今年の「夏休み」は東北旅行をすることにしました。
東北へは、フェリーに車を積んで行くということも検討しましたが、今回は鉄道にしました。
鉄道で東北に行くことにした理由は、来年(2016年)3月には北海道新幹線が開業しますが、そうなると札幌と青森を夜行で結んでいた急行「はまなす」は廃止になります。最後の急行「はまなす」にもう一度乗っておきたい。
2011年の東日本大震災から4年、とくに甚大な被害だった三陸はどうなったのだろう。また、仮復旧したBRTにも乗ってみたいということで今回の旅行を考え付いた。

札幌から急行「はまなす」で東北に行く場合にうってつけのきっぷがあって、それは「北海道&東日本パス」というもの。
春・夏・秋と三シーズンの発売で、普通列車が乗り放題という「青春18きっぷ」と似たような効力だが、18きっぷと違うところはJR北海道と東日本内のみ有効というところだ。
ほかに18きっぷと違うところは
・連続した7日間有効(18きっぷは5回(日)分)
・値段が10,290円(18きっぷは11,850円)
・急行券を買えば急行「はまなす」に乗れる
・特急券を買えば青森〜函館間の特急に乗れる
・第三セクターの青い森鉄道、IGRいわて銀河鉄道他2社にも乗れる
・18きっぷより発売・利用期間が長め
というところで、これだけ見れば18きっぷよりはるかにお得ということになるが、5回分を1人でも複数人でも任意で使える18きっぷと違い1人1枚で使わなければならないということ、JR北海道と東日本以外では乗ることができないので、使用形態によっては18きっぷの方が得かもしれない。
そんなわけで今回の計画は、急行はまなすで札幌を出発し、翌日は普通列車を乗り継いで仙台まで行き仙台で泊まる。
その翌日は仙台から列車とBRTを乗り継いで気仙沼へ、気仙沼で泊まる。
最後は気仙沼からまたBRTと普通列車を乗り継いで青森へ、再び急行はまなすで札幌へ戻るという計画を立てた。
2泊5日の行程になる。
出発する週になって、どうも台風が接近しているらしい。今週中に日本列島に上陸するという。
はまなすの寝台券も手に入って、ホテルも予約したのに何てことだ。
旅行を取りやめようかとも思ったが、今からではキャンセル料も馬鹿にならないし、やはり行くことにした。
9月8日
●札幌 22:00発 − 青森6:39着 急行はまなす
21時を過ぎて、帰宅客が次々と改札口へ向かう札幌駅西コンコースへやってきた。
まだ発車まで40分以上あって、ホームへ行くにはまだ早い。自由席ならば早めに行って並ぶところだが、今回は奮発して寝台券を買っていた。
西改札口の電光掲示板。普通電車に混じって『はまなす』の表示も。
書店や改札横の売店などをぶらぶら見ていたが、ほかにすることも無くなったのでホームへ行く。まだ21時半で発車30分前だが、自由席のところは行列ができていた。
学校の夏休みは終わったが、9月になってもはまなすは混んでいるようで、JRサイバーステーションを見ても指定席と寝台は連日△か×印になっている。
普段のはまなすであれば、シーズン時以外はがら空きだった記憶しか無いが、新幹線開業と引き換えに廃止と見られているために名残乗車の人が増えているのだろう。
自由席車の乗車位置は早くも行列ができていた。
はまなすに乗るのは何回目かな。過去を思い出して数えてみたら今回が9回目だった。特に多いというわけではなく、少ないとも思えないが、本州方面へは「北斗星」や快速「ミッドナイト」などもあったので、自分的にはなんとなく「はまなす」の影は薄かった。
影は薄いが便利な列車ではあった。たとえば札幌を22:00発の「はまなす」で出発すると青森・新青森と2回の乗り換えがあるにしろ東京には翌朝9:23に着けるのである。これが飛行機ならば新千歳空港7:30発の便に乗れば羽田空港着が9:05になる。そこから乗り換えて品川にしろ浜松町にしろ到着は9:30を過ぎてしまうわけで、はまなすとはやぶさの乗継が札幌から東京へ一番早い時間に着く方法だった。新千歳7:30発の飛行機に乗るには自宅を朝何時に出れば良いのだろう。
値段も「東京往復割引切符」を買えば「はまなす」自由席利用なら札幌〜東京往復で27,020円になり、LCCほどではないがかなり安くなる。
私も何回か利用したことがあるが、夜行と乗換を厭わなければ十分アリなルートだと思った。
来年3月に新幹線が新函館北斗駅まで開業するが、仮に札幌〜新函館間に夜行列車が設定されても東京着は10時以降になるのは確実だし、新幹線が札幌まで伸びても朝9時台に東京に着くことはできない。
はまなすが入線する。
21:38に青いディーゼル機関車に牽かれたはまなすが入線する。今日は増結なしの7両編成。ただし機関車と1号車の間に函館までの回送車が連結されていた。ドアも開かず、窓のカーテンも全て閉じられていて乗ることはできない。
入線するとカメラを持ったファンたちが集まってくるが、まだ少ない方。そのうちホームにロープが張られ、警備員が立つようになるのだろう。
ホームにいた乗客はそれぞれの車内に収まってしばしの発車待ち。
自由席は帰宅列車の雰囲気。
入線した直後はカメラを持ったファンらしき人々がウロウロしていた(私もそうだけど)。
あらためて車両を見ると、ブルーの車体は黒ずんだり、塗装の割れ目から錆が浮き出たりしてお世辞にも綺麗とはいえない。特に座席車の車両は1972年製造と43年間も使用され、限界を通り越してだましだまし走らせているといった感じに見える。
テールライトとテールマークが輝く最後部。北斗星やカシオペアが女王ならばこちらはその妹君というところ。
急行はまなすの方向幕。
この日は1号車の前に函館までの回送車が増結されていた。
消灯されカーテンの閉じられた客車は幽霊列車のようだ。
スハフ14 509は五稜郭車両所に臨時入場のため。
B寝台車の入口。座席車とは違って上等クラスの感じになっている。
さてきっぷに指定された寝台車は1号車。車両はスハネフ14 551。
床下では客車に電気を供給する発電機のディーゼルエンジンが唸っているという少々残念な車両。
元々は24系25型として製造されたが、渡道した際に発電エンジンを取り付けて14系客車に改造されたという運命を持つ。1980年製ということもあって、車体の傷みは座席車ほど酷くはない。
寝台車の座席番号。
寝台車の通路。元が24系客車のため、車内もそのような造りになっている。寝台側窓の天地寸法が短いのが一番の特徴。
B寝台の座席兼ベッド。座席として使用されることはないけれど。
きょうのB寝台はサイバーステーションでは△となっていた。満席ではないが混んでいるようだ。
ところが発車近くになっても、ざっと見半分くらいしか寝台は埋まっていない。私の向かいの上下段も空いたままだ。途中から乗ってくるのだろうか。
ハシゴの後ろにあるテーブルに買ってきたお酒とつまみを並べてみると夜汽車らしい哀愁漂う感じになった。
備え付けの枕、毛布、シーツそれに浴衣。
ベットメーキングは自分でする。狭いので意外と面倒くさい。
上段へ上がるハシゴ。
寝台のベッドメーキングをしていたら列車はいつの間にか動き出していた。
寝台に腰かけて駅のキヨスクで買ったお酒を飲む。「千歳鶴」と金滴酒造の「北海道新幹線開業」のカップ酒。
乗る前にコンコースのキヨスクで買ってきたお酒で晩酌。
B寝台車は日本酒が合う。それも駅の売店で売っているようなワンカップとかが良い。薄暗い車内で流れる夜景を見ながらしんみりと呑むのが良い。
流れる夜景と鉄輪の響きは最高の肴。
ここにいると乗ってきた人の邪魔になるので通路の小さい腰掛に移った。
新札幌と南千歳から乗車する人もあって、寝台はほぼ埋まったようだった。
枕元の灯り。
お酒を2本空けて横になるとすぐに眠くなった。寝台車は適度な揺れがあって心地よく眠れる。
目が覚めると列車はトンネルの中を走行しているようだった。時刻は午前5時前、青函トンネル通過中だった。
青函トンネル通過中。新幹線と在来線の共用区間のためレールが3本見える。
青函トンネルを抜けて蟹田を過ぎるとしばらく陸奥湾沿いを走る。晴れていれば気持ちの良い朝を迎えるところだが、残念ながら雨降りだった。なんとも暗い1日のスタートになった。
スマホで天気予報を見ると東北地方はほとんど雨マークになっている。台風も接近しているし、前途多難な旅行になりそうだ。
翌朝、陸奥湾が見えた。雨降りで暗かった。
朝を迎えた寝台車。青森着が40分遅くなったのでいつもよりのんびりしている。
はまなすの青森着時刻は普段ならば5:39だが、今は新幹線工事のため時刻が40分繰り下げられて6:19着になっている。
今まで接続していた特急つがる2号や新幹線はやぶさ4号は先に発車してしまうので、乗り継ぎの人は不便だが、寝台車の客にとっては余計に寝ていられるのでかえってサービスかもしれない。
出入り口上の車番と号車番号のプレート。
終点青森に到着。スーツケースや旅行鞄を持った人が一斉に階段へ向かう。
さて、青森に着いた。
ここから青い森鉄道の八戸行に乗って乗り継いで行けば仙台には14:23に着く。仙台市内を観光するつもりでいたが天気予報は雨になっている。雨の中歩くのは気が進まないし、予定を変えて奥羽線、花輪線経由の遠回りで行くことにした。
青函連絡船はとうの昔に無くなったが、はまなす到着時は連絡船時代から変わらない情景がよみがえる。
青い森鉄道の電車と並んだはまなす。
青森車両センターへ回送の為、赤いDE10が近づいてくる。
連結作業。
青森車両センターへ向けて発車を待つ機関車。運転士時刻表を覗くと青森発は6:39とあった。
赤いディーゼル機関車が付くとなぜか急にローカルっぽく見える。急行「天北」を思い出す。
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