ帰るのだろう。

以上は私の推測でしかないが、ほかに考えられることは無い。
それほど大きく外してはいないと思う。

道の駅の管理人曰く、

「七戸十和田のほうは成功したけどねぇ〜、こっちはさっぱりだね」
「私も新幹線さ乗るときは青森まで行きますよ、高いしねぇ〜」

そうなんだよね、
例えば東京までだと新青森からは特急料金込みで1万6840円なのに対し、奥津軽いまべつからだと1万8550円1710円も跳ね上がる。往復ならば3420円差額×人数だ。

新青森駅の有料駐車場ならば1泊1000円
今別や三厩あたりの人ならば便利だろうが、いくら駐車場が無料とはいえ、蟹田や中里あたりの人は新青森駅へ行ってしまうだろう。

道の駅の管理人さんすら利用しないという奥津軽いまべつ駅。

それにしては駐車場には随分と多くの車が停まっている。
先に50台くらいと書いたが、多すぎじゃないか?

道の駅は別に駐車場があるので、こちらの車はほぼ100%新幹線利用者である。

あんまり駐車場をウロウロしていては不審者になってしまうので数えたわけではないが、駐車場区画のうち2/3は確実に埋まっている。

駅勢圏と思われる今別町と旧三厩村の人口を合わせても5千人を超えるくらい。
こんなに新幹線の利用者がいるとは思えない。

青森や弘前に行くのにここに停めて新幹線で?
まさかね、車なら直接行くよ。

これはまた謎だなと思ったが、これはすぐに分かった。

先に七戸十和田駅が成功したと書いたが、ここはその逆バージョンなのだ。

つまり津軽半島各地から北海道へ行く人たちがこの駅を利用するのである。
何といっても無料駐車場の存在が大きい。

しかも、新青森から乗るよりも1駅分安くなるというおまけつき。
例えば、新青森〜新函館北斗間は特急料金込みで7260円だが、奥津軽いまべつ〜新函館北斗間だと5480円1780円安くなる。

seikanmap4.jpg
 津軽半島と奥津軽今別駅との関係。(地理院地図より筆者作成)

こうして地図を見ると、対北海道となれば津軽半島だけではなく、五所川原あたりまでも軽く駅勢圏に入ってきそうだ。

map1.jpg
 グーグルマップで五所川原から奥津軽いまべつ駅までのルートを見ると。

五所川原から奥津軽いまべつ駅までの距離は53km。
この辺りまで来れば車で50kmの距離なんてどうということもないだろう。

札幌から新千歳空港までだって40km以上あるし、札幌の西部や北部からだと軽く50kmを超える。
それでも空港の駐車場は人気だ。

フェリー以外では新幹線しか北海道へ渡る手段がないので、もっと広域の弘前や、さらに秋田県からの利用者もいそうだ。
件の函館や札幌ナンバーの車も、青森県内に単身赴任している人たちが帰宅する際に奥津軽いまべつ駅を利用しているのかも知れない。

これらは北海道新幹線開業による新たな需要のように見えるが、じつは在来線時代も蟹田駅の駐車場に車を置いて北海道に行く人が多かったようだ。

多かったようだというのは、外ヶ浜町公式ブログに北海道新幹線開業前の蟹田駅駐車場の利用状況についての記事を見つけたからだ。


JR蟹田駅西口の土・日曜日の駐車状況は、ほぼ「満車状態」。
平日でも10台ぐらいは駐車している。
休日には、ほぼ満車状態になる。
車両ナンバーは、「青森」のほか「八戸」「秋田」など、
休日には、遠方の車両も駐車している。JR蟹田駅から北海道に行く電車に
乗るための拠点にしているのでしょう。さすが交通の要所です。
利用者が多くて嬉しいことです。



要は今まで蟹田駅に行ってた人たちが奥津軽いまべつ駅に移って来たということだ。

しかし全体からすれば、北海道へ行く人よりも仙台や東京へ向かう人の方が圧倒的に多い。
奥津軽いまべつ駅の駐車場の利用率が高いとはいえ、現状はニッチな需要にマッチした結果でしかない。

今後この駅の発展はあるのだろうか。

それは北海道新幹線が札幌まで延伸開業したときだろう。

もしかしたら、いままで仙台へ行っていた青森の人のうち、相当数が札幌へシフトするのではないか。
その根拠は青森から仙台、札幌までの距離である。

新青森から仙台までの営業キロは369.1kmとなっている。もう一方で現在工事中の北海道新幹線が札幌まで開業したら、新青森から札幌までの営業キロは360.3kmとなる。

つまり新青森は仙台〜札幌間のほぼ中間点になるのだ。

map2.jpg
 北海道新幹線が札幌まで開業した図。

料金は北海道新幹線が高め設定のため仙台へ行くよりは若干高くなりそうだ。
しかし、仙台の人には申し訳ないが、都市としては札幌の方が色々揃っていると思う。

そうなれば南の七戸十和田駅、北の奥津軽いまべつ駅である。

駅前にもイオンとまではいかないが、コンビニの1軒くらいはできるかも知れない。

〜最後までお読みくださいましてありがとうございました。


posted by pupupukaya at 18/04/14 | Comment(2) | 北海道の駅鉄
この記事へのコメント
2018年9月20日に、青森市街のホテルから竜飛崎まで旅行しました。その途中でこの『奥津軽いまべつ駅』に遭遇し、あまりの人影の少なさに驚愕すると同時に(実際、わたし以外の人を見ることはありませんでした。30分ほどの間に、観光と思しき車が合計2台来ましたが、どちらも、しばし止っていたものの、人が降り立つことなく戻っていきました)、無料駐車場にやたらと北海道のナンバーが多いことに大きな疑問を感じていました。この記事を読んでこれまでの経緯と様々な背景があることが理解できました。納得感の高い記事、ありがとうございました。
Posted by こがたか at 2018年09月24日 22:36
こがたかさん
ありがとうございます。
ブログ記事を書いていて、参考になった人がいることが一番嬉しいことです。
これを励みにがんばります。
Posted by pupupukaya at 2018年09月29日 10:44
コメント
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