2016年6月1日 トロンハイム発オスロ行夜行列車〜
トロンハイムからオスロまでは7時間30分の夜行列車の旅。
寝台車ならばそれなりに優雅な旅となっていたのだろうが、今回は旅費をケチって座席車の夜行、しかも車内はほぼ満席で窮屈とくる。
途中で体が痛くなり何回も目が覚めたが、姿勢を変えるとまたすぐに眠りにつく。疲れているのだろう。
すっかり夜が明けてオスロ空港駅(Oslo Lufthavn)に停まる。ここで降りる人が多かった。隣席の人たちもここでで降りて行った。終点オスロまではあと30分。充電コードを取り出して座席のコンセントに差して、スマホとデジカメの充電をする。
建ち並ぶ個性的なビルが都会に来たことを思わせる。
6:50、オスロ中央駅到着。
今朝も青空が広がっている。気持ち良い朝と言いたいが、やれやれやっと着いたという気持ちの方が大きかった。
終点オスロ中央駅に到着。
オスロ中央駅のコンコースと電光掲示板。
オスロ中央駅の広いコンコース。
ホームからエスカレーターで2回に上がるとコンコースだった。朝7時前だが、多くの人が行き交っている。北極圏の小さな町や、人跡稀な土地をずっと旅してきた身にはオスロが大都会に見えた。
まずはコインロッカーを探す。案内板に表示を見つけて行くと、エスカレーターを1Fに下りたところにあった。
が、使い方がわからぬ・・・
ロッカーの中ほどに操作モニターがある。旅行2日目のヨーテボリでも同様のロッカーだったが、操作方法が違うようだ。
もういい。このままホテルに行くことにした。今日泊まるものだがと話せば荷物だけ預かってくれるだろう。それに、観光しようにも美術館も博物館も10時にならないと入れない。
ホテルは中央駅からは離れているのでトラムに乗る必要がある。それでも、停留所からすぐなので便利な場所だ。
トラムのチケットは駅を出たところにあるルーター・クンドセンターという案内所で売っていた。『#』マークが目印。
中に入るとカウンターがあり、そこで「1day ticket please」というと売ってくれた。32Kr、クレジットカードで払う。
チケットはボール紙のカード。透かして見ると中にICチップが見えた。
駅前にあるルーター・クンドセンター(Ruters kundesenter) 。
オスロ中央駅前のトラム乗り場。
駅前はターミナルになっていて、トラムとバスの乗り場が並んでいる。ホテルへは19番のトラムに乗ればよい。
来た電車に乗る。車内にカード読み取り機があり、そこにかざすとチケットの使用開始になる仕組み。さっそく機械にカードをかざすと『For 8:30』の表示が。おかしいと思いさっきもらったレシートを見ると、『Enkeltbillett』とあった。1回のみのシングルチケットではないかこれは。
どうりで安いはずだ。私の発音が悪いのか、案内所の人が勘違いしたのか。どっちにしろまた買い直す必要がある。
ボール紙のチケット。見た目では券種は分からない。
乗ったトラムは、ホテルとは違う方向へ向かっていた。路線図を見ていて気付いた。何を勘違いしたか18番のトラムに乗っていた。降りてまた中央駅まで戻る。
よほど疲れているらしい。
中央駅からまた19番のトラムに乗る。
どうもダメダメの日のようだ。
15分ほどでローゼンボリ(Rosenborg)という停留所に着く。ホテルはここから歩いてすぐ。
ホテルのエントラス。
ホテルは電車通りに面したところにありすぐにわかった。
入ろうとするとドアにカギが掛かって開かない。
またかよ(怒)
ほかに入口があるのかと見て回ったが、ここだけだ。チェックインは14:00〜18:00と張り紙がある。また出直しかと思いかけたが、横にインターホンがあったので押してみると応答があった。自分の名を告げると中から開けてくれた。
レセプションで名前を言うと、今日の客とわかったようだ。
覚えたての英語で「キープマイラゲッジ アンチルチェックインタイム」というとOKと快く承諾してくれた。一安心。
さっき降りた停留所の交差点にセブンイレブンがあった。ここでトラムのチケットを売っているかもとレジで聞いてみる。1dayではなく今度は24time ticketと言って聞いてみた。店員はイエスと言うのでここで買った。1枚90Kr。レシートを見ると確かに『24-timersbillett』とあり、今度は大丈夫だ。オスロでは「1day」では通じないいようだった。
24時間チケットを買ったセブンイレブン。
気を取り直して、再びトラムに乗る。
すったもんだだったが、まだ8時を過ぎたばかり。今まで列車に乗りっぱなしだったり、歩き回ってばかりだったが、今日は人並みに観光してくるつもりである。
またトラムに乗り、まず向かったのがアーケシュフース城。
アーケシュフース城(Akershus Festning)。
アーケシュフース城は港近くの高台に建つ。城というよりは要塞で、1299年に最初に建てられた。その後火事で焼失し、今ある建物は1600年代に再建されたもの。
城内に入れるのは10時からだが、建物の外は公園のようになっていて散策することができる。
1630年頃に造られた城の城壁。
城の頂上からの眺め。右の茶色いビルは市庁舎。
城から見たオスロフィヨルドの眺め。
土手の上には大砲が並んでいた。
目標捕捉、撃てー!ナンチテ。
アーケシュフース城から坂道を下って歩いて行くとだんだん賑やかになってくる。着いたのはオスロ大聖堂の前だった。
広場はびっしりと露店が並んでいて人通りが多く、ここは市内のトラム系統が集中するのか、次から次へと電車が通り過ぎる。
オスロ大聖堂前を行くトラム。
大聖堂の時計塔と信号機。新旧の対照が妙だった。
中央駅から今度はバスに乗る。
エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)はノルウェーの画家。その代表作は『叫び』(Skrik)と呼ばれる作品で、見れば誰でも知っていると思う。
エドヴァルド・ムンク作『叫び』。だれでも見覚えくらいあると思う。
パロディーのネタにされることも多いこの絵の本物はオスロの美術館にある。さらに、この絵の舞台とされている場所がオスロのエーケベルグという所にあるという。そこへ行ってみることにした。
中央駅近くのバス停から34番のバスに乗り、Brannfjellveienという所でバスを降りる。
“私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。
〜それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。
〜私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。”ムンクが日記に記した幻覚の体験である。のちに『叫び』のモチーフとなった。
ムンクの聞いた叫びとはどんなものだったのだろうか。
『叫び』の舞台になったとされる高台の道。
何の変哲もない高台の道路。道端には『叫び』の碑があった。
周りには誰もいないし、静か。車もたまに通るだけ。平和だね。
道端にある『ムンクの叫び』(Skrik av Edvard Munch)のモニュメント。
高台の道からトラムの停留所に下る山道があるので、こんどはそちらのほうを歩く。
このあたりはエーケベルグ公園というアート公園になっていて、山道の途中にいくつかのアートを見つけた。
動画のアート。ろくでなし子を彷彿させる作品もあったが。
ディープクリームマラドーナという作品。モチーフはご想像の通りだそうで。
エーケベルグパルケン(Ekebergparken)停留所からトラムに乗る。
ずっと道なりに坂道を下るとトラムの停留所があった。ちょうど電車が来たので乗ったらまた反対方向だった。
やっぱり相当疲れているのか。
まあいいやと車内から街を眺める。郊外の住宅地といった風情の中を終点まで乗り通し、また引き返した。
再び中央駅へ戻り、今度はT-Banenと呼ばれる地下鉄に乗り2つ目のトゥイエン(Tøyen)駅で降りる。
向かう先はムンク美術館。普段は絵心などまるでないが、あの『叫び』の絵を見たかった。
ヤーンバーン広場駅から地下鉄に乗る。
ムンク美術館の入口。
受付で入場券を買おうとすると「フリー、フリー」と言われる。
どうも今日は入場料タダの日らしい。本来ならば100Krのところだが、これは儲けた。
空港のようなセキュリティーがあって、そこを通るとアラームが鳴った。ポケットの鍵だろうか。戻ろうとすると係の人はいいよいいよと言うようなそぶりで通してくれた。
中に入るとホールがあって絵が展示してある。入れるのはそこだけだった。『叫び』も無し。
どうも工事かなんかで一部しか公開しないので無料になっているようだった。
入ってすぐのホールにある展示場。
ムンク美術館だけあって、さすがに売店は『叫び』のグッズが多数並んでいる。マグネットとポストカードを買った。
売店に売っている数々の『叫び』グッズ。
エントランスの一部はストックフレッツ(Stockfleths)というカフェになっている。ここの名物となっているのが叫びケーキ。
カシス、チーズ、チョコと3種類ある。上に『叫び』をイラストしたチョコがのっかるだけだが、ここでしか食べることができない。
カフェのテーブルはたくさん空いているし、ここで一息いれることにする。
ケースに並ぶ『叫び』ケーキ。サンドイッチなどもあった。
叫びケーキ(79Kr)とエスプレッソ(25Kr)。
チョコレートムースケーキに『叫び』のチョコ。
チョコムースケーキはエスプレッソに負けないくらいビターな味。甘いもので一息ついて、疲れが少しとれた気がした。
オープンテラス席。
地下鉄に乗り中央駅へ戻る。
今度は12番のトラムに乗りヴィーゲラン公園に行く。
12番トラムは中央駅近くのKirkeristen停留所から乗る。
ヴィーゲラン公園はノルウェーの彫刻家グスタフ・ヴィーゲランの彫刻作品が多数展示された公園で、人生の諸相をテーマにしたという老若男女212点もの彫刻が置かれている。
しかもどの彫刻も全裸。
考えさせられるものから笑ってしまうものまで、まさに人間劇場とも呼べる彫刻作品が並んでいた。オスロの名所ならぬ『迷所』とでも呼びたくなるような公園であった。
ヴィーゲラン公園。
121体もの折り重なった人間が刻まれた『モノリッテン』の塔。
ここへ来て目立っていたのが中国人の団体さん。現れるとモニュメントの前を占拠するように取り囲む。
日本で見かけるのはその一部分、今や世界中に進出しているのだろう。
この手の団体さんは、見ていると概しておばちゃんが一番元気。これは中国人に限らず世界共通のようだ。
そういえば初日からずっと、日本人の姿を見ていない。海外旅行をしていると大抵見かけるし、なんとなく同朋とわかるものだが、今回は全然見かけていない。
ヴィーゲラン公園からまたトラムに乗る。
古い建物が建ち並ぶフログネル通り(Frognerveien)。
思い立ってふらりと途中下車できるのも一人旅の良いところ。下車して写真を撮りながら歩く。
古い街並みにトラムがよく似合う。やっぱりヨーロッパはいいね。
ロータリー内の噴水にはトラムの線路が通っている。ソーリ広場(Solli plass)。
電車が通るときは噴水が止まる。
道路上はトラム優先が徹底していて、車に進路をさえぎられることは無い。むしろ車の方が遠慮がちに走っている感がある。
なんでも車優先の日本とは違う。
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