留萌本線に乗ってローカル線問題を考える1

2015年8月10日、留萌本線の留萌〜増毛間が廃止について、JR北海道からの正式な発表があった。
同区間の1日当たりの輸送密度は39人、年間1億6千万円以上の赤字、相次ぐ雪崩や土砂災害などで防災工事費が数十億円も見込まれるなど今後鉄道を維持していくことは困難というものであった。

留萌線(留萌・増毛間)の鉄道事業廃止について【PDF/658KB】 
JR北海道2015.8.10プレスリリース

ところで留萌本線とは函館本線の深川と増毛を結ぶ66.8kmの路線で、1両のワンマン普通列車が走るだけという典型的なローカル線である。
こんな留萌本線だが昔は景気の良い時代もあって、留萌〜幌延間の羽幌線という支線を従がえ、急行列車が札幌方面から2往復、旭川から2往復の計4往復が乗り入れ、空知の各炭鉱から留萌港に向けて石炭貨物列車も多数走っていた。まさに本線の名にふさわしい路線であった。貨物は昭和30年代、旅客は昭和40年代が黄金期であっただろう。

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 急行列車も多数運転され華やかりし頃の時刻表。「弘済会の道内時刻表」1982年4月号(弘済出版社発行)より。

1980年代以降は、高速道路の延伸により急行の乗客がバスに流れ、乗客減と国鉄の合理化政策から急行が次々と廃止されることになった。
1986年11月には最後まで残った急行「はぼろ」「るもい」が廃止になり、1987年3月には留萌から分岐していた羽幌線が廃止になる。
この頃はまだ貨物列車が残っていて、1986年11月改正の貨物時刻表を見ると、芦別と赤平からの石炭列車が1往復ずつ、計2往復運行されていた。これも炭鉱の閉山により1989年には廃止されたようである。

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 1986年11月ダイヤ改正「貨物時刻表」(社団法人鉄道貨物協会発行)より。

急行列車も貨物列車も走らなくなり、支線の羽幌線も失った留萌本線は、1両の普通列車が僅かな地元の乗客を乗せて走るだけというローカル線に成り下がってしまった。

そんな留萌本線の実態を見るべく、留萌本線の列車に乗ってみた。2015年9月のとある月曜日である。

●深川 5:44発 − 増毛7:20着 4921D

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 留萌本線の起点は深川駅。

朝5時半、深川駅にやってきた。5:44発増毛行4921Dに乗るためだ。

家人の車で送られてきた人が駅の中に1人、2人と入って行く。5:37発札幌行「スーパーカムイ2号」の乗客だ。駅の窓口や改札口はすでに営業している。深川駅の朝は早い。

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 始発列車から駅員が常駐する。

駅舎側の1番ホームには特急の乗客が数人立っている。札幌まで特急の所要時間は1時間6分、運転本数は1時間に1〜2本と太いパイプで結ばれている。鉄道の本領発揮といったところだろう。実際、深川駅の乗車人員は1日当たり1,000人程度、ここ10年間ほぼ横ばいで推移している。札幌圏以外のJRの各駅はどこも乗車人員が減少して中で、ここ深川駅は健闘している。特急定期券「かよエール」の効果もあるのだろう。

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 4番ホームには1両のキハ54が入っていた。

留萌本線の列車は全て普通列車だが、朝1番の増毛行4921Dは留萌まで途中石狩沼田、峠下、大和田の3駅のみ停車の快速運転になっている。同区間の所要時間は51分と全列車の中で最速になっている。
市販の時刻表にも駅の時刻表にも「快速」の文字は無く、各駅停車と同じ普通列車ということになっている。これは留萌までの時間帯を考えると途中駅の利用者がいないために通過扱いとしたためだろう。同様に増毛発最終留萌行の5922Dも舎熊、礼受2駅のみ停車となっている。

ほとんど回送列車のような存在なので車内は無人かと思っていたが、先客が5人がすでに乗っていた。乗客は自分含めて6人、うち地元客は1人だけであった。あとは鉄道ファンらしき旅行者(自分含め)だった。

5:37に札幌行スーパーカムイ2号が発着するが、こちらへ乗り継いだ乗客はゼロ。最初の6人のまま深川を発車した。

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 1番ホームに停まる札幌行「スーパーカムイ2号」。

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 発車するとすぐに函館本線と離れる。

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 深川発車時の車内。車端のロングシートが拡大された通学列車仕様。

深川を発車するとすぐに函館本線と分かれて水田地帯を進む。黄金色の稲穂がびっしりと、豊かに稔れる石狩の野といったところ。
線形も良く、80km/h前後で快走する。石狩沼田までは全駅通過するので、走りっぷりだけ見ていると往年の急行列車を彷彿させる。

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 車窓は石狩平野北部の水田地帯。

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 深川〜恵比島間は平野のため直線区間が多く、最高80km/hで走行する。

最初の停車駅、石狩沼田で女性が1人下車する。しかも定期券客だった。年齢からして当然通勤定期だろうか、意外な乗客だった。
それにしてもまだ6時前である。もしかしたら深川の病院あたりで夜勤明けの帰りかも知れない。

唯一の地元客が下車した車内は全員が鉄道ファンということになった。夏休みは終わったといえ、青春18きっぷも北海道&東日本パスもまだ利用期間中である。普段の平日ならばここからは乗客ゼロで毎日走っているのだろう。実質回送列車ともいえる。

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 最初の停車駅は石狩沼田。ここで定期券客が1人下車した。

恵比島を過ぎると峠越えになる。といっても勾配は最急で10パーミルほど。石炭輸送に適した設計になっている。そのかわりきついS字カーブが設けられていて地図上で見るとタコ頭のようになっている。

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 恵比島からの峠越えは線形も悪く60〜70km/hほど。

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 恵比寿、峠下と2つのトンネルをくぐる。

峠越えをして2つのトンネルを抜けると峠下に停まる。深川を出ていらい最初の列車行き違い設備のある駅だ。かつてはどの駅も駅構内が複線になっていて列車の行き違い(交換)ができたが、国鉄末期からの相次ぐ合理化が進められた結果、今では行き違い可能駅は峠下と留萌の2駅だけとなっている。

深川を出てから峠下までの28.3kmが1閉塞区間として1列車しか入れないわけで、ここがダイヤ作成の足かせとなっている。列車増発は無理でも、せめて深川での良いとは言えない特急との接続を改善したくとも難しい理由のひとつが、行き違い可能駅を最小限にまで減らしたことでもある。

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 峠下に到着。

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 峠下駅で交換する深川行4920D。

峠下駅の反対側の線路には深川行4920Dが先に停まっていた。こちらが到着すると向こうはすぐに発車して行った。深川には6:44に着く上り始発列車である。確認できた車内の乗客はたった2人だけだった。

仮にこの列車で留萌から札幌へ向かうとどういうスケジュールになるのだろうか。

 留萌 5:50 ― 6:44 深川 4920D
 深川 7:04 ― 8:26 札幌 スーパーカムイ6号
 運賃3,240円+特急料金1,800円=5,040円

ではバスでは、

 留萌ターミナル6:30 ― 8:49 札幌駅前ターミナル 高速るもい号
 運賃2,370円

鉄道は深川での乗り換え、しかも跨線橋を登り下りしなければならず、接続時間も20分と冬など待つのが大変だ。運賃もバスと比較すると倍以上の差がある。往復の「Sきっぷ」もあるが、通常ならば鉄道を選択する人がいるとは思えない。
冬はJRでという人もいそうだが、深川〜札幌間は冬期間の信頼性は高速バスより高いが、肝心の留萌〜深川間が頻繁に運休になるのが現状である。

物理的には通しの運賃形態で全国へ鉄道ネットワークにつながっているとはいえ、実際の利用形態は線内だけの僅かな地元客だけのようだ。

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 木造駅舎が残る藤山駅。この列車は通過。

峠下の次が大和田。留萌まではほとんど回送列車のようなダイヤだが、交換駅でもない大和田になぜか停車する。駅前は何もないが、駅周辺は留萌市郊外の住宅地として発展している。留萌への通勤通学列車としては早すぎる。
もともと留萌線の下り1番列車は各駅停車だったのだが、停車駅が整理された当時はここから増毛高校への通学生がいたのではないかと推測する。

大和田での乗降は当然ながらゼロ。深川方からの下り各駅停車は留萌に9:00に着く4923Dが最初になる。とっくに始業後となるので、藤山や幌糠から留萌への通学生は100%バス通学ということになる。

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 大和田駅に停車。

大和田を発車してしばらくすると左手に留萌の住宅地が見え始める。西側は日本海に面し、北側と南側は山に挟まれた留萌市は、国道233号線に沿って内陸へ広がりを続けている。
列車からは見えないが、大和田と留萌のほぼ中間に位置する南町付近の国道沿いにロードサイド店舗が建ち並び、ショッピングセンターになっている。スーパー、ホームセンター、家電量販店、大型書店などが建ち並び、ここへ来れば何でもそろうほどだ。

さらに左手に6階建ての巨大な建物が見える。2001年に新築移転した留萌市立病院である。
近くには北海道留萌高校もあって、留萌市内の大型集客施設はこのあたりに多い。

平野になり線形が良くなったので列車のスピードは再び80km/hになった。市内の一番発展している地区を見ながら列車は全力で駆け抜ける。

国道232号の陸橋をくぐり、留萌川の鉄橋を渡ると留萌に着く。旅客列車の営業上はただの途中駅だが、側線には保線車両も停まっていて、それなりの拠点にはなっているようだ。

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 留萌駅構内が見えてきた。

留萌駅は1番ホームに着くものと思っていたが、2番ホームに着いた。ということは留萌で交換する上り4924Dは1番ホーム発着ということになる。留萌駅の列車は右側通行なのだろうか。おもしろいなあ。

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 留萌駅2番ホームに到着。ホームの上屋もどこか主要駅という風格がある。

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 ホームの水飲み場。

留萌駅では15分の停車時間がある。その間に駅舎などを見てきた。

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 羽幌線があった頃は4・5番ホームまで約100mもの長さがあった跨線橋。今は短くなっている。

留萌駅は1967年にそれまでの木造駅舎から2階建て鉄筋コンクリート造りの駅舎に建て替えられた。時代は旅客輸送も石炭貨物輸送も華やかりし頃。コンコースや待合室は広く、同じく2階建ての深川駅よりも立派だ。
1番ホームに張り出した上屋といい、古き良き時代を思わせる堂々たる駅舎だ。

羽幌線や札幌・旭川へ直通列車のあった1983年の乗車人員は1,285人(小学館:国鉄全駅各駅停車)となっている。これは現在の深川駅よりも多い。急行列車や通学列車発着時は多くの乗客でごった返したのだろう。

留萌市の人口は2013年現在で23,548人となっている。最多だったのは1967年の42,469人(平成26年留萌市統計書)で、ほぼ半分近くまで減少してしまった。それでも留萌地方の中心都市であり、高校、病院、商業施設が集まる地域の主要都市であることには変わりない。

人口以上に減少したのは駅の利用者数であった。
現在の留萌駅の1日当たり乗車人員は65人(平成26年留萌市統計書:降車含まず)となっている。もっとも、これは留萌駅の乗車券発売の実績によるもので、フリーパス等の乗降客は含まないが、フリーパスの利用では留萌本線の収入には1円にもならない。

留萌振興局(旧支庁)の存在や、一応都市所在駅としての立場から駅員の常駐する直営駅ということになっているが、乗車人員だけ見ると無人の貨車駅で十分なレベルである。
増毛方の利用者数は39人(JR北海道HP)ということになっているが、深川方の利用者数は単純差し引きで91人ということになる。1列車あたり平均5.35人と、この数字だけ見てもすでに鉄道としての存在意義は無い。

一方、中央バスの札幌線の利用者数は1日当たり約400人(平成26年留萌市統計書)となっている。鉄道に比べると格段の乗客数だが、これも年々減少傾向にあり、仮に留萌本線の列車を増発して深川駅での接続を改善して鉄道のシェアを増加させたとしても、抜本的な経営改善とはならないだろう。

一方、札幌〜留萌間の車での所要時間は、高速道路経由ならば2時間半、国道経由でも3時間である。
バスもすでに車を持っていない層の乗客を細々と輸送しているに過ぎない。

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 留萌駅は鉄筋コンクリート2階建ての堂々たる駅舎。

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 きっぷ売場と改札口。この時間はまだ無人だ。

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 どこか昭和の国鉄の面影が・・・

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 キヨスクが無くなった待合室。立ち食いそば屋は健在だった。

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 待合室に掲示してある昔の写真。

留萌から増毛まではスタフ閉塞式といって、この区間は1つの閉塞区間となっていて1つの通票を持っている列車しか進入できない区間となっている。
自動信号ではないため、通票を扱う駅員が常駐している。留萌駅が無人駅にならない理由もこの1つだ。
留萌〜増毛間が廃止されると、この駅員も必要なくなり無人駅になるかもしれない。市の代表駅でも赤平・芦別の両駅は2016年3月には無人化予定となっている。

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 深川行4922Dが到着。

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 駅員による通票の受け渡しが行われる。道内ではここと学園都市線石狩月形駅だけになった。

1番ホームに増毛から来た4922Dが到着した。車内の乗客は2人だけ。下車客は無し。留萌駅からの乗客も2人だけだった。
数少ない乗客が乗り通すと思われる深川まではバスもあり、鉄道が唯一の交通機関ではない。
それでも深川着は7:49着となる。石狩沼田や秩父別からは通学生を満載した通学列車となるものの、増毛から石狩沼田までは空気輸送というか回送列車同然ということになる。



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 乗客わずか4人で深川に向けて発車して行った4922D。

さてこちらの4921Dであるが、留萌から鉄道ファンを数名乗せての発車となった。地元客らしい乗客は相変わらずゼロである。

2へつづく
posted by pupupukaya at 15/10/31 | Comment(0) | 北海道ローカル線考
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