◆ 出雲市 18:51【サンライズ出雲】翌7:08 東京
いよいよ、今回の旅行一番の目玉であるサンライズ出雲である。
1か月前に苗穂駅のみどりの窓口でシングルデラックスの寝台券をゲットしてから、ようやくそれと対面する日が来たのだった。
サンライズ出雲は東京〜出雲市間953.6kmを夜行で結ぶ寝台特急列車で、東京〜高松間のサンライズ瀬戸とともに、定期列車としては日本国内で唯一の寝台列車であり、夜行列車である。
上り列車はそれぞれ出雲市と高松を出発し、岡山で併結して東京へと向かう。下りは逆で、岡山で切り離してそれぞれ出雲市と高松へ向かうことになる。

サンライズ出雲のルート。(地理院地図より作成)
毎度のことながら、夜行列車に乗る前はワクワクする時だ。
乗車前に車内で飲み食いするものを買い物したり、車内で読む本を探したり、結構忙しかったりする。
サンライズ出雲は食堂車も車内販売も無く、飲み物の自販機くらいはあるのだろうが、乗ってしまったら何も手に入れることができないのである。
そんなわけで、今のうちにお酒とか夕食とかを仕入れておく必要があるのだが、出雲市駅前って本当に何もないのね (^^;
(出雲の人すんません)
アトネス出雲という土産物街があるくらい。歩いて片道15分くらいのところにスーパーはあるようだが、往復だけで30分は取られる。駅中で調達するしかない。
駅構内で買い物できそうなのはセブンイレブンくらいなもの。酒類はここでいいとして問題は食料のほう。
いくら何でも、車内の個室寝台でコンビニの弁当では侘しいのにも程があるだろう。
出雲そばの店には駅弁の売店があった。あとで駅弁を買おうか。
待合室があるがここは満席。
しばらく駅舎の写真を撮ったり、ぶらぶらして過ごす。
正面の三角屋根に神話に夕焼け空。
駅弁は早めに買っておくかと、構内の出雲そばの店に行くと、店内は客が誰もおらず、もうすぐ店じまいのような雰囲気。
ショーケースを見ると1080円の『出雲そば弁当』と、940円の『かに寿し』だけのようだ。
店のおばさんが出てきて、出雲そば弁当をくださいと言うと、おばさんは出しかけたが、
「あれ、これ6時までだ」
「お客さんこれ賞味期限が6時なので、それまでに食べるのなら売ってあげられますが」
と言われたので、すぐに食べるという約束で売ってもらった。
そのかわり値引きして700円でいいとのこと。
とは言っても列車に乗ってから食べるつもりだが。
店を後にすると『弁当完売いたしました』の札が出た。
最後の1個だったのか (^^;)
とりあえず夕食の確保はできた。
夕食時なのだが、サンライズ出雲のために駅弁の作り置きはしていないようだ。寝台特急の始発駅としては寂しい。
まあ、駅弁業者が残っているだけまだマシか。
ずっと山陰本線を乗り継いできたが、ここ出雲市駅が小倉駅以来の駅弁のある駅なのだ。
あとはセブンイレブンでお酒とつまみ、あとはちょっとした土産物などを買う。
もうすることはない。
駅構内の出雲そば黒崎と駅弁の売店。
18:18発米子行普通列車が発車すると、改札口の発車案内に『特急サンライズ出雲』の表示が出た。
駅前やコンコースはさんざんウロウロしたので、もうホームへ行くことにした。
改札口で入線時刻を聞くと、18:46とのこと。
発車5分前の入線とはずいぶんと慌ただしい。
ホームへ行くと、サンライズ出雲の客たちがすでにいた。
自分もそうだが、皆さん列車の入線まで居場所がないのだ。
ホームのサンライズ出雲の表示。
2番ホームはずっと空いてるんだからもっと早く入線してもらいたいのだが、何ゆえに発車5分前なのか。
たまに「サンライズ出雲は18:46に入線します」とのアナウンスがある。
ようやくサンライズ出雲の入線を伝える放送があった。
待ちくたびれたぞぉ〜 (# ゚Д゚)
先頭車両の停止位置のところでカメラを構える。
夜に動いている列車を撮っても写らないからね。
先頭車両は、ホームの屋根の部分からはみ出して真っ暗なところ。カメラ泣かせ。
しかし、ホームで三脚なんて無粋なものは使いませんよ。つーか持ってきてないし。
先頭車両はフラッシュも厳禁。何とか手持ちで撮影する。
夜景の撮影は相当に気合がいるのだ。
入線したサンライズ出雲。
特急サンライズ出雲の行先表示。
始発駅なのだから、外から編成を一通り見てきて車内探検もして、自室でくつろいだあたりでゆっくりと発車といきたいところだ。
しかし、停車時間が5分では乗り込んで荷物を降ろして腰掛けたらもう発車である。
機関車を先頭にブルーの車体が連なっていた寝台特急のイメージとは程遠い。
シングルツインのある4号車の通路。
さて、乗り込んだ4号車はA個室シングルデラックス(1人用)とB個室サンライズツイン(2人用)との合造車になっている。
窓側が通路になっていて、壁は木目調で統一されている。
明るくて清潔だけど何だかドライな感じ。ホテル調と言えばそんな気もするけど、どちらかというとオフィスのような印象を持った。のっぺりしているので写真的にはイマイチ。
A個室は通路から登る階段になる。
B個室は逆に下りる階段で、通路から見ると地下室のように見える。
隣の部屋と向かい合わせのシングルデラックスの個室ドア。
お邪魔しまーす。
室内はビジネスホテルを小さくしたような感じ。
窓側はベッド、これは固定されていて、折りたたんで座席にはできないようだ。
通路側は机(デスク)になっていて椅子も置かれている。
奥は洗面台で大きな鏡が張られていた。
シングルデラックスの部屋。
実際ビジネスホテルの部屋と比べれば格段に狭いのだろうが、狭さはまったく感じない。
感覚的にはA個室のロイヤルと同じくらいの広さ。
窓も大きく、2階部屋なので目線は高いのは気持ちが良い。
明日の東京到着7:08までの12時間以上、この空間を独り占めできるのだ。
さすが1等寝台 (^o^)/
洗面台と机。
乗車券とサンライズ出雲の寝台券。
荷物を降ろすのも忘れて部屋の撮影に熱中していたらいつの間にか発車していた。
本当に慌ただしい。
もう少し早く入線させてよ JR西日本さん。
ところで、この部屋は喫煙部屋なのだが、灰皿が無かった。
私にはどうでもいいことだが、部屋で一服というときにどうするんだろう。
洗面台に?そんなばかな。
部屋は清掃が行き届いているせいか換気が良いのかはわからないが、それの臭いはまったく感じなかった。
すぐに車掌が車内改札にやってきた。サンライズエクスプレスのロゴが入ったアメニティーグッズとシャワーカードが手渡される。シャワーは後で行ってみよう。
ベッドは窓側にある。
もう誰も来ることはないので、車内探検に出かける。
車内のご案内。1〜7号車はサンライズ出雲、8〜14号車はサンライズ瀬戸になる。
3号車にはラウンジがあって、フリースペースとなっている。両側の窓に向かって固い椅子が4席ずつ左右に並んでいるだけなので、あまり長居するようなつくりにはなっていない。
ノビノビ座席の人が弁当を食べたりするのにはここがいいだろう。
3号車にあるラウンジ。
ラウンジに設置された自販機。酒類や食べ物は無い。
3号車の1人用B個室ソロ。とにかく寝るだけといった印象。
2号車の1人用B寝台シングル。ソロよりは若干余裕がある。
個室を見てきたが、空き部屋が多かった。主のいない部屋はドアが開けっぱなしになっているので、カメラを突っ込んで写真を撮らせてもらう。
5号車はノビノビ座席といって、フェリーの桟敷席のようにゴロ寝で行くスタイルになっている。上下2段になっていて、かつて急行はまなすにあったカーペットカーと同じような造りだ。
横になって頭の部分だけ仕切り板があるほかは開放的になっているので、プライバシーの面ではイマイチ。
そのかわり寝台券不要の指定席特急券で利用できる。
リーズナブルなのでここが一番人気かと思っていたが、見事に空席だらけ。
撮影させてもらう分にはありがたいんだけど。
5号車のノビノビ座席。上下2段になっている。カーテンは通路との仕切り。
ノビノビ座席の上段。
途中駅から乗ってくるんだろうか。
シーズンオフの平日だからこんなもんなのだろうか。
4号車の洗面所。
4号車のトイレ。
車内を一通り見てきたので、次はシャワー室に行く。
A個室客は、4号車のシャワーが無料で使えるのである。
シャワー室は3号車にもあり、そっちはシャワーカードを買えば一般客の利用ができる。
通路からシャワー室に入ると脱衣所になっている。
どうやら一番乗りのようだ。
脱衣所のカードリーダーにカードを入れると、シャワーのお湯が6分間出る仕組みである。
ボディーソープとシャンプーはシャワー室にも置いてあった。
アメニティグッズの中にフェイスタオルは入っているが、バスタオルだけは無いので持参する必要がある。
4号車のシングルツイン専用のシャワー室。こちらは脱衣所。
シャワー室の内部。
風呂は毎晩入っていたし、暑い季節でもないので無ければ無いで良かったのだが、気分は良い。
最後に洗浄ボタンを押してから出る。
次の人用にシャワールームを自動で洗浄する仕組みである。
さっぱりしたところで、部屋に戻って、宴会を始めよう。
出雲市駅で買った出雲そば弁当。
弁当とお酒を机に並べるが、机と椅子は壁側を向いているので、壁に向かって飲み食いする格好になる。
夜景を見ながら一杯という風に考えていたが妙なことになった。
ベッドに腰掛けてだと、こんどはテーブルがない。
机の上にはスタンドがあって、机の上を照らす。
うーん、まるでビジネスホテルだね。
この机も、飲み食いするよりも、仕事か勉強用だね。
何のことはない。椅子を洗面台の方へ向ければ良い。これなら机の弁当にも箸を付けられるし車窓も見ることができる。
洗面台の鏡に映った自分自身と差し向いでやることになるが (^^;)
メインは出雲そば。あとはかに寿しと宍道湖名産のうなぎ、わかさぎなど。
駅のコンビニで買った地酒。天穏と十旭日。
出雲市駅で買ってきた駅弁は出雲そば弁当。賞味期限間近の値引き品であるが、列車内で食べるのはやっぱり駅弁がいい。
デパートの惣菜なんか買ってきてテーブル一杯広げたって逆にむなしくなる。
コンパクトな箱の中にきっちり詰める日本文化は素晴らしいね。
まずはカップ入りの天穏を開けて乾杯。
何に乾杯かって。
今回の旅行も無事終わりに近づいたことと、思いのほか楽しい出来事が多かったことに。
1人宴会を始めたころに突然車掌の車内放送があって、
「ボールペンを貸出ししてるお客様、車掌までお返し下さい」
思わず噴き出した。
そのあとも何回も繰り返し放送があった。
セコい客もいるもんだと思ったが、車掌さんも1本しかボールペン持ってなかったのかよ (-_-;)
果たしてボールペンは車掌の手に戻ったのだろうか。
寝台車と日本酒って何だか似合っていたものだった。
外からピーッと汽笛が聞こえてきたりして。
ところが、このサンライズには昔ながらの夜汽車を思わせるものは全然ない。
日本酒は似合わないような気がしてきた。
私が日本酒好きだから買ってきたのだが、出張先のビジネスホテルで侘しく晩酌をしているような気分だ。
しんみりと夜長に夜汽車に一人酒
この列車にはワイングラスなんか傾けている方が似合う気がする。
肴はローストビーフなんかがいいな。
この次はそうしようか。
次はあるのかないのかわからないけど (^^;
おかずを肴にセブンイレブンで買ってきた地酒は全部飲んでしまった。
最後は出雲そばで締める。
そばの薬味は青ネギと一味唐辛子。
昼に食べた出雲そばのもみじおろしが随分と辛かったが、この唐辛子が出雲そばのポイントなんだな。
食べ終わって、机の上を片づける。もういつでも横になれるようにベッドメイキングをしてから、窓側に境港で買ったお酒を置いてベッドに胡坐をかいた。
こんどは部屋の明かりを消して、夜景を眺めながら行く。
ベッドメイキングは自分で。
だんだん散らかってくる。
もう米子を過ぎて伯備線を走っている。
伯備線は山間部の路線なので町灯かりは少ない。
それでも暗くした部屋からは、山の稜線や遠くを走る車のヘッドライト、時折通り過ぎる踏切や小さな駅などが見える。
そんな夜行個室寝台ならではのひと時をずっと楽しんだ。
ベッドに腰掛けて窓辺でまた飲む。
この列車が登場したのは1998年。
このころはまだ東京・関西〜九州間を中心に、各地にブルートレインが健在だった。
『北斗星』や『トワイライトエクスプレス』といった豪華ブルートレインもあったが、ほとんどは古びた2段寝台の客車を連ねただけの、時代遅れの列車になっていた。
そんなブルートレインだった『瀬戸』と『出雲』をこの新車両に置き換えて颯爽とデビューしたのがこのサンライズだった。
機関車牽引から電車になったこと、座席車を除いてオール個室寝台になったのも斬新だったし、それまで夜行列車の車体はブルーが主体で夜のイメージだったのだが、それに対してサンライズの車体は赤系となり、朝のイメージとなったのも新しかった。
この列車も車両も、登場からすでに19年。
鉄道車両は、製造されてから30年くらい使用されることを考えると、サンライズの将来も何となく想像がつく。
寝台列車だけではなく夜行列車そのものが既に過去のものになっているのが現実だ。
『トワイライトエクスプレス瑞風』とか『トランスイート四季島』といったクルーズトレインは何かと話題になっているが、普通の人が乗れないしね。
どうかなるにしても、まだ10年以上先のことだろうけど、
せいぜい今を楽しんでおくしかない。
部屋を暗くすると夜景が見える。すれ違う貨物列車。
どこかの小駅でまた運転停車。
最後のお酒も飲んでしまったのでベッドに横になった。
仰向けになると、空に向かってカーブした窓が目の前になる。
なんと 窓の外は一面の星空。
星空なんてまじまじと見つめるなんていつ以来かね。最高のベッドだよこれは。
見覚えのある星座はオリオン座。しばらく車窓の友になる。
星を眺めながら眠りに着く。なんという贅沢。
流れる町灯かり。
ベッドで星空を眺めていると、これをカメラに収めたくなった。
横になりながら何度もシャッターを押すがうまくいかない。走っている車内から星空を写そうなんて無茶だとわかっているが。
下の画像は、37枚目にして決まった根性の1枚。この後は朝まで記憶がない。
窓からの星空(f1.8、1秒)、画像処理もしています。部屋を暗くしてどうぞ (^^)
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