■ボードー 〜 トロンハイム 〜 オスロ のルート

ここからはまた鉄道の旅になります。
ボードーからオスロまでは途中のトロンハイムで乗換えとなるが、列車で一気に南下する。
一気にと言っても、オスロまでの距離は1,282kmあって、これは日本で言えば札幌〜東京間にも匹敵する。トロンハイムからは夜行列車でオスロ着は明日の早朝ということになり、しかも寝台料金をケチって座席車としたので相当な強行軍となる。
ボードーからオスロまでのチケットは2か月前にインターネットで購入していた。そのときの支払額は349Kr(4,724円)。ずっと座席車とはいえ、日本でいえば札幌〜東京間片道5,000円でお釣りがくると考えればわかりやすい。
早期購入かつ変更もキャンセルも不可とはいえ、あまりの安さに間違って買ったのかもしれないと疑ったものだった。
検札の時にNO!と言われたらどうしようかと思っていた
ちなみに、この区間の通常価格は1,595Kr(約2万2千円)となる。
ガランとしたボードー駅の待合室。
12時前に駅に戻ってきた。相変わらず待合室はガランとしている。
ホームに列車が停まっているが、ドアは閉ざされていてまだ乗ることはできない。
しばらく待合室で過ごす。
12時を過ぎたころから乗客が駅に集まってきた。今まであまり見なかったバックパックを担いだ人や、今時はどこへ行っても目にする中国人の姿もあった。
12時10分ごろ客車のドアが開いて乗車開始になる。
チケットに指定された車両は一番後ろの5号車。座席も指定されている。
乗車開始。客車5両編成だった。
先頭のディーゼル機関車。ヌールラン線用のDi4という形式。
まずは472列車でトロンハイムを目指す。ボードーを12:27に発車してトロンハイム到着は22:05と所要時間9時間38分、距離にして729kmと大長距離列車だ。
トロンハイムまで行く列車は昼行ではこれ1本だけ、あとの1本は夜行となる。
列車は客車5両編成、うち1両がカフェカー、もう1両がコンフォートといって日本で言うグリーン車といったところ。コンフォートは90Krの追加で利用できる。長時間乗車なのでこっちにすれば良かったのだが、予約した時は知らなかった。あとの車両がスタンダード(普通車)となる。
普通車の座席間隔は日本とさほど変わらない。しかし、欧米ではめずらしく回転リクライニングシートだった。
車内はWi-Fiが繋がり、しかも各座席にはコンセントも付いている。現代の旅行では最高のサービスではなかろうか。
ボードー〜オスロ間の時刻表。

ボードー〜オスロ間のチケット。
車内に入ったときは空いていたが、地元の人らしい人が次から次と乗ってくる。私の隣にもおばさんが座った。ほかにいくらでも空いているのになんで隣に来るのだろうと思ったが、座席が指定されているのかもしれない。
発車すると車掌が検札に回ってきた。印刷してきたチケットを車掌に見せると「サンキュー」といって返してくれた。
チケットはこれでOKだった。あとは列車に身をゆだねていればオスロまで着ける。
それにしても、何かにつけて物価の高い北欧だが、鉄道運賃だけはかなり安い。
ボードーを発車するとフィヨルドを見ながら走る。悪くはない眺めだが、薄曇りのせいかいまいち冴えない眺め。ロフォーテンの美しい風景をさんざん見て来たせいだろうか。
列車のスピードはあまり上がらない。非電化で単線ということもあるのか、いかにもローカル列車という走り方に感じる。ナルビク側の電化されたオーフォート鉄道とは対照的だ。
ファウスケ、ログナンでは地元客の多くが下車した。隣のおばさんもログナンで降りた。車内は空席ばかりが目立つ。
ファウスケ駅に到着。ボードーからここまでの区間列車もあって、比較的大きな駅。
列車はシエルスターフィヨルド(Skjerstadfjorden)に沿って行く。
おなかが空いていたので、スーパーで買ったパンを食べる。
あとで思えば、空いているうちにカフェカーに行ってビールでも飲めば良かったかもしれない。どうも食生活が貧しくていけない。
食に関しては今回の旅行は後悔することばかりだった。
ボードーのスーパーで買ってきたパン。
だいぶ席が空いてきた車内。
列車は海岸沿いを離れてだんだん山へと向かって行く。
深く入り組んだフィヨルドが連続する海岸沿いを避けて鉄道を敷設したためで、しばらく海はおあずけになる。
ナルビクからずっと海沿いを通って来たので、山の風景は逆に新鮮に見えた。
海岸沿いを離れ、高原の風景になってくる。
線路は高い所にあり、氷河地形の谷を見下ろしながら行く。
指定された席は右側だが、左側に席を移す。
窓の眼下にはU字谷が広がっている。標高が低ければここもフィヨルドになっていたところだろう。
雄大な景色に、窓際で釘付けになっているのは私だけ。あとの乗客は眠っていたり、スマホに夢中だったり。
雄大な溪谷が広がる。
溪谷が終わるとこんどは高原を走る。高原と言っても、まだ雪が覆う緩やかな起伏がどこまでも続いている。
まるで冬に逆戻りしたよう。空は雲が覆い、人家どころか1本の木すら見えない白と黒だけの世界。
しかし今は冬ではない。夜中でも明るい白夜の季節なのだが、この辺りでは春の息吹はまだまだ遠いようだった。
今回の旅行で、一番北極らしい風景と言えばこの辺りだった。
オスロからずっと北上して初めてこの景色を見たら、北極へやって来たと大感激だっただろう。
鉛色の空に残雪が覆う北極圏の風景。
ところでもうすぐ北緯66度33分の北極線を通過する。
窓の外をずっと目を凝らして見続ける。北極圏入口を示すケルンがあるはずなのだ。
しばらくするとそのケルンが見えた。残雪と岩の間に立っているので目立たないが、石を積んだケルンとその上に乗っかる地球儀のようなモニュメント。北極圏の旅もこれで終わりになる。
そんなこと知ってか知らずか、列車は速度を落とさず通過し、車内の乗客も誰一人関心は無いようだった。
このあたりからまた林も見えるようになってくる。
列車最後部の窓から。
険しい山道を行く。冬など過酷そうだ。
モー・イ・ラーナ着は15:28。ログナンから約2時間、ようやく町らしい所である。ここから乗ってくる人は多かった。がら空きだった車内が再び賑やかになる。
モー・イ・ラーナに到着。
モー・イ・ラーナからは再びフィヨルドのほとりを走る。曇っていて薄暗いせいか、もうこんな景色も飽きてきたのか退屈に思えてきた。
このあたりから沿線に家や牧草地が見えるようになる。人里まで下りてきた感じがしなくもない。
曇り空はだんだん暗くなり、ついに雨が降ってきた。
途中の山の中の駅で、騒がしい高校生くらいの学生の一団が乗ってきた。車内が騒がしくなる。
もう早く着いてほしいと思うようになった。
行けども行けども針葉樹と白樺の森。いくら鉄道旅行好きでもさすがに長く感じる。自然の風景だけ見ていると北海道とあまり変わらないので、外国にいることを忘れそうになる。
ノルウェーの総面積は日本の総面積とほぼ同じ。しかし人口は約510万人で北海道より少なく、南北に細長いとくる。人口密度で言えば、北海道の人口を日本列島にちりばめたようなものだ。少ない人口が広く点在するようではインフラに金がかかるはずで、そりゃ税金も高くなるわ。
行けども行けども・・・
モー・イ・ラーナ行き477列車。グロング(Grong)駅で交換。
モーシェーン16:38着。ここからもかなり乗車がある。だいぶ混んできた。ボードーからずっと乗っていた前の席の人はここで降りて行った。
ボードーからの乗客はほとんど入れ替わったようだ。それもそのはず、ボードーからトロンハイムまで所用時間9時間38分、しかも1日1本だけの昼行列車に乗りとおす人など、そうはいないだろう。
さっきの学生の一団は乗ってから2時間くらいして、また山の中の駅で降りて行った。合宿にでも行くのだろうか。
おかげで車内は少し落ち着いた。
19時を過ぎると雨は上がり、再び青空になる。
水平線の向こうから夕日が差し込む。
21時を過ぎるとだいぶ日が傾いて、車内に西日が差しこむようになってきた。しかし、日没まではまだ2時間近くもある。今日のトロンハイムの日没は23:03となっている。
22:05、定刻トロンハイム着。やれやれやっと着いたという感じだった。ボードーから9時間半以上、途中の景色が単調なぶん余計に長く感じた。
しかしここで終わりではない。ここからさらに夜行列車に乗り継いで座席車でオスロに向かう。
トロンハイムに到着。
トロンハイムでの乗り継ぎ時間は1時間少々。コンコースにある待合所のベンチはほとんど塞がっているし、せっかくの乗り継ぎ時間なので駅舎を出て中心部まで往復してくる。
夜10時過ぎ、トロンハイムの街。
トロンハイムは人口約17万人、ノルウェー第3の都市である。ノルウェー王国最初の首都でもあった歴史のある都市でもある。
歩いて見ただけだが、落ちついた港町といった印象だった。スボルベルを経由しなければ、ここで1泊しても良かったかな。
駅前にある運河。
近代的な駅舎のトロンハイム中央駅。
駅に戻り22時半。まだ発車まで1時間ある。
待合所にあるコンビニでハムと卵を挟んだパンとジュースを買った。パンは電子レンジで温めてもらう。
空いているベンチに腰かけて食べる。本当に今日もロクなものを食べていない。
歩き回っていると感じなかったが、座っていると寒くなってきた。気温は一桁台だろうか。
駅の中はコートやダウンジャケット姿の人も見かける。南下しているはずなのだが、気候や服装だけ見ているとまるで北に向かっているかのようだ。
トロンハイム中央駅のコンコース。
コンコースの発車時刻表。オスロ行とボードー行以外は近郊列車。
23時を過ぎても待合所の人の動きはなし。ホームへ行ってみるとオスロ行の列車はすでに入線していた。
寝台車の窓からは、コンパートメント内でくつろいでいる人の姿が見える。ケチらないで寝台車にすれば良かったと後悔した。
車内は混んでいた。自分の席は窓側の席なのだが、そこには女性が先に座っていた。学生だろうか、後ろの2人も連れのようだ。エクスキューズミー、ここは私の席ということを英語で言うと彼女は隣の通路側の席を「Here」といって示した。面倒なのでそこに座る。もう景色も見えないし、通路側でも構わない。
窮屈だが、若い女性の隣になったので良しとするか。向こうは余計なオッサンが来やがってと思っているかも知れないが。
席には夜行列車のサービスらしく毛布とアイマスクが置いてあるのはサービスが良い。
2席とも空いている席もいくつか目立つ。なんでこんな座席指定にするのかと思ったが、次の駅でも結構乗ってきた。空席も途中駅から乗ってくるのだろう。
そういえばカフェカーがあったと思いだし行ってみる。
もう23時40分を過ぎているが、まだ営業していた。しかし、ここも満席。お酒を飲んでいる人が多い。カフェというより、バーのような様相である。
しばらく待っていれば席が空くかなと様子を見たが、長居を決め込んだ客ばかりのようで空きそうもない。
3日ぶりに見る暗闇。それでも空は明るかった。23時50分、カフェカーの窓から。
通路の窓から外を見ると、外は暗くなっていた。北極圏に入ったのが3日前、夜の暗闇はそれ以来だ。それでも完全には暗くならないようで、空はぼんやりと明るかった。これで白夜旅行は終わった。
丸1日じゅう移動の旅で疲れているのか、席に戻って毛布をかぶるとすぐに眠れた。
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