留萌本線に乗ってローカル線問題を考える3

●増毛 7:35発 − 深川9:09着 4924D

さて増毛駅へ戻る。
増毛発車時の乗客は13人くらい。明らかに地元客とわかるのは5人だけだった。
旅行客や鉄道ファンはクロスシート、地元客はロングシートに座る傾向のようだ。学生は1人もいない。数少ないクロスシートに人気が集まるせいか、実際の人数よりも乗車率は高く見える。

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 増毛駅で発車前の4924D車内。

駅間が短いので停まっては走りを繰り返す。相変わらずどの駅も乗降ゼロ。
留萌までの所要時間は30分、バスは同じ区間を35分となっていてどちらも所用時間はほとんど変わらない。駅数が少なければ所要時間の面でバスより優位に立てたのかもしれないが、乗客の利便のために多く設けられた駅も、余計にこの路線の中途半端なものにさせている。

もと仮乗降場の阿分で乗客が1人あり、つぎの礼受でももう1人乗ってきた。地元客だろう。いずれも高齢の女性で軽装、遠出するようには見えなかった。通院だろうか。
本数も多く、こまめにバス停のあるバスではなく、なぜわざわざ列車を利用するのだろうか。バス路線である国道も全線でJRと至近距離で並行している。おそらく、何十円か安いので節約のためか、通学生で混雑するバスを敬遠してのことと思われる。いずれにしてもJRが廃止になってもほとんど影響を受けない客層ということは確かである。

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 阿分で地元客が1人乗車した。

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 礼受駅でももう1人乗車。

目見当でしかないが、地元客は増毛からの5人と途中駅からの2人の7人だけだった。午前中に留萌に着く列車はこの4924Dと1本前の4922Dの2本しかない。2列車を合わせても10人程度の地元客が日常の乗客ということになる。
唯一増毛に午前中に着く下り4921Dの地元客は前述の通りゼロに近い。増毛への日常的な用務客もほぼゼロと考えてよいだろう。

留萌〜増毛間時刻表(2015/9現在)
下り4921D4925D4927D4929D4931D4935D     
留萌 発6:5012:1414:2117:0819:1021:10 
増毛 着7:2012:4414:5117:3919:4021:41 

上り4922D4924D4930D4932D4934D4936D5922D
増毛 発6:117:3512:5415:4117:4719:4821:49
留萌 着6:418:0513:2416:1118:1720:1822:12
 ※4935Dと5922Dは休日運休。

留萌〜増毛間の運行本数は下りが6本、上りが7本の計13本(うち2本は休日運休)となっている。多いとは言えないが、道内の他のローカル線と比べて特に少ない本数ではない。午前中の列車が早朝に偏りすぎ、午後の列車までの空白が長すぎるという典型的な通学生向けのダイヤで、これが本数の割に不便にさせている。

通学以外の輸送となると通院や買い物などが挙げられるが、これははっきり言ってバスの方が便利だ。通学時間帯の列車を逃すと次は午後の便しかないのでは、仮に利用したい人がいても利用できないということになる。
留萌市の中心部は駅前ではなく1kmほど離れた錦町や本町近辺で、市役所、留萌郵便局、銀行支店など主だった集客施設もこの辺りに存在している。
2001年には瀬越駅近くにあった留萌市立病院が現在の場所(留萌市東雲町)に移転している。

買い物客の利用はどうだろうか。留萌市内に相次いで進出した商業施設は広い土地を求め、かつては市街地の外だった国道233号線沿道の郊外に出店し、郊外型ショッピングセンターを形成した。逆に中心部は衰退を始め、2010年には中心部の核テナントであった「ラルズプラザ」が閉店した。

もともと留萌駅が中心部から外れた場所にあって、昔から沿線住人の足はバスが主流だった。高校が駅から遠いこと、市立病院や商業施設が郊外に移ったことなど、沿線住人の鉄道利用を遠ざけている大きな理由のひとつだ。

もっとも留萌線に限ったことではないが、中心部の空洞化や集客施設の郊外移転などは鉄道事業者ではどうにもならない問題で、地元自治体が本気で鉄道を存続する意思があるのならば鉄道路線や駅の位置を考慮した町づくりを考える必要がある。


一方バスの状況はどうなのだろうか。
留萌〜増毛間は沿岸バスが留萌別苅線として路線バスを運行している。
同線の1日当たりの乗車人員は342人(2013年度:平成26年留萌市統計書より日割)となっている。増毛町内からの通学生は約70人ということになっており(毎日新聞2015/8/30より)、乗車人員のうち140人が通学客ということになる。

本数は2015年9月現在で増毛方向行き10本、留萌方向行き12本の計22本となっている。鉄道よりも多い便数だが、1〜2時間に1本では決して便利とはいえない。
全ての便を留萌市内2校の高校を経由して市立病院発着とするなど、需要にあった路線の再編を行えるのはバスならではで、利便性は向上している。

それでも赤字路線で、国や道から「地域公共交通確保維持改善事業費補助金」という名の補助金をを受けて維持している状態である。
乗客数は年々減少傾向で、ダイヤも減便が続いている。2000年代前半には36本もあったバスだが、現在の本数と比べるといかに利用客が減少しているかがわかる。


地元客の利用はほとんど期待できないというのが現状だ。では観光等で入込客の期待はできるのだろうか。

たとえば旭川や深川から鉄道で増毛へ観光に行こうとしても、常識的な時間に出発して増毛に午前中に着く列車が無く、これではお客は他の交通機関を選択するか、増毛へ行くこと自体取りやめることになる。
潜在的な需要を逃していたということも考えられる。もっと一般客や旅行客が利用しやすいダイヤにしていればもう少し違った展望があったかもしれない。

ただ何度も言うが、鉄道のダイヤというものは難しいもので、そう簡単に変えられるものではないし、前述の通り交換設備を極端に減らした今ではダイヤを変えるのはさらに難しいのが現実である。

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 瀬越で若い女性が2人とクールビズ姿の男性1人の3人が下車して行った。通勤客だろうか。

次は留萌に着く。幅広の1番ホームや駅舎から張り出した上屋が都会の駅ということを感じさせる。留萌駅の営業は7:50から行われていて、列車のドアは2箇所とも開く。改札口には駅員が立って運賃を受け取っている。

留萌で交換列車は無いが6分停車する。
留萌からの乗客は7人、同じくらいの人数が下車したので留萌でだいぶ客が入れ替わった。

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 留萌駅1番ホーム。地元客はほぼ全員下車したようだ。

4921D〜4924Dの状況を見てきたが、留萌〜増毛間の午前中の利用客は10人に満たないということだった。午前中でということは、これが地元の利用客の全てと言ってもよいだろう。
通学輸送が無くなった何年も前から、この路線を鉄道として存続される必要は無くなっていたのである。

地元客からも観光客からも不便なダイヤ、留萌駅の立地の悪さなどからごく少数の利用客を拾うに留まり、札幌や旭川への移動手段もバスが一般的になって久しい。もうだいぶ以前から、沿線住人にとって鉄道は影の薄い存在となっていたようである。

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 跨線橋手前にあるのりば案内も点灯していた。

今回のJR北海道による鉄道事業廃止の発表は、現段階ではまだ留萌市長及び増毛町長への説明というもので正式に決定したものではない。まだ、廃止撤回の余地はありそうだが、地元住人のとらえ方は冷静なようだ。

「JR留萌―増毛間、廃止容認79% 留萌市議会が市民調査」
2015/11/7どうしんウェブより)

数字を見てもほとんどがバス利用であり、鉄道の利用実績が無いのは明らかでは廃止に反対する根拠は薄いといえる。


JR側の廃止したい根拠はやはり経営状況であろう。下表は留萌〜増毛間の2014年度の営業収支である。

(JR北海道プレスリリース 2015.11.6平成27年度第2四半期決算についてから作成)
輸送密度営業収益営業費用営業損益営業係数
39人/キロ500万円2億1200万円△2億700万円4,161円

費用のほとんどは固定費と思われる。これは利用者が0人だろうが10倍になろうがほぼ変わらないということで、今の線路とダイヤを維持するだけで年間2億円以上の経費を投入していかなければならないということである。対して収入は1日39人分である500万円だけになる。単純計算で1日当たり1,600人以上の利用があれば(しかも全員普通乗車券という前提で)単純計算だがペイできることになるが、バスと合わせても400人に満たない同区間の輸送量を考えると、ほとんどありえない数字だ。
留萌本線自体、運行するために必要な最小限の設備しか残しておらず、これ以上の経費削減は難しいのが現状と思われる。

しかも近年になって土砂崩れや雪崩による事故が2度も発生しているなど、災害が多発するようになってきた。安全に運行するためには数10億円にも及ぶ防災工事が必要となることとなった。

仮に防災工事費用をどこかが負担したとしても、過疎化や少子化はますます進行するのは確実で乗客数も増える見込みは全く無しでは、今後も存続していくと考える方が不自然である。
この度、JR北海道が「鉄道を維持していくことが困難であるという結論に至り」となったのも当然ともいえる。

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 留萌発車時の4924D。

留萌で乗客が入れ替わり、地元客の割合が多くなってようやくいつもの平日の列車という雰囲気になった。
石狩沼田の1つ前の真布駅までの各駅から乗ってくる乗客はゼロ。藤山、恵比島、真布でそれぞれ下車があったが、いずれも鉄道ファンか旅行客のようであった。峠下までの各駅は国道233号線の路線バスが並行しているので、そちらに乗客が流れているのだろう。

乗車客があったのは石狩沼田、秩父別の2駅だけだった。それでも合わせて8人だけ。沼田町から深川市までも空知中央バスの路線バスが並行しており本数も鉄道より若干多い。留萌本線は全線にわたって一部の駅を除きバス路線がカバーしていることになる。

深川到着時で乗客は20人だった。

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 留萌市立病院の横を通る。ここに駅があれば・・・

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 峠下で4923Dと交換。

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 恵比島駅。朝の連ドラ「すずらん」のロケに使われた木造駅が今も残る。
 1999年から「SLすずらん号」が運転され多くの観光客でにぎわったこともあるが長くは続かなかった。

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 石狩沼田駅。今は棒線駅だが、駅舎は本線らしく堂々としたもの。地元客4人が乗車。

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 留萌自動車道が並行する。

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 秩父別は木造駅舎が今でも使われている。ただし無人駅。ここからも地元客4人が乗車。

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 木造駅の北一已は”きたいちやん”と読む難読駅。

JR北海道はいま様々な報道にあるように、相次いだ事故の対策や設備の老朽化対策など大変厳しい状況にある。
2015年6月にJR北海道再生会議がJR北海道に提出した『JR北海道再生のための提言書』によると、
「鉄道特性を発揮できない線区の廃止を含めた見直し、など経営全体について、聖域のない検討を行うことが必要」
という記載があり、今回の留萌〜増毛間についてはこの提言を受けた第一弾という格好になる。

JR北海道では最近輸送密度500人以下の路線を「ご利用が少ない線区」として収支状況を公表するようになった。それによると今回廃止区間を含め10区間が公表対象となっている。
また同提言書には、
「地元自治体や利用者の理解を得るべく〜中略〜日頃から、路線別の利用状況等の情報提供について積極的に行うべきである」
との記載があり、これを受けているとすれば、収支を公表する以上何らかの検討対象としているということであろう。

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 JR北海道プレスリリース 2015.11.6平成27年度第2四半期決算についてにて公表された「ご利用が少ない線区」10区間。

毎年計上する多額の赤字も深刻になってきており、車両の老朽化置換えもそろそろ検討しなければならない時期に来ている。2016年3月のダイヤ改正では、普通列車約80本を減便する方針で、同時に利用の少ない9駅の廃止も進めるという。

 2015.09.30 JR北海道プレスリリース

「ご利用が少ない線区」には今回廃止を免れた深川〜留萌間も入っていて、数字だけ見ても留萌本線全線が残念ながら廃止への流れにあることは想像がつく。
残りの8区間についても、今のところ廃止の噂にとどまっているに過ぎないが、今後何らかの動きがあると見てまず間違いない。

報道によると、JR北海道は2018年度末には経営破綻状態になるとの試算もあるという。そうであれば経営改善まで一刻の猶予もなく、近い将来道内のローカル線は正念場を迎えることになるだろう。

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 終点深川に到着。同列車は深川駅で1時間停車し、929Dとなって旭川へ向かう。

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 札幌行「スーパーカムイ10号」が到着。4924Dからの接続も良いが、乗り継いだ乗客はほとんどいないようだった。

道内のローカル線の存廃については、今後はJRや地元の動きが活発化してくると思われる。
私は地元住人でもないし、頻繁に乗車する利用客というわけでもないので、とやかく意見をする資格は無い。ただ1鉄道ファンとして見届けるだけである。もっとも、そんな大層な意見も持っていないけれど。

今のうちに何ができることはあるのだろうか。せいぜいあるうちに乗りに行って(できれば乗車券を買って)、記念に入場券を買ったり、地元でお金を使うくらいのことだ。そして、今ある姿を記録すること。

われわれ鉄道ファンは考えなければならない。いま自分にできることは何なのだろうか、と。
「さよなら運転」に駆けつけて、ホームで大声を上げるだけでは芸がないではないか。

それでは最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。

〜おわり〜
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posted by pupupukaya at 15/11/08 | Comment(0) | 北海道ローカル線考
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