ある日突然、流氷が見たくなった。テレビを見ていたら、4年ぶりに稚内で流氷が観測されたとのニュースが流れてきたからだ。
そういえば、流氷なんて大抵はたまたま寄り付いたのを車窓から、あるいは港から見ただけで、まともに見たこと無かったなあ。
道内夜行列車廃止以来、すっかり足が遠のいていた道東。夜行のオホーツク9号があればなあ・・・と思って時刻表を調べると『流氷特急オホーツクの風』号というリゾート車両を使用した良さげな列車があるではないか。
臨時列車だからか、往復1万4000円の得割きっぷで乗車できる。
流氷見物だけだから日帰りで、とも思ったが、楽天トラベルで調べると1泊3300円のホテルがあったので予約した。
考えてみれば、列車のB寝台ならば寝台料金1泊6300円。最近はビジネスホテルも安くなって、ネットで調べれば1泊3〜4千円台のホテルはいくらでもある。
これじゃ夜行列車は商売にはならない。夜行は格安移動目的くらいなマイナーな移動手段になったのだなと思い知った。
というわけで、会社帰りに札幌駅みどりの窓口で指定席を取ってきた。『流氷特急オホーツクの風』号である。
今回使用したきっぷは列車指定の『特割きっぷ』。
ノースレインボーで運転される『流氷特急オホーツクの風』。
『NORTH RAINBOW』 と書かれた側面。
札幌駅1階コンコースの売店で駅弁とビールを買ってホームに上がると、オホーツクの風号はすでに入線していた。
指定券の席は3号車、2階建て車両の2階席だ。壁の前の席だが、階段室の出っ張りがあるので上面は見通せるので窮屈さは無い。足元はグリーン車並みの広さがあるのでこれはいい席に当たった。
3号車は2階建て車両。2階席は天井が異様に低い。左側の出っ張りは階段室。
壁席ながら、足元も広く快適だった座席。
発車後しばらくはモニターに前面展望が映し出される。
座席のテーブルには飛行機みたいなイヤホンが置いてある。車内各所にテレビがあって、走行中は映画を放映するとのこと。
札幌を発車してしばらくは、列車前面展望を流していた。個人的には映画よりこっちのほうがいいなあ。
駅弁は『石狩鮭めし』、朝から飲むビールうまい。
さっそく朝から駅弁とビールテーブルにセット。
イクラがぎっしり詰まった『石狩鮭めし』。鉄旅ならではの朝ビールがうまい。
2階建て車両の2階なので天井が低い。座ってしまえば気にならないが、立ちあがって天井に頭をぶつける人が多い。でも、通過する駅などでは、目線の位置が高いのは気持ちがいい。
また、この車両はエンジンが付いていないトレーラーなので、走行中でも車内は大変静か。ちょっとした物音をたてても車内にひびくほどだ。
3号車階下のラウンジカー。フリースペースで売店もある。
観光列車らしくラウンジカーには記念撮影用のグッズも置いてある。
乗車証明書と車内販売メニューが配られる。
沿線はずっと天気が良い。先行列車の車両不具合とかで、旭川には10分遅れで到着した。ここから乗ってくる人が多い。
石北本線に入って多少乗り心地が悪くなるも快調に走っていたが、突然減速し、つんのめるようにして急停止した。
車掌によると、沿線の除雪機から飛んできた石が当たったとのこと。
先頭車両に見に行ってみると、前面フロントガラスは一面、網の目状にひび割れている。ここで修理できるはずもなく、これでは運転打ち切り確定で、がっかりだ。
運転士は無線で、「一面ひび割れてますが、一応信号は確認できますので最徐行で伊香牛駅まで移動します」と話していた。
しばらくすると列車はノロノロと動き出し、伊香牛駅で停止した。
一面見事に網の目状にヒビ割れたフロントガラス。
にわか列車撮影会場と化した伊香牛駅。
観光列車らしく、事故停車よりも観光停車といった感じ。
伊香牛は「いかうし」と読む。旭川発の普通列車に1日1本だけ伊香牛行きというのがあるので知っていた。
隣は、この駅で追い抜くはずだった上川行き普通列車が停まっていた。普通列車のほうを先に行かせるようで、車掌が上川まで行かれる方は普通列車のほうに乗り換えるように放送していた。
普通列車が発車すると、1号車と2号車のドアを開けるのでホームに出ても良いとの放送がある。
伊香牛(いかうし)駅。イカとは関係ない。
無人駅ながら立派な丸太小屋の伊香牛駅。
灯油ストーブには火が灯り暖かい。椅子には座布団も置かれ温もりのある駅舎内。
観光客ばかりの乗客は、珍しい駅で降りられたとばかりに写真を撮ったりしている。愛煙家たちもホームでここぞとばかりに煙をくゆらせる。
駅近くの駐在さんがさっそく来ていて、写真を撮ったりして現場検証をしているが、田舎らしくのんびりとしている。
初めて見る伊香牛駅の駅舎は立派で、ログハウス(丸太小屋)になっている。駅舎自体観光スポットにしても良いくらい、なかなかお洒落な建物だ。観光地でもない無人駅なのにずいぶんお金をかけたものだと感心した。
いち早く駆けつけた駐在さんの現場検証。
『流氷特急オホーツクの風』号は伊香牛駅での運転打ち切りが正式に決まった。後続のオホーツク3号が臨時停車するので、そちらに乗り換えるように案内される。
後続の特急は11:40頃の到着と放送があった。
3両分程度しか除雪されていないホームは、オホーツクの風の乗客でごった返す。意外と大勢の人が乗っていたんだ。旭川駅の駅員も応援に来ていて、乗客の整理に当たっている。
伊香牛駅開業以来と思えるほどホームは賑わった。
伊香牛駅に到着する後続の『オホーツク3号』。
10:43、札幌を1時間46分後に出発したオホーツク3号がやってきた。3号車のドアがちょうど自分の前になるように停まった。こういうときは妙に運が良い。
「ちょっとォ!ここで停まるのォ!」「後ろホームにかからない!」と車掌が運転士と車内電話で話していたが、どうにもならないようで、しばらくしてドアが開いた。
そんなわけで車内には1番乗り。既存の乗客たちは迷惑そうに私たちを眺めた。
グリーン車以外の空席はどこに座っても良いと放送があった。窓側の席は空いていなかったので通路側の席に相席させてもらった。続々と乗ってきて満席になる。5分程停車して、全員の収容が終わると発車した。
車内電話で運転士と話す車掌氏。
ノースレインボーエクスプレスは反対方向に運転する分には何も支障が無いから、このまま苗穂工場まで回送されるのだろう。明日の朝までに直ればいいのだが・・・
夕方、ホテルでテレビを見ていたら、ニュースでこの列車のことを取り上げていた。この日のオホーツクの風号から後続の列車に乗り換えた乗客は136名とのこと。
あああリゾート車両から一転して満席のボローツクに・・・。
上川駅を12:13に発車した。定時は12:01発なので、この時点で12分遅れである。
「オソーツク」とか「ボローツク」などと揶揄されるこの列車、さらに満席なので窮屈だ。座席だけは簡易リクライニングではなく『スーパーおおぞら』の中古品と交換されている。足元の暖房ダクトが無くなったのはありがたい。
遠軽で意外と降りる人が多く、座席の方向転換をして窓側の席に座れた。
遠軽駅で普通列車と交換。
車内販売が来たので、弁当を買おうとするが売り切れとのこと。仕方なくバウムクーヘンとコーヒーを買って腹の足しにする。
どういうわけか遠軽駅のかにめしの積み込みは無かった。
車内販売で買ったバウムクーヘンとコーヒー。
上りオホーツク6号と交換。北見は網走地方の中心。
北見から先は車内にも余裕が出てきた。
北見でさらに降りて、車内は空きボックスが目立ってきた。残っている乗客はオホーツクの風からの乗り継ぎ客がほとんどのようだ。
だいぶ車内が落ち着いてきたので、改めて座席を見ると、『スーパーおおぞら』から外した座席をそのまま取り付けただけのようで、ひじ掛けのビニール部分がはがれていたりして相当くたびれている。こんなボロ特急に金なんかかけないぞ感が漂っている。
網走湖氷上にはワカサギ釣りのテントが並ぶ。
上川発時点で12分遅れだったのだが、よほど余裕のあるダイヤなのだろう、15:09、定刻に網走駅に到着した。
オホーツク3号で網走に到着。オホーツクの風からの乗客にとってはやれやれだ。
ホームに飾ってあった流氷。
オホーツクの風からの人は途中駅で運転打ち切りのため、特急券の人は特急料金の全額払い戻し、企画乗車券の人は特払いを受けることになった。払い戻しは旅行センターにて行っていて、オホーツクの風からの乗客で行列ができている。
手提げ金庫に現金が用意してあって、2人の駅員が対応に当たっている。切符と引き換えにお金を渡しているだけなので列の流れは早い。手慣れたようにテキパキと対応していた。
『特割きっぷ』も払い戻し対象なので、切符と交換で2210円を受け取った。ちょっとうれしいお小遣いといったところだ。
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