さて、件のホテル前に着いた。とりあえず中に入ろう。
あかない(鬱)
エントランスのドアはやはりカギがかかっていた。ドアの横にインターホンがあったので押してみる。
反応なし。隣のオフィスで聞いてみるか。もう一度インターホンを押してみる。
エントランスの暗証番号キー。
しばらくしたら中から人が出てきてドアを開けた。助かった。
中に入ると、今でてきた人はそのまま外に出てどこかへ行ってしまった。ここの宿泊客か、ただ単にドアを譲ってくれただけだった。
椅子やテーブルが並んでいるが、誰もいない。カウンターもない。『PRIVET』と書かれたドアがあったのでノックしてみるが反応はなかった。
ホテルスタッフどころか管理人のような人もいない、本当に無人のホテルらしかった。それでも天井にはしっかりと監視カメラが取り付けてあったので、ウロウロする私の姿はバッチリ写っていたはずで、まるで不審者だ。
誰もいない1階のロビー。
業を煮やして、予約書にあったホテルの電話番号にスマホでかけてみた。が、繋がらない。
ロビーのソファーに腰かけて、これからどうしたものかと考えた。
突然メールが来た。
『The code for your stay』という件名で、部屋番号と暗証番号、それにエントランスの暗証番号が記してあった。メールに記してある番号の部屋へ行き、ドアノブにあるキーに暗証番号を入力するとドアが開いた。
ようやくホテルから届いたメール。
なんとか無事に部屋に入ることができた。これをもってチェックインということなのだろう。
入ってみると部屋は悪くない。フローリングで清潔、部屋も広くて申し分ない。テレビはないが、見てもわからないし別にかまわない。テーブルには電気ケトルとコーヒーカップが置いてあった。お湯が作れるのは何よりのサービスだ。Wi-Fiもすぐに通じた。
入ってしまえば広くて快適そうな部屋。
部屋は少し変わった形になっている。
今回の旅行で一番心配していたのがこのホテルであった。これで一番の心配事が解消したことになる。
すっかり心が軽くなって外に出た。お祝いでもしたい気分だった。
港に面した中心部の広場。
ロフォーテン諸島は『世界で最も美しい場所のひとつ』と言われる。その中心で、道路にしても船にしても交通の拠点となるところがこのスボルベルで人口約4,000人、ロフォーテン諸島最大の町になる。
さっきバスを降りたときに通った広場に来た。
広場は観光客風の人が多いのはナルビクとは対照的だ。道理でホテルがとりにくかった筈で、やはり白夜の今は観光シーズンなのだろう。
陸路ではナルビクから4時間以上もかかったが、沿岸急行船よ呼ばれるクルーズ船もこの港に発着しているし、空港もある。バスは空いていたが、観光客の多くは船や飛行機でスボルベル入りしたのだろう。
ところで、ナルビクでもそうだったが、日本人どころか、アジア人の旅行者はめずらしくいなかった。
屋台が並ぶ広場。
港から見たスボルベル教会の時計塔とロフォーテンの山々。
広場は港に面したところにあり、近くにあるオープンテラスのカフェでは大勢の人がいて賑やかだ。
いや、それにしても暑い。みんな夏の格好をしていて、長袖姿など自分だけだ。上着は脱いでTシャツ1枚になった。
港に面してロルブ―(漁師小屋)風のバンガローが並ぶ。
明日はここスボルベルからボードーまでフェリーに乗る予定でいる。朝6時30分発と朝早い便なので、今のうちに乗り場を確認しておく。チケットも買えるものなら今日のうちに買っておこうと思っていた。
そのフェリー乗り場は広場に面した岸壁というのは事前にネットで調べてきているのでわかっている。ところが、探してもファリー乗り場らしき所は見つからなかった。それどころか看板すら見つからなかった。
これが明日乗るフェリー?そんなわけない。
魚釣りの子供たち。釣れたらしくはしゃいでいた。
広場に銀行があり、その横にATMがあった。お金を持っていないことを思い出した。よかった、ようやくノルウェークローネが引き出せる。
海外のATMは日本とは違い、引き出し金額を入力するのではなく、『400』や『800』といったあらかじめ決まった金額を選択するやり方となっている。一回使えば覚えてしまうくらい操作は簡単だし、何より日本で両替して持って行くよりもレートがずっと良いのでオススメだ。
そんなに多くは要らないのだが、金額選択画面になると最低額は400Kr(約5,400円)しかない。そんなにいらないんだけど、と思いつつボタンを押した。手にしたのは200Kr札2枚。北欧に来てわかったが、ここではクレジットカードさえあれば現金が必要になることは稀である。
このお金は結局持て余すこととなるのだった。こんなことなら成田空港でちょびっとだけ両替しておけばよかった。
広場に面してあった銀行とATM。
町の西側の岸壁にもフェリー乗り場があって、もしかしたらそっちなのかもと思い、歩いて行ってみた。
そこはカーフェリーの乗り場で時刻表も掲示してあったがボードーの文字は無く、違うようだった。
明日の朝、桟橋に行けば船が来ているのだろうか。新たな心配事がまた一つできてしまった。
ホテルに戻る途中でスーパーに寄って夕食の買い物をする。
ナルビクにもあったAMFIというショッピングセンターがここにもあった。
ほかにもスーパーやホームセンターが並んでいる。人口4千の町にしてはずいぶんと大型店舗が充実している。
スボルベルのショッピングセンター。国営酒屋のヴィンモノポーレ(Vinmonopolet)も入っている。
こちらはスーパー。ノルウェー全国にあるようで、オスロにもあった。
暑い中歩いていたので喉も渇いていた。ビールが飲みたい。
スーパーのビールうりばに行く。ノルウェーはビールならば普通に売っている。嬉しいことに冷蔵ケースに入れられ冷やして置いてあった。
ホテルに無事入れたし、お祝いしよう。
ビールは思い切って6缶のパックを買った。『ISBJØRN』というシロクマのイラストのビール。ここからさらに北にあるトロムセのマック醸造所が作っているビールである。
500ml入り6缶で155.4Kr、1缶当たり25.9Kr(約350円)だった。スウェーデンと同様、空き缶はスーパーのリサイクル機に入れれば1缶1Krが返金となる。
これがレストランやカフェで飲むと、同じ量でも1杯1000円以上になってしまう。ビールに関しては、スーパーで買ってホテルに持ち帰って飲んだ方が散財しなくて済む。
そのほかに買ったものはボイルエビ(39Kr)、鯖の缶詰(15.9Kr)。あとは残り物となる。2日目のヨーテボリで買ったパンなどが、量が多いのでまだ持ち歩いていた。これらも毎日消費して行かねばならない。
スーパーで買ってきたビールと食料。
ホテルの部屋に戻ると、テーブルに食材を並べた。テーブルが広いのは良い。
ビールは洗面台で流水で冷やしておく。その間にシャワーを浴びた。
テーブルに並べて夕食。エビがぷりぷりしておいしかった。
ノルウェーのサバ缶。ペースト状になっていてパンとよく合う。
窓からは隣の家の庭先が丸見え。
相変わらずいつまで経っても明るい。北極圏に来て3日目、白夜も特別なものとは思わなくなっていた。
それでもなんか、明るいのに1人部屋にいるのはもったいない気がする。
空き缶4本と、水の空ペットボトル1本がある。明日は朝早く出るので、ホテルの部屋に捨てて行くことになるのだが、なんだかもったいない。また外に出てみたいし、スーパーへ持って行くことにした。
機械に空き缶を入れて最後にボタンを押すのだが、普通のボタンと十字マークのボタンがあり十字の方を押すと返金が何倍にもなるか全額寄付になるかのクジになっている。
返金されてもたかが5Kr(約68円)だし、試しに十字を押して出てきたレシートを見ると、リサイクル代は寄付されたようだ。
空き缶リサイクル機。
ホテルへ戻る途中、また港の風景を撮影してくる。町の北側に架かる橋からの眺めがまた絶景だった。
町の北側にあるスヴィノイ橋(Svinøybroa)からの眺め。
北海道の漁村とあんまり変わらない風景。
スボルベルのヤギ(Svolværgeita)と呼ばれる奇岩が見える。
奇岩の上をジャンプする人。エハガキより。
海沿いに並ぶロルブ―(漁師小屋)を見るとやはり北欧だと思う。
ロルブ―の並ぶ風景。
客室のドア。暗証番号キーが付いている。
22時30分、暑くても北極圏、今日も暗くならない。
遮光のロールカーテンを下ろす。
疲れもあってだんだん眠くなってきた。22時頃、当然昼間のように明るい。いつの間にか突っ伏して寝落ちしていたらイヤなので、さっさとベッドに横になることにする。明日は朝6時前にはホテルを出たい。
窓は遮光カーテンを下ろし、スマホの目覚ましをセットして横になった。
ナルビクなんかで2泊せず、ここスボルベルで2泊すれば良かった。そうすればロフォーテン諸島の先端の町、オーまで行けたのに。
しかしそれは結果論で、もし仮に悪天候等で足止めを食うことになっていたら、と考えると、これで良かったのかもしれない。
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- 2016年白夜・北欧旅行記13 オスロを歩く その1
- 2016年白夜・北欧旅行記12 ノルウェーの車窓から
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