◆ 3日目 東萩〜益田〜浜田〜出雲市〜雲州平田
東萩〜出雲市〜雲州平田間のルート。(地理院地図より作成)
窓のカーテンを開けっぱなしで寝ていたので明るくなって目が覚める。6時。
10月も下旬になるとまだ日の出前。空はまだ茜色をしている。
6時過ぎ、まだ日の出前。空が茜色に染まる。
昨日スーパーで買ってあったアンパンを食べる。
荷造りと身支度をすればあとは特にすることもなく。
朝食付きにしても良かったかな。
風情ある純和風の階段と玄関。
そろそろ出発しようと1階に下りて玄関へ。やっぱり誰もいない。
帳場のインターホンを押して板を叩くと奥から昨日の羽織姿のご主人が現れた。
ほかに宿の人らしい人は昨日から見ていない。一人でやっているのだろうか。
もう行きますと言ってカギを返す。
ご主人は玄関の外まで見送ってくれた。
芳和荘は大正時代に建てられた元遊郭建築。近代的な手はほとんど加えられていない、当時の原型を残したままの旅館である。
もちろん古いが故の不便さもあるのは仕方がない。
そんな不便さもひっくるめて、昔の人の生活や思いを馳せながら一夜を過ごすことができたのは、貴重な経験ではなかろうか。
7:25に旅館を出発。このまま東萩発7:44発の益田行に乗れば接続も良く、午前中には出雲市に着くのだが、そんなに先を急ぐ旅でもなく、あちこち途中下車しながら行きたい。
早く出たのは、世界遺産の萩反射炉をみるためだった。
雁島橋から見た阿武川。
山陰本線の列車。
旅館から歩くこと20分。セブンイレブンの駐車場わきに萩反射炉の入口があった。
階段を登ると、石積みの煙突が見えた。
ただの広場というか公園というか。もう少し観光地っぽくなってるのかと思ったが。
史跡萩反射炉の入口。
石積みの萩反射炉。
萩反射炉は萩藩が海防強化のため鉄製大砲を鋳造するために作った金属溶解炉である。
反射炉では、燃焼室で焚いた燃料の炎や熱を天井に反射させて金属を溶解させた。
現在残るのはその煙突のみ。
しかしこの反射炉は、技術的にも資金的にも難しくなって、試作で終わってしまった。
‟幕末に、萩藩が自力で産業の近代化を目指す中での、トライアル&エラー(試行錯誤)を証明する貴重な遺産です。“
(看板より)
また20分歩いてこんどは東萩駅へ。
列車の発車時刻までまだ30分もある。もう少し遅く出ても良かったかな。
東萩駅前にある萩城天守閣1/6の模型。
◆ 東萩 8:41【820D】9:54 益田
8:30に列車が入って来た。またもや1両だけ、キハ40のワンマン列車。
東萩で交換する列車はないのに、なぜか10分間も停車時間がある。
海側のボックスシートは余裕で座れた。
きったねえ窓だな(#^ω^)
窓はホコリや泥で茶色くなっている。
この改造キハ40の窓は、下段ははめ殺しだが上段は上に開く。窓を開けて手を突っ込んでティッシュで窓の外側を拭いたらきれいになった。
単行のキハ40が来た。
東萩発の上り列車は、この8:41発の益田行の次は13:54発ということになり、乗り遅れたら5時間以上待たなければならない。
山陰本線ということになっているが、本線とは名ばかりの超ローカル線である。なんでこんなことになっちゃったんだろう。
そんな貴重な列車だが、東萩からの乗客は観光客が数人と、地元客が数人だけ。空きボックスも目立つ。
列車本数が減った理由は、結局利用客が減ったからということに尽きるのだろうが。
利用者が減ったから列車本数を減らす→本数が減って不便になりさらに利用者が減る、の典型のようだった。
鉄道で萩に行きたい観光客がいても、これでは利用のしようがない。
日の当たる山側の席は空きボックスが目立つ。
東萩を発車してしばらくすると、さっき行った萩反射炉が一瞬見える。
車内から見るだけで良かったかな、とも思うが、今度萩に来るのはいつかわからないし行っておいてよかったということにしておいた。
しばらく山の中を通っていたが、海際に出る。
昨日とは違って、青空が広がって海面も静か。窓に張り付くようにして日本海を眺める。
停車駅ごとに地元客が1人、2人と降りて、車内はますます閑散としてきた。
オーシャンビューその1、長門大井〜奈古間。萩大島が見える。
オーシャンビューその2、宇田郷〜須佐間。
オーシャンビューその3、宇田郷〜須佐間。入り組んだ須佐湾。
須佐、江崎と地元の人が乗ってきて、車内はだんだん賑やかになる。
益田に向かう列車は、この列車を逃すと次は5時間以上あとになるのだから、この人たちにとっては貴重な列車だ。
車内はおかあさんたちの世間話や、おとうさんたちの経済談義などで賑やか。
ローカル線の旅は楽しいね(^^)
飯浦駅。ここから島根県になる。
オーシャンビューその4、飯浦〜戸田小浜間。
益田に近づくにつれ、車内は賑やかになって来た。
車内はいかにもローカル線の午前中の上り列車の雰囲気で益田に着いた。
益田駅に到着。
益田では乗り継ぎ時間が1時間ある。
一旦改札を出て待合室へ。
益田は島根県西部の都市で、人口は4.7万人。
益田駅は新山口からの山口線が合流する。
特急『スーパーおき』や『スーパーまつかぜ』も発着して、今まで超ローカル線だった山陰本線もここからは本線らしい面目になる。
待合室は10:31発の米子行スーパーおき2号の乗客で賑やかだ。
座り心地の良いベンチが並んで、売店もあって、いかにも昔ながらの駅といったところ。
都会では見なくなった有人の改札口。
益田駅の待合室。
2階建ての、いかにも国鉄といった感じの駅舎。
駅の外に出てしばらく歩いてみたが、これといったものもなく、また駅に戻る。
1番ホームはスーパーおき2号の乗客が長蛇の列。スーツ姿のビジネス客が多い。
みんなどこまで行くんだろう。県庁の松江までか。
米子行特急スーパーおき2号が到着。特急は人気。
たった2両の特急は結構な乗車率で発車していった。
また静かな駅になる。
◆ 益田 10:54【348D】11:40 浜田
こんどの列車は益田発浜田行の普通列車。特急とは反対にこちらはホームも車内もひっそりしている。
車両は変わって。ステンレス車体のキハ126の2両編成。
2000年から新車で導入された車両である。
益田からのキハ126系気動車。
どうも、ローカル線の新車というものにはあまり期待していない、というかガッカリさせられることが多い。
というのは、最近の車両はロングシート主体で、クロスシートも申し訳程度にしか設けられない残念な車両が多いからだ。
ところが、車内に入るとびっくり。オールクロスシートではないか。
車端部の優先座席だけロングシートになっているが、あとは4人掛けのボックス席。
キハ126のクロスシートが並ぶ車内。
車端部は優先座席のロングシート。
これは世が世ならば急行用車両としても通用する。
通路幅が広く取られてつり革が並ぶところが一般形ということなのだろう。
ボックスシートに座ると、シートピッチも十分な広さがある。向き合って座っても余裕がありそうだ。
JR西日本さんも随分と粋な車両を作ったものだ。どこかのJR(西日本以外全部)にも見習ってほしい。
キハ126の運転台。
車内は悲しいほどにガラ空きのまま発車した。2両合わせて数人というほどの乗車率。
この車両、車内や座席はいいのだが、窓が汚いのは残念。せっかく景色が良いのに、カメラを向けても色あせてしまう。
拭けばきれいになるのだろうが、窓が開かないのではどうしようもない。
ワンマン列車なので後部の運転台は無人になっている。
しばらく立って後ろに流れる後面展望を眺めることにした。さすがに運転台のフロントガラスはきれいだ。
後部展望その1、益田〜石見津田間。
後面展望その2、鎌手〜岡見間。なかなかスリリングに見える。
後面展望その3、折居〜周布間。
トンネルに入って、海を見て、山中に入っての繰り返し。やはり海沿いの区間は素晴らしい。
もう少しゆっくり走ってほしいところだが、特急スーパーおき、スーパーまつかぜが高速化された区間。普通列車ながらも容赦なく突っ走る。
各駅停車ながら、快速アクアライナーと大して変わらない46分で浜田に着いた。
浜田に到着。
浜田では迷うところがあって、着いたホームの向かいに1両の列車が停まっている。
この列車は三江線の浜原まで行く列車である。車内は空いているボックスシートもあった。
三江線と言えば、来年(2018年)の3月末で廃止が決定している。
これに乗れば、全線は乗れないが途中の因原までなら往復してこられる。江津から特急に乗れば出雲市着は16:12となる。
江津から因原までの往復と特急料金は別にかかるが。
でも、雲州平田に着くころには暗くなってるな。できれば明るいうちに宿に着きたい。
ここは涙を呑んであきらめることにした。
階段を登って改札口を出る。
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